説明

砥石工具及びその製造方法

【課題】偏摩耗を抑制すると共に、高精度で、且つ、効率良く研削することができる砥石工具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】台金11の表面11aに点在させたディンプル11b内に、各先端高さが揃えられた砥粒22を、硬化した熱硬化性樹脂21により固定した状態で、表面11a上にめっき層23を形成して、砥粒22を固着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク表面を良好な表面粗さに研削することができる砥石工具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削加工は、砥石工具を高速で回転させながら、この砥石工具に対して、一定量の切り込みと送りとを与えることにより、ワークの成形や仕上げを行う加工である。また、研削加工に用いられる砥石工具としては、電気めっきの原理を利用した電着法により、台金上に、砥粒を一層に固着させたものが、一般的に知られている。そして、このような、従来の砥石工具の製造方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−358640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の砥石工具の製造方法においては、台金の表面に、窪み部を規則的に形成し、この窪み部を用いて、砥石をめっき層によって固着することにより、砥粒密度を調整して、砥石の目詰まりを防止するようにしている。しかしながら、このような、従来の製造方法では、固着した砥粒の先端高さ(突き出し量)を調整できないため、砥粒自体の粒径のばらつきや、砥粒形状の不均一等により、各砥粒の先端高さが不揃いとなってしまう。
【0005】
そして、上述したような砥石工具を用いてワークを研削すると、当該砥石工具の研削部位によって、各砥粒の切り込み量や擦過頻度が異なってしまい、ワークの表面粗さが低下するだけでなく、砥石工具が偏摩耗してしまうおそれがある。更に、先端高さが低い砥粒は研削に関与しないため、このような砥粒が多く存在すると、研削効率が大幅に低下するおそれがある。
【0006】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、偏摩耗を抑制すると共に、高精度で、且つ、効率良く研削することができる砥石工具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る砥石工具は、
台金の表面に点在させたディンプル内に、各先端高さが揃えられた砥粒を、硬化した熱硬化性樹脂により固定した状態で、前記表面上にめっき層を形成して、前記砥粒を固着させた
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る砥石工具は、
前記ディンプルは、前記砥粒が、前記表面における前記台金の移動方向と直交する幅方向の全域に亘って作用するように、配置される
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る砥石工具の製造方法は、
台金の表面に、ディンプルを点在させ、
前記ディンプル内に、砥粒を熱硬化性樹脂を介して仮固定し、
前記砥粒の先端を押圧手段により押圧して、各砥粒の先端高さを揃え、
前記砥粒の先端を押圧手段により押圧した状態で、前記熱硬化性樹脂を加熱して硬化させて、前記砥粒を固定し、
前記砥粒の先端への前記押圧手段による押圧を解除し、
前記表面上にめっき層を形成して、前記砥粒を固着させる
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る砥石工具の製造方法は、
前記台金の外周面となる前記表面に、前記ディンプルを点在させ、
前記押圧手段は、前記表面の径方向外側から、各砥粒の先端を同時に押圧する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従って、本発明に係る砥石工具によれば、各砥粒を、先端高さを揃えた状態で固着させることにより、全ての砥粒を、一様に研削に関与させることができるので、偏摩耗を抑えることができると共に、高精度で、且つ、効率良く研削することができる。
【0012】
また、本発明に係る砥石工具の製造方法によれば、ディンプル内に熱硬化性樹脂を介して仮固定された各砥粒の先端を、押圧手段により押圧することにより、各砥粒の先端高さが揃った砥石工具を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る砥石工具の側面図である。
【図2】(a)〜(h)は本発明の一実施例に係る砥石工具の製造方法を順に示した断面図である。
【図3】ディンプルの配置を示した図である。
【図4】押圧型を構成する分割押圧型の概略図であって、(a)は分割押圧型の平面図、(b)は分割押圧型の正面図である。
【図5】押圧型内による台金への押圧状態を示した図であって、(a)は押圧型の正面図、(b)は同図(a)のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る砥石工具及びその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
先ず、図1に示した砥石工具1は、本発明に係る砥石工具の製造方法を用いて製造されたものであって、台金11における先端側大径部の外周面に、研削面12を有している。そして、詳細は後述するが、その研削面12は、電気めっきの原理を利用した電着法により、砥粒22が台金11上に点在された構成となっている。即ち、砥石工具1は、その軸心周りに回転することにより、研削加工を可能としている。
【0016】
次に、砥石工具1の製造方法について、図2乃至図5を用いて具体的に説明する。
【0017】
先ず、図2(a)に示すように、台金11の表面(先端側大径部の外周面)11aに、複数のディンプル11bを規則的に形成する。
【0018】
具体的には、図3に示すように、ディンプル11bは、表面11aの幅方向(研削面12の幅方向)において、所定のピッチP1で形成されると共に、表面11aの周方向(研削面12の周方向)において、所定のピッチP2で形成されている。更に、ディンプル11bは、上記ピッチP1,P2に配置された上で、表面11aの幅方向全域に亘って、隙間なく配置されている。
【0019】
次いで、図2(b)に示すように、台金11の表面11aに、熱硬化性樹脂21を塗布する。このとき、熱硬化性樹脂21を、ディンプル11b内を満たすように塗布する。なお、熱硬化性樹脂21は、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等である。
【0020】
そして、図2(c)に示すように、塗布した熱硬化性樹脂21を表面11aから拭き取る。このとき、表面11aに塗布された熱硬化性樹脂21を全て拭き取ると共に、ディンプル11b内に塗布された熱硬化性樹脂21のうち、表面11a側の熱硬化性樹脂21のみを拭き取るようにする。これにより、ディンプル11b内に塗布された熱硬化性樹脂21は、表面11aよりも凹んだ状態、即ち、低い位置で残存する。
【0021】
次いで、図2(d)に示すように、砥粒22を、ディンプル11bの粘着力を利用して、ディンプル11b内に仮固定する。
【0022】
そして、図2(e)に示すように、ディンプル11b内に仮固定された各砥粒22の先端を、押圧型(押圧手段)30の押圧面30aにより、当該ディンプル11bの底面に向けて押圧する。これにより、各砥粒22の先端高さ(突き出し量)が均一となる。
【0023】
具体的には、図4(a),(b)に示すように、押圧型30は、同じ形状をなす3つの分割押圧型31から構成されており、これらの分割押圧型31は、その横断面が略扇形をなすように形成されている。また、分割押圧型31の扇形先端部には、台金11の外周面と密着可能な円弧面31aが、円弧状に凹むように形成されており、この円弧面31aは、その一端側に、更に凹んだ分割押圧面31bを有している。
【0024】
従って、図5(a),(b)に示すように、台金11に対して、各分割押圧型31の円弧面31aを、台金11の径方向外側から密着させることにより、当該台金11が押圧型30内に配置される。このような状態から、隣接した分割押圧型31同士を、ボルト32によって締め付けることにより、各分割押圧面31bが面一となって押圧面30aを形成し、この押圧面30aによって、各砥粒22の先端が所定の押圧力により同時に押圧される。これにより、各砥粒22は、先端高さが同じ高さに保持される。
【0025】
このとき、砥粒22の粒径半分部分が、ディンプル11b内に残存する熱硬化性樹脂21内に押し込まれる。また、残存する熱硬化性樹脂21が表面11a以下となるように残存しているため、砥粒22が押し込まれても、熱硬化性樹脂21は、ディンプル11b内から表面11a上に溢れることはない。
【0026】
次いで、図2(f)に示すように、押圧面30aによって各砥粒22の先端高さを揃えた状態で、押圧型30を炉(図示省略)の中に入れる。このように、台金11を組み込んだ押圧型30ごと、所定の時間及び温度で加熱することにより、熱硬化性樹脂21を硬化させる。
【0027】
そして、図2(g)に示すように、押圧型30を炉から取り出した後、当該押圧型30を分解して(押圧力を解除して)、台金11を取り外す。これにより、各砥粒22は、ディンプル11b内に、熱硬化した熱硬化性樹脂21によって、先端高さが高精度に揃った状態で固定される。
【0028】
次いで、図2(h)に示すように、台金11の表面11に対して、無電解ニッケルめっきを施すことにより、当該表面11a上にめっき層23を形成する。これにより、砥粒22が固着され、台金11に研削面12が形成される。
【0029】
このとき、砥粒22を、熱硬化性樹脂21よって固定するだけでなく、めっき層23によっても固定することにより、当該砥粒22に対する保持力を向上させることができる。
【0030】
また、ディンプル11bが、ピッチP1,P2で規則的に配置されているため、このディンプル11bに対応して固着された砥粒22も、ピッチP1,P2で規則的に配置される。更に、砥粒22を表面11aの幅方向全域に亘って隙間なく配置することにより、研削加工時に砥石工具1がその軸心周りに回転したときに、研削面12の幅方向全域において、砥粒22が作用するようになっている。この結果、良好な表面粗さで、且つ、効率良く研削することができる。
【0031】
従って、本発明に係る砥石工具1によれば、各砥粒22を、先端高さを揃えた状態で固着させることにより、全ての砥粒を、一様に研削に関与させることができるので、各砥粒22の研削量を均一にすることができる。これにより、偏摩耗を抑えることができると共に、高精度で、且つ、効率良く研削することができる。
【0032】
また、本発明に係る砥石工具1の製造方法によれば、ディンプル11b内に熱硬化性樹脂21を介して仮固定された各砥粒の先端を、押圧型30の押圧面30aによって押圧することにより、各砥粒22の先端高さが揃った砥石工具1を、容易に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、砥粒の間隔及び先端高さを調整して、切れ味を良好にすることにより、研削性の向上を図るようにした砥石工具及びその製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 砥石工具
11 台金
11a 表面
11b ディンプル
12 研削面
21 熱硬化性樹脂
22 砥粒
23 めっき層
30 押圧型
30a 押圧面
31 分割押圧型
31a 円弧面
31b 分割押圧面
32 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金の表面に点在させたディンプル内に、各先端高さが揃えられた砥粒を、硬化した熱硬化性樹脂により固定した状態で、前記表面上にめっき層を形成して、前記砥粒を固着させた
ことを特徴とする砥石工具。
【請求項2】
請求項1に記載の砥石工具において、
前記ディンプルは、前記砥粒が、前記表面における前記台金の移動方向と直交する幅方向の全域に亘って作用するように、配置される
ことを特徴とする砥石工具。
【請求項3】
台金の表面に、ディンプルを点在させ、
前記ディンプル内に、砥粒を熱硬化性樹脂を介して仮固定し、
前記砥粒の先端を押圧手段により押圧して、各砥粒の先端高さを揃え、
前記砥粒の先端を押圧手段により押圧した状態で、前記熱硬化性樹脂を加熱して硬化させて、前記砥粒を固定し、
前記砥粒の先端への前記押圧手段による押圧を解除し、
前記表面上にめっき層を形成して、前記砥粒を固着させる
ことを特徴とする砥石工具の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の砥石工具の製造方法において、
前記台金の外周面となる前記表面に、前記ディンプルを点在させ、
前記押圧手段は、前記表面の径方向外側から、各砥粒の先端を同時に押圧する
ことを特徴とする砥石工具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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