説明

破壊破面解析支援装置

【課題】 構造物の破壊原因を推定作業を客観的な情報処理に基づいて支援する。
【解決手段】 構造物の破壊破面を示す画像情報と破壊破面に関する付帯情報とを破壊破面データシートとして複数記憶する記憶部と、破壊破面データシートを検索するための検索条件を入力する入力手段と、検索条件に対応する破壊破面データシートを記憶部から読み出す情報処理手段と、情報処理手段の検索結果を出力する出力手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破壊破面解析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば構造物の破壊原因を推定する場合に、過去の破壊事例に関する破壊破面の写真画像を参照する場合がある。このような破壊破面の写真画像は、製本された写真集として刊行されている。このような写真集には、例えば以下のものがある。
【非特許文献1】フラクトグラフィ(日本材料学会フラクトグラフィ部門委員会編)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記写真集を用いて構造物の破壊原因の推定作業を行う場合、破壊破面からの破壊原因の推定は専ら経験豊富な熟練者の判断に頼ることになる。しかしながら、このような熟練者の判断は、主観的であり、客観性に欠けるという問題がある。また、このような熟練者が減少する傾向にあり、破壊原因の推定作業が進まないという問題点もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構造物の破壊原因の推定作業を客観的な情報処理に基づいて支援することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の手段として、構造物の破壊破面を示す画像情報と前記破壊破面に関する付帯情報とを破壊破面データシートとして複数記憶する記憶部と、前記破壊破面データシートを検索するための検索条件を入力する入力手段と、前記検索条件に対応する破壊破面データシートを前記記憶部から読み出す情報処理手段と、情報処理手段の検索結果を出力する出力手段とを具備する、という解決手段を採用する。
【0006】
また、第2の手段として、上記第1の手段において、入力手段は、検索条件として破壊破面の画像情報をも入力するように構成されており、情報処理手段は、入力手段に前記画像情報が入力されると、当該画像情報の特徴量を演算し、この特徴量に対応する破壊破面の破壊破面データシートを記憶部から読み出して出力する、という解決手段を採用する。
【0007】
第3の手段として、上記第1の手段において、入力手段は、検索条件として破壊破面の特徴量をも入力するように構成されており、情報処理手段は、入力手段に前記特徴量が入力されると、当該特徴量に対応する破壊破面の破壊破面データシートを記憶部から読み出して出力する、という解決手段を採用する。
【0008】
第4の手段として、上記第2または第3の手段において、入力手段は、特徴量に対する許容範囲を検索条件として指定するように構成されており、情報処理手段は、前記許容範囲に該当する類似破壊破面の破壊破面データシートをも記憶部から読み出して出力する、という解決手段を採用する。
【0009】
第5の手段として、上記第2〜第4いずれかの手段において、特徴量は、フラクタル次元、周波数解析結果、表面粗さ及びウエーブレット係数のいずれか1つあるいは複数である、という解決手段を採用する。
【0010】
第6の手段として、上記第1〜第5いずれかの手段において、入力手段及び出力手段として機能する通信手段を備えたサーバとして構成されており、通信回線を介してクライアントから受信した検索条件に対応する破壊破面データシートを通信回線を介してクライアントに送信する、という解決手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記憶部に記憶された破壊破面データシートを検索条件に応じて読み出して出力するので、構造物の破壊原因の推定作業を客観的な情報処理に基づいて支援することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係わる破壊破面解析支援装置の機能構成を示すブロック図である。本実施形態は、この図1に示すように破壊破面解析支援装置をコンピュータに情報提供機能を持たせたサーバコンピュータS(Webサーバ)として構成し、通信回線Nを介して接続された複数のクライアントコンピュータC1〜Cn(Webクライアント)の破面情報要求に応じて破壊破面解析支援情報を提供するように構成したものである。なお、以下の説明では、サーバコンピュータSを単にサーバSと表記し、またクライアントコンピュータC1〜Cnを単にクライアントC1〜Cnと表記する。
【0013】
サーバS(破壊破面解析支援装置)は、図示するように記憶部1、情報処理部2及び通信部3から構成されている。記憶部1は、構造物の破壊破面を示す画像情報と破壊破面に関する各種の付帯情報とを破壊破面データシート1aとして複数記憶するものであり、情報処理部3の要求に応じた破壊破面データシート1aを情報処理部3に出力する。上記画像情報は破壊破面の写真(破壊破面写真)であり、一方、付帯情報は、当該破壊破面写真のタイトル、破壊破面写真に関する構造物の材料仕様、破壊形式、破壊破面の発生環境、破壊破面の生成概要、観察倍率(撮影倍率)、観察者のコメント及び破壊破面の特徴量等である。なお、この特徴量については、後で詳しく説明する。
【0014】
情報処理部2は、通信部3から入力された破面情報要求に添付されていた検索条件に応じて上記記憶部1内の破壊破面データシート1aを検索する一方、上記検索条件に破面画像(指定破面画像)が付加されていた場合には当該指定破面画像の特徴量を演算し、当該特徴量に応じて破壊破面データシート1aを検索し、その検索結果あるいは/及び特徴量を通信部3に出力するものである。
【0015】
上記指定破面画像は、破壊破面の濃淡情報あるいは3次元情報を示す画像である。破壊破面の濃淡情報を示す画像は、破壊破面における各部位の濃淡を所定諧調で示す画像(例えばビットマップ)であり、一方、破壊破面の3次元情報を示す画像は、破壊破面における各部位の高さを示す画像である。なお、この情報処理部2の詳細処理については、後で詳しく説明する。
【0016】
通信部3は、本サーバSの入力手段及び出力手段として機能するものであり、通信回線Nを介してクライアントC1〜Cnから破面情報要求を受信する一方、情報処理部2の検索結果を通信回線Nを介してクライアントC1〜Cnに送信する。通信部3は、クライアントC1〜Cnから破面情報要求を受信すると、当該破面情報要求を情報処理部2に出力する一方、情報処理部2から検索結果あるいは/及び特徴量が入力されると、これら各情報を破壊破面解析支援情報として通信回線Nを介してクライアントC1〜Cnに送信する。
【0017】
なお、本サーバSは文字情報と画像情報を取り扱うWebサーバとして構成されており、通信部3は、当然にWebサーバに適合した通信機能を有するものである。また、このような本サーバSと通信回線Nを介して交信することにより本サーバSに破面情報要求を提示して破壊破面解析支援情報を取得するクライアントC1〜Cnは、当然にWebクライアントとしての通信機能を有するものである。
【0018】
次に、このように構成された本サーバSの動作について、図2に示すフローチャートに沿って説明する。なお、このフローチャートは、本サーバSの動作すなわち情報処理部2の処理手順を示すものである。
【0019】
最初に、情報処理部2は、通信部3から破面情報要求が入力されるのを待つ待機状態にある(ステップS1)。通信部3が任意のクライアントC1〜Cnから破面情報要求を受信すると、この破面情報要求は通信部3から情報処理部2に出力されて、ステップS1における判断処理は「Yes」となり、情報処理部2は、破面情報要求に含まれる検索条件の1つとして指定破面画像があるか否かを判断する(ステップS2)。そして、検索条件の1つに指定破面画像がある場合は、当該指定破面画像に基づく特徴量の演算処理(ステップS3)を実行した後にステップS4を実行し、一方、検索条件の1つに指定破面画像がない場合にはステップS4を直接実行する。
【0020】
ここで、検索条件について説明する。本実施形態における検索条件は、上述した付帯情報の各項目及び/あるいは破壊破面の特徴量に関する項目からなるものである。すなわち、本実施形態では、付帯情報の各項目あるいは破壊破面の特徴量に関する項目のいずれか一方のみを指定して破壊破面データシート1aを検索することも可能であるし、両方を指定して破壊破面データシート1aを検索することもできる。上記破壊破面の特徴量に関する項目は、上述した指定破面画像、当該指定破面画像の特徴量に対する許容範囲、またフラクタル次元、周波数解析結果、表面粗さ及び/あるいはウエーブレット係数等の特徴量の種類(特徴量種類)等である。
【0021】
情報処理部2は、ステップS3におけるの演算処理において、検索条件の1つとしてクライアントC1〜Cnから指定された指定破面画像について、同じく検索条件の1つとしてクライアントC1〜Cnから指定された特徴量種類の特徴量を演算する。なお、このような特徴量は、画像解析の手法として周知の技術であり、ここでは処理内容の詳細については省略するが、指定破面画像に示されている指定破壊破面の特徴を示すものである。
【0022】
そして、情報処理部2は、自らが演算した指定破面画像の特徴量とクライアントC1〜Cnから指定された指定破面画像の特徴量に対する許容範囲とに基づいて記憶部1に記憶された破壊破面データシート1aを検索し、当該特徴量と許容範囲に合致する破壊破面データシート1aを取得する(ステップS4)。そして、情報処理部2は、このように取得した破壊破面データシート1aに関する破壊破面の写真データ及び付帯情報を所定フォーマットのホームページにアレンジして通信部3に出力し(ステップS5)、破壊破面解析支援情報としてクライアントC1〜Cnに送信させる。
【0023】
図3は、破壊破面解析支援情報の一例を示す模式図である。破壊破面解析支援情報には、指定破面画像の特徴量と許容範囲に合致する破壊破面の破壊破面データシート1aの情報、つまり破壊破面写真とその付帯情報としての破壊破面写真のタイトル、破壊破面写真に関する構造物の材料仕様、破壊形式、破壊破面の発生環境、破壊破面の生成概要、観察倍率(撮影倍率)、観察者のコメント及び破壊破面の特徴量(この例の場合はフラクタル次元、周波数解析結果及び表面粗さ)が含まれている。
【0024】
なお、本実施形態では、特徴量に許容範囲を指定することができるので、指定破面画像の特徴量と全く同一の特徴量を有する破壊破面の破壊破面データシート1aだけでなく、特徴量が許容範囲内にある類似破壊破面の破壊破面データシート1aも検索される。
【0025】
このような本実施形態によれば、特徴量等の客観的な検索条件に基づいて破壊破面データシート1aを検索するので、クライアントC1〜Cnに対して指定破壊破面の破壊原因の推定作業に必要な客観的な情報(破壊破面解析支援情報)を提供することができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、特徴量に関する検索条件として指定破面画像をサーバSに入力するようにしたが、これに代えて指定破面画像の特徴量を入力するようにしても良い。この場合には、情報処理部2で指定破面画像の特徴量を演算する必要がないので、サーバSの負荷が軽減される。
(2)上記実施形態では、特徴量種類としてフラクタル次元、周波数解析結果、表面粗さ及びウエーブレット係数を例示したが、特徴量種類はこれに限定されるものではい。
(3)上記実施形態では、破壊破面解析支援装置を通信機能を有するサーバSとして構成したが、通信機能を有さないスタンドアローン装置として構成しても良い。
(4)また、破壊破面データシート1aに登録される項目及び検索条件の項目は上記実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係わる破壊破面解析支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる破壊破面解析支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係わる破壊破面解析支援装置の出力情報(破壊破面解析支援情報)を示す模式図である。
【符号の説明】
【0028】
S…サーバコンピュータ(破壊破面解析支援装置),C1〜Cn…クライアントコンピュータ,N…通信回線,1…記憶部,2…情報処理部, 3…通信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の破壊破面を示す画像情報と前記破壊破面に関する付帯情報とを破壊破面データシートとして複数記憶する記憶部と、
前記破壊破面データシートを検索するための検索条件を入力する入力手段と、
前記検索条件に対応する破壊破面データシートを前記記憶部から読み出す情報処理手段と、
情報処理手段の検索結果を出力する出力手段と
を具備することを特徴とする破壊破面解析支援装置。
【請求項2】
入力手段は、検索条件として破壊破面の画像情報をも入力するように構成されており、
情報処理手段は、入力手段に前記画像情報が入力されると、当該画像情報の特徴量を演算し、この特徴量に対応する破壊破面の破壊破面データシートを記憶部から読み出して出力する
ことを特徴とする請求項1記載の破壊破面解析支援装置。
【請求項3】
入力手段は、検索条件として破壊破面の特徴量をも入力するように構成されており、
情報処理手段は、入力手段に前記特徴量が入力されると、当該特徴量に対応する破壊破面の破壊破面データシートを記憶部から読み出して出力する
ことを特徴とする請求項1記載の破壊破面解析支援装置。
【請求項4】
入力手段は、特徴量に対する許容範囲を検索条件として指定するように構成されており、
情報処理手段は、前記許容範囲に該当する類似破壊破面の破壊破面データシートをも記憶部から読み出して出力する
ことを特徴とする請求項2あるいは3記載の破壊破面解析支援装置。
【請求項5】
特徴量は、フラクタル次元、周波数解析結果、表面粗さ及びウエーブレット係数のいずれか1つあるいは複数である
ことを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の破壊破面解析支援装置。
【請求項6】
入力手段及び出力手段として機能する通信手段を備えたサーバとして構成されており、通信回線を介してクライアントから受信した検索条件に対応する破壊破面データシートを通信回線を介してクライアントに送信する
ことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の破壊破面解析支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−118876(P2006−118876A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304229(P2004−304229)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(501213860)独立行政法人産業安全研究所 (12)
【Fターム(参考)】