説明

破砕機

【課題】破砕装置の能力を効果的に引き出すことができる破砕機を提供する。
【解決手段】被破砕物を破砕する破砕装置13と、破砕装置13に被破砕物を供給する供給装置12,41と、破砕装置13の負荷Pに応じて供給装置12,14の設定駆動速度Ssを更新する設定更新部84と、設定更新部84により更新された設定駆動速度Ssで供給装置12,14を駆動する駆動指令部82を備え、設定更新部84は、破砕負荷Pが上げ判定値Pu以下の状態が上げ判定時間Tu継続したら供給装置12,14の設定駆動速度Ssを設定上げ幅Wuだけ上げ、下げ判定値Pd以上の状態が下げ判定時間Td継続したら供給装置12,14の設定駆動速度Ssを設定下げ幅Wdだけ下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被破砕物を破砕する破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
破砕装置に被破砕物を供給する供給装置を備えた破砕機にあって、破砕装置の回転速度を検出し、破砕装置の回転速度が設定速度を下回った際に過負荷状態にあると判断して設定時間供給装置を逆転動作等させるものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3915955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、過負荷状態と判断したら被破砕物の供給動作を中断することで、その間に過負荷状態を解消し破砕装置の運転停止を回避し得る。被破砕物の供給動作が中断されても破砕装置自体は動作を継続し、供給中断の間に過負荷状態を脱すれば設定時間後の供給動作の再開をもって正常動作に復帰するので、破砕装置が過負荷に陥る度に破砕動作を停止させる場合に比べて全体として破砕効率は向上し得る。
【0005】
ここで、被破砕物の供給速度は破砕効率に関わる重要な要素であり、処理効率を考えれば、破砕装置の能力が許容する範囲でできるだけ速いことが望ましい。
【0006】
しかしながら、被破砕物の供給速度の適正値は、被破砕物の性状(硬さ、含水率、材質(繊維の量等))や大きさ、供給装置への被破砕物の投入量(投入ムラ)等によって逐次変動し得る。言い換えれば、破砕負荷は被破砕物の性状や投入量等によって破砕運転中も大きく変動し得るため、破砕装置の能力に対してある程度余裕を持った値に抑えようとする結果、被破砕物の供給速度が必要以上に低く設定されている場合、また、要求される破砕能力に対して過剰な能力を持った破砕装置が使用されている場合があった。また、供給装置の駆動速度はオペレータが設定することが多いが、一旦破砕作業が始まれば、実際の現場では、被破砕物の性状や破砕装置の負荷等を見ながら被破砕物の供給速度の設定を都度変更するようなことは少ない。そのため、被破砕物の供給速度が適正範囲から大きく外れた値に設定されたまま破砕作業が継続して行われ、破砕装置の能力が十分に発揮されない場合も多く生じ得た。
【0007】
本発明は、上記の事業に鑑みなされたもので、破砕装置の能力を効果的に引き出すことができる破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被破砕物を破砕する破砕装置と、この破砕装置に被破砕物を供給する供給装置と、前記破砕装置の負荷を測定する負荷測定手段と、この負荷測定手段の測定結果に対するしきい値を含む制御値を記憶した記憶部と、この記憶部に記憶した前記制御しきい値と前記負荷測定手段の測定結果を比較して前記供給装置の設定駆動速度を更新する設定更新手段と、この設定更新手段により更新された設定駆動速度で前記供給装置を駆動する駆動指令手段とを備え、前記記憶部は、前記制御値として、前記供給装置の設定駆動速度の上げ判定用の上げ判定値、前記設定駆動速度の下げ判定用の下げ判定値、前記設定駆動速度の上げ判定用の上げ判定時間、前記設定駆動速度の下げ判定用の下げ判定時間、及び前記設定駆動速度の設定上げ幅及び設定下げ幅を記憶しており、前記設定更新手段は、前記負荷測定手段の測定結果が、前記上げ判定値以下の状態が前記上げ判定時間継続したら前記供給装置の設定駆動速度を前記設定上げ幅だけ上げ、前記下げ判定値以上の状態が前記下げ判定時間継続したら前記供給装置の設定駆動速度を前記設定下げ幅だけ下げることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記記憶部は、前記制御値として、前記供給装置の待機速度と、前記供給装置を前記待機速度に移行すべきか否かの判定用の待機判定値、及び当該待機速度から設定速度への復帰判定用の復帰判定値をさらに記憶しており、前記駆動指令手段は、前記負荷測定手段の測定結果が前記待機判定値を超えたら前記供給装置を前記待機速度で駆動し、その後前記復帰判定値以下になった時点で前記供給装置を前記設定更新手段により更新された設定駆動速度で駆動することを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記負荷測定手段は、前記破砕装置を駆動する作動油の圧力を検出する圧力センサ、及びこの圧力センサの検出値を基に前記破砕装置の負荷を演算する演算手段であることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれか1つにおいて、前記駆動指令手段は、前記供給装置への作動油の流れを制御する制御弁に指令信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、破砕装置の能力を効果的に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた破砕機本体部の内部の要部を抜き出して表した側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた駆動システムの要部を抜き出して表した回路図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた制御装置の要部を抜き出して表した機能ブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた制御装置による破砕運転中の被破砕物の供給中断の動作の制御手順を表したフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた制御装置による破砕運転中の被破砕物の設定供給速度更新の動作の制御手順を表したフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る破砕機の破砕運転中における破砕負荷と被破砕物の供給速度の設定値及び指令値との関係を表したタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図、図2はその平面図である。なお、本願明細書において図1中の右左を破砕機の前後とする。
【0016】
図1及び図2に例示した破砕機は、廃棄物の再利用や減容化を主な目的として被破砕物を破砕する機械である。破砕機の破砕対象物すなわち被破砕物には、例えば森林で発生する剪定枝材や間伐材、建築物の解体に伴って発生する廃木材等の木材の他、廃プラスチック材、廃タタミ、竹材等の建設廃材等を含めた木材以外の廃材も含まれ得る。また、木材については、比較的乾燥した硬質のものに限らず、剪定後間もない街路樹の枝葉や沿道の雑草などの水分量の多い軟質のものも含まれ得る。本実施形態では、これらの破砕対象物を総称して被破砕物と記載する。
【0017】
上記破砕機は、機体を自力走行させるための走行体1、被破砕物を受け入れて破砕処理する破砕機本体部2、破砕機本体部2で破砕処理された破砕物を機外に搬出する排出コンベヤ3、及び搭載した各機器の動力源であるエンジン等を有する動力装置(パワーユニット)4等を備えている。
【0018】
走行体1は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7、駆動輪6の軸に出力軸を連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8、並びに駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9を有している。トラックフレーム5上には前後に延在する本体フレーム10が設けられており、この本体フレーム10によって、破砕機本体部2や排出コンベヤ3、動力装置4等が支持されている。
【0019】
破砕機本体部2は、被破砕物を破砕する破砕装置13(後述の図3参照)、被破砕物を投入するホッパ11、このホッパ11内に収容配置された送りコンベヤ12、及び送りコンベア12とともに被破砕物を破砕装置13に供給する供給装置を構成する押圧ローラ装置14を備えている。破砕機本体部2の構成については後述する。
【0020】
排出コンベヤ3は、コンベヤフレーム50、このコンベヤフレーム50の前後両端に設けた駆動輪及び従動輪(不図示)、駆動輪と従動輪との間に掛け回したコンベヤベルト(不図示)、コンベヤベルトの搬送面の上方を覆うようにコンベヤフレーム50に取り付けたコンベヤカバー51、駆動輪を回転駆動してコンベヤベルトを循環駆動させる駆動装置(排出コンベヤモータ)52等を有している。この排出コンベヤ3は、下流側(前方側)の部分が動力装置4の支持部から前方に延びる支持部材53により、上流側(後方側)の端部が支持部材54を介して本体フレーム10によりそれぞれ吊り下げられていて、左右の履帯9の間の破砕装置13(後述の図3参照)の下方付近から前方にほぼ水平に延在するとともに、動力装置4の下方あたりで二段階に屈曲して上り傾斜に転じ、輸送制限寸法の範囲で極力高い位置まで延在している。但し、このように屈曲したコンベヤを用いずに、本体フレーム10の下部領域において破砕装置13の下方から前方に直線状に延在する第1コンベヤ、及び第1コンベヤの放出端の下方から前方に向かって直線状に上る第2コンベヤで、乗り継ぎ式の排出コンベヤを構成する場合もある。
【0021】
動力装置4は、本体フレーム10の前部に支持部材55を介して搭載されている。この動力装置4の後方側でかつ機体幅方向一方側(本実施形態では右側)の区画には運転席56が設けられている。運転席56には破砕機を走行操作するための操作レバー57が設けられている。走行操作用の操作装置は、本実施形態のように運転席56に操作レバー57を設ける代わりに、有線又は無線のリモコンを用いる場合もある。また、動力装置4の下部でかつ機体幅方向一方側(本実施形態では右側)には、走行操作以外の機体操作や設定、モニタリング等を行うための操作盤58が設けられている。操作盤58は、本実施形態では地上から作業者が操作し易いように機体の側部に設けられているが、運転席56に設けても構わない。
【0022】
図3は破砕機本体部2の内部の要部を抜き出して表した側面図である。
【0023】
図3に示したように、上記ホッパ11は、上部及び前方が開口した有底形状の枠体であり、本体フレーム10の後部に水平に設置されている。
【0024】
上記送りコンベヤ12は、機体幅方向に回転軸21が延在するヘッド側の駆動輪16、同じく機体幅方向に回転軸(不図示)が延在するテール側の従動輪(不図示)、及び駆動輪16及び従動輪の間に掛け回した複数列(本実施形態では4列)の搬送ベルト(チェーンベルト)17を備え、機体後端近傍から破砕ロータ15の後面下半側に対向する位置までホッパ11内でほぼ水平に延在している。従動輪はホッパ11の左右の側壁体18(図1参照)における後部に設けた軸受19(図1参照)によって、また駆動輪16は破砕装置13の側壁を構成する破砕機フレーム20に設けた軸受(不図示)によって支持されている。駆動輪16の回転軸21は、軸受よりも機体幅方向外側に設けた駆動装置(不図示)の出力軸にカップリング等を介して連結している。当該駆動装置で駆動輪16を回転駆動することによって駆動輪16及び従動輪の間で搬送ベルト17が循環駆動する。
【0025】
破砕装置13は、送りコンベア12の前方に位置するように本体フレーム10の前後ほぼ中央位置に搭載されている。この破砕装置13は、破砕室27内に収容した上記の破砕ロータ15、及び破砕室27の内周壁部に破砕ロータ15側に突出して設けた反発板であるアンビル(反発板)34を備えている。破砕ロータ15の回転軸は、送りコンベヤ12の駆動輪16の軸と実質平行、すなわち機体幅方向に延在しており、送りコンベヤ12の駆動輪16の軸と実質平行、すなわち機体幅方向に延在している。また、破砕ロータ15は、外周部に複数の破砕ビット36を有している。破砕ビット36は、破砕ロータ15の外周面に設けたビットホルダ35のロータ正転方向(図3において時計回り)の前方側にボルト及びナット37で取り付けられていて、その刃面(衝突面)は破砕ロータ15の正転方向の前方を向いている。破砕ロータ15は回転体であるため、その最外周部(破砕ビット36)の回転軌跡面と静止体であるアンビル34との間には所定の間隙が確保されている。
【0026】
アンビル34は、破砕室27内に導入された被破砕物が衝突する衝突面39を有しており、破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回する破砕片に衝突面39が対向するように、アンビルフレーム40における湾曲板41(後述)の破砕ロータ15の正転方向後方側に取り付けられている。このアンビル34は破砕室27内の左右ほぼ全長に亘って(一方の破砕機フレーム20の近傍から他方の破砕機フレーム20の近傍まで)延在している。アンビル34を保持するアンビルフレーム40は、押圧ローラ装置14の回動軸22の上方にて破砕機フレーム20に支持された回動軸31を支点に前後に回動可能に支持されており、通常時は破砕機フレーム20の内壁面に固設された支持ブロック42に対しシアピン43を介して支持されていて、アンビル34が破砕室27内に臨む姿勢で拘束されている。運転中、アンビル34にシアピン43の許容剪断応力を超える衝撃荷重がかかった場合、シアピン43が破断してアンビルフレーム40の拘束が解け、アンビルフレーム40が回動軸31を支点に回動しアンビル34が破砕室27から離れるとともに破砕室27が開放される構成である。
【0027】
ここで、破砕室27とは、破砕ロータ15を収容し被破砕物を破砕処理する空間をいう。具体的には、送りコンベヤ12の下流側端部を始点とした場合、破砕ロータ15の正転方向に順に、送りコンベヤ12の端部、湾曲板28(後述)、アンビル34、上記湾曲板41、スクリーン(篩部材)38が破砕ロータ15の外周面に対向して円弧状に配置されており、これら送りコンベヤ12、湾曲板28、アンビル34、湾曲板41、スクリーン38によって画定された空間が破砕室27である。
【0028】
スクリーン38は、多数の排出孔(不図示)を有し円弧面状に曲成された板状の篩部材であり、破砕ロータ15の外周面の下半側(上記湾曲板41に対して破砕ロータ15の正転方向前方側)に対向するように、弧状に形成されたスクリーンホルダ44上に着脱可能に保持されている。また、スクリーン38は、破砕ロータ15の回転方向に複数枚(本実施形態では4枚)並べてスクリーンホルダ44上に配置されている。
【0029】
スクリーン38を支持するスクリーンホルダ44は、機体幅方向に延びる軸45を支点にしてシリンダ47の伸縮動作に伴って上下方向に回動する構成であり、図3の状態(作業時の姿勢)から破砕機フレーム20よりも下側にスクリーン38が下降する位置まで回動する。これによって、破砕機フレーム20の下側からスクリーン38を左右に抜き差しすることができる。
【0030】
シリンダ47は、例えば油圧シリンダ(電動シリンダでも良い)であり、左右の破砕機フレーム20の内壁面にそれぞれ1本ずつ設置されている。左右のシリンダ47は、破砕装置13の前方側に位置し、破砕機フレーム20に取り付けたブラケット49にボトム側が回動可能に連結されており、ブラケット49との連結部を基端部として後方側に延在している。シリンダ47のロッド先端部にはスライダ48が取り付けられ、このスライダ48はアーム46を介してスクリーンホルダ44の前端部近傍に連結されている。アーム46の両端は、スライダ48とスクリーンホルダ44に対して回動可能に連結されている。図3から判るように、スライダ48及びアーム46はリンク機構を構成しており、シリンダ47の伸縮動作に伴うスライダ48の前後方向への往復動作がアーム46の回動動作を経由してスクリーンホルダ44の上下動に変換される。
【0031】
なお、スクリーンホルダ44やアーム46の長さ、シリンダ47の前後位置等は、スクリーンホルダ44が作業時の通常姿勢(図3の状態)のときに、アーム46が破砕室27の接線方向に概ね沿って鉛直近くまで立ち上がるように設定されており、リンク機構によるスクリーンホルダ44の押し上げ力や姿勢保持力が効果的に得られるように配慮されている。
【0032】
上記押圧ローラ装置14は、破砕ロータ15前面の上方にて機体幅方向に延在する回動軸22、回動軸22を支点に上下方向に揺動可能な支持部材23、支持部材23に回転自在に支持されて送りコンベヤ12の駆動輪16付近の搬送面に対向する押圧ローラ24、及び押圧ローラ24の支持部材23を揺動させる油圧シリンダである押圧シリンダ29を備えている。
【0033】
回動軸22は、破砕機フレーム20に設けた軸受(不図示)に回転自在に支持されている。
【0034】
支持部材23は、回動軸22に支持されたアーム部25、及びアーム部25の先端側に連結された押圧ローラ取り付け用のブラケット部26を備えている。アーム部25の下面における押圧ローラ24の前方側の部分は弧状に凹んだ形状をしていて、この弧状の部分に押圧ローラ24の外周面に対向するように、破砕室27の壁面の一部をなす上記の湾曲板28が取付けられている。
【0035】
押圧シリンダ29は、被破砕物の硬度測定(後述)の際に送りコンベヤ12上の被破砕物に押圧ローラ24を押し付けたり、メンテナンス等の際に支持部材23を上方に回動させて破砕室27を開いたりするもので、アーム部25の前端部近傍の上方位置に設けたビームを介して破砕機フレーム20に固定されたブラケット30にボトム側端部が、アーム部25の上面後端部に設けたブラケット32にロッド側端部がそれぞれ回動可能に連結されている。
【0036】
押圧ローラ24は、その軸方向(図3中の紙面直交方向)の寸法が送りコンベヤ12の搬送面の幅と概ね同じ程度、若しくはそれよりも若干大きい程度に設定されている。この押圧ローラ24は駆動装置(不図示)を内部に収容していて、この駆動装置によって送りコンベア12により搬送される被破砕物に転動する方向(図3では反時計回り)に、送りコンベヤ12の搬送速度に同調した周速度で回転駆動する。
【0037】
図4は本実施形態の破砕機の駆動システムの要部、具体的には被破砕物の供給装置すなわち送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14、破砕装置13及び排出コンベヤ3の駆動系統を抜き出して表した回路図である。
【0038】
図4に示したように、本実施形態の破砕機に備わった駆動システムは、タンク(不図示)に貯留された作動油を吸い上げて吐出する少なくとも1つの油圧ポンプ(不図示)、油圧ポンプからの作動油の流れ(方向及び流量)を制御する制御弁61−64、制御弁61−64を介して供給される作動油で駆動する油圧駆動装置52,65−67、及び当該駆動システムを制御する制御装置70を備えている。
【0039】
油圧駆動装置52,65−67は、それぞれ油圧モータであり、排出コンベヤ3の駆動輪を回転駆動させる上記の駆動装置52(以下、排出コンベヤモータ52)、押圧ローラ24を回転駆動させる押圧ローラモータ65、破砕ロータ15を回転駆動させる破砕ロータモータ66、送りコンベヤ12の駆動輪16を回転駆動させる送りコンベヤモータ67である。本実施形態では、破砕ロータモータ66に接続する作動油管路にも圧力センサ73が設けられている。
【0040】
制御弁61−64は、例えば電磁比例駆動方式の油圧パイロット3位置切換弁であり、油圧ポンプから吐出される作動油の流れ(方向及び流量)を制御し、それぞれ排出コンベヤモータ52、押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66、送りコンベヤモータ67に供給する役割を果たす。なお、電磁油圧パイロット方式でなく、電磁切換方式の電動の制御弁、油圧で切換及び駆動する方式の制御弁で代替できる場合は、それらを制御弁61−64に用いることもできる。
【0041】
制御装置70は、圧力センサ73の検出信号を入力し、この入力信号に応じて制御弁61−64等に指令信号を出力し、排出コンベヤモータ52、押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66、送りコンベヤモータ67等の駆動装置を制御する機能を一機能として有する。なお、制御装置70には、センサ73からの検出信号の他、上記の操作レバー57や操作盤58等の各操作手段からの操作信号も入力される。こうした操作手段の一つとして、図4には、後述する被破砕物の供給速度の設定値の自動更新機能を入り切りする操作手段74を図示した。
【0042】
図5は制御装置70の要部を抜き出して表した機能ブロック図である。
【0043】
制御装置70は、入力部75、負荷演算部76、記憶部80、タイマ81、駆動指令部82、設定更新部84、及び出力部86を備えている。
【0044】
入力部75は、上記の圧力センサ73からの検出信号や操作手段74等の操作手段からの操作信号(アナログ信号)等を入力しデジタル信号に変換する機能を果たす。
【0045】
負荷演算部76は、圧力センサ73により検出された破砕ロータモータ66の作動油管路の圧力を基に破砕ロータモータ66の負荷(破砕負荷P)を演算する演算処理部であり、圧力センサ73とともに、破砕負荷Pを測定する破砕負荷測定手段として機能する。負荷演算部76の演算結果は、記憶部80に出力されて記憶部80に記憶される。
【0046】
駆動指令部82は、負荷演算部76で演算された破砕負荷Pに応じて、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の制御弁62,64の指令駆動速度Scを設定更新部84で設定された設定駆動速度Ss(後述)又は待機速度Sw(後述)のいずれかに切り換える、或いは押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67を停止させる機能を果たす。例えば、負荷演算部76で演算された破砕負荷Pが待機判定値Pw(後述)を超えたら破砕装置13が過負荷状態にあると判断し、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の制御弁62,64に指令して、送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14による破砕装置13への被破砕物の供給動作を設定駆動速度Ssから待機速度Swに減速させる。待機速度Swは、予め決めておいた破砕運転中の被破砕物の最低速度(ゼロより大)でも良いし、ゼロでも良い。要するに、待機速度Swへの減速は、通常速度に比して緩やかな速度に減じる動作の他、供給を停止(中断)する動作を含む。被破砕物の供給動作を中断する場合、駆動指令部82は、押圧ローラ装置14の押圧ローラ24及び送りコンベヤ12を短時間(設定)だけ逆転駆動させて被破砕物を破砕装置から抜き出した上で停止させるようにしても良い。また、待機速度Swでの運転が一定時間(設定値)継続した場合、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67を停止させる。待機速度Swがゼロの場合(過負荷時に供給中断する場合)は、見かけ上、待機速度Swのときから停止していることになる。一方、駆動指令部82は、供給速度を待機速度Swとしている間に破砕負荷Pが復帰判定値Pr(後述)以下になったら、その時点で押圧ローラ装置14の押圧ローラ24及び送りコンベヤ12を設定更新部84で設定された設定駆動速度Ssで正転駆動させて通常の破砕動作を再開させる。
【0047】
設定更新部84は、記憶部80に記憶した制御しきい値(後述)と負荷演算部76で演算された破砕負荷Pを比較して押圧ローラ装置14及び送りコンベヤ12による被破砕物の供給速度の設定値、すなわち押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の上記設定駆動速度Ssを更新(再設定)する機能を果たし、更新後の設定駆動速度Ssは記憶部80に記憶される。
【0048】
ここで、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の「設定駆動速度Ss」とは、あくまで設定値であって両モータ65,67の指令駆動速度Scとは区別される。「指令駆動速度Sc」は駆動指令部82によって制御弁62,64に出力される指令信号であり、設定更新部84で設定された設定駆動速度Ssで両モータ65,67を駆動させるか否かは駆動指令部82の判断による。例えば、駆動指令部82の指令により設定駆動速度Ssに従って両モータ65,67が駆動している最中に設定更新部84による設定駆動速度Ssの変更があったら、駆動指令部82は、設定駆動速度Ssの増減に伴って両モータ65,67の指令駆動速度Scを増減させる。それに対し、駆動指令部82の指令により設定駆動速度Ssが待機速度Swになっているときは、設定更新部84による設定駆動速度Ssの変更があってもその変更が直ちに実際の供給速度に反映される訳ではなく、両モータ65,67は待機速度Swで駆動し続ける。そして、駆動指令部82の指令により両モータ65,67の指令駆動速度Scが待機速度Swから設定駆動速度Ssに復帰する場合、その際には指令駆動速度Scは待機直前の設定駆動速度Ssではなく待機中に更新された更新後の設定駆動速度Ssにジャンプする。
【0049】
記憶部80は、負荷演算部76で演算された破砕負荷に対するしきい値を含む被破砕物の供給速度の制御に用いる種々の制御値や、負荷演算部76や設定更新部84の演算や判定、更新の結果、その他、搭載した各機器の制御に必要な定数、プログラム等を記憶している。被破砕物の供給速度に用いる制御値としては、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の設定駆動速度Ssの上げ判定用の上げ判定値Pu、設定駆動速度Ssの下げ判定用の下げ判定値Pd、設定駆動速度Ssの上げ判定用の上げ判定時間Tu、設定駆動速度Ssの下げ判定用の下げ判定時間Td、設定駆動速度Ssの設定上げ幅Wu及び設定下げ幅Wd、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の待機速度Sw、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の指令駆動速度Scを待機速度Swに移行すべきか否かの判定用の待機判定値Pw、及び両モータ65,67の指令駆動速度Scを待機速度Swから設定駆動速度Ssへ復帰させるか否かの判定用の復帰判定値Pr、破砕運転停止判定用の停止判定時間Ts等が記憶部80に記憶されている。
【0050】
ここで、「上げ判定値Pu」は、これによりも破砕負荷Pが低い場合には現在の設定駆動速度Ssでは破砕装置13の作業状態に対して被破砕物の供給量が少ないと判断できる値であり、「下げ判定値Pd」は、これによりも破砕負荷Pが高い場合には現在の設定駆動速度Ssでは破砕装置13の作業状態に対して被破砕物の供給量が多いと判断できる値である。「上げ判定時間Tu」及び「下げ判定時間Td」とは、破砕負荷Pが上げ判定値Puに満たない状態、下げ判定値Pdを超えた状態の各継続時間と比較して設定駆動速度Ssを変更すべきか否かを判定するための設定時間である。また、「待機速度Sw」とは、破砕能力に対して十分に余裕のある被破砕物の供給速度(ゼロを含む)であり、異常がない場合にはこの速度で被破砕物を供給すれば破砕負荷Pが減少する速度である。「待機判定値Pw」とは、破砕負荷Pがこれ以上であれば破砕装置13が過負荷状態であると判断できる値であり、「復帰判定値Pr」とは、被破砕物の供給動作が大気中に破砕負荷Pがこれ以下に落ち着けば破砕装置13が過負荷状態を脱したと判断できる値である。「停止判定時間Ts」とは、指令駆動速度Scが待機速度Swから設定駆動速度Ssに復帰しないままこの時間が経過したら異常により破砕運転を停止すべきと判定できる設定時間である。
【0051】
出力部86は、駆動指令部82等からの指令値(デジタル信号)を基に、排出コンベヤモータ52、押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66、送りコンベヤモータ67の各制御弁61−64等に指令信号(アナログ信号)を出力する役割を果たす。
【0052】
次に上記構成の本実施形態の破砕機の動作を説明する。
【0053】
まず、本実施形態に係る破砕機の基本動作すなわち破砕動作を説明する。
【0054】
(1)基本動作
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によってホッパ11内に被破砕物を投入すると、被破砕物が送りコンベヤ12の搬送ベルト17に載って破砕装置13に向かって搬送される。被破砕物が破砕装置13の手前のところに差し掛かると、同図に示したように押圧ローラ装置14の押圧ローラ24が被破砕物上に乗り上げ、その後、押圧ローラ24の自重によって送りコンベヤ12の搬送面に被破砕物が押し付けられる。押圧ローラ24は送りコンベヤ12の搬送速度に同調して自転しており、被破砕物は搬送ベルト17と押圧ローラ24に挟持され、送りコンベヤ12と押圧ローラ装置14の協働によって破砕室27へ押し込まれる。破砕室27に送り込まれた被破砕物は、押圧ローラ24と搬送ベルト17とで挟持された部分を支点に片持ち梁状に破砕ロータ15に向かって突出する。図6に矢印で示したように、破砕ロータ15は被破砕物に対して破砕ビット36が下から衝突する向き(同図中時計回り)に回転するので、破砕反力が主に押圧ローラ24によって受けられる構成である。
【0055】
破砕ロータ15に向かって押し込まれる被破砕物は、押圧ローラ24によって上方から押さえられつつ、下方から高速で衝突してくる破砕ロータ15の破砕ビット36によって先端から徐々に粗破砕(1次破砕)されていく。このように1次破砕されて破砕室27内で跳ね上げられた被破片はアンビル34に衝突し、その衝撃力によりさらに細かく破砕(2次破砕)される。2次破砕された破砕片のうち既にスクリーンを通過する程度に小さいものはスクリーン(不図示)を通過して排出され、通過しない比較的大きなものは破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回し、アンビル34や破砕ビット36、スクリーン等の破砕室27の内壁面等との衝突作用や剪断作用、すり潰し作用等を受けてさらに破砕(3次破砕)される。そして、周回する破砕片のうち3次破砕を経てスクリーンの目を通過する大きさに細粒化されたものから順次スクリーンを通過して破砕装置13から排出される。破砕装置13から排出された破砕物は、シュート(不図示)を介して排出コンベヤ3上に落下し、排出コンベヤ3によって機外に搬出される。
【0056】
続いて、破砕運転中の被破砕物の供給中断の動作、及び被破砕物の設定供給速度の更新動作について説明する。
【0057】
図6は駆動指令部82による破砕運転中の被破砕物の供給中断の動作の制御手順を表したフローチャート、図7は設定更新部84による破砕運転中の被破砕物の設定供給速度更新の動作の制御手順を表したフローチャート、図8は破砕負荷と被破砕物の供給速度の設定値及び指令値との関係を表したタイムチャートの一例である。図8の縦軸(左側)は破砕負荷P、縦軸(右側)は被破砕物の供給速度(すなわち押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の駆動速度)の設定値Ss/指令値Sc、横軸は時間である。なお、図8では上げ判定時間Tuと下げ判定時間TdについてTu>Tdの場合を図示しているが、両者の大小関係は限定されず、同値でも良い。設定上げ幅Wu及び設定下げ幅Wdについても同様である。また、復帰判定値Pr,上げ判定値Pu,待機判定値Pw,下げ判定値PdについてPr<Pu<Pw<Pdの場合を図示しているが、被破砕物の供給中断動作に関わる判定値Pr,Pwと供給速度の設定更新動作に関わる判定値Pu,Pdとの間の大小関係は必ずしも規定されない。但し、復帰判定値Prは待機判定値Pwよりも低く、上げ判定値Puは下げ判定値Pdよりも低くなければならない。
【0058】
まず図6及び図8を用いて被破砕物の供給中断の動作について説明する。被破砕物の供給中断の動作は、言い換えれば押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の指令駆動速度Scの制御に等しい。
【0059】
(2)被破砕物の供給中断の動作
破砕運転(上記基本動作)が開始されたら(図8では時刻t0)、制御装置70は、駆動指令部82による被破砕物の供給中断の動作の制御手順(図6)の実行を開始する。運転開始後、破砕装置13に被破砕物が供給され始めると破砕負荷Pが上昇し始める(図8では時刻t1)。
【0060】
(ステップ101)
ステップ101では、負荷演算部76で演算された破砕負荷Pが待機判定値Pw以上かどうかを判定する。破砕負荷Pが待機判定値Pwよりも小さい場合には図6のフローを終了する。駆動指令部82は、破砕運転中、図6のフローを繰り返し実行するので、破砕負荷Pが待機判定値Pwに達しない間、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67は設定駆動速度Ssで駆動し続ける(図8では時刻t0−t3,t7−t9,t13−t15,t17−t20)。
【0061】
一方、破砕負荷Pが待機判定値Pwに到達したら、駆動指令部82は手順をステップ102に移す。
【0062】
(ステップ102)
ステップ102において、駆動指令部82は、指令駆動速度Scを設定駆動速度Ssから待機駆動速度Sw(<設定駆動速度Ss)に移行させ、減速又は停止(本実施形態では減速)させる。
【0063】
(ステップ103−106)
続くステップ103では、破砕負荷Pが復帰判定値Pr(<待機判定値Pw)まで下がったかどうかを判定する。破砕負荷Pが復帰判定値P以下であれば、破砕装置13の稼動状態が過負荷を脱しているものと判定し、駆動指令部82はステップ104に手順を移し、指令駆動速度Scを待機駆動速度Swから設定駆動速度Ssに戻し、通常の破砕運転に復帰させて図6のフローを終了する(図8では時刻t3−t7,t9−t13,t15−t17等)。
【0064】
一方、ステップ103の実行時に破砕負荷Pが復帰判定値Prよりも大きい場合、駆動指令部82は指令駆動速度Scを設定駆動速度Ssに保ったまま手順をステップ105に移し、タイマ81の時間計測を基に待機運転の継続時間が停止判定時間Ts(図8では図示せず)を超えたかどうかを判定する。まだ停止判定時間Ts経過前であれば、駆動指令部82は手順をステップ103に戻す。したがって、停止判定時間Ts経過前に破砕負荷Pが復帰判定値Prまで低下すれば、ステップ103,104を経て通常の破砕運転に復帰する。
【0065】
仮にステップ105の実行時点で、指令駆動速度Scを待機速度Swに移行してから破砕負荷Pが復帰判定値Prまで低下することなく停止判定時間Tsが経過したら、駆動指令部82は手順をステップ106に移して被破砕物の供給装置12,14、破砕装置13及び排出コンベヤ3を順次停止させた上で、図6のフローを終了する。この場合、破砕運転が停止するので、図6のフローの繰り返しもここで終了する。
【0066】
(3)設定駆動速度Ssの更新動作
破砕運転(上記基本動作)が開始されたら(図8では時刻t0)、制御装置70は、駆動指令部82による図6の制御と並行して、設定更新部84による被破砕物の供給装置12,13の設定駆動速度Ssの更新手順(図7)の実行を開始する。なお、運転開始時点では、設定駆動速度Ssは最小速度Sminに設定されていることとする。「最小速度Smin」とは、破砕過負が過大になったときの供給動作の待機運転(待機速度Swでの運転)を除く通常の破砕運転時の被破砕物の供給速度として想定された速度範囲の最小値であり、当該速度範囲の最大値が図6中の「最大速度Smax」である。したがって、設定更新部84による設定駆動速度Ssの設定は、最小速度Sminから最大速度Smaxまでの範囲内で変動し得る。図8では最小速度Sminを最大速度Smaxの半分程度とした場合を例示しているが、最大速度Smaxに対する最小速度Sminの割合は特に限定されない。
【0067】
設定更新部84による設定駆動速度Ssの更新(変更)は、破砕負荷Pが上げ判定値Pu−下げ判定値Pdの範囲にない場合(図8では網掛け部分の時間)に次のようにしてなされる。
【0068】
なお、図7では判断を図示省略しているが、同図に示す設定駆動速度Ssの自動更新の制御は、操作手段74により自動更新機能が「入り」に設定されていることが前提であり、操作手段74で自動更新機能が「切り」に設定されている場合には、設定駆動速度Ssはオペレータが手動で変更しない限り変化しない。
【0069】
(ステップ201−203)設定駆動速度Ssの増速更新
設定更新部84は、まずステップ201において、破砕負荷Pが上げ判定値Puよりも低いかどうかを判定する。破砕負荷Pが上げ判定値Puよりも低い場合には手順をステップ202に移し、ステップ201でP<Puと判定されてからの経過時間が上げ判定時間Tuを経過したかどうかをタイマ81の時間計測を基に判定する。破砕負荷Pが上げ判定値Puより低い状態が上げ判定時間Tuに満たない場合、設定更新手段84はそのまま図7の手順を一旦終了する。図7の手順を繰り返すうちに、上げ判定時間Tu経過前に破砕負荷Pが上げ判定値Pu以上に上昇した場合には、設定駆動速度Ssは更新されず維持される(図8では時刻t2,t8,t14,t18)。
【0070】
一方、ステップ202において、破砕負荷Pが上げ判定値Puより低い状態が上げ判定時間Tu継続していたら、設定更新手段84は、破砕能力にまだ余裕があると判断し、ステップ203で設定駆動速度Ssを設定上げ幅Wuだけ上げて図7の手順を終了する(図8では時刻t0−t2,t6−t8,t12−t14,t16−t18)。従って、破砕負荷Pが上げ判定値Puに達しない間は、図7のフローを繰り返し実行するうちに設定駆動速度Ssが設定上げ幅Wuずつステップ状に上がっていく(図8では時刻t0−t2)。
【0071】
なお、設定駆動速度Ssが上がった際に指令駆動速度Scが設定駆動速度Ssであれば、設定駆動速度Ssに従って指令駆動速度Scが上がるので、設定更新時点で実際の供給速度が上昇する。指令駆動速度Scが待機速度Swであれば、設定更新時点では、設定駆動速度Ssが更新されるのみで実際の供給速度は変化しない。
【0072】
上記ステップ201の実行時において、破砕負荷Pが上げ判定値Pu以上の場合には、設定更新部84は手順をステップ204に移す。
【0073】
(ステップ204−206)設定駆動速度Ssの減速更新
設定更新部84は、ステップ204において、破砕負荷Pが下げ判定値Pd(>Pu)よりも高いかどうかを判定する。破砕負荷Pが下げ判定値Pdよりも高い場合には手順をステップ205に移し、ステップ204でP>Pdと判定されてからの経過時間が下げ判定時間Tdを経過したかどうかをタイマ81の時間計測を基に判定する。破砕負荷Pが下げ判定値Pdを超えた状態が下げ判定時間Tdに満たない場合、設定更新手段84はそのまま図7の手順を一旦終了する。図7の手順を繰り返すうちに、下げ判定時間Td経過前に破砕負荷Pが下げ判定値Pd以下に低下した場合には、設定駆動速度Ssは更新されず維持される(図8では時刻t5,t11)。
【0074】
一方、ステップ205において、破砕負荷Pが下げ判定値Pdを超えた状態が下げ判定時間Td継続していたら、設定更新手段84は、破砕能力に余裕がないと判断し、ステップ206で設定駆動速度Ssを設定下げ幅Wdだけ下げて図7の手順を終了する(図8では時刻t10−t11)。従って、仮に破砕負荷Pが下げ判定値Pdに達しない間は、図7のフローを繰り返し実行するうちに設定駆動速度Ssが設定下げ幅Wdずつステップ状に下がることになる。
【0075】
上記の増速更新時と同様、設定駆動速度Ssが下がった際に指令駆動速度Scが設定駆動速度Ssであれば、設定駆動速度Ssに従って指令駆動速度Scが下がるので、設定更新時点で実際の供給速度が下降する。指令駆動速度Scが待機速度Swであれば、設定更新時点では、設定駆動速度Ssが更新されるのみで実際の供給速度は変化しない。
【0076】
なお、前述した通り、設定駆動速度Ssは速度範囲Smin−Smaxの範囲で更新されるため、設定駆動速度Ssと最大速度Smax又は最小速度Sminとの差がそれぞれ設定上げ幅Wu又は設定下げ幅Wdに満たない状況(更新後すると設定駆動速度Ssが速度範囲Smin−Smaxから外れる場合)においては、図7のステップ202,205の判定が満たされたとき、設定駆動速度Ssを最大速度Smax又は最小速度Sminに更新する(可能な範囲で加減速する)、或いは更新せずにそのままの設定駆動速度Ssを維持することとする。
【0077】
本実施形態の破砕機による作用効果を説明する。
【0078】
本実施形態によれば、被破砕物の供給速度の破砕能力に対する余裕を破砕負荷Pによって判定することができるので、被破砕物の性状や大きさ、投入量に対して現在の被破砕物の設定供給速度が低過ぎるような場合には図7のステップ202,203の処理を実行して設定駆動速度Ssを上げることができ、また現在の設定供給速度が高過ぎるような場合には図7のステップ205,206の処理を実行して設定駆動速度Ssを下げることができる。
【0079】
すなわち、破砕運転中に被破砕物の性状(硬さ、含水率、材質(繊維の量等))や大きさ、供給装置への被破砕物の投入量(投入ムラ)等によって被破砕物の供給速度の適正値が変動しても、それに追従して設定駆動速度Ssが好適値に更新されるので、破砕能力に対して被破砕物の供給速度が過剰に低い状態又は余裕がなさ過ぎて直ぐに供給が中断されてしまうような状態で運転が継続する事態を回避することができる。また、設定駆動速度Ssは破砕運転中に自動的に補正されていくので、オペレータの初期設定が適正値から大きく外れていても、その後適正値に近付いていく。したがって、破砕能力に見合った量の被破砕物を供給することができるので、ロスを抑えて破砕装置15の能力を効果的に発揮させることができる。
【0080】
また、従来は被破砕物の処理量に対して破砕能力が過剰に高い破砕装置を導入しておいて、被破砕物の性状変化等による破砕負荷の変更を吸収するために余裕を見過ぎた供給速度設定をするようなこともあったが、本実施形態の場合、破砕装置13の破砕能力を効率良く発揮させられるので、過度な設備導入を抑制し、ひいてはエネルギー(燃料、電力等)の消費量や、設備コスト、エネルギーコストを抑えることができる。
【0081】
また、操作手段74で設定駆動速度Ssの自動更新機能を入り切りすることができるので、処理量の変化を抑えたい場合等、被破砕物を一定の速度で供給したいときには自動更新機能を切ることもできる。
【0082】
なお、以上の実施形態において、破砕ロータモータ66の負荷圧力を基に破砕負荷Pを測定する構成としたが、例えば破砕ロータモータ66の回転数を検出する回転数センサを設置し、破砕ロータモータ66の回転数を基に破砕負荷を測定し、例えば回転数が高いときは低負荷、回転数が低いときは高負荷と判定する構成とすることもできる。また、破砕装置13や押圧ローラ装置14等の各作動機器を油圧駆動式としたが、電動にすることもできる。破砕ロータモータ66として電動モータを用いる場合、例えば破砕ロータモータ66の負荷電流を基に過負荷を測定し、負荷電流が高いときには高負荷、負荷電流が低い場合には低負荷と判断することができる。さらには、破砕ロータ15をエンジンの出力軸に連結して破砕装置13をエンジン駆動とした場合には、エンジン負荷率を基に破砕負荷を測定し、エンジン負荷率が高いときに高負荷、エンジン負荷率が低いときに低負荷と判断することができる。これらの場合も、前述した実施形態と同様に図6及び図7に示した動作手順を実行することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、制御弁62,64で作動油の流れを制御して被破砕物の供給速度を変化させる構成としたが、可変容量型の油圧ポンプを用い、油圧ポンプによる吐出流量を制御してモータ65,67の駆動速度を調整することで被破砕物の供給速度を変化させる構成とすることもできる。また、モータ65,67として電動モータを用いる場合、モータ65,67をインバータで駆動する構成とすることで、被破砕物の供給速度を変動させることができる。
【0084】
また、上げ判定値Pu、下げ判定値Pd、上げ判定時間Tu、下げ判定時間Td、設定上げ幅Wu、設定下げ幅Wd、待機判定値Pw、復帰判定値Pr、最大速度Smax、最小速度Smin、待機速度Sw、停止判定時間Tsは、テーブルとして記憶部80に記憶させることができるが、各制御値の組み合わせは設定変更できるようにすることもできるし、各制御値の設定の異なるテーブルを複数記憶部80に記憶しておいて状況に見合ったテーブルを選択できるようにすることもできる。
【0085】
また、ホッパ(処理物の受け入れ側)と反対側に排出コンベヤを設けた自走形式の破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、ホッパと同じ側に排出コンベヤを設けた構成の自走式破砕機にも本発明は適用可能である。また、走行手段として無限軌道履帯を有するクローラ式の自走式破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、走行手段としてタイヤを有するホイール式の自走式破砕機にも本発明は適用可能である。これらの場合も、同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、ビット付きのロータ及び反発板で木材等の被処理物を破砕する破砕装置(木材破砕装置)を備えた自走式破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、他の破砕装置、例えば、せん断式破砕装置(シュレッダ)、破砕刃を有する一対のロール状の回転体の間に岩石等の被処理物を挟み込んで破砕を行う回転式破砕装置(ロールクラッシャ等)、揺動する動歯と固定歯との間に岩石等の被処理物を供給して破砕する破砕装置(ジョークラッシャ)、又は複数個の刃物を備えた打撃板による打撃と反発板への衝突によって岩石等の被処理物を破砕する破砕装置(インパクトクラッシャ)にも本発明は適用可能である。これらの場合も同様の効果を得ることができる。
【0087】
さらに、本発明を自力走行可能な破砕機に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引走行可能な移動式破砕機、若しくはクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式破砕機にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
12 送りコンベヤ(供給装置)
13 破砕装置
14 押圧ローラ装置(供給装置)
61−64 制御弁
73 圧力センサ(負荷測定手段)
76 負荷演算部(負荷測定手段)
80 記憶部
82 駆動指令部(駆動指令手段)
84 設定更新部(設定更新手段)
P 破砕負荷(破砕装置の負荷)
Pd 下げ判定値(制御値、制御しきい値)
Pr 復帰判定値(制御値、制御しきい値)
Pu 上げ判定値(制御値、制御しきい値)
Pw 待機判定値(制御値、制御しきい値)
Smax 最大速度(制御値)
Smin 最小速度(制御値)
Ss 設定駆動速度
Sw 待機速度(制御値)
Td 下げ判定時間(制御値)
Ts 停止判定時間(制御値)
Tu 上げ判定時間(制御値)
Wd 設定下げ幅(制御値)
Wu 設定上げ幅(制御値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物を破砕する破砕装置と、
この破砕装置に被破砕物を供給する供給装置と、
前記破砕装置の負荷を測定する負荷測定手段と、
この負荷測定手段の測定結果に対するしきい値を含む制御値を記憶した記憶部と、
この記憶部に記憶した前記制御しきい値と前記負荷測定手段の測定結果を比較して前記供給装置の設定駆動速度を更新する設定更新手段と、
この設定更新手段により更新された設定駆動速度で前記供給装置を駆動する駆動指令手段とを備え、
前記記憶部は、前記制御値として、前記供給装置の設定駆動速度の上げ判定用の上げ判定値、前記設定駆動速度の下げ判定用の下げ判定値、前記設定駆動速度の上げ判定用の上げ判定時間、前記設定駆動速度の下げ判定用の下げ判定時間、及び前記設定駆動速度の設定上げ幅及び設定下げ幅を記憶しており、
前記設定更新手段は、前記負荷測定手段の測定結果が、前記上げ判定値以下の状態が前記上げ判定時間継続したら前記供給装置の設定駆動速度を前記設定上げ幅だけ上げ、前記下げ判定値以上の状態が前記下げ判定時間継続したら前記供給装置の設定駆動速度を前記設定下げ幅だけ下げる
ことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記記憶部は、前記制御値として、前記供給装置の待機速度と、前記供給装置を前記待機速度に移行すべきか否かの判定用の待機判定値、及び当該待機速度から設定速度への復帰判定用の復帰判定値をさらに記憶しており、
前記駆動指令手段は、前記負荷測定手段の測定結果が前記待機判定値を超えたら前記供給装置を前記待機速度で駆動し、その後前記復帰判定値以下になった時点で前記供給装置を前記設定更新手段により更新された設定駆動速度で駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記負荷測定手段は、前記破砕装置を駆動する作動油の圧力を検出する圧力センサ、及びこの圧力センサの検出値を基に前記破砕装置の負荷を演算する演算手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の破砕機。
【請求項4】
前記駆動指令手段は、前記供給装置への作動油の流れを制御する制御弁に指令信号を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96138(P2012−96138A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244003(P2010−244003)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】