説明

破砕機

【課題】利便性及び安全性を維持しつつ破砕動作時のエネルギー効率を向上させることができる破砕機を提供する。
【解決手段】被破砕物を破砕する破砕装置13と、この破砕装置13の破砕ロータ32を駆動するための破砕装置用油圧モータ37と、この破砕装置用油圧モータ37に圧油を供給する油圧ポンプ52,53と、油圧ポンプ52,53を駆動するエンジン54と、このエンジン54及び破砕装置用油圧モータ37のいずれかを動力源として破砕装置13の破砕ロータ32に選択的に接続するクラッチ装置55とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被破砕物を破砕する破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
破砕機は、供給装置で被破砕物を破砕装置に供給し、破砕装置によって被破砕物を破砕処理するものである。この種の破砕機では、エンジンで駆動される油圧ポンプからの圧油によって油圧モータを駆動し、油圧モータの回転動力で破砕装置を駆動するものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧モータで破砕装置を駆動する場合、例えば圧油の供給方向を制御弁で切り換えることで破砕装置を正転駆動のみならず逆転駆動させることができ、メンテナンス等の面で利便性が高い。また、緊急の際等にも、油圧モータの油圧ブレーキによって破砕装置を素早く停止させるができ、安全面でも信頼性が高い。
【0005】
しかしその一方で、エンジンで油圧ポンプを駆動して圧油で破砕装置を駆動する構成であるため、エンジン動力を圧油のエネルギーに変換する分だけ原動機であるエンジンから油圧モータへの動力伝達率が低下する憾みがある。この点において、油圧モータで破砕装置を駆動する構成には、燃料消費に対する仕事率にまだ改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、利便性及び安全性を維持しつつ破砕動作時のエネルギー効率を向上させることができる破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被破砕物を破砕する破砕装置と、この破砕装置の駆動体を駆動するための破砕装置用油圧モータと、この破砕装置用油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動するエンジンと、このエンジン及び前記破砕装置用油圧モータのいずれかを動力源として前記破砕装置の駆動体に選択的に接続するクラッチ装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記破砕装置の駆動体の回転数を検出する破砕装置回転センサと、前記油圧モータの回転数を検出する油圧モータ回転センサと、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転センサと、これら破砕装置回転センサ、油圧モータ回転センサ及びエンジン回転センサの検出信号を基に前記クラッチ装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記破砕装置の駆動体の動力源を前記破砕装置用油圧モータから前記エンジンに切り換える際、前記破砕装置回転センサで検出された前記駆動体の回転数と前記エンジン回転センサで検出された前記エンジンの回転数との偏差が予め設定したエンジン接続判定用のしきい値を下回ったら、前記駆動体から前記破砕装置用油圧モータを切り離すとともに前記駆動体に前記エンジンを接続し、前記破砕装置の駆動体の動力源を前記エンジンから前記破砕装置用油圧モータに切り換える際には、前記破砕装置回転センサで検出された前記駆動体の回転数と前記油圧モータ回転センサで検出された前記油圧モータの回転数との偏差が予め設定したモータ接続判定用のしきい値を下回ったら、前記駆動体から前記エンジンを切り離すとともに前記駆動体に前記破砕装置用油圧モータを接続する制御を行うことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記制御装置は、前記破砕装置の起動時及び停止時には、前記破砕装置の駆動体を前記破砕装置用油圧モータに接続し、前記破砕装置で被破砕物を破砕処理する破砕運転時には、前記破砕装置の駆動体を前記エンジンに接続する制御を行うことを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、前記破砕装置に被破砕物を供給する供給装置と、この供給装置を駆動するための供給装置用油圧モータと、この供給装置用油圧モータ及び前記破砕装置用油圧モータの回路のいずれかに前記油圧ポンプの吐出管路を選択的に接続する駆動切換用制御弁と、前記供給装置用油圧モータへの圧油を制御する供給動作用制御弁とを備え、前記制御装置は、前記破砕運転を開始する際、前記駆動切換用制御弁に指令して前記油圧ポンプの圧油の供給先を前記供給装置用油圧モータに切り換え、前記エンジンの回転数が予め設定した破砕運転判定用のしきい値に達したら前記供給動作用制御弁を開放して前記供給装置用油圧モータを駆動する制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、油圧駆動による利便性及び安全性を維持しつつ破砕動作時のエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた破砕機本体部の要部の内部構造を表した透視側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る破砕機の駆動システムの要部を抜き出して表した回路図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る破砕機の起動時及び停止時のエンジン、破砕装置用油圧モータ及び破砕装置の回転数を表したタイムチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた制御装置による起動制御の手順を表したフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた制御装置による停止制御の手順を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図である。本願明細書において図1中の右左を破砕機の前後とする。
【0015】
図1に例示した破砕機は、例えば森林で発生する剪定枝材や間伐材、建築物の解体に伴って発生する廃木材等の木材その他を被破砕物として破砕処理する機械である。この破砕機は、機体を自力走行させるための走行体1、被破砕物を受け入れて破砕処理する破砕機本体部2、破砕機本体部2で破砕処理された破砕物を機外に搬出する排出コンベヤ3、及び搭載した各機器の動力源であるエンジン等を有する動力装置(パワーユニット)4等を備えている。
【0016】
走行体1は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7、駆動輪6の軸に出力軸を連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8、並びに駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9を有している。トラックフレーム5上には前後に延在する本体フレーム10が設けられており、この本体フレーム10によって、破砕機本体部2等が支持されている。
【0017】
破砕機本体部2は、被破砕物を破砕する破砕装置13(後述の図2参照)、投入された被破砕物を受け入れるホッパ11、このホッパ11でガイドされた被破砕物を受け止めて搬送する送りコンベヤ12、及び送りコンベア12とともに被破砕物を破砕装置13に供給する供給装置を構成する押圧ローラ装置14を備えている。破砕機本体部2の構成については後述する。
【0018】
排出コンベヤ3は、コンベヤフレーム15、このコンベヤフレーム15の前後両端に設けた駆動輪及び従動輪(不図示)、駆動輪と従動輪との間に掛け回したコンベヤベルト18、駆動輪を回転駆動してコンベヤベルト18を循環駆動させる排出コンベヤ用油圧モータ(不図示)等を有している。コンベヤフレーム15は、下流側(前側)の部分が上流側(後側)の部分に対して回動可能に連結されており、下流側の部分と上流側の部分は油圧シリンダ20によって連結されている。油圧シリンダ20の伸縮に伴って、コンベヤフレーム15の下流側の部分が上流側の部分に対して上下方向に回動し、図1に示した作業姿勢から折り畳み可能に構成されている。コンベヤフレーム15は、上流側の部分が複数の支持部材21,22等を介して動力装置4に支持されていて、破砕装置3の下方付近から前方に上り傾斜に真っ直ぐ延在している。
【0019】
動力装置4は、図3で後述するエンジンや油圧ポンプ等の動力を収容したユニットであり、破砕機能構成部2の前部に設けられている。この動力装置4の側部(本実施形態では右側)には、地面に立って作業者が操作できる位置に操作盤25が設けられている。
【0020】
図2は破砕機本体部2の要部の内部構造を表した透視側面図である。
【0021】
上記送りコンベヤ12は、機体幅方向に回転軸を延在させたヘッド側の駆動輪27、同じく機体幅方向に回転軸を延在させたテール側の従動輪(不図示)、及び駆動輪27及び従動輪の間に掛け回した搬送ベルト29を備えており、ホッパ11内において後方から破砕装置13に向かって水平に延在している。駆動輪27は、送りコンベヤ用油圧モータ30(後述の図3参照)の出力軸に連結していて、当該駆動装置で駆動輪27を回転駆動することによって駆動輪27及び従動輪の間で搬送ベルト29が循環駆動する。
【0022】
破砕装置13は、送りコンベア12の前方に位置している。この破砕装置13は、被破砕物の入口として後方が開口した円筒状の破砕室31、破砕室31に収容した駆動体である破砕ロータ32、及び破砕室31の入口部に設けたアンビル(反発板)34を備えている。
【0023】
破砕ロータ32の回転軸は、送りコンベヤ12の駆動輪27の軸と平行に機体幅方向に延在していて、クラッチ装置55(後述する図3参照)を介して破砕装置用油圧モータ37又はエンジン(後述する図3参照)の出力軸に連結可能である。破砕ロータ32は、外周部に複数の破砕ビット36を有している。破砕ビット36は、破砕ロータ32の外周面にビットホルダ35を介して取り付けられていて、その刃面(衝突面)は破砕ロータ32の正転方向(図2中の反時計回り)の前方を向いている。破砕ロータ32は回転体であるため、その最外周部(破砕ビット36)の回転軌跡面と静止体であるアンビル34との間には所定の間隙が確保されている。
【0024】
アンビル34は、フラットバー状の部材であって送りコンベヤ12の前方に位置しており、破砕室31の入口の幅ほぼ一杯に延在している。このアンビル34は、被破砕物が衝突する衝突面を送りコンベヤ12の搬送面とほぼ同じ高さにして、衝突面を上に向けて設置されている。
【0025】
また、破砕室31の壁面のうち、破砕ロータ32の前方に位置する部分はスクリーン38で構成されている。このスクリーン38は、破砕物の目標粒度に応じた大きさの多数の排出孔(不図示)を有し円弧面状に曲成された板状の篩部材であり、破砕室31内でこれら排出孔を通過する大きさに破砕された破砕物がスクリーン38を通過して破砕装置13から排出される。
【0026】
上記押圧ローラ装置14は、破砕室31の上方にて機体幅方向に延在する回動軸40、回動軸40を支点に上下方向に揺動可能なアーム41、及びアーム41の先端に回転自在に支持されて送りコンベヤ12の駆動輪27付近の搬送面に対向する押圧ローラ42を備えている。回動軸40は、破砕機フレーム(不図示)上に設けたブラケット43に連結されている。押圧ローラ42は、押圧ローラ用油圧モータ44(後述の図3参照)を収容していて、この押圧ローラ用油圧モータ44によって、送りコンベア12上により搬送される被破砕物に転動する方向(図2では反時計回り)に、送りコンベヤ12による被破砕物の搬送速度に同調した周速度で回転駆動する。押圧ローラ42の軸方向(左右方向)の寸法は、送りコンベヤ12の搬送面の幅と同じ程度、若しくはそれよりも若干大きい程度に設定されている。
【0027】
図3は本実施形態の破砕機の駆動システムの要部、具体的には被破砕物の供給装置すなわち送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14、並びに破砕装置13の駆動系統を抜き出して表した回路図である。
【0028】
図3に示したように、本実施形態の破砕機に備わった駆動システムは、破砕装置13の駆動体である破砕ロータ32を駆動するための破砕装置用油圧モータ37、破砕装置13に被破砕物を供給する送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14をそれぞれ駆動するための送りコンベヤ用油圧モータ30及び押圧ローラ用油圧モータ44、タンク51に貯留された作動油を吸い上げて吐出する油圧ポンプ52,53、油圧ポンプ52,53を駆動するエンジン54、このエンジン54及び破砕装置用油圧モータ37のいずれかを動力源として破砕ロータ32に選択的に接続するクラッチ装置55、供給装置用の油圧モータ30,44及び破砕装置用油圧モータ37の回路のいずれかに油圧ポンプ52,53の吐出管路56,57を選択的に接続する駆動切換用制御弁58,59、供給装置用の油圧モータ30,44への圧油を制御する供給動作用制御弁60,61、破砕ロータ32の回転数を検出する破砕装置回転センサ62、破砕装置用油圧モータ37の回転数を検出する油圧モータ回転センサ63、エンジン54の回転数を検出するエンジン回転センサ64、及びこれら回転センサ62−64の検出信号を基にエンジン54、クラッチ装置55及び制御弁58−61を制御する制御装置65を備えている。
【0029】
クラッチ装置55は、エンジン54の出力軸に接続したエンジン入力軸55a、破砕装置用油圧モータ37の出力軸に接続したモータ入力軸55b、エンジン入力軸55aにギヤを介して接続したポンプ出力軸55c、破砕ロータ32にVベルトを介して接続したロータ出力軸55d、ロータ出力軸55dにギヤを介して接続したアイドル軸55e、ロータ出力軸55dとエンジン入力軸55aとを接続/遮断するエンジンクラッチ55f、及びアイドル軸55eとモータ入力軸55bとを接続/遮断するモータクラッチ55gを備えている。
【0030】
エンジン54の回転動力は油圧ポンプ52,53にはエンジン入力軸55a及びポンプ出力軸55cを介して常時油圧ポンプ52,53に伝達される一方、エンジンクラッチ55fを接続した場合には、エンジン入力軸55aがロータ出力軸55dに接続され、エンジン動力が破砕ロータ32にも伝達される。エンジンクラッチ55fが遮断された状態では、エンジン入力軸55aがロータ出力軸55dから切り離され、エンジン動力は油圧ポンプ52,53にのみ伝達される。他方、モータクラッチ55gを接続した場合には、モータ入力軸55bがアイドル軸55eに接続され、アイドル軸55eを介して破砕装置用油圧モータ37の回転動力が破砕ロータ32に伝達される。モータクラッチ55gが遮断された状態では、モータ入力軸55bがアイドル軸55eから切り離され、破砕装置用油圧モータ37は無負荷になる。
【0031】
制御弁58−61は、例えば電磁比例駆動方式の油圧パイロット3位置切換弁であるが、電磁油圧パイロット方式でなく、電磁切換方式の電動の制御弁、油圧で切換及び駆動する方式の制御弁で代替できる場合は、それらを制御弁58−61に用いることもできる。
【0032】
次に上記構成の本実施形態の破砕機の動作を説明する。
【0033】
まず、本実施形態に係る破砕機の基本動作すなわち破砕動作を説明する。
【0034】
1.破砕動作
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によってホッパ11内に被破砕物を投入すると、被破砕物が送りコンベヤ12の搬送ベルト29に載って破砕装置13に向かって搬送される。被破砕物が破砕装置13の手前のところに差し掛かると、押圧ローラ装置14の押圧ローラ42が被破砕物上に乗り上げ、その後、押圧ローラ42の自重によって送りコンベヤ12の搬送面に被破砕物が押し付けられる。押圧ローラ42は送りコンベヤ12の搬送速度に同調して自転しており、被破砕物は搬送ベルト29と押圧ローラ42に挟持され、送りコンベヤ12と押圧ローラ装置14との協働によって破砕室31へ押し込まれる。破砕室31に送り込まれた被破砕物は、片持ち梁状に破砕ロータ32に向かって突出する。破砕ロータ32は被破砕物に対して破砕ビット36が上から衝突する向き(図2中反時計回り)に回転するので、破砕反力が主にアンビル34によって受けられる構成である。
【0035】
破砕ロータ32に向かって押し込まれる被破砕物は、上方から高速で衝突してくる破砕ビット36によって先端から徐々に粗破砕(1次破砕)されていく。このように1次破砕された被破片は破砕ロータ32の回転に伴って破砕室31内を周回し、その過程でアンビル34に衝突による衝撃力によりさらに細かく破砕(2次破砕)される。破砕室31を周回する破砕片のうちスクリーン38の排出孔を通過する程度に小さいものはスクリーン38を通過して破砕装置13から排出され、スクリーン38を通過しないものはさらに破砕室31内を周回し、アンビル34や破砕ビット36、スクリーン38等の破砕室31の内壁面等との衝突作用や剪断作用、すり潰し作用等を受けてさらに破砕(3次破砕)され、スクリーン38の排出孔を通過する程度に細粒化されたものから順次スクリーン38を通過して破砕装置13から排出される。破砕装置13から排出された破砕物は、排出コンベヤ3上に落下し、排出コンベヤ3によって機外に搬出される。
【0036】
続いて、起動時及び停止時の動作を説明する。
【0037】
図4は起動時及び停止時のエンジン54、破砕装置用油圧モータ37及び破砕ロータ32の回転数を表したタイムチャート、図5は制御装置65による起動制御の手順を表したフローチャート、図6は制御装置65による停止制御の手順を表したフローチャートである。
【0038】
2.起動動作
(S101)
操作盤25等から破砕運転開始の操作信号を入力したら、制御装置65は、図5の起動制御の手順を開始し、エンジン54をローアイドルで駆動させ、油圧ポンプ52,53を駆動させる。この時点において、エンジン54は、クラッチ装置55を介して油圧ポンプ52,53にのみ接続されている。また、破砕装置用油圧モータ37は停止状態であるとともに、切り離された状態である。なお、図4において、回転数n1は、エンジンローアイドル時の破砕ロータ32の回転数Nrの上限値である。
【0039】
(S102)
続くS102において、制御装置65は、クラッチ装置55に指令して破砕装置用油圧モータ37を破砕ロータ32に接続する制御を行う。エンジン54と破砕ロータ32とは切り離された状態である。
【0040】
(S103)
続くS103において、制御装置65は、駆動切換用制御弁58,59を正転位置(図3中の下位置)に切り換え、油圧ポンプ52,53からの圧油を合流させて破砕装置用油圧モータ37への供給管路66に流す。これによって破砕装置用油圧モータ37が正転駆動を開始し、その回転数Nmとともに破砕ロータ32の回転数Nrも上昇していく(図4の時刻t0−t1)。
【0041】
(S104)
制御装置65は、破砕装置用油圧モータ37の駆動を開始したら、破砕装置回転センサ62で検出された破砕ロータ32の回転数Nrとエンジン回転センサ64で検出されたエンジン54の回転数Neとの偏差(Ne−Nr)が予め設定したエンジン接続判定用のしきい値N1を下回ったかどうかを判定する。破砕ロータ32の回転数Nrがエンジン回転数Ne(この時点ではローアイドルn1)付近まで達しておらずNe−Nr≧N1である間は、このS104の判定を繰り返し実行する。そして、破砕ロータ32の回転数Nrがエンジン回転数Ne付近まで達しNe−Nr<N1の判定が満たされたら、制御装置65は、手順を次のS105,106に移す(図4の時刻t0−t1)。
【0042】
(S105,S106)
S104の判定が満たされたら、制御装置65は、クラッチ装置55に指令して、破砕ロータ32から破砕装置用油圧モータ37を切り離すとともに(S105)、破砕ロータ32にエンジン54を接続し(S106)、破砕ロータ32の動力源を破砕装置用油圧モータ37からエンジン54に切り換える(図4の時刻t1)。
【0043】
(S107)
破砕ロータ32の駆動源をエンジン54に切り換えたら、制御装置65は、駆動切換用制御弁58,59を中立位置(図3中の中央位置)に切り換え、破砕装置用油圧モータ37への圧油の供給を遮断し、油圧ポンプ52からの圧油の供給先を押圧ローラ用油圧モータ44の回路に切り換えるとともに、油圧ポンプ53からの圧油の供給先を送りコンベヤ用油圧モータ30の回路に切り換える(図4の時刻t1)。破砕装置用油圧モータ37への圧油の供給が遮断されたことにより、破砕装置用油圧モータ37は自己の油圧ブレーキの作用もあって回転数Nmを落とし始め、間もなく停止する。
【0044】
(S108)
破砕ロータ32の駆動源をエンジン54に切り換えたら、制御装置65は、エンジン54に指令し、エンジン54のアイドル回転数をハイアイドルに上げる。これにより、エンジン54の回転数Neが上昇し始め、これとともに破砕ロータ32の回転数Nrも上がっていく(図4の時刻t1−t2)。なお、図4において、回転数n4が、エンジンハイアイドル時の破砕ロータ32の回転数Nrの上限値である。
【0045】
(S109)
制御装置65は、破砕ロータ32のエンジン駆動を開始したら、エンジン回転センサ64で検出されたエンジン54の回転数Ne(=Nr)が予め設定した破砕運転判定用のしきい値N3(例えばn4)に達したかどうかを判定する。エンジン54の回転数Neがしきい値N3以下(Ne≦N3)である間は、このS109の判定を繰り返し実行する。そして、エンジン54の回転数Neがしきい値N3を超え、Ne>N3の判定が満たされたら、制御装置65は、手順を次のS110に移す(図4の時刻t2)。
【0046】
(S110)
S109の判定が満たされたら、制御装置65は、供給動作用制御弁60,61を正転位置(図3中の下位置)に切り換え、油圧ポンプ52,53からの圧油をそれぞれ押圧ローラ用油圧モータ44及び送りコンベヤ用油圧モータ30の供給管路67,68に流し、送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14を正転駆動させる。これにより破砕機の動作が前述した破砕運転動作に移行し、制御装置65は図5の手順を終了する。
【0047】
なお、先の破砕運転動作の説明では特に言及していないが、破砕運転時には、例えば破砕ロータ32の回転数Nrを基に制御装置65は破砕負荷を判定し、回転数Nrがn2(n1<n2<n4)まで低下したら、被破砕物の供給動作を中断して破砕負荷を軽くし、その後回転数Nrが回転数n3(n2<n3<n4)まで回復したら、被破砕物の供給動作を再開するといった制御を実行する(図4では時刻t2−t5)。
【0048】
3.停止動作
(S201,S202)
操作盤25等から破砕運転終了の操作信号を入力したら、制御装置65は、図6の起動制御の手順を開始し、供給動作切換弁60,61を中立位置(図3中では中央位置)に切り換え、供給装置用の油圧モータ30,44の回路をフリーにし、油圧モータ30,44への圧油の供給を停止し(S201)、エンジン54をローアイドルで駆動させる(S202)。これにより、エンジン54の回転数Neとともに破砕ロータ32の回転数Nrが低下し始め、その後回転数n1になる(図4では時刻t5−t6)。
【0049】
(S203)
また、制御装置65は、駆動切換用制御弁58,59を正転位置(図3中の下位置)に切り換え、油圧ポンプ52,53の圧油の供給先を破砕装置用油圧モータ37に切り換える。これにより破砕装置用油圧モータ37が駆動し始め、その回転数Nmを上昇させていく(図4では時刻t6−t7)。
【0050】
(S204)
制御装置65は、破砕装置用油圧モータ37の駆動を開始したら、破砕装置回転センサ62で検出された破砕ロータ32の回転数Nrと油圧モータ回転センサ63で検出された破砕装置用油圧モータ37の回転数Nmとの偏差(Nm−Nr)が予め設定したエンジン接続判定用のしきい値N2を下回ったかどうかを判定する。破砕装置用油圧モータ37の回転数Nmが破砕ロータ32の回転数Nr付近まで達しておらずNm−Nr≧N2である間は、このS204の判定を繰り返し実行する。そして、破砕装置用油圧モータ37の回転数Nmが破砕ロータ32の回転数Nr付近に達しNm−Nr<N2の判定が満たされたら、制御装置65は、手順を次のS205,206に移す(図4の時刻t6−t7)。
【0051】
(S205,S206)
S204の判定が満たされたら、制御装置65は、クラッチ装置55に指令して、破砕ロータ32からエンジン54を切り離すとともに(S205)、破砕ロータ32に破砕装置用油圧モータ37を接続し(S206)、破砕ロータ32の動力源をエンジン54から破砕装置用油圧モータ37に切り換える(図4の時刻t7)。
【0052】
(S207)
破砕ロータ32の駆動源を破砕装置用油圧モータ37に切り換えたら、制御装置65は、駆動切換用制御弁58,59を中立位置(図3中の中央位置)に切り換え、破砕装置用油圧モータ37への圧油の供給を遮断して図6の手順を終了する。破砕装置用油圧モータ37への圧油の供給が遮断されたことにより、破砕装置用油圧モータ37の油圧ブレーキの作用もあって破砕ロータ32は破砕装置用油圧モータ37とともに回転数Nr(=Nm)を落とし始め、間もなく停止する。(図4の時刻t7−t8)。
【0053】
4.逆転動作
整備上、破砕ロータ32を逆転駆動させたい場合がある。そのようなときは、エンジン54をローアイドルにした状態で、モータ入力軸55bをアイドル軸55eに接続し、駆動切換用制御弁58,59を逆転位置(図3中の上位置)に切り換える。これにより、油圧ポンプ52,53からの圧油が供給管路69を介して破砕装置用油圧モータ37に供給され、破砕装置用油圧モータ37が逆転駆動する。
【0054】
また、供給装置を逆転させる場合には、駆動切換用制御弁58,59を中立位置(図3中の中央位置)、供給動作用制御弁60,61を逆転位置(図3中の上位置)に切り換え、油圧ポンプ52,53からの圧油をそれぞれ押圧ローラ用油圧モータ44及び送りコンベヤ用油圧モータ30の供給管路70,71に流す。これにより、送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14が逆転駆動する。
【0055】
本実施形態の破砕機による作用効果を説明する。
【0056】
本実施形態によれば、破砕装置13の駆動源をエンジン54及び破砕装置用油圧モータ37のいずれかに切り換えられる構成とした。そのため、油圧駆動時には破砕装置用油圧モータ37を逆転させることで破砕装置13を逆転駆動させることができ、例えばメンテナンス等で破砕装置13を逆転駆動させる必要があるときの利便性を確保することができる。また、油圧駆動時には、破砕装置用油圧モータ37の油圧ブレーキが作用するので速やかに破砕装置13を停止させることができ、安全面でも信頼性が高い。一方、エンジン直動時には油圧駆動時に比べてエネルギー効率が向上するので、破砕運転時等には破砕装置13をエンジン直動に切り換えることで、原動機であるエンジン54から破砕装置13への動力伝達率の低下を抑制することができ、燃料消費に対する仕事率を向上させることができる。
【0057】
よって、利便性と安全性を維持しつつ破砕動作時のエネルギー効率を向上させることができる。
【0058】
また、破砕装置13の駆動源を油圧駆動及びエンジン直動のいずれかに単に切り換えることができる構成ではなく、破砕運転時にはエネルギー効率の良いエンジン直動とする一方で、油圧駆動は破砕装置13の起動停止時に利用する構成としている。前述した通り、破砕装置13の停止時に油圧駆動とすることで、エンジン直動のまま破砕装置13を停止させる場合に比べて破砕装置13を速やかに停止させることができる。エンジン直動のまま(油圧駆動に切り換えずに)破砕装置13を停止させるとすれば、単に破砕ロータ32とエンジン54とを切り離して破砕ロータ32への動力の伝達を遮断するだけで、破砕ロータ32にはブレーキがかからず慣性で暫く回り続けるためである。また、仮に破砕装置13をエンジン直動で起動する構成とすると、静止状態の破砕ロータ32とエンジン54の回転数は当然ながら合っておらず、エンジンクラッチ55fを滑らせながら徐々に回転数を上げていくこととなり、クラッチ接続が困難な上、エンジンクラッチ55fの磨耗も早まる。したがって、油圧駆動で破砕装置13を起動することで、エンジンクラッチ55fの摩耗を抑制することができ、またクラッチ接続の困難性の問題も回避することができる。
【0059】
さらには、破砕装置13の起動時及び停止時には供給装置12,14を駆動させる必要が必ずしもないことに着眼し、破砕装置13の油圧駆動源を供給装置12,14の油圧駆動源である油圧ポンプ53,52で共用したことで、破砕装置13の起動時及び停止時にのみ使用するために新たな油圧ポンプを別途設けずに済み、経済的に破砕装置13の駆動回路を構成することができる。しかも、2つの油圧ポンプ52,53を破砕装置13の油圧駆動源として利用することができるので、破砕装置13の起動に要する時間を1ポンプの場合に比べて短縮することができ、また2つの油圧ポンプ52,53の油圧ブレーキの効果を享受することができるので、破砕装置13の制動時間も1ポンプの場合に比べて短縮することができる。
【0060】
なお、以上の実施形態において、破砕ロータ32やアンビル34で木材等の被処理物を破砕する破砕装置(木材破砕装置)を備えた自走式破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、他の破砕装置、例えば、せん断式破砕装置(シュレッダ)、破砕刃を有する一対のロール状の回転体の間に岩石等の被処理物を挟み込んで破砕を行う回転式破砕装置(ロールクラッシャ等)、揺動する動歯と固定歯との間に岩石等の被処理物を供給して破砕する破砕装置(ジョークラッシャ)、又は複数個の刃物を備えた打撃板による打撃と反発板への衝突によって岩石等の被処理物を破砕する破砕装置(インパクトクラッシャ)を搭載した自走式破砕機にも本発明は適用可能である。これらの場合も同様の効果を得ることができる。
【0061】
さらに、また、ホッパ(被破砕物の受け入れ側)と反対側に排出コンベヤを設けた自走式破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、ホッパと同じ側に排出コンベヤを設けた構成の自走式破砕機にも本発明は適用可能である。また、走行手段として無限軌道履帯を有するクローラ式の自走式破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、走行手段としてタイヤを有するホイール式の自走式破砕機にも本発明は適用可能である。これらの場合も、同様の効果を得ることができる。
【0062】
さらには、自力走行可能な自走式破砕機に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引走行可能な移動式破砕機、若しくはクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式破砕機にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
12 送りコンベヤ(供給装置)
13 破砕装置
14 押圧ローラ装置(供給装置)
30 送りコンベヤ用油圧モータ(供給装置用油圧モータ)
32 破砕ロータ(駆動体)
37 破砕装置用油圧モータ
44 押圧ローラ用油圧モータ(供給装置用油圧モータ)
52,53 油圧ポンプ
54 エンジン
55 クラッチ装置
58,59 駆動切換用制御弁
60,61 供給動作用制御弁
62 破砕装置回転センサ
63 油圧モータ回転センサ
64 エンジン回転センサ
65 制御装置
N1 エンジン接続判定用のしきい値
N2 モータ接続判定用のしきい値
N3 破砕運転判定用のしきい値
Ne エンジンの回転数
Nm 油圧モータの回転数
Nr 破砕ロータ(駆動体)の回転

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物を破砕する破砕装置と、
この破砕装置の駆動体を駆動するための破砕装置用油圧モータと、
この破砕装置用油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、
この油圧ポンプを駆動するエンジンと、
このエンジン及び前記破砕装置用油圧モータのいずれかを動力源として前記破砕装置の駆動体に選択的に接続するクラッチ装置と
を備えたことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記破砕装置の駆動体の回転数を検出する破砕装置回転センサと、
前記油圧モータの回転数を検出する油圧モータ回転センサと、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転センサと、
これら破砕装置回転センサ、油圧モータ回転センサ及びエンジン回転センサの検出信号を基に前記クラッチ装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記破砕装置の駆動体の動力源を前記破砕装置用油圧モータから前記エンジンに切り換える際、前記破砕装置回転センサで検出された前記駆動体の回転数と前記エンジン回転センサで検出された前記エンジンの回転数との偏差が予め設定したエンジン接続判定用のしきい値を下回ったら、前記駆動体から前記破砕装置用油圧モータを切り離すとともに前記駆動体に前記エンジンを接続し、
前記破砕装置の駆動体の動力源を前記エンジンから前記破砕装置用油圧モータに切り換える際には、前記破砕装置回転センサで検出された前記駆動体の回転数と前記油圧モータ回転センサで検出された前記油圧モータの回転数との偏差が予め設定したモータ接続判定用のしきい値を下回ったら、前記駆動体から前記エンジンを切り離すとともに前記駆動体に前記破砕装置用油圧モータを接続する制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記破砕装置の起動時及び停止時には、前記破砕装置の駆動体を前記破砕装置用油圧モータに接続し、前記破砕装置で被破砕物を破砕処理する破砕運転時には、前記破砕装置の駆動体を前記エンジンに接続する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の破砕機。
【請求項4】
前記破砕装置に被破砕物を供給する供給装置と、
この供給装置を駆動するための供給装置用油圧モータと、
この供給装置用油圧モータ及び前記破砕装置用油圧モータの回路のいずれかに前記油圧ポンプの吐出管路を選択的に接続する駆動切換用制御弁と、
前記供給装置用油圧モータへの圧油を制御する供給動作用制御弁とを備え、
前記制御装置は、前記破砕運転を開始する際、前記駆動切換用制御弁に指令して前記油圧ポンプの圧油の供給先を前記供給装置用油圧モータに切り換え、前記エンジンの回転数が予め設定した破砕運転判定用のしきい値に達したら前記供給動作用制御弁を開放して前記供給装置用油圧モータを駆動する制御を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96180(P2012−96180A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246415(P2010−246415)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】