説明

硫黄含有助剤を用いたコポリマーの架橋方法

エチレン-α-オレフィンコポリマーを架橋する方法であって、コポリマーと、(a) 遊離基を発生させることができる開始剤および(b) 式R-Y-Sx-Y-Rに従う硫黄含有助剤とを一緒にする工程を含む方法。この方法は、圧縮永久歪またはエージング安定性に妥協することなく、改善された動的特性、引張り強度、デルタトルク、および/または弾性率を有する架橋コポリマーを生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含有助剤を用いてエチレン-α-オレフィンコポリマーを架橋する方法に関する。さらに、この方法により得ることができる架橋コポリマーおよび新規な助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムは一般に、架橋剤としてペルオキシドまたは硫黄を用いて架橋される。硫黄は、広く使用されるジエン含有エラストマー、例えば天然ゴム、SBRおよびポリブタジエンのための最も普通の架橋剤であり;ペルオキシドは、鎖中に二重結合をほとんど含まないか全く含まないゴム、たとえばEPMおよびEPDMのための最も重要な架橋剤である。ペルオキシド架橋においては、架橋効率を改善するために助剤が使用される。
【0003】
W.ホフマン(Hofmann)により、プログレス イン ラバー アンド プラスチックス テクノロジー(Progress in Rubber and Plastics Technology)、第1巻、1985年、18-46頁において説明されるように、高不飽和ゴム、例えばスチレン-ブタジエンゴム(SBR)の架橋効率は、あまり不飽和でないゴム、例えばエチレン-プロピレンコポリマーEPMおよびEPDMとは異なる。エチレン-プロピレンゴムの群内では、効率はまた、プロピレン単位の量に対するエチレン単位の量に依存する。
【0004】
エチレン-プロピレンコポリマーのペルオキシド架橋において適用される慣用的に使用される助剤は、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)およびN,N'-m-フェニレンビスマレイミド(BMI-MP)である。W.ホフマン(Hofmann)、プログレス イン ラバー アンド プラスチックス テクノロジー(Progress in Rubber and Plastics Technology)、第1巻、1985年、18-46頁ならびにP.コバシク(Kovacic)およびR.W.ヘイン(Hein)、J. Am. Chem. Soc. 第81巻、1958年、1190-1194頁参照。
【0005】
しかしながら不運にも、これらの助剤を使用するときに得られるペルオキシド加硫物の動的かつ機械的特性は、硫黄架橋によって得られる水準には及ばない。さらに、例えばデルタトルク、引張り強度または弾性率における改善は一般に、圧縮永久歪およびエージング安定性を犠牲にするようになる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、式:
【化1】

(ここで、x=1〜4、Yは、(i) 2〜20個の炭素原子を有する環状および非環状の脂肪族基ならびに(ii) 6〜18個の炭素原子を有し、任意的にアルキル基で置換されていてもよい芳香族基から選択され、基(i)および(ii)は任意的に、ハロゲン、O、Siおよび/またはPで置換されていてもよく、かつRは、
【化2】

{ここで、R1は、水素、ハロゲンおよび、1〜18個の炭素原子を有し、任意的にヒドロキシル、エーテル、エステル、ハロゲンもしくは硫黄含有基で置換されたアルキル基から選択され、R2は、適当な脱離基である}
から選択される)
を有する助剤を使用することによって、圧縮永久歪またはエージング安定性に妥協することなく、加硫物の特性を改善することができることがここで見出された。
【0007】
本発明はしたがって、エチレン-α-オレフィンコポリマーを架橋する方法であって、コポリマーと、(a) 遊離基を発生させることができる開始剤および(b) 式(I)に従う硫黄含有助剤とを一緒にする工程を含む方法を提供する。
【0008】
この方法は、圧縮永久歪またはエージング安定性に妥協することなく、改善された動的特性、引張り強度、デルタトルクおよび/または弾性率を有する架橋エチレン-α-オレフィンコポリマーを生ずる。その上、エージング安定性をさらに改善することができる。
【0009】
式(I)におけるxの値は好ましくは、1または2である。
【0010】
R1は好ましくは、水素、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、CH2OH、CH2Cl、CH2Br、CH2NH2、CH2CN、CH2COOH、CH2OR、SO2R'、SR'、SSR'、CH2Cl、CCl3、CHBr2、CBr3、CH2F、CF3およびハロゲンから選択される。さらに好ましくは、R1は水素またはCH3である。
【0011】
R2は適当な脱離基、すなわち適当な反応速度で基体分子から開裂されるようになる基もしくは原子である。適当な脱離基としては、国際特許出願公開WO96/20246号公報、第6頁12〜22行に挙げられた脱離基を包含し、これらは、引用することにより組み入れられる。好ましい脱離基は、塩素、臭素およびフラン基である。
【0012】
さらなる実施態様においては、助剤は、以下の化合物:
【化3】




(ここで、Yは前記と同義である)
から選択される。
【0013】
これらの助剤の中で、式(III)、(IV)および(V)の化合物がより好ましく、式(V)の化合物が最も好ましい。
【0014】
本発明の方法により架橋されるべきコポリマーの不飽和度、すなわち:組み込まれるモノマーの全量に対するジエンモノマーの量は、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満である。この不飽和度は、Materiaux et Techniques、1991年、第69頁に記載されたIISRPワーキンググループにより推奨され、かつJ.W.M.ノールデミア (Noordermeer)によりKautschuk Gummi Kunststoffe、第49巻、1996年、第521〜531頁において言及された試験を用いて、赤外分光法によって決定することができる。
【0015】
本発明はまた、Yがp-フェニルである式(III)の助剤、先に開示されていない化合物に関する。この助剤は、2部のシトラコン酸無水物と1部のH2N-Y-S-Y-NH2との反応によって製造することができる。例えば、シトラコン酸無水物は適当な溶媒(例えば酢酸)に溶解される。その後H2N-Y-S-Y-NH2を約60〜100℃の範囲の温度で添加し、得られた混合物を120〜160℃で2〜6時間反応させる。溶媒を例えば蒸発によって除去した後、助剤が得られる。
【0016】
本発明の方法に従って架橋することができる適当なエチレン-α-オレフィンコポリマーの例は、エチレン-α-オレフィンエラストマー、エチレン-α-オレフィンジエンエラストマー、エチレン-α-オレフィンブロックコポリマー、エチレン-α-オレフィンジエンブロックコポリマーおよびそれらのブレンドである。適当なα-オレフィンの例は、プロピレン、ブチレンおよびオクテンであり、プロピレンが最も好ましい。好ましいコポリマーは、EPMゴム、EPDMゴムである。所望なら、EPDMゴムを、ポリプロピレン(PP)とブレンドすることができる。PP/EPDMブレンドの動的加硫は、いわゆるPP/EPDM熱可塑性加硫物(TPV)の形成を生じさせる。
【0017】
コポリマー中のエチレンおよびα-オレフィン単位の全量に対するコポリマー中のエチレン単位の含量は、好ましくは45〜75重量%の範囲である。
【0018】
エチレン含量は、IISRPワーキンググループにより推奨され、かつJ.W.M.ノールデミア (Noordermeer)によりKautschuk Gummi Kunststoffe、第49巻、1996年、第521〜531頁において言及された、方法Aを用いるASTM標準試験法D3900によって決定することができる。
【0019】
式(I)〜(V)においては、Yは、(i) 2〜20個の炭素原子を有する環状および非環状の脂肪族基ならびに(ii) 6〜18個の炭素原子を有し、任意的にアルキル基で置換された芳香族基から選択され、群(i)および(ii)は任意的に、ハロゲン、O、Siおよび/またはPで置換される。好ましくはYは、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族基または6〜12個の炭素原子を有し、任意的にアルキル基で置換された芳香族基から選択される。より好ましくはYは、2〜4個の炭素原子を有する非環状脂肪族基および6個の炭素原子を有する芳香族基から選択される。なお好ましくは、Yはフェニル基である。最も好ましくは、Yはp-フェニル基である。
【0020】
本発明の方法においては、使用される助剤の量は、好ましくは少なくとも1ミリモル/100gのコポリマー、さらに好ましくは少なくとも4ミリモル/100gのコポリマー、なお最も好ましくは少なくとも10ミリモル/100gのコポリマーである。好ましくは30ミリモル/100gのコポリマー以下、さらに好ましくは22ミリモル/100gのコポリマー以下、最も好ましくは15ミリモル/100gのコポリマー以下である。
【0021】
本発明の方法において使用される、遊離基を発生させることができる開始剤は典型的には、不安定なC-C、O-O、N-N、O-C結合を有する化合物から選択されるが、また例えば放射での励起後に遊離基のための前駆体である他の生成物から選択され得る。好ましくは、化合物を加熱すると遊離基が生成されることを意味する、熱的に不安定な化合物から選択される。好ましい熱的に不安定な化合物は、C-C開始剤、アゾ開始剤およびペルオキシドである。好ましいC-C開始剤は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(Perkadox(商標)30)および3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン(Perkadox 58)である。好ましいペルオキシドは、パーケタール、パーエステル、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、以下の式
【化4】

(ここで、R1、R2およびR3は独立して、水素および置換もしくは非置換のヒドロカルビル基から選択される)
のトリオキセパン化合物および、式I〜IIIによって示される構造を有する環状ケトンペルオキシド:
【化5】

(ここで、R1〜R6は独立して、水素、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキルおよびC7〜C20アルカリールからなる群より選択され、これらの基は、非環状もしくは分岐したアルキル部分を含むことができ;R1〜R6のそれぞれは任意的に、線状もしくは分岐したC1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキル、ヒドロキシ、C1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリーロキシ、C7〜C20アラルコキシ、C7〜C20アルカリールオキシ、R1C(O)O-、R1OC(O)-、ハロゲン、カルボキシ、ニトリルおよびアミドから選択される1個以上の基で置換されることができるか、またはR1/R2、R3/R4およびR5/R6はそれぞれ、それらが結合する炭素原子と一緒に、3〜20員環の脂環式環を形成することができ、これらの環は任意的に、非環状もしくは分岐したC1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキル、ヒドロキシ、C1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリーロキシ、C7〜C20アラルコキシ、C7〜C20アルカリールオキシ、R1C(O)O-、R1OC(O)-、ハロゲン、カルボキシ、ニトリルおよびアミドから選択される1個以上の基で置換されることができる)
である。
【0022】
好ましいアゾ開始剤およびペルオキシドは、100℃で1時間より多い半減期を有するものである。
【0023】
より好ましい開始剤は、ジアルキルペルオキシド、例えばジクミルペルオキシド(Perkadox BC)、t-ブチルクミルペルオキシド(Trigonox(商標)T)、ジ-t-ブチルペルオキシド(Trigonox(商標)B)、メタ、パラもしくは混合メタ/パラ形態でのジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(Perkadox 14)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(Trigonox(商標)101)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(Trigonox(商標)145)、t-ブチルイソプロピルクミルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシド(Trigonox(商標)201)およびクミルイソプロピルクミルペルオキシド;ペルオキシエステル、例えばジ(t-ブチルペルオキシ)フタレート、t-ブチルペルオキシベンゾエート(Trigonox(商標)C)、t-ブチルペルオキシアセテート(Trigonox(商標)F)、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート(Trigonox(商標)BPIC)、t-ブチルペルオキシ-2-メチルベンゾエート(Trigonox(商標)97)、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシジエチルアセテート(Trigonox(商標)27)、t-ブチルペルオキシイソブチレート(Trigonox(商標)41)、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(Trigonox(商標)42)、t-アミルペルオキシベンゾエート(Trigonox(商標)127)およびt-アミルペルオキシアセテート;ペルオキシケタール、例えばエチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、エチル3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン(Trigonox(商標)D)、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(Trigonox(商標)22)、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(Trigonox(商標)29)および1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン(Trigonox(商標)122);トリオキセパン、例えば3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン(Trigonox(商標)311);ならびに環状ケトンペルオキシド、例えば3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソノナン(Trigonox(商標)301)から選択されるペルオキシドである。
【0024】
本発明の方法において使用され、本発明の組成物中に存在すべき開始剤の量は好ましくは、コポリマーの重量に基づき、0.1重量部から、好ましくは1.0重量部から、より好ましくは2.0重量部から、8重量部まで、好ましくは6重量部まで、最も好ましくは4重量部までの範囲にある。
【0025】
慣用のゴム添加剤をまた、通常の量で使用することができる。例えば、強化剤もしくは充填剤、例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、チョーク、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムをコポリマー組成物中に含むことができる。他の添加剤、例えば滑剤、粘着性付与剤、ワックス、酸化防止剤、顔料、UV-安定剤、発泡剤、核剤、促進剤、硫黄、ZnO、エキステンダー油、例えばパラフィンオイル、例えばステアリン酸、電圧安定剤、水を含まない遅延剤、金属失活剤、結合剤、染料および着色料をまた、単独もしくは組合せて含むことができる。使用されるなら、そのような添加剤は、意図される効果を与えるのに十分な量で使用すべきである。
【0026】
好ましくは使用すべきでない添加剤、特にビスマレイミドタイプの助剤、例えば式(II)の助剤を使用するときに使用すべきでない添加剤は、抗オゾン化物質、硫黄加硫を促進するS-含有化合物およびポリサルファイドポリマーである。そのような添加剤は、得られる架橋ポリマーの特性に悪影響を及ぼし得る。
【0027】
1つの実施態様に従えば、コポリマーは、まず架橋されるべきコポリマーと開始剤、助剤および任意的な添加剤とを入念に混合した後、架橋工程によって架橋される。この実施態様に従えば、架橋されるべきコポリマー、助剤および開始剤は、架橋を生じることなく入念に混合されるべきである。開始剤が熱的に不安定な化合物であるなら、これは、混合が典型的には、開始剤の半減期が0.5時間より上、好ましくは1時間より上、なおさらに好ましくは2時間より上である温度で行われることを意味する。実際には、コポリマーの温度は、混合段階中50〜150℃までに制限される。混合は、当業者に公知の種々のやり方で達成することができる。例えば、成分を、マルチ-ロールミル、スクリューミル、連続ミキサー、コンパウンディング押出機およびバンバリーミキサーを包含する種々の装置で粉砕することができるか、または相互もしくは相溶性溶媒中に溶解することができる。全ての固体成分が粉末の形態で、または小粒子として入手可能であるときには、成分をまず、例えばバンバリーミキサーもしくは連続押出し機でブレンドし;その後ブレンドを、加熱したミル、例えば2-ロールミルで混練することができ、粉砕は、成分の完全な混合物が得られるまで続けることができる。あるいは、コポリマーおよび1種以上の酸化防止剤を含むマスターバッチを、開始剤および助剤と合わせることができる。
【0028】
コポリマーが粉末形態で入手可能でない場合には、コポリマーをミルに導入し、1つのロールの周りに帯(すなわち混合帯)を形成するまで混練することができ、その後、残りの成分を、ブレンドとして、またはそれぞれ別々に添加し、完全な混合物が得られるまで粉砕が続けられる。ロールは好ましくは、約25〜150℃、より好ましくは50〜120℃の範囲であって、開始剤成分の急速分解温度より下である温度に保持される。得られた混合物は、シートの形態でミルから取り出される。
【0029】
混合後、慣用のやり方で開始剤により遊離基が形成されたら、コポリマーは架橋される。好ましくはコポリマーは、80℃から、より好ましくは120℃から、最も好ましくは140℃から、300℃まで、より好ましくは200℃までの温度で2分間から2時間までの時間架橋される。最も普通の架橋温度は、160〜200℃の範囲にある。
【0030】
例えば、全ての成分(コポリマー、助剤、開始剤および任意的な添加剤)を、ポリオレフィンについては約120〜160℃の温度で押し出されるべき押出し装置へと導入する前に、一緒にブレンドまたは配合することができる。押出し後、コポリマーは、約140℃以上、好ましくは約180〜200℃の高められた温度で、慣用の架橋手順を用いて架橋される。
【0031】
別の実施態様に従えば、本発明の方法は、コポリマー(例えばEPDM)と第2のポリマー(例えばPP)との溶融混合中に架橋反応が行われる動的加硫法である。開始剤および助剤は、該溶融混合中に添加される。適当な混合装置としては、マルチ-ロールミル、スクリューミル、連続ミキサー、コンパウンディング押出機およびバンバリーミキサーを包含する。動的加硫中の温度は好ましくは80℃から、より好ましくは120℃から、さらに好ましくは140℃から、最も好ましくは160℃から、300℃まで、より好ましくは200℃までの範囲にある。動的加硫は一般に、約1分間〜1時間、より好ましくは2〜20分間かかる。
【0032】
本方法は特に、PP/EPDM熱可塑性加硫物(TPV)の製造のために適当である。
【0033】
本発明の方法は好ましくは、空気阻害を減らすために、よって表面粘着性を減らすために、空気開放系でなく、閉鎖系で行われる。
【0034】
架橋されたコポリマーは、限定されないが、タイヤ組成物、例えばトレッド、アンダートレッド、サイドウォール、ワイヤースキム、インナーライナー、およびビーズコンパウンド;工業的ゴム組成物、例えばホース、ベルト、チューブ、エンジンマウント、衝撃吸収材および絶縁体、目詰め材、成形品および車のバンパー;ならびにワイヤおよびケーブル、例えば半導体および絶縁コンパウンドを包含する種々の用途を有し得る。
【実施例】
【0035】
実施例1〜3ならびに比較例AおよびB
混合:評価される全てのコポリマー組成物について、まず、100重量部(pbw)のEPM(エチレン含量56モル%)、60phrのカーボンブラック、1phrのステアリン酸および45phrのパラフィンオイルを含むマスターバッチを慣用のやり方で製造した。ジクミルペルオキシド(2.4phr)および助剤(15ミリモル/phr)を、シュワベンタン(Schwabenthan)2-ロールミル(摩擦1:1.22、温度50〜70℃、混合時間10分間)にて、このマスターバッチに添加した。
架橋の評価:架橋を、アルファ テクノロジーズ(Alpha Technologies)からのRPA 2000を用いて評価して、次のものを決定した:最大トルク(MH)マイナス最小トルク(ML)である、デルタトルクまたは架橋の程度;最小トルク(ML)より上で2dNmに達する時間であるスコーチ安全性(Ts2);およびISO 6502法[ローターなしのキュアメーターを用いた加硫特性のゴム-測定(Rubber-Measurement of vulcanization characteristics with rotorless curemeters)]に従って最小より上のデルタトルクの90%に達する時間である最適硬化時間(t90)。
【0036】
架橋コポリマーの機械的試験のための試料:160℃にてt90時間の二倍である時間ウィッカートプレス(Wickert press)での圧縮成形によって、コポリマー組成物を架橋することにより試料を製造した。試料は、ISO 37法にしたがって、2mm厚であった。
架橋コポリマーの評価:架橋コポリマーは、ダンベルへとダイ切断され、ISO37にしたがって、ツビック(Zwick)引張りテスターで試験された。
【0037】
異なる実施例において使用された助剤を、表1に示す。得られた架橋コポリマーのデルタトルク、引張り強度、モジュラス100、モジュラス200、圧縮永久歪およびショアー硬度に対するそれらの効果を表2に示す。150℃でのエージング中のこれらのパラメータの展開を表3に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
これらのデータは、本発明の方法が、改善された引張り強度、デルタトルク、弾性率およびエージング安定性を有する架橋エチレン-α-オレフィンコポリマーを生ずることを示す。また、圧縮永久歪は満足のいくままである。
【0042】
実施例4〜6および比較例C
以下の実験は、本発明の方法が、動的加硫を用いて、PPとのブレンドでのEPDMの架橋を可能にすることを示すために役立つ。これは、満足のいく特性を有するPP/EPDM熱可塑性加硫物を生じる。これは驚くべきことである。というのは、A.Y.コラン(Coran)(熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomers)、N.R.レッジ(Legge)、G.ホールデン(Holden)およびH.E.シュレーダー(Schroeder)編、ハンサー パブリッシャーズ(Hanser Publishers)、ミュンヘン、1987年、第7章)において)によれば、そのような加硫物を製造するためのペルオキシドの使用は、主にペルオキシドがPPの減成を促進するために、避けるべきであるからである。
【0043】
ブラベンダープラスティコーダーPL2000内部ミキサー中で、200phrのEPDM(50重量%のパラフィンオイルを含み、エチレン含量63重量%)を43phrのポリプロピレン(PP)と、170℃のミキサー温度設定およびローター速度80rpmにて混合した。ミキサー室にはまず、PPを供給した後、安定剤Irganox(商標)1076およびIrgafos(商標)168ならびにEPDMを1分遅く供給した。混合をさらに3分間続けた後、任意的に助剤(実施例4〜6)を添加し、その後、混合の5分後にジクミルペルオキシド(6.76phr)を添加した。混合をさらに5分間続けた。混合物をその後、2-ロールミルでシート状にした。
【0044】
使用した助剤は、4,4-チオビス-(フェニル-メタクリレート)であり、これは、式IV(ここで、Yはp-フェニルである)の助剤である。比較例Cは、助剤の不在下で行った。
【0045】
得られたゴムを、先の実施例に関して説明した方法に従って試験した。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
これらの結果は、本発明の方法が、S-含有助剤の存在のために、30/70 PP/EPDMブレンドでのEPDMの動的加硫を可能にし、満足のいく特性を有するTPVを生じることを示す。
【0048】
さらなる実験は、S-含有助剤の同様の正の効果が、50/50 PP/EPDMおよび70/30 PP/EPDMブレンドで得られることを示した。
【0049】
また、別の助剤、亜鉛ジメタクリレートと比較すると、S-含有助剤は、改善された特性:高い破断点伸び、改善された圧縮永久歪(特に70℃で)および同等の引張り強度およびヤング弾性率を生じた。
【0050】
理論に束縛されたくないが、S-含有助剤の正の効果は、ペルオキシドが誘導するポリプロピレン減成への安定化効果によると思われる。実験は、助剤の不在ならびにエチレンジメタクリレート、亜鉛ジアクリレートおよび亜鉛ジメタクリレートの使用に比べて、本発明のS-含有助剤の使用はポリプロピレン減成を減らすことを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-α-オレフィンコポリマーを架橋する方法であって、コポリマーと、(a) 遊離基を発生させることができる開始剤および(b) 式
【化1】

(ここで、x=1〜4、Yは、(i) 2〜20個の炭素原子を有する環状および非環状の脂肪族基ならびに(ii) 6〜18個の炭素原子を有し、任意的にアルキル基で置換されていてもよい芳香族基から選択され、基(i)および(ii)は任意的に、ハロゲン、O、Siおよび/またはPで置換されていてもよく、かつRは、
【化2】

{ここで、R1は、水素、ハロゲンおよび、1〜18個の炭素原子を有し、任意的にヒドロキシル、エーテル、エステル、ハロゲンもしくは硫黄含有基で置換されていてもよいアルキル基から選択され、R2は、適当な脱離基である}
から選択される)
を有する助剤とを一緒にする工程を含む方法。
【請求項2】
xが1または2である請求項1記載の方法。
【請求項3】
助剤が、以下の化合物:
【化3】




(ここで、Yは、(i) 2〜20個の炭素原子を有する環状および非環状の脂肪族基ならびに(ii) 6〜18個の炭素原子を有し、任意的にアルキル基で置換されていてもよい芳香族基から選択され、基(i)および(ii)は任意的に、ハロゲン、O、Siおよび/またはPで置換されていてもよい)
から選択される請求項2記載の方法。
【請求項4】
コポリマーが、エチレン-α-オレフィンエラストマー、エチレン-α-オレフィンジエンエラストマー、エチレン-α-オレフィンブロックコポリマー、エチレン-α-オレフィンジエンブロックコポリマーおよびそれらのブレンドから選択される請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
コポリマーが、エチレン-プロピレンエラストマー(EPM)、エチレン-プロピレンジエンエラストマー(EPDM)またはそれらのブレンドである請求項4記載の方法。
【請求項6】
コポリマーがEPDMであり、このEPDMは、ポリプロピレン(PP)とのブレンド中で架橋され、PP/EPDM熱可塑性加硫物(TPV)を生じる請求項5記載の方法。
【請求項7】
Yが、2〜4個の炭素原子を有する非環状脂肪族基および6個の炭素原子を有する芳香族基から選択される請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
開始剤が、不安定なC-C、O-O、N-NおよびO-C結合を有する化合物ならびにそれらの混合物からなる群より選択される請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】

【化4】

を有するビス-シトラコンイミド。
【請求項10】
(i) エチレン-α-オレフィンコポリマー、(ii) 遊離基を発生させることができる開始剤および(iii) 式(I)〜(VI)のいずれか1つに従う助剤を含む組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項記載の方法によって得ることができる架橋エチレン-α-オレフィンコポリマー。

【公表番号】特表2009−520092(P2009−520092A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546396(P2008−546396)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069758
【国際公開番号】WO2007/071619
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(504144208)シュティヒティング ダッチ ポリマー インスティテュート (3)
【Fターム(参考)】