説明

硫黄固化体の製造方法

【課題】 高強度の硫黄固化体を連続的に製造できると共に、有害物の溶出を確実に抑制することができる硫黄固化体の製造方法を提供する。
【解決手段】 溶融硫黄を焼却灰、細骨材および粗骨材と混合する混合工程と、前記混合工程で生成された混合物を押出機50内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出する圧縮工程とを備え、前記混合工程は、焼却灰、細骨材および粗骨材を個別に溶融硫黄と混合した後に押出機50に供給することを特徴とする硫黄固化体の製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄固化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融硫黄に骨材等を混合しこれを冷却固化して得られる硫黄固化体は硫黄コンクリートとも呼ばれており、セメントコンクリートに比べて強度、耐酸性、耐腐食性、封鎖性等の面で優れることから、港湾土木用、水産用、建築用等の各種構造物に利用されつつある。硫黄固化体の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1に開示された硫黄固化体の製造方法は、溶融硫黄に改質剤を混合して得られた改質硫黄に、石炭灰や珪砂等の微細粉を混合して中間資材を生成し、この中間資材を天然石や鉄鋼スラグ等の骨材と混合して硫黄含有資材を生成する。そして、この硫黄含有資材をホッパーに投入し、シリンダを介して型枠内に押し出した後、型枠内の硫黄含有資材を徐冷することにより、硫黄固化体を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−227551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の硫黄固化体の製造方法によれば、溶融硫黄を微細粉と混合して中間資材を生成する際に、微細粉と溶融硫黄との接触面積が大きいだけでなく、微細粉に含まれる焼却灰の吸水性が高いために、多量の硫黄が消費されるおそれがあった。一方、溶融硫黄の含有割合を増大することは、硫黄固化体の強度低下を招くことから限界があった。このため、中間資材に骨材を混合した際に、中間資材に残留する少量の溶融硫黄を骨材の表面全体に行き渡らせることが困難であり、骨材等に含まれる重金属などの溶出を確実に防止できないという問題があった。特に、硫黄固化体を連続的に製造可能にして製造設備の小型化を図るためには、中間資材と骨材との混合を短時間で均一に行うことが要求されるため、上記の問題がより顕著なものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明は、高強度の硫黄固化体を連続的に製造できると共に、有害物の溶出を確実に抑制することができる硫黄固化体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、溶融硫黄を焼却灰、細骨材および粗骨材と混合する混合工程と、前記混合工程で生成された混合物を押出機内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出する圧縮工程とを備え、前記混合工程は、焼却灰、細骨材および粗骨材を個別に溶融硫黄と混合した後に前記押出機に供給することを特徴とする硫黄固化体の製造方法により達成される。
【0007】
あるいは、本発明の前記目的は、溶融硫黄を焼却灰および骨材と混合する混合工程と、前記混合工程で生成された混合物を押出機内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出する圧縮工程とを備え、前記混合工程は、焼却灰および骨材を個別に溶融硫黄と混合した後に前記押出機に供給することを特徴とする硫黄固化体の製造方法により達成される。
【0008】
あるいは、本発明の前記目的は、溶融硫黄を細骨材および粗骨材と混合する混合工程と、前記混合工程で生成された混合物を押出機内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出する圧縮工程とを備え、前記混合工程は、細骨材および粗骨材を個別に溶融硫黄と混合した後に前記押出機に供給することを特徴とする硫黄固化体の製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高強度の硫黄固化体を連続的に製造できると共に、有害物の溶出を確実に抑制することができる硫黄固化体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る硫黄固化体の製造方法の全体フロー図である。
【図2】本発明の硫黄固化体の製造に用いる装置の一例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る硫黄固化体の製造方法の全体フロー図であり、図2は、硫黄固化体の製造に用いる装置の要部側面図である。本実施形態においては、焼却灰、細骨材および粗骨材を溶融硫黄と混合して硫黄固化体を製造する。
【0012】
図1に示すように、一次保管庫10に貯留された焼却灰は、ベルトコンベア11aにより乾燥機12に搬送された後、ベルトコンベア11bにより焼却灰保管庫13に収容される。焼却灰保管庫13内の焼却灰は、最終的に得られる硫黄固化体から重金属等の有害物質の溶出を確実に防止できるように、乾燥機12により十分乾燥しておくことが好ましく、例えば、含水率を3%以下に維持することが好ましい。焼却灰は、例えば、都市ゴミ、製紙類、下水汚泥等の焼却灰であり、一般廃棄物だけでなく、産業廃棄物も含まれる。また、主灰(ボトムアッシュ)だけでなく、飛灰(フライアッシュ)やこれらの混合物も含まれる。これらの焼却灰は、一般には多孔質であり、比表面積が大きいことから、後述する他の骨材とは区別しておくことが好ましい。
【0013】
細骨材および粗骨材は、それぞれ区別されて細骨材ピット20および粗骨材ピット30に貯留され、タイヤショベル21,31により細骨材保管庫22および粗骨材保管庫32に収容される。細骨材保管庫22および粗骨材保管庫32内の細骨材および粗骨材についても、焼却灰の場合と同様の理由から、低含水率(例えば3%以下)の乾燥状態を維持することが好ましい。
【0014】
細骨材および粗骨材は、川砂、砕砂、砂利、砕石、粘土、貝殻、ステンレススラグ、鉄鋼スラグ、鋳鉄スラグ、亜鉛スラグ、銅スラグ、焼成スラグ、溶融スラグ、研磨屑、がれき類、各種繊維等の骨材を、粒度によって区別したものである。一般には、5mmふるいを質量で85%以上通り10mmふるいは全て通過する骨材を細骨材とし、5mmふるいを質量で85%以上とどまる骨材を粗骨材としているが、必ずしもこの基準値に限定されるものではなく、含まれる骨材の種類や大きさ等に応じて適宜設定可能である。また、細骨材および粗骨材を粒度で区別する以外に、粒径や比重等、材料の比表面積と相関を有する他の基準で細骨材と粗骨材とを区別してもよい。
【0015】
焼却灰保管庫13、細骨材保管庫22および粗骨材保管庫32に収容された焼却灰、細骨材および粗骨材は、それぞれベルトコンベア11c,23,33により、定量フィーダ41,42,43に供給される。各定量フィーダ41,42,43には、溶融硫黄タンク40に加熱状態で貯留された溶融硫黄が、定量ポンプ49により定量供給される。溶融硫黄は、例えば石油精製の副産物として得られる単体硫黄を融点(例えば110〜140℃)に加熱して用いることができる。150℃以上になると溶融硫黄の粘性が発生するので好ましくない。
【0016】
定量フィーダ41,42,43は、ホッパー内に投入された材料をスクリュー押し出しによって連続的に定量供給できる公知の構成であり、ホッパー内に垂直に延びる回転軸に設けられた回転羽根により、各材料(焼却灰、細骨材または粗骨材)を溶融硫黄と個別に混合することができる。硫黄の溶融状態を維持できるように、ホッパーの側壁、回転軸、回転羽根には加熱ヒータを設けることが好ましい。定量フィーダ41,42,43から供給される混合物は、図2に示すように、いずれも混合ホッパー46に供給され、混合ホッパー46内で不図示の回転羽根により撹拌されて混合される。
【0017】
定量ポンプ49によって各定量フィーダ41,42,43に供給される溶融硫黄の流量を、各定量フィーダ41,42,43からの混合物の供給量とバランスさせることにより、硫黄の配合割合が略一定である混合物を各定量フィーダ41,42,43から混合ホッパー46に連続的に供給することができる。混合ホッパー46内で混合された混合物中の硫黄の配合割合は、全体に対して15〜35質量%であることが好ましく、19〜30質量%とすることがより好ましい。硫黄の配合割合がこの数値範囲を外れると強度低下を生じ易く、特に硫黄の配合割合が少なすぎると、焼却灰や骨材に含まれる重金属等の溶出を効果的に防止できないおそれがある。
【0018】
各定量フィーダ41,42,43内の混合物における硫黄の配合割合も、上記数値範囲を目安に設定することができるが、各定量フィーダ41,42,43に供給された焼却灰、細骨材および粗骨材は、硫黄の吸収性がそれぞれ異なることを考慮して、硫黄の吸収性が高い材料ほど硫黄の配合割合を高くすることが好ましい。すなわち、焼却灰、細骨材および粗骨材の各硫黄混合物に含まれる硫黄の配合割合は、いずれも同じに設定することも可能であるが、焼却灰の硫黄混合物が最も高く、粗骨材の硫黄混合物が最も低くなるように設定することが好ましい。
【0019】
本実施形態においては、焼却灰、細骨材および粗骨材をそれぞれ溶融硫黄と混合する定量フィーダ41,42,43とは別に、添加剤保管庫44に貯留された添加剤を定量供給する定量フィーダ45を備えている。添加剤としては、難燃性や耐腐食性等を向上させて改質硫黄を生成するための公知のものを使用することができ、オレフィン系化合物等を例示することができる。定量フィーダ45は、図2には示していないが、各定量フィーダ41,42,43からの混合物と共に、混合ホッパー46に添加剤を定量供給する。混合ホッパー46内で混合された混合物は分配管47に導入され、図1に示すように、複数の押出機50〜54に、それぞれ分配供給される。
【0020】
各押出機50〜54は、いずれも同様の構成を備えるものであり、図2では、そのうちの1つを示している。図2に示すように、押出機50は、分配管47により分配された混合物が、シューター50aおよびホッパー50bを介して導入されるように配置されている。押出機50は、ホッパー50bから基部側に供給された混合物を、スクリューの回転によって混練しながら先端に向けて搬送し、吐出口50cから押し出すことが可能な公知の構成であり、スクリューは1軸、2軸のいずれであってもよい。押出機50内において混合物を十分に加圧して圧縮できるように、押出機50の吐出圧力を、例えば10〜20MPaに設定することが好ましい。押出機50においても、定量フィーダ41,42,43と同様に硫黄の溶融状態を維持するため、ハウジングやスクリューの加熱を行うことが好ましい。
【0021】
各押出機50〜54から供給される混合物は、十分に圧縮された圧縮混合物であり、これらが再び合流して、加熱状態を維持したままスクリューコンベア55により型枠保温台60に向けて搬送される。型枠保温台60には、不図示の型枠が設置される。型枠への圧縮混合物の流し込みは、型枠保温台60により型枠に対して加熱と振動が与えられた状態で行われ、最終的に圧縮混合物を冷却・固化することにより、所望の形状を有する硫黄固化体を製造することができる。こうして得られる硫黄固化体は、護岸用矢板、人工リーフ、消波ブロック、漂砂防止ブロック、地盤強化材等の港湾土木用構造物、漁礁、藻場増殖ブロック、海流調整用山脈ブロック等の水産用構造物、あるいは、下水用施設、下水用ヒューム管、レントゲン室防護壁、放射性廃棄物防護壁等の建築用構造物のように種々の用途に使用することができ、各押出機50〜54の設置台数や能力を適宜調整することにより、硫黄固化体製品の大きさや生産量に対応可能である。
【0022】
硫黄固化体は、硫黄の特質である低温での固溶体化現象を利用して、溶融硫黄と混合する材料の結晶相に溶融硫黄を十分溶け込ませることにより、重金属等の有害物質の溶出を防止すると共に、高い強度を得ることができるため、材料の固相内の空隙である細孔内部に溶融硫黄を確実に浸入させることが要求される。この場合、溶融硫黄と混合する材料の比表面積のばらつきが大きいと、比表面積が大きい微細な材料や多孔質の材料によって溶融硫黄が消費され易くなる一方、比表面積が小さい材料には溶融硫黄が十分に行き渡らなくなるおそれがあるため、均一な固溶体が得られなくなるおそれがある。
【0023】
本実施形態の硫黄固化体の製造方法によれば、各定量フィーダ41,42,43において、溶融硫黄を焼却灰、細骨材および粗骨材と個別に混合して混合物を生成するようにしているので、比表面積が同等である材料毎に溶融硫黄と接触させて、短時間で均一な固溶体化を図ることができる。そして、これらの混合物を各押出機50〜54内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出するようにしているので、溶融硫黄を細孔内部に確実に浸透させることができ、高強度で有害物の溶出を確実に抑制することができる硫黄固化体を連続的に製造することが可能である。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、焼却灰、細骨材および粗骨材を各定量フィーダ41,42,43において溶融硫黄と個別に混合した後、それぞれを混合ホッパー46内で合流してから各押出機50〜54に供給しているが、各定量フィーダ41,42,43からそれぞれ押出機に直接供給することも可能であり、各混合物を押出機の内部で混合(混練)するようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、溶融硫黄と混合する材料を、焼却灰、細骨材および粗骨材としているが、焼却灰を使用せずに、細骨材および粗骨材を個別に溶融硫黄と混合するようにしてもよい。あるいは、細骨材および粗骨材を区別せずに、焼却灰と骨材とを個別に溶融硫黄と混合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
13 焼却灰保管庫
22 細骨材保管庫
32 粗骨材保管庫
40 溶融硫黄タンク
41,42, 43 定量フィーダ―
49 定量ポンプ
50 押出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融硫黄を焼却灰、細骨材および粗骨材と混合する混合工程と、
前記混合工程で生成された混合物を押出機内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出する圧縮工程とを備え、
前記混合工程は、焼却灰、細骨材および粗骨材を個別に溶融硫黄と混合した後に前記押出機に供給することを特徴とする硫黄固化体の製造方法。
【請求項2】
溶融硫黄を焼却灰および骨材と混合する混合工程と、
前記混合工程で生成された混合物を押出機内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出する圧縮工程とを備え、
前記混合工程は、焼却灰および骨材を個別に溶融硫黄と混合した後に前記押出機に供給することを特徴とする硫黄固化体の製造方法。
【請求項3】
溶融硫黄を細骨材および粗骨材と混合する混合工程と、
前記混合工程で生成された混合物を押出機内で加熱混練して加圧し、圧縮混合物を吐出する圧縮工程とを備え、
前記混合工程は、細骨材および粗骨材を個別に溶融硫黄と混合した後に前記押出機に供給することを特徴とする硫黄固化体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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