説明

硫黄固化成形物の製造に使用する被処理原料処理方法

【課題】
水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、シアン、六価クロム等の特定含有成分を多く含む廃棄物を安全で自然環境に対しても安全な硫黄固化成形物の製造方法の提供する。
【解決手段】
焼却灰、製鋼ダスト等の被処理原料に含まれる特定含有成分の含有量を測定し、この含有量の倍モル量のマグネシア処理剤を添加した添加水を、被処理原料の25%前後の量で少なくとも15分程度の混練で行った後、水分を2%以下とする乾燥工程を経て被処理物の事前処理することを特徴とします。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰、製鋼スラグなどの硫黄固化成形物の製造に使用する被処理原料処理方法に関し、特に、元来廃棄処分されている有害物質を含む無機系資材、及びゴミ焼却炉等から回収されるフライアッシュ等の廃棄物の硫黄固化成形物の製造に使用する被処理原料処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却灰、製鋼スラグなどを廃棄する方法として硫黄固化成形物による方法が提案されています。例えば、特許文献1は、製鋼スラグ、製鋼ダストなどの原料の含水量を3重量%以下とし、次いでこの原料を溶融硫黄と119〜159℃で加熱混練し、液状硫黄を固形原料の空隙に浸透させて、流動性混練物を調製し、次いでこの混練物を所定の形状に成形するというものです。
即ち、図3に示す如く、被処理物を50%、製鋼スラグを25%を乾燥混合して、含水量を3重量%以下とし、次いでこの原料と溶融硫黄を25%を120〜150℃で加熱混融を15分から20分行い、液状硫黄を固形原料の空隙に浸透させます。そして、これを型に入れ冷却し造型するか、又はそのまま水で水砕しながら冷却します。水砕して冷却したものにあっては、数mm〜cm程度の顆粒状の性状の製品となります。
この顆粒状の製品は、加熱すると軟化し土木資材として、そのまま或いは、コンクリート資材と併せて使用が可能である(特許文献2)。
【0003】
ところで、現在焼却灰残渣のうち、いわゆる主灰、ボトムアッシュの殆どは埋め立て処理されているのが現状で、飛灰については全く利用されず、特別管理廃棄物として処理・処分されています。そして、処理の方法は、ほとんどが薬剤処理であり、雨水による可溶性物質や耐候性に問題が多い。また、ばいじんの薬物処理には、長期的には溶出ポテンシャル量を有する廃棄物では変わりなく、自然環境に対しても安定な処理への視点が必要である。
そこで、このようなの廃棄物の処理を行うに際して、前記した硫黄固化成形物の製造方法は有益な手段であり、特許文献3に記載する技術では、産業廃棄物を効率的に利用でき、十分な効果を容易に得ることができ、しかも有害物質の環境中への流出が抑制された土木・建築用資材とできることが提案されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−318244号公報
【特許文献2】特開2001−163649号公報
【特許文献3】特許第3443653号公報
【特許文献4】特許第3443653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在焼却灰残渣野内、いわゆる主灰、ボトムアッシュ、飛灰の廃棄物には、焼却材料によるが、上述の重金属等の元素が多少含有される可能性があります。一般的に焼却灰の成分について、特許文献4では、大阪市内のごみ焼却設備から排出された例について、下記の表1に示します。
【表1】

この表からもわかるように、アルミニウムAl、鉄Fe、マンガンMn、銅Cu、ニッケルNi、亜鉛Zn、カドミウムCd、鉛Pb、ヒ素As等の種々の元素等が析出していることがわかります。
環境庁告示第46号に示されている基準においては、「総水銀量 検液1リットルにつき0.0005mg以下、カドミウム 検液1リットルにつき0.01mg以下、鉛 検液1リットルにつき0.01mg以下、六価クロム 検液1リットルにつき0.05mg以下、砒素 検液1リットルにつき0.01mg以下、全シアン 検液中に検出されないこと、セレン 検液1リットルにつき0.01mg以下であること、」等の基準があり、処理後の生成物が上記基準を満たす必要があります。従って、上記例では、水銀、カドミウム、鉛、砒素のそれぞれが基準値を超えています。特に特別管理廃棄物として処理・処分されている飛灰(捕集灰)については、上記水銀、カドミウム、鉛、砒素の数値が大きくなっている。従って、これらの廃棄物は、無害化した状態で廃棄する必要があります。ところで、例えば前記特許文献1〜3に記載されている硫黄固化成形物による封入により廃棄することが可能ではありますが、これらの主灰、ボトムアッシュの廃棄物粒子の外面が、完全に硫黄により被覆し含浸される場合には、全く問題がありませんが、粒子の表面の一部に硫黄が被覆され無い部分があった場合には、その粒子から重金属等が微量ながらしみ出る可能性があり、生産管理上十分に注意を要する課題を有していました。
本発明は、前記従来の課題を解消するためになされたもので、より安全で自然環境に対しても安全な硫黄固化成形物の製造方法の提供を目的とします。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明は、焼却灰、製鋼ダスト等の被処理原料に含有する水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、シアン、六価クロム、セレン(以下、「特定含有成分」と略称する)の含有量を測定し、この含有量の倍モル量のマグネシア処理剤を添加した添加水を、被処理原料の25%前後の量で少なくとも15分程度の混練で行った後、水分を2%以下とする乾燥工程を経て被処理原料の事前処理することを特徴とします。
また、請求項2記載の発明は、少量の被処理原料と、被処理原料のそれぞれ半分の量のスラグ及び硫黄を119〜160℃の温度で混練した後、0.19mm以下に冷却粉砕し、溶出試験を行い特定含有成分の溶出があった場合に請求項1に記載の事前に被処理原料の事前処理することを特徴とします。
【0007】
本発明は、硫黄固化成形物の製造するに際して、廃棄物を事前に焼却灰、製鋼ダスト等の被処理原料に含有する特定含有成分を含むを含有量を測定し、この含有量の倍モル量のマグネシア処理剤を添加した添加水を、被処理原料の25%前後の量で少なくとも15分程度の混練で行った後、水分を2%以下とする乾燥工程を経て被処理原料を製造するするものです。従って、事前にマグネシア処理剤に特定含有成分が大部分が吸着或いは化合し、無害化します。この状態の特定含有成分を、更に硫黄固化成形物とし、より安定した状態で封入することで、より確実に安全な処理が可能となります。
また、上記特定含有成分の含有量の、倍モル量のマグネシア処理剤倍モル量を使用しています。これは、水分添加量についてはマグネシア処理剤の使用量は少ない過ぎると十分な吸着或いは添加水ないで混練する際に、特定含有成分にマグネシア処理剤が接触する必要があるからです。
【0008】
また、少量の被処理原料と、当該被処理原料のそれぞれ半分の量のスラグ及び硫黄を119〜160℃の温度で混練した後、0.19mm以下に冷却粉砕し、溶出試験を行い特定含有成分の溶出があった場合にのみ前記マグネシア処理剤による事前に被処理原料の事前処理を行います。これは、被処理原料の種類によっては、特定含有成分の含有量が少ない場合には、当該マグネシア処理剤による事前に被処理物の事前処理を行わずとも十分な環境基準を満たすからであり、効率的な作業を行うことが出来ます。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定含有成分をマグネシア処理により、大部分の特定含有成分がマグネシュウム化合物となり、安全な物質としたとする被処理原料を事前に処理した後に、硫黄固化物の処理を行うことにより、環境に優しく、より確実に特定含有成分の溶出を防止することが出来ます。また、高濃度の焼却灰等特定含有成分が高濃度に含まれている被処理原料であっても、確実に処理が行える等優れた効果を有します。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の被処理原料の検査工程を示す説明図です。
【図2】本発明の被処理原料の処理方法製造を示す説明図です。
【図3】一般的な廃棄物の処理を行う硫黄固化成形物の製造方法を示す説明図です。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施する為の一形態を図1及び図2に示す説明図を基に説明する。
本発明に係る硫黄固化成形物の製造に使用する被処理原料処理方法に使用する被処理物の原料内に特定含有成分の含有の有無について検査します。
まず、被処理原料内の特定含有成分の有無を検査します。この検査は、図1に示す工程で処理されます。即ち、被処理原料の特定含有成分測定を行い、環境庁告示第46号に示されている基準値以下の特定含有成分の場合には、前処理工程を省略して、被処理原料をそのまま被処理物として、図3に示す通常の硫黄固化成形物の製造工程で硫黄固化物の製造を行います。
【0012】
次に、環境庁告示第46号に示されている基準値以上の場合には、原則的に被処理原料は、前処理工程を経ることとします。この特定含有成分が多い場合には、原則的に特定含有成分を精密測定し、被処理原料に含まれている特定含有成分量の精密測定を行います。ただ、特定含有成分が少ない場合などは、硫黄固化成形物の製造とほぼ同じ方法で検査試料を製造します。例えば、被処理原料10リットルに対し、粉砕スラグ5リットル、溶融した硫黄を119〜160℃の温度で15分混練した後、0.19mm以下に粉砕して検査試料を製造します。そしてこの試料を、例えばオランダAvailability試験で測定を行います。
この試験で特定含有成分が検出した場合に、特定含有成分の量を精密に測定します。溶出試験で、特定含有成分が検出されなかった場合には、前処理工程の省略が可能となります。
なお、この特定含有成分が多く検出された場合にも、上記試験を行って良いことは言うまでもありません。
【0013】
次に、本発明の前処理工程を、図2に基づいて説明します。
前記で特定含有成分の精密測定値に基づいて、被処理原料に含まれている特定含有成分の倍モル量のマグネシア処理剤を添加水に混ぜ、この添加水を被処理原料の25重量%をミキサー等に混入させて、15分程度の混練します。次いで、混練した被処理原料を乾燥機で水分を2%以下となるまで乾燥させ、後工程の硫黄固化成形物の製造に使用する被処理物を生成します。
なお、水分を2%以下とするのは、被処理原料内部の水分をほとんど飛ばす意義を有し、後工程の硫黄固化成形物の製造上必要だからです。
【0014】
本発明で使用するマグネシア処理剤は、マグネシア形成可能なマグネシュウム化合物、例えば、水酸化マグネシュウム、炭酸マグネシュウム、塩基性炭酸マグネシュウム等をその形態に応じて400〜700℃の比較的低温で、30分から数時間小生することで得ることが出来ます.このマグネシア添加剤は、通常、粉末状(平均粒径約1〜10μm)で用いられ、一般には、その98%以上が100メッシュ以下、好ましくは300メッシュ以下の粒度のものを用います。
【0015】
(実施例)
表は、多高温溶融飛灰の被処理原料の処理の一例を示したものです。
【表2】

【0016】
実施例にかかる被処理原料1kg、対し前記した測定物質の総モル量がPb20mg、Cd130mg、Hg0.047mg、Se0.02mgであり、総モル量は2.95となります。そしてマグネシュウム添加物は主にMgOであることより、マグネシア添加量は倍モル量として約118mgとなります。そして、処理原料1回の処理量は100リットルであることより、前記量の118gを添加し、10kgの添加水と共に被処理原料を15分混練を行い、これを乾燥して水分2%以下の被処理物を作る前処理工程としました。この後、図3に示す通常の硫黄固化成形物の製造を行いました。
この表からのわかるように、前記した倍モル量のマグネシュウムを添加して、前処理を行った本発明に係るマグネシュウム処理を行った場合には、溶出が無く前処理工程を設けることが有意義となっている。
なお、上記硫黄固化成形物の製造において、含水率:1〜3%、混練温度:120〜150℃、混練時間:15〜20分間で行きました。
溶出試験は、製品を2mm以下に粉砕し、10倍量の水中で6時間振とうしてろ過後の濾液を土壌環境基準値で実施しました。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰、製鋼ダスト等の被処理原料に含有する総水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、シアン、六価クロム、セレン(以下、「特定含有成分」と略称する)の含有量を測定し、この含有量の倍モル量のマグネシア処理剤を添加した添加水を、被処理原料の25%前後の量で少なくとも15分程度の混練で行った後、水分を2%以下とする乾燥工程を経て被処理物の事前処理することを特徴とする硫黄固化成形物の製造に使用する被処理原料処理方法。
【請求項2】
少量の被処理原料と、当該被処理原料のそれぞれ半分の量のスラグ及び硫黄を119〜160℃の温度で混練した後、0.19mm以下に冷却粉砕し、溶出試験を行い特定含有成分の溶出があった場合に請求項1の連事前に被処理物の事前処理することを特徴とする硫黄固化成形物の製造に使用する被処理原料処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−81432(P2012−81432A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230762(P2010−230762)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(595087576)株式会社猪狩環境科学研究所 (1)
【出願人】(510272702)株式会社 サット・ストラテジー (1)
【Fターム(参考)】