説明

硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法およびその装置

【課題】排ガス中に含まれる硫酸ミストのミスト径を大きくして捕集効率を向上させる。
【解決手段】本発明の排ガス処理方法は、乾式電気集塵装置130に排ガスを導入して塵埃を除去したのち、湿式脱硫装置140に排ガスを導入して脱硫する硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法である。乾式電気集塵装置130と湿式脱硫装置140との間の煙道170aの排ガスを徐冷するバイパス管10の下流側の排ガス温度及び流量を測定し、下流側の排ガス温度が酸露点となるようにバイパス管10により排ガスを徐冷し、排ガスに含まれる硫酸ミストを捕集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電所から排出される硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法及びその装置に係り、特に排ガス中に含まれる硫酸ミストを捕集する排ガスの処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所のボイラから排出される排ガス中には、主成分となる二酸化炭素のほか、燃料に含有された硫黄分から生成された硫黄化合物や、高温・高圧状態の燃焼室で窒素が酸化された窒素酸化物などの有害物質が含まれている。そこで排出される排ガスが周辺環境に影響を与えないように連続的に脱窒・脱硫の捕集処理を経てから大気中に排出している。ここで一般的な排ガス処理設備はボイラ側から脱硝装置、乾式電気集塵装置、湿式脱硫装置、湿式電気集塵装置の順に配置されている。
【0003】
ところで排ガスに含まれる硫黄化合物は、二酸化硫黄(SO)が主であるが、ボイラ内での燃焼や触媒酸化によって、一部は三酸化硫黄(SO)となりさらに三酸化硫黄は水と反応して硫酸になる。この三酸化硫黄は濃度が数十ppmの場合、温度が百数十度以上ではガス状であるが、ガス温度が硫酸露点(例えばSO濃度が1〜100ppmの場合、硫酸露点は120度から150度)以下になると、凝縮して硫酸ミストになる。この硫酸ミストは腐食性があるので、湿式脱硫装置の前段では、排ガスを硫酸露点よりも高い温度、例えば約170度以上にエアヒータで温度制御して、硫酸ミストの発生を抑制している。
【0004】
一方、湿式脱硫装置は、ガス温度が水の露点近傍で最も脱硫性能が高いため、装置内では多量の循環水をスプレーしている。従って、湿式脱硫装置では、排ガス温度が約170度から水分の露点である約50度〜60度まで急激に低下される。このとき排ガス中の硫酸は湿式脱硫装置内の温度降下時にミスト化される。このような急冷による硫酸ミストは粒径が小さいため、噴霧スラリとの衝突確率が低く、湿式脱硫装置で除去することは困難である。そこで後段の湿式電気集塵装置で硫酸ミストを除去している。
【0005】
また排ガスに含まれる硫酸ミストを捕集する手法として特許文献1には湿式脱硫装置に導入する排ガスに水などの液体を噴霧し、該排ガスの温度を120度〜150度にまで冷却し、冷却温度を0.5秒以上維持する方法が開示されている。この方法によれば湿式脱硫装置に導入される排ガス中の硫酸ミストの平均粒径を相対的に大きくすることができる。したがって、湿式脱硫装置を通過した排ガス中の硫酸ミストの平均粒径も相対的に大きくなり、後段の湿式電気集塵装置での硫酸ミストの捕集性能を高めることができる。
【0006】
さらに特許文献2の排煙脱硫方法は、ダスト捕集後の排ガスを熱交換器によって冷却し、増湿冷却によって飽和させ、次いで排ガス温度よりも温度が低い飽和空気を混入してミストを発生させて微細ダストを捕集している。
【特許文献1】特開2002−45643号公報
【特許文献2】特開平10−230128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
湿式電気集塵装置は、捕集対象であるミストの粒径によって捕集性能が大きく影響され、ミスト径が小さいと、捕集効率は大きく低下する。すなわち径の小さいミストは移動速度が小さいので捕集効率も低くなり、高効率で捕集するには、荷電時間を増加させる必要があるため湿式電気集塵装置の装置容量を大きくしなければならず、装置が大型化する問題がある。
【0008】
また排ガスを急冷すると凝縮効果が得られずミスト径が小さくなる。このため、特許文献1の排ガスを冷却するためのスプレー水噴霧は、ミスト径が小さくならないようにする噴霧水粒径と水量の調整が容易でない。
【0009】
特許文献2の排煙脱硫方法は、微細ダストを核とする水蒸気を凝縮してミストを発生させて微細ダストの捕集効率を上げるものであり、特許文献1と同様に噴霧水粒径と水量の調整が困難である。また硫酸ミストのミスト径については何ら考慮されていない。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、排ガス中の硫酸ミストのミスト径を大きくして捕集の効率化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、乾式電気集塵装置に排ガスを導入して塵埃を除去したのち、湿式脱硫装置に排ガスを導入して脱硫する硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法であって、前記湿式脱硫装置より上流側の煙道の排ガス温度及び流量を測定し、前記排ガス温度及び流量の測定値に基づいて、前記煙道を流れる前記排ガスの流路を長くして放熱させながら前記排ガスを酸露点まで徐冷し、前記排ガスに含まれる硫酸ミストを捕集することを特徴としている。
【0011】
本発明の排ガスの処理装置は、乾式電気集塵装置に排ガスを導入して塵埃を除去したのち、湿式脱硫装置に排ガスを導入して脱硫する硫黄酸化物を含む排ガスの処理装置であって、前記乾式電気集塵装置と前記湿式脱硫装置の間の煙道を流れる前記排ガスの流路を迂回させて前記排ガスを徐冷する放熱手段と、前記湿式脱硫装置より上流側の煙道内の排ガス温度及び流量を測定するセンサと、前記放熱手段と前記センサに接続し、前記センサの測定値に基づいて前記放熱手段により前記排ガス温度を徐冷し酸露点に制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0012】
また本発明の排ガスの処理装置は、乾式電気集塵装置に排ガスを導入して塵埃を除去したのち、湿式脱硫装置に排ガスを導入して脱硫する硫黄酸化物を含む排ガスの処理装置であって、前記乾式電気集塵装置と前記湿式脱硫装置の間の煙道を流れる前記排ガスを徐冷する熱交換器と、前記湿式脱硫装置より上流側の煙道内の排ガス温度及び流量を測定するセンサと、前記熱交換器と前記センサに接続し、前記センサの測定値に基づいて前記熱交換器により前記排ガス温度を徐冷し酸露点に制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、石炭火力発電所の排ガス処理設備において、湿式脱硫装置に導入する排ガスを酸露点まで徐冷している。具体的には湿式脱硫装置の前段の煙道に放熱手段となるバイパス管を設けて排ガスを迂回させて放熱し、排ガス温度を酸露点まで徐冷している。これにより、排ガスの冷却温度の調整が難しい水噴霧によらず、放熱により排ガスを徐冷して凝縮効果により硫酸ミストのミスト径を大きくすることができる。よって脱硫装置でのミスト捕集効率が向上し、後段の湿式電気集塵装置を小型化することができる。したがって湿式電気集塵装置のイニシャルおよびランニングコストが低減される。
【0014】
またボイラから吸引ブロワまでの煙道を密閉系で排ガス温度を制御することができる。よって吸引ブロワの吸引負荷を上げることなく、吸引ブロワを稼動能力範囲で稼動させることができる。
さらに熱交換により排ガスを徐冷して凝縮効果により硫酸ミストのミスト径を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法およびその装置の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1は実施形態に係る硫黄酸化物を含む排ガス処理装置の主要部分の説明図である。図2は硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法の全体フロー図である。図3は本発明のバイパス管の説明図である。
【0016】
まず図2に示すように硫黄酸化物を含む排ガスの全体処理フローについて説明する。火力発電所等のボイラ100から排出される排ガスには窒素酸化物・硫黄酸化物・塵埃等が含まれている。そこでまず排ガスはボイラ100から脱硝装置110に導入される。脱硝装置110では窒素酸化物を含んだ排ガスにアンモニアを噴霧した後、触媒層に通す。窒素酸化物は触媒の働きで窒素と水に分解される。脱硝装置110を通過した排ガスの温度をエアヒータ120によって硫酸ミストが発生しない酸露点以上の温度に制御する。次にエアヒータ120を通過した排ガスを乾式電気集塵装置130に導入し、排ガス中の塵埃を除塵する。次に除塵された排ガスは、後述する本発明に係る放熱手段を配置した煙道170aにおいて温度制御を行なう。温度制御された排ガスは湿式脱硫装置140に導入され、消石灰や水酸化マグネシウム等のスラリを噴霧することによって、主に排ガス中の二酸化硫黄を吸収して除去する。そして脱硫された排ガスは、湿式電気集塵装置150に導入され、ミストが除去された後、排ガスを煙突160から大気中に放出する。なお排ガスの処理設備は、ボイラ100から煙突160までの間を煙道170で接続し、湿式電気集塵装置150と煙突160の間には吸引ブロワ180が配置されている。吸引ブロワ180によりボイラ100から湿式電気集塵装置150までの煙道の排ガスを吸引した後、処理ガスを煙突160から大気中に放出するようにしている。また煙道の上流側とはボイラが接続する側であって、煙道の下流側とは煙突が接続する側をそれぞれ示している。
【0017】
次に本発明に係る放熱手段について説明する。放熱手段となるバイパス管10は図1に示すように乾式電気集塵装置130の出口から湿式脱硫装置140の入口の間を繋ぐ煙道170aの排ガスの流路に沿って迂回するように複数設けている。このバイパス管10に排ガスを導入することにより排ガス流路を長くすることができる。バイパス管10は、図3に示すように煙道170よりも小径の配管であって、一端の開口を煙道170aを流れる排ガスの導入口10aとし、他端の開口を排ガス導入口10aから導入された排ガスを煙道170aに再び排出する排出口10bとしている。バイパス管10は、排ガス導入口10aを煙道170の上流側に、排ガス排出口10bを煙道170の下流側にそれぞれ取付け、排ガスの流路(図1矢印A)に沿って煙道170aに複数設けている。またバイパス管10の排ガス導入口10aには逆流防止弁12aを取り付けている。逆流防止弁12aは、排ガスが煙道170aからバイパス管10へ流れるように取り付けている。そして逆流防止弁12aはバイパス管10から煙道170aへ排ガスが流れる逆流を防止している。さらに排ガス排出口10bには、逆流防止弁12bを取り付けている。逆流防止弁12bは、排ガスがバイパス管10から煙道170aへ流れるように取付けている。そして逆流防止弁12bは煙道からバイパス管へ排ガスが流れる逆流を防止している。
【0018】
煙道170aには開閉弁14を取り付けている。開閉弁14は、バイパス管10の排ガス導入口10aと排ガス排出口10bの間の煙道170aに取付け、煙道を流れる排ガスの流量を任意に調整できるようにしている。開閉弁14はバイパス管10の設置数(a〜n)に応じて取り付けている。バイパス管10は開閉弁14を迂回するように配置している。
【0019】
また煙道170aには排ガスの温度センサ16を取り付けている。実施形態に係る温度センサ16は、煙道170aの最も上流側に取り付けたバイパス管10aの排ガス導入口10a付近に第1の温度センサ16aを取付け、最も下流側に取り付けたバイパス管10nの排ガス排出口10b付近であって、湿式脱硫装置の上流側となる位置に第2の温度センサ16bを取り付けている。温度センサ16はセンサ部が煙道内に挿入してあり、上流側および下流側の煙道内を流れる排ガスの温度を測定している。
【0020】
制御部18は開閉弁14と温度センサ16に接続している。制御部18は、第1、第2温度センサ16bの測定値に基づいて開閉弁14の開閉量を調整可能に取り付けている。
【0021】
さらに実施形態に係る排ガスの処理装置には、外気温度センサ20と煙道壁面の温度センサ22と排ガス流量センサ24を取り付けている。外気温度センサ20は煙道170a周辺の外気温度(T)を測定する温度センサである。煙道壁面の温度センサ22は、煙道170aの壁面温度(T)を測定する温度センサである。また排ガス流量センサ24は、第1温度センサ16aと第2温度センサ16bと同様に煙道170aの上流側と下流側の2箇所に取り付けている。すなわち第1の流量センサ24aは、煙道170aの最も上流側に取り付けたバイパス管10aの排ガス導入口10a付近に取り付けている。また第2の流量センサ24bは、最も下流側に取り付けたバイパス管10nの排ガス排出口10b付近であって、湿式脱硫装置の上流側となる位置に取り付けている。このような外気温度センサ20と、煙道壁面の温度センサ22と、排ガス流量センサ24は、前記制御部18に接続し、各測定値を送信可能に構成してある。なお図1において制御部18は、説明の便宜上、開閉弁14および温度センサ16に接続している構成を示し、外気温度センサ20と、煙道壁面の温度センサ22と、排ガス流量センサ24との接続構成は省略して示している。
【0022】
次に上記構成による硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法を説明する。硫黄酸化物を含む排ガスは、ボイラ100から脱硝装置110に導入され窒素酸化物が除去される。そしてエアヒータ120により排ガス中のSOが凝縮して硫酸ミストが発生しない酸露点(120度〜150度)以上の温度、例えば170度に制御されて乾式電気集塵装置130に導入される。乾式電気集塵装置130では排ガスに含まれる塵埃を除塵する。乾式電気集塵装置130による除塵処理を経た排ガスは、乾式電気集塵装置130と湿式脱硫装置140の間の煙道170aに導入される。そして煙道170aに設けた第1温度センサ16a,第2温度センサ16bにより煙道上流側の排ガス温度T及び下流側の排ガス温度Tを測定する。また第1の流量センサ24aと第2の流量センサ24bにより煙道上流側の排ガス流量V及び下流側の排ガス流量Vを測定する。制御部18では、第1温度センサ16a及び第2温度センサ16bと、第1の流量センサ24a及び第2の流量センサ24bの測定値(T,T,V,V)が入力され、煙道170a下流側の排ガス温度の測定値Tが酸露点(120度〜150度)となるよう温度制御を行なう。すなわち制御部18は、煙道170aの上流側と下流側の排ガス温度及び排ガス流量、外気温度、煙道の壁面温度の測定値に基づいて排ガスを迂回(バイパス)させるバイパス管10の数を決定する。
【0023】
具体的なバイパス管数の決定は以下に示すように行なう。本発明では一例として配管の断面形状が円形の場合について以下説明する。煙道170a内部の排ガス温度が上流側の排ガス温度Tから下流側の排ガス温度Tへ変化する際に、排ガスの放熱量Q[W]は次式のように表すことができる。
【数1】

ここで、mは排ガス重量速度を示し、Cは煙道の上流側温度と下流側温度の間の排ガス温度の平均温度T=(T+T)/2時の排ガスの比熱を示している。またm=ρの関係より数式1は次式のように表すことができる。
【数2】


ここでρは前記平均温度T時の排ガスの比重を示し、Vは上流側流量と下流側流量の間の排ガス流量の平均流量V=(V+V)/2を示している。数式2に示すQは煙道170aの上流側及び下流側の排ガス温度(T,T)及び流量(V,V)より求めることができる。
【0024】
次に、バイパス管10を通る迂回経路の排ガスの放熱量Q[W]は次式のように表すことができる。
【数3】


ここで、Sallはバイパス管の表面積を示し、D,Lはそれぞれバイパス管の断面径及びバイパス管の全長を示し、α,αはそれぞれ煙道内壁及び外壁での平均熱伝達率を示し、dはバイパス管壁の厚さ、λは煙道壁面温度T時のバイパス管の熱伝導率を示している。数式3に示すQは煙道170aの上流側及び下流側の排ガス温度(T,T)及び流量(V,V)と、さらに外気温度T及び煙道の壁面温度Tの測定値により求めることができる。
【0025】
本発明では排ガス温度を放熱させるため、排ガスの放熱量Qとバイパス管を通じての排ガスの放熱量QがQ=Qの関係となる。これによりバイパス管の断面径が既知であれば、バイパス管の全長(L)を求めることができる。
【0026】
次にガス温度をTまで下げるのに必要なバイパス管の本数をn、バイパス管1本あたりの長さをlとすると、次式のように表すことができる。
【数4】

以上より排ガスの放熱に用いるバイパス管10の本数を求めることができる。
【0027】
例えば、排ガスを通すバイパス管10の本数が1本の場合、バイパス管10aのみ迂回させるため、開閉弁14aを徐々に締めていく。なお開閉弁14の開閉量は、排ガス流量・温度差等に基づいて、全開から閉塞の間で任意に調整することができる。そうすると煙道170aを流れる排ガスの一部が、バイパス管10aの導入口に取り付けた逆流防止弁12aの弁を押し上げ、バイパス管10a内に流入する。バイパス管10a内を流れる排ガスは、バイパス壁面からの放熱によって徐々に冷却される。そしてバイパス管10aの排出口10bに取り付けた逆流防止弁12bの弁を押し上げ、再び煙道170aに流れ込む。このように排ガスはバイパス管10を経由(迂回)することによって酸露点まで徐冷される。
【0028】
また、複数のバイパス管10a〜10nを選択した場合、バイパス管10a〜10nに排ガスを導入するように開閉弁14a〜14nを締める。煙道170aの上流側を流れる排ガスは、開閉弁14aによって流路を塞がれ、バイパス管10aの逆流防止弁12aを押し上げバイパス管10a内に流れ込む。バイパス管10aを流れる排ガスは、バイパス管10aによる放熱によって徐冷されたのち、逆流防止弁12bから煙道170aに流れる。そして煙道170a中の排ガスは、再び開閉弁14bによって流路を塞がれバイパス管10bの上流側の逆流防止弁12aを押し上げバイパス管10b内に流れ込む。バイパス管10bを流れる排ガスは、バイパス管10bによる放熱によって徐冷されたのち、逆流防止弁12bから煙道170aに流れる。煙道170a中の排ガスはこのような迂回(図1の破線矢印)をバイパス管10nまで繰り返す。
【0029】
バイパス管10を流れる排ガスは、バイパス管10の壁面からの放熱によって、バイパス管10内の排ガスが170度から酸露点まで徐冷される。そして排ガス中のSOはガス状のSOからSOミストとなり、凝縮してミスト径が大きくなる。
【0030】
また開閉弁14により排ガスの一部をバイパス管10に導入した場合、バイパス管10の排ガス排出口10bから煙道170に排出されたミスト径の大きいSOミストは、バイパス管10を通過しない煙道170中の他のSOと凝縮して連鎖的に粒径の大きなSOミストが発生する。
【0031】
なお実施形態に係るSOミストの徐冷時間は、特許文献1において開示されているように設定することができ、酸露点120度〜150度の範囲で平均ミスト径が1.7μm〜2.0μmと大きくなるように、冷却温度を0.5秒以上にすると良い。よってバイパス管10の長さは、前記排ガス中のSOミストが徐冷されて粒径が大きくなるのに必要な0.5秒以上の移動距離を確保できるように設定すると良い。
【0032】
このような粒径が大きくなったSOミストは、湿式脱硫装置140に導入され消石灰や水酸化マグネシウム等のスラリが噴霧されて水の露点付近まで低下する。湿式脱硫装置140でSOおよびSOミストが除去される。脱硫した排ガスは、湿式電気集塵装置150に導入される。
【0033】
このように本実施形態に係る湿式電気集塵装置150は、前段の湿式脱硫装置140においてミスト径の大きなSOミストが除去されているため、装置容量を小さくすることができ、イニシャルおよびランニングコストを低減することができる。
【0034】
なお煙道の排ガスの酸露点温度の制御は、温度センサ16の測定値を目視により確認し、手動で煙道170aの開閉弁14の開閉量を調整するようにしても良い。またバイパス管の外表面に放熱フィンを設置するとよい。これにより排ガスの放熱量が増加してバイパス管の長さの短縮化を図ることができる。またバイパス管10の逆流防止弁12は、管路を開閉可能であれば開閉弁を用いてもよい。
【0035】
次に本発明の排ガス処理装置の変形例を説明する。図4は本発明の排ガス処理方法の変形例を示す説明図である。図4に示す変形例は、図1に示す排ガスの放熱手段に代えて同様の作用をなす熱交換器30を用いている。実施形態に係る熱交換器は例えば伝熱管をコイル状に巻き回し、コイル部分31を煙道170内に挿入し、伝熱管の両端を伝熱管に冷媒を供給する恒温槽32に取り付けている。また伝熱管のいずれか一端と恒温槽32との間には開閉弁34を取り付けている。この熱交換器30は乾式電気集塵機130と湿式脱硫装置140間の煙道170aの内部に排ガスの流路に沿って直列に複数取り付けている。煙道170aには、図1と同様に第1温度センサ16a,第2温度センサ16b、排ガス流量センサ24a,24b、煙道壁面温度センサ22を取付け、図1と同様に作用しその詳細説明を省略する。また恒温槽32には冷媒温度センサ33を取付け、恒温槽32の冷媒温度Tを制御部18に送信可能に構成している。
【0036】
上記構成による排ガスの処理装置は、図1に示す処理装置と同様に処理している。すなわち除塵処理を経た排ガスが流れる煙道170aの上流側と下流側の排ガス温度及び流量、恒温槽の冷媒温度、煙道の壁面温度を測定する。この測定値に基づいてQを求める。またQはバイパス管の代わりに熱交換器を、外気温度Tの代わりに恒温槽32の冷媒温度Tをそれぞれ適用して同様に求めることができる。これにより制御部18は、煙道下流側の排ガス温度が酸露点となるように、熱交換器30の稼動数を決定し、稼動させる熱交換器30の開閉弁を開放する。開放された熱交換器30に恒温槽32からの冷媒が供給され、煙道中の排ガスが熱交換器30を通過する際、コイル表面に接触して酸露点まで徐冷される。そして排ガス中のSOはガス状のSOからSOミストとなり、凝縮してミスト径が大きくなる。
【0037】
なお図4に示す熱交換手段は、熱交換器を煙道内に挿入した形態を示しているが、煙道を流れる排ガスを冷却できる構成であれば熱交換器の形態はこれに限らず、例えば煙道の外表面に巻き付ける形態でも同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法の主要部拡大図である。
【図2】硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法の全体フロー図である。
【図3】本発明のバイパス管の説明図である。
【図4】本発明に係る硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法の変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10………バイパス管、12………逆流防止弁、14………開閉弁、16………温度センサ、18………制御部、20………外気温度センサ、22………煙道壁面温度センサ、24………排ガス流量センサ、30………熱交換器、32………恒温槽、33………冷媒温度センサ、100………ボイラ、110………脱硫装置、120………エアヒータ、130………乾式電気集塵装置、140………湿式脱硫装置、150………湿式電気集塵装置、160………煙突、170………煙道、180………吸引ブロワ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式電気集塵装置に排ガスを導入して塵埃を除去したのち、湿式脱硫装置に排ガスを導入して脱硫する硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法であって、
前記湿式脱硫装置より上流側の煙道の排ガス温度及び流量を測定し、
前記排ガス温度及び流量の測定値に基づいて、前記煙道を流れる前記排ガスの流路を長くして放熱させながら前記排ガスを酸露点まで徐冷し、
前記排ガスに含まれる硫酸ミストを捕集することを特徴とする硫黄酸化物を含む排ガスの処理方法。
【請求項2】
乾式電気集塵装置に排ガスを導入して塵埃を除去したのち、湿式脱硫装置に排ガスを導入して脱硫する硫黄酸化物を含む排ガスの処理装置であって、
前記乾式電気集塵装置と前記湿式脱硫装置の間の煙道を流れる前記排ガスの流路を迂回させて前記排ガスを徐冷する放熱手段と、
前記湿式脱硫装置より上流側の煙道内の排ガス温度及び流量を測定するセンサと、
前記放熱手段と前記センサに接続し、前記センサの測定値に基づいて前記放熱手段により前記排ガス温度を徐冷し酸露点に制御する制御部と、
を有することを特徴とする硫黄酸化物を含む排ガスの処理装置。
【請求項3】
乾式電気集塵装置に排ガスを導入して塵埃を除去したのち、湿式脱硫装置に排ガスを導入して脱硫する硫黄酸化物を含む排ガスの処理装置であって、
前記乾式電気集塵装置と前記湿式脱硫装置の間の煙道を流れる前記排ガスを徐冷する熱交換器と、
前記湿式脱硫装置より上流側の煙道内の排ガス温度及び流量を測定するセンサと、
前記熱交換器と前記センサに接続し、前記センサの測定値に基づいて前記熱交換器により前記排ガス温度を徐冷し酸露点に制御する制御部と、
を有することを特徴とする硫黄酸化物を含む排ガスの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168255(P2008−168255A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5505(P2007−5505)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】