説明

硬化して改良シーラントとなるプレポリマーの製法及びそれからなる生成物

【課題】機械的性質の優れた組合せを示し、適度の時間で硬化して低粘着のシーラントとなり、過度の粘度を有しないシリル化ポリウレタン類を提供する。
【解決手段】上記シリル化ポリウレタン類は、0.02meq/g未満の末端不飽和を有するポリオール成分をジイソシアナート成分と反応させてヒドロキシル末端プレポリマーを生成させ、次いで式OCN−R−Si−(X)m(−OR13-m(式中mは0、1または2、各R1は1ないし4個の炭素原子を含有するアルキル、各Xは1〜4個の炭素原子を含有するアルキル、またRは二官能性有機基)のイソシアナートシランで該プレポリマーを末端封鎖することによって調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシランで末端封鎖したポリウレタンプレポリマー及びそれから作った組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンポリマーは、種々のオルガノシラン類でイソシアナート基の一部または全部を末端封鎖することによりその官能性を調節して最小またはゼロのイソシアネ−ト基を含有するシラン末端封鎖ウレタンポリマーを得るように改良されている。たとえば、Brode及びConteの米国特許第3,632,557号明細書には、室温で硬化可能なシラン末端ポリマーが得られる第一級及び第二級脂肪族アミノシラン類によるポリウレタンの完全末端封鎖が開示された。Bryant及びWeisは米国特許第3,979,344号明細書(特許文献1)において、加硫可能なシラン末端ポリウレタン類に配合された少量の3−(N−2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランが金属及びガラスのプライマー組成物に有用な、すぐれた硬化速度を有する室温硬化可能なシラン末端シーラント組成物を生成することが開示した。Bryantらは米国特許第4,222,925号明細書(特許文献2)において、強力補強カーボンブラック充填剤及び場合によりジブチルスズジアセテートのような湿分硬化触媒の添加による米国特許第3,979,344号(特許文献3)に述べたと同様の組成物を開示した。
【0003】
Bergerらの米国特許第4,374,237号明細書(特許文献4)には少なくとも一部の末端イソシアナート基を、2個のトリアルコキシシラン基を有するシランモノマーを含有する第二級アミンと反応させた硬化可能なイソシアナート末端ポリウレタン類が記載された。該化合物はすぐれた湿潤接着を有するシーラント組成物に有用であるとして開示された。
【0004】
他のシラン末端封鎖ウレタンポリマー及びシーラントがSeiterの米国特許第3,627,722号明細書(特許文献5)に開示されており、それにはかなりの比率ではあるが、好ましくはすべてではない末端封鎖イソシアナート基を含有するアルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン類、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン類及びアリールアミノアルキルトリアルコキシシラン類のようなポリウレタンシーラントが記載されており、Barron及びTurkの米国特許第4,067,844号(特許文献6)にはNCO末端の一部をあるアミノシラン類(またはメルカプトシランとモノエポキシドとの反応の残基、もしくはエポキシシランと第二級アミンとの反応の残基)と反応させた硬化可能なポリウレタン類が開示されており、Rizkらの米国特許第4,345,053号明細書(特許文献7)には、末端活性水素原子を有するポリウレタンを、末端イソシアナート基及びケイ素に結合された少なくとも1個の加水分解可能なアルコキシ基を有するイソシアナトオルガノシランと反応させることによって調製される湿分硬化可能なシラン末端ポリマーが開示され、またRizk及びHsiehの米国特許第4,625,012号明細書(特許文献8)には、末端イソシアナート基、及び少なくとも1個の加水分解可能なアルコキシ基がケイ素に結合されたシラン基(該シラン基は連鎖の側基であることができる)を有する湿分硬化可能なポリウレタンが開示された。
【0005】
シラン末端封鎖ウレタンシーラントは、かなりの伸び及び圧縮を必要とする用途に有効となるには不十分なたわみ性を示すことが多い。この問題を克服するために、Pohl及びOsterholtzの米国特許第4,645,816号明細書(特許文献9)は末端イソシアネート基を1個のジアルコキシシラン基、及び少なくとも1個の活性水素を有する有機官能基を有するシランモノマーと反応させた新規種類の室温湿分硬化可能なシラン末端ポリウレタン類を記載した。該ポリマーは架橋して優れたたわみ性を有するエラストマー網状組織を生成した。
【0006】
硬化エラストマーの架橋密度を低下させる他の方法は、シラン末端封鎖剤として窒素に大きな置換基がついた第二級アミノシラン類を用い、好ましくは遊離イソシアナート末端基をすべて該第二級アミノシラン類と反応させることである。Fengは欧州特許出願第676,403号明細書(特許文献10)において、とくに1個のジアルコキシシラン基を有するアリールアミノシラン類の使用がさらにすぐれたたわみ性という付加利点をもたらすことを報告した。Zwienerらは米国特許第5,364,955号明細書(特許文献11)において、あるN−アルコキシシリルアルキルアスパラギン酸エステルを使用する同様の利点を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,979,344号
【特許文献2】米国特許第4,222,925号
【特許文献3】米国特許第3,979,344号
【特許文献4】米国特許第4,374,237号
【特許文献5】米国特許第3,627,722号
【特許文献6】米国特許第4,067,844号
【特許文献7】米国特許第4,345,053号
【特許文献8】米国特許第4,625,012号
【特許文献9】米国特許第4,645,816号
【特許文献10】欧州特許出願第676,403号
【特許文献11】米国特許第5,364,955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
典型的にはウレタンプレポリマーの末端封鎖にアミンの反応性を利用する二官能性シラン類及び/または立体障害を示すシラン類の使用にはいくつかの欠点がある。シラン類を含有する第二級アミンはウレタンプレポリマーとの反応が遅く、またジアルコキシ官能性シラン類で末端封鎖されたポリマーは典型的に硬化がきわめて遅い。とくに、アミノシラン類を用いるときに経験する尿素の生成はプレポリマーの重要な粘度上昇を生じ、潜在的に処理問題及び適用制限をもたらす。
【0009】
かなりのたわみ性を有するように意図されるシリル化前駆物質の末端封鎖剤としてトリアルコキシシラン基を使用するには、したがって三官能性末端封鎖剤の使用に固有の架橋密度を相殺させるために、著しく高平均分子量を有する伸長ポリマー鎖の形成を必要とした。しかし、このことは、とくに尿素結合を形成するアミノシラン末端封鎖剤を用いると最終生成物の受け入れがたいほど高レベルの粘度上昇をもたらした。通常のポリエーテルポリオール類を用いるポリウレタン重付加反応によって鎖長を伸ばす合成系路はシラン末端封鎖以前にウレタンプレポリマーの残留官能性を無視できる程小さくするという問題を生じた。したがって、この種の系の合成は適切ではないかもしれず、かつ/または該系は許容できない硬化プロフィル及び機械的性質を示すかもしれない。
【0010】
したがって、好ましい粘度、迅速な硬化、ならびにすぐれた機械的性質、たわみ性及び最終硬化後の残留不粘着を同時に示すシリル化ポリウレタン前駆物質に対する要望がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、シロキサン架橋ポリマー網状組織の最終硬化後に満足すべき性状及びたわみ性を示すアルコキシ官能性シラン類で末端封鎖された高分子量ウレタンポリマーの合成である。該官能性シラン末端封止剤、とくに三官能性シラン末端封鎖剤の使用は迅速な硬化速度の付加利点を与える。シリル化されるポリウレタンプレポリマーの生成中に、極めて低不飽和のポリエーテルポリオール類を用いて不脆性の弾性材料を与えるシリル化ポリウレタン類を調製できることが見出された。
【0012】
したがって、本発明の1つの態様は、(A)(i)分子量が2,000〜20,000のポリオール1グラム当たり0.02ミリ当量未満の末端不飽和を有するポリオール成分と(ii)ジイソシアナート成分とを、前記ジイソシアナート成分に対して前記ポリオール成分を理論量よりも過剰に反応させ、それによってヒドロキシル末端のポリウレタンプレポリマーを生成させ、ついで(B)前記ポリウレタンプレポリマーを式:OCN−R−Si−(X)m(−OR13-m(式中、mは0、1または2であり、各R1は1〜4個の炭素原子を含有するアルキルであり、好ましくはメチルまたはエチルであり、各Xは1〜4個の炭素原子を含有するアルキルであり、好ましくはメチルまたはエチルであり、そしてRは二官能性有機基であり、好ましくは2〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の二官能性アルキルである)の1種以上のイソシアナートシラン類と反応させて、前記イソシアナートシランで前記プレポリマーのヒドロキシル基を末端封鎖することを含むシリル化ポリウレタンの調製法である。
【発明の効果】
【0013】
金属錯体触媒存在下のアルキレンオキシドの重合は高分子量及び極めて低不飽和レベルのポリエーテルポリオール類の合成を可能にする。これらポリエーテルポリオール類は重付加反応による極めて高分子量のポリウレタン類合成の理想的な出発物質である。この固有の高分子量は、ウレタンプレポリマーの著しく低粘度をもたらすウレタンポリマー鎖長の増大のために硬質セグメントの量を減少させることができる。さらにその低不飽和レベルは究極的シラン末端封鎖及び最終硬化のために連鎖延長の間に官能性を失うことなくウレタンプレポリマーの分子量を増大させることができる。
【0014】
本発明の他の態様は前記の方法によって調製されたシリル化ポリウレタン類である。本発明のこの態様は、著しく低い残留表面粘着を示す極めて高分子量のシリル化ポリウレタン類の合成を可能にする。比較すると、高分子量を有するウレタンプレポリマー類の合成用遊離体(educt)として通常のポリエールポリオール類を用いると最終生成物中に過度の残留表面粘着の欠点をもたらす。したがって本発明のこの態様はイソシアナートアルコキシシラン末端封鎖剤を用いて高分子量、低粘度のシリル化ポリウレタン類を生成し、そして該シリル化生成物はシーラント、接着剤、コーティング等の優れた前駆物質である。該前駆物質を使用する配合物は低粘度、好適な加工性及び作業性、迅速な硬化プロフィル、ならびに残留表面粘着をほとんど示さないたわみやすい弾性材料における優れた機械的性質及びたわみ性を同時に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリマー
本発明に有用な、末端に活性水素を有するウレタンポリマーは、有機ジ−またはポリイソシアナート反応物成分と、ポリエーテルポリオールであることができるかまたはポリオール類の組合せ物を含む、理論量よりも過剰のポリオール反応物成分との反応によって調製することができる。それぞれの反応物の反応性に依存して触媒を使用できよう。反応温度は典型的に60℃から90℃までの範囲にあり、また反応時間は典型的に約2〜8時間の程度である。実施例調製物は次項に示す。
【0016】
適当な有機ジ−及びポリイソシアナート類には2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、4,4′−ジフェニル−メタンジイソシアナート、2,4′−ジフェニル−メタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(“IPDI”),4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアナート異性体、DESMODUR N等、及びそれらの混合物がある。
【0017】
ウレタンプレポリマーの製造には、反応において1種以上のジオール及びトリオール、たとえば2個以上のヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリブタジエンジオール類、ポリオキシアルキレンジオール類、ポリオキシアルキレントリオール類、ポリテトラメチレングリコール類、ポリカプロラクトンジオール及びトリオール類等を使用することができる。本発明に用いられる好ましいポリオール類はポリプロピレングリコール類である。本発明に用いられるポリオール類は不飽和レベルが極めて小さく、したがって官能性が大きい。前記ポリオール類は典型的にアルキレンオキシド重合用金属錯体触媒を用いて調製されて、ポリオール1グラム当たり0.02ミリ当量(meq/g)未満、好ましくは0.005ミリ当量以下という低レベルの末端エチレン不飽和を有するポリオール類をもたらす。ポリオール類の分子量は典型的には約2,000から20,000までの範囲、さらに好ましくは3,000から10,000までの範囲にある。
【0018】
本発明に有用な活性ヒドロキシル基末端ポリウレタン類を調製するには、−NCO当量(基)に対して少なくとも僅か過剰モル量のヒドロキシル当量(−OH基)を用い、ポリマー鎖をヒドロキシル基で末端停止させる。NCO対OHの好ましいモル比は約0.3〜0.95であり、使用するポリマーによっては0.5〜0.85がさらに好ましい。
【0019】
活性水素末端原子を有するウレタンプレポリマーの末端封鎖用として本発明に適する有機官能性シラン末端封鎖剤は一般式:OCN−R−Si−(X)m(OR′)(3-m)(式中Rは二価の有機基であり、各R′は1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、Xは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、またmは0〜2の整数である)によって表される。基Rは末端イソシアナート基とアルコキシシラン基との間に安定な架橋を形成する任意の種々の構造を有することができる。このようなイソシアナトアルコキシシラン化合物の多くの構造が、たとえば米国特許第4,146,585号明細書の第4欄及び第5欄に記載されている。しかし、好ましくはRは2〜6個の炭素原子、さらに好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する低級アルキレン基である。とくに好ましい材料はガンマイソシアナトプロピルトリエトキシシラン及びガンマイソシアナトプロピルトリメトキシシランである。
【0020】
活性水素原子を有するウレタンプレポリマーを上記イソシアナートシランとほぼ理論量で反応させて、1個以上の末端アルコキシシラン基を有する安定なプレポリマーを生成させる。
【0021】
ウレタンプレポリマーの合成のみならず以後のシリル化反応も、アルコキシシラン基の早期加水分解を防ぐために無水条件、好ましくは窒素ブランケットのような不活性雰囲気中で行う。両方の反応工程の典型的な温度範囲は0℃〜150℃、さらに好ましくは60℃〜90℃である。典型的にはシリル化ポリウレタン合成の全反応時間は4〜8時間である。
【0022】
上記ウレタンプレポリマーのみならず関連シリル化ポリウレタン類の調製に典型的に用いられる触媒はジアルキルスズジカルボキシレート類たとえばジブチルスズジラウレート及びジブチルスズアセテート、第三級アミン類、カルボン酸スズ(II)塩たとえばオクタン酸スズ(II)及び酢酸スズ(II)等である。本発明に用いられる好ましい触媒はジブチルスズジラウレートである。
【0023】
合成は標準滴定法(ASTM 2572−87)及び赤外分析法を用いてモニターする。いずれかの方法によって残留NCOのないことがモニターできれば、ウレタンプレポリマーのシリル化は完了とみなされる。
シーラント
上記シラン末端ウレタンポリマーを含む一液型シーラント配合物を、シリル化ポリウレタン及び通例の官能性添加剤、たとえば1種以上の充填剤、可塑剤、チキソトロープ剤、酸化防止剤、UV安定剤、接着増進剤及び/または硬化触媒を一緒に混合することによって調製することができる。満足すべき混合は二重遊星形ミキサーを用いて得られる。典型的には、シリル化ウレタンポリマー、充填剤、安定剤及び可塑剤を真空中で80℃において60〜90分間混合する。50℃に冷却後、所望のシラン接着増進剤、脱水剤及び硬化触媒を加えて、混合物を窒素雰囲気中でさらに30分間撹拌する。
【0024】
シーラントの配合に適する典型的な充填剤にはヒュームドシリカ、沈降シリカ及び炭酸カルシウム類のような補強充填剤がある。配合物の物理的強度をさらに改善するために黒色系を生じる主充填剤として補強カーボンブラックを用いることができる。“CORAX”製品(Degussa)のような本発明に有用な二三の市販グレードのカーボンブラックがある。透明な配合物を得るには、主充填剤として、カーボンブラックではなくて、高レベルのヒュ−ムドシリカまたは沈降シリカを用いる必要がある。
【0025】
粒径が0.07μm〜4μmの処理炭酸カルシウム類が好ましい充填剤であって、幾つかの商品名、たとえば“ULTRA PFLEX”及び“HI PFLEX”(Specialty Minerals製);“WINNOFILSPM”及び“WINNOFIL SPT”(Zencca Resins製);“HUBERCARB 1Qt”、“HUBERCARB 3Qt”及び“HUBERCARB W”(Huber製)ならびに“KOTOMITE”(ECC製)で市販されている。これらの充填剤は単独または混合して使用することができる。充填剤は通常シリル化ウレタンポリマー100部当たり最高200部を占め、80〜150部がさらに好ましい充填レベルである。
【0026】
ポリウレタンシーラントに通例用いられる可塑剤を、性状を改善し、また高充填剤レベルの使用を容易にするために本発明においても使用することができる。例示的な可塑剤にはフタレ−ト類、ジプロピレン及びジエチレングリコールジベンゾエート類ならびにそれらの混合物、エポキシ化大豆油等がある。ジオクチル及びジイソデシルフタレートの有用な供給源にはExxon Chemical製商品名“JAYFLEX DOP”及び“JAYFLEX DIDP”として市販されているものがある。ジベンゾエート類はVelsicol Chemical Corporationから“BENZOFLEX9−88”、“BENZOFLEX50”及び“BENZOFLEX400”として市販されている。大豆油はUnion Carbide Corporationから“FLEXOL EPO”として市販されている。可塑剤は典型的にシリル化ウレタンポリマー100部当たり最高100部を占め、100部当たり40〜80部が好ましい。
【0027】
シーラント配合物は種々のチクソトロピック剤または垂れ防止剤を含むことができる。この種の添加剤は種々のヒマ蝋(castor wax)、ヒュームシリカ、処理クレー及びポリアミドによって代表される。これら添加剤はシリル化ウレタン成分100部当たり典型的に1〜10部を占め、1〜6部が好ましい。有用なチキソトロープ剤にはDegussa製“AEROSIL”、Cabot製“CABO−SIL TS720”、CasChem製“CASTORWAX”、Rheox製“THIXATROL”及び“THIXCIN”、ならびにKing Industries製“DISLON”として市販されているものがある。
【0028】
U.V.安定剤及び/または酸化防止剤は本発明のシーラント配合物中にシリル化ウレタンポリマー100部当たり0〜5部の量で含まれることができ、0.5〜2部が好ましい。これらの材料はGreat Lakes及びCiba−Geigyのような会社から、それぞれ“ANOX20”及び“UVASIL299HM/LM”(Great Lakes)ならびに“IRGANOX1010”、“TINUVIN770”、“TINUVIN327”、“TINUVIN213”、“TINUVIN622LD”(Ciba−Geigy)という商品名で市販されている。
【0029】
種々の有機官能性シラン接着増進剤は本発明のシーラント配合物に有用である。これらの材料はシリル化ウレタンポリマー100部当たり典型的には0.5〜5部のレベルで用いられ、ポリマー100部当たり0.8〜2.0部が好ましい。適切な接着増進剤には“SILQUEST A−1120”シラン、“SILQUEST A−2120”シラン、“SILQUEST A−1110”シラン、“SILQUEST A−1170”シラン及び“SILQUEST A−187”シランがあり、これらはすべてWitcoのOrganoSilicones Groupから市販されている。
【0030】
適切な硬化触媒はさきにシリル化ウレタンポリマーの調製の場合に記載したものと同じである。触媒はシリル化ウレタンポリマー100部当たり典型的に0.01〜3部を占め、ポリマー100部当たり0.01〜1.0部が好ましい。
【0031】
混合後、シーラントは典型的に23℃及び相対湿度50%において14日間で硬化する。
【実施例】
【0032】
試験方法
合成後、シリル化ポリウレタンの一部を、硬化触媒としての1重量%のジブチルスズジラウレート(DBTDL)と十分に混合した。触媒とシリル化ポリマーとの均一混合物を次にTEFLON PTFE成形型に流し込み、23℃及び相対湿度50%において2週間の間硬化用耐候室内に置いた。その後硬化したポリマーフィルムを相当するシーラントに適用する試験法を用いて本明細書に記載するように試験を行った。
【0033】
ウレタンプレポリマー、関連シリル化ポリウレタン、及び配合シーラントの粘度はICI式円錐平板粘度計(cone&plate viscometer)を用い、典型的には156s-1及び環境温度条件において測定した。
【0034】
硬化シリル化ポリウレタン及び関連シーラントの物理的性質は、引張強さについては米国材料試験協会(ASTM)試験法D412により試験して、破断点引張強さ、破断点伸び及び100%モジュラスの値を明らかにし、また引裂強さについてはASTM試験法D624によって試験した。
【0035】
材料の硬度はショアA硬さ試験法を用いて観察した。硬化系の残留粘着は指触によって観察し、4から0までの尺度で測定した。この場合に4は残留粘着のないことを示し、また0は強粘着を示す。
【0036】
下記の事例は前記ポリマー及び関連シーラント系の代表的な例である。表1は代表的配合物を示すポリマー系を要約する。特定ポリマーフィルム及び関連シーラント系の性状及びクレームが主張できる利点をそれぞれ表2及び表3に示す。
実施例1(系A)
規定ヒドロキシル価が27.9、相当する分子量が約4021、不飽和レベルが0.13〜0.18である通常のポリオキシプロピレンポリオール(VORANOL P4000,Dow Chemicals)414g(0.103mole)とNCO/OH比が1.4を示す4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(4,4′−MDI,ISONATE M125,Dow Chemicals)36.1g(0.144mole)との混合物に反応触媒−遅延剤系としてそれぞれ60ppmのDBTDL及び20ppmのベンゾイルクロリドを加え、約3時間70〜75℃で絶えず撹拌(30rpm)を持続して、NCO含量をほぼ0.8重量%に低下させた。ついでこのイソシアナート末端ポリウレタンプレポリマー(PUR A)を21.4g(0.084mole)という相当量のN−フェニル−ガンマアミノプロピルトリメトキシシラン(Silane I)と反応させて、シリル化ポリウレタンSPUR Aを生成させた。反応はNCO含量がゼロになるまで70〜75℃に保持した。
実施例2(系B)
規定不飽和レベルが0.005meq/g、規定ヒドロキシル価が28.4、相当する分子量が3950である低不飽和ポリオキシプロピレンポリオール(ACCLAMTM4200,ARCO Chemical)322g(0.082mole)とNCO/OH比が1.4を示す4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(4,4′−MDI,ISONATE M125,Dow Chemicals)28.5g(0.114mole)との混合物に触媒として20ppmのDBTDLを加え、約3時間70〜75℃で絶えず撹拌(30rpm)を持続して、NCO含量を略0.8重量%に低下させた。次いでこのイソシアナート末端ポリウレタンプレポリマー(PUR B)を18.6g(0.073mole)という相当量のN−フェニル−ガンマアミノプロピルトリメトキシシラン(Silane I)と反応させて、シリル化ポリウレタンSPUR Bを生成させた。反応はNCO含量がゼロになるまで70〜75℃に保持した。
実施例3(系C)
低不飽和ポリオキシプロピレンポリオール(ACCLAIMTM4200,ARCO Chemicals)382g(0.094mole)とNCO/OHの比が0.62を示す4,4′−MDI(ISONATE M125,Dow Chemicals)14.5g(0.058mole)との混合物に触媒として20ppmのDBTDLを加え、約3時間70〜75℃で絶えず撹拌(30rpm)を持続して、そのNCO含量をゼロに低下させた。次いでこのヒドロキシル基末端ポリウレタンプレポリマー(PUR C)を14.6g(0.071mole)のガンマイソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silane II)と反応させて、シリル化ポリウレタンSPUR Cを生成させた。反応はNCO含量がゼロになるまで70〜75℃に保持した。
実施例4(系D)
規定不飽和レベルが0.005meq/g、規定ヒドロキシル価が13.8及び相当する分子量が8130である低不飽和ポリオキシプロピレンポリオール(ACCLAIMTM8200,ARCO Chemicals)311.4g(0.038mole)とNCO/OHの比が0.5を示すIPDI(VESTANATE,Huls)4.3g(0.019mole)との混合物に触媒として40ppmのジブチルスズジラウレ−トを加え、約3時間70〜75℃で絶えず撹拌(30rpm)を持続してそのNCO含量をゼロに低下させた。ついでこのヒドロキシル基末端ポリウレタンプレポリマー(PUR D)を9.93g(0.04mole)のガンマイソシアナトプロピルトリエトキシシラン(Silane III)と反応させてシリル化ポリウレタンSPUR Dを生成させた。反応はNCO含量が再びゼロになるまで70〜75℃に保持した。
実施例5(系E)
低不飽和ポリオキシプロピレンポリオール(PPO,ACCLAIMTM8200,ARCO Chemicals)238.1g(0.029mole)とNCO/OHの比が0.67を示すIPDI(VESTANATE,Huls)4.35g(0.019mole)との混合物に触媒として40ppmのジブチルスズジラウレートを加え、70〜75℃で約3時間絶えず撹拌(30ppm)を持続してNCO含量をゼロに低下させた。次いでこのヒドロキシル基末端ポリウレタンプレポリマー(PUR E)を5.06g(0.02mole)のガンマイソシアナトプロピルトリエトキシシラン(Silane III)と反応させて、シリル化ポリウレタンSPUR Eを生成させた。反応はNCO含量がゼロになるまで70〜75℃に保持した。
【0037】
100〜120gのプレポリマーをガラスジャーに注入することによってフィルムを作った。このジャーの蓋はガスの入口/出口及び撹拌ロッドの気密回転を可能にする装置を備えている。気泡ガ存在しなくなるまでポリマーを室温において真空で脱ガスした。ジャーを開けて1重量%のスズ触媒をポリマー中に入れた。ジャーを閉じた後混合物が均一になるまで真空中で混合することによって触媒をポリマーに包含させた。ジャーの内容物をPTFE成形型に注ぎ込み空気の湿分と反応させ、約3mmのポリマーシートを得て、23℃及び相対湿度50%において2週間後に試験を行った。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
実施例6〜10(系F〜K)
シーラント系−実施例F〜K−を前記の方法を用いて配合した。下記の成分及び量を使用した:
【0041】
【表3】

【0042】
シーラントの性能特性を表4に要約する。
【0043】
【表4】

【0044】
系A及びBならびにそれらの関連するシーラントF及びGをそれぞれ直接比較すると、この技術に従来タイプまたは低不飽和タイプのポリエーテルポリオールを用いる場合の明らかな影響が明示される。著しく低レベルの末端エチレン性不飽和を有するポリエーテルポリオールは、機械的性質を犠牲にすることも、また残留粘着を増すこともなく、重付加反応によって分子量の大きなシリル化ウレタンポリマーの合成が可能である。引裂強さ(ポリマーフィルム及びシーラントの場合にそれぞれ175%及び67%)、破断点引張強さ(ポリマーフィルム及びシーラントの場合にそれぞれ233%及び80%)、100%モジュラス、及びショアAの増大、ならびに破断点伸びの低い値は、すべて高官能性、したがって改良架橋網状組織の反映である。
【0045】
系B及びCならびに関連シーラントG及びHの比較はそれぞれ、系の粘度に対する、シラン末端封鎖におけるアミノシラン類またはイソシアナートシラン類のいずれかの使用の影響を示す。イソシアナートシラン末端封鎖は、実施例に粘度の3分の1減少で示されるように同一分子量でとりわけ低粘度のシリル化プレポリマーをもたらす。この性質は実施例に粘度の5分の1減少で示されるように典型的に対応するシーラント配合物にも引き継がれる。
【0046】
系D及びEは伸長鎖長のシリル化ポリウレタンを生成する能力及びさらに重付加反応によって好ましい粘度を得る能力を示す。低不飽和レベルのポリエーテルポリオールは、たわみ性を犠牲にすることなく末端封鎖に三官能性シラン類が使用できるほどの高分子量ウレタンプレポリマーの合成を可能にする。系E及びその関連シーラント配合物Kは包括的に本発明を説明する。低不飽和ポリエーテルポリオール類の使用は、低粘度で良好な機械的性質及びたわみ性を示し、さらに残留粘着が小さくまた急速硬化プロフィルという利点をさらに有する三官能性イソシアナートシラン類で末端封鎖した伸長鎖長のウレタンプレポリマーの合成を可能にする。
実施例11−12(ポリマーU、V及びシーラントX、Y)
実施例U:通常のポリオキシプロピレンポリオール(VORANOL P4000,Dow Chemicals)315.3g(0.079mole)とNCO/OHの比が0.75を示す4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(4,4′−MDI,ISONATE M125,Dow Chemicals)14.8g(0.059mole)との混合物にジブチルスズジラウレート(DBTDL)触媒として5ppmのスズを加え、約3時間70〜75℃で絶えず撹拌(30rpm)を持続してNCO含量をゼロに低下させた。次いでこのヒドロキシル基末端ポリウレタンプレイマー(PUR U)を8.47g(0.041mole)のガンマイソシアナトプロピルトリメトキシシラン(SilaneII)と反応させてシリル化ポリウレタンSPUR Uを生成させた。反応はNCO含量が再びゼロになるまで70〜75℃に保持した。
【0047】
実施例V:低不飽和ポリオキシプロピレンポリオール(ACCLAIMTM4200,Lyondell Chemicals)315g(0.082mole)とNCO/OHの比が0.75を示す4,4′−MDI(ISONATE M125,Dow Chemicals)15.4g(0.062mole)との混合物にDBTDL触媒として10ppmのスズを加え、約3時間70〜75℃で絶えず撹拌(30rpm)を持続してNCO含量をゼロに低下させた。次いでこのヒドロキシル基末端ポリウレタンプレポリマー(PUR V)を8.82g(0.043mole)のガンマイソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silane II)と反応させてシリル化ポリウレタンSPUR Vを生成させた。反応はNCO含量が再びゼロになるまで70−75℃に保持した。
【0048】
【表5】

【0049】
フィルム及びシーラントは前記の方法によってプレポリマーU及びVからつくった。
【0050】
【表6】

【0051】
シーラントの性能特性を表7に要約する。
【0052】
【表7】

【0053】
系U及びならびにその関連シーラントX及びYの直接比較はそれぞれ、この技術における通常タイプまたは低不飽和タイプのポリエーテルポリオールの使用の明らかな影響を示す。概してポリオールの0.02meq/g未満の極めて低レベルの末端エチレン不飽和を有するポリエーテルポリオールは、機械的性質を犠牲にせず、または残留表面粘着を増すことなく、重付加反応によって分子量の大きなシリル化ウレタンポリマーの合成を可能にする。引裂強さ(ポリマーフイルム及びシーラントの場合にそれぞれ93%及び120%)、破断点引張強さ(ポリマーフイルム及びシーラントの場合にそれぞれ282%及び110%)、100%モジュラス、及びショアAの増大、ならびに破断点伸びの低い値は、すべて高官能性、したがって改良架橋網状組織を反映する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)分子量が2,000〜20,000ドルトンでポリオール1グラム当たり0.02ミリ当量未満の末端不飽和を有するポリオール成分と(ii)ジイソシアナート成分とを、前記ジイソシアナート成分に対して前記ポリオール成分を理論量よりも過剰に反応させ、それによってヒドロキシル末端のポリウレタンプレポリマーを生成させ;ついで
(B)前記ポリウレタンプレポリマーを、式(1):OCN−R−Si−(X)m(−OR13-m(式中mは0、1または2であり、各R1は1〜4個の炭素原子を含有するアルキルであり、各Xは1〜4個の炭素原子を含有するアルキルであり、そしてRは二価の有機基である。)の1種以上のイソシアナートシラン類と反応させて、前記イソシアナートシランで前記プレポリマーのヒドロキシル基を末端封鎖することを含むシリル化ポリウレタンの調製法。
【請求項2】
Rが2〜6個の炭素原子を含有する二価の直鎖または分枝鎖アルキルである請求項1記載の方法。
【請求項3】
mがゼロである請求項1記載の方法。
【請求項4】
mが1である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記式(1)のイソシアナートシランがガンマイソシアナトプロピルトリメトキシシランまたはガンマイソシアナトプロピルトリエトキシシランである請求項1記載の方法。
【請求項6】
ポリオール1グラム当たり0.005ミリ当量以下の末端不飽和を有するポリオール成分を用いる請求項1記載の方法。
【請求項7】
(A)(i)分子量が2,000〜20,000ドルトンでポリオール1グラム当たり0.02ミリ当量未満の末端不飽和を有するポリオール成分と(ii)ジイソシアナート成分とを、前記ジイソシアナート成分に対して前記ポリオール成分を理論量よりも過剰に反応させ、それによってヒドロキシル基末端のポリウレタンプレポリマーを生成させ;ついで
(B)前記ポリウレタンプレポリマーを、式(1):OCN−R−Si−(X)m(−OR13-m(式中mは0、1または2であり、各R1は1〜4個の炭素原子を含有するアルキルであり、各Xは1〜4個の炭素原子を含有するアルキルであり、またRは二価の有機基である。)の1種以上のイソシアナートシラン類と反応させて、前記イソシアナートシランで前記プレポリマーのヒドロキシル基を末端封鎖することを含む方法によって調製されるシリル化ポリウレタン。
【請求項8】
mがゼロである請求項7記載のシリル化ポリウレタン。
【請求項9】
mが1である請求項7記載のシリル化ポリウレタン。
【請求項10】
前記式(1)のイソシアナートシランがガンマイソシアナトプロピルトリメトキシシランまたはガンマイソシアナトプロピルトリエトキシシランである請求項7記載のシリル化ポリウレタン。
【請求項11】
前記ジイソシアナート成分が2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート異性体、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項7記載のシリル化ポリウレタン。
【請求項12】
ポリオール1グラム当たり0.005ミリ当量以下の末端不飽和を有するポリオール成分を用いて調製される請求項7記載のシリル化ポリウレタン。

【公開番号】特開2009−149902(P2009−149902A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36018(P2009−36018)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【分割の表示】特願平11−13801の分割
【原出願日】平成11年1月22日(1999.1.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】