説明

硬化体の養生装置

【課題】 改質処理体によって硬化体の性質を改良する養生装置を提供するとともに、低コストで改質処理体の流出を防ぐことができ、また搬出入作業を行う作業員が改質処理体中で作業することがなく、改質処理体の損失量が少ない硬化体の養生装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 硬化体Aが格納されて密閉される容器2が備えられ、容器2内には硬化体Aの性質を改良する改質処理体Cが充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス等の改質処理体によって、コンクリート製品やモルタル製品などの硬化体の性質を改良しつつ養生することができる硬化体の養生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート製品を養生する方法として、コンクリート製品を高温の水蒸気下で養生する蒸気養生がある。蒸気養生は、コンクリートの促進養生の一つであり、常圧100℃以下での常圧蒸気養生では主に初期強度を増進させることができ、高圧高温蒸気養生(オートクレーブ養生)では初期強度を増進させるとともに優れた寸法安定性及び耐食性を得ることができる。蒸気養生は、養生室内にコンクリート製品を配置し、養生室内に高温の蒸気を供給して行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、近年では、炭酸ガス雰囲気中でコンクリート製品を養生させる炭酸化養生が提案されている。この方法によれば、セメントと水との反応によって生成される遊離石灰[Ca(OH)]は、炭酸ガス[CO]と接触することにより炭酸カルシウム[CaCO]が生成され、体積が膨張する。体積が膨張すると、マトリックス内の空隙は充填されて緻密化されるため、吸水率を減少するとともに強度を増加することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−211433号公報
【特許文献2】特開平5−24952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の蒸気養生では、初期強度を増進させることができるが、養生後に発現される強度を増加させることはできないという問題が存在する。また、コンクリート製品には微小な空隙が多数形成されているため、長期間圧力が加わると水分や気体が浸透し得るという問題が存在する。
また、上記した炭酸化養生では、高濃度の炭酸ガスは人体及び地球環境に悪影響を及ぼすため、蒸気養生と同様にして行うとすると、炭酸ガスが外に漏れないように養生室の密閉性を確保する必要があり、安全性の確保には相当のコストが必要であるという問題が存在する。また、蒸気養生では、養生室に出入口が設けられ、蒸気養生を行いつつ、作業員が養生期間が経過したコンクリート製品を搬出するとともに新しいコンクリート製品を養生室内に搬入するが、炭酸化養生の場合は、作業員が養生室内に入ってコンクリート製品を出し入れすることは危険を伴う作業となるため好ましくない。また、出入口を開ける度に養生室内の炭酸ガスが外に流出するため、炭酸ガスの損失量が多くなるという問題もある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、コンクリート製品等の硬化体の性質を炭酸ガス等の改質処理体によって改良することができる養生装置を提供するとともに、低コストで改質処理体の流出を防ぐことができ、また搬出入作業を行う作業員が改質処理体中で作業することがなく、改質処理体の損失量が少ない硬化体の養生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る硬化体の養生装置は、硬化体が格納されて密閉される容器が備えられ、該容器内には前記硬化体の性質を改良する改質処理体が充填されていることを特徴としている。
このような特徴により、硬化体は、密閉された容器内で改質処理体と反応するため、容器が置かれた空間を密閉する必要はなく、他の硬化体の搬出入を行っても養生中の容器内の改質処理体が流出することはない。
【0007】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、容器が移動可能に配置されていることが好ましい。
これによって、硬化体を改質処理体雰囲気中で養生しながら移送することができる。
【0008】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、容器内に改質処理体を供給する供給手段が備えられていることが好ましい。
これによって、容器内に適当な量の改質処理体を充填することができ、容器内の改質処理体濃度を硬化体の養生に適した濃度に保つことができる。
【0009】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、容器に、該容器内の改質処理体の濃度を検出する濃度検出手段が備えられていること好ましい。
これによって、容器の密閉性を保ったまま容器内の改質処理体の濃度管理を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、容器内の湿度調整を行う湿度調整手段が備えられていることが好ましい。
これによって、改質処理体で硬化体の性質を改良するのに適した湿度を保つことができる。
【0011】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、容器内の温度を上昇させる加熱手段が備えられていることが好ましい。
これによって、改質処理体で硬化体の性質を改良するのに適した温度まで加熱することができる。
【0012】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、容器内に圧力を加える加圧手段が備えられていることが好ましい。
これによって、容器内に圧力が加えられ、改質処理体と硬化体との反応は促進される。
【0013】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、改質処理体には、炭酸ガス又は炭酸水からなり、硬化体には、セメント系の硬化性物質からなることが好ましい。
これによって、セメント系の硬化性物質からなる硬化体の表面部分は炭酸化されて緻密化され、強度も増加する。
【0014】
また、本発明に係る硬化体の養生装置は、排気ガスを供給する排気ガス供給手段が備えられ、容器中の改質処理体には排気ガスが含有されていることが好ましい。
これによって、環境に影響を及ぼす排気ガスを効率的に再利用することができるとともに、省エネルギーを図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る硬化体の養生装置によれば、硬化体が格納されて密閉された容器内には改質処理体が充填されており、硬化体は密閉された容器内で改質処理体と反応するため、容器が置かれた空間を密閉する必要はなく、低コストで改質処理体の流出を防ぐことができる。また、他の硬化体の搬出入を行っても養生中の容器内の改質処理体が流出することはないため、改質処理体がない空間で作業員が硬化体の搬出入作業を行うことができ、また養生中の容器内に充填された改質処理体の損失量を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る硬化体の養生装置の第1,第2の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る養生装置1を表す模式図である。図1に示すように、養生装置1は、養生室R内に配置されており、コンクリート製品(硬化体)Aが格納されている容器2と、容器2内に炭酸ガス(改質処理体)Cを供給する炭酸ガス供給手段3と、容器2内の温度を上昇させるヒーター(加熱手段)4と、容器2内に圧力を加える加圧ユニット(加圧手段)5と、容器2内の湿度調整を行う湿度調整手段6と、炭酸ガス供給手段3,ヒーター4及び加圧ユニット5をそれぞれ制御する制御盤(制御手段)7とから構成されている。
【0018】
容器2は図示せぬ扉が設けられた移動可能な箱状のものであり、図示せぬ扉が完全に閉じることで密閉性(気密性)が確保されるものである。容器2の外周には、例えばポリエチレンフォームなどからなる断熱材8が被覆されており、容器2が断熱材8で包み込まれた状態となっている。容器2内の底部には基台9が設けられており、コンクリート製品Aは基台9上に載置されている。なお、容器2は箱状のものに限らず、ポリエチレン等の気密性が確保できる袋状のものでもよい。
【0019】
また、容器2には、容器2内の炭酸ガスC濃度を検出する濃度センサー10と、容器2内の温度を検出する温度センサー11と、容器2内の圧力を検出する圧力計12と、容器2内の湿度を検出する湿度センサー13とが付設されている。濃度センサー10,温度センサー11,圧力計12、湿度センサー13には、検出した結果を表示する表示部10a,11a,12a,13aが容器2の外側にそれぞれ設けられており、容器2内の炭酸ガスC濃度,温度,圧力,湿度はそれぞれ目視確認できる。また、濃度センサー10,温度センサー11,圧力計12よって検出された検出データは制御盤7にそれぞれ伝達される。
【0020】
炭酸ガス供給手段3は、炭酸ガスCが貯留された図示せぬタンクと、炭酸ガスCを送り出す送出部14と、送出部14から送り出された炭酸ガスCが流通するガス供給管15とから構成されている。容器2に付設されて容器2の内部に連通された第1の接続部16と送出部14とはガス供給管15を介して接続されており、接続管15は容器2内に連通されている。炭酸ガス供給手段3によって、容器2内には炭酸ガスCが充填されている。
【0021】
ヒーター4は、容器2の内部に配置されており、容器2内の天井部に設けられている。ヒーター4は例えば電気ヒーターからなり、容器2内部のほぼ中央の位置に配置されている。
加圧ユニット5は、例えばコンプレッサーやシリンダー、ゴムバッグ等からなるものであり、連通管17を介して容器2に付設されて容器2の内部に連通された第2の接続部18に接続されている。
【0022】
湿度調整手段6は、容器2内に張られた養生水19と、容器2内に配置された金属塩20とから構成されている。容器2内の温度や圧力が上昇することで養生水19が飽和し、容器2の湿度は上昇する。また、金属塩20を容器2内の湿気に溶解させることによって容器2内の湿度は低下する。湿度調整手段6によって、容器2内の湿度は、30%〜65%の範囲に調節される。
【0023】
制御盤7は、濃度センサー10,温度センサー11及び圧力計12にそれぞれ接続されており、濃度センサー10,温度センサー11及び圧力計12によって検出された検出データを基に炭酸ガス供給手段3,ヒーター4及び加圧ユニット5をそれぞれ制御するものである。制御盤7によって送出部14は制御され、容器2内の炭酸ガスC濃度は5%〜30%の範囲に調節される。また、制御盤7によってヒーター4は制御され、容器2内の温度は40℃〜65℃の範囲に調節される。さらに、制御盤7によって加圧ユニット5を制御され、容器2内の気圧は大気圧〜10気圧の範囲に調節される。
【0024】
次に、上記した構成からなる養生装置1の使用方法について説明する。
【0025】
まず、密閉された容器2内にコンクリート製品Aを配置する工程を行う。具体的には、容器2の図示せぬ扉をあけて、容器2の中にコンクリート製品Aを入れて基台9上に載置させる。そして、容器2の図示せぬ扉を閉めて容器2内を密閉する。
【0026】
次に、炭酸ガス供給手段3によって容器2内に炭酸ガスCを充填する工程を行う。具体的には、炭酸ガスCを送出部14からガス供給管15内に送り、ガス供給管15内を流通する炭酸ガスCをガス供給管15から第1の接続部16を経由させて容器2内に流入させる。このとき、濃度センサー10によって容器2内の炭酸ガスC濃度を検出し、検出したデータを制御盤7に伝達する。制御盤7は検出データを基に送出部14をコントロールし、容器2内の炭酸ガスC濃度が5〜30%になったところで送出部14を停止させる。また、容器2内の炭酸ガスC濃度は、濃度センサー10の表示部10aで確認することができる。
【0027】
また、ヒーター4によって容器2内を所定温度に調節する工程を行う。具体的には、ヒーター4を稼動させてヒーター4の熱により密閉された容器2内の温度を上昇させる。容器2の周りには断熱材8が被覆されているため、効率的に温度は上昇する。このとき、このとき、温度センサー11によって容器2内の温度を検出し、検出したデータを制御盤7に伝達する。制御盤7は検出データを基にヒーター4をコントロールし、容器2内の温度が40〜65℃になったところでヒーター4を停止させる。また、容器2内の温度は、温度センサー11の表示部11aで確認することができる。
【0028】
また、加圧ユニット5によって容器2内を所定気圧に調節する工程を行う。具体的には、加圧ユニット5を稼動させて圧力勾配を付加する。このとき、圧力計12によって容器2内の気圧を測定し、測定したデータを制御盤7に伝達する。制御盤7は測定データを基に加圧ユニット5を制御し、容器2内の気圧が大気圧〜10気圧になったところで加圧ユニット5による加圧を停止させる。また、容器2内の気圧は、圧力計12の表示部12aで確認することができる。
【0029】
また、このとき、容器2内の湿度は湿度調整手段6によって任意の湿度になるように管理している。つまり、容器2内に張られた養生水19が熱又は圧力によって飽和し、容器2内の湿度は上昇する。また、容器2内の金属塩20が容器2内の湿気に溶解することで、容器2内の湿度の上昇は抑えられ、容器2内の湿度は30〜65%に保たれる。また、容器2内の湿度は、湿度センサー13の表示部13aで確認することができる。
【0030】
なお、炭酸ガスCが充填された容器2内でのコンクリート製品Aの養生期間は、コンクリート製品Aの表面部のみが炭酸化される期間内で行う。特に、コンクリート製品Aが鉄筋コンクリート造の場合は、内部に埋設されている鉄筋が酸化されて錆びることがないように、養生期間の調整を行う必要がある。
【0031】
また、コンクリート製品Aを容器2内で養生しつつ別の場所に運搬する工程を行ってもよい。具体的には、第1の接続部16からガス供給管15を外すとともに、第2の接続部18から連通管17を外す。このとき、第1,第2の接続部16,18を閉塞させて容器2内の密閉性を確保する。そして、容器2内の炭酸ガスC濃度を5〜30%の範囲に、容器2内の温度を40〜65℃の範囲に、容器2内の気圧を大気圧〜10気圧の範囲に、そして容器2内の湿度を30〜65%の範囲に保った状態で容器2ごとコンクリート製品Aを運搬する。また、炭酸ガス供給手段3及び加圧ユニット5を接続したままの状態で運搬することで、運搬中の炭酸ガスC濃度,温度,気圧,湿度の調整を行ってもよい。
【0032】
次に、炭酸化養生を行う従来の養生室(中性化養生槽)を用いてコンクリート試験体を養生する場合と、本願に係る養生装置1を用いて試験体を養生する場合とを比較する実験を行い、当該実験結果に基づいて上記した構成からなる養生装置1の効果を説明する。
【0033】
図3(a)は今回の実験に使用された試験体の使用材料を示す表であり、図3(b)は今回の実験に使用された試験体の配合表であり、図3(c)は今回の実験に使用された試験体のフレッシュ性状を示す表である。
今回の実験では、試験体として、図3(a)に示す材料を用いて図3(b)に示す配合で2つの試験体を作成する。2つの試験体のフレッシュ性状は図3(c)に示すとおりであり、2つの試験体を同等のものである。
【0034】
次に、上記した2つの試験体を、打設から1日間、それぞれ湿空養生して固化させる。このとき、養生温度を20℃にするとともに、養生湿度を95%にする。
次に、2つの試験体の脱型をそれぞれ行い、一方の試験体(NO.1)を中性化養生槽に入れるとともに、他方の試験体(NO.2)を炭酸ガス濃度が100%の養生装置1の容器2内に入れて、2つの試験体をそれぞれ27日間養生する。このとき、中性化養生槽は温度50℃、湿度60%、炭酸ガス濃度20%に設定されている。
【0035】
図4は上記した実験結果を示す表である。4週間の養生期間後、試験体の中性化された範囲(中性化深さ)と空隙率とをそれぞれ測定すると、図4に示すように、2つの試験体は同等の結果となった。上記した実験結果によって、中性化養生槽で養生された試験体と本願に係る養生装置1で養生された試験体とは、中性化の進行状況が同等となっており、養生装置1によって十分な炭酸化が行えることがわかる。
【0036】
上記した構成からなる養生装置1によれば、コンクリート製品Aが格納されて密閉された容器2内には炭酸ガスCが充填されており、コンクリート製品Aは密閉された容器2内で炭酸ガスCと反応するため、容器2が置かれた空間を密閉する必要はなく、低コストで炭酸ガスCの流出を防ぐことができ、環境への影響を低減することができる。また、炭酸ガスCの流出をふせぐことができるため、養生中の容器2内に充填された炭酸ガスCの損失量を少なくなり、経済的である。また、他のコンクリート製品の搬出入を行っても養生中の容器2内の炭酸ガスCが流出することはないため、炭酸ガスCがない(微少な)空間で作業員が他のコンクリート製品の搬出入作業を行うことができ、作業員の安全性を確保することができる。
【0037】
また、容器2が移動可能に配置されているため、コンクリート製品Aを炭酸ガスC雰囲気中で養生しながら移送することができ、他のストックヤードなどに移すことができる。
【0038】
また、容器2内に炭酸ガスCを供給する炭酸ガス供給手段3が備えられているため、容器2内に適当な量の炭酸ガスCを充填することができ、容器2内の炭酸ガスC濃度をコンクリート製品Aの養生に適した濃度に保つことができる。これによって、効果的に炭酸化養生を行うことができ、コンクリート製品Aの耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、容器2内の炭酸ガスCの濃度を検出する濃度センサー10が備えられているため、容器2の密閉性を保ったまま容器2内の炭酸ガスCの濃度管理を行うことができる。これによって、確実かつ容易に所定の炭酸ガスC濃度を保つことができる。
【0040】
また、容器2内の湿度調整を行う湿度調整手段6が備えられているため、炭酸ガスCでコンクリート製品Aの性質を改良する場合に適した湿度を保つことができる。これによって、効果的に炭酸化養生を行うことができ、コンクリート製品Aの耐久性を向上させることができる。
【0041】
また、容器2内の温度を上昇させるヒーター4が備えられているため、炭酸ガスCでコンクリート製品Aの性質を改良する場合に適した温度を保つことができる。これによって、効果的に炭酸化養生を行うことができ、コンクリート製品Aの耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、容器2内に圧力を加える加圧ユニット5が備えられているため、容器2内の気圧は上昇し、炭酸ガスCとコンクリート製品Aとの反応は促進される。これによって、養生期間を短縮することができる。
【0043】
また、炭酸ガスCが充填された容器2内でコンクリート製品Aは養生されるため、コンクリート製品Aの表面部分は炭酸化されて緻密化され、強度も増加する。これによって、コンクリート製品Aの耐久性を向上させることができるとともに、長期の圧力による水分や気体の浸透を防止することができる。
【0044】
次に、本発明に係る養生装置2の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成部分は説明を省略する。
【0045】
[第2の実施の形態]
図2は、本発明に係る養生装置100を表す模式図である。図2に示すように、養生装置100には、工場等の排気ガスDをコンクリート製品Aが格納された容器101内に供給する排気ガス供給手段102が備えられており、容器101内には、排気ガスDを含有する混合ガスBが充填されている。混合ガスBは、炭酸ガス供給手段103によって供給される炭酸ガスCと、排気ガス供給手段102によって供給される排気ガスDとが混合されて生成されている。
【0046】
排気ガス供給手段102は、工場等から排出される排気ガスD内に含まれる塵などを取り除くトラップ104と、第1,第2のガス供給管105a,105bと、から構成されている。第1のガス供給管105aは工場の排気ダクト等とトラップ104との間に介装されており、第2のガス供給管105bはトラップ104と容器101に付設された接続部106との間に介装されている。炭酸ガス供給手段103を構成する送出部107に接続された第3のガス供給管105cは第2のガス供給管105bに接続されている。また、容器101には、排ガス管108が接続されており、容器101内の混合ガスBは適宜排出される。
【0047】
上記した構成からなる養生装置100には、排気ガスDを供給する排気ガス供給手段102が備えられ、容器101中の混合ガスBには排気ガスDが含有されているため、環境に影響を及ぼす排気ガスDを効率的に再利用することができるとともに、省エネルギーを図ることができる。これによって、環境破壊を抑制することができるとともにコストの低減を図ることができる。
【0048】
以上、本発明に係る硬化体の養生装置の第1,第2の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、コンクリート製品Aを養生させるための養生装置1,100について説明しているが、本発明に係る硬化体は、モルタル製品やその他のセメント系の硬化性物質からなるものでもよく、或いは樹脂製の硬化体でもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では、改質処理体として炭酸ガスCが用いられているが、本発明に係る改質処理体は、炭酸水でもよく、容器内を炭酸水で満たしても良い。また、改質処理体は、養生する硬化体に応じて適宜変更可能であり、炭酸ガスC以外の気体又は炭酸水以外の液体を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る硬化体の養生装置の第1の実施の形態を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る硬化体の養生装置の第2の実施の形態を説明するための模式図である。
【図3】(a)は中性化養生槽を用いてコンクリート試験体を養生する場合と本願に係る養生装置を用いて試験体を養生する場合とを比較する実験に使用された試験体の使用材料を示す表であり、(b)は実験に使用された試験体の配合表であり、(c)は実験に使用された試験体のフレッシュ性状を示す表である。
【図4】中性化養生槽を用いてコンクリート試験体を養生する場合と本願に係る養生装置を用いて試験体を養生する場合とを比較する実験の実験結果を示す表である。
【符号の説明】
【0051】
1,100 養生装置
2,101 容器
3,103 炭酸ガス供給手段(供給手段)
4 ヒーター(加熱手段)
5 加圧ユニット(加圧手段)
6 湿度調整手段
10 濃度センサー(濃度検出手段)
102 排気ガス供給手段
A コンクリート製品(硬化体)
B 混合ガス(改質処理体)
C 炭酸ガス(改質処理体)
D 排気ガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化体が格納されて密閉される容器が備えられ、該容器内には前記硬化体の性質を改良する改質処理体が充填されていることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項2】
請求項1記載の硬化体の養生装置において、
前記容器は移動可能に配置されていることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の硬化体の養生装置において、
前記容器内に前記改質処理体を供給する供給手段が備えられていることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の硬化体の養生装置において、
前記容器には、該容器内の前記改質処理体の濃度を検出する濃度検出手段が備えられていることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の硬化体の養生装置において、
前記容器内の湿度調整を行う湿度調整手段が備えられていることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載の硬化体の養生装置において、
前記容器内の温度を上昇させる加熱手段が備えられていることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか記載の硬化体の養生装置において、
前記容器内に圧力を加える加圧手段が備えられていることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか記載の硬化体の養生装置において、
前記改質処理体には、炭酸ガス又は炭酸水からなり、前記硬化体には、セメント系の硬化性物質からなることを特徴とする硬化体の養生装置。
【請求項9】
請求項8記載の硬化体の養生装置において、
排気ガスを供給する排気ガス供給手段が備えられ、前記容器中の前記改質処理体には排気ガスが含有されていることを特徴とする硬化体の養生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−143531(P2006−143531A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336133(P2004−336133)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】