説明

硬化可能材料送達システム及び方法

骨内の目標部位のすぐ近くのカニューレの遠位端。空洞形成デバイスの一部は、カニューレを通って遠位端を超えて遠位に拡張され、次に目標部位に空洞を形成するための操作がされる。トラックがカニューレの遠位端と空洞の間の目標部位の細胞組織内に画定される。空洞形成デバイスは、カニューレから取り外され、送達管と交換される。送達管の遠位先端は、トラックを通り、空洞にカニューレの遠位端を超えて遠位に導かれる。最後は、材料(例えば、硬化可能材料)が送達管を通って空洞に送達される。カニューレは最初の挿入に続いて固定されたままの状態にでき、通常発生する「デッドスペース」に硬化可能材料が直接堆積しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨構造を安定させるためのシステム及び方法に関する。特に、硬化可能な安定化材料を骨構造、例えば椎体に送達するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷した、又は障害の起きた骨部位における外科的治療処置は、患者、例えば脊椎損傷に関連した背痛を有する患者にとって極めて有益であることが立証されている。
【0003】
ヒトの骨格系の骨は、石灰化組織を含み、これは一般に形態学的に「皮質」骨と「海綿」骨との2種類に分類され得る。全ての骨の外壁は皮質骨からなり、これは密度の高い緻密な骨格であって微視的な多孔性を特徴とする。海綿骨又は「骨小柱」は、骨の内部構造を形成する。海綿骨は、用語「骨梁」として知られる細長い棒と平板とが相互に接続された格子からなる。
【0004】
特定の骨の処置中、海綿骨は、骨梁を安定させるために用いられる緩和的な(又は治癒的な)材料を注入することによって補填される。例えば、脊椎の上部椎骨及び下部椎骨が、然るべき硬化可能材料(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又は他の骨用硬化可能材料)を注入することにより有利に安定化され得る。他の処置では、例えば、脊椎圧迫骨折を起こした箇所に経椎弓根的(transpedicular)手法又は傍椎弓根的(parapedicular)手法によって安定化材料を経皮注入することが、疼痛を軽減し、損傷した骨部位を安定させるのに有益であることが立証されている。同様にして他の骨格骨(例えば、大腿骨)も処置できる。いずれにしても、骨全般、特に海綿骨は、緩和的注入、すなわち骨適合性材料の注入によって強化及び安定化され得る。
【0005】
限定ではないが、例として椎体形成術(vertebropasty)を用いると、従来技術では骨安定化材料を送達するために内部スタイレットを有するカニューレを所望の注入部位に配置する必要がある。カニューレとスタイレットは、補填されるべき硬組織の上にある患者の皮膚層に刺入し、次に椎骨の硬い皮質骨を貫通し、最終的に皮質骨の下層のより柔らかい海綿骨の中に入っていくのと結び付けて用いられる。一度海綿骨において位置が定まると、次にスタイレットが取り出され、カニューレが然るべき位置に残って椎骨の骨梁間腔に硬化可能材料を送達し、順に目標部位が補強されて固くなる。
【0006】
ある場合には、海綿骨内の空洞又は隙間を形成し、その空洞の中に硬化可能材料を堆積させることによって、処置の有効性が向上され得る。空洞は多種多様な方法で形成され得る(例えば、海綿組織の機械的切削又はせん断、バルーンの膨張、海綿骨を圧迫するための膨張可能な他のデバイス等)。いずれにしても、必要な処置の期間及び道具の数を最小にするために、最初の空洞形成デバイスを送達するカニューレとその後の硬化可能材料を送達するカニューレは、同じカニューレを使用するのが望ましい。特に明記しない限り、1つの望ましい処置は、最初にカニューレの遠位端を目標部位のすぐ近くに配置することが必要である。空洞形成デバイスは、カニューレを通って目標部位に送達され、それから空洞を形成する操作がされる。空洞がカニューレの直径と比べて大きい幅(例えば、直径)を有する場合、カニューレの遠位端と空洞との間の海綿骨内に、より小さい幅の「トラック」又は「デッドスペース」が通常存在する。空洞形成デバイスがカニューレから取り外され、カニューレを通して目標部位に硬化可能材料が送達される。
【0007】
空洞を硬化可能材料で充填するために、外科医はカニューレとデッドスペースに硬化可能材料を注入して空洞に達するようにするか、若しくは、硬化可能材料の送達前に、カニューレの遠位端をデッドスペースの中を通して空洞に入るまで押し込むことができる。第1の手法では、硬化可能材料がデッドスペースに堆積し、不必要に固化する、又は硬化可能材料がカニューレ自体に接触する可能性がある。更に、デッドスペースは、制御不能な容積を意味し、空洞に送達されるのに必要な量かどうかの外科医の判断に悪影響を与え得る。第2の手法では、外科医にとって、空洞内のカニューレを正確に再配置することは困難であり、および/または、空洞とカニューレ自身の両方又はいずれか一方の周囲の組織に予期せぬ損傷を与える原因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0198024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の観点から、医療機器分野において、損傷した、又は障害の起きた骨部位に安定した材料を送達するための改良されたシステムおよび方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の原則によるいくつかの態様は、患者の手術の目標部位に材料を送達するための方法に関する。その方法は、目標部位のすぐ近くにカニューレの遠位端を挿入することを含む。カニューレは、ルーメンを画定する。空洞形成デバイスの一部は、ルーメンを通り、遠位端を越えて遠位に拡張される。次に空洞形成デバイスは、目標部位で空洞を形成するように操作される。その際、空洞の幅より小さい幅を有するトラックがカニューレの遠位端と空洞との間の目標部位の細胞組織内に画定される。空洞形成デバイスがカニューレから取り外され、送達管と交換される。送達管の遠位先端が、トラックを通って、空洞に、カニューレの遠位端を超えて遠位に導かれる。最後に、材料(例えば、硬化可能材料)が、送達管を通って空洞に送達される。上述した処置は、カニューレが目標部位に関して最初の挿入に続いて固定されたままの状態において可能であり、そして、通常発生する「デッドスペース」に硬化可能材料が直接堆積しない。
【0011】
本発明の原理による他の態様は、材料を患者の目標部位に送達するシステムに関する。システムは、カニューレ、空洞形成デバイス、送達管、及び補填材料源を含む。カニューレは、ルーメンと遠位端を画定する。空洞形成デバイスは、遠位の作業端で終端となる細長体を含む。細長体は、ルーメン内に摺動可能に挿入される寸法であり、作業端がカニューレの遠位に拡張されたときに、作業端で目標部位の細胞組織内に空洞を形成する空洞形成デバイスを有する。送達管もまたルーメン内に摺動可能に挿入される寸法であり、遠位先端で終端となる。最後に、補填材料源は、選択的で流動的に送達管に接続されている。上記構成により、システムは空洞形成状態と材料送達状態に分けることができる。空洞形成状態では、細長体がルーメン内部に配置され、作業端はカニューレの遠位端から遠位に既定の距離に位置する。補填状態では、送達管がルーメン内に配置され、遠位先端が遠位にカニューレの遠位端から既定の距離に位置する。いくつかの実施形態では、空洞形成デバイスの作業端は、膨張可能なバルーンを含む。他の実施形態では、システムは、更にカニューレに関する既知の位置に形成された細長体及び送達管上の深さマーク又はインジケーターを含む。これらの実施形態では、カニューレに関する細長体の深さマークの整列時におけるカニューレの遠位端に関する作業端の遠位拡張は、カニューレに関する送達管の深さインジケーターの整列時におけるカニューレの遠位端に関する遠位先端の遠位拡張と対応する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】1つの実施可能な目標部位とともに本発明の原理による硬化可能材料送達システムの斜視図である。
【図2】図1のシステムのカニューレアセンブリー及び空洞形成デバイスの一部の拡大側面図である。
【図3A】事前配置構成における図2のカニューレアセンブリー及び空洞形成デバイスの断面図である。
【図3B】一部の配置構成におけるカニューレアセンブリー及び空洞形成デバイスの側面図である。
【図3C】最終配置構成におけるカニューレアセンブリー及び空洞形成デバイスの側面図である。
【図3D】最終配置構成におけるカニューレアセンブリー及び空洞形成デバイスの側面図である。
【図4】図1のシステムで有用な別の空洞形成デバイスの簡略側面図である。
【図5】図1の空洞形成システムに有用な注入システムの側面図である。
【図6】図1のシステムのカニューレアセンブリー及び送達管部の拡大側面図である。
【図7A】第1の送達構成における図6のカニューレアセンブリー及び送達管の断面図である。
【図7B】2つの構成要素を備えた深さのしるし間の関係を示す図1のシステムの空洞形成デバイス及び送達管の拡大側面図である。
【図7C】第2の送達構成におけるカニューレアセンブリー及び送達管の側面図である。
【図7D】第3の送達構成におけるカニューレアセンブリー及び送達管の側面図である。
【図8A】空洞形成状態及び送達状態における図1のシステムの一部の簡略側面図である。
【図8B】空洞形成状態及び送達状態における図1のシステムの一部の簡略側面図である。
【図8C】空洞形成状態及び送達状態における図1のシステムの一部の簡略側面図である。
【図9A】本発明の原理による苦痛緩和骨処置を採用した図1の硬化可能材料送達システムの一部の簡略平面図である。
【図9B】本発明の原理によるシステムの使用を示す椎体の簡略側面図である。
【図9C】本発明の原理によるシステムの使用を示す椎体の簡略側面図である。
【図9D】本発明の原理によるシステムの使用を示す椎体の簡略側面図である。
【図9E】本発明の原理によるシステムの使用を示す椎体の簡略側面図である。
【図9F】本発明の原理によるシステムの使用を示す椎体の簡略側面図である。
【図9G】本発明の原理によるシステムの使用を示す椎体の簡略側面図である。
【図10】本発明の原理による別の処置における背中部の簡略前面図及び図1のシステムの使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原理による硬化可能材料送達システム10の1つの実施形態を図1に示す。システム10は、カニューレアセンブリー12、空洞形成デバイス14、送達管16、及び硬化可能材料源18を含む。いくつかの構成要素の詳細を以下に示す。但し、一般的な用語で、カニューレアセンブリー12は、患者の目的の骨部位に注入するためのカニューレ20を含む。図1に示される実施形態では、目的の骨部位は椎骨である。一度カニューレ20が骨部位30に関して所望の位置に配置されると、空洞形成デバイス14の一部は、カニューレ20を通って骨部位30に送達され、空洞を形成する操作が行われる。次に、空洞形成デバイス14は、送達管16と交換され、その送達管16の一部は、遠位にカニューレ20を超えて空洞に伸張する。硬化可能材料源18は、硬化可能材料が送達管16を介して空洞に送達するように操作される。システム10は、従来の硬化可能材料送達システムの方法によって生じる「デッドスペース」問題を解決する。
【0014】
システム10は、多くの異なる処置に用いることができ、例えば、椎体形成術及び硬化可能材料が骨内の部位に送達されることの他に、骨内部位からの材料の除去又は吸引が行われる他の骨増強処置を含む。システム10は、骨の硬化可能材料の形態で硬化可能材料を送達するのに非常に有用である。ここで本発明のシステム10によって送達され得るもので、本明細書の文章の語句「硬化可能材料」は、流体の又は流動性を有する状態又は相と、固化した、固体の、又は硬化した状態又は相と、を有する材料(例えば、複合材、ポリマー等)を指すものとする。硬化可能材料としては、これらに限定されることなく、注入可能な骨セメント(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)骨硬化材料)を有し、それは流動体を有する状態であり、カニューレによって部位に送達(例えば、注入)され、その後に固化した、硬化材料となる。上述した骨セメントの代わりに、リン酸カルシウム、骨の成長を促す材料、抗生物質、たんぱく質等の他の材料(但し、得られた調合物の、流動性を有する状態と固化した、固体の、又は硬化した状態を有するという最優先特性に影響を及ぼさない材料)が使用され得る。これは、本体が硬化可能材料を再吸収できるようになり、および/またはフィラーインプラント材料の種類に基づく臨床転帰を改善する。
【0015】
上述したように、カニューレアセンブリー12は、カニューレ20を含む。カニューレ20は、硬化可能材料を送達するために目標部位又は注入部位(又はすぐ近く)に位置決めされている。カニューレ20は、好ましくは、外科手術級のステンレススチールから作られているのが望ましいが、生体適合性があると同時に予想される動作圧力において実質的に柔軟性を有しない公知の同等材料で作製されてもよい。カニューレ20は、様々な装備、例えば、空洞形成デバイス14、送達管16、スタイレット(図示なし)などが通るための、近位部40、遠位端42、及びルーメン44(一般的に参照される)を画定する。いくつかの実施形態において、遠位端42は、湾曲し平滑であるが、その代わりに傾斜が付けられており、皮膚組織及び軟部組織、特に硬組織を通って、カニューレ20の貫通を容易にする。
【0016】
カニューレ20の近位部40の周囲には、カニューレ20を操作するためのもので、空洞形成デバイス14および/または送達管16の一方または両方をカニューレ20に接続するためのオプションハンドル46がある。いくつかの構成において、カニューレアセンブリー12は、更にハンドルコネクタ48を含む。ハンドルコネクタ48は、流動的にルーメン44と接続され、カニューレ20の近位端50を画定する。いくつかの構成において、ハンドルコネクタ48は、単にカニューレ20を伸張するだけのものもある。他の実施形態において、ハンドルコネクタ48は、システム10のロック機構を形成する際に空洞形成デバイス14および/または送達管16の機構と連結するための1以上の構成要素を含むことができる。これらの任意の実施形態において、ハンドルコネクタ48は、ルアーロック型のコネクタを含むことができるが、例えば、従来式のねじ穴、ねじ式ロックナットの構成等、他の公知の接続機構に好都合に代えられてもよい。好ましいコネクタ/ロック機構構造の例は、「硬化可能材料送達装置」と題する米国特許出願公開第2007/0198024号明細書に開示されており、本明細書に引用したものとして参照されたい。いずれにしても、カニューレ長さL(図2)は、近位端50と遠位端42の間の距離として設定される。
【0017】
空洞形成デバイス14は、骨内に隙間及び空洞を形成するための好ましい様々な形態を想定することができ、通常は遠位に作業端62と接続されるか、又は作業端62を形成する細長体60を含む。細長体60は、カニューレ20のルーメン44内に摺動可能に挿入される寸法であり、そして1以上のチューブ、シャフト等の作業端62の操作に必要なものが含まれている。いずれにしても、細長体60の近位領域64は、必要に応じて長さ又は深さの情報を提供する1以上の機能を有する。例えば、図2に示すように近位領域64に沿って、1以上の深さマーク66が形成され得る。深さマーク66は、作業端62に対して所定の距離に設けられており、その距離によって、順番に、カニューレ長さLとの所定の関係を有する。作業端62は、遠位側68及び近位側70を備えるものとして記載され得る。この点を念頭に置いて、第1の深さマーク66aは、カニューレ長さLと対応する遠位側68からの距離を示し得る。図3Aに示されるように、細長体60がカニューレのルーメン44内に挿入され、(図3Aに概略的に示される)第1の深さマーク66aがカニューレ20の近位端50に一致するように配置されている場合、作業端62の遠位側68は、カニューレ20の遠位端42のすぐ近くにある(しかし、まだカニューレ20の「内側」にある)。
【0018】
図2及び図3Bに示すように、第2の深さマーク66bも設けられており、これはカニューレ長さLに作業端62の長さを加えた長さ(例えば、カニューレ長さLに対応する(例えば、同じである)近位側70と第2の深さマーク66bとの間の距離)に対応する遠位側68からの距離に配置されている。図3Bでは、第2の深さマーク66bが近位端50に一致するとき、作業端62の近位側70は、カニューレ20の遠位端42のすぐ遠位にある(例えば、作業端62は、カニューレ20から遠位に拡張する)。
【0019】
更に、図2及び図3Cに示すように、第3の深さマーク66cが設けられている。第3の深さマーク66cは、カニューレ長さLに作業端62の長さとクリアランス距離C(図3C)を加えた長さと対応する遠位側68からの距離(例えば、カニューレ長さLにクリアランス距離Cを加えた長さに対応する(例えば、同じである)近位側70と第三の深さマーク66cとの間の距離)に形成される。クリアランス距離Cは、近位側70とカニューレの遠位端42との間隔を表し、図3Dに示すように、操作中に作業端62が、カニューレの遠位端42に接触しない(又は遠位端42によって損傷されない)ように確保されている。例えば、作業端62がバルーンであるとき、膨張に合わせて作業端/バルーン62がカニューレ20に接触しないようにクリアランス距離Cが確保されている。図3Cの構成は、所望の最終配置、すなわちカニューレの遠位端42に関する作業端62の位置を示しているので、第3の深さマーク66cは、「最終配置深さマーク」と言われ得る。第1の深さマーク66a及び第2の深さマーク66b(あるいは最終配置深さマーク66cに加えて他の深さマークもまた)は有益である一方で、他の実施形態にはおいては、最終配置深さマーク66cのみ有する場合がある。Yアダプタ等のハブ72(図2に示す)は、最終配置深さマーク66c(図2に示す)に隣接して備えられており、いくつかの構成では、最終配置深さマークとしての機能を果たすか、又は最終配置深さマークの代わりになる(例えば、これらの別の実施形態では、ハブ72がカニューレの近位端50と一致する場合、作業端62はカニューレの遠位端42に関するクリアランス距離Cの位置にある)。実際は、ハブ72は最終配置深さでカニューレの近位端50と、ポジティブストップ又はロックを構築することができる。いずれにしても、最終配置の位置で作業端62によって形成されるその後の空洞は、遠位側68と近位側70との間をおおよそ拡張した長さを有する。空洞の位置は、カニューレの遠位端42に関する最小距離D及び最大距離Dとして画定できる。これらに用いられる同じパラメータを考慮して、近位側70での最小操作長さLF1から遠位側68での最大操作長さLF2の範囲内の最終配置深さマーク66cによって、空洞形成デバイス14の有効操作長さが設定される。
【0020】
深さマーク66の代わり(又は追加)として、図4に示すように細長体62にカニューレコネクタ74を接続するか、又はカニューレコネクタ74を形成できる。カニューレコネクタ74は、上述したような代替のハンドルコネクタ48(図1)への選択的で強固な取り付けを資する様々な形態(例えば、カニューレコネクタ74とハンドルコネクタ48が共同でロック機構を形成する)を想定しているため、カニューレコネクタ74は、ルアーロックねじ式金具を含む、又は有することができる。作業端62とカニューレコネクタ74との間の細長体60の長さは、あらかじめ定められており、カニューレ長さLcより長い(図2)。より具体的には、カニューレコネクタ74は、最小有効操作長さLF1及び最大有効操作長さLF2で細長体60に沿って位置づけられる。このような構成で、ルーメン44内に細長体60を挿入するとき、及びカニューレコネクタ74と代替のハンドルコネクタ48との間を連結するときに、上述したように既知の又は所定の遠位の位置で作業端62がカニューレ20の遠位端42を超えて遠位に突出する(例えば、図3Cに示すようにカニューレの遠位端42に関する空洞の距離D、Dを形成する)。
【0021】
図1を参照すると、作業端62は、骨内の空洞及び隙間を形成するのに適した1以上の構成要素を含むことができる。例えば、いくつかの構成において、作業端62は、拡張可能又は膨張可能な部材(例えば、バルーン)を含み、それらの部材は、作業端62がルーメン44を通過可能な収縮(例えば、しぼんだ)状態と、作業端62が膨張し、作業端62に接触する海綿骨を圧迫する膨張(例えば、膨らんだ)状態との変化を有する。あるいは、作業端62は、カニューレ20の領域を超えて遠位に突出して回転するとき、接触した骨に衝撃を与え、切削又は粉砕する放射状に拡張可能な切削型構造を含むことができる。他の空洞形成構成は、例えば、超音波、熱、化学物質等も想定される。より一般的な用語で、作業端62は、カニューレ20の遠位端42に関する既知の場所で、ルーメン44を通って、送達可能で、かつ拡大した空洞(例えば、カニューレの半径又は幅よりも大きい半径又は幅寸法)を形成するための操作可能な任意の形態を有することができる。したがって、図示していないが、空洞形成デバイス14は、作業端62を作動させるための細長体60の近位領域64を介して接続された又は操作可能な1以上の追加構成要素を含むことができる。例に限定されず、いずれかの方法によって、空洞形成デバイス14は、作業端62によって運ばれ、又は形成される1以上のバルーンを膨張させるための加熱流体源(例えば、手動操作可能なシリンジ)を含むことができる。例えば、図5は膨張媒体の加圧流れを作り出すシリンジシステム82に有用な1つの実施形態を示している。システム80は、表示デバイス84を有する第1のシリンジ82を含む。表示デバイス84は、シリンジ82内の圧力を検出する位置に設置された圧力センサ(図示なし)と電気的に接続されており、現在の検出された圧力を表示するスクリーン86(例えば、遠位表示)を含む。メモリー要素(図示なし)及び関連のマイクロプロセッサ(図示なし)が必要に応じて更に表示デバイス84に含まれ、スクリーン86に追加情報、例えば、特定の膨張操作の過程における最大検出圧力等を記憶し、表示するようにプログラムされている。最大検出圧力は、現在検出された圧力と同時にスクリーンに表示することができる。処置中に同時に両方の圧力を知ることは有益である。第2のシリンジ88もまたこれらを含んでおり、作業端/バルーン62から空気を抜いて、作業端/バルーン62が目標の骨部位内への挿入の準備をするのに用いられる。
【0022】
図1を参照すると、送達管16は、ルーメン44内に挿入するための寸法となっており、遠位先端90及び近接部92を画定する。以下に示すように、送達管16は硬化可能材料を送達するのに用いられる。したがって、送達管16は、カニューレ20のルーメン44の直径より小さい外径を有する;但し、送達管16の外径は、硬化可能材料が送達管16の外側の周りを容易に移動してカニューレ20内に戻ってくるほど、小さくするべきでない。送達管16は、注入された材料(例えば、骨セメント)に直接接触するのに適切な任意の材料で形成され得る。いくつかの実施形態において、送達管16のために選択された材料、例えば、ポリプロピレン等は、骨セメントとの接着が最小であること示している。あるいはまた、送達管16は固着防止材料(例えば、シリコン)を塗布することができる。更に他の実施形態において、固着防止被覆が送達管16に設けられる(例えば、送達管16はステンレススチール管であり、送達管16にポリプロピレン被覆が適用される)。
【0023】
空洞形成デバイス14と同様に、送達管16は、長さ又は深さ情報を提供する1以上の機能を含む、又は備える。例えば、図6に最良の例を示すように、1以上の深さインジケーター94が、カニューレ長さLと上述したカニューレ20に関する空洞形成デバイス14によって画定される空洞距離D、D(図3C)のいずれか又は両方に関連する距離、特にカニューレの遠位端42に関する遠位先端90の位置との相関距離で、近接部92に沿って形成され得る。以下に述べるように、遠位先端90に関する深さインジケーター94の位置は、空洞形成デバイスの最小操作距離LF1及び最大操作距離LF2(図2)に関係する。
【0024】
図6及び図7Aを参照すると、中間空洞深さインジケーター94aは、カニューレ長さLに所望のディスペンスメント深さDDを加えた距離と対応する遠位先端90からの距離で形成され得る。中間空洞深さインジケーター94aによって形成されるディスペンスメント深さDDは、作業端62によって形成される空洞に関する遠位先端90の位置又は深さを表し(図3C)、最小空洞距離D及び最大空洞距離Dの間にある(図3C)。中間空洞深さインジケーター94aは、以下に示すように、作業端62の使用中の位置と対応する遠位先端90に関する送達管の有効操作長さLを設定する。特に明記しない限り、送達管の有効操作長さLは、図7Bに示されるように、空洞形成デバイスの最小有効操作長さLF1及び空洞形成デバイスの最大有効操作長さLF2の範囲内である。
【0025】
図6及び図7Cを参照すると、近位空洞端深さインジケーター94bを設けることができる。近位空洞端深さインジケーター94bは、最小空洞形成デバイス有効操作長さLF1(図3C)と対応する(例えば、等しい)遠位先端90からの距離で形成される。したがって、近位空洞端深さインジケーター94bが、カニューレの近位端50(図7Cのように)に一致すると、遠位先端90は、カニューレの遠位端42に関連する最小空洞距離Dの位置になる。
【0026】
図6及び図7Dを参照すると、遠位空洞端深さインジケーター94cもまた設けることができる。近位空洞端深さインジケーター94cは、最大空洞形成デバイス有効操作長さLF2(図3C)と対応する(例えば、等しい)遠位先端90からの距離で形成される。したがって、遠位空洞端深さインジケーター94cは、図7Dに示すように、カニューレの近位端50と一致し、遠位先端90はカニューレの遠位端42に関する最大空洞距離Dの位置にある。更にカニューレ20に関する送達管16の遠位移動の絶対停止としての機能を果たすハブ96(図6)も含むことができる。
【0027】
深さインジケーター94の代わりとして、ハブ96は送達管16の近接部92に接続される、又はこれによって形成されるカニューレコネクタとして構成される。カニューレコネクタ96は、上述したカニューレコネクタ74に類似させることができ(例えば、ロック機構を形成するためハンドルコネクタ48を兼ね備える)、その結果、前述したいずれの形態でも想定することができる。いずれにしても、オプションのカニューレコネクタのハブ96の構成は、ハンドルコネクタ48と選択的に、強固に接続する構成であり、ハンドルコネクタ48の接続の際に所定のディスペンスメント深さDD(図7A)を設定する。
【0028】
図1を参照すると、送達管16は、硬化可能材料源18との流体継手として構成されている。いくつかの実施形態において、送達管16の一部が、深さインジケーター94を越えて近位に(又はオプションのハブ96を超えて近位に)突出し、例えば、注入コネクタ98を介して、硬化可能材料源18に流動的に連結する。あるいはまた、補助チューブ(図示なし)を硬化可能材料源18に備えることができ、流動的にオプションの注入コネクタ98を介して送達管16に接続される。
【0029】
硬化可能材料源18は、所望の硬化可能材料を送達するのに適切な多種多様の形態を想定することができ、そして、典型的に所定量の硬化可能材料が充填されたチャンバーを備えてもよく、任意の好適な注入システム又はポンプ機構を用いて、硬化可能材料を注入器外へ送り、そして送達管16を通る。一般的に、ユーザーが手で注入器に力をかける手動注入システムが使用されている。次にその力が硬化可能材料をチャンバーから流出させる圧力に変換される。また、力を加えるのに電動システムを使用してもよい。
【0030】
硬化可能材料送達システム10は、使用中に少なくとも空洞形成状態と硬化可能材料送達状態に分類できる。空洞形成状態(図3C)では、空洞形成デバイス14は、カニューレ20に挿入され、最終配置深さインジケーター66cは、カニューレ20の近位端50と一致する。あるいは、作業端62をカニューレ20の遠位外側に確実に位置するようにコネクタ48、72が用いられてもよい。いずれにしても、作業端62は、カニューレの遠位端42の遠位に配置され、空洞を形成することができる。
【0031】
送達状態(図7A)では、空洞形成デバイス14(図1)は、図のようにカニューレ20から取り外され、送達管16に交換される。遠位先端90は、カニューレ20の遠位端を超えて遠位に伸張する、又は突出する。所望の深さインジケーター94(例えば、中間空洞深さインジケーター94a)は、送達管の有効操作長さL(図6)を画定するために、近位端50(又はカニューレの遠位端42を越えて遠位先端90の伸張性を確保するために利用されるオプションのカニューレコネクタ)と一致する。なお、この操作長さLは予め定められていて、カニューレ20の有効長さLより長い。操作長さLは、材料(例えば、骨セメント)が送達管16から送達される(カニューレの遠位端42に関する)位置に画定される。
【0032】
上記の説明に関連して、空洞形成状態におけるカニューレの遠位端42に関する空洞形成デバイス14によって画定される所定の最小長さD及び最大長さDと、送達状態におけるカニューレの遠位端42に関する送達管16の遠位先端90の位置との相関関係は、本発明によれば様々な形態が有り得る。例えば、図8Aは空洞形成状態及び送達状態における送達システム10の好ましい構成の一例を示している。特に、カニューレ20の遠位端42に関する遠位先端90の遠位位置(例えば、ディスペンスメント深さDD)は、カニューレ20の遠位端42に関する作業端62の遠位位置のほぼ中央(例えば、空洞の最小距離D及び最大距離Dの中間)にある。これは、例えば、中間空洞深さインジケーター94a(図6)とカニューレの近位端50(図7B)が一致することによって実現できる。参考として、図8Aに、更に破線で作業端62の膨張状態を示している。
【0033】
図8Bにおいて、カニューレの遠位端42に関する遠位先端90の所定のディスペンスメント深さDDは、カニューレの遠位端42に関する作業端62の近位側70によって画定された最小空洞距離Dに近づく。これは、例えば、近位空洞端深さインジケーター94b(図6)とカニューレの近位端50が一致することによって実現できる。図9Cにおいて、カニューレの遠位端42に関する遠位先端90の所定のディスペンスメント深さDDは、カニューレの遠位端42に関する作業端62の遠位側68によって画定される最大空洞距離Dに近づく。これは、例えば、遠位空洞端深さインジケーター94c(図6)とカニューレの近位端50が一致することによって実現できる。より一般的に、カニューレ20が固定されたままで、空洞形成デバイス14と送達管16とが交換される場合において、1以上の深さインジケーター94によって形成される所定のディスペンスメント深さDDは、作業端62の操作によって影響を受ける領域内に遠位先端90を配置するという任意の関係を持つことができる。これらの同じラインに沿って、いくつかの実施形態において、送達管16は、送達状態における図8A−8Cの配置間で選択的に再位置決め可能にできる。
【0034】
正確な構成を問わず、本発明の原則による硬化可能材料送達システム10は、総合的な硬化可能材料送達処置の一環として、多様な骨安定化処置を行うのに非常に有益である。この目的を達成するため、図9Aは、硬化可能材料を椎骨100の目標部位に送達するシステム10の使用を示している。一般的に、椎骨100は椎弓根102及び身体材料(例えば、海綿骨、血、骨髄、及び軟部組織)108を囲む椎骨壁106を画定する推体104を含む。椎弓根102は、椎体104から拡張し、椎孔110を囲んでいる。因みに、本発明のシステムは、様々な骨部位にアクセスするのに適している。したがって、椎骨100の目標部位を図示しているが、他の骨部位(例えば、大腿骨、長骨、助骨、仙骨等)であってもシステム10を用いてアクセスできることは理解できるであろう。
【0035】
カニューレ20は、最初に目標部位120へのアクセス経路を形成するために用いられ、例えば、椎弓根120の1つを通って身体材料108に入る。したがって、図に示すように、カニューレ20は、経椎弓根的(transpedicular)手法によって、椎弓根102を通り抜ける。経椎弓根的(transpedicular)手法は、選択された椎弓根102の乳頭突起と副突起の間にカニューレ20を位置決めする。あるいは、目標部位への他の手法が用いられる(例えば、従前の手法)。いずれにしても、カニューレ20は、遠位端42をオープン時に目標部位120にアクセスするように提供する。1以上のスタイレット(図示なし)が、目標部位120へのアクセスチャンネル122を形成する補助をするのに用いられる。例えば、一連の異なった大きさ又は構成のスタイレット(例えば、尖った終端や丸いもの)が、チャンネル122を形成するためにカニューレ20を介して順次使用できる。あるいは、又は更に、最初にカニューレ20を挿入するためのアクセス経路を形成するために、外側ガイドカニューレ(図示なし)が配置され得る。いずれにしても、一度位置決めされると、カニューレ20は目標部位120に関して相対的に固定されたままの状態にできる。
【0036】
一度カニューレ20が所望の標的位置120で身体材料180内に位置決めされると、空洞形成デバイス14は、カニューレ20に取り付けられる。例えば、図9Bでより詳細に示すように、細長体60が摺動可能にカニューレ20内に挿入されるとともに、作業端62が遠位にカニューレ内を進む。カニューレ20の近位端50(図1)の最終配置深さマーク66c(図3C)の整列時に、作業端62はカニューレ20の遠位端42の遠位にあり、目標部位120に位置付けられる。図9Bは、身体材料108内に画定されたチャンネル122、及びチャンネル122を通り過ぎる又はチャンネル122内にある、作業端62を示している。チャンネル122は、作業端62が身体材料108内に挿入する際に作られるか、若しくは、上述したように空洞形成デバイス14を配置する前にカニューレ20又は他の構成要素(例えば、スタイレット(図示なし))によって形成される。いずれにしても、図9Cに示すように、空洞形成デバイス14は、作業端62が身体材料108内に空洞又は隙間124を形成するように操作される(例えば、作業端62が拡張する)。空洞124は、図9Cによって示されるものと異なった多種多様な形状を有することができる。
【0037】
空洞124の形成後、空洞形成デバイス14は目標部位120及びカニューレ20から取り外され、収縮状態に移行する。図9Dは、カニューレ20から空洞形成デバイス14を取り外した際の空洞124を示している。図示されるように、小さいトラック部126がカニューレ20の遠位端42と空洞124との相互接続間の拡張部分に残る。参考として、空洞124は幅又は他の寸法(例えば、カニューレ20の軸に垂直な直径)、すなわち、カニューレ20の直径より大きい寸法を有する又は画定されると示され得る。一方、トラック部126は、実質的に幅(又は他の対応する寸法)がカニューレ20の直径より小さい。カニューレ20、特に遠位端42は、空洞形成デバイス14が取り外されたとき、目標部位120に関して固定されたままの状態にできる。
【0038】
カニューレ20は、引き続き目標部位120に関して同じ位置にあるので、次に図9Eに示すように、送達管16がカニューレ20内に挿入され、目標部位120、特に空洞124を進む。カニューレ20の近位端50(図1)と中間空洞深さインジケーター94a(図7B)を一致させると、送達管16の遠位先端90が、上述したように目標部位120(特に空洞124)内に位置決めされるように確保される。参考として、遠位先端90が空洞124内のほぼ中心に配置するように示されているとき、(空洞124内で)より遠位又はより近位の配置も想定される。例えば、ここで備えられている、近位空洞端深さインジケーター94b(図6)又は遠位空洞端深さインジケーター94c(図6)は、空洞124のそれぞれの近位側又は遠位側で遠位先端90を配置するのに利用できる。
【0039】
硬化可能材料源18(図1)は、図9Fに示されるように、硬化可能材料130が送達管16を通って、空洞124内に送達されるように操作される。送達管16は、本来トラック部126を占有し、トラック部126に硬化可能材料130が不必要に流入するのを防いでいる。いくつかの実施形態では、送達管16は、送達処置の全期間、図9Fの位置に残ったままである;他の実施形態では、硬化可能材料130が送達されている間、空洞124内に遠位先端90を近位に引っ込める(又は遠位に伸張する)ことができる。例えば、硬化可能材料が送達されている間、より良く確実に空洞124の充填を完了するように、最大引込み量を視覚的に「警告」をするように示されたオプションの近位空洞端深さインジケーター94bを用いて、遠位先端90を順次引っ込めることができる(例えば、ユーザーがカニューレの近位端50(図1)で近位空洞端深さインジケーター94bを見ると、彼女又は彼はトラック部126のすぐ近くに遠位先端90があり、送達管16の近位への引き込みを止めるべきであることが分かる)。一度所望の量の硬化可能材料130が目標部位120に送達されると、患者から送達管16とカニューレ20が同時に取り出される。現状安定化した椎骨(送達管16が取り出されている)が、図9Gに示されている。
【0040】
本発明によって想定される更なる別の処置は、図10に参照として示されており、これは2つ(又はそれ以上)の目標部位に硬化可能材料を送達することが含まれている。例えば、図10は第1の椎体104a及び第2の椎体104bを示している。第1のカニューレ20a及び第2のカニューレ20bは、それぞれの椎体104a、104bに送達され、上述したように、続いてそれぞれの椎体104a、104b内に空洞124a、124bを形成する。送達管16が硬化可能材料を第1のカニューレ20aを介して、第1の椎体104aの空洞に送達するのに用いられる。一度所望の量が送達されると、送達管16は第1のカニューレ20aから取り外され、第2のカニューレ20bが挿入され、そして第2の椎体104bの空洞に硬化可能材料を送達するのに用いられる。この手法において、第1のカニューレ20aを取り外して、第2のカニューレ20bを挿入する際に、送達管16が硬化可能材料で「事前充填されている」のが効果的であり、これによって処置を完了するために要する時間を大幅に減らすことができる。
【0041】
更なる利点として、送達管16が第1のカニューレ20aから取り外されたとき(及び硬化可能材料が「事前充填されている」とき)、それは患者の外部である手術室内の場所で一時的に保管することができる(室温等で)。一般的に骨の強化に用いられる硬化可能材料(例えば、骨セメント)は、体温で硬化する又は固化すると説明されるので、一時的に患者の体の外部(及び、体温より低い温度で)に「事前充填されている」送達管16を保管することによって、外科医は次の硬化可能材料の送達操作を行うのに充分な時間を有する。言い換えれば、体温よりも低い温度に送達管16を保つことは、送達管の硬化可能材料の硬化が起こる前において、送達操作間で患者の体内に送達管16を保持する技術に比べて、外科医により多くの時間を与える。
【0042】
本発明に係るシステム及び方法は、従来の設計以上の顕著な改善を提供する。遠位に伸張する送達管は、従来の設計に付随する「デッドスペース」問題を取り除くものである。更に、前の位置から任意の方法で空洞を充填することによって、血管外漏出を避けることができ、「無駄な」硬化可能材料がカニューレを充填しない。
【0043】
本発明では参照として好ましい実施形態とともに説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく実施形態の変更を行い得ることは当業者にとって理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の外科的目標部位に材料を送達する方法であって、
前記目標部位のすぐ近くにカニューレの遠位端を挿入すること、前記カニューレはルーメンを画定する、
空洞形成デバイスの一部を前記ルーメンに通して、前記遠位端を越えて遠位に拡張すること、
前記目標部位に空洞を形成するよう前記空洞形成デバイスを操作すること、そこにおけるトラックは前記カニューレの前記遠位端と前記空洞との間の前記目標部位の細胞組織内に画定されており、前記トラックの幅、例えば直径は前記空洞の幅より小さい又は等しい、
前記カニューレから前記空洞形成デバイスを取り外すこと、
前記ルーメンの中に送達管を挿入すること、
前記送達管の遠位先端を、前記トラックを通って、前記空洞に、前記カニューレの前記遠位端を超えて遠位に導くこと、そして
前記送達管を通して前記空洞に材料を送達すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記空洞形成デバイスを操作すること、前記空洞形成デバイスを取り外すこと、前記送達管を挿入すること、そして前記送達管の前記遠位先端を前記空洞に導くことのステップにおいて、前記カニューレの前記遠位端は、相対的に固定されたままである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トラック内に材料が注入されないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記目標部位が椎骨内にある請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記材料が硬化可能材料である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
空洞形成デバイスの一部を前記ルーメンを通して拡張するステップの前に、チャンネルを形成するように前記遠位端を超えて遠位にスタイレットを前記ルーメンを通して挿入することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記空洞形成デバイスの一部が前記チャンネル内に挿入される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記空洞形成デバイスが膨張可能なバルーンを含み、更に空洞を形成するように前記空洞形成デバイスを操作するステップが前記バルーンを膨張させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記材料を送達するステップは、前記材料を送達している間、前記空洞内の前記遠位先端を近位に引っ込めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記送達管は、第1の空洞深さインジケーターを含み、更に前記空洞に前記遠位先端を送達するステップは、前記第1の空洞深さインジケーターと前記カニューレの近位端とを一致させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記送達管は、前記第1の空洞深さインジケーターの遠位に位置する第2の空洞深さインジケーターを含み、更に材料を送達するステップは、前記第2の空洞深さインジケーターが前記カニューレの前記近位端に一致するまで前記カニューレに関する前記送達管を近位に引っ込めることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者の目標部位に材料を送達するシステムであって、前記システムは、
ルーメンと遠位端を画定するカニューレと、
作業端の遠位で終端となる細長体を含み、前記細長体が前記ルーメン内に挿入される寸法であり、前記作業端が前記カニューレの前記遠位端の遠位で拡張されるときに、前記作業端で前記目標部位の細胞組織内に空洞を形成するように構成された前記空洞形成デバイスと、
前記ルーメン内に摺動可能に挿入される寸法であり、遠位先端で終端となる送達管と、
前記送達管に流動的に接続された充填材料源と、を備え、
前記システムは、前記細長体が前記ルーメン内に配置され、そして前記作業端が前記遠位端から所定の距離で遠位に配置されている空洞形成状態と、前記送達管が前記ルーメン内に配置され、前記遠位先端が前記遠位端から所定の距離で遠位に配置された充填状態と、において操作可能である。
【請求項13】
前記送達管を覆うように配置されたポリプロピレン皮膜を更に備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記作業端が膨張可能なバルーンを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記バルーンは、前記細長体に接続された近位側と、前記近位側の反対側の遠位側とを含み、更に所定の距離が前記近位側と前記遠位側との間である請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記細長体上の深さマークと前記送達管上の深さインジケーターとを更に備え、前記カニューレに関する前記深さマークの整列時における前記カニューレの前記遠位端に関する前記作業端の遠位拡張は、前記カニューレに関する前記深さインジケーターの整列時における前記カニューレの前記遠位端に関する前記遠位先端の遠位拡張に対応する、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記作業端に膨張媒体を送達する膨張デバイスを更に備え、前記膨張デバイスは、シリンジと、前記シリンジの検出された圧力を表示するようにプログラムされた表示デバイスとを含む請求項12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−510647(P2013−510647A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538831(P2012−538831)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053504
【国際公開番号】WO2011/059653
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511026131)ケアフュージョン207インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】CareFusion 207, Inc.
【Fターム(参考)】