説明

硬化型フッ素系アクリル樹脂の微粒子、及びそれを利用した光学材料

【課題】アクリレート重合の末端が架橋性官能基で変性し架橋硬化性を有する微粒子を得、各微粒子を結合することで微粒子結合体の強度及び耐溶剤性を有する光学材料を得る。
【解決手段】
微粒子1は架橋性官能基で変性したフッ素含有アクリル重合体の、該架橋性官能基で架橋硬化されている。各微粒子は架橋硬化で結合体を構成する。微粒子1は好ましくは中空2がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ変性などにより硬化性を付与し、低屈折を実現しているフッ素系アクリル樹脂の微粒子、およびその微粒子からなる低屈折樹脂微粒子を利用した光学材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学材料は、主に空気など他の媒体との界面で光屈折率の相違により光反射、光屈折などの機能を発現し、レンズ材料等に使用されている。例えば低屈折率の光学材料である反射防止フィルムは、パソコンや携帯電話等の表示部分に、視覚情報の妨げとなる光の反射を防ぎ内容を見やすくするものである。反射防止フィルムを構成している樹脂にフッ素原子を含有させることで、屈折率を低下させ外光の反射防止をしている。プラスチックの光ファイバーはアクリル樹脂のコアに、フッ素原子を含有させて低屈折率化した樹脂のクラッドが被覆されている。
【0003】
特許文献1には、反射防止フィルムの特徴を担う平均粒子径が10〜200nmで粒子中に空洞を有するフッ素含有の樹脂微粒子、及びそれより作られた反射防止フィルムが開示されている。フッ素含有の樹脂粒子中に空気を有する空洞を作ることで、フッ素による低屈折率化と空洞に封じ込められている空気による低屈折率化が得られる。その粒子を用いて作られた反射防止フィルムはフッ素含有の樹脂から作られた反射防止フィルムよりも、より反射性を抑えることが可能である。
【0004】
しかし、この中空粒子は粒子間の架橋がなされない為、強度や耐溶剤性が十分でなく、この粒子を用いた膜は清掃時や使用時に欠損し反射防止性を損うことがある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−213366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、低屈折率であるフッ素系アクリル樹脂の微粒子、及びそれを積重ねることで形成された、光硬化性又は熱硬化性により、中空に水分等が滲入することなく、また強度が高く耐溶剤性を有する光学材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された微粒子は、架橋性官能基で変性したフッ素含有アクリル重合体であって、平均粒子径が5nm〜110nmであることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載された微粒子は、該請求項1に記載の微粒子を、該架橋性官能基で架橋硬化したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された微粒子は、請求項1に記載されたものであって、該微粒子のコア部が中空であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載された微粒子は、請求項3に記載されたものであって、該中空の内径が粒子径の30〜80%であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載された微粒子は、請求項1に記載されたものであって、該フッ素含有アクリル重合体中のフッ素含有量が2〜70重量%であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載された微粒子は、請求項1に記載されたものであって、波長λ=550nmにおける光屈折率が最大でも1.5であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載された微粒子は、請求項3に記載されたものであって、波長λ=550nmにおける光屈折率が最大でも1.4であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載された微粒子の結合体は、架橋性官能基で変性したフッ素含有アクリル重合体の微粒子を、該架橋性官能基を架橋硬化させて該微粒子の相互間を連結させたことを特徴とする。
【0015】
同じく前記の目的を達成するためになされた請求項9に記載された光学材料は、請求項8に記載の微粒子の結合体を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載された光学材料は、請求項9に記載の光学材料がレンズ材料、ミラー材料、プリズム材料、光ファイバ材料、反射防止材料、または増透材料であることを特徴とする。
【0017】
同じく前記の目的を達成するためになされた請求項11に記載された微粒子の製造方法は、フッ素含有アクリレート類を乳化重合して得られたシード粒子を架橋性官能基で変性することを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載された製造方法は、請求項11に記載されたものであって、該フッ素含有アクリレート類に揮発性コアの液体を混合した溶液を乳化重合して得られた、中央部に揮発性コアの液体が封じ込められた、フッ素含有アクリル重合体のシード粒子を架橋性官能基で変性した後、乾燥して該揮発性コアの液体を揮発させ中空にすることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載された微粒子結合体の製造方法は、請求項11または12に記載の製造方法で得られた微粒子の該架橋性官能基を架橋硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフッ素系アクリル樹脂の微粒子は、樹脂類のなかでは極めて透明性に優れたアクリル樹脂にフッ素原子を含有し、低屈折率を実現できる。加えてその粒子中に中空を有することにより、さらに低屈折率にできるものである。フッ素原子の含有量、および中空の体積比率の両者により屈折率を調整できる。そして、この微粒子の粒子径は、可視光波長よりもはるかに微細であるため、透過する可視光に対して散乱などの影響を与えない。
【0021】
このフッ素系アクリル樹脂の微粒子は、アクリレート重合体の末端を架橋性官能基で変性してあり、この架橋性官能基を架橋硬化することで各微粒子の並びおよび形状を強固に維持することができる。
【0022】
そのため、本発明のフッ素系アクリル樹脂の微粒子からなる光学材料は、透明性が高く低屈折であり、屈折率の調整が容易である。また機械的強度が強いとともに耐溶剤性に優れている。そのため、溶剤による屈折率変動がない。
【0023】
また、微粒子が詰め込まれた状態乃至微粒子の結合体の占める実体積は見かけの体積よりも必ず少ない、すなわち見かけ比重が小さくなるから、同一組成のアクリレート重合体の成形体よりも、屈折率を小さくできるとともに、軽量にできる。
【0024】
さらには、コア部に中空を有する微粒子は中空の存在により見かけ比重がさらに小さく、屈折率を小さくし、軽量な光学材料を実現できる。この低屈折率の光学材料により形成されるレンズ、ミラー、プリズム、光ファイバ、反射防止膜、増透膜は、強度、耐候性に優れていながら、軽量化できる。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0025】
以下、本発明の実施するための好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0026】
本発明の硬化型フッ素系アクリル樹脂の微粒子は、フッ素系アクリレートを主要原料とし、前記フッ素系アクリレートと共重合可能な重合性モノマーとを乳化重合し、シード粒子を合成する。次いでこのシード粒子と架橋性官能基導入のための共重合可能な重合性モノマーと、架橋性官能基であるエポキシ化のためのグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを添加し連続的に反応させることで製造される。
【0027】
また、フッ素系アクリレートと共重合可能な重合性モノマーに揮発性コアの液体を加え反応させることでコア部に中空を有する微粒子を製造することができる。
【0028】
本発明の硬化型フッ素系アクリル樹脂は、アクリレート重合体の末端が架橋性官能基、例えばエポキシ基で変性している。末端のエポキシ化となるグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを添加することで、架橋硬化性を有する微粒子を得ることができる。末端のエポキシ基、すなわち架橋性官能基を架橋硬化することで各微粒子を結合し、その形状を強固に維持することが可能である。
【0029】
主要原料となるフッ素系(メタ)アクリレートは、具体的には下記一般式(I)で表される2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5Hオクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソプロピルエチル(メタ)アクリレート、等のアクリル又はメタクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類等が挙げられる。
【0030】
【化1】

式(I)中、R1は水素原子、メチル基、又はフッ素原子を表し、l(エル)、m、nは正の数を表す。
【0031】
式(I)で表されるフッ素原子を有するモノマーは、単官能モノマーであっても多官能モノマーであってもよい。なかでも式(I)中のn=2〜10が好ましい。これらのフッ素系アクリレートは単独又は2種類以上用いてもよい。
【0032】
極めて透明度の高いアクリル樹脂にフッ素原子を含有させることで、透明度を維持し低屈折率を実現できる。さらにこの粒子の中心に中空であるコア部を形成させることで、この中空の空気と樹脂中のフッ素原子により更に屈折率を低下させることが可能である。
【0033】
前記コア部は揮発性コアの液体が加熱及び乾燥により揮発することで中空に形成される。揮発性コアの液体は重合温度において溶解し、フッ素系アクリレート又は共重合可能な重合性モノマーと重合反応せずに、加熱及び乾燥により除去可能である化合物であればよい。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が好ましい。
【0034】
この揮発性コアの液体の配合量は該微粒子の構成成分に対して0.08〜60重量%であることが好ましく、さらには20〜30重量%であることが好ましい。配合量が0.08重量%未満であるとコア部分を形成するのに不十分であり、60重量%以上であるとコア部分が広域となり中空構造を形成できない、又は中空率が高く中空構造を保てずに壊れてしまう等の問題を生じる。
【0035】
この粒子の中空の内径は粒子径の10〜90%であることが好ましく、さらには30〜80%であることが好ましい。10%未満であると低屈折率効果が得られず、90%以上であると中空構造の強度が低下する恐れがある。コア部分の中空状態は、中心に一つの空洞を有する場合又は多孔質状の空洞を有する場合のどちらであってもよい。
【0036】
上記分子中にフッ素原子を有するモノマーと共重合可能な重合性モノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、単官能ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、単官能ポリエステル(メタ)アクリレート、単官能ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン、t−ブチル−n−ブトキシメチルアクリルアミドのような(メタ)アクリル酸アミドモノマー;ラウリルビニルエーテルのようなビニルエーテルモノマー;ビニルブチレートのようなビニルエステルモノマー等の単官能性モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレートモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジアリル化合物又はトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等の多官能性モノマー等が挙げられる。これらの共重合可能な重合性モノマーは単独又は2種類以上用いてもよい。
【0037】
この共重合可能な重合性モノマーの配合量は0.1〜90%であることが好ましくさらに好ましくは1〜5重量%であることが好ましい。
【0038】
乳化剤として具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンイソデシル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤、ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等のノニオン系界面活性剤、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤、フッ素系としてフルオロアルキルカルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−(3−パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)等におけるパーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型等が挙げられる。
【0039】
架橋性官能基導入のための共重合性モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、単官能ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、単官能ポリエステル(メタ)アクリレート、単官能ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン、t−ブチル−n−ブトキシメチルアクリルアミドのような(メタ)アクリル酸アミドモノマー;ラウリルビニルエーテルのようなビニルエーテルモノマー;ビニルブチレートのようなビニルエステルモノマー等の単官能性モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレートモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジアリル化合物又はトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等の多官能性モノマー等や、主要原料となるフッ素系(メタ)アクリレートも用いることができる。これらの架橋性官能基導入のための共重合性モノマーは単独又は2種類以上用いてもよい。
【0040】
架橋性官能基導入のための共重合性モノマーの配合量は1〜50重量%であることが好ましく、さらに5〜15重量%であることが好ましい。
【0041】
乳化重合後に架橋性官能基導入のための共重合性モノマーを添加することで任意の部分に架橋性官能基を導入できる。
【0042】
架橋性官能基であるエポキシ化のためのグリシジル基を有する共重合性モノマーとして、エポキシ基とエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル−α−エチルアクリレート、グリシジル−α−プロピルアクリレート、グリシジル−α−ブチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル−α−エチルアクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、β−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、β−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル−α−エチルアクリレート、3−メチル−3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5−メチル−5,6−エポキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
フッ素含有アクリル樹脂重合体のフッ素含有量は2〜70重量%であることが好ましい。フッ素含有量が2重量%未満であると低屈折率化の効果が得られなくなる。
【0044】
微粒子の波長λ=550nmにおける光屈折率は最大でも1.5であることが好ましい。1.5以上であると反射を防止するなど、光学材料として活用した際に十分な効果が得られなくなる恐れが生じる。さらに、中空を有する微粒子の波長λ=550nmにおける光屈折率は最大でも1.4であることが好ましい。
【0045】
これらの粒子は均一であり、平均粒子径は5〜110nmであることが好ましい。粒子径が110nm以上であると、可視光の入射光線が散乱して光学材料としての機能が損なわれてしまう。また5nm以下にすることは、フッ素含有アクリルレート類を乳化重合する際における乳化微粒子の径をこれ以下にすることを意味し、事実上困難である。
【0046】
本発明のフッ素系アクリル樹脂の微粒子は、各々の粒子が積重なり微粒子の結合体となる。この結合体は、微粒子が規律よく積重ねられ相互間を架橋硬化により強固に連結することで機械的強度が強く、更に耐溶剤性に優れる特性を有する。粒子径が均一であれば、この微粒子の積重ね形状は六方最密充填となる。六方最密充填は微粒子間の空隙に空気があり、更なる低屈折率化の効果を得ることを可能とする。
【0047】
また微粒子は、充填の仕方によっては立方充填など、他の充填状態で相互間を架橋硬化して結合体とすることができ、空隙の空気体積が増加するため、一層の低屈折率化が実現できる。
【0048】
これらの結合体は極めて透明性が高く低屈折であるため、フッ素の含有量及び中空率の調整により屈折率の調整をすることが可能であり、様々な光学材料として有用である。具体的にはレンズ材料、ミラー材料、プリズム材料、光ファイバ材料、反射防止材料、または増透材料等である。
【0049】
光学材料として活用される際の粒子結合体の強度及び耐溶剤性が上がり、粒子結合体の欠損を生じず低屈折率化を損失することなく、用いることが可能となる。
【実施例】
【0050】
<微粒子の試作>
(合成例1:架橋性微粒子Aの合成)
4つ口セパラブルカバーに冷却管・撹拌装置・温度計・窒素吹き込み管を取り付け、500mlのセパラブルフラスコにイオン交換水159.4重量部を入れ、乳化剤としてパーフルオロヘキサニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを9.6重量部溶解する。次いで、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトエステルM−3F)23.25重量部及びエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトエステルEG)0.75重量部の混合溶液を加え窒素を吹き込みながら250rpmの速度で撹拌した。この反応容器を80℃に加熱し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5重量部をイオン交換水5.0重量部に溶解した開始剤溶液を添加して乳化重合を行いシード粒子を合成した。
【0051】
シード粒子合成終了後、引き続き2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート4.5重量部及びグリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトエステルG)1.5重量部の混合溶液を滴下添加し、滴下終了後3時間反応させ、架橋性基を導入して、室温まで冷却した。合成した粒子の平均粒子径は20.2nmであった。これを再沈殿し粒子を取り出した。この粒子を架橋性微粒子Aとする。
【0052】
(合成例2:架橋性微粒子Bの合成)
4つ口セパラブルカバーに冷却管・撹拌装置・温度計・窒素吹き込み管を取り付け、500mlのセパラブルフラスコにイオン交換水122.187重量部を入れ、パーフルオロヘキサニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを12.8重量部溶解する。次いで、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトエステルFM−108)31.0重量部及びエチレングリコールジメタクリレート1.0重量部の混合溶液を加え窒素を吹き込みながら250rpmの速度で撹拌した。この反応容器を80℃に加熱し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム2.0重量部をイオン交換水5.0重量部に溶解した開始剤溶液を添加して乳化重合を行いシード粒子を合成した。
【0053】
シード粒子合成終了後、引き続きパーフルオロオクチルエチルメタクリレート6.0重量部及びグリシジルメタクリレート2.0重量部の混合溶液を滴下添加し、滴下終了後3時間反応させ、架橋性基を導入して、室温まで冷却した。合成した粒子の平均粒子径は18.6nmであった。これを再沈殿し粒子を取り出した。この粒子を架橋性微粒子Bとする。
【0054】
(合成例3:架橋性中空微粒子Cの合成)
4つ口セパラブルカバーに冷却管・撹拌装置・温度計・窒素吹き込み管を取り付け、500mlのセパラブルフラスコに、イオン交換水164.8重量部を入れ、パーフルオロヘキサニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを13.2重量部溶解する。次いで、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート23.25重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.75重量部及び酢酸ブチル9.0重量部の混合溶液を加え窒素を吹き込みながら250rpmの速度で撹拌した。この反応容器を80℃に加熱し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5重量部をイオン交換水5.0重量部に溶解した開始剤溶液を添加して乳化重合を行いシード粒子を合成した。
【0055】
シード粒子合成終了後、引き続きパーフルオロオクチルエチルメタクリレート4.5重量部及びグリシジルメタクリレート1.5重量部の混合溶液を滴下添加し、滴下終了後3時間反応させ、架橋性基を導入して、室温まで冷却した。合成した粒子の平均粒子径は27.3nmであった。これを再沈殿し粒子を取り出し、乾燥して粒子中空に封じ込まれている酢酸ブチルを蒸発させた。この粒子を透過型電子顕微鏡で観察し、粒子径、中空を確認した。得られた観察結果の写真を図5に示す。この粒子を架橋性中空微粒子Cとする。
【0056】
(合成例4〜6:非架橋性粒子及び中空粒子の合成)
グリシジルメタクリレートを添加しないこと、すなわち架橋性基を導入しないこと以外は、合成例1〜3と同様にして、それぞれ架橋性微粒子Aに対応する非架橋性微粒子a(合成例4)、架橋性微粒子Bに対応する非架橋性微粒子b(合成例5)、架橋性中空微粒子Cに対応する非架橋性中空微粒子c(合成例6)を得た。非架橋性微粒子aの平均粒子径は20.0nm、非架橋性微粒子bの平均粒子径は18.3nm、非架橋性中空微粒子cの平均粒子径は26.9nmであった。
【0057】
<各種測定>
(粒子径の測定)
合成例中の粒子径は粒度分布測定装置LB−500(堀場製作所製)を用いて動的光散乱法により評価した。
【0058】
(屈折率の測定)
各種膜の屈折率はアッペ屈折計 3T型((株)アタゴ製)により測定した。
【0059】
(反射率及び膜厚の測定)
V−570型紫外可視分光光度計に反射率測定ユニットであるSLM−468型1回反射測定装置(日本分光株式会社製)を取り付け、反射防止膜作製面を、波長350nm〜800nmの範囲で反射スペクトルを測定した。
【0060】
<粒子調製液の調製>
(調製液1)
合成例1で得られた架橋性微粒子Aをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートへ溶解し、10.0重量%溶液とし、さらに光カチオン重合開始剤(商品名:イルガキュア250、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を粒子重量に対して固形分で3重量%添加し調製液1とした。
【0061】
(調製液2)
合成例1で得られた架橋性微粒子Aをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートへ溶解して2.2重量%溶液とし、さらに光カチオン重合開始剤(商品名:イルガキュア250、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を粒子重量に対して固形分で3重量%添加し調製液2−1とした。
【0062】
合成例4で得られた非架橋性微粒子aをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートへ溶解して2.2重量%溶液とし調製液2−2とした。なお、調製液2−2には光カチオン重合開始剤を添加していない。
【0063】
(調製液3)
合成例2で得られた架橋性微粒子Bを1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−ペンタンに溶解して1.7重量%溶液とし、さらに光カチオン重合開始剤(イルガキュア250)を粒子重量に対して固形分で3重量%添加し調製液3−1とした。
【0064】
合成例5で得られた非架橋性微粒子bを1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−ペンタンに溶解して1.7重量%溶液とし、調製液3−2とした。なお、調製液3−2には光カチオン重合開始剤を添加していない。
【0065】
(調製液4)
合成例3で得られた架橋性中空微粒子Cを1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−ペンタンに溶解して1.7重量%溶液とし、さらに光カチオン重合開始剤(イルガキュア250)を粒子重量に対して固形分で3重量%添加し調製液4−1とした。
【0066】
合成例6で得られた非架橋性中空微粒子cを1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−ペンタンに溶解して1.7重量%溶液とし、調製液4−2とした。なお、調製液4−2には光カチオン重合開始剤を添加していない。
【0067】
<各種膜の作製、屈折率の測定及び算出>
(架橋微粒子結合体Aの作製及び屈折率の測定)
調製液1を深さ5mmのシリコンの型に入れ80℃で減圧乾燥を行い、型から外して架橋微粒子結合体Aを得た。得られた架橋微粒子結合体Aの屈折率を測定した結果、屈折率は1.32であった。
【0068】
(ポリマー膜Aの作製及び屈折率の測定)
2枚のアクリル板の間に0.5mmのシリコンシートを挟み、その間に架橋性粒子Aの合成と同組成のモノマー(合成例1参照)に熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート(日油(株)製パーブチルND)をモノマー仕込み量に対し0.5%溶解した液を流し込み、40℃で2日間静置重合した後、型から取り外しポリマー膜Aを得た。得られたポリマー膜Aの屈折率を測定した結果、屈折率は1.42であった。
【0069】
(架橋粒子結合体Aの屈折率の算出)
架橋微粒子結合体Aの屈折率1.32とポリマー膜Aの屈折率1.42との差は、架橋微粒子結合体Aとポリマー膜Aの材質がおなじであるから、空隙に起因するものである。
【0070】
架橋微粒子結合体Aの粒子径が均一であると仮定すると、図1に描かれたように基体10の上に単位区画Sの上に六方最密充填で積層される。尚、図1は、中空2を有する微粒子1について描いてあるが、中空のない微粒子1についても適用できる。
【0071】
架橋微粒子結合体Aが六方最密充填構造状であると、その構造は底面を正三角形とする高さが正三角錐2つ分の正三角柱6つが並んだ正六角柱で表わされる。
【0072】
ここで架橋微粒子Aの直径が20.2nm≒20nmであり、正三角柱の底面の正三角形の1辺の長さであることから、正六角柱の体積は正三角柱6倍の体積、すなわち以下の式で求められる。
【0073】
正三角柱の底面積×高さ×6=六方最密充填構造の体積
・正三角柱の底面積=20×10√3×1/2
・高さ=2×20√6/3
六方最密充填構造の体積は約33900nmとなる。
【0074】
また、架橋微粒子Aの1個の体積は4/3πr(r=粒子の半径)で求められ、1格子中に粒子が6個構成されることから、1格子中の粒子体積(粒子が占める割合)は粒子6個分の体積すなわち約25100nmと求められる。
【0075】
一方、空隙部分の体積は、六方最密充填の体積から1格子中の粒子体積を引いた分であり、すなわち約8800nmである。以上の数値及びポリマー膜Aの屈折率:1.43及び空隙部分の屈折率=1(空気)とした時、以下の式(1)にて架橋粒子結合体Aの屈折率が算出できる。
【0076】
【数1】

この計算値の結果より、粒子膜Aの屈折率は計算値1.31及び実測値1.32でほぼ等しい値が得られた。
【0077】
(ポリマー膜Bの作製及び屈折率の測定)
架橋性粒子Bの合成と同組成のモノマー(合成例2参照)を用いた以外は、ポリマー膜Aの作製と同様の操作を行い、ポリマー膜Bを得た。得られたポリマー膜Bの屈折率を測定した結果、屈折率は1.38であった。
【0078】
(架橋微粒子結合体Bの屈折率の算出)
ポリマー膜Bの屈折率:1.38を用いる以外は架橋微粒子結合体Aの屈折率の算出と同様に、架橋微粒子結合体Bの屈折率を算出した。
【0079】
また、架橋微粒子結合体Aの屈折率の計算値及び実測値がほぼ同じであることから、粒子膜Bの屈折率は1.28であると言える。
【0080】
(架橋中空微粒子結合体の中空及び屈折率の算出)
架橋中空微粒子結合体の屈折率算出に当り、まずポリマー膜Bの比重を測定したところ、その比重は1.73g/cmであった。また、架橋性中空微粒子Cはポリマー(モノマー分)/中空部分(酢酸ブチル)で構成され、その構成重量比は30/9であり、比重より体積割合に換算すると17.34/10.23である。このことより架橋性中空微粒子Cの屈折率を以下の式(2)より算出した。
【0081】
【数2】

その結果、架橋性中空微粒子Cの屈折率は1.24であった。
【0082】
また、架橋性中空微粒子Cの粒子径を約30nmとしたとき架橋微粒子結合体Aの屈折率と同様の方法で算出したところ、六方最密充填構造の体積は約114600nm、格子中の粒子の体積は約84800nm、空隙部分の体積は約29800nmであった。以上のことから、上記の式(1)より架橋中空微粒子結合体の屈折率を算出すると、1.18となった。
【0083】
なお、ここでポリマー膜Bの比重を算出するに当り、micrometics(SHIMADZU)を用いて体積を測定し算出した。
【0084】
<反射防止処理PETフィルムの作製>
以下で用いるポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムとする)は、反射率測定時に反射防止膜作製面でない裏面の反射光をカットするため、あらかじめ片面をサンドペーパーで研磨した後黒色塗料で塗りつぶし処理を施した。
【0085】
(実施例1)
調製液2−1を、バーコーター(No.5)を用いてPETフィルムの黒色に塗りつぶしていない面に塗布し、90℃で30分間乾燥し、低屈折率層を形成した。さらに80W/cm高圧水銀灯で、10cmの距離から5m/分のコンベアスピードで紫外線を照射した後、60℃で24時間加熱し、反射防止処理PETフィルムを得た。
【0086】
得られた反射防止膜を、JIS Z−8720に従い反射率の測定を行ったところ、550nmでの視感度反射率は0.97%であった。得られた反射率スペクトルを図2に示した。また、得られた反射率及び測定した屈折率より膜厚は、約100nmであった。反射防止膜をメチルエチルケトン(MEK)に浸漬する前後に行った反射率測定結果を表1に示してある。
【0087】
(実施例2)
調製液3−1を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反射率の測定により得られた反射防止膜の550nmでの視感度反射率は、0.37%であった。得られた反射率スペクトルを図3に示した。また、得られた反射率及び算出した屈折率より膜厚は、約107nmであった。反射防止膜を1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオエトキシ)エタンに浸漬する前後に行った反射率測定結果を表1に示してある。
【0088】
(実施例3)
調製液4−1を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った後に、粒子内部の溶剤を留去させるために80℃で5時間減圧乾燥を行い、反射防止処理PETフィルムを得た。反射率の測定により得られた反射防止膜の550nmでの視感度反射率は、0.21%であった。得られた反射率スペクトルを図4に示した。また、得られた反射率及び算出した屈折率より膜厚は、約111nmであった。反射防止膜を1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオエトキシ)エタンに浸漬する前後に550nmで行った反射率測定結果を表1に示してある。
【0089】
(比較例1〜3)
調製液2−2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った(比較例1)。調製液3−2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った(比較例2)。調製液4−2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った(比較例3)。また、比較例3では、粒子塗膜後に粒子内部の溶剤を留去させるために80℃で5時間減圧乾燥を行った。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
このフッ素系アクリル樹脂の微粒子は低屈折率で用途に応じて屈折率調整が可能であり、機能的強度が強く耐溶剤性に優れることから、軽量で光学材料として多岐に渡り利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】基体上における中空を有する微粒子の結合体の模式図である。
【図2】実施例1における反射防止フィルムの反射率測定結果のグラフである。
【図3】実施例2における反射防止フィルムの反射率測定結果のグラフである。
【図4】実施例3における反射防止フィルムの反射率測定結果のグラフである。
【図5】架橋性中空微粒子Cの透過型顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0093】
1は中空を有する微粒子、2は中空、10は基体、Sは単位区画である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基で変性したフッ素含有アクリル重合体であって、平均粒子径が5nm〜110nmであることを特徴とする微粒子。
【請求項2】
該請求項1に記載の微粒子を、該架橋性官能基で架橋硬化したことを特徴とする微粒子。
【請求項3】
該微粒子のコア部が中空であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子。
【請求項4】
該中空の内径が粒子径の30〜80%であることを特徴とする請求項3に記載の微粒子。
【請求項5】
該フッ素含有アクリル重合体中のフッ素含有量が2〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子。
【請求項6】
波長λ=550nmにおける光屈折率が最大でも1.5であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子。
【請求項7】
波長λ=550nmにおける光屈折率が最大でも1.4であることを特徴とする請求項3に記載の微粒子。
【請求項8】
架橋性官能基で変性したフッ素含有アクリル重合体の微粒子を、該架橋性官能基を架橋硬化させて該微粒子の相互間を連結させたことを特徴とする微粒子の結合体。
【請求項9】
請求項8に記載の微粒子の結合体を含むことを特徴とする光学材料。
【請求項10】
請求項9に記載の光学材料がレンズ材料、ミラー材料、プリズム材料、光ファイバ材料、反射防止材料、または増透材料であることを特徴とする光学材料。
【請求項11】
フッ素含有アクリレート類を乳化重合して得られたシード粒子を架橋性官能基で変性することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項12】
該フッ素含有アクリレート類に揮発性コアの液体を混合した溶液を乳化重合して得られた、中央部に揮発性コアの液体が封じ込められた、フッ素含有アクリル重合体のシード粒子を架橋性官能基で変性した後、乾燥して該揮発性コアの液体を揮発させ中空にすることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の製造方法で得られた微粒子の該架橋性官能基を架橋硬化させることを特徴とする微粒子結合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−90302(P2010−90302A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262814(P2008−262814)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】