説明

硬化型被覆材組成物

【課題】多官能(メタ)アクリレートを含む硬化型の被覆材組成物であって、硬化膜が硬度及び耐擦傷性に優れ、さらにはカールが小さく耐屈曲性にも優れる、特にハードコート剤として優れる硬化型組成物の提供。
【解決手段】下記(メタ)アクリレート混合物を含む硬化型被覆材組成物。
○(メタ)アクリレート混合物:ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(以下、「トリ体」という)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(以下、「テトラ体」という)及びトリ体の水酸基がテトラ体の(メタ)アクリロイル基にマイケル付加した化合物(以下、「化合物M」という)を、特定条件で液体クロマトグラフィーにより測定された面積比であって、テトラ体の面積を100とした場合に
トリ体:テトラ体:化合物M=0.1〜2.0:100:15.0〜50.0
の面積比で含む混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線の照射により、又は加熱によって硬化可能な硬化型被覆材組成物に関するものであり、本発明の組成物は、種々の基材に対する被覆に有用なものであり、特にプラスッチクの被覆であるハードコート用途に有用なものであり、これらを使用する技術分野において利用され得るものである。
尚、本明細書においては、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【背景技術】
【0002】
一般にプラスチック製品、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート及びABS樹脂等は、その軽量性、易加工性及び耐衝撃性等に優れており、種々の用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、これらのプラスチック製品は、その表面に傷がつき易く、その原料樹脂が本来持つ透明性又は外観を損なうという欠点があり、耐摩耗性が要求される多くの分野では、その表面にハードコートが施される。当該ハードコートに使用されるハードコート用コーティング剤(以下ハードコート剤という)としては、アクリル系ハードコート剤、シラン系ハードコート剤及びアクリル―シリコン系ハードコート剤等が知られている。
【0004】
これらの中でも、アクリル系ハードコート剤は、(メタ)アクリレートを含有するもので、紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化が可能であるために、硬化時間が短く優れた生産性を有し、原料樹脂コストがシラン系ハードコート剤の1/4〜1/8と安価である等の多くの利点があり、当該分野で広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアクリル系ハードコート剤においては、硬化膜に硬度や耐摩耗性を付与するために、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート〔以下、多官能(メタ)アクリレートという〕を配合する場合が多く、その中でも1分子中に(メタ)アクリロイル基を4個以上有する多官能(メタ)アクリレートを配合されることが多い(例えば、特許文献1〜同3)
【0006】
しかしながら、多官能(メタ)アクリレートを含むアクリル系ハードコート剤は、硬化膜が硬度や耐摩耗性に優れるものの、硬化収縮により硬化膜にカールが発生したり、又硬くなりすぎるため耐屈曲性が不十分となることが多かった。
特に近年においては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ及びタッチパネルディスプレイ等の表示体において、表面にハードコート剤を保護層にしたフィルムを設けたものが急速に普及しており、当該用途においては、より高い硬度及び耐擦傷性に加え、硬化時の収縮が小さくフィルムのカールが小さく、耐屈曲性に優れるものが要求されている。
【0007】
本発明者らは、多官能(メタ)アクリレートを含む硬化型の被覆材組成物であって、硬化膜が硬度及び耐擦傷性に優れ、さらにはカールが小さく耐屈曲性にも優れる、特にハードコート剤として優れる硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【0008】
【特許文献1】特公平7−107140号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−131837号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−231138号公報(特許請求の範囲)
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するためには、多官能(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(トリ体)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(テトラ体)及び特定マイケル付加体を特定割合で含む組成物が有効であることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化型被覆材組成物は、硬化膜が硬度及び耐擦傷性に優れ、さらにカールが小さく耐屈曲性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、下記(メタ)アクリレート混合物を含む硬化型被覆材組成物に関する。
○(メタ)アクリレート混合物:ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(以下、「トリ体」という)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(以下、「テトラ体」という)及びトリ体の水酸基がテトラ体の(メタ)アクリロイル基にマイケル付加した化合物(以下、「化合物M」という)を、下記条件で液体クロマトグラフィーにより測定された面積比であって、テトラ体の面積を100とした場合に下記面積比で含む混合物。
・トリ体:テトラ体:化合物M=0.1〜2.0:100:15.0〜50.0
・液体クロマトグラフィー測定条件
装置:高速液体クロマトグラフ(HPLC)、検出器:紫外検出器、カラムの種類:炭素数18のアルキル基で修飾されたシリカゲル(粒子径:1.7μm)からなるカラム(内径;2.1mm×長さ;150mm)、カラムの温度:40℃、溶離液:0.03重量%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル=60/40(初期)→50/50(10分)→30/70(15分)→0/100(18−20分)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
1.(メタ)アクリレート混合物
本発明の組成物の必須成分である(メタ)アクリレート混合物は、トリ体、テトラ体及び化合物Mを、前記条件で液体クロマトグラフィーにより測定された面積比であって、テトラ体の面積を100とした場合に下記面積比で含む混合物である。
・トリ体:テトラ体:化合物M=0.1〜2.0:100:15.0〜50.0
【0013】
化合物Mは、下記式(1)で表される化合物である。尚、式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明における液体クロマトグラフィーの測定条件は、前記の通りとする。
炭素数18のアルキル基で修飾されたシリカゲルは市販されており、日本ウオーターズ(株)製のAcquity BEH C18等がある。
又、以下の条件として測定することが好ましい。
流速:0.3mL/min、紫外検出器の検出波長:210nm、試料濃度:0.1重量%アセトニトリル溶液、注入量:2μL
本発明では、テトラ体のピークの面積値を100として、トリ体及び化合物Mのピークの相対面積値を算出する。
【0016】
本発明では、(メタ)アクリレート混合物において、トリ体、テトラ体及び化合物Mの面積比を、トリ体:テトラ体:化合物M=0.1〜2.0:100:15.0〜50.0とする。これにより硬化速度に優れ、硬化時の体積収縮が低減され、その硬化膜が硬度等の物性にも優れ、耐乳化性に優れるものとすることができる。
特に、トリ体及びテトラ体の割合を前記の範囲とすることにより、耐乳化性に優れるものとすることができ、化合物Mの割合を前記の範囲とすることにより、硬化性に優れ、硬化時の体積収縮が低減されたものとすることができる。
【0017】
1)(メタ)アクリレート混合物の製造方法
(メタ)アクリレート混合物は、トリ体、テトラ体及び化合物Mを前記の割合で含むものであれば任意あり、それぞれの成分を配合して製造することもできるが、トリ体とテトラ体を酸触媒の存在下に加熱・攪拌して得られたものが簡便であり好ましい。
以下に、当該製造方法について詳細に説明する。
【0018】
1−1)原料(メタ)アクリレート
この製造方法では、原料として、トリ体とテトラ体を使用する。
原料のトリ体とテトラ体の割合としては、後記する条件で液体クロマトグラフィーにより測定された面積比で、トリ体:テトラ体=50.0〜200.0:100であることが好ましい。
原料のトリ体とテトラ体は、ペンタエリスルトールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応物を使用することが、入手が容易であり好ましい。この場合、エステル化反応物中にトリ体とテトラ体を50〜80重量%含むものが好ましい。この場合、トリ体とテトラ体以外の化合物を含んでいても良い。具体的には、未反応ペンタエリスリトール、未反応(メタ)アクリル酸、モノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート及びその他(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
さらに、これら以外の(メタ)アクリレートを含んでいても良い。具体的には、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
1−2)酸触媒
酸触媒は、テトラ体の(メタ)アクリロイル基にトリ体の水酸基を付加反応させるために使用されるものである。当該反応は、通常マイケル付加反応と称されるものである。
酸触媒は、種々のものが使用でき、具体的には硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、タングストリン酸、タングストケイ酸、モリブドリン酸、モリブドケイ酸、三フッ化ホウ素エーテラート及び四塩化スズ等が挙げられる。これらの中でも触媒活性が高く、水存在下でも失活せず、副反応が少ないという理由で、メタンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸が好ましい。
【0020】
酸触媒の使用量としては、トリ体とテトラ体の合計量に対して、トリ体とテトラ体以外の(メタ)アクリレートを含む場合には、トリ体、テトラ体及びその他(メタ)アクリレートの合計量〔以下、(メタ)アクリレート合計量という〕に対して、0.1〜15重量%が好ましく、より好ましくは1.0〜10重量%である。0.1重量%以上とすることにより、付加反応を充分に進行させることができ、15重量%以下とすることにより、過剰の発熱による反応系が不安定になること防止し、生成物の着色や、さらにはゲル化を防止することができる。
【0021】
1−3)その他の成分
(メタ)アクリレート混合物の製造方法においては、必要に応じて反応溶媒を使用することが好ましい。
反応溶媒は、上記必須成分の希釈のために使用されるもので、例えば、トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、並びにメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン等が挙げられる。
反応溶媒は、基質の溶解性等を考慮して、1種を単独で使用しても又は2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
反応溶媒を使用する場合には、その配合割合としては、目的に応じてそれぞれ選択すればよいが、通常反応液の固形分が10〜80重量%となる割合が好ましい。
【0022】
又、(メタ)アクリレート混合物の製造方法においては、(メタ)アクリロイル基がラジカル重合することを抑制するための重合禁止剤を反応液に添加したり、含酸素ガスを反応液に導入することが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、ベンゾキノン、フェノチアジン等の有機系重合禁止剤、塩化銅及び硫酸銅等の無機系重合禁止剤、並びにジブチルジチオカルバミン酸銅等の有機塩系重合禁止剤等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で使用しても又は2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
重合禁止剤の割合としては、原料のトリ体とテトラ体の合計量又は(メタ)アクリレート合計量に対して50〜20,000ppmが好ましい。重合禁止剤の割合を50ppm以上とすることにより、重合防止の効果を十分にすることができ、他方20,000ppm以下とすることにより、生成物の硬化性が低下を防止し、生成物の着色を防止することができる。
含酸素ガスとしては、例えば空気、酸素と窒素の混合ガス、酸素とヘリウムの混合ガス等が挙げられる。
【0023】
1−4)製造条件
(メタ)アクリレート混合物の好ましい製造方法は、トリ体とテトラ体を酸触媒の存在下に加熱・攪拌する方法である。
反応は、トリ体とテトラ体を、必要に応じて反応溶媒中で、前記酸触媒及び必要に応じて重合禁止剤の存在下に、加熱・攪拌すればよい。
【0024】
この場合の反応温度としては、60〜130℃が好ましい。反応温度が60℃に満たない場合は反応が遅くなり、他方130℃を越える場合には、反応系が不安定になったり、ゲル化する場合がある。
【0025】
反応時間は、原料トリ体とテトラ体の割合、反応条件及び最終的に得られるトリ体とテトラ体の割合等に応じて適宜設定すれば良いが、2〜20時間が好ましい。
【0026】
反応は、水分が存在していると反応性が悪くなることがあるため、後記するエステル化反応で得られるトリ体及びテトラ体を乾燥せずそのまま使用する場合には、減圧下に実施することが好ましい。
減圧度としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、45〜95kPaが好ましく、より好ましくは50〜90kPaである。
【0027】
好ましい製造方法の一例を挙げると、攪拌機、温度計を備えた反応器にトリ体及びテトラ体をそれぞれ所定量仕込み、必要に応じて反応溶媒を用い、酸触媒と更に重合禁止剤をそれぞれ適量仕込み、攪拌下所定時間加熱・攪拌する方法を挙げることができる。
反応終了後、反応液は中和・水洗し、水層を分離した後、有機層を減圧下加熱して溶媒を留去し、目的とする(メタ)アクリレート混合物を得る。
【0028】
2)エステル化反応物を使用する(メタ)アクリレート混合物の製造方法
(メタ)アクリレート混合物の製造方法としては、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応物をそのまま使用して製造することもできる(以下、第2製造方法という)。
即ち、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸を酸触媒の存在下に加熱・攪拌し、トリ体とテトラ体の混合物を得た後、当該混合物を酸触媒の存在下に加熱・攪拌して(メタ)アクリレート混合物を製造しても良い。
【0029】
ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の脱水エステル化反応の方法としては、従来知られた種々の方法で行えば良く、例えば多価アルコールと(メタ)アクリル酸を酸触媒存在下、加熱・攪拌し脱水する方法が挙げられる。
【0030】
第2製造方法では、原料ペンタエリスリトールに、必要に応じて他の多価アルコールを含んでいても良い。具体的には、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。この場合、他の多価アルコールは、原料アルコールの全量に対して40重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下であり、特に好ましくは10重量%以下である。
【0031】
ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の使用割合は、エステル化反応生成物中のトリ体とテトラ体が上記の好ましい範囲内となるように適宜決定すれば良いが、ペンタエリスリトール中の水酸基1モルに対する(メタ)アクリル酸のモル比を0.6〜1.8とすることが好ましい。この割合を0.6以上とすることにより、トリ体以外の水酸基を有する化合物、例えば未反応ペンタエリスリトールや水酸基を2個以上有する(メタ)アクリレートと、テトラ体との付加反応を抑制することができ、生成物の増粘や、反応後の水洗において2層分離しにくくなることを防止することができる。他方1.8以下とすることにより、未反応の(メタ)アクリル酸が少なくなり、経済的であり、中和におけるアルカリ量も低減することができる。
【0032】
ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸との最も好適な割合は、目的とするトリ体とテトラ体の割合や反応条件等によって異なるが、実験的手法によって容易に設定することができる。又、エステル化反応生成物中のトリ体とテトラ体の割合を、目的の割合に制御するためには、反応で留出する水の量を測定することが好ましい。
【0033】
酸触媒としては、前記と同様のものを使用することができる。
酸触媒の使用割合としては、ペンタエリスリトール及び(メタ)アクリル酸の合計量に対して0.1〜15重量%が好ましく、より好ましくは1.0〜10重量%である。
【0034】
反応温度としては、80〜130℃が好ましい。反応温度を80℃以上とすることにより、反応速度を早いものとすることができ、他方130℃以下とすることにより、反応系が安定となり、ゲル化を防止することができる。
【0035】
反応時間は、使用する原料の種類、割合及び量並びに最終的に得られるトリ体とテトラ体の割合等に応じて適宜設定すれば良いが、4〜40時間が好ましい。
【0036】
反応は、減圧下に実施することが好ましい。これにより、効率的に脱水を行うことができ、反応を短時間で終了することができるうえ、得られる組成物の着色を防止することができる。
減圧度としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、45〜95kPaが好ましく、より好ましくは50〜90kPaである。
【0037】
エステル化反応においては、効率的に脱水を行うことができるため、反応溶媒を使用することが好ましい。反応溶媒としては、前記と同様のものが使用できる。
又、本発明の製造方法においては、(メタ)アクリロイル基がラジカル重合することを抑制するための重合禁止剤を反応液に添加したり、含酸素ガスを反応液に導入することが好ましい。当該重合開始剤及び含酸素ガスとしては、前記と同様のものが挙げられる。
【0038】
第2製造方法では、前記エステル化反応で得られたトリ体とテトラ体の混合物を、酸触媒の存在下に加熱・攪拌して(メタ)アクリレート混合物を製造する。
この場合、得られたトリ体とテトラ体の混合物に酸触媒を添加することなく、エステル化反応で使用した酸触媒の存在下にそのまま引き続き加熱しても良く、又、新たに酸触媒を添加して加熱しても良い。
又、得られた反応混合物を中和・水洗した後、有機層を分離し、得られた有機層に新たに酸触媒を添加して加熱する方法もある。
この場合、中和のためのアルカリとしては、水酸化ナトリウム水溶液等を挙げることができる。中和・水洗処理によれば、反応混合物中の未反応(メタ)アクリル酸等の水溶性成分を除去することができる。これにより、生成するトリ体とテトラ体の割合を、目的とする割合に好ましく制御することができ、又、付加反応後の水洗工程における水層と有機層の分離が困難となることを防ぐことができる。
【0039】
第2製造方法によれば、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸を原料として、1ポットで(メタ)アクリレート混合物を製造することができるため、工程がシンプルとなり、低コストである。
【0040】
2.硬化型被覆材組成物
本発明は、前記(メタ)アクリレート混合物を含む硬化型被覆材組成物である。
組成物には、以下に詳述する各種成分を配合することができる。
【0041】
1)その他のエチレン性不飽和化合物
組成物には、前記(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和化合物〔以下、「その他不飽和化合物」という〕を配合することができる。
【0042】
その他不飽和化合物としては、1個のエチレン性不飽和を有する化合物及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下ポリ(メタ)アクリレートという〕等が挙げられる。
【0043】
1個のエチレン性不飽和を有する化合物としては、ビニル化合物及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下モノ(メタ)アクリレートという〕等が挙げられる。
ビニル化合物としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム及び(メタ)アクリアミド等が挙げられる。
モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロオクチルエチル(メタ)クリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;リン酸(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート;イソボルニルアクリレート等の脂環式モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら以外にも、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、マレイミド(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0044】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等の2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート;並びにジ(2−(メタ)アクロイルオキシエチル)イソシアヌレ−ト、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレ−ト、ジ(2−(メタ)アクロイルオキシプロピル)イソシアヌレ−ト及びトリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレ−ト等のジ又はトリ(2−(メタ)アクリロイルオキアルキル)イソシアヌレ−ト;並びにジ(2−(メタ)アクロイルオキシエチル)シアヌレ−ト、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)シアヌレ−ト、ジ(2−(メタ)アクロイルオキシプロピル)シアヌレ−ト及びトリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)シアヌレ−ト等のジ又はトリ(2−(メタ)アクリロイルオキアルキル)シアヌレ−ト等を挙げることができる。
これら以外にも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート等の4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートも使用可能である。
【0045】
又、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーも使用することができる。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に対して、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物等が挙げられる。ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエチレングリコール及びポリエステルポリオール等があり、低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール又は/及びポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。
【0048】
エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、フェノールあるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加反応体等が挙げられる。
【0049】
その他不飽和化合物は、組成物の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。
組成物の硬化膜にさらに硬度を付与する目的のためには、前記したポリ(メタ)アクリレートを配合することが好ましい。
組成物の硬化膜にさらに耐磨耗性や靭性等を付与する目的のためには、前記したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することが好ましい。
又、本発明の組成物を屋外で使用する用途等に使用する場合には、硬化膜に耐候性を付与する目的で、ジ若しくはトリ(2−(メタ)アクリロイルオキアルキル)イソシアヌレ−ト又は/及びジ若しくはトリ(2−(メタ)アクリロイルオキアルキル)シアヌレ−トを配合することが好ましい。
【0050】
その他不飽和化合物の配合割合としては、組成物の用途及び目的に応じて適宜設定すれば良いが、本発明の組成物中に含まれるエチレン性不飽和化合物の合計重量に基づいて、5〜90重量%が好ましく、より好ましくは7〜70重量%である。
【0051】
2)重合開始剤
組成物を活性エネルギー線硬化型組成物として使用する場合、特に、可視光線又は紫外線硬化型組成物とする場合、組成物に光重合開始剤を配合する。尚、電子線硬化型組成物とする場合は、光重合開始剤を必ずしも配合する必要はない。
【0052】
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これら光重合開始剤は、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0053】
光重合開始剤には、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤としては、キサンテン、チオキサンテン、クマリン及びチオクマリン等の色素増感剤;o−トリルチオ尿素等の尿素類;ナトリウムジエチルジチオホスフェート及びs−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物;N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
これら光増感剤は、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0054】
光重合開始剤を配合する場合は、(メタ)アクリレート混合物100重量部に対して、又はその他不飽和化合物を配合する場合は、これらの合計量100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部である。
【0055】
組成物を熱硬化型組成物として使用する場合、組成物に熱重合開始剤を配合する。
熱重合開始剤としては、公知のものを使用することができる。
【0056】
3)有機溶剤
本発明の組成物は、無溶剤型で使用することができるが、適用する基材、塗工方法及び目的とする粘度等に応じ、必要に応じて有機溶剤を配合することもできる。
有機溶剤としては、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びミネラルスピリッツ等の脂肪族炭化水素;塩化エチレン及び塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等のアルコール;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及びエチルセロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン等;並びにメチルセロソルブ、エチルセロソルブ及びブチルセロソルブ等のセロソルブ等が挙げられる。
有機溶剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
有機溶剤の好ましい配合割合は、目的とする粘度等に応じて適宜設定すれば良いが、固形分として10〜90重量%となる割合で配合するのが好ましく、より好ましくは20〜80重量%である。
【0057】
4)重合体
本発明の組成物には、硬化時の応力を緩和し、硬化収縮やカール等の発生を防止する目的で重合体を配合することができる。特に、ハードコート層を保護層にしたフィルムを表面に設けた表示体(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ及びタッチパネル等)に使用する際に好ましいものである。
重合体としては、硬化時の応力を緩和できるものであれば種々の重合体が使用でき、(メタ)アクリレート重合体及びオルガノポリシロキサン等を挙げることができ、(メタ)アクリレート重合体が好ましい。
【0058】
4−1)(メタ)アクリレート重合体
(メタ)アクリレート重合体は、アルキル(メタ)アクリレートを必須とし、必要に応じて、これら(メタ)アクリレートと共重合可能なラジカル重合性モノマー(以下、共重合性モノマーという)を共重合した重合体等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量としては、1,000〜500,000が好ましく、5,000〜200,000がより好ましく、8,000〜100,000がさらに好ましい。重量平均分子量が、1,000以上で硬化収縮を小さくする効果が大きく、500,000以下で硬度が十分に高いものとなる。
ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0059】
(メタ)アクリレート重合体としては、目的に応じて共重合性モノマーを選択することにより、組成物硬化時の応力緩和の性能に加え、硬化膜に種々の性能を付与することができる。
【0060】
A)帯電防止性能等
組成物の硬化膜に、帯電防止性能等を付与する場合には、共重合性モノマーとして、4級アンモニウム塩基を有するビニル基含有単量体又は/及びリン酸基を有するビニル基含有単量体を使用することが好ましい。
【0061】
4級アンモニウム塩基を有するビニル基含有単量体としては、トリアルキルアンモニウム基等の4級アンモニウム基とビニル基を有する化合物が挙げられる。
具体的には、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;2−(ジメチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;N−(2−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド等のN−アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド類等の(メタ)アクリル系モノマーを、塩化メチレン、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等で4級化した4級塩として得られるものである。
【0062】
より具体的な例としては、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエチルアンモニウムブロマイド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリブチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルエチルブチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルジメチルフェニルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタアクリルオキシプロピルジメチルシクロヘキシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
リン酸基を有するビニル基含有単量体としては、リン酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的にはリン酸(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
B)耐擦傷性等
組成物の硬化膜に、耐擦傷性等をさらに付与したい場合には、共重合性モノマーとして、ポリジアルキルシロキサン基有するビニル基含有単量体及び/又はフッ素化アルキル基を有するビニル基含有単量体を使用することが好ましい。
ポリジアルキルシロキサン基有するビニル基含有単量体において、ポリジアルキルシロキサン基としては、ポリジメチルシロキサン基が好ましい。ポリジアルキルシロキサン基有するビニル基含有単量体としては、ポリジメチルシロキサン基有する(メタ)アクリレート等が好ましい。ポリジメチルシロキサン基有する(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリロキシブチルポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピルポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
フッ素化アルキル基を有するビニル基含有単量体としては、水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。当該(メタ)アクリレートの具体例としては、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、N−メチルパーフルオロオクチルスルフォンアミドエチル(メタ)アクリレート、N−メチルパーフルオロヘキシルスルフォンアミドエチル(メタ)アクリレート、N−プロピルパーフルオロヘキシルスルフォンアミドエチル(メタ)アクリレート、N−プロピルパーフルオロオクチルスルフォンアミドエチル(メタ)アクリレート及びパーフルオロヘプチルカーボンアミドエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0065】
C)不飽和アクリル系重合体
組成物の硬化膜に、耐溶剤性や耐摩耗性をさらに付与したい場合には、(メタ)アクリレート重合体としてエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレート重合体〔以下、「不飽和アクリル系重合体」という〕を使用することが好ましい。
【0066】
不飽和アクリル系重合体としては、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート重合体〔以下、「反応性アクリル系重合体」という〕と反応性官能基と反応が可能な基を有するエチレン性不飽和化合物〔以下、「反応性不飽和化合物」という〕を反応させて得ることができる。
【0067】
側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート重合体の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基及びエポキシ基等が好ましい。
これらの反応性官能基と反応が可能な基を有するエチレン性不飽和化合物が有する官能基としては、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハライド基、水酸基及びエポキシ基等が好ましい。
【0068】
反応性アクリル系重合体と反応性不飽和化合物を反応させ不飽和アクリル系重合体の製造方法は、特に限定はなく、従来の公知の方法で製造することができるが、例えば、下記の反応性アクリル系重合体と反応性不飽和化合物として、下記(1)〜(3)を選択する方法が挙げられる。
【0069】
(1)反応性アクリル系重合体:水酸基を有する(メタ)アクリレート重合体
反応性不飽和化合物:(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート、イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸クロライド等
【0070】
(2)反応性アクリル系重合体:カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート重合体
反応性不飽和化合物:水酸基及び(メタ)アクリロイル基を含有する化合物、又はエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物
【0071】
(3)反応性アクリル系重合体:エポキシ基を有する(メタ)アクリレート重合体
反応性不飽和化合物:(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート及びフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物
【0072】
不飽和アクリル系重合体の製造方法について、前記(3)を例に挙げ説明する。
まず、反応性アクリル系重合体として、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート重合体を製造する。当該重合体は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートを単独重合するか、又はこれ以外の単量体と共重合することにより製造する。
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業(株)製「CYCLOMER M100」、「CYCLOMER a200」)、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等を挙げることができる。
共重合する場合の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル及びアクリロニトリル等のカルボキシル基を有しない不飽和単量体が好ましい。
次に、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート重合体のエポキシ基に、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加反応させ、不飽和アクリル系重合体を得ることができる。
【0073】
不飽和アクリル系重合体の重量平均分子量としては、2,000〜80,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、8,000〜35,000がさらに好ましい。重量平均分子量が、5,000以上で硬化収縮を小さくする効果が大きく、80,000以下で硬度が十分に高いものとなる。
【0074】
不飽和アクリル系重合体として、硬化膜に防汚性等を付与する場合には、ポリシロキサンブロック共重合単位を導入することができる。
具体的には、反応性アクリル系重合体の製造時において、アゾ基を有するポリシロキサンの存在下に前記した単量体を使用して重合し、これと反応性不飽和化合物を反応させる方法等が挙げられる。アゾ基を有するポリシロキサンや単量体の選択については、特開2008−056789号に記載された光反応性シリコーンアクリル共重合体と同様のものが使用できる。
【0075】
不飽和アクリル系重合体の(メタ)アクリロイル基当量は、100〜400g/eqが好ましく、さらに好ましくは、200〜300g/eqである。重合体(B)の(メタ)アクリロイル基当量がこの範囲であれば、硬化収縮を小さくでき、硬度も十分に高くすることができる。
【0076】
不飽和アクリル系重合体の配合割合としては、組成物中の固形分の合計100重量部に対して5〜90重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましく、15〜50重量%がさらに好ましい。不飽和アクリル系重合体の配合割合をこの範囲内とすることにより、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。
【0077】
4−2)オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンとしては、従来シリコーンオイルやシリコーンゴム等として知られた、Si−O−Si結合を主骨格とし有機基で置換された構造の化合物であれば、種々の化合物を使用することができる。
オルガノポリシロキサンの重量平均分子量としては、500〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましい。重量平均分子量が、500以上で硬化収縮を小さくする効果が大きく、100,000以下で硬度が十分に高いものとなる。
【0078】
オルガノポリシロキサンとして、組成物の硬化膜に、耐溶剤性や耐摩耗性をさらに付与したい場合には、エチレン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサン〔以下、「不飽和オルガノポリシロキサン」という〕を使用することが好ましい。
【0079】
不飽和オルガノポリシロキサンの具体例としては、アルコキシシランとラジカル重合性不飽和基含有アルコキシシランとの共重合物が挙げられる。
アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ラジカル重合性不飽和基含有アルコキシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
不飽和オルガノポリシロキサンは、アルコキシシラン及びラジカル重合性不飽和基含有アルコキシシランを、常法に従い混合・加熱して、重縮合を進行させることにより、製造することができる。
【0080】
又、組成物への溶解性向上等を目的として、エーテル変性したオルガノポリシロキサンを使用することもできる。当該オルガノポリシロキサンとしては、例えば特開2007−231138号公報に記載されている様な化合物等を挙げることができる。
【0081】
5)耐候性向上剤
本発明の組成物を屋外で使用する用途等に使用する場合には、硬化膜に耐候性を付与する目的で、耐候性向上剤を配合することが好ましい。
耐候性向上剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤等が挙げられる。
【0082】
5−1)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾ−ル系、サリチル酸フェニル系、安息香酸フェニル系の化合物等が挙げられる。
これらの中でも最大吸収波長が240〜380nmの範囲である紫外線吸収剤が好ましく、特に、組成物に多量に含有させることができるという点から、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が、又ポリカ−ボネ−ト等の基材の黄変を防ぐことができるという点から、ベンゾトリアゾ−ル系の紫外線吸収剤が好ましい。
紫外線吸収剤の具体例としては、以下の化合物が例示できる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,2’−ジヒドロキシ−4、4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレ−ト、p−tert−ブチルフェニルサリシレ−ト、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリシレ−ト、3−ヒドロキシフェニルベンゾエ−ト及びフェニレン−1,3−ジベンゾエ−ト等が挙げられる。
ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられる。
【0083】
5−2)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系及びベンゾエート系の光安定剤等が挙げられる。
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(ミックスド1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト、ミックスド〔1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン〕ジエチル〕−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ−ト等が挙げられる。
ベンゾエート系の光安定剤としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0084】
5−3)酸化防止剤
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]及び1,6−ヘキサンジオール−ビス[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。
【0085】
耐候性向上剤は、単独で使用しても、2種以上を組合わせて使用しても良い。
耐候性向上剤の好ましい配合割合としては、組成物100重量部に対して、0.01〜5重量部である。この割合が0.01重量部に満たないと、耐候性性向上剤を配合した効果が得られず、他方5重量部を超えると、組成物の硬化性が低下したり、得られる組成物の硬化膜の耐摩耗性が低下する場合がある。
【0086】
6)無機微粒子
無機微粒子は、硬化膜に耐擦傷性や耐衝撃性を付与する目的で、好ましく配合されるものである。
無機微粒子としては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック及びアセチレンブラック等のカーボンブラック;微粉ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ藻土及びコロイダルシリカ等のシリカ;微粉ケイ酸マグネシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム及びアルミノケイ酸ソーダ等のケイ酸塩;沈降性(活性、乾式、重質又は軽質)炭酸カルシウム、白亜及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;カオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイト及び酸性白土等のクレー;酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及びアルミナホワイト等のアルミナ(水和物);酸化ジルコニウム等のジルコニア;硫酸バンド及びサチンホワイト等の硫酸アルミニウム;バライト粉、沈降性硫酸バリウム及びリトポン等の硫酸バリウム;無水及び半水石膏等の石膏等が挙げられる。又、鉛白、マイカ、亜鉛華、酸化チタン、活性フッ化カルシウム、ゼオライト、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバー、マイクロバルーン(シラス、ガラス)等も挙げられる。
無機微粒子の粒径としては、体積平均粒径が0.01〜5μmが好ましい。
これらの無機微粒子は2種以上併用してもよい。
【0087】
組成物へ無機微粒子を配合する場合、無機微粒子の分散性を改善する目的で、レベリング剤を配合することが好ましい。
レベリング剤としては、後記するものの他、特開2007−262287号公報に記載されているフッ素系界面活性剤も使用することができる。
【0088】
7)その他成分
前記成分以外にも、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、有機フィラー、分散剤、増粘剤(チクソトロピー性付与剤)、レベリング剤及び重合禁止剤等を配合することもできる。
レベリング材としては、シリコン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
又、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン等のシラン化合物やシラン化合物の縮合体も配合することができる。
又、硬化膜に帯電防止機能を付与する場合には、4級アンモニウム塩化合物、アンチモンをドープした酸化錫、アンチモン酸亜鉛、錫ドープ酸化インジウム及び燐ドープ酸化錫等の帯電防止剤を配合することもできる。
【0089】
3.使用方法及び用途
1)総論
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従えば良い。
具体的には、基材に本発明の組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射するか又は加熱することにより硬化させる方法等が挙げられる。
【0090】
基材としては、被覆材が通常適用される種々の基材が挙げられる。具体的には、プラスチック、金属、ガラス、コンクリート、自然の木材及び合成木材等の木材、石材並びに紙等が挙げられる。
本発明の組成物は、特にプラスチックの表面保護、即ちハードコート用途により好ましく使用することができる。
【0091】
プラスチックの種類としては、具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(ポリエステル)カーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、ポリアリレ−ト、ポリメタクリルイミド、ポリアリルジグリコールカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、ポリメチルチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリルイミドは、透明性に優れかつ耐摩耗性改良要求も強いため、本発明の組成物を適用するのが特に有効である。
又、プラスチックの形態としては、成形品に好ましく適用でき、これらのプラスチックからなるシート状成形品、フィルム状成形品及び各種射出成形品等がある。
【0092】
塗布方法も常法に従えば良く、具体的には、膜厚が薄い場合には、刷毛塗り、浸漬塗り、ロール塗り、スプレー塗装及びスピン塗装等が挙げられる。
膜厚は、目的及び用途等に応じて適宜設定すれば良いが、0.1〜30μmが好ましい。
【0093】
活性エネルギー線の照射方法及び加熱方法等の硬化手段については、ラジカル重合性化合物の硬化方法として知られている一般的な方法を採用すれば良い。
活性エネルギー線の照射により硬化させる場合、活性エネルギー線としては可視光線、紫外線及び電子線等が使用でき、使用できる装置が簡便である点で、紫外線が好ましい。
加熱により硬化させる場合、加熱装置としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーター及び遠赤外線ヒーター等が挙げられる。加熱温度としては、使用する組成物及び目的に応じて適宜設定すれば良く、30〜100℃が好ましい。
【0094】
被覆材が適用できるより具体的な用途としては、木工等塗料、モルタル及びスレート等のトップコート用塗料並びに電子回路を構成するプリント基板の防水塗料等が挙げられる。
【0095】
本発明の組成物は、特にハードコート剤として好適に使用することができる。
ハードコート剤の具体的な使用形態としては;メガネ用レンズ、コンタクトレンズ、フレネルレンズ及びレンチキュラーレンズ等の光学レンズのコーティング;CDやDVD等の光ディスクのコーティング;携帯電話本体のコーティング;液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL及びタッチパネル等の表示材料のスクリーンパネルや保護フィルムの表面コーティング;自動車のヘッドライトやガラス代替プラスチック等のコーティング;並びに家電機器等のコーティング等が挙げられる。
本発明の組成物は硬化速度に優れ、硬化時の体積収縮が低減され、その硬化膜が硬度等の物性にも優れるため、上記の用途に好適に使用することができる。
本発明の組成物は、活性エネルギー線硬化型のハードコート剤としてより好ましく使用することができる。この場合の使用方法について、下記に説明する。
【0096】
2)フィルム用ハードコート
本発明の組成物を、例えば、フィルムを表面に設けた表示体(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ及びタッチパネル等)において、フィルムの表面のハードコートに使用する用途について説明する。
【0097】
フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン−1等のポリオレフィンフィルム;トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム;ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂フィルム(例えば、(JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体フィルム(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)等が挙げられる。これらのフィルムは2種以上貼り合わせて用いても良い。
これらのフィルムは、シート状であっても良い。フィルム基材の厚さは、20〜500μmが好ましい。使用するフィルムは、柄や易接着層を設けたものであっても良い。
【0098】
フィルム基材に塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。又、オフセット印刷、活版印刷等の印刷方式でも良い。
これらの中でも、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、ワイヤーバーコート、フローコートは、より厚さが一定な塗膜が得られるため好ましい。
【0099】
3)成形体用ハードコート
本発明の組成物は、プラスチック成形体用ハードート材としても好適に用いることができる。
本発明の組成物をプラスチック成形体表面に、例えば、スプレー塗装、ディップ塗装によって塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射するか又は加熱して、硬化被膜を形成させることにより得ることができる。
【0100】
プラスチック成形体の材質としては、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
これらのプラスチック成形体は、柄、金属薄層又は易接着層を設けたものであって良い。尚、本発明の組成物を、材質がプラスチック以外の成形された物品に塗布する場合も、プラスチック成形体と同様の塗布方法を用いることができる。
【0101】
又、プラスチック成形体を本発明の組成物の硬化膜によって保護する方法として、上記の硬化被膜を形成させたフィルムを、プラスチックの賦型前に、硬化被膜が最表面になるようにプラスチック表面に貼り付け、その後、プラスチックを該フィルムとともに賦型する方法もある。
プラスチック表面への該フィルムの貼り付けは、フィルムとプラスチックを高温で溶融接着する方法や、接着剤を用いて接着する方法等が挙げられる。又、プラスチックを賦型した成形体に、硬化被膜を形成させたフィルムを該成形体の外形に合わせて二次成形したものを貼り付ける方法も挙げられる。
【0102】
活性エネルギー線を照射する装置として、紫外線を用いる場合には、光発生源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。
又、本発明の組成物をフィルム基材に塗布し、硬化被膜を形成する際には、閃光的に照射するキセノン−フラッシュランプを使用すると、フィルム基材への熱の影響を小さくできるので好ましい。
【0103】
一方、電子線を用いる場合、30〜300kVの加速電圧の電子線加速装置が好ましい。尚、保護層を形成する物品がセルロース系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム等のフィルム基材の場合、電子線の照射により、黄変や劣化を生じるため、加速電圧を30〜150kVにすることで、フィルム基材の黄変や劣化が防止できる。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。尚、以下において、「部」は重量部を意味する。
【0105】
○製造例1
攪拌機、温度計を備えた反応器に、トリ体、テトラ体及び化合物Mを含むアクリレート混合物であって、トリ体及びテトラ体を77重量%含む混合物(下記条件で測定された面積比で、トリ体:テトラ体:化合物M=133.7:100:5.9の割合で含む混合物)80部、反応溶媒としてトルエン80部、酸触媒としてメタンスルホン酸2.1部及び重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールハイドロキノンモノメチルエーテル0.01部を仕込んだ後、80℃に加熱し、8時間反応させた。
反応終了後、反応液に水30部を加え、20℃で攪拌した後静置し、下層(水層)を除去した。上層(有機層)を、1〜400mmHgの減圧下80℃で4時間攪拌しトルエンを留去したところ、79部の液状のアクリレート混合物を得た。
【0106】
得られたアクリレート混合物を使用して、下記条件で高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、トリ体、テトラ体及び化合物Mの割合は以下の通りであった。
尚、化合物Mは、別途LC/MS〔(UPLC)装置:日本ウオーターズ(株)製 Acquity UPLC システム、(MS)装置:Quattro premier API タンデム四重極〕で分析することにより、前記式(1)においてRが水素原子である化合物であることを同定した。
○トリ体:テトラ体:化合物M=1.9:100:18.0
○高速液体クロマトグラフィー測定条件:
・高速液体クロマトグラフ:日本ウオーターズ(株)製 Acquity UPLC システム
・カラム:種類;炭素数18のアルキル基で修飾されたシリカゲル(Acquity BEH 1.7μm C18)(カラム:内径;2.1mm×長さ;150mm)、カラムの温度;40℃
・溶離液:0.03重量%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル=60/40(初期)→50/50(10分)→30/70(15分)→0/100(18−20分)、流速:0.3mL/min、
・紫外検出器の検出波長:210nm、試料濃度:0.1重量%アセトニトリル溶液、注入量:2μL
・トリ体のピーク保持時間:2.58分、テトラ体のピーク保持時間:6.17分、化合物Mのピーク保持時間:13.35分
※テトラ体のピークの面積値を100としてトリ体、化合物Mのピークの相対面積値を算出した。
【0107】
◎実施例2
攪拌機、温度計、水分離器を備えた反応器に、ペンタエリスリトール272部(2モル)、アクリル酸596部(8.27モル)、反応溶媒としてトルエン460部、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸(以下、PTSという)7部及び重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、MQという)1.4部を仕込んだ後、80kPaにて6時間加熱還流させ、水115部(6.4モル)を留出させた。
反応液を前記と同様に分析した結果、トリ体とテトラ体の比が面積比で133.7:100:5.9の混合物であった。
反応液(1200部)に、PTSを54部加え、80kPaにて110℃で4時間攪拌した。
反応終了後、反応液にトルエン350部、10%水酸化ナトリウム水溶液566部を加え、20℃で攪拌した後静置し、下層(水層)を分離して、過剰量のアクリル酸を除去した。その後、水190部を加え20℃で攪拌した後静置し、下層(水層)を除去した。上層(有機層)を1〜400mmHgの減圧下、80℃で5時間攪拌しトルエンを留去したところ、650部のアクリレート混合物を得た。
得られたアクリレート混合物を使用して、前記と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、トリ体、テトラ体及び化合物Mの割合は以下の通りであった。
・トリ体:テトラ体:化合物M=1.1:100:20.1
【0108】
◎実施例3
実施例2において、PTSの量を61部に変更し、5時間還流させる以外は実施例2と同様にしてエステル化反応を行い、水134(7.4モル)部を留出させた。
さらに、酸触媒添加することなく、引継ぎ80kPaにて110℃で4時間加熱した。
反応終了後、実施例2と同様にして中和・水洗を行い、635部のアクリレート混合物を得た。
得られたアクリレート混合物を使用して、前記と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、トリ体、テトラ体及び化合物Mの割合は以下の通りであった。
・トリ体:テトラ体:化合物M=1.0:100:21.4
【0109】
◎比較例1
実施例2において、アクリル酸の量を760部(10.54モル)及びPTSの量を12部に変更し、6時間還流させる以外は実施例2と同様にしてエステル化反応を行い、水134部(7.4モル)を留出させた。
さらに、酸触媒添加することなく、引継ぎ80kPaにて110℃で4時間加熱した。
反応終了後、実施例2と同様にして中和・水洗を行い、640部のアクリレート混合物を得た。
得られたアクリレート混合物を使用して、前記と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、トリ体、テトラ体及び化合物Mの割合は以下の通りであった。
・トリ体:テトラ体:化合物M=3.9:100:13.5
【0110】
◎比較例2
実施例2のエステル化反応と全く同じ条件で6時間還流させエステル化反応を行い、水115部(6.4モル)を留出させた。比較例2ではエステル化反応のみを行った。
反応終了後、実施例2と同様にして中和・水洗を行い、610部のアクリレート混合物を得た。
得られたアクリレート混合物を使用して、前記と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、トリ体、テトラ体及び化合物Mの割合は以下の通りであった。
・トリ体:テトラ体:化合物M=133.7:100:5.9
【0111】
○評価
得られたアクリレート混合物を使用して、以下の評価を行った。
【0112】
1)硬化性
アクリレート混合物に、2重量%の光重合開始剤〔1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製商品名イルガーキュア184〕を添加混合し、紫外線硬化型組成物を調製した。
紫外線硬化型組成物をボンデライト鋼板に10μmの厚みに塗布し、これを80W/cm集光型高圧水銀灯(焦点距離30cm)の下にコンベアを用いて8m/minの速度で通過させ、塗膜表面のタックが無くなるまでに要したパス回数で評価により、硬化性を測定した。
【0113】
2)硬度
硬化性試験で完全に硬化させた硬化膜を使用し、JIS K5600−5−4に従い鉛筆硬度により評価した。
【0114】
3)硬化時の体積収縮率(硬化収縮率)
JISK0061−2001(化学製品の密度及び比重測定方法)に則して、比重瓶法にて組成物の25℃における比重を測定した。
硬化性試験と同様の紫外線硬化型組成物を、直径4cm、深さ1mmの円形の型枠に流し込み、60W/cm平行光型高圧水銀灯(焦点距離30cm)の下で150秒間の紫外線照射を行った。その後、型枠から硬化物を取り出し、表裏を反転させて、さらに60W/cm集光型高圧水銀灯(焦点距離30cm)の下で150秒間の紫外線照射を行った
JISK6911−1995に則して、硬化物の比重を測定した。
組成物の比重と硬化物の比重から、下式に従い硬化時の体積収縮率(硬化収縮率)を算出した。
硬化収縮率(%)=(硬化物の比重−組成物の比重)/(硬化物の比重)×100
【0115】
4)カール性
アクリレート混合物を100部、光重合開始剤の2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンを5部〔チバスペシャリティーケミカルズ(株)製商品名イルガーキュア907〕及びトルエンを50部添加混合し、紫外線硬化型組成物を調製した。
厚さ100μmのトリアセチルセルロースフィルムに、紫外線硬化型組成物を4μmの厚みに塗布し、80℃のオーブン内に2分間放置してトルエンを蒸発させた。その後、80W/cm平行光型高圧水銀灯(焦点距離30cm)の下で紫外線照射を行い、硬化処理を行った(照射強度1000mJ/cm2)。
硬化処理を行ったフィルムを10cm×10cmにカットし、温度23℃、湿度50%の室内に1時間放置した。その後、水平なガラス板上にフィルムを置いて、浮き上がった四辺それぞれの高さを測定し、四辺の測定値の合計(単位:mm)をカール性として表2に記載した。
【0116】
5)耐屈曲性
JISK5400−1990に則して、耐屈曲性を評価した。ただし、試験板はカール性を評価後のフィルムを5cm×10cmにカットしたものを使用した。折り曲げに耐えた心棒の最小直径を表2に記載した。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の硬化型被覆材組成物は、活性エネルギー線の照射により、又は加熱によって硬化可能で、種々の基材に対する被覆に有用なものであり、特にプラスッチクの被覆であるハードコート用途に有用なものであり、これらを使用する各種産業分野において有用に利用され得るものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(メタ)アクリレート混合物を含む硬化型被覆材組成物。
○(メタ)アクリレート混合物:ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(以下、「トリ体」という)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(以下、「テトラ体」という)及びトリ体の水酸基がテトラ体の(メタ)アクリロイル基にマイケル付加した化合物(以下、「化合物M」という)を、下記条件で液体クロマトグラフィーにより測定された面積比であって、テトラ体の面積を100とした場合に下記面積比で含む混合物。
・トリ体:テトラ体:化合物M=0.1〜2.0:100:15.0〜50.0
・液体クロマトグラフィー測定条件
装置:高速液体クロマトグラフ(HPLC)、検出器:紫外検出器、カラムの種類:炭素数18のアルキル基で修飾されたシリカゲル(粒子径:1.7μm)からなるカラム(内径;2.1mm×長さ;150mm)、カラムの温度:40℃、溶離液:0.03重量%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル=60/40(初期)→50/50(10分)→30/70(15分)→0/100(18−20分)
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート混合物が、トリ体とテトラ体を酸触媒の存在下に加熱・攪拌して得られたものである請求項1記載の硬化型被覆材組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の組成物を含む硬化型ハードコート剤。

【公開番号】特開2010−24380(P2010−24380A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188650(P2008−188650)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】