説明

硬化性オーバーコート組成物

【課題】トナーベースの画像およびインクベースの画像に対する熱および光安定性、耐引っ掻き性、および耐スミア(または摩擦)性を含み、印刷した画像上にオーバーコート組成物を塗布して硬化しても黄変しない硬化性オーバーコート組成物を提供する。
【解決手段】オーバーコート組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つのモノマー、および光開始剤パッケージを含み、オーバーコート組成物が放射線にさらしたときに硬化性であり、前記オーバーコート組成物が実質的に無色であり、硬化したとき実質的に黄変しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載されているのは、例えばインクベースの画像および電子写真ベースの画像をオーバーコートするために使用することができる実質的に無色の放射線硬化性オーバーコート組成物である。本明細書に記載のオーバーコート組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つのモノマー、少なくとも1つの光開始剤、任意で硬化性ワックス、および任意で界面活性剤を含み、実質的に着色剤を含まない。そのオーバーコート組成物を基材、例えば上面に印刷した画像がある基材に塗布する方法も記載されている。
【背景技術】
【0002】
ワックスベースのインクは、場合によっては相変化インクとして知られており、加熱した圧電または音響インクジェットヘッドを用いて紙にデジタル画像を形成するために使用される。そのプリントヘッドによるインク滴の放出は、電子的に制御される。複数の実施形態においてその熱い滴は多くの場合アルミニウムドラムである中間体の表面に衝突してある程度冷める。完全な画像がその中間体の表面に形成され、次いで紙に転写され、圧力と熱の組合せによりそこに固定されて固体のインクまたはワックスベースのインクの印刷がもたらされる。別法では、ワックスベースの画像を直接基材に印刷することができる。紙に直の画像も、圧力と熱の組合せにさらされてその画像がその基材に固定される。
【0003】
通常の電子写真においては、静電潜像が、電荷保持性表面例えば感光体などを均一に帯電させることによって、電子写真の表面に形成される。その帯電領域は、次いでもとの画像に対応する活性化放射線のパターンで選択的に消失される。表面に残留するその潜在帯電パターンは、放射線にさらされない領域に相当する。次に、その潜在帯電パターンは、その感光体を、トナーを含む1つ以上の現像ハウジングに通して、静電気引力によりその帯電パターンに付着させることによって視覚化する。その現像された画像は、次に画像形成表面に固定されるか、またはそれが適当な溶融技術によって固定される受容基材、例えば紙などに転写され、電子写真印刷またはトナーベースの印刷が得られる。紙上の画像の完全な保持を伴う、言い換えると定着ロール上への画像オフセットのない良好な溶融を可能にするために、このプロセスには放出を可能にする添加剤が組み込まれる。従来、この放出添加剤は、シリコーンオイルベースの定着オイルであったが、最近になってプリンタの設計によっては操作の複雑な定着オイルは取り除かれている。この技術的な進歩は、トナー粒子中にワックスを組み込むことによって達成された。両方の場合とも、溶融した画像は、シリコーンオイルまたはワックスのいずれかの表面層と共に残る。その表面は両方ともその後表面をコートすることは困難であり得る。
【0004】
トナーベースの画像を保護する既知の方法としては、その基材にオーバーコート組成物を塗布することが挙げられる。そのオーバーコート組成物は、一般的には乾燥および/または硬化し得る液体のフィルムコーティングである。硬化は、乾燥もしくは加熱によるかまたは紫外線もしくは低電圧電子線を適用してオーバーコートの成分を重合(架橋)させることによって達成することができる。しかしながら、既知のオーバーコート組成物は、トナーベースの印刷を適切に保護する機能に欠け、例えばインクジェットプリンタ等による制御塗布に対する必須の特性を有していない。
【0005】
一般的に既知のオーバーコート調合物は、液体のフィルムコーティング装置を用いて塗布し、従って、多くの場合画像の全体表面に塗布する、即ち流し塗りである。画像の一部に組成物を塗布する即ちスポットコーティングが可能であるが、それはオーバーコート組成物を塗布する前に版またはシリンダを準備する必要がある。従って、既知のコーティング調合物を塗布することは、非効率的、困難、かつ時間がかかり、可変データのデジタル印刷による一体化に対しては望ましくない。
【0006】
インクベースの画像に対するコーティング調合物は既知である。例えば、UV硬化性インクジェットオーバーコートが、熱および太陽光に耐えることの不足を克服する試みで使用されている。一般的に、かかるUV硬化性インクジェットオーバーコートは、重合性モノマー、オリゴマー、またはそれらの混合物を含む。しかしながら、これらのUV硬化性インクジェットオーバーコートは、インクベースの画像を均一に濡らし、それと同時に画像に隣接する紙の透明性は増さない必要があるときに十分に機能しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0120921号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0120924号
【特許文献3】米国特許第7,272,614号
【特許文献4】米国特許第7,279,587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、特に商業印刷用途におけるトナーベースの画像およびインクベースの画像に対する熱および光安定性、耐引っ掻き性、および耐スミア(または摩擦)性を含むオーバーコートコーティングの特性を提供するインクジェット可能な保護組成物に対する必要性が存在する。より具体的には、低粘度を有しており(インクジェットが可能)、さらに一般にインクジェットをするために必要な高温で安定であり、以下に限定はされないが、固体インクジェット印刷物またはシリコーンオイル無しで溶融したトナーのワックス様表面のいずれによるワックス様表面にも濡れて、多孔質基材の表面に留まり、基材の透明性を増さずに、オーバーライティングを可能にし、トナーの熱膨張による熱亀裂を減少させ、または防ぎ、画像を太陽、熱などから保護する能力を含む望ましい特性を達成するオーバーコートコーティングに対する必要性が存在する。加えて、印刷した画像上にオーバーコート組成物を塗布して硬化しても黄変しない硬化性オーバーコート組成物に対する必要性がさらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数の実施形態において記載されているのは、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つのモノマー、および光開始剤パッケージを含むオーバーコート組成物であって、前記オーバーコート組成物が放射線にさらしたときに硬化性であり、前記オーバーコート組成物が実質的に無色であり、硬化したとき実質的に黄変しないことを特徴とするオーバーコート組成物である。
【0010】
さらなる実施形態において記載されているのは、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つのモノマー、および光開始剤パッケージを含むオーバーコート組成物であって、前記光開始剤パッケージが少なくとも1つの実質的に非黄変性の光開始剤を含むことを特徴とするオーバーコート組成物である。
【0011】
なおもさらなる実施形態において記載されているのは、基材上に画像を形成する工程と、前記画像を加熱した実質的に無色のオーバーコート組成物でコートして前記オーバーコート組成物が前記画像を部分的または完全に被覆し、かつ画像の存在しない前記基材の少なくとも一部を被覆するようにする工程と、前記オーバーコート組成物を冷却して前記オーバーコート組成物の粘度が増大するようにする工程と、前記オーバーコート組成物を実質的に硬化させるために放射線を付与する工程とを含む方法であって、前記実質的に硬化させるオーバーコート組成物が実質的に無色であり、かつ硬化したとき実質的に黄変せず、前記オーバーコート組成物が少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つのモノマー、および光開始剤パッケージを含むことを特徴とする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載されているのは、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つのモノマー、光開始剤パッケージ、安定剤、任意で硬化性ワックス、および任意で界面活性剤を含む放射線硬化性オーバーコート組成物であって、該オーバーコート組成物は実質的に着色剤を含まない。
【0013】
本明細書に記載の該オーバーコート組成物は、約70℃から約100℃、例えば約75℃から約90℃の温度で噴射させることができる。噴射の際、そのオーバーコート組成物は、約5cPsから約16cPs、例えば約8cPsから13cPsの粘度を有することができる。該オーバーコート組成物は、従ってインクジェット装置で使用するために理想的に適合している。
【0014】
当該ゲル化剤は所望の温度範囲において該オーバーコート組成物の粘度を上げるように機能する。特に、該ゲル化剤は、そのゲル化剤のゲル化点より低い、例えば、該オーバーコート組成物が噴射される温度より低い温度で、オーバーコート組成物中で固体様のゲルを形成する。例えば、該オーバーコート組成物は、固体様の相において約10cPsから約10cPs、例えば約103.5cPsから約106.5cPsの粘度の範囲である。これらの粘度は、1s−1の剪断速度におけるコーンアンドプレート技法を用いて求める。そのゲル相は、一般的には固体様の相と液相とが共存しており、その中でその固体様の相はその液相中で三次元ネットワーク構造を形成しており、その液相が巨視的レベルで流動するのを防いでいる。そのオーバーコート組成物は、温度がそのオーバーコート組成物のゲル化点の上または下に変化するとき、ゲル状態と液体状態の間の熱可逆的転移を示す。この温度は一般にゾル−ゲル温度と称される。このゲル形成のサイクルは、当該ゲルが、ゲル化剤分子の間の物理的、非共有相互作用、例えば水素結合、芳香族相互作用、イオン結合、配位結合、ロンドン分散相互作用などによって形成されるために、何回も繰り返すことができる。
【0015】
複数の実施形態において、該オーバーコート組成物がゲル状態にある温度は、例えば、およそ約15℃から約55℃、例えば約15から約50℃である。そのゲル状のオーバーコート組成物は、約60℃から約90℃、例えば約70℃から約85℃で液化する。噴射温度の液体状態からゲル状態に冷却する工程において、該オーバーコート組成物は著しい粘度上昇を受ける。その粘度上昇は、粘度の少なくとも3桁の上昇、例えば粘度の少なくとも4桁の上昇である。
【0016】
該オーバーコート組成物は、画像受容基材上に直接噴射することができる。そのオーバーコート組成物は、次に、例えば2008年1月31日出願のコバックスらの米国特許出願第12/023979号に記載されている接触もしくは非接触レベリングによって水平にすることができる。
【0017】
噴射に続いて、そのオーバーコートは、一般的にはゲル化剤の特性を活用するために該組成物のゲル化点より下まで冷却する。該組成物は、次に該組成物の硬化のために硬化エネルギーにさらすことができる。適当な硬化エネルギー源、例えば紫外線エネルギー、電子線エネルギーなどにさらすとき、その光開始剤はそのエネルギーを吸収して、ゲル様のオーバーコート組成物を硬化した保護オーバーコートに変換する反応を始動する。そのオーバーコートの粘度は適当な硬化エネルギー源にさらすとさらに増大してその結果それは固体まで硬化し、その硬化したオーバーコート組成物の粘度はごく普通には測定不可能である。該組成物中のモノマーおよび、場合によっては、ゲル化剤は、1つ以上の光開始剤のUV光への露光の結果、重合し、容易に架橋してポリマーネットワークを形成する官能基を含有する。光開始剤が存在しない場合、これらの官能基は電子線放射への暴露を受けて重合することができる。このポリマーネットワークは、例えば、耐久性、熱および光安定性、ならびに耐引っ掻きおよび耐スミア性を有する印刷画像を提供する。従って、該組成物は、画像を亀裂および退色から護り、画像耐久性を提供し、スミアリング(smearing)およびビーディング(beading)のないオーバーライティングを可能にするので、熱および太陽光にさらされる基材上のインクベースの画像およびトナーベースの画像にコーティングするのに特に好適である。該組成物はまた、場合によってはワックスを含み、従って、該組成物は、画像のインクが少なくとも1つのワックスを含有するインクベースの画像、および画像のトナーが少なくとも1つのワックスを含有するトナーベースの画像にコーティングするのに特に好適であり得る。
【0018】
本明細書に開示されているオーバーコート組成物は、実質的に無色である。本明細書で用いられる「実質的に無色」とは、当該オーバーコート組成物が、硬化を受ける前と後に実質的にまたは完全に透明または澄んでいることを意味する。このために、該組成物は、実質的に着色剤を含まない。本明細書に記載のオーバーコート組成物は、硬化するとき黄変せず実質的にまたは完全に透明または澄んだままであり、即ち、L値またはk、c、m、yのいずれかにおける測定可能な差異は殆ど見られない。「実質的に非黄変性」または「実質的にまたは完全に透明または澄んでいる」とは、該オーバーコート組成物が硬化するとき、色または色相が、約15%未満、例えば約10%未満または約5%未満、例えば約0%の量で変化することを意味する。
【0019】
該オーバーコート組成物は、硬化の前後に実質的に無色であることに加えて、該オーバーコート組成物は、また、顔料、染料またはそれらの混合物等の着色剤を実質的にまたは完全に含まない。該オーバーコート組成物が硬化の前後に実質的にまたは完全に透明であり澄んでいることが可能なことは、本明細書でこれから説明するように、ある程度は、該オーバーコート組成物中に存在する1つ以上の光開始剤のおかげである。
【0020】
放射線硬化性オーバーコート組成物で使用するための適切なゲル化剤としては、硬化性ポリアミド−エポキシアクリラート成分およびポリアミド成分を含んでなる硬化性ゲル化剤、硬化性エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂を含んでなる硬化性複合体ゲル化剤、アミドゲル化剤などが挙げられる。本明細書に記載のオーバーコート組成物にゲル化剤を包含させることによって、そのオーバーコート組成物の粘度が、そのオーバーコート組成物が冷えるにつれて急速に増大するために、該オーバーコート組成物を基材(その上に画像があるかまたはない)にコートすることが、その基材中への過剰な浸透無しで可能となる。紙などの多孔質の基材中への液体の過剰な浸透は基材の望ましくない不透明性の減少をもたらし得る。複数の実施形態において、硬化性ゲル化剤は、本明細書に記載のモノマー(1つ以上)の硬化に加わる。ゲル化剤を含めることによる粘度の増加は、また、酸素が遊離ラジカル重合の阻害物質であるために、オーバーコート中への酸素の拡散を減少させることができる。
【0021】
本明細書に記載のオーバーコート組成物で使用するのに適するゲル化剤は、そのオーバーコート組成物がシリコーンオイルをその上に有する基材上で利用されるときは、濡れを改良するために事実上両親媒性であり得る。本明細書で使用する両親媒性とは、分子の極性部分と非極性部分の両方を有する分子を意味する。例えば、本明細書に記載のゲル化剤は、長い非極性炭化水素鎖および極性アミド結合を有することができる。
【0022】
硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含んでなる適当な複合体ゲル化剤が、例えば同一出願人による米国特許出願公開第2007/0120921号に開示されている。その複合体ゲル化剤中のエポキシ樹脂成分は、任意の適当なエポキシ基含有物質であり得る。複数の実施形態において、該エポキシ基含有成分は、ポリフェノール系エポキシ樹脂またはポリオール系エポキシ樹脂あるいはそれらの混合物のいずれかのジグリシジルエーテルの中から選択される。即ち、複数の実施形態において、該エポキシ樹脂は、分子の末端側終端にある2つのエポキシ官能基を有する。複数の実施形態における該ポリフェノール系エポキシ樹脂は、2個を超えないグリシジルエーテル末端基を有するビスフェノールA−co−エピクロルヒドリン樹脂である。該ポリオール系エポキシ樹脂は、2個を超えないグリシジルエーテル末端基を有するジプロピレングリコール−co−エピクロルヒドリン樹脂であり得る。適当なエポキシ樹脂は、約200から約800、例えば約300から約700の範囲の重量平均分子量を有する。市販のエポキシ樹脂の供給源は、例えば、Dow Chemical Corp.社からのビスフェノールA系エポキシ樹脂、例えばDER 383など、またはDow Chemical Corp.社からのジプロピレングリコール系エポキシ樹脂、例えばDER 736などである。天然源が起源であるその他の供給源のエポキシ系材料、例えば植物または動物が起源のエポキシ化トリグリセリド脂肪酸エステル類、例えばエポキシ化アマニ油、ナタネ油などまたはそれらの混合物を使用することができる。植物油から誘導されたエポキシ化合物、例えば米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのArkema Inc.社からの製品のVIKOFLEXの品目なども使用することができる。そのエポキシ樹脂成分は、例えば、アクリラートまたは(メタ)クリラート、ビニルエーテル、アリルエーテルなどにより、不飽和カルボン酸または別の不飽和試薬との化学反応によって官能化する。例えば、その樹脂の末端エポキシ基は、この化学反応において開環したものになり、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって(メタ)アクリル酸エステルに転化される。
【0023】
エポキシポリアミド複合体ゲル化剤のポリアミド成分として、任意の適当なポリアミド材料を使用することができる。複数の実施形態において、そのポリアミドは、重合脂肪酸、例えば、天然源(例えば、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油などおよびそれらの混合物を含む)から得られたものまたは普通に知られている二量体化したオレイン酸、リノール酸などのC−18不飽和酸原料から調製した炭化水素「ダイマー酸」と、ジアミン(例えば、エチレンジアミン、DYTEK(登録商標)シリーズのジアミン類、ポリ(アルキレンオキシ)ジアミン類など)とから誘導したポリアミン、またはポリエステルポリアミド類およびポリエーテルポリアミド類などのポリアミドのコポリマーも含んだものからなる。ゲル化剤の形成には1つ以上のポリアミド樹脂を使用することができる。市販されているポリアミド樹脂の源としては、例えば、Cognis Corporation社(以前のHenkel Corp.社)から入手できるポリアミドのVERSAMIDシリーズ、とりわけ、すべて低分子量および低アミン価を有する、VERSAMID 335、VERSAMID 338、VERSAMID 795およびVERSAMID 963が挙げられる。Arizona Chemical Company社によるSYLVAGEL(登録商標)ポリアミド樹脂、およびポリエーテル−ポリアミド樹脂を含むそれらの変形を採用することができる。Arizona Chemical Company社から得られるSYLVAGEL(登録商標)樹脂の組成は、一般式、
【化1】


によるポリアルキレンオキシジアミンポリアミドとして記載され、式中、Rは、少なくとも17個の炭素を有するアルキル基であり、Rは、ポリアルキレンオキシドを含み、Rは、C−6炭素環基を含み、nは、1以上の整数である。
【0024】
硬化性ポリアミド−エポキシアクリラート成分およびポリアミド成分を含んでなる適当なゲル化剤は、例えば、同一出願人による米国特許出願公開第2007/0120924号に開示されている。その硬化性ポリアミド−エポキシアクリラートは、その中に少なくとも1つの官能基を含むおかげで硬化可能である。1例として、そのポリアミド−エポキシアクリラートは、2官能性である。その官能基(1つ以上)、例えばアクリラート基(1つ以上)などは、遊離ラジカルの開始を介しての放射線硬化性であり、そのゲル化剤の硬化インクビヒクルへの化学結合を可能にする。市販されているポリアミド−エポキシアクリラートは、Cognis社からのPHOTOMER(登録商標)RM 370である。硬化性ポリアミド−エポキシアクリラートは、また、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂を含んでなる硬化性複合体ゲル化剤に対する上記の構造の中から選択することもできる。
【0025】
ポリアミド樹脂成分は、オーバーコート組成物のゲル状態の弾性を増すことができる。即ち、弾性率(G’)の値が高い。紙に直接印刷するとき、オーバーコート組成物に対するより高い弾性率(G’)の要件が減少される。任意の適当なポリアミド材料をゲル化剤のポリアミド成分のために使用することができ、典型的な材料は、例えば1モル当り1,000〜5,000グラムの範囲内であるがこの範囲の外であってもよい低分子量の、0〜10の範囲といった低いアミン価を有するポリエーテル−ポリアミド類である。市販源のポリアミド樹脂としては、例えば、Arizona Chemicals社によるSYLVAGEL(登録商標)1000ポリアミド樹脂、およびその変形が挙げられる。
【0026】
本件で使用するために適するアミドゲル化剤は、米国特許第7,272,614号および同第7,279,587号に開示されている。
【0027】
一実施形態において、該アミドゲル化剤は、式
【化2】


の化合物であり得、式中、
は、
(1)アルキレン基(ただしアルキレン基は、二価の脂肪族基またはアルキル基として定義され、線状および枝分かれ、飽和および不飽和、環式および非環式、ならびに飽和および不飽和のアルキレン基を含み、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアルキレン基中にあってもなくてもよい)であって、約1個の炭素原子〜約12個の炭素原子、例えば約1個の炭素原子〜約8個の炭素原子または約1個の炭素原子〜約5個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいもの、
(ii)アリーレン基(ただしアリーレン基は、二価の芳香族基またはアリール基として定義され、置換および非置換のアリーレン基を含み、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアリーレン基中にあってもなくてもよい)であって、約1個の炭素原子〜約15個の炭素原子、例えば約3個の炭素原子〜約10個の炭素原子または約5個の炭素原子〜約8個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいもの、
(iii)アリールアルキレン基(ただしアリールアルキレン基は、二価のアリールアルキル基として定義され、置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、ここで該アリールアルキレン基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよい)であって、約6個の炭素原子〜約32個の炭素原子、例えば約6個の炭素原子〜約22個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約12個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいもの、あるいは
(iv)アルキルアリーレン基(ただしアルキルアリーレン基は、二価のアルキルアリール基として定義され、置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、ここで該アルキルアリーレン基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよい)であって、約5個の炭素原子〜約32個の炭素原子、例えば約6個の炭素原子〜約22個の炭素原子または約7個の炭素原子〜約15個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいものであり、ここで置換アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基上の置換基は、(以下に限定はされないが)ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得、ここで2つ以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0028】
式中、RおよびR’は、それぞれ他とは無関係に、
(i)アルキレン基(ただしアルキレン基は、二価の脂肪族基またはアルキル基として定義され、線状および枝分かれ、飽和および不飽和、環式および非環式、ならびに置換および非置換のアルキレン基を含み、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアルキレン基中にあってもなくてもよい)であって、約1個の炭素原子〜約54個の炭素原子、例えば約1個の炭素原子〜約48個の炭素原子または約1個の炭素原子〜約36個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいもの、
(ii)アリーレン基(ただしアリーレン基は、二価の芳香族基またはアリール基として定義され、置換および非置換のアリーレン基を含み、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアリーレン基中にあってもなくてもよい)であって、約5個の炭素原子〜約15個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約13個の炭素原子または約5個の炭素原子〜約10個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいもの、
(iii)アリールアルキレン基(ただしアリールアルキレン基は、二価のアリールアルキル基として定義され、置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、ここで該アリールアルキレン基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよい)であって、約6個の炭素原子〜約32個の炭素原子、例えば約7個の炭素原子〜約33個の炭素原子または約8個の炭素原子〜約15個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいもの、あるいは
(iv)アルキルアリーレン基(ただしアルキルアリーレン基は、二価のアルキルアリール基として定義され、置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、ここで該アルキルアリーレン基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよい)であって、約6個の炭素原子〜約32個の炭素原子、例えば約6個の炭素原子〜約22個の炭素原子または約7個の炭素原子〜約15個の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲の外であってもよいものであり、ここで置換アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基上の置換基は、(以下に限定はされないが)ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナート基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得、ここで2つ以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0029】
式中、RおよびR’は、それぞれ他とは無関係に、
(a)光開始基、例えば、式
【化3】


の1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導される基、

【化4】


の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導される基、

【化5】


の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導される基、

【化6】


のN,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導される基など、あるいは
(b)基であって、
(i)アルキル基(線状および枝分かれ、飽和および不飽和、環式および非環式、ならびに置換および非置換のアルキル基を含み、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアルキル基中にあってもなくてもよい)であって、約2個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約3個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約4個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するもの、
(ii)アリール基(置換および非置換のアリール基を含み、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアリール基中にあってもなくてもよい)であって、約5個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲の外であってもよいもの、例えばフェニルなど、
(iii)アリールアルキル基(置換および非置換アリールアルキル基を含み、ここでアリールアルキル基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよい)であって、約5個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲の外であってもよいもの、例えばベンジルなど、または、
(iv)アルキルアリール基(置換および非置換アルキルアリール基を含み、ここでアルキルアリール基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが、そのアルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよい)であって、約5個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲の外であってもよいもの、例えばトリルなどであり、ここで置換アルキル、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の置換基は、(以下に限定はされないが)ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得、ここで2つ以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0030】
式中、XおよびX’は、それぞれ他とは関係なく、酸素原子または式−NR−の基であり、式中、Rは、
(i)水素原子、
(ii)アルキル基であって、線状および枝分かれ、飽和および不飽和、環式および非環式、ならびに置換および非置換のアルキル基を含み、ここでヘテロ原子がそのアルキル基中にあってもなくてもよく、約5個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するが、その炭素原子の数は、これらの範囲の外であってもよく、
(iii)アリール基であって、置換および非置換アリール基を含み、ここでヘテロ原子がそのアリール基中にあってもなくてもよく、約5個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するが、その炭素原子の数は、これらの範囲の外であってもよく、
(iv)アリールアルキル基であって、置換および非置換のアリールアルキル基を含み、ここでそのアリールアルキル基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子が、そのアリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよく、約5個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するが、その炭素原子の数は、これらの範囲の外であってもよく、あるいは
(v)アルキルアリール基であって、置換および非置換のアルキルアリール基を含み、ここでそのアルキルアリール基のアルキル部分は、線状または枝分かれ、飽和または不飽和、および環式または非環式であり得、ここでヘテロ原子が、そのアルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにあってもなくてもよく、約5個の炭素原子〜約100個の炭素原子、例えば約5個の炭素原子〜約60個の炭素原子または約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有するが、その炭素原子の数は、これらの範囲の外であってもよく、ここで置換アルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の置換基は、(以下に限定されないが)ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得、ここで2つ以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0031】
1つの具体的な実施形態において、RおよびR’は、互いに同じものであり、別の具体的な実施形態においては、RおよびR’は、互いに異なる。1つの具体的な実施形態において、RおよびR’は、互いに同じものであり、別の具体的な実施形態においては、RおよびR’は、互いに異なる。
【0032】
1つの具体的な実施形態において、RおよびR’は、それぞれ式−C3456+a−の基であり、不飽和および環式基を含んでもよい枝分かれアルキレン基であって、式中aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、式
【化7】


の異性体を含む。
【0033】
1つの具体的実施形態においてRは、エチレン(−CHCH−)基である。
【0034】
1つの具体的実施形態においてRおよびR’は、両方とも
【化8】


である。
【0035】
1つの具体的な実施形態において、該化合物は、式
【化9】


のものであり、式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含んでもよい枝分かれアルキレン基を表し、ここでaは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、式
【化10】


の異性体を含む。
【0036】
適当なアミドゲル化剤のさらなる具体例としては、式
【化11】


のものであって、式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含んでもよい枝分かれアルキレン基を表し、ここでaは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、mは2であり、式
【化12】


の異性体を含むもの、

【化13】


のものであって、式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含んでもよい枝分かれアルキレン基を表し、ここでaは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、nは整数であり、nが2である実施形態およびnが5である実施形態を含むがこれらには限定されず、式
【化14】


の異性体を含むもの、

【化15】


のものであって、式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含んでもよい枝分かれアルキレン基を表し、ここでaは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、pは整数であり、pが2である実施形態およびpが3である実施形態を含み、式
【化16】


の異性体を含むもの、

【化17】


のものであって、式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含んでもよい枝分かれアルキレン基を表し、ここでaは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、qは、整数であって、qが2であり、qが3である実施形態を含み、式
【化18】


の異性体を含むもの、

【化19】


のものであって、式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含んでもよい枝分かれアルキレン基を表し、ここでaは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、rは、整数であって、rが2である実施形態と、rが3である実施形態とを含み、式
【化20】


の異性体を含むものなど、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0037】
該オーバーコート組成物は、任意の適当な量、例えば該オーバーコート組成物の約1〜約50重量%のそのゲル化剤を含むことができる。複数の実施形態において、該ゲル化剤は該オーバーコート組成物の約2〜約20重量%の量、例えば該オーバーコート組成物の約3〜約10重量%の量で存在することができるが、その値は、この範囲の外であってもよい。
【0038】
該オーバーコート組成物において使用される放射線硬化性モノマーの例としては、プロポキシレート化ネオペンチルグリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジアクリラート、ヘキサンジオールジアクリラート、ジプロピレングリコールジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラート、イソデシルアクリラート、トリデシルアクリラート、イソボルニルアクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリラート、ジペンタエリスリトールペンタアクリラート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリラート、プロポキシル化グリセロールトリアクリラート、イソボルニルメタクリラート、ラウリルアクリラート、ラウリルメタクリラート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリラート、イソデシルメタクリラート、カプロラクトンアクリラート、2−フェノキシエチルアクリラート、イソオクチルアクリラート、イソオクチルメタクリラート、ブチルアクリラート、それらの混合物などが挙げられる。複数の実施形態において、その硬化性モノマーは、該オーバーコート組成物中に、例えば該オーバーコート組成物の約20〜約95重量%、例えば該オーバーコート組成物の約30〜約85重量%、または該オーバーコート組成物の約40〜約80重量%などの量で含まれる。
【0039】
該オーバーコート組成物中にはオリゴマー類を、0〜約30重量パーセント、例えば約0〜約25または約0〜20重量パーセントの量で、適宜使用することができる。該オーバーコート組成物中に使用することができる適当な放射線硬化性オリゴマー類の例は、例えば約50cPs〜約10,000cPs、例えば約75cPs〜約7,500cPsまたは約100cPs〜約5,000cPsなどの低粘度を有する。かかるオリゴマー類の例としては、ペンシルベニア州エクセターのSartomer Company,Inc.社から入手できるCN 549、CN 131、CN 131B、CN 2285、CN 3100、CN 3105、CN 132、CN 133、CN 132、ジョージア州スミュルナのCytec Industies Inc社から入手できるEbecryl 140、Ebecryl 1140、Ebecryl 40、Ebecryl 3200、Ebecryl 3201、Ebecryl 3212、オハイオ州シンシナティのCognis Corporation社から入手できるPhotomer 3660、Photomer 5006F、Photomer 5429、Photomer 5429F、ニュージャージー州フローラムパークのBASF Corporation社から入手できるLaromer PO 33F、Laromer PO 43F、Laromer PO 94F、Laromer UO 35D、Laromer PA 9039V、Laromer PO 9026V、Laromer 8996、Laromer 8765、Laromer 8986などが挙げられる。
【0040】
本明細書に記載のオーバーコート組成物は、硬化、例えばUV硬化を開始するための少なくとも1つの光開始剤を有する光開始剤パッケージをさらに含む。放射エネルギー、例えばUV光放射エネルギーを吸収して調合物の硬化性成分の硬化を開始するが、硬化するとき黄色の着色を実質的に生じない任意の光開始剤を使用することができる。
【0041】
遊離ラジカル重合によって硬化する実施形態のインク組成物、例えば(メタ)アクリラート基を含有するインク組成物またはポリアミドを含んでなるインクのための光開始剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、およびCiba社からIRGACUREおよびDAROCURの商品名の下で販売されているアシルホスフィン光開始剤を挙げることができる。適当な光開始剤の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製、LUCIRIN TPOとして入手できる)、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF社製、LUCIRIN TPO−Lとして入手できる)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(Ciba社製、IRGACURE 819として入手できる)およびその他のアシルホスフィン類、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(Ciba社製、IRGACURE 907として入手できる)および1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba社製、IRGACURE 2959として入手できる)、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba社製、IRGACURE 127として入手できる)、チタノセン、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジルジメチルケタール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
アミン相乗剤、即ち、光開始剤に水素原子を与え、それによって重合を開始するラジカル種を形成する共開始剤(アミン相乗剤は、また、調合物に溶解している酸素を消滅することができ、酸素は遊離ラジカル重合を阻害するのでその消滅は重合の速度を増す)、例えばエチル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートなどについても言及することができる。このリストは網羅的なものではなく、望ましい波長の放射エネルギー例えばUV光などを照射したとき、遊離ラジカル反応を開始し、ただし照射の後に着色状態にならなければ、任意の既知の光開始剤を無制限で使用することができる。
【0043】
複数の実施形態において、該光開始剤パッケージは、α−アミノケトン誘導体の光開始剤を含む既知の光開始剤パッケージとは対照をなして、少なくとも1つのα−ヒドロキシケトン光開始剤および少なくとも1つのホスフィノイル型光開始剤(1つ以上)を含むことができる。α−ヒドロキシケトン光開始剤の1例は、IRGACURE 127であり、一方ホスフィノイル型光開始剤の1例は、IRGACURE 819であり、両方ともニューヨーク州タリタウンのCiba−Geigy Corp.社から入手できる。
【0044】
該オーバーコート組成物中に含まれる光開始剤の全体量は、該オーバーコート組成物の例えば、約0.5〜約15重量%、例えば約1〜約10重量%などであり得る。α−ヒドロキシケトン光開始剤対ホスフィノイル型光開始剤の比率は、例えば、約90:10〜約10:90、例えば約80:20〜20:80または約70:30〜約30:70などであり得る。
【0045】
随意的なワックスは、他の成分と混和性であり、硬化性モノマーと重合してポリマーを形成する任意のワックス成分であり得る。用語「ワックス」は、例えば、普通にワックスと称される任意のさまざまな天然の物質、変性した天然の物質、および合成物質を含む。ワックスは、室温で、具体的には25℃で固体である。ワックスの含有は、該オーバーコート組成物をその噴射温度から冷やすときその粘度の上昇を促進する。従って、そのワックスは、ゲル化剤を支援して該オーバーコート組成物の基材を通る表面にじみ(bleedthrough)を避けるようにすることができる。
【0046】
特定の実施形態において該ワックスは硬化性である。硬化性ワックスの適当な例としては、以下に限定はされないが、硬化性の基を含むか硬化性の基により官能化されているようなワックスが挙げられる。その硬化性の基としては、例えば、アクリラート、メタクリラート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタンなどを挙げることができる。これらのワックスは、転換できる官能基、例えばカルボン酸またはヒドロキシルを備えたワックスの反応によって合成することができる。本明細書に記載の硬化性ワックスは、開示されているモノマー(1つ以上)により硬化させることができる。
【0047】
硬化性の基により官能化することができるヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの適当な例としては、以下に限定はされないが、構造CH−(CH−CHOHであって、鎖長nの混合物が存在し、その平均鎖長が約16〜約50であり得る炭素鎖と、同様の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。かかるワックスの適当な例としては、以下に限定はされないが、UNILIN(登録商標)シリーズの材料、例えばMがそれぞれ375、460、550および700g/モルにほぼ等しいUNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550およびUNILIN(登録商標)700が挙げられる。これらのワックスは、すべて、Baker−Petrolite社から市販されている。2,2−ジアルキル−1−エタノールであることを特徴とするゲルベアルコールもまた適切な化合物である。典型的なゲルベアルコール(Guerbet alcohol)としては、約16〜約36個の炭素を含有するものが挙げられ、その多くは、ニュージャージー州ニューアークのJarchem Industries Inc.社から市販されている。PRIPOL(登録商標)2033(デラウェア州ニューカッスルのUniqema社から入手できる、式
【化21】


の異性体、ならびに不飽和および環式基を含んでもよいその他の枝分かれ異性体を含むC−36ダイマージオール混合物;このタイプのC36ダイマージオールについてのさらなる情報は、例えば、その開示を全体として本願に引用して援用する「Dimer Acids」、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第8巻、第4編、(1992年)、223〜237ページ、に開示されている)も使用することができる。これらのアルコールは、反応性エステルを形成するためにUV硬化性部分を備えたカルボン酸と反応させることができる。これらの酸の例としては、Sigma−Aldrich Co.社から入手できるアクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。複数の実施形態において、適当な硬化性モノマーとしては、ワックス状のアクリラート類、例えばUNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550およびUNILIN(登録商標)700のアクリラートが挙げられる。
【0048】
硬化性の基により官能化することができるカルボン酸末端ポリエチレンワックスの適当な例としては、構造CH−(CH−COOHであって、鎖長nの混合物が存在し、その平均鎖長が約16〜約50であり得る炭素鎖と、同様の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。かかるワックスの適当な例としては、以下に限定はされないが、Mがそれぞれほぼ390、475、565および720g/モルに等しいUNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550およびUNICID(登録商標)700が挙げられる。その他の適当なワックスは、構造CH−(CH−COOHを有しており、例えば、n=14のヘキサデカン酸またはパルミチン酸、n=15のヘプタデカン酸またはマルガリン酸またはダチュリン酸、n=16のオクタデカン酸またはステアリン酸、n=18のエイコサン酸またはアラキジン酸、n=20のドコサン酸またはベヘン酸、n=22のテトラコサン酸またはリグノセリン酸、n=24のヘキサコサン酸またはセロチン酸、n=25のヘプタコサン酸またはカルボセリン酸、n=26のオクタコサン酸またはモンタン酸、n=28のトリアコンタノン酸またはメリシン酸、n=30のドトリアコンタノン酸またはラッセル酸、n=31のトリトリアコンタノン酸またはセロメリシン酸またはプシリン(psyllic)酸、n=32のテトラトリアコンタノン酸またはゲダ酸、n=33のペンタトリアコンタノン酸またはセロプラスチン酸などである。2,2−ジアルキルエタノール酸であることを特徴とするゲルベ酸(Guerbet acid)もまた適切な化合物である。典型的なゲルベ酸としては、16〜36個の炭素を含有するものが挙げられ、その多くは、ニュージャージー州ニューアークのJarchem Industries Inc.社から市販されている。PRIPOL(登録商標)1009(デラウェア州ニューカッスルのUniqema社から入手できる、式
【化22】


の異性体、ならびに不飽和および環式基を含んでもよいその他の枝分かれ異性体を含むC−36ダイマー酸混合物;このタイプのC36ダイマー酸についてのさらなる情報は、例えば、その開示を全体として本願に引用して援用する「Dimer Acids」、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第8巻、第4編、(1992年)、223〜237ページ、に開示されている)も使用することができる。これらのカルボン酸は、反応性エステルを形成するためにUV硬化性部分を備えたアルコールと反応させることができる。これらのアルコールの例としては、以下に限定はされないが、Sigma−Aldrich Co.社による2−アリルオキシエタノール、The Dow Chemical Company社による
【化23】


のTONE M−101(R=H、navg=1)、TONE M−100(R=H、navg=2)およびTONE M−201(R=Me、navg=1)、ならびにSartomer Company,Inc.による
【化24】


のCD572(R=H、n=10)およびSR604(R=Me、n=4)が挙げられる。
【0049】
その硬化性ワックスは、該オーバーコート組成物中に、例えば該オーバーコート組成物の約1〜約20重量%、例えば該オーバーコート組成物の約1〜約15重量%または約2〜約10重量%などの量で含むことができる。一実施形態において、その硬化性ワックスは、該オーバーコート組成物中に、該オーバーコート組成物の約3〜約10重量%、例えば該オーバーコート組成物の約4〜約9重量%などの量で含むことができる。
【0050】
界面活性剤も、基材表面の画像の濡れおよびレベリングを可能にするために、必要に応じて硬化前に適宜使用して組成物の表面張力を下げることができる。この機能を有する任意の界面活性剤を使用することができる。しかしながら、複数の実施形態において該界面活性剤は必要ではなく、含める必要がない。存在する場合、界面活性剤としては、フッ素化アルキルエステル、
【化25】


であって、R基が官能変性である構造を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン類、例えばBYK(登録商標)−UV3510(ドイツ国ウェーゼルのBYK Chemie GmbH社製)、およびBYK(登録商標)−348(BYK Chemie GmbH社製)、ならびにフルオロ界面活性剤類、例えばRfCHCHO(CHCHO)xHであって、Rf=F(CFCF)y、x=0〜約15、y=1〜約7である式を有するZONYL(登録商標)FSO−100(デラウェア州ウィルミントンのE.I.Du Pont de Nemours and Co.社製)などが挙げられる。
【0051】
複数の実施形態において、該オーバーコート組成物中に存在する随意的界面活性剤の量は、該オーバーコート組成物の約0重量パーセント〜約15重量パーセント、例えば該オーバーコート組成物の約0重量パーセント〜約10重量パーセントまたは約0.1重量パーセント〜約5重量パーセントであり得る。
【0052】
該オーバーコート組成物は、また、酸化防止剤を適宜含むこともできる。そのオーバーコート組成物の随意的な酸化防止剤は、画像を酸化から保護し、また、インク成分をインク調製過程の加熱部分の間の酸化からも保護する。適当な酸化防止安定剤の具体例としては、コネティカット州ミドルベリのCrompton Corporation社から市販されている、NAUGARD(商標)524、NAUGARD(商標)635、NAUGARD(商標)A、NAUGARD(商標)I−403、およびNAUGARD(商標)959;Ciba Specialty Chemicals社から市販されているIRGANOX(商標)1010、およびIRGASTAB UV 10;スイス国チューリッヒのRahn AG社から市販されているGENORAD 16およびGENORAD 40などが挙げられる。
【0053】
実施形態の該オーバーコートは、従来タイプの添加剤をさらに含み、かかる従来タイプの添加剤と関連する既知の機能を利用することができる。そのような添加剤としては、例えば、消泡剤、スリップ剤およびレベリング剤を挙げることができる。
【0054】
複数の実施形態において、本明細書に記載のオーバーコート組成物は、硬化性モノマーとゲル化剤とを、約75℃〜約120℃、例えば約80℃〜約110℃または約75℃〜約100℃の温度で均一になるまで混合することによって調製することができる。硬化性ワックスを利用する場合、それはモノマーとゲル化剤との混合物に含ませることができる。モノマーとゲル化剤との混合物が均一になった時点で1つまたは複数の光開始剤および随意的な界面活性剤を加えることができる。別法では、硬化性モノマー、ゲル化剤、光開始剤(1つ以上)、随意的ワックスおよび随意的界面活性剤を、直ちに組み合わせることができる。得られる混合物を約75℃〜約120℃、例えば約80℃〜約110℃または約75℃〜約100℃で、約1時間〜約3時間、例えば約2時間にわたって撹拌する。
【0055】
本開示のオーバーコート組成物は、インクベースかトナーベースの画像を基材上に発生させる工程と、その画像の発生に続いて、当該オーバーコート組成物を、基材全体、画像全体、画像の一部(1ヶ所以上)、基材の一部(1ヶ所以上)、またはそれらの任意の組合せの上にインクジェットさせる工程と、そのオーバーコート組成物を硬化させる工程とを含む画像処理において使用することができる。
【0056】
採用される基材は、印刷物の最終用途に応じた任意の適切な基材であり得る。典型的な基材としては、以下に限定はされないが、普通紙、コート紙、プラスチックス、ポリマーフィルム、処理セルロース、木材、電子写真基板、セラミックス、繊維、金属およびそれらの混合物が挙げられ、適宜その上に塗られた添加剤を含む。
【0057】
トナーベースの画像にコートするときは、溶融したトナーベースの印刷物を最初に得て、次に噴射可能なオーバーコート組成物を含有するインクジェットプリンタにかける。そのトナーベースの印刷物は、任意の適当な従来の電子写真技術またはその変形によって準備することができる。
【0058】
同様にインクベースの画像にコートするときは、インクベースの画像を最初に発生させ、次に噴射可能なオーバーコート組成物を含有するインクジェットプリンタにかける。インクベースの画像がインクジェットプリンタの使用によって形成される場合、そのときそのインクベースの画像は、噴射可能な当該オーバーコート組成物を含有する別のインクジェットプリンタにかけることができ、またはそのインクジェットインクは、当該組成物と同じインクジェットプリンタ中に入れることができ、それによって該組成物は、該インクジェットインク画像が形成された後に無色透明な液体として基材および/または画像の上にコートされる。該オーバーコート組成物をインクベースの画像、特にインクジェットプリンタを用いて生成させる画像の上にコートする場合、その画像は任意の適当な従来のプロセスまたはその変形によって準備することができる。
【0059】
該組成物を、画像、その一部、基材、および/またはその一部にコートするとき、それはさまざまなレベルの解像度で塗布することができる。例えば、該組成物は、基材の非画像領域への該組成物の幾分かの重なりを斟酌して、印刷網点の解像度、画像のはっきりと区別できる部分(1つ以上)の解像度、または画像のはっきりと区別できる部分(1つ以上)よりやや低い解像度で塗布することができる。一般的な組成物堆積レベルは、約5〜約50ピコリットルの滴径の量である。該組成物は、任意の既知のインクジェット印刷技術、例えば、圧電および音響インクジェット印刷を含むがこれらには限定されないドロップ−オン−デマンドのインクジェット印刷などを用いる画像形成における任意の場面で画像上に少なくともワンパスで塗布することができる。該組成物の塗布は、画像を形成するために使用する同じ情報により制御することができ、そのため、画像とオーバーコート組成物とを生ずるためにはデジタルファイル1つだけが必要である。従って、該オーバーコート組成物は完全にデジタル式である。
【0060】
当該組成物の放射線硬化性オリゴマーおよび/またはモノマー成分の架橋を開始するために使用するエネルギー源は、化学線、例えば、紫外もしくは可視領域のスペクトルの波長を有する放射エネルギー、加速粒子、例えば電子線放射エネルギー、熱放射、例えば熱または赤外線放射エネルギーなどであり得る。複数の実施形態において、該エネルギーは、化学線であり、なぜなら、そのようなエネルギーは、架橋の開始および速度の優れた制御を提供するからである。適当な化学線源としては、以下に限定はされないが、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステン電球、レーザー、発光ダイオード、太陽光などが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用する化学線とは、光化学反応を生ずる十分なエネルギーを有する電磁放射線を意味する。紫外線の場合、光開始剤によって吸収される光は電子をより高いエネルギーの分子軌道に昇進させ、その昇進した電子は、より低いエネルギーレベルに戻るか減衰しようとする。その電子の減衰の間に起こり得る1つの経路は、光開始剤中の共有結合の均一開裂を引き起こし、2つの遊離ラジカルを提供し、1つまたは両方のラジカルは、モノマー、ゲル化剤、随意的反応性ワックスまたは随意的オリゴマー中に見出される(メタ)アクリラート基の反応性二重結合と反応する的確なエネルギーを有することができる。この段階は重合開始として知られており、それは反応性二重結合が、遊離ラジカル鎖の末端がオーバーコートフィルム中を移動するとき、急速に結合する連鎖反応を始動する。その結果、モノマーのポリマーへの転化即ち重合が起こり、フィルムはそれによって硬化する。この経路についての変形が知られており、昇進した電子は光開始剤によっては他の分子中の二重結合と直接反応するエネルギーに欠けており、代わりにそれは第3の分子から水素原子を引き抜き、その第3の分子に遊離ラジカルを生じさせ、この分子がラジカル重合を開始する。電子線放射の場合は、光開始剤は必要なく、それは、電子線のエネルギーが十分に高く、モノマー、ゲル化剤、随意的反応性ワックスまたは随意的オリゴマー中に見出される(メタ)アクリラート基の反応性二重結合上にラジカル形成を引き起こすためであり、この開始段階は、紫外線と光開始剤とによるものと同様の重合をもたらす。
【0062】
特に中圧水銀ランプからのUV光の下の例えば約20〜約70m/分の高速コンベアによる紫外線照射であって、約200〜約500nmの波長で約1秒未満にわたって提供される紫外線照射が望ましいものであり得る。複数の実施形態において、高速コンベアのスピードは、約200〜約450nmの波長のUV光の下での約15〜約35m/秒であり、約10〜約50ミリ秒(ms)間である。UV光源の発光スペクトルは、一般にUV開始剤の吸収スペクトルを重複する。適切な硬化装置は、以下に限定はされないが、UV光を集中または拡散する反射鏡、およびUV光源からの熱を除去する冷却システムを含む。
【実施例】
【0063】
本開示を、以下の非限定の実施例の中でさらに説明する。該実施例は、説明のみを意図している。その開示は、この中に列挙されている材料、条件、プロセスパラメータなどに限定されることを意味するものではない。部および百分率は他に断りのない限り重量基準である。
【0064】
表1に示した量の成分を有するオーバーコート組成物をその成分のすべてを一緒に混合することによって調製した。
【0065】
【表1】

【0066】
IRGASTAB UV10は、オーバーコートの保存中の重合を避けるための安定剤即ち重合防止剤である。
【0067】
オーバーコート組成物を、モノマー、硬化性ワックスおよびゲル化剤を、約90℃の温度で均一になるまで混合することによって製造した。本実施例で使用したゲル化剤は、
【化26】


【化27】


および
【化28】


で、式中−C3456+a−は不飽和基および環式基を含むことができ、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、上の1番目:2番目:3番目の化合物が、約1:2:1のモル比である混合物であった。
【0068】
モノマー、硬化性ワックスおよびゲル化剤の混合物が均一になった時点でその溶液に光開始剤および安定剤を加え、約90℃の温度で約2時間撹拌した。
【0069】
上記調合物のいくつかの利点が見出された。
【0070】
1番目に、上記オーバーコート組成物は、最高約75m/分の速度で硬化し、光黄変等の目に見える変色は受けない。電子写真またはインクジェットプリンタにより発生させたシアン、マゼンタおよび/または黄色の画像の上にコートしたとき、下の表2に示されているようにL値またはk、c、m、yに対して観察される変化は極微である。画像の色特性が該オーバーコート組成物の塗布によって実質的に不変であるという事実は重要であり、非黄変性オーバーコート組成物の調合物に対する1つの鍵は、光開始剤パッケージであり得、即ち、α−ヒドロキシケトンおよびホスフィノイルタイプの光開始剤などの硬化の際黄変しない光開始剤を使用することである。
【0071】
【表2】

【0072】
、aおよびbは、CIE L色空間における座標である。CIE(Commission internationale de l’eclairageまたはInternational Commission on Illumination(国際照明委員会))は、色を定義する標準的基準を作成するために1931年に始まった。CIE Lは、基材CNYK色セットの測定に対して広く応用されている。Lは、その系の座標を示し、例えばaは、よりマイナスのaがより緑であり、よりプラスのaがより赤である緑−赤の軸を表し、bは、黄色の値がプラスである青−黄色の軸を表し、Lは、低い値が「より暗い」色または低い輝度を示す0〜100の尺度である。これらの測定を実施するための市販の器具類が幅広く入手できる。この実施例においては、X−RITE 938 スペクトロデンシトメーター(SPECTRODENSITOMETER)を使用した。そのシステムは非常に高感度であり、コートした試料と非コート試料の間のLの非常に小さい変化によって、オーバーコートが下にある色に影響を及ぼしていないことを、ヒトの目に感じられる程度で示す。
【0073】
c、m、y、kの値は、反射濃度計としてのX−RITE 938を用いて測定した光学密度である。密度は、試料の反射率の負対数として定義される。反射率および密度の両方は入射光の波長(または色)に依存するので色フィルタを使用して入射光をカラーバンドに分離する。c、m、y、kの値は、各色の反射光の値の負対数である。
【0074】
2番目に、硬化性インクは、生来極めて堅牢であり、本明細書に開示されているオーバーコート組成物は、インクベースの画像の表面に接着し、それによってさらに高い堅牢性を付与し、画像の耐久性を改善する。例えば普通紙上の一般的なワックスインクベースの画像は、2Bの硬度を有する鉛筆で引っ掻くと容易に除去される。しかしながら、表1に示されているオーバーコート組成物を塗布した後は、引っ掻きに対する閾値は4「レベル」増して、即ち、オーバーコートしたインクベースの画像は、2Hの硬度を有する鉛筆で引っ掻くときに除去される。例えば、鉛筆のグラファイトの硬度のレベルは、硬度が増す順に2B、1B、HB、1H、2Hであり得、フルスケールは6Bから6Hまで変化する。
【0075】
3番目に、インクベースの画像の「にじみ」または透き通し(showthrough)が、表1のオーバーコート組成物をコートしたとき、従来の水性または溶剤系インクシステムと比較して著しく減少する。硬化性ワックスと硬化性ゲル化剤との組合せが多孔質媒体上でしみ込みを防ぐ。そのように表1のオーバーコート組成物は、印刷媒体を通ってしみ込んだりまたはにじんだりせず、紙などの記録媒体がより透明になることを引き起こすことなく、カラー画像を越えてコーティングを広げることが可能である。
【0076】
4番目に、表1のオーバーコート組成物がコートされているトナーおよびインクを用いて印刷したカラーパッチの試験は、良好な表面の濡れを示した。そのコートしたパッチは基本的にコートしてないパッチと同様に見える。オーバーコート組成物の「島」は、「濡れ」が不十分な表面に対して予測されるようには印刷表面に観察されなかった。
【0077】
5番目に、表1のオーバーコート組成物は、圧電インクジェットプロセスによる塗布に対する適切なレオロジー特性を有した。例えば、表のオーバーコート組成物は、65℃と100℃の間の温度で約5〜約16cPsの粘度を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのゲル化剤と、
少なくとも1つのモノマーと、
光開始剤パッケージと、
を含むオーバーコート組成物であって、放射線にさらしたときに硬化性であり、実質的に無色であり、硬化したとき実質的に黄変しないことを特徴とするオーバーコート組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのゲル化剤と、
少なくとも1つのモノマーと、
光開始剤パッケージと、
を含むオーバーコート組成物であって、前記光開始剤パッケージが少なくとも1つの実質的に非黄変性の光開始剤を含むことを特徴とするオーバーコート組成物。
【請求項3】
基材上に画像を形成する工程と、
前記画像を加熱した実質的に無色のオーバーコート組成物でコートして前記オーバーコート組成物が前記画像を部分的または完全に被覆し、かつ画像の存在しない前記基材の少なくとも一部を被覆するようにする工程と、
前記オーバーコート組成物を冷却して前記オーバーコート組成物の粘度が増大するようにする工程と、
前記オーバーコート組成物を実質的に硬化させるために放射線を適用する工程と
を含む方法であって、前記実質的に硬化させるオーバーコート組成物が実質的に無色であり、かつ硬化したとき実質的に黄変せず、前記オーバーコート組成物が少なくとも1つのゲル化剤と、少なくとも1つのモノマーと、光開始剤パッケージとを含むことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2009−249631(P2009−249631A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92199(P2009−92199)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】