説明

硬化性材料

【課題】 酸素による重合阻害が少ないため、酸素遮断下で重合させることの困難な歯科用として好適に使用できる、表面未重合量が低減され更に安定に保存可能な硬化性材料を提供する。
【解決手段】
(A)ラジカル重合性単量体成分、少なくとも一部としてa)酸不純物を含有するラジカル重合性単量体
(B)水
(C)界面活性剤成分
(D)複数の成分からなる化学重合系ラジカル重合開始剤
(E)第3級脂肪族アミン
を含有することを特徴とする硬化性材料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性材料に関する。更に詳しくは、酸素遮断材の塗布などによる酸素遮断層を設けることなく硬化時の酸素の影響を低減させた新規な硬化性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化性材料は、重合性単量体と重合開始剤を基本的に含む材料である。硬化性材料がラジカル重合性である場合、重合工程を空気中で行うと、硬化した組成物の空気に露出した表面に未重合層が生じる。これは、硬化性材料の空気に露出した表面では空気中の酸素が硬化性材料と結合して過酸化物ラジカルとなり、重合の進行を停止するからである。そして、この現象は、特に、ラジカル重合開始剤が、複数の成分を反応させてラジカルを発生させる化学重合系のものの場合、反応時間が長く空気中の酸素の影響を大きく受けるため顕著である。
【0003】
従来、表面に未重合層を有しない硬化性材料を提供するためには、窒素雰囲気下や水中での硬化、酸素遮断材を用いて酸素遮断層を設けるなどして、空気との接触を断ち、硬化性材料をラジカル重合させる方法が行われてきた(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
(メタ)アクリレート系重合性単量体をラジカル重合で硬化させる方法は、歯科の分野で広く利用されており、このような方法を使用したものとしては、歯科用セメント、歯科用接着材(ボンディング材)、コンポジットレジン、レジン歯科材料表面の滑沢性付与材、歯牙のマニキュア等が挙げられる。これらの歯科用修復物が硬化体表面に未重合層を有していると、表面硬度や着色性の低下が引き起こされる。また、表面に未重合層があると硬化体の研磨・研削を行う際に未重合層が研磨バーに絡みつくために、その研磨性は低下する。
【0005】
このような材料を用いた歯科治療は直接口腔内で硬化させて使用することが多く、水中や窒素雰因気下で硬化させることによって、未重合を減少させる方法であると、硬化性材料を一旦口腔内から取り出すことが必要となり、口腔内で形成した形状が変形してしまう。酸素遮断層を形成するのが困難な症例は多くあり、また、ボンディング材などの粘性の低い材料には酸素遮断材を利用することができない。
【0006】
このため、酸素遮断層を設けることなく硬化時の酸素の影響を低減させる技術が求められていた。
【0007】
こうした中、界面活性剤および水を配合させた硬化性材料により、表面未重合を低減する方法が開発された(特許文献3〜6参照)。この方法によれば、ラジカル重合性単量体成分が硬化する際に界面活性剤と水の層が表面に形成され、この界面活性剤と水よりなる層が内部への酸素の侵入を阻害すると推測される作用により、表面の重合性を大きく向上させることができ、その表面未重合量を著しく低減させることができる。
【0008】
該文献において、配合される界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が例示されており、その中でもエステル結合を有するアニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウムを配合すると高い効果が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−128723号公報
【特許文献2】特開2004−284969号公報
【特許文献3】特開2006−291168号公報
【特許文献4】特開2007−008972号公報
【特許文献5】特開2007−063332号公報
【特許文献6】特開2008‐285645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らのさらなる検討によれば、ラジカル重合性単量体に水と共に配合する界面活性剤として、上記エステル結合を有するアニオン性界面活性剤を使用した場合、得られる硬化性材料は長期間放置、特に室温下で長期間放置されると、該界面活性剤の加水分解が生じ、前記表面未重合の低減効果が十分に発揮されなくなることがあることが見いだされた。この問題は、上記ラジカル重合性単量体として特定のものを用いた場合に限って生じる現象であり、本発明者らは、この原因が、ラジカル重合性単量体に含有される酸不純物に起因することを突き止めた。すなわち、係る酸不純物は、ラジカル重合性単量体の製造工程において酸化防止剤としてリン系化合物が使用されていた場合に、この分解に由来して含有されるリン酸や、或いはラジカル重合性単量体が(メタ)アクリレート系であれば製造時の副生物として含有される(メタ)アクリル酸やギ酸、酢酸、プロピオン酸の有機酸等であり、これら酸不純物が含有されていると水の作用により、上記アニオン性界面活性剤のエステル結合部分が加水分解されてしまうものであった。
【0011】
しかし、これらの酸不純物を精製等により完全に除去することは実際上困難であったり、極めて煩雑な操作を課すことになり、その改善が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上から、ラジカル重合性単量体、水、エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、および化学重合系ラジカル重合開始剤含んでなる硬化性材料において、上記ラジカル重合性単量体が酸不純物を含有していても、表面未重合の低減効果が長期間持続できるものを開発すべく、本発明者は鋭意検討を行なった。その結果、上記硬化性材料に、少量の第3級脂肪族アミンを含有させると、上記エステル結合を有するアニオン系界面活性剤の加水分解が抑制され保存安定性が向上し、表面未重合の低減効果を持続できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、(A)ラジカル重合性単量体成分、(B)水、(C)界面活性剤成分、および(D)複数の成分からなる化学重合系ラジカル重合開始剤を含んでなる硬化性材料であって、これら各成分は、(D)化学重合系ラジカル重合開始剤を構成する複数の成分の全てが共存しないように少なくとも2包装に分けられた包装形態であり、上記(A)ラジカル重合性単量体成分は、少なくとも一部の単量体に由来して酸不純物を含有しており、さらに、(C)界面活性剤成分は、少なくとも一部としてc)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤を含んでおり、包装の1つが、a)上記酸不純物を含有するラジカル重合性単量体、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、(B)水が少なくとも配合されてなり、さらに、このa)成分、c)成分、(B)成分を共存させた包装に、(E)第3級脂肪族アミンが含有されてなることを特徴とする硬化性材料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性材料は、酸素が存在する環境下で、酸素遮断材を用いるなどの特別の手段を用いなくても、表面未重合層を生じ難く、よって硬化体表面の機械的強度や耐久性が向上する。この硬化性材料は、界面活性剤が、エステル結合を有するアニオン系界面活性剤を含んでおり、ラジカル重合性単量体にも酸不純物が含有されているにも関らず、上記アニオン系界面活性剤のエステル結合の加水分解が良好に抑制され、保存安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で使用する硬化性材料は、(A)ラジカル重合性単量体成分、(B)水、(C)界面活性剤成分、および(D)複数の成分からなる化学重合系ラジカル重合開始剤を含んでなる。こうした組成の硬化性材料は、該(D)化学重合系ラジカル重合開始剤における複数の成分の全てを、同一包装に共存させることはできないため、少なくとも2包装に分けられている。すなわち、使用時には、これら各包装を混合すると、(D)化学重合系ラジカル重合開始剤の作用により(A)ラジカル重合性単量体成分が重合し硬化が開始される。この硬化時において、前記(B)水成分と(C)界面活性剤成分とが表面層を形成し、この表面層の作用により硬化体内部への酸素の侵入が阻害され、表面未重合が低減される。
【0016】
本発明の硬化性材料では、上記(A)ラジカル重合性単量体成分は、少なくとも一部の単量体に由来して酸不純物を含有している。また、(C)界面活性剤成分は、少なくとも一部としてc)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤を含んでいる。そして、前記2以上の包装になる組成の分割は、該(C)界面活性剤成分と(B)水とが、予め、(A)ラジカル重合性単量体成分と相溶していた方が、硬化性材料の硬化時に上記表面層が短時間に形成し易いため、できるだけ一方の包装に共存させるのが有利である。
【0017】
前記したように、(C)界面活性剤の中でも、c)エステル結合を有するものは、上記表面未重合の低減効果が高く好適である。しかし、他方で、(A)ラジカル重合性単量体成分に酸不純物が含有されていると、これらを含む包装に、さらに上記の如くに(B)水も配合させると、該c)エステル結合を有する界面活性剤においてエステル結合の加水分解が生じ、保存中にその効果が失われてしまう。
【0018】
しかして本発明は、このa)酸不純物を含有するラジカル重合性単量体、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、および(B)水が配合されている包装に、さらに(E)第3級脂肪族アミンを含有させることを最大の特徴とする。斯様に第3級脂肪族アミンを配合することで、上記エステル結合の加水分解が抑制され、アニオン系界面活性剤の表面未重合の低減効果が長期間持続する。その理由は、第3級脂肪族アミンが、ラジカル重合性単量体に含有する酸不純物と塩を形成し中和することで上記エステル結合の加水分解が抑制されるからである。さらに、この表面未重合の低減効果自体も、この第3級脂肪族アミンの配合により、一層に向上する。
【0019】
これらの効果は同程度の塩基性の脂肪族アミンでも、第3級アミンを使用することにより良好に発揮される。一般的に第3級アミンは、第1級アミンや第2級アミンと比較して酸と塩を形成し易く中和効果が高い。また、同じ第3級アミンでも、芳香族アミンでは塩基性が弱く中和効果が小さい。
【0020】
(A)ラジカル重合性単量体成分に含有されている酸不純物は、酸性基を有する有機・無機化合物であり、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸不純物は、多くの場合、原料や添加剤に混入して、或いは製造工程での副生物として、ラジカル重合性単量体に含有されてしまう。主には、ラジカル重合性単量体製造時に酸化防止剤としてリン系化合物を配合した際に、これに混入して或いはこれが分解して含有されるリン酸が挙げられる。リン系化合物の酸化防止剤は、上記ラジカル重合性単量体に対して汎用されている酸化防止剤である。このリン系化合物の代表的なものを一般式で示せば、下記式(1)
【0021】
【化1】

【0022】
〔式中、Rは、炭化水素基(好適には、炭素数1〜20のアルキル基またはアリーレン基)を示す。〕で示されるリン酸エステル基を少なくとも1つ、好適には1〜3個有する化合物になる。具体的には下記式(a)〜(j)で示されるような化合物が挙げられる。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
また、下記式(k)〜(m)で示されるようなリン系化合物の酸化防止剤も上記ラジカル重合性単量体に対して汎用されている。
【0026】
【化4】

【0027】
ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリレート系のものであれば、これに含有される酸不純物としては、製造時の副生物として含有される(メタ)アクリル酸やギ酸、酢酸、プロピオン酸の有機酸等が挙げられる。アニオン系界面活性剤におけるエステル結合の加水分解は、言うまでもなく作用する酸がより強酸であるほど激しくなるため、酸不純物は、上記例示した内の前者のリン酸が対象の方が、本発明の効果はより顕著に発揮されて好ましい。
【0028】
ラジカル重合性単量体に対するこれら酸不純物の含有量は、滴定法によって求めた値である。なお、(メタ)アクリレート系ラジカル重合性単量体中の斯様な酸不純物の含有量は、通常、原料規格のスペック表に記載されている。ラジカル重合性単量体は、その製造において、最終的に精製工程を経るため、これら酸不純物の含有量は、一般的に最大でも200ppm程度である。また、酸不純物の含有による、アニオン系界面活性剤のエステル結合の加水分解は、ラジカル重合性単量体への含有量が1ppm以上になると顕著化してくる。したがって、本発明の硬化性材料における、a)酸不純物を含有するラジカル重合性単量体、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、(B)水を共存させた包装は、該酸不純物を、ラジカル重合性単量体中に1〜200ppm含有されているのが、本発明の効果をより明瞭化する観点から好適である。さらに言えば、この酸不純物の含有量は、1〜100ppmが特に好適であり、2〜25ppmが最も好適である。
【0029】
なお、(A)ラジカル重合性単量体は、上記c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤と(B)水と共存させる包装にその全量が配合されている必要はなく、分割されて、他の包装側に配合されていても良い。この場合、酸不純物は、上記a)成分、c)成分、(B)成分を共存させた包装だけでなく、他の包装側に含有されていても問題は無い。
【0030】
本発明の硬化性材料において、(A)成分のラジカル重合性単量体は、種々の硬化性材料において使用されている公知のものが特に制限なく使用できる。
硬化性材料が歯科用途である場合、(メタ)アクリレート系の重合性単量体を使用するのが一般的である。これらは酸性基を非含有のものが通常、使用される。
【0031】
代表的な(メタ)アクリレート系重合性単量体を例示すれば、下記(I)〜(IV)に示されるものが挙げられる。
【0032】
(I)単官能性単量体
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、プロピオニルオキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート
(II)二官能性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0033】
(ii)脂肪族化合物系のもの
モノエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量400のポリエチレングリコールのジメタクリレート、平均分子量600以上のポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9‐ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,12‐ドデカンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト
(III)三官能性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0034】
(IV)四官能性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
これらの(メタ)アクリレート系ラジカル重合性単量体は単独で用いることもあるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0035】
これらの(メタ)アクリレート系ラジカル重合性単量体のうち、酸化防止剤として前記リン系化合物の酸化防止剤が使用され易く、通常、酸不純物としてリン酸を含有したものになっているのは、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9‐ノナンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールのジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等の多官能性単量体であり、これらの単量体を(A)ラジカル重合性単量体成分の少なくとも一部として配合させた硬化性材料において、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0036】
また、前記二官能或いは三官能以上の単量体を多く配合することにより、最終的に得られる硬化体の強度や耐久性などの機械的物性も良好なものとすることができる。なお前記(メタ)アクリル系重合性単量体に加えて、しばしば重合の容易さ、粘度の調節、あるいはその他の物性の調節のために、上記(メタ)アクリル系重合性単量体以外の他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル類;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレンあるいはα−メチルスチレン誘導体;ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これら他の重合性単量体も単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
【0037】
本発明の硬化性材料において、(B)成分である水の配合量は、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して0.5〜10重量部である。配合量が多いほど、表面未重合層の形成を低減できるが、一方で配合量が少ない方が曲げ強度等の機械的物性に与える影響が小さい。より好ましくは、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して1〜8重量部である。
【0038】
本発明の硬化性材料において、(C)成分の界面活性剤成分は、少なくとも一部としてc)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤を含んでいる。アニオン系界面活性剤の内、こうしたエステル結合を有するものを具体的に例示すると、デシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類、ラウリルアルコールとエチレンオキサイドの付加物を硫酸化したポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの高級アルキルエーテル硫酸エステル塩類、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩類などを挙げることができる。この中でもアルキル硫酸塩が好ましく、特に、アルキル基の炭素鎖が6〜16のものがより好ましい。
【0039】
上記エステル結合を有するアニオン系界面活性剤は、水と併用することによる、硬化性材料の表面未重合量の低減効果に特に優れる界面活性剤であるが、他のアニオン系界面活性剤も良好に効果を発揮するため併用しても良い。さらには、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等と併用しても良い。特に、ノニオン系界面活性剤は、アニオン系界面活性剤と組み合わせて使用することにより、両者が相乗的に作用して、アニオン系界面活性剤を単独で使用するよりも、表面未重合量の低減効果が一層に向上するため好ましい。また、アニオン系界面活性剤を単独で使用した場合、前記したように硬化性材料の表面未重合量の低減効果は高いものの、冷蔵保存すると該アニオン系界面活性剤が析出して効果が失われてしまう問題が潜在するのに対して、斯様にアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを併用すれば、このアニオン系界面活性剤の析出が防止され、保存安定性に優れるものになるため最も実用的である。
【0040】
この場合、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、脂肪酸ポリオキシエチレンラウリルエステルなどの脂肪酸ポリオキシエチレンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどのポリオキシエチレンソルビタンエステル類などを使用するのが好ましい。
【0041】
また、前記他のアニオン系界面活性剤としては、ヘキサンスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどの脂肪族カルボン酸塩等が挙げられる。
【0042】
さらに、カチオン性界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムクロリドなどのアルキルアミン塩類及びトリメチルドデシルアンモニウムブロミドなどの4級アンモニウム塩類等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ドデシルジメチルアミンオキシドなどのアルキルジメチルアミンオキシド類、ドデシルカルボキシベタインなどのアルキルカルボキシベタイン類、ドデシルスルホベタインなどのアルキルスルホベタイン類、ラウラミドプロピルアミンオキシドなどのアミドアミノ酸塩等が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化性材料において、(C)成分である界面活性剤の配合量は、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して0.1〜20重量部である。配合量が多いほど、表面未重合層の形成を低減できるが、一方で配合量が少ない方が曲げ強度等の機械的物性に与える影響が小さい。より好ましくは、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して0.5〜10重量部である。
【0044】
係る界面活性剤の配合量のうち、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤は、少なくとも50%、より好ましくは75%以上占めるようにするのが、硬化性材料の表面未重合量の低減効果を十分に発揮させる観点から良好である。
なお、アニオン系界面活性剤をノニオン系界面活性剤と組合わせて使用する場合、その配合比率はアニオン系界面活性剤に対して、ノニオン系界面活性剤を
重量比で等倍量以上、より好ましくは2〜5倍量配合するのが良好である。
【0045】
本発明の硬化性材料において、(D)成分であるラジカル重合開始剤は、複数の成分からなる化学重合系のものが使用される。化学重合系ラジカル重合開始剤は、使用直前に全成分が混合されることによりレドックス反応により重合活性種を生じラジカル重合性単量体を重合、硬化させる。当該重合開始剤としては、公知のものが何ら制限なく使用可能であり、第3級芳香族アミン/有機過酸化物系のものが特に好ましい。
【0046】
こうした第3級芳香族アミンを、具体的に例示すると、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N‐ジエチル‐p‐トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエタノール−p−トルイジンなどが例示される。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わない。
【0047】
代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、ジアリールパーオキサイド類などが挙げられる。
【0048】
有機過酸化物を具体的に例示すると、ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0049】
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
【0050】
ハイドロパーオキサイド類としては、P−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t―ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0051】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等が挙げられる。
【0052】
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド類が挙げられる。
【0053】
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0054】
パーオキシエステル類としては、α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
【0055】
また、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等も好適な有機過酸化物として使用できる。
【0056】
使用する有機過酸化物は、適宜選択して使用すればよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わないが、中でもハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシエステル類、及びジアシルパーオキサイド類が重合活性の点から特に好ましい。さらにこの中でも、硬化性材料としたときの保存安定性の点から10時間半減期温度が60℃以上の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0057】
本発明において、上記(D)化学重合系重合開始剤の配合量は、(A)ラジカル重合性単量体成分を重合し、本発明の硬化性材料を硬化させることが可能な量であれば特に限定されず、該ラジカル重合開始剤の種類やラジカル重合性単量体成分の組成に応じて、公知の配合量を適宜選択すればよい。一般的には、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0058】
本発明の硬化性材料において、(E)成分の第3級脂肪族アミンはアンモニアの3つ全ての水素原子が、炭化水素基で置換されたアミン化合物である。上記置換される炭化水素基は、炭素数1〜18のアルキル基やアルキレン基が挙げられ、これらは水酸基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の置換基を有するものであっても良い。上記を満たすものでさらに酸解離定数pKaの値が7.5以上の第3級脂肪族アミンが好適に使用される。
【0059】
具体的に例示すると、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。このうち、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等の重合性のアミン化合物は、硬化時にラジカル重合性単量体と共に重合して硬化体に固定されることから、残余のものが該硬化体からの溶出する心配がないため好ましい。これら第3級脂肪族アミンは単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
【0060】
本発明の硬化性材料において、(E)成分である第3級脂肪族アミンの配合量は、前記a)酸不純物を含有するラジカル重合性単量体、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、(B)水を共存させた包装において、上記酸不純物に対して2倍当量以上であるのが、中和を十分に行ない、c)アニオン系界面活性剤のエステル部位の加水分解を良好に防止する観点から好ましい。一般には、酸不純物に対して、4質量倍以上、より好ましくは20質量倍以上含有させるのが好ましい。酸不純物が強酸のリン酸の場合、第3級脂肪族アミンは、酸不純物に対して、50質量倍以上、さらには250質量倍以上含有させるのが特に好ましい。なお、こうした第3級脂肪族アミンは、あまり多く配合しても硬化体にアミンの臭気が残存するため、その上限は好ましくは、酸不純物に対して2000質量倍以下であり、より好ましくは1500質量倍以下である。
【0061】
また、本発明においては、上述した(A)〜(E)成分に加えて、(F)親水性有機溶媒を配合することができ、これにより硬化時の酸素の影響をより低減することができる。即ち、親水性有機溶媒は、界面活性剤が配合される場合には該成分について、これらが硬化体表面に形成された水層中に均一に分布することを促進すると考えられ、この効果により、表面未重合の抑制効果が一層に向上するものと推測される。
【0062】
こうした親水性有機溶媒は、静電的相互作用や水素結合などによって水分子と弱い結合を作る官能基を有する有機溶媒で、通常は、25℃における誘電率が10以上の有機溶媒が使用され、特に誘電率が15〜40のものが好ましい。具体的には水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基等の親水基を含む有機溶媒で、公知のものが特に制限なく使用できる。
【0063】
通常は、入手のしやすさ、臭い、環境に対する安全性から、アルコール類、ケトン類が好ましい。例示すると、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert‐ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。これら親水性有機溶媒は単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
【0064】
なお、こうした親水性有機溶媒は、前記(E)第3級脂肪族アミンと同様に、a)酸不純物を含有するラジカル重合性単量体、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、(B)水を共存させた包装に含有させるのが好ましい。すなわち、この包装では、これを冷蔵保存(例えば0〜10℃)した場合に、保存期間が長期に及ぶと、水相が相分離し始め、均質な硬化性能が発揮されなくなる問題が発生することがあった。こうした状況にあって、上記の如くに、この包装に親水性有機溶媒を配合すると、この水相の相分離が高度に抑制されるようになり好適である。
【0065】
本発明の硬化性材料に上記(F)成分である親水性有機溶媒を配合する場合、これを配合する包装は特に制限されるものではなくいずれであっても良い。前記a)成分、c)成分、(B)成分を共存(さらに、(E)成分も共存)させた包装において、これらを予め十分に相溶させておくのが硬化反応を円滑に進める観点から好ましく、これを促進させるためには、該親水性有機溶媒は該包装に配合するのが好ましい。
【0066】
本発明において(F)親水性有機溶媒の配合量は、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜5重量部の範囲とするのが好ましい。配合量が多いほど、表面未重合を抑制する効果が向上するが、一方で配合量が少ない方が硬化体の物性に与える影響が小さい。
【0067】
また、本発明の硬化性材料には、好適な態様として(G)水溶性ポリマーを配合することができる。これにより、硬化時の酸素の影響をより低減することができ好ましい。即ち、水溶性ポリマーは、水に溶解し、界面活性剤とともに、硬化体表面に形成された水層中に分布し、表面未重合の抑制効果が一層に向上するものと思われる。尚、本発明における水溶性ポリマーとは、23℃における水に対する溶解度が1g/L以上であるポリマーを言う。
【0068】
このような水溶性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ゼラチン、アルキルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、ウレタン系樹脂塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。このうち、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等を用いるのが、安価で入手が容易である観点から特に好ましい。これら水溶性ポリマーは単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
【0069】
また、上記の水溶性ポリマーは、水に対する溶解度が上記範囲にあるものであれば特に制限されないが、分子量が大きくなりすぎると、硬化性材料の粘度が高くなりすぎて操作性が低下する場合がある。従って、ポリスチレン換算での重量平均分子量が、1000〜500,000のものが好適である。
【0070】
本発明の硬化性材料に上記(G)成分である水溶性ポリマーを配合する場合、これを配合する包装は特に制限されるものではなくいずれであっても良い。前記の如くにa)成分、c)成分、(B)成分を共存(さらに、(E)成分も共存)させた包装に配合し、予め、十分に溶解させておくのが好ましい。本発明において、該(G)水溶性ポリマーの配合量は、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して、0.000001〜10重量部が好ましい。配合量が多いほど、表面未重合層の形成を低減できるが、一方で配合量が少ない方が物性に与える影響が小さい。より好ましくは、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して0.0005〜1重量部、特に好ましくは0.0001〜0.5重量部である。
【0071】
本発明の硬化性材料は、歯科用途において、そのままで、各種レジン系歯科材料表面や変色歯に対する滑沢性付与材、歯牙のマニキュア等として用いることができる。さらに、フィラーと組み合わることにより、より広範な用途に用いることができる。例えば、有機フィラーと組み合わせた場合には、義歯の補修材料、裏装用の材料、治療経過途中に一旦患者を帰してから治療を再開するまでの数日間、窩洞に充填される仮封材、暫間的なクラウン、及びブリッジの作製材料等として用いることが出来る。一方、無機フィラーと組み合わせた場合には、コンポジットレジン、硬質レジン、インレー、アンレー、クラウン等、歯科用修復材料として用いることが出来る。
【0072】
組み合わせるフィラーを具体的に例示すれば、有機フィラーとしてポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0073】
無機フィラーとしては石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等が挙げられる。さらに無機フィラーの内、カチオン溶出性フィラーとしては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物が挙げられる。これらもまた、一種または二種以上を混合して用いても何等差し支えない。
【0074】
これら無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機−無機複合フィラーを用いる場合もある。また、該無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、ラジカル重合性単量体成分とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。
【0075】
本発明の硬化性材料に対してこれらのフィラーの配合量は、使用目的に応じて、ラジカル重合性単量体成分と混合した時の粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、一般的には、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して50〜1500重量部、好ましくは70〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0076】
その他本発明の硬化性材料には、さらに歯牙や歯肉の色調に合わせるため、顔料、蛍光顔料等の着色材料を配合したり、紫外線に対する変色防止のため紫外線吸収剤を添加したりしてもよい。また、保存安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合することも好ましい。
【0077】
前述したように本発明の硬化性材料は、(D)ラジカル重合開始剤が、複数の成分からなる化学重合系のものであるため、以上の各成分は、該(D)化学重合系ラジカル重合開始剤を構成する複数の成分の全てが共存しないように少なくとも2包装に分けられる。しかして、その包装の1つが、上記a)酸不純物を含有するラジカル重合性単量体、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、(B)水が少なくとも配合されたものになり、さらにこの包装に、前記本発明の特徴的成分である(E)第3級脂肪族アミンも配合される。また、前記説明済みの(F)親水性有機溶媒、(G)水溶性ポリマーもこの包装に配合するのが好ましい。さらに、フィラー、重合禁止剤、紫外線吸収剤、香料等の任意成分が適宜に配合される。
【0078】
これに対して、他の包装には、(D)化学重合系ラジカル重合開始剤を構成する残りの成分が必須に含まれる。また、(A)ラジカル重合性単量体成分を分割(前記したように、酸不純物は含有されていても、含有されていなくても良い)して配合させるのが好ましい。さらに、(C)界面活性剤成分として前記c)以外のものを使用する場合は、これらは該他の包装側に配合させても良い。もちろん、この包装にも、フィラー、重合禁止剤、紫外線吸収剤、香料等の任意成分が適宜に配合される。
【0079】
これらの各包装の形態は、液状の他、上記フィラーが多量に配合されている場合にはペースト状を呈する。これら各包装は、使用時に均一に混合して使用すれば良い。a)成分、c)成分、(B)成分を共存させた包装に対する、他の包装の混合比は、通常は、0.7〜2.3質量倍の範囲から採択される。
【0080】
本発明の硬化性材料は、歯科用途のみならず一般工業にも利用可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によって何等制限されるものではない。
【0082】
尚、実施例および比較例で使用した化合物とその略称、並びに調製された硬化性材料の評価方法を以下に示す。
【0083】
[第3級脂肪族アミン]
MDEOA;N−メチルジエタノールアミン (pKa=8.6)
TEOA;トリエタノールアミン (pKa=7.8)
TEA;トリエチルアミン (pKa=10.7)
DEEOA;N,N‐ジエチルエタノールアミン (pKa=9.8)
DMEM;N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート (pKa=8.3)
DEEM;N,N‐ジエチルアミノエチルメタクリレート (pKa=8.5)
[ラジカル重合性単量体]
3G;トリエチレングリコールジメタクリレート
酸不純物の含有量20ppm(リン酸の含有量1.5ppm)
Bis−GMA;2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
酸不純物の含有量15ppm(リン酸の含有量1.2ppm)
AAEM;アセトアセトキシエチルメタクリレート
酸不純物の含有量20ppm(リン酸検出されず)
精製3G;塩基性アルミナを充填したカラムを通したトリエチレングリコールジメタクリレート
酸不純物の含有量3ppm(リン酸検出されず)
[界面活性剤]
(アニオン性界面活性剤)
SLS;ラウリル硫酸ナトリウム
SDS;デシル硫酸ナトリウム
(ノニオン性界面活性剤)
POEL4;ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル
[水溶性ポリマー]
PVA1000;ポリビニルアルコール(部分ケン化、平均重合度1000 平均分子量50000)
[親水性有機溶媒]
EtOH;エタノール(25℃における誘電率25)
[重合開始剤]
(有機過酸化物)
BPO;ベンゾイルパーオキサイド
(第3級芳香族アミン化合物)
DMPT;N,N−ジメチル−p−トルイジン
〔酸不純物含有量〕
酸不純物の含有量は滴定法によって求めた。酸不純物のうちリン酸の含有量については溶媒抽出‐吸光光度法{丸善株式会社、新実験化学講座9 分析化学1、p.188(1976)}によって特定した。
【0084】
〔表面未重合量測定方法〕
直径50mm、厚さ1mmの孔を有するポリアセタール製の型に、歯科用硬化性材料を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置し硬化させた。その後、エタノールで未重合層を除去した。最初に填入した重量からエタノールで未重合部分を除去した後の硬化体の重量を引いたものを未重合量とし、表面積当りの重さとして求めた。試験は、歯科用硬化性材料について、第1液と第2液について共に調整直後のものを使用した場合と、第1液は調整後60℃恒温保管庫で5日間保存経過後のものを使用した場合(第2液は調整直後のもの)とで、それぞれ実施して保存安定性を評価した。
【0085】
〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕
硬化性材料の第1液と第2液について共に調整直後のものを使用とて上記方法により表面未重合量を測定し、次いで、第1液を60℃恒温保管庫に保存し、一日経過ごとにこれと調整直後の第2液を用いて表面未重合量を測定した。そして、調整直後の第1液を用いた場合の表面未重合量と比較し2倍量以上になるまでに要する日数を求めた。
【0086】
〔第1液における、界面活性剤の低温析出試験〕
硬化性材料の第1液を、4℃の冷蔵庫に1週間保存した後、界面活性剤の析出状態を調べて、以下の2段階で評価した。
【0087】
○:界面活性剤が析出していない
×:界面活性剤が析出している
<実施例1>
ラジカル重合性単量体として3G、脂肪族アミンとしてMDEOAを用い、以下の処方により、2包装をそれぞれ調製した。
【0088】
第1液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
水; 3重量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5重量部
DMPT(第3級芳香族アミン化合物); 1.5重量部
MDEOA(第3級脂肪族アミン); 0.02重量部
第2液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
BPO(有機過酸化物); 3重量部
第1液、第2液とも分析の結果、酸不純物としてリン酸が1.5ppm含有していた。上記のような組成を有する第1液と第2液とを重量比で1:1となるように計りとって混合して硬化させ評価を行った。その結果、〔表面未重合量〕は6μg/mmであった。また、〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕を実施したところ、第1液を60℃で5日間保存した後の表面未重合量は7μg/mmでしかなかった。
<実施例2〜6>
用いる第3級脂肪族アミンの種類を、表1に記載するように変化させた以外は、実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示した。
<実施例7〜9>
用いるラジカル重合性単量体の種類を、表1に記載するように変化させた以外は、実施例5と同様にして第1液及び第2液を調製し、実施例5と同様にして評価した。結果を併せて表2に示した。
【0089】
【表1】

【0090】
<比較例1>
表2に示したように、実施例1において、第1液の処方からMDEOA(第3級脂肪族アミン)を除いた以外、該実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、実施例1と同様にして評価した。その結果、〔表面未重合量〕は6μg/mmであったが、〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕を実施したところ、第1液を60℃で5日間保存した後の表面未重合量は16μg/mmに増加した。
<比較例2,3>
表2に示す組成となるように実施例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、該実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表2に示した。
<比較例4〜6>
用いるラジカル重合性単量体の種類を、表2に記載するように変化させた以外は、比較例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、比較例1と同様にして評価した。結果を併せて表2に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
<実施例10〜13>
表3に示す組成となるよう、第1液の処方においてDMEM(第3級脂肪族アミン)の配合量を変化させた以外は実施例5と同様にして第1液及び第2液を調製し、〔表面未重合量〕及び〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕の評価結果を表2に示した。また調整直後のものを使用した場合での表面未重合量と比較し、2倍量以上になるまでに要する日数の結果も併せて表3に示した。
【0093】
【表3】

【0094】
<実施例14〜16、比較例7,8>
表4に示す組成となるよう、水、界面活性剤の配合量を変化させた以外は実施例5と同様にして第1液及び第2液を調整し、〔表面未重合量〕及び〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕の評価結果を、前記実施例5の結果と併せて表4に示した。
【0095】
【表4】

【0096】
<実施例17>
ラジカル重合性単量体として3G、アニオン性界面活性剤としてSDS、脂肪族アミンとしてDMEMを用い、以下の処方により、2包装をそれぞれ調製した。
【0097】
第1液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
水; 3重量部
SDS(アニオン性界面活性剤); 1.5重量部
DMPT(第3級芳香族アミン化合物); 1.5重量部
DMEM(第3級脂肪族アミン); 0.02重量部
第2液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
BPO(有機過酸化物); 3重量部
上記のような組成を有する第1液と第2液とを重量比で1:1となるように計りとって混合して硬化させ評価を行った。その結果、〔表面未重合量〕は5μg/mmであった。また、〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕を実施したところ、第1液を60℃で5日間保存した後の表面未重合量は6μg/mmであった。
<実施例18>
ラジカル重合性単量体として3G、アニオン性界面活性剤としてSDS、ノニオン性界面活性剤としてPOEL4、第3級脂肪族アミンとしてDMEMを用い、以下の処方により、2成分をそれぞれ調製した。
【0098】
第1液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
水; 3重量部
SDS(アニオン性界面活性剤); 1.5重量部
POEL4(ノニオン性界面活性剤); 1.5重量部
DMPT(芳香族アミン化合物); 1.5重量部
DMEM(脂肪族アミン); 0.02重量部
第2液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
BPO(有機過酸化物); 3重量部
上記のような組成を有する第1液と第2液とを重量比で1:1となるように計りとって混合して硬化させ評価を行った。その結果、〔表面未重合量〕は4μg/mmであった。また、〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕を実施したところ、第1液を60℃で5日間保存した後の表面未重合量は5μg/mmであった。さらに、〔第1液における、界面活性剤の低温析出試験〕を実施したところ、第1液について4℃の冷蔵庫に1週間保存しても、界面活性剤の析出は見られなかった。
【0099】
【表5】

【0100】
<実施例19>
ラジカル重合性単量体として3G、アニオン性界面活性剤としてSLS、ノニオン性界面活性剤としてPOEL4、第3級脂肪族アミンとしてDMEMを用い、以下の処方により、2包装をそれぞれ調製した。
【0101】
第1液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
水; 3重量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5重量部
POEL4(ノニオン性界面活性剤); 1.5重量部
DMPT(第3級芳香族アミン化合物); 1.5重量部
DMEM(第3級脂肪族アミン); 0.02重量部
EtOH(親水性有機溶媒); 2重量部
第2液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
BPO(有機過酸化物); 3重量部
上記のような組成を有する第1成分と第2成分とを混合し、表5に示す組成の硬化性組成物を調製し作製した硬化体を評価した。その結果、表面未重合量は4μg/mmであった。また、〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕を実施したところ、第1液を60℃で5日間保存した後の表面未重合量は5μg/mmでしかなかった。
<実施例20>
ラジカル重合性単量体として3G、アニオン性界面活性剤としてSLS、ノニオン性界面活性剤としてPOEL4、第3級脂肪族アミンとしてDMEMを用い、以下の処方により、2包装をそれぞれ調製した。
【0102】
第1液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
水; 3重量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5重量部
POEL4(ノニオン性界面活性剤); 1.5重量部
DMPT(第3級芳香族アミン化合物); 1.5重量部
DMEM(第3級脂肪族アミン); 0.02重量部
EtOH(親水性有機溶媒); 2重量部
PVA1000(水溶性ポリマー); 0.0001重量部
第2液の処方:
3G(ラジカル重合性単量体); 50重量部
BPO(有機過酸化物); 3重量部
上記のような組成を有する第1成分と第2成分とを混合し、表5に示す組成の硬化性組成物を調製し作製した硬化体を評価した。その結果、表面未重合量は3μg/mmであった。また、〔第1液における、表面未重合抑制の保存安定性験〕を実施したところ、第1液を60℃で5日間保存した後の表面未重合量は4μg/mmでしかなかった。
【0103】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラジカル重合性単量体成分、(B)水、(C)界面活性剤成分、および(D)複数の成分からなる化学重合系ラジカル重合開始剤を含んでなる硬化性材料であって、
これら各成分は、(D)化学重合系ラジカル重合開始剤を構成する複数の成分の全てが共存しないように少なくとも2包装に分けられた包装形態であり、上記(A)ラジカル重合性単量体成分は、少なくとも一部の単量体に由来して酸不純物を含有しており、さらに、(C)界面活性剤成分は、少なくとも一部としてc)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤を含んでおり、包装の1つが、a)上記酸不純物を含有するラジカル重合性単量体、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤、(B)水が少なくとも配合されてなり、さらに、このa)成分、c)成分、(B)成分を共存させた包装に、(E)第3級脂肪族アミンが含有されてなることを特徴とする硬化性材料。
【請求項2】
硬化性材料が、(A)ラジカル重合性単量体成分100重量部に対して、(B)水0.5〜10重量部、(C)界面活性剤成分0.1〜20重量部、および(D)複数の成分からなる化学重合系ラジカル重合開始剤の有効量を用いたものである請求項1記載の硬化性材料。
【請求項3】
a)成分、c)成分、(B)成分を共存させた包装における、酸不純物の含有量が0.1〜1000ppmである請求項1または請求項2記載の硬化性材料。
【請求項4】
a)酸不純物を含有するラジカル重合性単量体の酸不純物の一部が、リン酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性材料。
【請求項5】
酸不純物であるリン酸が、ラジカル重合性単量体に配合されているリン系酸化防止剤に由来した分解生成物である請求項4記載の硬化性材料。
【請求項6】
a)成分、c)成分、(B)成分を共存させた包装における、(E)第3級脂肪族アミンの配合量が、この包装に含まれる酸不純物に対して2倍当量以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性材料。
【請求項7】
(C)界面活性剤成分において、c)エステル結合を有するアニオン系界面活性剤がアルキル硫酸塩系である請求項1〜6記載のいずれか一項に記載の硬化性材料。
【請求項8】
少なくともその表面の一部を、酸素を含む雰囲気に開放した状態で硬化させるものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性材料。
【請求項9】
歯科用であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化性材料。

【公開番号】特開2011−178893(P2011−178893A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44351(P2010−44351)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】