説明

硬化性樹脂組成物、および硬化物

【課題】例えばプラスチック基材に塗布、硬化させて得られた積層体が、塗布時に外観が良好で、スリップ性、耐擦傷性、密着性、耐スクラッチ性に優れる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物、光記録媒体用硬化性樹脂組成物、およびそれを用いた光記録媒体を提供すること。
【解決手段】
【化1】


[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で表される繰り返し単位を有するビニル系重合体と表面調整剤を必須成分として含有し、
上記ビニル系重合体中の式(1)で示される繰り返し単位が90質量%以下かつ、
表面調整剤の表面張力が、27mN/m以上35mN/m以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物を用いること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラスチック基材に塗布、硬化させて得られた積層体が、塗布時に外観が良好で、スリップ性、耐擦傷性に優れる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物、光記録媒体用硬化性樹脂組成物、およびそれを用いた光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルハイビジョン放送が開始されたことで、フルハイビジョン対応の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイが普及期を迎えており、それに伴って大容量記録媒体のニーズも急速に高まってきている。高画質映像の長時間録画のためには従来の光記録媒体であるDVD(Digital Versatile Disc)では記録容量が不十分であり、次世代光記録媒体として青色レーザー光で情報を記録・再生するブルーレイディスクが注目されている。
【0003】
次世代光記録媒体の新規格であるブルーレイディスクでは、波長405nmの青色レーザー光の採用や、記録・再生光学系対物レンズの開口数(NA)の拡大により、DVDの5倍以上の容量が実現されているが、記録・再生時のレーザービームスポット径およびトラックピッチ(間隔)の縮小によって記録の高密度化を行っているため、記録層の上に施されている透明カバー層のキズや凹凸、またそこに付着したホコリや指紋などにより読み取りエラーが発生しやすいという問題がある。そのため透明カバー層材料には高平滑性、耐擦傷性、耐ホコリ付着性や耐指紋性等の特性を有することが強く望まれている。
【0004】
透明カバー層の一般的な形成方法として、(1)ポリカーボネート製のシートを紫外線硬化型の接着剤で貼り合わせるシート接着法、(2)紫外線硬化型の樹脂をスピンコートで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させるスピンコート法の2つがあるが、経済性の問題から(2)による方法が主流になりつつある。しかし、スピンコート法による透明カバー層の形成は、光重合反応により樹脂を硬化させるため、硬化収縮、酸素による硬化阻害などに起因する様々な課題があり、それらの解決のため、従来から種々の検討がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、97μmの内部層を形成した後に、内部層よりも高度の高い3μmの表面層を形成する方法が開示されている。しかし、ここで開示されている内部層を形成する紫外線硬化型樹脂は粘度が高く、スピンコートでの塗工性に問題があった。
また、特許文献2には、ディスクの最表面にハードコート層を設け保護層(透明カバー層)との2層とし、ハードコート層にシリカ微粒子を含有させることで表面硬度を上げる方法が開示されている。しかし、この方法ではシリカ微粒子が高価であるため経済性の問題があった。
さらに、特許文献3には、硬化させた樹脂表面の耐スクラッチ性(耐磨耗性)を向上させるため、硬化性樹脂組成物中にシリコーンオイルなどの表面調整剤を添加する方法が開示されている。表面調整剤を用いることで樹脂表面のスリップ性も付与させることが出来るが、硬化性樹脂組成物と表面調整剤との相溶性がわずかに違うだけでも塗布外観に不良が生じ、塗布外観に反映されてしまうという問題点があった。
さらに耐擦傷性に関しては、ガラス上での鉛筆硬度が2H以上の硬化物であっても、ポリカーボネート基板上での鉛筆硬度はポリカーボネート基板の硬度に支配されてしまいHとなってしまう。そのため物性を両立した硬化性樹脂組成物を得ることが難しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−157782号公報
【特許文献2】特開2005−158253号公報
【特許文献3】特開2000−234073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した状況下で、本発明が解決すべき課題は、例えばプラスチック基材に塗布、硬化させて得られた積層体が、塗布時に外観が良好で、スリップ性、耐スクラッチ性、耐擦傷性、密着性に優れる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物、それを用いた積層物品、および光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、ラジカル重合性(アニオン重合性)の(メタ)アクリロイル基とカチオン重合性のビニルエーテル基とを分子内に併せ持つ単量体をカチオン重合することによって得られる側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合体と特定の物性を有する表面調整剤を用いることで得られた樹脂組成物を、例えばプラスチック基材に塗布して硬化させた場合、塗布外観が良好で、塗膜が傷つきにくく、スリップ性が良好な硬化物が得られることを見出して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で表される繰り返し単位を有するビニル系重合体と表面調整剤を必須成分として含有し、
上記ビニル系重合体中の式(1)で示される繰り返し単位が90質量%以下かつ、
表面調整剤の表面張力が、27mN/m以上35mN/m以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
また、本発明の表面調整剤は樹脂100重量部当たり0.0001〜10重量部の割合で含有されている光硬化性樹脂組成物である。
また本発明は上記硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物である。
また本発明は上記硬化物が積層された積層物品である。
また本発明は上記硬化物が積層された情報記録媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記、ビニル系重合体中が特定の範囲を満足する表面調整剤を含む硬化性樹脂組成物を用いると、塗布時の樹脂表面の外観が良好で、硬化後の塗膜が傷つきにくい硬化物が得られ、スリップ性、耐スクラッチ性も極めて良好にすることができる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、光記録ディスク、プラスチックフィルム、OA機器、携帯電話等の通信機器、家庭用電化製品、自動車用内・外装部品、家具用外装部材、プラスチックレンズ、化粧品容器、飲料用容器、有機ELディスプレイ等のディスプレイ、家電製品等のタッチパネル、流し台、洗面台、さらにはショーウインドウ、窓ガラス等、などの用途分野に好適に使用される。本発明のハードコート層は耐擦傷性、硬度に特に優れ、さらに基材の平滑性が保たれるため、光記録ディスク、プラスチックフィルムに特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記式(1):
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で表される繰り返し単位を有するビニル系重合体と表面調整剤を必須成分として含有し、
上記ビニル系重合体中の式(1)で示される繰り返し単位が90質量%以下かつ、
表面調整剤の表面張力が、27mN/m以上35mN/m以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
≪ビニル系重合体≫
ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは500〜50,000、さらに好ましくは800〜20,000の範囲内である。上記式(1)で示されるビニル系重合体は、低分子量成分が増加すると硬化膜層の強度が低下することがあり、ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)が500未満であると、硬化速度の低下や硬化物の強度低下を生じることがある。また50,000を超えると基材との濡れ性が低下することや、また、硬化性樹脂組成物を調整する際に混合時間が長くなったり、粘度が高くなり例えば塗工性等の作業性が低下する場合がある。ここで、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を移動相とし、温度40℃、流速0.3mL/minの条件下で、東ソー株式会社製のカラム TSK−gel SuperHM−H 2本、TSK−gel SuperH2000 1本を用い、東ソー株式会社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置 HLC−8220GPCにより求め、標準ポリスチレン換算した値である。
【0016】
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、固体状の単量体含有量が多い重合体の場合を除き、液状粘性体として得ることができる。液状粘性体であれば、有機溶剤や(メタ)アクリレート系単量体との溶解性が良いので、硬化性樹脂組成物を調整する際に作業効率の向上化が図れる。
【0017】
上記式(1)において、Rで表される炭素数2〜8のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,4−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基などが挙げられる。Rで表される置換基は、上記式(1)中にm個存在するが、同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
上記式(1)において、mは正の整数、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数、さらに好ましくは1〜5の整数である。
【0019】
<ビニル系重合体の調製>
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、下記式(2):
【0020】
【化3】

【0021】
[式中、R、Rおよびmは上記式(1)と同意義である]
で示される異種重合性単量体を、従来から知られているカチオン重合により調整することが可能であり、又、特開2006−241189号明細書に記載された方法でリビングカチオン重合することにより、容易に調製することもできる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。後者の場合、得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0022】
上記式(2)で示される異種重合性単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル;などが挙げられる。これらの異種重合性単量体のうち、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチルが好適である。
【0023】
上記式(2)で示される異種重合性単量体は、従来公知の方法を用いて、製造することができる。例えば、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが1である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−ハロゲノエチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。また、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが2である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−(2−ハロゲノエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。
【0024】
上記式(1)で示されるビニル系重合体はカチオン重合可能な単量体に由来する構造単位を有する共重合体であり、かかる共重合体は、上記式(2)で示される異種重合性単量体と、カチオン重合可能な単量体とを、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合することにより、容易に調製することができる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0025】
カチオン重合可能な単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジヒドロフランなどのビニルエーテル化合物;スチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;イソプロペニルスチレン、ケイ皮酸2−ビニロキシエチル、ソルビン酸2−ビニロキシエチルなどのジビニル化合物やトリビニル化合物;などが挙げられる。これらのカチオン重合可能な単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのカチオン重合可能な単量体のうち、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジヒドロフランなどのビニルエーテル化合物が好適である。
【0026】
本発明では、上記式(2)で示される異種重合性単量体のビニルエーテル基をカチオン重合可能な単量体と共に、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合させることにより、(メタ)アクリルロイル基をペンダント基として有する上記式(1)で示されるビニル系重合体が得られる。
上記式(1)で示されるビニル系重合体の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%である。上記式(1)で示されるビニル系重合体の配合量が10質量%未満であると、架橋密度が低下するので硬化速度の低下や硬化物の塗膜強度が不充分になることがある。また上記式(1)で示されるビニル系重合体の配合量が90質量%より多い場合には、後述する表面調整剤との相溶性が悪くなり、外観が悪くなったり、スリップ性が悪くなる場合があり使用することできない。
【0027】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記ビニル系重合体を含み、上記物性を有する表面調整剤を必須成分として含有する。これにより塗布時の樹脂表面の外観が良好で、硬化後の塗膜が傷つきにくい硬化物が得られ、スリップ性、耐スクラッチ性も極めて良好にすることができる。
≪表面調整剤≫
本発明の硬化性樹脂組成物において使用する表面調整剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の合計量に対して好ましくは0.0001〜10重量部、より好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜3重量部である。表面調整剤の配合量が0.0001重量部未満であると硬化性組成物のスリップ性が保てないことがある。逆に10重量部を超えると塗布する基板との濡れ性が悪くなり、剥離が起きる場合がある。
【0028】
また、表面調整剤の表面張力は、好ましくは27mN/m以上、より好ましくは28mN/m以上、さらに好ましくは29mN/m以上である。また表面張力は35mN/m以下が好ましく、より好ましくは33mN/m以下、さらに好ましくは31mN/m以下である。
【0029】
表面調整剤としては有機変性されたシリコーンオイルが好ましく、例えば、東レダウコーニング社製のアルキル変性シリコーンオイル「SH203」、「SH230」、「SF8416」、「BY16−846」、「FZ−49」など、ポリエーテル変性シリコーンオイル「FZ−2110」、「FZ−2122」、「FZ−7006」、「FZ−2166」、「FZ−2164」、「FZ−2154」、「FZ−2191」、「FZ−7001」、「FZ−2120」、「FZ−2130」、「SH 8410」、「FZ−2101」、「FZ−2104」、「SH 8400」、「SH 8700」、「FZ−720」、「FZ−7002」、「SH 3746」、「FZ−2118」、「FZ−2161」、「SH 3771」、「FZ−2162」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」など、エポキシ変性シリコーンオイル「FZ−3720」、「BY 16−839」、「SF 8411」、「SF 8413」、「SF 8421」、「BY 16−876」、「FZ−3736」、「BY 16−855D」など、アミノ変性シリコーンオイル「FZ−3707」、「FZ−3504」、「BY 16−205」、「FZ−3760」、「FZ−3705」、「BY 16−209」、「FZ−3710」、「SF 8417」、「BY 16−849」、「BY 16−850」、「BY 16−879 B」、「BY 16−892」、「FZ−3501」、「FZ−3785」、「BY 16−872」、「BY 16−213」、「BY 16−203」、「BY 16−898」、「BY 16−890」、「BY 16−878」、「BY 16−891」、「BY 16−893」、「FZ−3789」など、カルボキシ変性シリコーン「BY 16−880」など、カルビノール変性シリコーンオイル「SF 8428」など、アルコキシ変性シリコーンオイル「FZ−3704」、「BY 16−606」など、両末端変性シリコーンオイル「BY 16−871」、「BY 16−853」、「BY 16−201」、「BY 16−004」、「SF−8427」、「BY 16−799」、「BY 16−752」など、その他のシリコーンオイルとして「SF8419」、「SF8422」、「FS1265」、「SH510」、「SH550」、「SH710」、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル「BYK―300/302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−320」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−345/346」「BYK−347」、「BYK−348」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」など、ポリエステル変性シリコーンオイル「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−370」、「BYK−UV3570」など、アラルキル変性シリコーンオイル「BYK−322」、「BYK−323」など、アクリル系シリコーンオイル「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−358N/361N」、「BYK−380N」、「BYK−381」、「BYK−392」、その他のシリコーンオイルとして「BYK−340」、「BYK−Silclean3700」、「BYK―Dynwet800」などが挙げられる。これらの表面調整剤は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。これらの表面調整剤のうち、前記物性を有している表面調整剤が好適である。
なお表面張力値は一般的に接触角測定装置を用いて白金プレート上に1%水溶液の液滴を落とす方法で測定することが出来る。具体的には、「撥水・親水・防汚剤の開発とコーティング およびぬれ性の制御」(株式会社情報機構社発行 2006年12月22日発行)p33に記載の方法により測定可能である。
【0030】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記一般式(1)を有するビニル系重合体、前記範囲を満足している表面調整剤に加えて、他の反応性ポリマー、反応性オリゴマー、重合性単量体、重合開始剤を含んでもよい。重合性単量体を含む場合には、硬化させて得られる硬化物の物性を調節することができるという効果を奏する。
【0031】
重合性単量体としては、上記式(1)で示されるビニル系重合体と共重合可能なものである限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系単量体;フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどのアリルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2ーメトキシー2ーメチルエチル(メタ)アクリレート、2ーメトキシー1ーメチルエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、2ーエトキシー2ーメチルエチル(メタ)アクリレート、2ーエトキシー1ーメチルエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン等の1官能(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、p−メンタンー1,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−2,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−3,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、ビシクロ[2.2.2]−オクタン−1−メチル−4−イソプロピル−5,6−ジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等のエーテル構造を有する/または有さない2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート等のエーテル構造を有する/または有さない3官能以上の(メタ)アクリレート化合物;前記の式(2)で示される異種重合性単量体;トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチロールメラミンのアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルのアジピン酸エステル、アリルアセタール、メチロールグリオキザールウレインのアリルエーテルなどのアリルエーテル系単量体;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸エステル系単量体;フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなどのフマル酸エステル系単量体;(メタ)アクリロイルモルホリン;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルピロリドン;などが挙げられる。これらの重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性単量体のうち、(メタ)アクリレート化合物が好適であり、さらに脂環構造置換基を有する(メタ)アクリレート化合物、エーテル構造を有する(メタ)アクリレート化合物、式(2)で示される異種重合性単量体が特に好適に使用可能である。
【0032】
重合性単量体の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%である。重合性単量体の配合量が90質量%を超えると、硬化収縮が大きくなり、内部歪や硬化物の反りが大きくなることがある。
【0033】
重合開始剤としては、上記式(1)で示されるビニル系重合体がラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有するので、例えば、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱重合開始剤;紫外線の照射により重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などをさらに添加することも好ましい。
【0034】
熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルアセトアセテートペルオキシド、アセチルアセテートペルオキシド、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、スクシン酸ペルオキシド、m−トルオイルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシソブチレート、t−ブチルペルオキシマレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルペルオキシド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン)]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン)]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(4,5、6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]などのアゾ系開始剤;などが挙げられる。これらの熱重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの熱重合開始剤のうち、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ベンゾイルペルオキシドなどの金属石鹸および/またはアミン化合物などの触媒作用により効率的にラジカルを発生させることができる化合物や2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好適である。
【0035】
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤のうち、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類が好適であり、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが特に好適である。
【0036】
重合開始剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%である。重合開始剤の配合量が0.05質量%未満であると、組成物が充分に硬化しないことがある。逆に、重合開始剤の配合量が20質量%を超えると、硬化物の物性がさらに向上することはなく、臭気の発生や硬化物の着色がおこる場合がある。
【0037】
重合開始剤として、熱重合開始剤を用いる場合には、熱重合開始剤の分解温度を低下させるために、熱重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる熱重合促進剤を用いることができる。熱重合促進剤としては、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウムなどの金属石鹸、1級、2級、3級のアミン化合物、4級アンモニウム塩、チオ尿素化合物、ケトン化合物などが挙げられる。これらの熱重合促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの熱重合促進剤のうち、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、ジメチルアニリン、トリエタールアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、エチレンチオ尿素、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルが好適である。
【0038】
熱重合促進剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.001〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%以上、さらに好ましくは0.05〜5質量%の範囲内である。熱重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0039】
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合には、光励起により生じた励起状態から光重合開始剤に励起エネルギーを移し、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光増感剤を用いることができる。光増感剤としては、例えば、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。これらの光増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
光増感剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光増感剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0041】
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光重合促進剤を用いることができる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらの光重合促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合促進剤のうち、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好適である。
【0042】
光重合促進剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0043】
熱重合開始剤、光重合開始剤、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などを組み合わせて配合する場合、その配合量の合計量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量の範囲内である。重合開始剤などの組合せ配合量の合計量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を使用しても良い。有機溶剤を含有する場合、硬化膜層とプラスチック基材との密着性を向上させたり、後述する金属酸化物や添加剤などを溶解したり、分散したりしやすくできることが可能になる。
【0045】
使用する有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族または脂環式炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、二塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミルなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;などを使用することができる。
【0046】
有機溶媒の配合量は、材料の合計量に対して、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜50質量%である。溶媒の配合量が80質量%を超えると、組成物中から溶媒を留去させる場合に時間を要したり、硬化物に残存したりすることがある。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、好ましくは、前記ビニル系重合体に加えて、金属酸化物からなる微粒子を含有してもよい。金属酸化物からなる微粒子を含有する場合には、硬化後の塗膜の硬度が向上し、より傷つきにくく、低反射性のコーティングが得られるという効果を奏する。
【0048】
微粒子を構成する金属酸化物は、より好ましくは、Si、Ti、Zr、Zn、Sn、In、LaおよびYよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む。微粒子を構成する金属酸化物は、これらの元素を含む単独の酸化物であってもよいし、これらの元素を含む複合酸化物であってもよい。微粒子を構成する金属酸化物の具体例としては、例えば、SiO、SiO、TiO、ZrO、ZnO、SnO、In、La、Y、SiO−Al、SiO−Zr、SiO−Ti、Al−ZrO、TiO−ZrOなどが挙げられる。これらの金属酸化物からなる微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属酸化物からなる微粒子のうち、SiO、TiO、ZrO、ZnOが好適である。
【0049】
金属酸化物からなる微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜300nm、より好ましくは1〜50nmである。微粒子の平均粒子径が300nmを超えると、硬化物の透明性が損なわれることがある。なお、微粒子の平均粒子径とは、動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定することにより求められる体積平均粒子径を意味する。
【0050】
金属酸化物からなる微粒子の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜50質量%である。微粒子の配合量が80質量%を超えると、硬化物が脆くなることがある。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、添加物として、無機充填剤、非反応性樹脂及び又は反応性樹脂(例えば、アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など)、着色顔料、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、艶消し剤、染料、消泡剤、帯電防止剤、分散剤、揺変化剤、揺変助剤などを添加することができる。これらの添加物の存在は、特に本発明の効果に影響を及ぼすものではない。これらの添加物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
添加物の配合量は、添加物の種類や使用目的、組成物の用途や使用方法などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、無機充填剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲内である。非反応性樹脂、着色顔料、可塑剤または援変化剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%の範囲内である。重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、帯電防止剤、分散剤または援変助剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.001〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜3質量%の範囲内である。
【0053】
≪硬化性樹脂組成物の製造および積層体≫
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記式(1)で示されるビニル系重合体、前記物性を有する表面調整剤、必要に応じて、重合性単量体と重合開始剤、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤など、さらには有機溶剤、金属酸化物からなる微粒子、各種の添加物などとを配合し、混合・攪拌することにより得ることができる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を配合しない場合には、電子線を照射することにより、熱重合開始剤を配合した場合には、加熱により、また、光重合開始剤を配合した場合には、紫外線を照射することにより、硬化させることができる。
【0055】
例えば、加熱による硬化の場合、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などを用いればよい。加熱温度は、基材の種類などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃の範囲内である。加熱時間は、塗布面積などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは1分間〜24時間、より好ましくは10分間〜12時間、さらに好ましくは30分間〜6時間の範囲内である。
【0056】
例えば、紫外線による硬化の場合、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いればよい。このような光源としては、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、フラッシュ型キセノン灯、カーボンアーク灯などが挙げられる。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。照射積算光量は、好ましくは0.1〜5J/cm、より好ましくは0.15〜3J/cm、さらに好ましくは0.2〜1J/cmの範囲内である。
【0057】
例えば、電子線による硬化の場合、加速電圧が好ましくは10〜500kV、より好ましくは20〜300kV、さらに好ましくは30〜200kVの範囲内である電子線を用いればよい。また、照射量は、好ましくは2〜500kGy、より好ましくは3〜300kGy、さらに好ましくは4〜200kGyの範囲内である。電子線と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物を基材に塗布し硬化させて積層体を得る場合の塗布方法としては、バーコーター法、スピンコーター法、刷毛塗りなどの手塗り、スプレー塗装、浸漬法など、従来公知の方法を使用目的に応じて選択すればよい。光ディスクに用いる場合には、生産性の面からスピンコーター法が好ましい。塗布量としては、好ましくは0.2〜100g/m、より好ましくは0.5〜70g/mの範囲内である。また、塗布厚みとしては、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜200μm、さらに好ましくは50〜150μmの範囲内である。
【0059】
また本発明の硬化物層を形成する方法として、硬化性樹脂組成物を含有する加飾用フィルムを用いた成形同時加飾法がある。この方法は、少なくともフィルムと加飾層とから構成される加飾用フィルムを射出成形用の金型内に入れて、型閉め後、成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂を固化した樹脂成形品の表面に加飾用シートを一体化接着させて成形同時加飾成形品を得るものである。
【0060】
上記積層体に使用される基材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、特許公報2015632、特許公報3178733、特開2001ー151814、特開2007ー70607などに開示されている熱可塑性樹脂、などの樹脂成形物およびフィルム;ポリエチレンコート紙、ポリエチレンテレフタレートコート紙などのコート紙、非コート紙などの紙類;木材;ガラス;ステンレス、鉄、アルミニウム、銅、合金などの金属類;などが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、耐熱アクリルが好ましい。
【0061】
上記積層体には、目的に応じて、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、ひずみ緩和層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリアー性等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したりしてもよい。なお、本ハードコート層と各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光記録ディスク、プラスチックフィルム、OA機器、携帯電話等の通信機器、家庭用電化製品、自動車用内・外装部品、家具用外装部材、プラスチックレンズ、化粧品容器、飲料用容器、有機ELディスプレイ等のディスプレイ、家電製品等のタッチパネル、流し台、洗面台、さらにはショーウインドウ、窓ガラス等、などの用途分野に好適に使用される。本発明のハードコート層は耐擦傷性、硬度に特に優れ、さらに基材の反り性が少ないため、光記録ディスク、プラスチックフィルムに特に好適に用いることができる。
【0063】
≪硬化物≫
本発明の硬化物は、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる。ここで、「硬化物」とは、流動性の無い物質を意味する。
【0064】
また、本発明の硬化物は硬化樹脂表面の外観が良好で、表面硬度が高いため塗膜が傷つきにくく、スリップ性、密着性、耐スクラッチ性も極めて良好である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
<塗布時の表面外観>
樹脂に表面調整剤を添加した後に、よく混ぜ合わせた硬化性樹脂組成物の相溶性が良好でない場合、スピンコーターにて硬化性樹脂組成物を塗布した際に樹脂表面の平滑性がなく凸凹な外観を生じる。その際の表面外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0066】
◎:平滑である
○:流動縞が見られる
△:少し凸凹が見られる
×:凸凹である
<スリップ性>
硬化物表面を爪などで引っかくことでひっかかりの有無を確認した。
【0067】
◎:引っかかりを感じない
○:少し引っかかる
△:引っかかりを感じる、凹みが生じる
×:引っかき傷が残る
<耐スクラッチ性>
積層体(硬化物層/ポリカーボネートシート)の硬化物層表面に対して、耐摩耗試験機(型式IMC−154A型、株式会社井元製作所製)を用いて、荷重条件200g/cmの下、スチールウール#0000番を、往復速度30mm/秒、往復距離25mmで10回往復させた後、傷つき度合いを目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0068】
○:変化なし(傷が認められない)
△:数本の傷が認められる
×:傷が認められる
【0069】
≪製造例1≫
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル240gを加え、50℃へ昇温した。昇温後、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)250gとシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)254gの混合物と、酢酸エチル33gとリンタングステン酸33mgの混合溶解物を、それぞれ5時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P(VEEA40CHVE60)を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.5%であること、さらに、酢酸エチルの含有量は0.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は2400、分子量分布(Mw/Mn)は1.71であった。
【0070】
≪製造例2≫
製造例1と同様に、攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル80gを加え、50℃へ昇温した。昇温後、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)155gとシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)45gの混合物と、酢酸エチル30gとリンタングステン酸15mgの混合溶解物を、それぞれ5時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P(VEEA70CHVE30)を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.9%であること、さらに、酢酸エチルの含有量は0.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は1200、分子量分布(Mw/Mn)は1.82であった。
【0071】
≪製造例3≫
製造例1と同様に、攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル240gを加え、50℃へ昇温した。昇温後、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)500g、酢酸エチル33gとリンタングステン酸33mgの混合溶解物を、それぞれ5時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P―VEEAを得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.5%であること、さらに、酢酸エチルの含有量は0.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は2200、分子量分布(Mw/Mn)は1.59であった。
なお、文中の略称は下記の通りである。
【0072】
VEEA:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製)
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル(株式会社和光純薬製)
【0073】
≪実施例1−7、比較例1−5≫
製造例1で得られたビニル系重合体P(VEEA40CHVE60)50質量部、重合性単量体ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジアクリレート(商品名「ライトアクリレートBP−4EA」、共栄社化学株式会社製)40質量部、重合性単量体(商品名「499@」、サートマー社製)10質量部、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5質量部、各種表面調整剤を0.03部混合・攪拌して、硬化性樹脂組成物を調製した。その際に相溶性を評価し表1に示した。
【0074】
次に、寸法12cm×12cm、厚さ1mmのポリカーボネート(PC)基材上に、スピンコーターを用いて、上記硬化性樹脂組成物を厚さ100μmで塗布した。このPC機材に塗布した樹脂層を、キセノンフラッシュUVランプを有するUV照射機(米国キセノン社製 形式RC−742)を用いて、初めにランプ高さ2cmで、フラッシュを2回照射し、次にランプ高さ2cmで、フラッシュを10回照射させて硬化を完結させた。なお、320〜390nmにおける照射積算光量は約400mJ/cmであった。
【0075】
硬化物層の厚さを測定したところ、100±3μmであった。積層体上の硬化物の耐スクラッチ性と、耐スリップ性を評価した結果を表1に示した。
なお、基材にポリカーボネート(PC)を選択した理由は光記録ディスク基材プラスチックに一般的に用いられるからである。
【0076】
また、各実施例における表面調整剤の表面張力値[mN/m]についても各表に示す。なお、表中の表面調整剤の表面張力値[mN/m]は東レダウコーニングによるカタログ値を参照している。
なお、表中の略称は下記の通りである。
【0077】
L−7001:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
FZ−2166:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
L−7002:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
FZ−2101:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
FZ−2104:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
SH3771:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
SH29:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
FZ−2123:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
L−7604:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
FZ−2105:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
FZ−77:東レダウコーニング社製 ポリエーテル変性シリコーン
【0078】
【表1】

【0079】
≪実施例8−10、比較例6−9≫
製造例2で得られたビニル系重合体を用い、実施例1と同様に硬化性樹脂組成物を調整し、各種評価を行った。製造例2から得た樹脂の評価結果を表2に示す。実施例1と同様の方法にて積層体および硬化膜を作成し、評価を行った。
【0080】
≪比較例10、11≫
製造例3で得られたビニル系重合体を用い、実施例1と同様に硬化性樹脂組成物を調整し、各種評価を行った。製造例3から得た樹脂の評価結果を表2に示す。実施例1と同様の方法にて積層体および硬化膜を作成し、評価を行った。
【0081】
【表2】

【0082】
≪実施例11−13≫
製造例1で得られたビニル系重合体P(VEEA40CHVE60)100質量部、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5質量部、各種表面調整剤を0.03部混合・攪拌して、硬化性樹脂組成物を調製した。製造例1で調整した樹脂の評価結果を表3に示す。実施例1と同様の方法にて積層体および硬化膜を作成し、評価を行った。
【0083】
≪比較例12−15≫
製造例1で得られたビニル系重合体P(VEEA40CHVE60)を用い、実施例11と同様に硬化性樹脂組成物を調整し、各種評価を行った。製造例1から得た樹脂の評価結果を表3に示す。実施例1と同様の方法にて積層体および硬化膜を作成し、評価を行った。
【0084】
【表3】

【0085】
上記実施例の結果から、本発明の特定のビニル系重合体を有する硬化性組成物は表面調整剤が少量にも関わらず硬化性組成物が塗布時の外観、および硬化膜のスリップ性に優れることが判明し、さらに耐スクラッチ性にも効果を奏することが判明した。なお、表面調整剤が耐スクラッチ性に寄与する理由としては、スリップ性の特異な向上によりスチールウールとの摩擦が低減され、引っ掛かりや先端部の食い込みが減少したためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】


[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で表される繰り返し単位を有するビニル系重合体と表面調整剤を必須成分として含有し、
上記ビニル系重合体中の式(1)で示される繰り返し単位が90質量%以下かつ、
表面調整剤の表面張力が、27mN/m以上35mN/m以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
表面調整剤が硬化性樹脂組成物100重量部当たり0.0001〜10重量部の割合で含有されている請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項4】
請求項3記載の硬化物が積層された積層物品。
【請求項5】
請求項3記載の硬化物層を有する光記録媒体。

【公開番号】特開2009−221474(P2009−221474A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39149(P2009−39149)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】