説明

硬化性樹脂組成物及びそれを用いた接着剤組成物

【課題】 その分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(B)をベースポリマーとして含有する硬化性樹脂組成物であって、ABSに対する密着性が向上された硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 その分子内に下記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物(A)と、その分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(B)と、その分子内に1個以上の第一級アミノ基及び架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(C)とからなることを特徴とする硬化性樹脂組成物を用いる。
【化1】


・・・(1)
ただし、式中のXは化合物(A)の残基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂を含有する硬化性樹脂組成物及びそれを用いた接着剤組成物に関する。より詳しくは、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)に対する密着性が良好な硬化性樹脂組成物及びそれを用いた接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖が有機重合体でありその分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂は、架橋可能な反応性珪素基であるアルコキシシリル基が大気中の水分で加水分解し架橋する、いわゆる湿気硬化型ポリマーであり、シーラント、接着剤、塗料等のベースポリマーとして幅広く利用されている(特許文献1)。しかしながら、このような硬化性シリコーン系樹脂は密着性(いわゆる自着性)が不十分であった。そこで、その分子内にウレタン基及び/又はウレア基等の極性基を導入することで、硬化性シリコーン系樹脂の自着性を向上できることが提案されている(特許文献2及び3)。
【0003】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特許第3030020号公報
【特許文献3】特許第3343604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分子内にウレタン基及び/又はウレア基等の極性基を導入することで硬化性シリコーン樹脂の自着性は向上するがその効果は十分ではなく、さらなる密着性向上のため、密着性付与効果の高い添加剤が求められていた。
特に、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(以下「ABS」と略)等に代表される被着材に対しては、その成形品等が用いられる用途等を考慮して、より一段高い密着性が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような問題を解決するために、本発明者等は、鋭意研究の結果、特定の五員環カーボネート基を有する化合物、及び、特定の第一級アミン化合物及び/又はアミノシラン化合物を、上記硬化性シリコーン系樹脂に添加することにより、特にABSへの密着性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、第1の発明は、その分子内に下記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物(A)と、その分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(B)と、その分子内に1個以上の第一級アミノ基及び架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(C)とからなることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関するものである。
【化1】

・・・(1)
ただし、式中のXは化合物(A)の残基を表す。
【0007】
また、第2の発明は、化合物(A)が、その分子内に下記一般式(2)で示される基を有することを特徴とする、第1の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【化2】

・・・(2)
ただし、式中のRは分子量1,000未満の2価の有機基であり、Yは化合物(A)の残基を表す。
【0008】
また、第3の発明は、化合物(A)の主鎖がオキシアルキレン重合体であることを特徴とする、第1又は第2の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0009】
また、第4の発明は、化合物(A)の残基X又はYの分子量が500以上であることを特徴とする、第1〜第3の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
また、第5の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(B)が、その主鎖がオキシアルキレン重合体であることを特徴とする、第1〜第4の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0011】
また、第6の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(B)が、その分子内にウレタン結合を有することを特徴とする、第1〜第5の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0012】
また、第7の発明は、第1〜第6の発明に係る硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする、接着剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、特定の五員環カーボネート基を有する化合物及び特定のアミノシラン化合物が配合されているため、ABSに対する密着性が極めて高いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0015】
[化合物(A)について] 本発明における、五員環カーボネート基を有する化合物(A)は、ジオールとホスゲンとの反応(参考文献、B.M.Trost and D.M.T.Chan.,J.Org.Chem.,48,3346(1983)他)、オキシランとβラクトンとの反応(T.Nishikubo,T.Iizuka,M.Iida and N.Isobe,Tetrahedron Lett.,27,3741(1986))、オキシランと二酸化炭素による反応(W.J.Peppel,Ind.Eng.Chem.,50,767(1958)、N.Kihara and T.Endo,Macromolecules,25,4824(1992))などによって合成できる。
【0016】
また、本発明における化合物(A)のうち、上記一般式(2)で示される、分子内にウレタン結合及び五員環カーボネート基を有するものは、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(a1)とグリセリンカーボネート(下記一般式(3))との反応により、合成することもできる。
【化3】

・・・(3)
【0017】
[イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(a1)について] イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(a1)は、ポリオール化合物(i)とポリイソシアネート化合物(ii)とから従来公知の定法により合成することができる。
【0018】
[ポリオール化合物(i)について] ポリオール化合物(i)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等の従来公知のポリオール化合物が例示される。これらポリオールは、一種単独を用いてもよく、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0019】
さらに具体的に説明すれば、ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量500〜30,000のものが好ましく、1,000〜20,000のものが特に好ましい。また、官能基数が2以上のポリエーテルポリオールが好ましく、その具体例としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシヘキシレン、ポリオキシテトラメチレン等の単独重合体並びにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキシレンオキシド及びテトラヒドロフランよりなる群から選ばれた2種以上のモノエポキシドを開環共重合させてなる共重合体が挙げられる。特に、官能基数が2〜6のポリオキシプロピレンポリオールが好ましく、その具体例としては、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオールが挙げられる。 ポリエーテルポリオールの市販品としては、株式会社ADEKA製のP−2000、P−3000、旭硝子株式会社製のPML−4002、PML−S−4012、PML−S−4015、PML−5005、住化バイエルウレタン株式会社製のスミフェン(Sumiphen)3600、スミフェン3700、SBU−Polyol0319(以上、いずれも商品名)が例示される。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸類の一種又は二種以上と、ジオール類の一種又は二種以上とを重縮合して得られる重合体、ε−カプロラクタム、バレロラクトン等を開環重合させてなる開環重合物、活性水素を2個以上有するひまし油等の活性水素化合物が例示される。通常、分子量500〜30,000のものが用いられる。
【0021】
ポリオレフィンポリオールとしては、エチレン・α−オレフィン骨格を有するポリオール、ポリイソブチレン骨格を有するポリオール等が例示される。
【0022】
この他、ポリオール化合物(i)の主鎖骨格は、アクリル骨格を有するポリオール化合物、フッ素原子、珪素原子、硫黄原子又はロジン骨格を有する有機基を含有するポリオール化合物、ジエン系モノマーを重合して得られるポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格などを有するポリオール化合物が挙げられ、使用目的や求める性能に応じて、適宜のポリオール化合物を用いればよい。
【0023】
以上例示したポリオール化合物の中でも、得られる硬化皮膜の柔軟性を向上させ接着性が向上するため、化合物(A)の主鎖骨格(すなわち残基X又はY)がポリオキシアルキレンであるものが好ましい。また、ABSのみならず、ポリアクリレート系材料等への密着性が向上することから、化合物(A)の主鎖骨格中にポリエチレンオキサイド鎖を含有するものがより好ましい。さらに、これらの効果がより増すため、化合物(A)の主鎖骨格の分子量が500以上となるものが特に好ましい。
【0024】
[ポリイソシアネート化合物(ii)について]
ポリイソシアネート化合物(ii)としては、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基(あるいはイソチオシアネート基)を有する化合物及びその変性物である。具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4′−又は4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、フェニルジイソチオシアネート、及び、それらの変性三量体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0025】
化合物(A)の配合量は、硬化性シリコーン系樹脂(B)に対して0.1〜60重量%であることが好ましく、0.5〜40重量%であることがより好ましく、2〜20重量%であることが特に好ましい。0.1重量%を下回ると、ABSに対する密着性向上の効果が十分でなく、60重量%を上回ると、硬化性シリコーン系樹脂(B)の特性が失われてしまうため好ましくない。
【0026】
[硬化性シリコーン系樹脂(B)について]
本発明における硬化性シリコーン系樹脂(B)は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を持つ硬化性シリコーン系樹脂である。
上記反応性珪素基とは、珪素原子における主鎖との結合手以外に加水分解性基が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基が2〜0個結合しているものである。珪素原子に結合している加水分解性基としては、ヒドロキシル基や、メトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,ブトキシ基等のアルコキシル基が、一般的に用いられる。その他、ハロゲン基やメルカプト基等の従来公知の加水分解性基も用いることができる。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基としては、メチル基やエチル基等のアルキル基が一般的に用いられる。主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられているものが採用される。
硬化性シリコーン系樹脂(B)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、株式会社カネカ製のサイリルシリーズ、MSポリマーシリーズ、MAシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、エピオンシリーズ;旭硝子株式会社製のESシリーズ、ESGXシリーズ;デグサジャパン社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業株式会社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ;東亞合成株式会社製のXPRシリーズ;綜研化学株式会社製のアクトフローシリーズ等が挙げられる。
【0027】
また、本発明では、硬化性シリコーン系樹脂(B)として、分子内にウレタン結合、尿素結合等の極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂を好適に用いることができる。このような極性基を架橋可能な反応性珪素基の近傍に導入すると、硬化性シリコーン系樹脂の硬化がさらに促進されるため好ましい。硬化が促進する理由としては、硬化性シリコーン系樹脂の分子内に存在する極性基同士が水素結合等の相互作用によってドメインを形成し、それによって架橋可能な反応性珪素基同士の分子的な距離が近くなり、架橋可能な反応性珪素基同士のカップリング反応(縮合反応)が起こりやすくなるためであると考えられる。
分子内に極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂は、従来公知の方法で合成すればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(あるいはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
【0028】
[アミノシラン化合物(C)について]
本発明における、アミノシラン化合物(C)は、分子内に1個以上の第一級アミノ基と架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物である。
具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン等の第1級アミノ基含有アミノシラン化合物、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業社製商品名)等のアミノシラン及び/又はその他のアルコキシシラン化合物を一部縮合させた化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アミノシラン化合物(C)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよく、さらにこれらは1種又は2種以上使用してもよい。
【0029】
アミノシラン化合物(C)は、化合物(A)と反応する。
化合物(A)とアミノシラン化合物(C)の配合方法としては、
(1)化合物(A)と硬化性シリコーン系樹脂(B)とを事前に混合しておいたものに対して、アミノシラン化合物(C)を混合する方法、
(2)化合物(A)とアミノシラン化合物(C)とを混合して事前に反応させておき、これを硬化性シリコーン系樹脂(B)に混合する方法、
(3)化合物(A)と硬化性シリコーン系樹脂(B)とアミノシラン化合物(C)とを同時に混合する方法、
(4)アミノシラン化合物(C)が有する第一級アミノ基を、カルボニル化合物によって予めイミノ化しておき、化合物(A)と硬化性シリコーン系樹脂(B)と該イミノ化アミノシラン化合物とを同時に混合する方法、
等が考えられる。混合方法は、使用する形態や供給する形態を考慮し、適宜選択することができる。最終的に、化合物(A)とアミノシラン化合物(C)との反応生成物が、硬化性シリコーン系樹脂(B)とともに存在していれば、本発明の効果が奏せられる。
【0030】
アミノシラン化合物(C)の配合量は特に限定されないが、アミノシラン化合物(C)中の第一級アミノ基数:化合物(A)中の五員環カーボネート基数が、20:80以上となるよう配合するのが好ましく、30:70以上となるのがより好ましく、50:50以上となるのが特に好ましい。アミノシラン化合物(C)の配合量が、アミノシラン化合物(C)中の第一級アミノ基数:化合物(A)中の五員環カーボネート基数=20:80を下回ると、化合物(A)が十分硬化しないことがあるため好ましくない。
【0031】
[その他の成分]
本発明に係る硬化性樹脂組成物中には、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。たとえば、有機スズ系化合物,三フッ化ホウ素系化合物等の硬化触媒、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、親水性又は疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム、クレイ、アクリル系等の有機系粉体、有機系・無機系のバルーン等の充填剤、石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂等の粘着付与剤、無水シリカ、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、機能性オリゴマー、ヒンダードアミン系化合物,ヒンダードフェノール系化合物,3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の老化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、顔料、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を配合することができる。
【0032】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、基本的な皮膜の形成機構としては、水分の存在下で、硬化性シリコーン系樹脂(B)が有する架橋可能な反応性珪素基同士が縮合することによって硬化皮膜を形成するものである。しかし、上述のとおり、この皮膜形成とは別に化合物(A)中のカーボネート基と、アミノシラン化合物(C)中の第一級アミノ基との反応も起こる。
すなわち、得られる硬化皮膜はこれら二つの反応の生成物による複合的な硬化物となる。本発明は、このような従来に類を見ない複合的な硬化性樹脂組成物によるものであると、認識されるべきである。
【0033】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、たとえば、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。
また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、一液型としても二液型としても、場合によっては三液型としても使用することができる。一液型として使用される場合は、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化型樹脂が硬化する。
また、二液型(又は三液型)として使用される場合には、適宜、化合物(A)、硬化性シリコーン系樹脂(B)、アミノシラン化合物(C)とが、第一液及び第二液(又はさらに第三液)として個別に包装されて提供される。そして、使用時にこれら第一液と第二液(又はさらに第三液)とを混合して任意の箇所に適用すれば、活性化した反応性珪素基が空気中の水分と接触して湿気硬化型樹脂組成物が硬化する。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本発明は、化合物(A)と硬化性シリコーン系樹脂(B)とアミノシラン化合物(C)とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物を用いることにより、特にABSへの密着性に優れた硬化性樹脂組成物が得られるという知見に基づくものとして解釈されるべきである。
【0035】
(化合物(A)の調製)
(合成例1)
PR−5007(株式会社ADEKA製商品名、平均分子量5,000のポリエーテルポリオール、オキシプロピレン/オキシエチレン質量比(以下「PO/EO」と表記する)=30/70、100g)、アクトコールP−28(三井化学ポリウレタン株式会社製商品名、平均分子量4,000のポリエーテルポリオール、PO/EO=100/0、500g)、及びイソホロンジイソシアネート(68g)を窒素雰囲気下にて攪拌しながら、ポリオール化合物に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートの存在下90℃で5時間反応させた。その後グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製、38g)を加え同温度でさらに3時間反応させ、五員環カーボネート基を有する化合物A−1を得た。反応終了後IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される吸収(2265cm−1)は観測されなかった。23℃における化合物A−1の粘度は26,000mPa・s(BH型粘度計、No.7ローター、10回転)であった。
【0036】
(合成例2)
アクトコールP−28(170g)、及びイソホロンジイソシアネート(20g)を窒素雰囲気下にて攪拌しながら、ポリオール化合物に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートの存在下90℃で5時間反応させた。その後グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製、12g)を加え同温度でさらに3時間反応させ、五員環カーボネート基を有する化合物A−2を得た。反応後IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される吸収(2265cm−1)は観測されなかった。さらに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(18g)を投入し、窒素雰囲気下にて攪拌しながら90℃で2時間反応させ、化合物A−3を得た。23℃における化合物A−3の粘度は186,000mPa・s(BH型粘度計、No.7ローター、10回転)であった。
【0037】
(硬化性シリコーン系樹脂(B)の調製)
(合成例3)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4g、1.0mol)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2g、2.0mol)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にメチルジメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子ウレタン株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000、950g)、PR−3007(株式会社ADEKA製商品名、平均分子量3,000のポリエーテルポリオール、PO/EO=3/7、50g)、イソホロンジイソシアネート(53.5g)及びジオクチルスズジバーサテート(50mg)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−1を得た。さらに上記シラン化合物SE−1(90.9g)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン結合、置換尿素結合、メチルジメトキシシリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂B−1を得た。23℃における硬化性シリコーン系樹脂B−1の粘度は96,000mPa・s(BH型粘度計、No.7ローター、10回転)であった。
別の反応容器に、上記硬化性シリコーン系樹脂B−1を200g入れ、窒素雰囲気下、85℃まで昇温した。そこに、メタクリル酸メチル75g、メタクリル酸ラウリル50g、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン14g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン14g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.0gを混合したモノマー混合液を30分かけて滴下し、重合反応を行った。さらに、85℃で30分反応させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gとメチルエチルケトン10gの混合溶液を滴下し、重合反応を行った。次いで、85℃で30分反応させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gとメチルエチルケトン10gの混合溶液を滴下し、重合反応を行った。さらに、85℃で30分反応させた後、未反応の諸成分を減圧留去することで、硬化性シリコーン系樹脂B−2を得た。23℃における硬化性シリコーン系樹脂B−2の粘度は150,000mPa・s(BH型粘度計、No.7ローター、10回転)であった。
【0038】
(硬化性樹脂組成物の調製)
(実施例1、比較例1)
硬化性シリコーン系樹脂SAT400(株式会社カネカ製商品名、20g)及び3−アミノプロピルトリメトキシシラン(2.0g)、SCAT−27(三共有機合成株式会社製商品名、スズ系硬化触媒、0.25g)及び化合物A−1(表1に示した配合量)を素早く混ぜ合わせ、2種の硬化性樹脂組成物を得た。
各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定する被着材として、木板(厚さ5mm、幅25mm、長さ100mm)、ABS板(厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。各硬化性樹脂生成物(約0.1g)を25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積で各被着材をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で7日間養生した後、引張りせん断接着強さ(N/mm)をJIS K 6850に準じて測定した。

表1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
A−1の添加量 ABS/木
(g) (N/mm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 2.0 1.51
比較例1 0 0.49
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【0039】
(実施例2、比較例2)
硬化性シリコーン系樹脂B−1(20g)及び3−アミノプロピルトリメトキシシラン(2.0g)、エチルシリケート(2.0g)、BFモノエチルアミン錯体(0.020g)及び化合物A−1(表2に示した配合量)を素早く混ぜ合わせ、2種の硬化性樹脂組成物を得た。
各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定する被着材として、ABS板(厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。各硬化性樹脂生成物(約0.1g)を25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積で各被着材をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で7日間養生した後、引張りせん断接着強さ(N/mm)をJIS K 6850に準じて測定した。


表2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
A−1の添加量 ABS/ABS
(g) (N/mm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例2 2.0 1.97
比較例2 0 0.83
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【0040】
(実施例3〜7、比較例3)
硬化性シリコーン系樹脂B−2(20g)及び3−アミノプロピルトリメトキシシラン(2.0g)、エチルシリケート(2.0g)、BFモノエチルアミン錯体(0.020g)及び化合物A−1又はA−3(いずれも表3に示した配合量)を素早く混ぜ合わせ、6種の硬化性樹脂組成物を得た。
各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定する被着材として、木板(厚さ5mm、幅25mm、長さ100mm)、ABS板(厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。各硬化性樹脂生成物(約0.1g)を25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積で各被着材をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で7日間養生した後、引張りせん断接着強さ(N/mm)をJIS K 6850に準じて測定した。

表3
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
A−1の添 A−3の添 ABS/木 破壊状態
加量(g) 加量(g) (N/mm
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実施例3 1.0 0 4.32 CF70AF30
実施例4 2.0 0 4.09 CF40AF60
実施例5 0 1.0 5.39 MF20CF80
実施例6 0 2.0 6.21 MF10CF90
実施例7 0 4.0 5.60 MF60CF30AF10
比較例3 0 0 3.48 AF100
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破壊状態:CF;凝集破壊、MF;木の材料破壊、AF;ABS側の界面破壊
数字は、接着面積(12.5mm×25mm)に対して、それぞれの破壊状態が占める面積%を表す

【0041】
表1〜表3に示されるように、本件発明に係る硬化性樹脂組成物はABSに対する接着性が大きく向上していることが分かる。
具体的には、化合物(A)を配合しない比較例1及び2の硬化性樹脂組成物と比較して、化合物(A)を配合した実施例1及び2の硬化性樹脂組成物は、ABSを被着材として用いた際の接着強さが高いことが分かる(表1及び表2参照)。
また、比較例3と比較して、実施例3〜7は、化合物(A)を添加することにより密着性が大きく向上している。すなわち、ABS界面での破壊100%(比較例3)あったものが、接着強さの向上とともに凝集破壊の割合も向上しており(実施例3〜7)、より信頼性が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性シリコーン系樹脂が適用されていた全ての用途に使用できるとともに、特に被着材がABSである用途に好適に用いることができる。たとえば、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その分子内に下記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物(A)と、
その分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(B)と、
その分子内に1個以上の第一級アミノ基及び架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(C)と
からなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化1】

・・・(1)
ただし、式中のXは化合物(A)の残基を表す。
【請求項2】
化合物(A)が、その分子内に下記一般式(2)で示される基を有することを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】

・・・(2)
ただし、式中のRは分子量1,000未満の2価の有機基であり、Yは化合物(A)の残基を表す。
【請求項3】
化合物(A)の主鎖がオキシアルキレン重合体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
化合物(A)の残基X又はYの分子量が500以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
硬化性シリコーン系樹脂(B)が、その主鎖がオキシアルキレン重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
硬化性シリコーン系樹脂(B)が、その分子内にウレタン結合を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする、接着剤組成物。

【公開番号】特開2008−285538(P2008−285538A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130058(P2007−130058)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】