説明

硬化性液体

本発明は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びアクリル樹脂を硬化させるための促進剤であって、過酸化物系開始剤と共に用いるものに関する。この促進剤は、三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄/マンガン錯体をベースとする。前述の促進剤を含む硬化性樹脂組成物、及びこれらの促進剤を使用する硬化方法も開示する。これらの樹脂組成物は良好な硬化特性を示し、コバルト促進剤を含有しない。本発明はさらに、そのような不飽和ポリエステル、ビニルエステル、及びアクリル樹脂から調製されるゲルコート及び成形複合材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の硬化(curing及びhardening)に関する。特に、本発明は、過酸化物系開始剤を併用して不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びアクリル樹脂を硬化させるための促進剤に関する。促進剤は、三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄/マンガン錯体をベースとする。上記の促進剤を含む硬化性樹脂組成物、及びこれらの促進剤を使用する硬化方法も開示される。これらの樹脂組成物は良好な硬化特性を示し、コバルト促進剤を含有しない。本発明はさらに、そのような不飽和ポリエステル、ビニルエステル、及びアクリル樹脂から調製されるゲルコート及び成形複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル及びビニルエステルを含む熱硬化性樹脂は、注型材料、繊維強化材料、及びコーティングなどの様々な製造において一般に使用される。典型的には、これらの樹脂をスチレンのような不飽和ビニルモノマーに溶解させて、架橋(硬化)を促進し、粘度を低下させる。樹脂は、過酸化物系開始剤を用いてフリーラジカル共重合のメカニズムによって硬化されて、中実品(solid article)を生成する。促進剤を使用して、過酸化物の分解を促進する。
【0003】
WO2008003496は、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂、マンガン化合物、及びチオール含有化合物、及び式ROOH(式中、Rは水素又は任意選択で置換されていてもよいアルキル基である)を有する過酸化物化合物を含む樹脂組成物を開示している。
【0004】
WO2008003495は、不飽和ポリエステル樹脂、マンガン化合物、1,3-ジオキソ化合物、及び塩基を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物を開示しており、この樹脂組成物は過酸化物によって硬化可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008003496
【特許文献2】WO2008003495
【特許文献3】WO02/48301
【特許文献4】WO00/60045
【特許文献5】WO03/104379
【特許文献6】W095/34628
【特許文献7】EP0909809
【特許文献8】EP0458397A
【特許文献9】WO06/125517
【特許文献10】WO98/39098
【特許文献11】W097/48787
【特許文献12】WO02/077145
【特許文献13】US/2002/00912412A
【特許文献14】WO2005042532
【特許文献15】GB2386615
【特許文献16】EP1259522
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc、122、2512 (2000)
【非特許文献2】Bernal, J.ら、J. Chem. Soc、Dalton Trans、1995、3667
【非特許文献3】J.H. Koekら、J. Chem. Soc、Dalton Trans、353、1996
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、過酸化物の存在下での不飽和樹脂(1つ又は複数)の硬化において、活性な鉄及びマンガン化合物が、比較的低濃度で一次促進剤(primary accelerator)として活性であることを見いだした。これにより、毒性のコバルト促進剤の低減又は不使用(negation)が可能になる。この硬化性組成物はまた、色のゆらぎ(colour perturbation)が少なく、硬化を促進させる温度への依存性が低い。
【0008】
本発明は、効果的に機能する一方でコバルト促進剤の量の低減が求められる硬化媒体に特に適用可能であり、実際に本発明はコバルト促進剤の不使用を可能にする。
【0009】
第1の態様において、本発明は、
(i)5〜95質量%の不飽和樹脂と;
(ii)0.001〜10質量%の過酸化物と;
(iii)金属を基準として0.00001〜0.02%質量%の一次促進剤と
を含む液体媒体であって、
一次促進剤が三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄又はマンガン錯体であり、
その配位子が、以下:
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、各Rは独立に、水素、F、Cl、Br、ヒドロキシル、C1〜C4-アルキルO-、-NH-CO-H、-NH-CO-C1〜C4-アルキル、-NH2、-NH-C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルから選択され;
R1及びR2は独立に、C1〜C24-アルキル、C6〜C10-アリール、及び
遷移金属に配位可能なヘテロ原子含有基から選択され;
R3及びR4は独立に、水素、C1〜C8アルキル、C1〜C8-アルキル-O-C1〜C8-アルキル、C1〜C8-アルキル-O-C6〜C10-アリール、C6〜C10-アリール、C1〜C8-ヒドロキシアルキル、及び-(CH2)nC(O)OR5(式中R5は独立に、水素、C1〜C4-アルキルから選択され、nが0〜4及びその混合である)から選択され;
XはC=O、-[C(R6)2]y-(式中、yは0〜3であり、各R6は独立に、水素、ヒドロキシル、C1〜C4-アルコキシ、及びC1〜C4-アルキルから選択される)から選択される];
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、各R1、R2は独立に-R4-R5を表し、
R3は水素、任意選択で置換されていてもよいアルキル、アリール若しくはアリールアルキル、又は-R4-R5を表し、
各R4は独立に、単結合、又は任意選択で置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン、オキシアルキレン、アミノアルキレン、アルキレンエーテル、カルボン酸エステル、又はカルボン酸アミドを表し、
各R5は独立に、任意選択でN-置換されたアミノアルキル基、又は任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基を表す);
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、各R20は、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボン酸エステル、スルホナート、アミン、アルキルアミン、及びN+(R21)3[式中、R21は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、オキシアルキル、オキシアルケニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アルキルエーテル、アルケニルエーテル、及び-CY2-R22(式中、Yは独立に、H、CH3、C2H5、C3H7から選択され、R22は独立に、任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基から選択される)から選択される]から選択される置換基で任意選択で置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、及びアリールアルキル基から選択され;R20のうち少なくとも1つは-CY2-R22である];
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Qは独立に
【0018】
【化5】

【0019】
から選択され、
pは4であり;
Rは独立に、水素、C1〜C6-アルキル、CH2CH2OH、ピリジン-2-イルメチル、及びCH2COOHから選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は独立に、H、C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルヒドロキシから選択される);
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、「R1」は独立に、H、及び直鎖若しくは分岐鎖、置換若しくは非置換のC1〜C20アルキル、アルキルアリール、アルケニル、又はアルキニルから選択され;大多環状の環におけるすべての窒素原子は遷移金属に配位している);
R17R17N-X-NR17R17 (VI)
[式中、
Xは-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2C(OH)HCH2-から選択され;
R17は独立に、R17、並びにヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボン酸エステル、スルホナート、アミン、アルキルアミン、及びN+(R19)3[式中、R19は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、オキシアルキル、オキシアルケニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アルキルエーテル、アルケニルエーテル、及び-CY2-R18(式中、Yは独立に、H、CH3、C2H5、C3H7から選択され、R18は独立に、任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基から選択される)から選択される]から選択される置換基で任意選択で置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、及びアリールアルキル基から選択される基を表し;
R17のうち少なくとも2つは-CY2-R18である];
並びに
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、Qは
【0024】
【化8】

【0025】
であり;
pは3であり;
各Rは独立に、水素、C1〜C6-アルキル、CH2CH2OH、CH2COOH、及びピリジン-2-イルメチルから選択されるか、又は1つのRが式(VII)の2つめの配位子のQにおける>NRの窒素原子へのエチレン架橋であり;
R1、R2、R3、及びR4は独立に、H、C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルヒドロキシから選択される)
からなる群から選択される、硬化性液体媒体を提供する。
【0026】
本発明の第1の態様の特定の実施形態によれば、一次促進剤は四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の錯体であり、その配位子は式(I)〜(VI)の配位子からなる群から選択される。
【0027】
本発明の第1の態様の他の実施形態によれば、一次促進剤は三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の錯体であり、その配位子は式(I)〜(VII)の配位子からなる群から選択され、一次促進剤は配位子が式(VII)であるマンガン錯体である。
【0028】
別の態様において、本発明は、一次促進剤、樹脂、及び過酸化物を混合することによって硬化性液体媒体を提供する方法を提供する。一次促進剤は、最も好ましくは、極性溶媒中の溶液として加える。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、硬化液体媒体、すなわち、硬化された、本発明の第1の態様による硬化性液体媒体(本明細書中において定義される特定の実施形態を含む)を提供する。したがって、この態様によれば、本発明の第1の態様による硬化性液体媒体を硬化させることによって得られる硬化樹脂が提供される。
【0030】
好ましくは、硬化性液体媒体は、金属を基準として0.01質量%未満、より好ましくは0.005質量%未満、最も好ましくは0.0001質量%未満のコバルトを含む。理想的には、硬化性液体媒体はコバルトを含有しない、すなわち、硬化性液体媒体はコバルトを含まない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[樹脂]
硬化性液体媒体は約5〜約95質量%の不飽和樹脂を含む。いくつかの実施形態において、硬化性液体媒体は約10〜約95質量%の不飽和樹脂を含む。
【0032】
樹脂中に含まれる不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂は、当技術分野において良く知られるような不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂から適切に選択することができる。樹脂は、架橋に役立つ反応性希釈剤を含む。本発明の樹脂組成物中に使用する不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂の例は、以下に列挙するように様々なカテゴリーに分類される。
【0033】
(1)オルト樹脂:これらは、無水フタル酸、無水マレイン酸、又はフマル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリポピレングリコール、ネオペンチルグリコール、又は水素化ビスフェノールAなどのグリコール類とをベースとする。一般に、1,2-プロピレングリコールに由来するものを、スチレンなどの反応性希釈剤と組み合わせて用いる。
【0034】
(2)イソ樹脂:これらは、通常、イソフタル酸、無水マレイン酸、又はフマル酸と、グリコールとから調製される。これらの樹脂は、典型的には、オルト樹脂よりも高濃度の反応性希釈剤を含有することができる。
【0035】
(3)ビスフェノールA-フマル酸:これらは、エトキシ化ビスフェノール-A及びフマル酸をベースとする。
【0036】
(4)クロレンド酸:これらは、UP樹脂の調製において塩素/臭素含有無水物又はフェノール類から調製される樹脂である。
【0037】
(5)ビニルエステル樹脂:これらは、それらの耐加水分解性及び優れた機械的特性のために最も使用される樹脂であり、不飽和部位を末端位のみに有し、これはエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により導入される。エポキシ樹脂の典型的なタイプとしては、ビスフェノールA、ノボラック、テトラフェニルエタン、脂環式化合物、テトラブロモビスフェノールAなどのタイプが挙げられる。
【0038】
イソ樹脂及びオルト樹脂に類似するのは、テレフタル酸を含有する不飽和ポリエステル樹脂である。これらの種類の樹脂に加えて、いわゆるジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂も不飽和ポリエステル樹脂として分類することができる。
【0039】
本明細書で使用するビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリラート官能性樹脂である。ビニルエステルウレタン樹脂(ウレタンメタクリラート樹脂とも呼ばれる)の部類もビニルエステル樹脂として分類することができる。好ましくは、本発明において使用するビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリルアミドとのエステル交換によって得られる樹脂である。
【0040】
本発明に関連して使用できるこれらのすべての樹脂は、例えばより低い酸価、ヒドロキシル価、又は無水物価(anhydride number)を得るため、又は骨格中にフレキシブルな単位を挿入することによってより可撓性を高めるなどのために、当技術分野において既知の方法に従って修飾してもよい。
【0041】
過酸化物との反応によって硬化可能な他の反応性基、例えばイタコン酸、シトラコン酸に由来する反応性基、及びアリル基などが、樹脂中に存在していてもよい。したがって、本発明において使用される不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂は、溶媒を含有していてもよい。溶媒は、樹脂系に対して不活性であってもよいし、又は硬化ステップ中に樹脂系と反応性であってもよい。反応性溶媒が特に好ましい。適切な反応性溶媒の例は、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリラート、ジアリルフタラート、α-メチルスチレン、トリアリルシアヌラート、(メタ)アクリラート、N-ビニルピロリドン、及びN-ビニルカプロラクタムである。反応性溶媒の混合物、特にスチレンとの混合物も使用される。スチレン及び/又は他の反応性希釈剤の量は、樹脂組成物の最大60%の量であってもよいが、典型的には25%〜35%である。
【0042】
本発明に関連して使用される不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂は、そのような樹脂のうち任意のタイプであってもよいが、好ましくはDCPD樹脂、イソフタル酸樹脂及びオルトフタル酸樹脂、及びビニルエステル樹脂、又はそれらのブレンドの群から選択される。
【0043】
本発明による樹脂組成物は好ましくは酸価が0.001〜300mg KOH/g(樹脂組成物のグラム)の範囲である。本明細書で使用する樹脂組成物の酸価は、ISO 2114〜2000に従って滴定によって決定される。好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂の分子量は500〜200,000 g/molの範囲である。本明細書において、樹脂の分子量は、ISO 13885-1に従ってゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定される。本発明による樹脂組成物は一般に5質量%未満の水を含有する。
【0044】
本発明による樹脂組成物に含まれるアクリル樹脂は、当技術分野において良く知られている熱硬化性のアクリル樹脂又はアクリル修飾樹脂から適切に選択できる。本発明の樹脂組成物において使用するアクリル樹脂又は修飾アクリル樹脂の例を、以下に挙げる。
【0045】
アクリル樹脂:典型的には、下記一般的構造:
【0046】
【化9】

【0047】
(式中、Rは芳香族又は脂肪族であってよく、また直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルカン、エーテル、又はエステルを含んでいてもよい)
のアクリラート官能基又はメタクリラート官能基のいずれかを含有するアクリルモノマーをベースとする。アクリルモノマー(すなわち、アクリルエステルモノマー及びメタクリルエステルモノマー)は、典型的にはアクリル酸又はメタクリル酸とアルコールとから合成される。標準的な側鎖に加えて、特別な官能基を、適切な官能性アルコールを用いることによって(メタ)アクリルエステルモノマーに加えてもよい。例としては、グリシジルメタクリラート、t-ブチルアミノエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、2-ヒドロキシエチルアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミドなど、並びにカルボン酸のグリシジルエステルから生成されるヒドロキシ(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0048】
メタクリル酸、アクリル酸、及びイタコン酸のようなカルボキシル型、並びに、1,4-ブチレンジメタクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、1,6ヘキサンジオールジメタクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、ビスフェノールAジメタクリラート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパンメタクリラート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリラートなどの多官能型も官能性モノマーとして挙げられる。
【0049】
アクリル樹脂は、アクリル化したウレタン、エポキシ、ポリエステル、ポリエーテル、及びアクリルである、オリゴマーアクリラートも使用できる。オリゴマーアクリラートは、アクリラート官能性モノマーをオリゴマーの1級又は2級の官能基と反応させることによって生成される。アクリラート官能性モノマーを、オリゴマーに直接付加させるか、あるいは2級の二官能性モノマーを用いてオリゴマーに結合させることができる。例えば、ウレタンアクリラートオリゴマーは、ポリエステル又はポリエーテルポリオールオリゴマーを、ジイソシアナート(脂肪族又は芳香族)及びヒドロキシ(メタ)アクリラートと反応させることによって生成させる。エポキシアクリラートオリゴマーは、エポキシ樹脂を、カルボキシル官能性(メタ)アクリラートと反応させることよって生成させる。ポリエーテルオリゴマーは、一例として、カルボキシ官能性(メタ)アクリラートと反応させてポリエチレングリコールジメタクリラートを生成させることもできる。
【0050】
加えて、アクリル樹脂は、アクリルモノマーを重合させるか又は異なるアクリルモノマーの混合物を特定の重合度、典型的には10〜60%にまで共重合させることによって生成される、あらかじめ反応させたポリマーインモノマー(polymer-in-monomer)のシロップを使用できる。重合は典型的には、50〜110℃で少量の重合開始剤及び任意成分として連鎖移動剤を用いて行われる。反応は、所定の粘度、おおよその重合度まで進行し、次いで室温まで冷却される。任意選択で、重合阻害剤を含有する冷たいモノマーを添加することによって、反応を急冷停止(quench cooled)してもよい。
【0051】
オリゴマーとはみなされない十分な分子量のベース樹脂をアクリル修飾樹脂が使用することを除いて、アクリル修飾樹脂は、オリゴマーアクリラートと同様な広義のカテゴリーの樹脂である。ベース樹脂の例としては、ポリオール、不飽和ポリオール、ポリエステル、不飽和ポリエステル、不飽和ジシクロペンタジエン系ポリエステル、ポリイソシアナート(鎖延長化された、かつ/あるいは多官能性の樹脂)、エポキシ樹脂(ビスフェノールA、ノボラック、及び鎖延長化の樹脂)、及び典型的にはポリオールとポリカルボン酸又は無水物との生成物であるポリ酸が挙げられる。アクリル修飾樹脂は、ベース樹脂の1級及び2級の官能基を官能性アクリルモノマーと直接反応させて、1級及び/又は2級の(メタ)アクリル二重結合をベース樹脂上に作ることによって生成される。(メタ)アクリル二重結合によるベース樹脂の修飾は、最初に樹脂の1級及び/又は2級官能基をイソシアナート、酸、又は無水物などの他の二官能性又は多官能性化合物と反応させることによって、間接的に実現することもできる。加えて、アクリル樹脂は、最初の修飾の間に形成された2級官能基を反応させることによって、さらに修飾してもよい。アクリル修飾樹脂の調製方法は、当業者に良く知られている。
【0052】
したがって、本発明で使用されるアクリル修飾樹脂は、溶媒を含有してもよい。溶媒は、樹脂系に対して不活性であってもよいし、又は硬化ステップ中に樹脂系と反応性であってもよい。反応性溶媒が特に好ましい。上記で論じたアクリルモノマー及び/又はオリゴマーアクリラートは、典型的にはアクリル修飾樹脂と共に使用される適切な反応性溶媒の例である。あるいは、アクリル樹脂及びアクリル修飾樹脂の両方おいて、アクリルモノマーはスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、及びカルボン酸のビニルエステルなどと共重合させることができる。
【0053】
アクリルモノマー及び/又はオリゴマーアクリラートを硬化又は架橋における反応性希釈剤として使用することによって、修飾アクリル樹脂の定義は、アリル官能基によって修飾された樹脂を含めるようにさらに拡大される。ここでは、アリル官能性は、アリルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルペンタエリトリトール、及び関連する誘導体によってベース樹脂に導入される。
【0054】
上述した不飽和ポリエステル、ビニルエステル、及びアクリル樹脂系を、過酸化物系及びアゾ系開始剤を用いて硬化させる。開始剤を、典型的には、熱、紫外線を用いて、あるいは室温で促進剤を用いて解離させて、重合を開始させるのに必要なフリーラジカルを形成させる。促進剤は、通常は過酸化物と共に使用されるが、これらの使用は周囲条件硬化(ambient curing)の用途に限定されない。すべての過酸化物開始剤をどの促進剤によっても活性化させることができるわけではなく、すべての過酸化物/促進剤系がどの樹脂系に対しても十分に活性なわけではない。不飽和ポリエステル及びビニルエステル樹脂の周囲条件硬化における現在の最新技術は、促進剤としての金属化合物(特にコバルト塩)の存在によって反応促進される過酸化物を使用する。ナフテン酸コバルト及びオクタン酸コバルトは、最も広く使用される促進剤である。コバルト促進剤と併せて最も一般的に使用される過酸化物は、ケトン過酸化物、ヒドロペルオキシド、及びペルエステルであり、具体的にはメチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)が最も一般的なタイプとして使用される。アクリラートモノマーと混合した相当量のスチレンを含有する修飾アクリル樹脂も、MEKP/コバルト系によって硬化させることができる。多くの様々な開始剤を活性化させ多くの樹脂系に適合する能力が、コバルト促進剤が広く使用される理由である。
【0055】
しかし、コバルト促進剤は、それらの健康上及び環境上の危険のために望ましくないものとなっている。コバルト促進剤はまた、低温(<15℃)での低い反応性、樹脂への着色、並びに、特にアクリル樹脂におけるアクリルモノマー及びメタクリルモノマーとの低い反応性を含む、他の技術的な欠点も持つ。多くの成形用途では周囲温度が適用される。しかし冬季には、周囲温度が、コバルト促進剤による室温硬化における典型的な作業温度である15〜40℃をはるかに下回ることがある。15℃を下回る温度では、コバルト促進剤の活性の低下が温度の低下と不均衡であり、それらが効果のないものになってしまう。また、オクチル酸コバルト及びコバルトナフテン酸塩は非常に色が濃い。典型的な濃度である約0.02%(金属を基準とする)で一次促進剤を使用すると、コバルト促進剤からの色が硬化ゲルコート又は成形複合材料の色に影響を及ぼす。より低濃度のコバルト促進剤を使用できるが、ゲル化時間及びピーク発熱時間はより長くなり、ピーク発熱温度はより低くなる。最後に、不飽和ポリエステル及びビニルエステル樹脂は、開放成形(open molding)設備におけるスチレン排出を制限する近年の政府規制に対応するための1つの方法として、低揮発性アクリルモノマー及びメタクリルモノマーを取り入れている。しかし、スチレン置換の量は、大部分のアクリラート及びメタクリラートとポリエステル骨格中のマレイン酸部分及びフマル酸部分との間の不十分な共重合性、並びにコバルトにより反応促進されたMEKP系がアクリルモノマーと共に効果的にラジカルを生成する能力によって制限される。後者は、コバルトにより反応促進されるMEKP系がスチレンの非存在下でほとんど又は全く反応性を示さないアクリル樹脂系において特に明らかである。アクリル樹脂系と共に現在実施されている最も一般的な開始剤/促進剤系は、第3級アミン促進剤、すなわちジメチルアニリン(DMA)と併用される過酸化ベンゾイル(BPO)である。しかし、BPOは固体粉末であるので理想的とはいえず、DMAは成形複合材料の強く着色したゲルコートをもたらすおそれがある。硬化BPO/DMA系は、熱及び光による強い変色も受ける。
【0056】
したがって、不飽和ポリエステル樹脂の事業において、特に、先に定義したような硬化ゲルコート及び成形複合材料の製造分野において、良好な硬化特性を示しコバルトを含有しない、加速又は促進された不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びアクリル樹脂組成物を見いだすことが大いに必要とされている。特に、液体過酸化物によって硬化可能な促進された樹脂組成物を提供することが必要とされている。特に、そのような硬化は周囲温度で、好ましくは周囲温度よりも低温においても起こるべきである。本促進剤樹脂化合物が、着色の少ない硬化ゲルコート及び成形複合材料をもたらすことが好ましい。
【0057】
驚くべきことに、過酸化物によって硬化される場合に効率的な硬化特性を有する不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びアクリル樹脂系が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はアクリル樹脂と、三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子のマンガン又は鉄錯体、例えば以下に定義するような四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子を含む促進剤とを含む樹脂組成物を用いることによって得られることを、今回見いだした。これらの鉄及びマンガン錯体は、着色の低減、周囲温度及び周囲温度より低温での活性、並びに最新技術のコバルト促進剤と比較して良好なアクリル樹脂の硬化反応性といった驚くべき技術的利点を有するコバルトフリー一次促進剤として、低濃度で機能する。
【0058】
[一次促進剤]
好ましくは、本促進剤は樹脂組成物中に金属を基準として0.00001〜0.02%w/w、より好ましくは金属を基準として0.00005〜0.005%w/wで存在する。
【0059】
一次促進剤の濃度は、一次促進剤の混合物から構成し得る。
【0060】
三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子、例えば四座、五座、又は六座の窒素供与性配位子は、配位する窒素原子を支持するであろう任意の有機構造内に組み込まれていてもよい。例えば、1つには、1,4,7-トリアザシクロノナンなどの基本的な三座配位子を取り、環窒素又は脂肪族基のうちの1つ又は複数に共有結合したさらなる窒素配位基、例えば-CH2-CH2-NH2、-CH2-Pyを有していてよい。
【0061】
好ましくは、鉄イオンはFe(II)及びFe(III)から選択され、マンガンイオンはMn(II)、Mn(III)、及びMn(IV)から選択される。
【0062】
好ましくは、配位子は[MnLCl2]、[FeLCl2]、[FeLCl]Cl、[FeL(H2O)](PF6)2、[FeL]Cl2、[FeLCl]PF6、及び[FeL(H2O)](BF4)2のうち1つ又は複数の形態で存在する。
【0063】
以下は、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄又はマンガン錯体である一次促進剤の好ましい種類である。
【0064】
指定しない限り、任意のアルキル鎖の長さは好ましくはC1〜C8-アルキル鎖であり、好ましくは直鎖である。指定しない限り、アリール基はフェニル基である。
【0065】
[ビスピドン(BISPIDON)]
ビスピドンの種類は、好ましくは鉄族遷移金属触媒の形態である。
【0066】
ビスピドン配位子は好ましくは
【0067】
【化10】

【0068】
の形態であり、
式中、各Rは独立に、水素、F、Cl、Br、ヒドロキシル、C1〜C4-アルキルO-、-NH-CO-H、-NH-CO-C1〜C4-アルキル、-NH2、-NH-C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルから選択され;
R1及びR2は独立に、
C1〜C24-アルキル、
C6〜C10-アリール、及び
遷移金属へ配位できるヘテロ原子を含有する基から選択され;
R3及びR4は独立に、水素、C1〜C8アルキル、C1〜C8-アルキル-O-C1〜C8-アルキル、C1〜C8-アルキル-O-C6〜C10-アリール、C6〜C10-アリール、C1〜C8-ヒドロキシアルキル、及び-(CH2)nC(O)OR5(式中、R5は独立に、水素、C1〜C4-アルキルから選択され、nは0〜4である)、並びにその混合から選択され;
XはC=O、-[C(R6)2]y-(式中yは0〜3であり、各R6は独立に、水素、ヒドロキシル、C1〜C4-アルコキシ、及びC1〜C4-アルキルから選択される)から選択される。
【0069】
好ましくは、R3=R4であり、R3及びR4は、-C(O)-O-CH3、-C(O)-O-CH2CH3、-C(O)-O-CH2C6H5、及びCH2OHから選択される。
【0070】
好ましくは、遷移金属に配位可能なヘテロ原子は、-CO-C4-アルキルで任意選択で置換されていてもよいピリジン-2-イルメチル、例えばヘテロ原子ドナー基は非置換のピリジルである。
【0071】
遷移金属に配位可能な別の好ましいヘテロ原子は、-C2〜C4-アルキル-NR7R8の形態の第3級アミンであり、-C2〜C4-アルキル-NR7R8の-C2〜C4-アルキル-は、1〜4個のC1〜C2-アルキルで置換されているか又はC3〜C6飽和アルキル環の一部を形成してもよく、R7及びR8は独立に、直鎖C1〜C12-アルキル、分岐鎖C1〜C12-アルキル、又は環状C1〜C12-アルキル、-CH2C6H5からなる群から選択され、R7及びR8は共同して以下の群から選択される環を形成してもよい:
【0072】
【化11】

【0073】
以下は、好ましい第3級アミンである: -CH2CH2-NR7R8、-CH2CMe2-NR7R8、-CMe2CH2-NR7R8、-CMeHCH2-NR7R8、-CMeHCMeH-NR7R8、-CH2CMeH-NR7R8、-CH2CH2CH2-NR7R8、-CH2CH2CMe2-NR7R8、-CH2CMe2CH2-NR7R8、
【0074】
【化12】

【0075】
好ましくは、XはC=O又はC(OH)2である。
【0076】
R1及びR2において好ましい基は、CH3、-C2H5、-C3H7、ベンジル、-C4H9、-C6H13、-C8H17、-C12H25、及び-C18H37、及びピリジン-2-イルである。ビスピドンの好ましい種類は、R1又はR2のうち少なくとも1つがピリジン-2-イルメチル又はベンジルであり、好ましくはピリジン-2-イルメチルであるものである。
【0077】
好ましいビスピドンは、ジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-メチル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2py3o-C1)、及びWO02/48301に記載のように調製されたその鉄錯体FeN2py3o-C1である。他の好ましいビスピドンは、メチル基(C1)を3位に有する代わりにより長いアルキル鎖、すなわちイソブチル、(n-ヘキシル)C6、(n-オクチル)C8、(n-ドデシル)C12、(n-テトラデシル)C14、(n-オクタデシル)C18を有し、同様の方法で調製されたものである。
【0078】
好ましい四座配位のビスピドンはWO00/60045において例示されており、好ましい五座配位のビスピドンはWO02/48301及びWO03/104379に例示されている。
【0079】
[N4py型]
N4pyは、好ましくは鉄族遷移金属触媒の形態である。
【0080】
N4py型配位子は好ましくは
【0081】
【化13】

【0082】
の形態であり、式中、
各R1、R2は独立に-R4-R5を表し、
R3は水素、任意選択で置換されていてもよいアルキル、アリール、又はアリールアルキル、又は-R4-R5を表し、
各R4は独立に、単結合、又は任意選択で置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン、オキシアルキレン、アミノアルキレン、アルキレンエーテル、カルボン酸エステル、又はカルボン酸アミドを表し、
各R5は独立に、任意選択でN-置換されたアミノアルキル基、又はピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択される任意選択で置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0083】
好ましくは、R1がピリジン-2-イルを表すか、又はR2がピリジン-2-イル-メチルを表す。
【0084】
好ましくは、R2又はR1は2-アミノ-エチル、2-(N-(メ)エチル)アミノ-エチル、又は2-(N,N-ジ(メ)エチル)アミノ-エチルを表す。置換される場合、R5は好ましくは3-メチルピリジン-2-イルを表す。R3は好ましくは水素、ベンジル、又はメチルを表す。
【0085】
好ましい配位子は、W095/34628において開示されているN4Py(すなわちN,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル)-ビス(ピリジン-2-イル)メチルアミン)、及びEP0909809において開示されているMeN4py(すなわち、N,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル-1,1-ビス(ピリジン-2-イル)-1-アミノエタン)である。
【0086】
[TACN-Nx]
TACN-Nxは、好ましくは鉄族遷移金属触媒の形態である。
【0087】
配位子は、基本的な1,4,7-トリアザシクロノナン構造を有するが、遷移金属と錯形成して四座配位、五座配位、又は六座配位の配位子を実現する1つ又は複数の窒素側基を有する。好ましくは、基本的な1,4,7-トリアザシクロノナン構造は、遷移金属と錯形成する2つの窒素側基を有する(TACN-N2)。
【0088】
TACN-Nxは、好ましくは
【0089】
【化14】

【0090】
の形態であり、式中、各R20は、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボン酸エステル、スルホナート、アミン、アルキルアミン、及びN+(R21)3[式中、R21は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、オキシアルキル、オキシアルケニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アルキルエーテル、アルケニルエーテル、及び-CY2-R22(式中、Yは独立に、H、CH3、C2H5、C3H7から選択され、R22は独立に、任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基から選択される)から選択される]から選択される置換基で任意選択で置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、及びアリールアルキル基から選択され;R20のうち少なくとも1つは-CY2-R22である。
【0091】
好ましくは、R22は、任意選択で置換されていてもよいピリジン-2-イル、イミダゾール-4-イル、ピラゾール-1-イル、キノリン-2-イル基から選択される。最も好ましくは、R22はピリジン-2-イル又はキノリン-2-イルのいずれかである。
【0092】
[Me3-TAC及び関連化合物]
この方法のための別の遷移金属触媒は、EP0458397 A及びWO06/125517に記載されており、これらの特許文献はいずれも、1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(Me3-TACN)、及び金属錯体(例えばマンガン錯体)状の関連化合物の使用を開示している。Me3-TACNのPF6配位子は、洗濯洗剤粉末及び食器洗浄機用錠剤において商品化されている。あるいは、マンガン錯体は、それらを高水溶性にするための塩化物、酢酸、硫酸、及び硝酸などの対イオンを含有していてもよい。
【0093】
触媒は、最も好ましくはMn II〜Vの単核又は二核錯体の遷移金属触媒であり、式(VII)の遷移金属触媒の配位子は:
【0094】
【化15】

【0095】
であり、式中、Qは、
【0096】
【化16】

【0097】
であり;
pは3であり;
各Rは独立に、水素、C1〜C6-アルキル、CH2CH2OH、CH2COOH、及びピリジン-2-イルメチルから選択されるか、又は1つのRが式(VII)の2つめの配位子のQにおける>NRの窒素原子へのエチレン架橋であり;
R1、R2、R3、及びR4は独立に、H、C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルヒドロキシから選択される。
【0098】
Rは好ましくは独立に、水素、CH3、C2H5、CH2CH2OH、及びCH2COOHから選択される。R、R1、R2、R3、及びR4は好ましくは独立に、H及びMeから選択される。
【0099】
1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(Me3-TACN)及び1,2-ビス-(4,7-ジメチル-1,4,7,-トリアザシクロノン-1-イル)-エタン(Me4-DTNE)が最も好ましい。
【0100】
[シクラム(CYCLAM)及び架橋配位子]
シクラム及び架橋配位子は好ましくはマンガン遷移金属触媒の形態である。
【0101】
シクラム配位子は、好ましくは
【0102】
【化17】

【0103】
の形態であり、式中、Qは独立に
【0104】
【化18】

【0105】
から選択され、
pは4であり;
Rは独立に、水素、C1〜C6-アルキル、CH2CH2OH、ピリジン-2-イルメチル、及びCH2COOHから選択されるか、又はRのうち1つがエチレン架橋を介して別のQのNへ連結しており;
R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は独立に、H、C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルヒドロキシから選択される。
【0106】
好ましい非架橋配位子は、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(cyclam)、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(Me4cyclam)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(cyclen)、1,4,7,10-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Me4cyclen)、及び1,4,7,10-テトラキス(ピリジン-2イルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Py4cyclen)である。Py4cyclenについては、鉄錯体が好ましい。
【0107】
好ましい架橋配位子は、
【0108】
【化19】

【0109】
の形態であり、式中「、R1」は独立に、H、及び直鎖又は分岐鎖、置換又は非置換のC1〜C20アルキル、アルキルアリール、アルケニル、又はアルキニルから選択され、大多環状の環におけるすべての窒素原子は遷移金属に配位している。
【0110】
好ましくは、R1=Meであり、これは配位子5,12-ジメチル-1,5,8,12-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカンであり、その錯体[Mn(Bcyclam)Cl2]は、WO98/39098に従って合成できる。
【0111】
他の適切な架橋配位子もWO98/39098において見られる。
【0112】
[トリスピセン(TRISPICEN)型]
トリスピセンは、好ましくは鉄族遷移金属触媒の形態である。
【0113】
トリスピセン型配位子は、好ましくは
R17R17N-X-NR17R17 (VI)
の形態であり、式中、
Xは-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2C(OH)HCH2-から選択され;
R17は独立に、R17、並びにヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボン酸エステル、スルホナート、アミン、アルキルアミン、及びN+(R19)3[式中、R19は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、オキシアルキル、オキシアルケニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アルキルエーテル、アルケニルエーテル、及び-CY2-R18(式中、Yは独立に、H、CH3、C2H5、C3H7から選択され、R18は独立に、任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基から選択される)から選択される]から選択される置換基で任意選択で置換されていてもよい、R17及びアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、及びアリールアルキル基から選択される基を表し;R17のうち少なくとも2つは-CY2-R18である。
【0114】
ヘテロ原子ドナー基は好ましくは、-CO-C4-アルキルによって任意選択で置換されていてもよいピリジニルである。
【0115】
他の好ましいヘテロ原子ドナー基は、イミダゾール-2-イル、1-メチル-イミダゾール-2-イル、4-メチル-イミダゾール-2-イル、イミダゾール-4-イル、2-メチル-イミダゾール-4-イル、1-メチル-イミダゾール-4-イル、ベンゾイミダゾール-2-イル、及び1-メチル-ベンゾイミダゾール-2-イルである。
【0116】
好ましくは、R17のうち3つはCY2-R18である。
【0117】
配位子Tpen(すなわちN,N,N',N'-テトラ(ピリジン-2-イル-メチル)エチレンジアミン)がW097/48787において開示されている。
【0118】
以下は、好ましいトリスピセンである:N-メチル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクチル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクタデシル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ブチル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクチル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ドデシル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクタデシル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N'-ジメチル-N,N'-ビス(イミダゾール-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N',N'-トリス(1-メチル-イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N-ジエチル-N',N'',N''-トリス(5-メチル-イミダゾール-4イルメチル)-ジエチレントリアミン;N-(3-プロパン-1-オール)-N,N',N'-トリス(1-メチル-イミダゾール-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-ヘキシル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(ベンゾイミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;及び、N-(3-プロパン-1-オール)メチル-N,N',N'-トリス(ベンゾイミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン。
【0119】
他の適切なトリスピセンは、WO02/077145において見いだされる。
【0120】
非ビスピドン型一次促進剤のうち、以下のものが最も好ましい:5,12-ジメチル-1,5,8,12-テトラアザ-ビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、5,12-ジベンジル-1,5,8,12-テトラアザ-ビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1,4,7,10-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、及び1,4,7,10-テトラキス(ピリジン-2イルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、N,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル)-ビス(ピリジン-2-イル)メチルアミン、N,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル-1,1-ビス(ピリジン-2-イル)-1-アミノエタン、N,N,N',N'-テトラ(ピリジン-2-イル-メチル)エチレンジアミン、N-メチル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ブチル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクチル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ドデシル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクタデシル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N'-ジメチル-N,N'-ビス(イミダゾール-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N',N'-トリス(1-メチル-イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N-ジエチル-N',N'',N''-トリス(5-メチル-イミダゾール-4イルメチル)-ジエチレントリアミン;N-(3-プロパン-1-オール)-N,N',N'-トリス(1-メチル-イミダゾール-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-ヘキシル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(ベンゾイミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;及び、N-(3-プロパン-1-オール)メチル-N,N',N'-トリス(ベンゾイミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;1,4-ビス(キノリン-2-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(キノリン-2-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(キノリン-2-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピリジル-2-メチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピリジル-2-メチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピリジル-2-メチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピラゾール-1-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピラゾール-1-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピラゾール-1-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン、3,5-ジメチルピラゾール-1-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;3,5-ジメチルピラゾール-1-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;3,5-ジメチルピラゾール-1-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(1-メチルイミダゾール-2-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(1-メチルイミダゾール-2-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(1-メチルイミダゾール-2-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;及び1,4,7-トリス(キノリン-2-イルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4,7-トリス(ピリジン-2-イルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン、1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(Me3-TACN)、1,2-ビス-(4,7-ジメチル-1,4,7-トリアザシクロノナ-1-イル)-エタン(Me4-DTNE)。
【0121】
一次促進剤は、最も好ましくは溶液の形態で存在し、溶媒は好ましくは極性溶媒である。極性溶媒の好ましい例は、プロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルである。好ましくは、一次促進剤は、極性溶媒中に金属を基準として1〜0.01質量%、より好ましくは1〜0.1質量%の範囲で存在する。
【0122】
[共促進剤(CO-ACCELERATOR)(二次促進剤(SECONDARY ACCELERATOR))]
硬化性液体媒体は、共促進剤(二次促進剤)を含有していてもよい。
共促進剤の例は、以下である:
【0123】
(1)金属系:典型的には、コバルト(Coを使用する場合は低濃度が好ましい)、マンガン、銅、鉄、亜鉛、バナジウム、ニッケル、スズ、マグネシウム、チタン、カリウム、リチウム、及びその他を含有する、金属炭酸塩、アセチルアセトナート、ジシクロペンタジエン、錯体、及びその誘導体が挙げられる。
【0124】
(2)アミン:典型的には、アニリン、様々なアミド、芳香族及び脂肪族アミンの誘導体;例えばジメチルアニリン、ジエチルアニリン、2-アミノピリジン、フェニルジエタノールアミン、ジメチル-p-トルイジン、ジメチルアセトアセトアミド、アセトアセトアニリド、ジピリジル、N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-p-トルイジンなどの窒素含有化合物が挙げられる。
【0125】
(3)酸素含有化合物:典型的には、金属塩と錯体を形成できるアルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、又はアルコール基を有する、酸素化有機化合物が挙げられる。特に、ケト及びアルドエステル及びエーテル又はアルコール、1,3-ジケトン及びアルデヒド、1,2-ジケトン、及び特定のポリアルコール、及び他のアルコール、例えばエチルアセチルアセトナート、ケトグルタル酸のモノ及びジエステル、ピルビン酸のエステル、グルコース、フルクトース、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ジエチルマロナート、ジアセチル、グリオキサル、ジエチレングリコール、ベンジルグリコール、アスコルビン酸パルミチン酸エステル(ascorbic palmitate)など。
【0126】
(4)チオール化合物:チオール化合物としては、メルカプタン、より好ましくは少なくとも2つのチオール基を含有する物質、及び無水物又はエポキシドとのそれらの付加物が挙げられ、それらのすべては金属塩との錯体を形成できる。例えば、n-ドデシルメルカプタン、テトラドデシルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジメルカプタン、エチレン-1,2-ビス-3-メルカプタート、1,2,6-ヘキサントリチオール、テトラメルカプトアセタート、ポリアルコールのチオエステルなど。
【0127】
(5)第4級塩:金属塩との錯体を形成できるもの;例えば、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリス-(p-クロロフェニル)-ベンジルホスホニウムクロリド、テトラキスメチロールホスホニウムクロリド、酢酸アンモニウム、オクチル酸アンモニウムなど。
【0128】
(6)リン含有化合物:アルキル酸ホスフィット、アルキル酸ホスファート、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、トリアルキルホスファート、及びトリアリールホスファートを含む、金属化合物と錯体を形成できるもの;例えば、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフィット、ジブチルホスファート、ベンゼンホスフィン酸、ジヘキシルホスフィットなど。
【0129】
(7)ルイス酸:例えば、フッ化ホウ素二水和物、塩化第2鉄、過塩素酸など。
【0130】
(8)塩基:例えば、テトラエタノールアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど。
【0131】
(9)その他:上記のカテゴリーには分類されないが、特定のペルオキシ触媒に対して何らかの促進的効果を有することが分かっているもの;例えば、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、クロロトリフェニルメタン、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸など。
【0132】
[過酸化物]
本発明による樹脂組成物は、過酸化物化合物によって硬化可能である。開始反応に用いるこの化合物は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、又はアクリル樹脂の硬化において使用するための当業者に既知の任意の過酸化物であってよい。そのような過酸化物としては、固体又は液体の有機及び無機過酸化物が挙げられ、過酸化水素も適用できる。適切な過酸化物の例は、例えば-OCOO-(ペルオキシカルボナート)、-C(O)OO-(ペルオキシエステル)、-C(O)OOC(O)-(ジアルキルペルオキシド)、-OO-(ジアルキルペルオキシド)などである。これらの過酸化物は、オリゴマー又はポリマーであってもよい。適切な過酸化物化合物の詳細なリストは、とりわけUS/2002/00912412A、段落[0018]において見いだすことができる。
【0133】
好ましくは、過酸化物は有機過酸化物の群から選択される。適切な過酸化物の例は、3級アルキルヒドロペルオキシド(t-ブチル-ヒドロペルオキシドなど)、他のヒドロペルオキシド(クミルヒドロペルオキシドなど)、ケトン過酸化物(アセチルアセトン過酸化物又はメチルエチルケトン過酸化物のような、ケトンを過酸化水素と混合させることによって生成されるものなど)、ペルオキシエステル、又は過酸(t-ブチルペルエステル、過酸化ベンゾイル、ペルアセタート、ペルベンゾアート、ラウリルペルオキシド、ペルオキシジエチルエーテルなどである。多くの場合、硬化剤として使用される有機過酸化物は、3級ペルエステル又は3級ヒドロペルオキシドであり、すなわち3級炭素を有するペルオキシ部分が直接OO-アシル又はOOH基に結合している。様々なペルオキシ化合物の混合物も適用できる。
【0134】
液体ペルオキシエステル、液体ヒドロペルオキシド、又はヒドロペルオキシドの液体混合物の使用が好ましい。液体過酸化物の扱いは一般により容易であり、混合がより容易であり、硬化させる樹脂への溶解の速度がより速い。液体ケトン過酸化物、具体的にはメチルエチルケトン過酸化物(MEKP)の使用が最も好ましい。
【0135】
本発明の好ましい実施形態において、本発明による樹脂組成物は好ましくは少なくとも5重量%の量で1種又は複数種の反応性希釈剤も含有する。そのような反応性希釈剤は、特に真空注入、噴霧などのような方法での使用における取り扱い特性を改善するために、樹脂の粘度を低下させるのに特に適切である。しかし、本発明による樹脂組成物中のこのような反応性希釈剤の量は重要ではない。好ましくは、反応性希釈剤はメタクリラート及び/又はスチレンである。
【0136】
さらに好ましい実施形態において、樹脂組成物は、好ましくはフェノール系化合物、ガルビノキシルのような安定ラジカル、N-オキシ系化合物、カテコール、及び/又はフェノチアジンの群から選択される1種又は複数種のラジカル阻害剤も含有する。使用されるラジカル阻害剤の量は、達成する必要があるゲル化時間に応じて異なり得る。好ましくは、フェノール系阻害剤は、樹脂組成物の一次樹脂系の総重量に対して算出される0.0001〜10重量%の範囲で添加される。より好ましくは、樹脂組成物中のラジカル阻害剤の量は0.001〜1重量%の範囲である。
【0137】
使用できるラジカル阻害剤の適切な例は、2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジブチルフェノール、2,4,6-トリメチル-フェノール、2,4,6-トリメチル-フェノール、2,4,6-トリス-ジメチルアミノメチル-フェノール、4,4'-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-メチレン-ジ-p-クレゾール、ヒドロキノン、2-メチル-ヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-ヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノン、2,3,5-トリメチルヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコール、4,6-ジ-t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、ナフタキノン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TEMPO)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOL)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TEMPON)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4カルボキシル-ピペリジン(4-カルボキシ-TEMPO)、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシピロリジン、アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジン、及び/又はこれらラジカル阻害剤のうち任意のものの誘導体若しくは組み合わせである。
【0138】
本発明による不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びアクリル樹脂組成物は、そのようなタイプの樹脂において有用であるようなあらゆる用途に適用できる。特にそれらは密閉型の用途で適切に使用することができるが、それらは開放型の用途においても使用することができる。密閉型の用途に関しては、密閉型製品の製造業者が、本発明による樹脂の有利な特性を容易に用いることができることが特に重要である。本発明による不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はアクリル樹脂組成物を適用できる末端区分としては、海洋用途、化学的アンカリング(chemical anchoring)、建築、裏装、屋根ふき、床張り、風車の羽根、コンテナ、タンク、配管、自動車部品、腐食、電気製品、輸送などが挙げられる。つまり、本発明による樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びアクリル樹脂のあらゆる既知の用途において使用することができる。
【0139】
本発明はさらに、過酸化物を樹脂組成物に加え、コバルトを含まない硬化に作用することによって、本発明による樹脂組成物をラジカル硬化させる方法にも関する。三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子、例えば四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄又はマンガン錯体が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びアクリル樹脂のラジカル硬化を促進することが分かっている。好ましくは、硬化は-20〜+200℃、好ましくは-20〜+100℃の範囲、最も好ましくは-10〜+60℃の範囲(いわゆる低温硬化)の温度で行われる。
【0140】
本発明は、第1の成分及び第2の成分を含む2成分組成物にも関し、第1の成分は本発明による不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はアクリル樹脂組成物であり、第2の成分は過酸化物化合物を含む。本明細書で使用する用語「2成分系」とは、2つの成分(A及びB)が、例えば別々のカートリッジ又は同様のもので互いに物理的に分離されている系を指し、そのような2つの分離した成分(A及びB)の各々がさらなる分離した成分を含有してもよい任意の系を含むことを意図する。成分は、系を使用する時点で合わされる。
【0141】
本発明は、第1の成分、第2の成分、及び第3の成分を含む3成分組成物にも関し、第1の成分は前述の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はアクリル樹脂を含み、第2の成分は本発明による三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の、例えば四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄又はマンガン錯体促進剤の1つ又は組み合わせであり、第3の成分は過酸化物化合物を含む。本明細書で使用する用語「3成分系」とは、3つの成分(A、B、及びC)が例えば別々のカートリッジ又は同様のもので互いに物理的に分離されている系を指し、そのような3つの分離した成分(A、B、及びC)の各々がさらなる分離した成分を含有してもよい任意の系を含むことを意図する。成分は系を使用する時点で合わされる。
【0142】
本発明はさらに、本発明に従って不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はアクリル樹脂を硬化させたときに得られる、あらゆる硬化ゲルコート及び成形複合材料にも関する。ゲルコートが着色した又は非着色のゲルコート、並びに好ましくは海洋、衛生、又は自動車用途におけるインモールドコーティングを含む場合、それらは膜厚が最大で0.75mmであり、適切な耐候性、加水分解安定性、及び機械的特性を有する。成形複合材料が少なくとも0.5mmの厚みを有し、好ましくは強化複合材料製品のような適切な機械的特性を有すると考えられる場合、化学的アンカリング、建築、屋根ふき、床張り、海洋用途、風車の羽根、コンテナ、タンク、配管、船、腐食、電気製品、輸送、航空宇宙などの分野で使用される。
【0143】
[実験]
以下に記載のすべての実験は、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂を代表すると考えることができる市販の促進樹脂のベース樹脂を用いて行った。これらのベース樹脂は、ポリマー、反応性希釈剤、及び保存安定性のための約100ppmの阻害剤(複数可)のみを含有する。アクリルモノマー及び修飾アクリル樹脂を含むアクリルベース樹脂も含まれる。以下の表に、ベース樹脂の名称、一般的な樹脂タイプ、反応性希釈剤、反応性希釈剤の濃度、製造業者、及び典型的な最終用途を記載する。
【0144】
【表1】

【0145】
実験で使用する鉄及びマンガン錯体は、以下に示すように得た。
【0146】
ジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-メチル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2py3o-C1)及びその鉄(II)錯体[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clは、WO0248301に記載のように調製した。
【0147】
ジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-オクチル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2py3o-C8)、ジメチル2,4-di-(2-ピリジル)-3-ドデシル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2py3o-C2)、及びジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-オクタデシル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2py3o-C18)、及び対応する鉄錯体、[Fe(N2py3o-C8)Cl]Cl、[Fe(N2py3o-C12)Cl]Cl、及び[Fe(N2py3o-C18)Cl]Clは、WO 2005042532に記載のように調製した。
【0148】
ジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-メチル-7-(N,N-ジメチル-アミノ-エチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2Py2EtNMe2)、及びその対応する鉄錯体(FeCl(N2Py2C2H4NMe2)]Cl)は、WO03/104379に記載され開示されるように調製した。
【0149】
N,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル-1,1-ビス(ピリジン-2-イル)-1-アミノエタン(以下、MeN4Pyと呼ぶ)、及び対応する鉄(II)錯体[Fe(MeN4py)Cl]Cは、をEP0909809に記載のように調製した。
【0150】
4,11-ジメチル-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(以下、Bcyclamと呼ぶ)、及び対応するマンガン(II)錯体[Mn(Bcyclam)Cl2]は、WO98/39098及びJ. Am. Chem. Soc、122、2512(2000)に記載のように調製した。
【0151】
N-メチル-トリスピセン(Meトリスピセン)を文献の手順(Bernal, J.ら、J. Chem. Soc、Dalton Trans. 1995、3667)及びGB2386615に従って合成した。対応する鉄(II)錯体[Fe(Metrispicen)Cl]PF6は、MeN4py類似物に関してEP0909809に記載される手順と同様に調製した。
【0152】
1,4-ビス(キノリン-2-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(Quin2TACN)、及び対応する[Fe(Quin2TACN)Cl]ClO4化合物は、EP1259522に開示されるように調製した。
【0153】
[Mn2O3(Me3tacn)2](PF6)2は、他に記載されたように調製した(J.H. Koekら、J. Chem. Soc、Dalton Trans、353、1996)。
【0154】
すべての鉄/マンガン錯体促進剤は、樹脂中に混ぜ込むために最初にジエチレングリコール(DEG)又はプロピレングリコール(PG)によって0.5〜4パーセントに希釈した。
【0155】
比較用の参照コバルト促進剤として使用するコバルト2-エチルヘキサノアートは、市販品であり、OMGより入手した;12% Cobalt Hex-Cem(コード115086)。
【0156】
実験で使用する過酸化物開始剤、DMA、及びAAは、Sigma-Aldrichより入手した:TXIB(別名、メチルエチルケトン過酸化物(MEKP))中35質量%の2-ブタノンペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド、88%;トリクレジルホスファート中に混合された約50質量%の過酸化ベンゾイル(BPO);アセチルアセトン(別名、2,4-ペンタンジオン)≧99%;及びΝ,Ν-ジメチルアニリン(DMA)。
【0157】
すべての実施例において、促進剤の濃度は百万分率(ppm)wt/wtで示し、促進剤の重量はDMA及びアセチルアセトン(AA)を除いて「金属を基準」とする。開始剤の濃度は、溶液又はペースト重量全体を基準としてパーセントで示す。すべての実験を通して、直径10mmのステンレス鋼プランジャーを備えた24mLのガラス瓶中に15グラムの試料質量を入れたTechne Gel Time Recorderを用いて、ゲル化時間を測定した。同じ試料に挿入した熱電対及びデータロガーを用いて、ピーク発熱時間及びピーク発熱温度を測定した。開始剤の混合及び最初の実験セットアップを考慮するために、オフセット時間をゲル化時間及びピーク発熱時間に加えた。すべての装置及び試料は、別段の指定がない限り、25℃及び湿度50%に設定された定常状態のチャンバーに置いた。
【実施例1】
【0158】
[Mn/Fe錯体のすべての種類の反応性]
X4545-50 DCPDベース樹脂の試料を、(金属を基準として)20ppmの促進剤によって反応促進させ、次いで1.5%メチルエチルケトン過酸化物(MEKP)によってを反応開始させた。試験した促進剤は、特許請求の範囲に記載の化合物の6つの種類すべてを代表する。合計質量15.0グラムを用いて樹脂のゲル化時間を測定した。促進剤を用いない非促進樹脂対照も対照として加えた。ゲル化時間の結果を、下記のTable 1(表2)に示す。
【0159】
【表2】

【0160】
Table 1(表2)の結果は、記載した四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄又はマンガン錯体の6つの種類すべてが、MEKPについての一次促進剤として作用することを示している。すべての促進剤が、標準的な不飽和ポリエステル樹脂(特に15グラム質量で)のゲル化時間において良好な硬化特性を示した。一般に、ビスピドン型触媒は、この実施例で使用した樹脂/開始剤系をベースとする群の中で最も活性の高い促進剤である。促進剤を用いない樹脂対照は、ゲル化又は硬化しなかった。非促進対照を除いて、すべての試料が固体物質にまで硬化した。
【実施例2】
【0161】
[低濃度での反応性]
T707-70 Iso/NPGベース樹脂及び440325-00 Orthoベース樹脂を、0.5ppmのFe([Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)促進剤によって反応を促進させ、次いで1.5%のMEKPによって反応を開始させた。実施例1と同様に15グラム質量を用いて、促進樹脂のゲル化時間を測定した。結果を下記のTable 2(表3)に示す。
【0162】
【表3】

【0163】
Table 2(表3)の結果は、MEKPによって反応開始される典型的な不飽和ポリエステル樹脂系において、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl促進剤が0.5ppm Feの低濃度で良好な硬化特性をもたらすことを示す。両方の試料が固体物質まで硬化した。
【実施例3】
【0164】
[ゲル化/硬化時間の制御、コバルトに対する相対的反応性、コバルトと比較した低濃度]
6000-T25ビニルエステルベース樹脂の試料を、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clを様々な鉄促進剤濃度で用いて反応促進させた。別の一連の実験において、6000-T25ビニルエステル樹脂を、12% Cobalt Hex-Cemを比較参照のために様々なコバルト濃度で用いて反応促進させた。すべての促進樹脂試料を1.5%のMEKPによって反応開始させ、ゲル化時間、ピーク発熱時間、及びピーク発熱温度を測定した。結果をTable 3(表4)(下記)に示す:
【0165】
【表4】

【0166】
Table 3(表4)における[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clの結果は、促進剤濃度を変化させることによってゲル化/硬化反応を制御できることを示す。ゲル化/ピーク発熱データは、1.5%のMEKPを用いるビニルエステル樹脂の促進が不十分な濃度から促進が過剰な濃度までの全体の促進剤濃度範囲を表す。ゲル化時間及びピーク発熱温度に基づき、約2ppm Feの[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clの濃度で系が最適化される。
【0167】
Table 3(表4)の12% Cobalt Hex-Cemの結果は、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl促進剤の比較のための比較基準として役立つ。一般に、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl促進剤は、金属濃度基準で12% Cobalt Hex-Cemよりもはるかに反応性が高い。1.7ppm Feの[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl及び256ppm Coの(12% Cobalt Hex-Cem)は、それぞれ127℃及び123℃という同程度のピーク発熱温度をもたらす。(金属を基準として)12%のCobalt Hex-Cemと比較して、はるかに低い濃度の[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clが、常により速いゲル化時間及びピーク発熱時間をもたらす。10ppmのコバルトで反応促進させた試料を除いて、両方のデータの組におけるすべての試料が固体物質まで硬化した。
【実施例4】
【0168】
[アクリラート希釈剤を含むアクリル樹脂]
91690-00アクリルベース樹脂の試料を、0.5ppm Fe及び20ppm Feの[Fe(N2py2-C2H4NMe2)Cl]Cl、0.5ppm Fe及び20ppm Feの[Fe(N2py2-C2H4NMe2)Cl]Cl、250 ppm Coの(12% Cobat Hex-Cem)、並びに5000ppmのN,N-ジメチルアニリン(DMA)によって反応促進させた。2.0%のBPOによって反応開始させたDMA促進試料を除いて、すべての試料を1.5%のMEKPで反応開始させた。コバルト促進試料及びDMA促進試料は比較参照のために加えた。すべての反応開始試料についてゲル化時間及びピーク発熱温度を測定した。結果をTable 4(表5)(下記)にまとめる:
【0169】
【表5】

【0170】
Table 4(表5)の結果は、[Fe(N2py2-C2H4NMe2)Cl]Cl及び[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl促進剤が、MEKP開始剤と共に使用した場合にアクリラート反応性希釈剤を含むアクリル樹脂において反応性であることを示す。ピーク発熱温度に基づけば、[Fe(N2py2-C2H4NMe2)Cl]Clは[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clよりも反応性が高かった。開始剤の混合前にゲル化した20ppmのFeを含む処方物は両方とも反応が完了した。比較として、250pppmのCoによって反応促進され1.5%のMEKPによって反応開始された試料はゲル化又は硬化しなかった。[Fe(N2py2-C2H4NMe2)Cl]Cl/MEKP及び[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl/MEKPの両方の系は、アクリル樹脂における典型的なDMA/BPO系よりも反応性が高い可能性を示した。250ppmのCoによって反応促進された試料を除いて、すべての試料は固体物質まで硬化した。
【実施例5】
【0171】
[低温]
この実施例の実験において、環境チャンバーを25℃、10℃、及び0℃の試験温度に設定した。
【0172】
X4545-50 DCPDベース樹脂の3つの試料を20ppm Feの[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clによって反応促進させた。試験温度10℃の試料は、-10℃で放置した後で、1.5% MEKPによって開始させ、環境チャンバー内に配置した。試験温度0℃の試料は、-30℃で放置した後で、1.5% MEKPによって開始させ、環境チャンバー内に配置した。これらの低い静置温度により、開始剤の添加及び混合後に樹脂温度が試験温度に厳密に一致させることが可能になった。比較参照として、X4545-50 DCPDベース樹脂の3つの試料を100ppm Coの(12% Cobalt Hex-Cem)によって反応促進させた。試験手順は、1.5%のMEKP開始剤を用いる前述の試料と同じであった。15グラム質量を使用してゲル化時間、ピーク発熱時間、及びピーク発熱温度を測定した。結果をTable 5(表6)に示す(下記):
【0173】
【表6】

【0174】
全般的に、Table 5(表6)の結果は、試験温度との強い相関性を示している;ゲル化時間及びピーク発熱時間は温度に反比例し、ピーク発熱温度及び温度差は温度に正比例している。25℃では、両方の試料は良好なゲル化/硬化特性を示し、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl促進試料はより短いゲル化及びピーク発熱時間を示したが、コバルト促進試料はわずかに高い発熱温度を示した。周囲温度より低温では、20ppm Feの([Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)によって反応促進された試料は100ppm Coの(12% Cobalt Hex-Cem)によって反応促進された試料と比較してはるかに良好なゲル化/硬化特性を示した。0℃では、100ppm Coの(12% Cobalt Hex-Cem)による試料の293.7分と比較して、20ppm Feの([Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)による促進試料のゲル化時間は、36.3分であった。すべての試料は固体物質まで硬化した。
【実施例6】
【0175】
[使用及び着色の低減]
すべての不飽和ポリエステルベース樹脂及びビニルエステルベース樹脂の試料を、20ppm Feの([Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)によって反応促進させ、次いで1.5%のMEKPによって反応開始させた。15グラム質量を用いて25℃にて、促進樹脂のゲル化時間、ピーク発熱時間、及びピーク発熱温度を測定した。各促進樹脂について別々のパック(puck)を注型して、CIE L*a*b*カラースケールのL*軸(黒から白)に基づいて硬化樹脂の相対的な色の濃さを測定した。比較参照のため、同じベース樹脂を250ppm Coの(12% Cobalt Hex-Cem)によって反応促進させ、1.5%のMEKPによって反応開始させ、最初の試料セットと同じ手順を用いて試験した。結果をTable 6(表7)に示す:
【0176】
【表7】

【0177】
Table 6(表7)におけるゲル化時間、ピーク発熱時間、及びピーク発熱温度の結果の比較は、広い範囲の不飽和ポリエステル及びビニルエステル樹脂に対し、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl促進剤によって、典型的なコバルト促進剤と比較して非常に類似する性能を得ることができることを示している。これらの結果は、コバルト促進剤と比較して同等の性能を得るために、金属基準ではるかに低濃度の[Fe(N2py3o-C1)Cl]Clが必要とされることも裏付けている。より低い[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl促進剤濃度は、硬化した部材において着色の低減というさらなる技術的利点をもたらす。Table 6(表7)におけるL*色値の比較は、20ppm Feの([Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)によって反応促進された樹脂の注型品が、250 ppm Coの(12% Cobalt Hex-Cem)によって反応促進された同じ樹脂よりもはるかに色が薄いことを示している。すべての試料及び注型品は固体物質まで硬化した。
【実施例7】
【0178】
[他の鉄共促進剤と比較した一次促進剤の重要性の裏付け]
20ppmの鉄促進剤(金属を基準とする)で反応促進させたX4545-50 DCPDベース樹脂を用いたゲル化時間試験を、1.5% MEKPによって開始させた。同じ促進樹脂試料を、Sigma Aldrichより購入したCHP(クメンヒドロペルオキシド)で反応開始させる第2の実験の組において使用した。鉄促進剤のタイプ及び製造業者を下記のtable 7a(表8)に挙げる。
【0179】
【表8】

【0180】
ゲル化時間、ピーク発熱時間、及びピーク発熱温度の結果を下記のTable 7b及び7c(表9及び10)に示す:
【0181】
【表9】

【0182】
【表10】

【0183】
Table 7a及び7c(表9及び10)の結果は、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl及び[Fe(N2py2-C2H4NMe2)Cl]Cl鉄錯体のみが一次促進剤として作用すること、並びに固体物質までゲル化及び硬化したのはこれら2つの試料のみであったことを示す。
【実施例8】
【0184】
[使用法;共促進剤によるプロセス制御]
X4545-50 DCPDベース樹脂の試料をTable 8(表11)(下記)に示す促進剤(複数可)で反応促進させ、次いで1.5%のメチルエチルケトン過酸化物(MEKP)によって反応開始させた。この実施例における実験の多くは、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl及び共促進剤(具体的には低濃度のコバルト)の混合物を含有する。1つの実験では、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl、12% Cobalt Hex-Cem、ジメチルアニリン(DMA)、及びアセチルアセトン(AA)の混合物を使用する。12% Cobalt Hex-Cem (100ppm及び10ppmのCo)のみで反応促進させる参照実験、並びに[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl(20ppm及び0.6ppmのFe)のみで反応促進させる第2の参照の組も加えた。ゲル化時間及びピーク発熱時間の結果を下記のTable 8(表11)に示す:
【0185】
【表11】

【0186】
Table 8(表11)の結果は、[Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl及び共促進剤の混合物を用いることによって、非常に類似したゲル化時間及びピーク発熱時間のプロセス条件を得ることができることを示す。50ppmのコバルト(12% Cobalt Hex-Cem)及び0.5ppmの鉄(Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)によって反応促進させる実験は、100ppmのコバルトによって反応促進させる参照実験における29分のゲル化時間及び47分のピーク発熱時間と比較して、32分のゲル化時間及び50分のピーク発熱時間を示した。100ppmのコバルト及び20ppmの鉄(Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)によって反応促進させる別の実験では、7.8分のゲル化時間が得られ、これは20ppm鉄の(Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)のみによって反応促進される実験のゲル化時間に非常に類似していた。しかし、これらの参照実験の両方で、100ppmのコバルトにより反応促進される参照基準の29分よりもはるかに速いゲル化時間が得られた。5ppmのコバルトと10ppm鉄の(Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)の促進剤の組み合わせは、ゲル化時間及びピーク発熱時間をそれぞれ14分及び28分まで長くした。促進剤のパッケージをさらに5ppmのコバルト及び2ppm鉄の(Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)まで減らすと、それぞれ57分及び76分のゲル化時間及びピーク発熱時間が得られ、これは100ppmコバルトによって反応促進される基準と比較して長かった。Table 8(表11)の最後の実験は、100ppmのコバルトによる促進実験に匹敵するゲル化時間及びピーク発熱時間を得るための、共促進剤の組み合わせの使用を示す。最後の実施例において、DCPDベース樹脂を、50ppm DMA及び50ppm AAと組み合わせた5ppmのコバルト及び2ppm鉄の([Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)の低濃度で反応促進させて28.4分のゲル化時間及び45.4のピーク発熱時間が得られ、これは100ppmのコバルトにより反応促進された基準の実験の28.5分のゲル化時間及び47.2分のピーク発熱時間と非常に類似している。10ppmのコバルトのみ、及び0.6ppm鉄の(Fe(N2py3o-C1)Cl]Cl)のみで反応促進させた参照実験も加え、それぞれ314分及び627分のゲル化時間を示した。これらの参照実験は先に示した共促進剤の組み合わせの相乗効果も実証している。すべての試料は固体物質まで硬化した。
【実施例9】
【0187】
[[Mn2O3(Me3tacn)2](PF6)2の反応性]
X4545-50 DCPDベース樹脂の試料を(金属を基準として)80ppmの促進剤によって反応促進させ、次いで1.5%のメチルエチルケトン過酸化物(MEKP)によって反応開始させた。[Mn2O3(Me3tacn)2](PF6)2を水(1.27%w/w)に溶解させ、これを基材に加えた。合計15.0グラム質量を使用して樹脂のゲル化時間を測定した。促進剤を用いない非促進樹脂対照も対照として加えた。[Mn2O3(Me3tacn)2](PF6)2のゲル化時間は215分であった(ブランクはゲル化しなかった)。
【0188】
[Mn2O3(Me3tacn)2](PF6)2をジエチレングリコールに溶解させる(4.05%)ことによって別の実験を行い、クミルヒドロペルオキシドを含有する基材にこれを加えて(金属を基準として)80ppmの濃度を得た。ゲル化時間は、今度は560分であった(ブランクではゲル化が見られなかった)。
【0189】
同様の実験であるが、今度はジエチレングリコールに溶解させた(Mnを基準として)20ppmの同じマンガン化合物及び150ppmのアスコルビン酸を用いた実験で、862分のゲル化時間(ブランクではやはりゲル化が見られなかった)が得られた。
【0190】
上述した結果は、マンガン触媒が、クミルヒドロペルオキシドを含むこの基材及びメチルエチルケトン過酸化物を含むこの基材の両方のゲル形成を促進することを示す。さらに、アスコルビン酸を系に添加することにより、マンガン触媒の濃度を低減させることが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)5〜95質量%の不飽和樹脂と;
(ii)0.001〜10質量%の過酸化物と;
(iii)金属を基準として0.00001〜0.02%質量%の一次促進剤と
を含む硬化性液体媒体であって、
前記一次促進剤が三座配位、四座配位、五座配位、又は六座配位の窒素供与性配位子の鉄又はマンガン錯体であり、
前記配位子が、
【化1】

[式中、各Rは独立に、水素、F、Cl、Br、ヒドロキシル、C1〜C4-アルキルO-、-NH-CO-H、-NH-CO-C1〜C4-アルキル、-NH2、-NH-C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルから選択され;
R1及びR2は独立に、C1〜C24-アルキル、C6〜C10-アリール、及び、
遷移金属に配位可能なヘテロ原子含有基から選択され;
R3及びR4は独立に、水素、C1〜C8アルキル、C1〜C8-アルキル-O-C1〜C8-アルキル、C1〜C8-アルキル-O-C6〜C10-アリール、C6〜C10-アリール、C1〜C8-ヒドロキシアルキル、及び-(CH2)nC(O)OR5(式中、R5は独立に、水素、C1〜C4-アルキルから選択され、nは0〜4である)、並びにその混合から選択され;
XはC=O、-[C(R6)2]y-(式中、yは0〜3であり、各R6は独立に、水素、ヒドロキシル、C1〜C4-アルコキシ、及びC1〜C4-アルキルから選択される)から選択される];
【化2】

(式中、各R1、R2は独立に-R4-R5を表し、
R3は水素、任意選択で置換されていてもよいアルキル、アリール若しくはアリールアルキル、又は-R4-R5を表し、
各R4は独立に、単結合、又は、任意選択で置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン、オキシアルキレン、アミノアルキレン、アルキレンエーテル、カルボン酸エステル、又はカルボン酸アミドを表し、
各R5は独立に、任意選択でN-置換されたアミノアルキル基、又は、任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基を表す);
【化3】

[式中、各R20は、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボン酸エステル、スルホナート、アミン、アルキルアミン、及びN+(R21)3[式中、R21は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、オキシアルキル、オキシアルケニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アルキルエーテル、アルケニルエーテル、及び-CY2-R22(式中、Yは独立に、H、CH3、C2H5、C3H7から選択され、R22は独立に、任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基から選択される)から選択される]から選択される置換基によって任意選択で置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、及びアリールアルキル基から選択され;R20のうち少なくとも1つは-CY2-R22である];
【化4】

(式中、Qは独立に
【化5】

から選択され、
pは4であり;
Rは独立に、水素、C1〜C6-アルキル、CH2CH2OH、ピリジン-2-イルメチル、及びCH2COOHから選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は独立に、H、C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルヒドロキシから選択される);
【化6】

(式中、「R1」は独立に、H、及び、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換のC1〜C20アルキル、アルキルアリール、アルケニル、又はアルキニルから選択され;大多環状の環におけるすべての窒素原子は遷移金属に配位している);
R17R17N-X-NR17R17 (VI)
[式中、
Xは、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2C(OH)HCH2-から選択され;
R17は、独立に、R17、並びに、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボン酸エステル、スルホナート、アミン、アルキルアミン、及びN+(R19)3[式中、R19は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、オキシアルキル、オキシアルケニル、アミノアルキル、アミノアルケニル、アルキルエーテル、アルケニルエーテル、及び-CY2-R18(式中、Yは独立に、H、CH3、C2H5、C3H7から選択され、R18は独立に、任意選択で置換されていてもよい、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、及びチアゾリルから選択されるヘテロアリール基から選択される)から選択される]から選択される置換基によって任意選択で置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、及びアリールアルキル基から選択される基を表し;
R17のうち少なくとも2つは-CY2-R18である];並びに
【化7】

(式中、Qは
【化8】

であり;
pは3であり;
各Rは独立に、水素、C1〜C6-アルキル、CH2CH2OH、CH2COOH、及びピリジン-2-イルメチルから選択されるか、又は1つのRが式(VII)の2つめの配位子のQにおける>NRの窒素原子へのエチレン架橋であり;
R1、R2、R3、及びR4は独立に、H、C1〜C4-アルキル、及びC1〜C4-アルキルヒドロキシから選択される)
からなる群から選択される、硬化性液体媒体。
【請求項2】
式(I)において、遷移金属に配位可能なヘテロ原子含有基が、-CO-C4-アルキルによって任意選択で置換されていてもよいピリジン-2-イルである、請求項1に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項3】
遷移金属に配位可能なヘテロ原子含有基が非置換ピリジニルである、請求項2に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項4】
式(I)において、XがC=O又はC(OH)2である、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項5】
式(I)において、R3=R4であり、R3及びR4が-C(O)-O-CH3、-C(O)-O-CH2CH3、-C(O)-O-CH2C6H5、及びCH2OHから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項6】
式(I)において、R1又はR2のうち少なくとも1つがピリジン-2-イルメチルであり、他方が-CH3、-C2H5、-C3H7、-C4H9、C6H13、C8H17、C12H25、及びC18H37から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体。
【請求項7】
配位子が、5,12-ジメチル-1,5,8,12-テトラアザ-ビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、5,12-ジベンジル-1,5,8,12-テトラアザ-ビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1,4,7,10-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、及び1,4,7,10-テトラキス(ピリジン-2イルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、N,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル)-ビス(ピリジン-2-イル)メチルアミン、N,N-ビス(ピリジン-2-イル-メチル-1,1-ビス(ピリジン-2-イル)-1-アミノエタン、N,N,N',N'-テトラ(ピリジン-2-イル-メチル)エチレンジアミン、N-メチル-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ブチル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクチル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ドデシル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-オクタデシル-N,N',N'-トリス(ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N',N'-トリス(3-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-ベンジル-N,N',N'-トリス(5-メチル-ピリジン-2-イルメチル)エチレン-1,2-ジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-エチル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N'-ジメチル-N,N'-ビス(イミダゾール-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-(1-プロパン-2-オール)-N,N',N'-トリス(1-メチル-イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N,N-ジエチル-N',N'',N''-トリス(5-メチル-イミダゾール-4イルメチル)-ジエチレントリアミン;N-(3-プロパン-1-オール)-N,N',N'-トリス(1-メチル-イミダゾール-2-イルメチル)-エチレンジアミン;N-ヘキシル-N,N',N'-トリス(イミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;N-メチル-N,N',N'-トリス(ベンゾイミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;及び、N-(3-プロパン-1-オール)メチル-N,N',N'-トリス(ベンゾイミダゾール-2イルメチル)-エチレンジアミン;1,4-ビス(キノリン-2-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(キノリン-2-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(キノリン-2-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピリジル-2-メチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピリジル-2-メチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピリジル-2-メチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピラゾール-1-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピラゾール-1-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(ピラゾール-1-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン、3,5-ジメチルピラゾール-1-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;3,5-ジメチルピラゾール-1-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;3,5-ジメチルピラゾール-1-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(1-メチルイミダゾール-2-イルメチル)-7-オクチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(1-メチルイミダゾール-2-イルメチル)-7-エチル-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4-ビス(1-メチルイミダゾール-2-イルメチル)-7-メチル-1,4,7-トリアザシクロノナン、1,4,7-トリス(キノリン-2-イルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン;1,4,7-トリス(ピリジン-2-イルメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン、1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(Me3-TACN)、1,2-ビス-(4,7-ジメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-イル)-エタン(Me4-DTNE)から選択される、請求項1に記載の硬化性液体媒体。
【請求項8】
鉄イオンが、Fe(II)及びFe(III)から選択され、マンガンイオンが、Mn(II)、Mn(III)、及びMn(IV)から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項9】
一次促進剤が、ジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-メチル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2py3o-C1)の鉄(II)錯体;及びジメチル2,4-ジ-(2-ピリジル)-3-メチル-7-(N,N-ジメチル-アミノ-エチル)-3,7-ジアザ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-オン-1,5-ジカルボキシラート(N2Py2EtNMe2)の鉄(II)錯体から選択される、請求項1に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項10】
一次促進剤が、金属を基準として0.00001〜0.01%w/wの濃度で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項11】
過酸化物の濃度が0.01〜5質量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項12】
過酸化物の濃度が0.05〜3質量%である、請求項1から11のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体組成物。
【請求項13】
過酸化物が、アルキルヒドロペルオキシド、ケトン過酸化物、ペルオキシエステル、ジアシルペルオキシド、ペルオキシケタール、ジアルキル過酸化物、アルキルペルエステル、及びペルカルボナートから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体。
【請求項14】
過酸化物が、メチルエチルケトン過酸化物(MEKP);クメンヒドロペルオキシド;及び過酸化ベンゾイルから選択される、請求項13に記載の硬化性液体媒体。
【請求項15】
樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はアクリル樹脂から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体。
【請求項16】
樹脂が、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリラート、ジアリルフタラート、α-メチルスチレン、トリアリルシアヌラート、(メタ)アクリラート、N-ビニルピロリドン、及びN-ビニルカプロラクタムから選択される反応性溶媒を含む、請求項15に記載の硬化性液体媒体。
【請求項17】
成分(iii)の一次促進剤、成分(i)の不飽和部分、及び成分(ii)の過酸化物を混合することによって形成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体。
【請求項18】
共促進剤として金属化合物を含有し、前記金属が、コバルト、マンガン、銅、鉄、亜鉛、バナジウム、ニッケル、スズ、マグネシウム、チタン、カリウム、及びリチウムから選択され、前期化合物がアルキルカルボキシラート、アセチルアセトナート、及びジシクロペンタジエンから選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体。
【請求項19】
共促進剤がコバルトを含有し、硬化性液体媒体中に金属を基準として0.00001〜0.02質量%の濃度で存在する、請求項18に記載の硬化性液体媒体。
【請求項20】
共促進剤がコバルトを含有し、硬化性液体媒体中に金属を基準として0.0001〜0.01質量%の濃度で存在する、請求項19に記載の硬化性液体媒体。
【請求項21】
コバルト塩がコバルト(2-エチルヘキサノアート)2である、請求項19又は請求項20に記載の硬化性液体媒体。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の硬化性液体媒体を硬化させることによって得られる硬化樹脂。

【公表番号】特表2013−516532(P2013−516532A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547545(P2012−547545)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000007
【国際公開番号】WO2011/083309
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512177768)オーエムジー・アディティブス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】