説明

硬化性組成物

【課題】分子末端に(メタ)アクリロイル基を高い比率で有するビニル系重合体を安価に、かつ、容易な方法で提供すると共に、速い速度で硬化し、優れた硬化物特性を有する硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を、1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物であって、該ビニル系重合体が下記の工程により製造されたものである。
(1)ハロゲン化合物の存在下で、ビニル系モノマーのラジカル重合反応を行い、末端にハロゲン原子を有するビニル系重合体を製造する工程。
(2)上記ビニル系重合体の末端のハロゲン原子を、(メタ)アクリロイル基に置換する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、製造が容易で、硬化性及び硬化物特性に優れた硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する重合体は、そのもの単独、又は硬化触媒、モノマー、開始剤等を用いることにより架橋し、耐熱性、耐久性の優れた硬化物を与えることが知られている。そのような重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリテトラメチレンオキシド等のポリエーテル系重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレンあるいはそれらの水素添加物等の炭化水素系重合体、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン系重合体等が例示され、主鎖骨格の特性に応じて様々な用途に用いられている。
【0003】
特にビニル系重合体は、高い耐候性、耐熱性、耐油性及び透明性等、上記の各種重合体では得られない特性を有しており、その硬化性組成物は様々な分野で利用が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、水酸基含有スルフィドを連鎖移動剤として末端に水酸基を有するアクリル系重合体を製造し、更に水酸基を反応させることにより末端にメタアクリロイル基を有するアクリル系重合体が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、リビングラジカル重合法を用いて、末端にアクリロイル基を有するビニル系重合体を製造し、得られたビニル系重合体に開始剤等を配合し、光硬化することでゴム状硬化物が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−262808号公報
【特許文献2】特開2000−72816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような一般のラジカル重合によって製造される方法では、重合体の末端にアクリロイル基を確実に導入することは難しい。また、これらの方法では通常のラジカル重合が用いられるため、得られる重量平均分子量(以下「Mw」ともいう。)と数平均分子量(以下「Mn」ともいう。)の比(以下「Mw/Mn」ともいう。)が広く、架橋点間分子量を制御することができず、良好な硬化物特性を得ることができなかった。
【0008】
また、特許文献2に開示される原子移動ラジカル重合法(ATRP)は、臭化銅等を触媒として用いる方法であり、毒性のある銅をビニル重合体から取り除くのが難しく、製造工程が複雑になる。そのため、多大な経済的負担を要する。また、臭素のようなハロゲン化物が残存し、耐候性、耐久性にも悪影響を及ぼすという問題、及び銅のような金属が残存するため、絶縁性にも悪影響を及ぼすという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、分子末端に(メタ)アクリロイル基を高い比率で有するビニル系重合体を安価に、かつ、容易な方法で提供すると共に、速い速度で硬化し、高い硬化物特性を有する硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ハロゲン化合物の存在下でビニル系モノマーをラジカル重合してビニル系重合体を得た後、該重合体の末端ハロゲン原子を(メタ)アクリロイル基に置換することにより製造されたビニル系重合体を含む硬化性組成物は、優れた硬化性を示し、高い硬化物特性を発現することを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係る硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物であって、該ビニル系重合体が下記の工程により製造されたものであることを特徴とする。
(1)ハロゲン化合物の存在下で、ビニル系モノマーのラジカル重合反応を行い、末端にハロゲン原子を有するビニル系重合体を製造する工程。
(2)上記ビニル系重合体の末端のハロゲン原子を、(メタ)アクリロイル基に置換する工程。
【0012】
上記ハロゲン化合物は、1分子あたり2個のヨウ素原子を含有し、該ヨウ素原子が芳香族環に結合した炭素原子に結合した構造を有するヨウ素化合物であることが好ましい。
【0013】
上記(1)の工程で得られたビニル系重合体は、(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
【0014】
上記(1)の工程で得られたビニル系重合体の数平均分子量は、3000〜50000であることが好ましい。
【0015】
上記(1)の工程で得られたビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.0未満であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る硬化性組成物、更に硬化剤を配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る硬化性組成物は、以上のように、ハロゲン化合物の存在下でビニル系モノマーをラジカル重合してビニル系重合体を得た後、該重合体の末端ハロゲン原子を(メタ)アクリロイル基に置換することにより製造された(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体を含む。そのため、ビニル系モノマーとの優れた共重合性と速い硬化性を有し、得られた硬化物は優れた力学的特性、高い耐候性及び耐熱性を発現する。また、本発明のビニル系重合体の製造方法により、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を安価に、かつ、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の硬化性組成物について詳しく説明する。
本発明の硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物であって、該ビニル系重合体が下記の工程により製造されたものであることを特徴とする。
(1)ハロゲン化合物の存在下で、ビニル系モノマーのラジカル重合反応を行い、末端にハロゲン原子を有するビニル系重合体を製造する工程。
(2)上記ビニル系重合体の末端のハロゲン原子を、(メタ)アクリロイル基に置換する工程。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を含む意味に用い、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を含む意味に用いる。
更に、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルの一方又は両方を含む意味に用いる。
【0019】
まず、本発明の工程(1)について説明する。工程(1)は、ハロゲン化合物の存在下で、ビニル系モノマーのラジカル重合反応を行い、末端にハロゲン原子を有するビニル系重合体を製造する工程である。工程(1)で用いられるハロゲン化合物は、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化合物であれば特に限定されない。ハロゲン化合物としては、例えば、ジヨードメタン、1,1−ジヨードエタン、1,2−ジヨードエタン、1,2−ジヨードエチレン、ブロモヨ−ドメタン、1−ブロモ−2−ヨードエタン、ヨードメチルベンゼン、ヨードメチルナフタレン、1,3−ジヨードキシレン、1,4−ジヨードキシレン、1,3,5−トリス(ヨードメチル)ベンゼン、ジフェニルジヨードメタン、4,4'−ビス(ヨードメチル)ビフェニル、ビス(4−ヨードメチルフェニル)メタン、4,4'−ビス(ヨードメチル)ジフェニルエーテル、1,5−ビス(ヨードメチル)ナフタレン、2,6−ビス(ヨードメチル)ナフタレン、2,4,6,8−テトラキス(ヨードメチル)ナフタレン、2,6−ビス(ヨードメチル)アントラセン、9,10−ビス(ヨードメチル)アントラセン、1,4,5,8−テトラキス(ヨードメチル)アントラセン等のヨウ素化合物;クロロメチルベンゼン、クロロメチルナフタレン、1,3−ジクロロキシレン、1,4−ジクロロキシレン、1,3,5−トリス(クロロメチル)ベンゼン、ジフェニルジクロロメタン、4,4'−ビス(クロロメチル)ビフェニル、ビス(4−クロロメチルフェニル)メタン、4,4'−ビス(クロロメチル)ジフェニルエーテル、1,5−ビス(クロロメチル)ナフタレン、2,6−ビス(クロロメチル)ナフタレン、2,4,6,8−テトラキス(クロロメチル)ナフタレン、2,6−ビス(クロロメチル)アントラセン、9,10−ビス(クロロメチル)アントラセン、1,4,5,8−テトラキス(クロロメチル)アントラセン等の塩素化合物;ジブロモメタン、1,1−ジブロモエタン、1,2−ジブロモエタン、1,2−ジブロモプロパン、1,3−ジブロモプロパン、1,3−ジブロモブタン、1,4−ジブロモブタン、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモヘキサン、1,7−ジブロモへブタン、1,8−ジブロモオクタン、1,2−ジブロモエチレン、2,3−ジブロモプロペン、ブロモメチルベンゼン、ブロモメチルナフタレン、1,3−ジブロモキシレン、1,4−ジブロモキシレン、1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼン、ジフェニルジブロモメタン、4,4'−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、ビス(4−ブロモメチルフェニル)メタン、4,4'−ビス(ブロモメチル)ジフェニルエーテル、1,5−ビス(ブロモメチル)ナフタレン、2,6−ビス(ブロモメチル)ナフタレン、2,4,6,8−テトラキス(ブロモメチル)ナフタレン、2,6−ビス(ブロモメチル)アントラセン、9,10−ビス(ブロモメチル)アントラセン、1,4,5,8−テトラキス(ブロモメチル)アントラセン等の臭素化合物等が挙げられる。これらのハロゲン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのハロゲン化合物の中でも、反応性が高いこと及び両方の末端に(メタ)アクリロイル基を有する直線状の重合体が得られる点で、1分子あたり2個のヨウ素原子を含有し、該ヨウ素原子が芳香族環に結合した炭素原子に結合した構造を有するヨウ素化合物が好ましい。
【0020】
工程(1)の製造において、ラジカル重合開始剤としては、上記の有機ハロゲン化合物をそのまま使用することができる。また、上記の有機ハロゲン化合物を形成する、1種又は2種以上の化合物(以下「開始剤前駆体」という。)を使用してもよい。ここで、開始剤前駆体とは、この開始剤前駆体が反応系に存在するときに、反応前又は反応中に、ラジカル重合開始剤を形成し得る材料である。すなわち、開始剤前駆体は、反応容器に投入する前の状態では、ラジカル重合開始剤に該当しないが、反応容器中(重合中)において、化学変化(化学反応)により、ラジカル重合開始剤を形成し得るものである。この開始剤前駆体を用いても工程(1)を効率よく行うことができる。
【0021】
上記開始剤前駆体は、ラジカル重合開始剤である有機ハロゲン化合物を形成するものであれば、特に限定されない。例えば、アゾ系化合物等の有機化合物からなる開始剤前駆体(以下「開始剤前駆体(a)」という。)と、ハロゲン単体からなる開始剤前駆体(以下「開始剤前駆体(b)」という。)とを開始剤前駆体として使用することができる。具体的には、下記式(1)に示されるように、開始剤前駆体(a)としてアゾ系化合物の4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(1a)、及び開始剤前駆体(b)としてヨウ素(1b)による開始剤前駆体から、開始剤(1c)が形成される。
【0022】
【化1】

【0023】
上記開始剤前駆体(a)としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等の有機化合物が挙げられる。アゾ系化合物としては、4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2'−アゾビス−{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド及び2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド等が挙げられる。また有機過酸化物としては、Disuccinic acid peroxide(パーロイルSA、日本油脂製)等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記開始剤前駆体(b)としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の単体が挙げられる。これらのハロゲン単体のうち、塩素、臭素及びヨウ素が好ましく、ヨウ素が更に好ましい。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
これらの有機化合物からなる開始剤前駆体(a)と、ハロゲン単体の開始剤前駆体(b)とを開始剤前駆体として使用することにより、開始剤が得られる。
【0024】
上記工程(1)で用いるビニル系モノマーとしては、ラジカル重合性があれば特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
【0025】
上記ビニル系モノマーの好ましい使用例は、下記に示される。
上記ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましい。
(メタ)アクリル系化合物の使用割合としては、上記ビニル系モノマー全量を100質量%とした時に、40〜100質量%が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
また、ビニル系単量体に使用する(メタ)アクリル系化合物の全量を100質量%とした時に、(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用割合は、40〜100質量%が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。ビニル系モノマーの使用割合が上記範囲の場合には、力学的特性、耐候性及び耐熱性に優れる硬化物を与えることができる。
【0026】
上記工程(1)においては、ハロゲン化合物の存在下で、ビニル系モノマーのラジカル重合反応を行い、末端にハロゲン原子を有するビニル重合体を製造する。この工程で、ハロゲン化合物の使用量は、ビニル系モノマー全量100モルに対して、好ましくは0.01〜10モルあり、より好ましくは0.05〜5モルあり、更に好ましくは0.1〜3モルである。ハロゲン化合物の使用量が、上記範囲内にあると、Mw/Mnが小さい重合体が効率的に得られる。
【0027】
また、ハロゲン化合物に代えて、開始剤前駆体を使用する場合の使用量は、有機化合物からなる開始剤前駆体(a)の使用量が、ビニル系モノマー全量100モルに対して、好ましくは0.01〜10モルあり、より好ましくは0.05〜5モルあり、更に好ましくは0.1〜3モルである。開始剤前駆体の使用量が、上記範囲内にあると、Mw/Mnが小さい重合体が効率的に得られる。また、ハロゲン単体からなる開始剤前駆体(b)の使用量が、ビニル系モノマー全量100モルに対して、好ましくは0.01〜10モルあり、より好ましくは0.05〜5モルあり、更に好ましくは0.1〜3モルである。開始剤前駆体の使用量が、上記範囲内にあると、Mw/Mnが小さい重合体が効率的に得られる。
【0028】
ラジカル重合反応をおこなう際には、重合触媒として14〜16族の金属化合物を用いてもよい。14〜16族の金属化合物を用いることにより、炭素−ハロゲンのラジカル解離が更に起こりやすくなり、重合速度が増加するので、重合時間が短縮し重合度が向上する。また、14〜16族の金属化合物は、後述する重合末端のハロゲン原子を(メタ)アクリロイル基へ置換する際の触媒としても作用するので、(メタ)アクリロイル基への置換の際に、新たに触媒を添加する必要がなくなる。
【0029】
上記14〜16族の金属化合物としては、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、テルリウム、ポロニウムなどが挙げられ、特に制限はない。例えば、フッ化錫、塩化錫、臭化錫、ヨウ化錫、酸化錫、ビス(2−エチルヘキサノエート)錫、ビス(ネオデカノエート)錫、n−ブチルトリス(2−エチルヘキサノエート)錫、酢酸錫、ジ−n−ブチルビス(ドデシルチオ)錫、ジ−n−ブチルビス(2−エチルヘキサノエート)錫、ジ−n−ブチルジアセトキシ錫、ジ−t−ブチルジアセトキシ錫、ジ−n−ブチルメトキシ錫、ジ−n−ブチル−S,S'−ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)錫、ジメチルジネオデカノエート錫、ジオクチルジラウリル酸錫、ジオクチルジネオデカノエート錫、テトラ−t−ブトキシ錫、テトラ−n−ブチル錫、テトラエチル錫、テトライソプロピル錫、テトラ−n−オクチル錫、テトラ−n−ペンチル錫、テトラフェニル錫、テトラ−p−トリル錫、トリ−n−ブチルエトキシ錫、トリ−n−ブチルメトキシ錫、トリ−n−ブチルメチル錫、トリ−n−ブチル錫等の錫化合物;フッ化鉛、塩化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛、テトラ酢酸鉛、ビス(2−エチルヘキサノエート)鉛、ビス(2,4−ペンタンイオネート)鉛、テトラフェニル鉛等の鉛化合物;テルルエトキサイド等のテルル化合物;塩化ビスマス、トリス(テトラメチルヘプタンジオネート)ビスマス、トリス(t−ペントキサイド)ビスマス、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス等のビスマス化合物等が挙げられる。これらの14〜16族の金属化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記14〜16族の金属化合物の添加量は、金属化合物の種類にもよるが、ハロゲン化合物1モルに対し、0.001〜10モルであることが好ましい。上記14〜16族の金属化合物の添加量が、ハロゲン化合物1モルに対し0.001モル未満であると、充分な触媒効果が得られないことがある。10モルを超えると、精製の際、金属化合物の除去が困難となることがある。より好ましくは、ハロゲン化合物1モルに対し、0.05〜1モルである。
【0031】
本発明のラジカル重合方法においては、必要応じて、必要量のラジカル反応開始剤を用いる。このようなラジカル反応開始剤としては、ラジカル反応に使用する開始剤として公知の開始剤が使用可能である。例えば、アゾ系のラジカル反応開始剤及び過酸化物系のラジカル開始剤などが使用可能である。
【0032】
アゾ系のラジカル反応開始剤の具体例としては、限定されるわけではないが、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、及び2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)等が挙げられる。
【0033】
過酸化物としては、有機過酸化物が好ましい。過酸化物系のラジカル開始剤の具体例としては、限定されるわけではないが、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、及び過酸化ジクミル等が挙げられる。
【0034】
ラジカル反応開始剤を使用する場合、ラジカル反応開始剤の使用量は、ビニル系モノマー全量100モルに対して、好ましくは0.01〜10モルあり、より好ましくは0.05〜5モルあり、更に好ましくは0.1〜3モルである。ラジカル反応開始剤の使用量が、上記範囲内にあると、Mw/Mnが小さい重合体が効率的に得られる。
【0035】
本発明に用いるラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、管式連続重合プロセス及び連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のどのようなプロセスでも重合できる。これらの重合プロセスの中では、バッチプロセス、セミバッチブロセス及び管式連続重合プロセスが好ましく、バッチプロセスが特に好ましい。重合形式は溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合でもよい。
【0036】
本発明で使用する重合溶剤は、有機炭化水素系化合物が好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類並びにその誘導体、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドの窒素化合物類が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、工程(1)で使用する溶剤と、工程(2)で使用する溶剤は、同じでもよいし、異なっていてもよい。同じ溶剤を使用する場合は、例えば、重合溶媒にジメチルアセトアミドを用いて、そのままin−situで末端を置換することもできる。一方、異なる溶剤を使用する場合は、例えば、酢酸ブチルを重合溶媒として用いて、その溶媒を精製除去し、末端を置換する際にはジメチルアセトアミドを溶媒として使用することもできる。
【0037】
溶剤の使用量は、ビニル系モノマー100質量部に対し、0〜200質量部が好ましく、0〜100質量部とすることがより好ましい。特に好ましくは0〜50質量部である。溶剤が多すぎると、溶剤に起因する連鎖移動反応が発生し、分子量制御、分子量分布制御等の重合制御が悪くなる。
【0038】
また、重合温度は30〜130℃が好ましく、40℃〜110℃であることがより好ましく、50〜110℃であることが特に好ましい。重合温度が30℃未満であると、重合速度が著しく遅くなる。一方、重合温度が130℃より高いと加熱のための設備等にコストがかかるという欠点がある。
【0039】
本発明に用いるラジカル重合は、光照射による方法でもよい。光照射することにより、炭素−ハロゲン結合が選択的にラジカル解離しやすくなるので、重合における副反応が起こりにくくなる。
【0040】
上記光照射に用いる光源としては、炭素−ハロゲン結合以外の結合、例えば、主鎖の炭素−炭素結合、炭素−水素結合等が切断されなければ特に限定されず、炭素−ハロゲンの活性化範囲を考慮して選択すればよい。上記光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノン−水銀ランプ、エマシマレーザー、キセノンランプ等が挙げられる。
【0041】
上記光源の照射強度は、重合体の合成に悪影響を及ぼさない範囲で決定されるが、0.01〜10J/cm2(365nm)であることが好ましい。照射強度が0.01J/cm2未満であると、炭素−ハロゲン結合に有効に作用しないので重合反応が遅くなることがある。一方、10J/cm2を超えると、照射強度が強すぎるので反応の制御ができなくなる。
【0042】
工程(1)で得られるビニル系重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で、3000〜50000が好ましく、6000〜25000がより好ましく、8000〜15000が更に好ましい。Mnが3000に満たない場合は、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ、硬化物の伸びが著しく小さくなる。一方、Mnが50000を超える場合は、粘度が非常に高くなり、作業性が著しく悪くなる。
【0043】
上記ビニル重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2.0未満(通常1.05以上)であり、好ましくは1.3〜1.8であり、より好ましくは1.6未満である。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、上記範囲であれば、力学的特性、耐候性及び耐熱性に優れる硬化物を与える硬化性組成物とすることができる。
【0044】
次に、本発明の工程(2)について説明する。工程(2)は、工程(1)で得られたビニル系重合体の末端を置換させることにより、(メタ)アクリロイル基を分子末端に有する重合体を製造する。当該末端置換方法としては、工程(1)で得られたビニル系重合体を劣化させない方法であれば、特に限定されない。例えば、以下の方法が挙げられる。
【0045】
[1]工程(1)で得られたビニル系重合体と、一般式(2)で示される化合物とを反応させる。
【0046】
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、M+はアルカリ金属、又は4級アンモニウムイオンである。)
【0047】
+はオキシアニオンの対カチオンであり、M+の種類としてはアルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び4級アンモニウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン及びジメチルピペリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。一般式(2)のオキシアニオン使用量は、ハロゲン末端に対して、好ましくは1〜10当量、更に好ましくは1〜5当量である。この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため、極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が用いられる。反応をおこなう温度は限定されないが、一般に0〜70℃で実施されると良い。
【0048】
[2]工程(1)で得られた末端ハロゲンのビニル系重合体を、置換反応により、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はアミノ基に置換し、当該官能基と反応可能な官能基を有するビニル系モノマーと反応させる。
【0049】
末端ハロゲンの置換によりヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はアミノ基を導入する方法としては、特に限定されず、ビニル系重合体を劣化させない方法であれば、従来の公知技術の化学反応を用いることができる。また、上記ビニル系重合体の末端に官能基を導入する際に用いられる化合物(末端処理剤)としても特に限定されず、従来の公知の化合物を用いることができる。
【0050】
上記ビニル系重合体の末端に官能基を導入する方法としては、例えば、水酸化ナトリウム等を用いた末端ハロゲンの置換の直接置換によるヒドロキシル基の導入、ハロゲン−アミノ置換反応では、アミノエタノール、グリシン、(アミノイソシアネート)、エチレンジアミン、カダベリンを用いたヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はアミノの導入、ハロゲン−メルカプト置換反応では、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、(メルカプトイソシアネート)、(メルカプトアミン)を用いたヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はアミノ基の導入、末端ハロゲンをクロロスルホン酸で置換後、加水分解をおこなうカルボキシル基の導入、ハロゲン−カルボン酸塩置換反応では、コハク酸モノナトリウム塩を用いたカルボキシル基の導入が挙げられる。
【0051】
末端のハロゲンを置換したヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はアミノ基と反応可能な官能基を有するビニル系モノマーは、特に限定されず、公知技術の化学反応を用いて官能基を用いることができるが、具体的にはカルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基を有するビニル系モノマーが挙げられる。
【0052】
カルボキシル基を有するビニル系モノマーは、一般式(3)で示される。具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等が挙げられる。
【0053】
【化3】

〔式中、R2は水素原子又はメチル基であり、R3はあってもなくてもよく、R3を有する場合は、−C(O)−O−、−OC(O)−、−NH−又は−C64−であり、R4はR5−O−(R5は炭素数2〜4のアルキル基)、R6−C(O)−O−(R6は炭素数1〜8のアルキル基)、R7−O−C(O)−R8−(R7は炭素数1〜8のアルキル基、R8は炭素数1〜8のアルキル基)、−C64−又は−CH2=CH2−であり、nは0〜4である。〕
【0054】
グリシジル基を有するビニル系モノマーは、一般式(4)で示される。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0055】
【化4】

〔式中、R9は水素原子又はメチル基であり、R10はあってもなくてもよく、R10を有する場合は、−C(O)−O−、−OC(O)−、−NH−又は−C64−であり、
11はR12−O−(R12は炭素数2〜4のアルキル基)、R13−C(O)−O−(R13は炭素数1〜8のアルキル基)、R14−O−C(O)−R15−(R14は炭素数1〜8のアルキル基、R15は炭素数1〜8のアルキル基)、−C64−又は−CH2=CH2−であり、nは0〜4である。〕
【0056】
ヒドロキシル基を有するビニル系モノマーは、一般式(5)で示される。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
【化5】

〔式中、R16は水素原子又はメチル基であり、R17はあってもなくてもよく、R17を有する場合は、−C(O)−O−、−OC(O)−、−NH−又は−C64−であり、
18はR19−O−(R19は炭素数2〜4のアルキル基)、R20−C(O)−O−(R20は炭素数1〜8のアルキル基)、R21−O−C(O)−R22−(R21は炭素数1〜8のアルキル基、R22は炭素数1〜8のアルキル基)、−C64−又は−CH2=CH2−であり、nは0〜4である。〕
【0058】
イソシアネート基を有するビニル系モノマーは、一般式(6)で示される。具体的には、2−エチルイソシアネート(メタ)アクリレート、イソシアネート(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
【化6】

〔式中、R23は水素原子又はメチル基であり、R24はあってもなくてもよく、R24を有する場合は、−C(O)−O−、−OC(O)−、−NH−又は−C64−であり、
25はR26−O−(R26は炭素数2〜4のアルキル基)、R27−C(O)−O−(R27は炭素数1〜8のアルキル基)、R28−O−C(O)−R29−(R28は炭素数1〜8のアルキル基、R29は炭素数1〜8のアルキル基)、−C64−又は−CH2=CH2−であり、nは0〜4である。〕
【0060】
前記末端ハロゲンを置換することにより得られたヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はアミノ基を有するビニル系重合体に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させる場合は、当該ビニル系重合体1モルに対して(メタ)アクリロイル基を有する化合物が0.8〜2モルの範囲であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物が0.8モルより小さい場合は、末端に(メタ)アクリロイル基が導入されていない高分子鎖が存在してしまい、硬化不良の原因となる。また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が2モルより大きい場合は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が多く残ってしまい、保存安定性が悪くなる。
【0061】
本発明の(メタ)アクリロイル基を分子末端に有するビニル系重合体は、高分子鎖1本あたりの(メタ)アクリロイル基の個数fは、1.0〜10.0個が好ましい。より好ましくは1.4〜4.0個であり、1.8〜3.5であることが特に好ましい。fは以下のように計算される。
f=高分子中のメタアクリロイル基、ヒドロキシル基、アミノ基の官能基濃度[mol/kg]/(1000/数平均分子量)
fが1.0個より小さいと、硬化物は架橋密度が小さいため、破断強度が非常に弱いものになる。一方、10.0個より大きい場合には、架橋密度が高すぎ、脆くて伸びない硬化物となる。
【0062】
本発明において製造される(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体は、反応後、残揮発分を取り除く工程(3)を必要とする場合がある。脱溶プロセスとしては、流下式蒸発機、薄膜蒸発機や押出機式乾燥機等の一般に用いられる脱溶プロセスであれば何でもよい。脱溶温度条件は好ましくは250℃以下がよい。より好ましくは170℃以下、特に好ましくは100℃以下である。250℃以下であればラジカル重合末端は解離せず、ポリマーの分解による低分子量物の生成が起きない。一方、250℃を超える場合には、ラジカル重合末端が解離し、高分子鎖が一部分解し低分子量物が生成される。また、着色も発生するので好ましくない。
【0063】
本発明の末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体は、特に限定されないが、紫外線、可視光線及び電子線等の活性エネルギー線又は熱により硬化させることが好ましい。それぞれの硬化方法により、適切な硬化剤を使用する。
【0064】
活性エネルギー線により硬化させる場合には、硬化剤として光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては特に制限はないが、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤が好ましく、特に光ラジカル開始剤が好ましい。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4'−トリメチルペンチルホソフィンオキサイド、カンファーキノン等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。更に、アミン類等の増感剤と組み合わせてもよい。
【0065】
光重合開始剤の添加量は系をわずかに光官能化するだけでよいので、特に制限はないが、ビニル系重合体100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましい。より好ましくは0.1〜30質量部であり、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。活性エネルギー線源としては特に限定されないが、その光重合開始剤の性質に応じて、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー等による光及び電子線の照射が挙げられる。
【0066】
熱により硬化させる場合には、硬化剤として熱重合開始剤を含有することが好ましい。熱重合開始剤としては特に限定されないが、アゾ系開始剤、過酸化物、過硫酸物、及びレドックス開始剤が含まれる。適切なアゾ系開始剤としては、限定されるわけではないが、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、及び2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)等が挙げられる。適切な過酸化物開始剤としては、限定されるわけではないが、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、及び過酸化ジクミル等が挙げられる。適切な過硫酸物開始剤としては、限定されるわけではないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。適切なレドックス(酸化還元)開始剤としては、限定されるわけではないが、上記過硫酸物開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系;並びに有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系等が挙げられる。他の開始剤としては、限定されるわけではないが、テトラフェニル1,1,2,2−エタンジオールのようなピナコール等が挙げられる。熱重合開始剤としては、アゾ系開始剤及び過酸化物系開始剤からなる群から選ばれるものが好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明に用いられる熱重合開始剤は触媒的に有効な量で存在し、このような量は、限定はされないが、典型的には、ビニル系重合体100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましい。より好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
【0068】
熱硬化条件は特に限定されないが、その温度は、使用する熱重合開始剤、重合体及び添加される化合物等の種類により異なるが、50℃〜250℃の範囲内が好ましく、70℃〜200℃の範囲内がより好ましい。硬化時間は、使用する重合開始剤、単量体、溶媒、反応温度等により異なるが、通常1分〜24時間の範囲内である。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、その目的に応じて、重合性のモノマー及び/又はオリゴマーを配合しても構わない。重合性のモノマー及び/又はオリゴマーとしては、ラジカル重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマー、あるいは、アニオン重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが、硬化性の点から好ましい。
【0070】
前記ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。これらの中でも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
【0071】
前記アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
【0072】
前記モノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート系モノマー、環状アクリレート、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、ビニルエステル系モノマー、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系モノマー、多官能モノマー等が挙げられる。
【0073】
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル、イソボロニルアクリレート等が挙げられる。
【0074】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。共役ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。ビニルケトン系モノマーとしては、メチルビニルケトン等が挙げられる。ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系モノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等が挙げられる。
【0075】
多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジアクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ジペンタエリスリトールポリヘキサノリドヘキサクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチル)−5−エチル−5−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジアクリレート、4,4−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0076】
オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、カルボキシル基変性エポキシアクリレート系樹脂等のエポキシアクリレート系樹脂;ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレン等)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)から得られたウレタン樹脂を、水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等}と反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂;前記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂;ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリ(メタ)アクリルアクリレート系樹脂(重合性の反応基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂)等が挙げられる。
【0077】
上記のうち、(メタ)アクリロイル系基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル系基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの数平均分子量は、5000以下であることが好ましい。さらに、表面硬化性の向上や、作業性向上のための粘度低減のために、モノマーを用いる場合には、分子量が1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
【0078】
重合性モノマー及び/又はオリゴマーの配合量としては特に制限はないが、ビニル系重合体100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましく、10〜50質量部であることが特に好ましい。配合量が前記の範囲内であれば、硬化性組成物の粘度が低く、硬化性が良好で、硬化物特性が優れるため好ましい。
【0079】
本発明の硬化性組成物は補強性シリカを更に含有してもよい。補強性シリカとしては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸等が挙げられる。これらの中でも粒子径が50μm以下であり、比表面積が80m2/g以上のものが補強性の効果から好ましい。なかでも、比表面積(BET吸着法による)が50m2/g以上、通常50〜400m2/g、好ましくは100〜300m2/g程度の超微粉末状のシリカが好ましい。また、表面処理シリカ、例えば、オルガノシラン、オルガノシラザン、ジオルガノシクロポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理されたものは、成形に適した流動性を発現しやすいため更に好ましい。補強性シリカ系のより具体的な例としては、特に限定されないが、ヒュームドシリカの1つである日本アエロジル社のアエロジルや、沈降法シリカの1つである日本シリカ社工業のNipsil等が挙げられる。
【0080】
この補強性シリカの添加量としては特に制限はないが、ビニル系重合体100質量部に対して0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜80質量部、特には1〜50質量部用いることが好ましい。配合量が0.1質量部未満の場合には、補強性の改善効果が充分でないことがあり、100質量部を越えると該硬化性組成物の作業性が低下したりすることがある。また、本発明の補強性シリカは単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0081】
本発明の硬化性組成物には、物性を調整するために各種の添加剤、例えば、難燃剤、老化防止剤、充填材、可塑剤、硬化性調整剤、物性調整剤、密着性付与剤、貯蔵安定性改良剤、溶剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、ビニル系重合体は本来、耐久性に優れた重合体であるので、老化防止剤は必ずしも必要ではないが、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜用いることができる。
【0082】
充填剤の具体的な例としては、カーボンブラックのような補強性充填材;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華及びシラスバルーンなどのような充填材;石綿、ガラス繊維及びフィラメントのような繊維状充填材が使用できる。これら充填材で強度の高い硬化物を得たい場合には、主にカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華などから選ばれる充填材をビニル重合体100質量部に対して0〜250質量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。80〜180質量部の範囲がより好ましい。また、低強度で伸びが大きい硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーンなどから選ばれる充填材を、ビニル系重合体100質量部に対して0〜200質量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。80〜150重量部の範囲がより好ましい。これら充填材は1種類で使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0083】
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等の非芳香族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;ポリエリレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはこれらの水酸基を変換したポリエーテル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油、重量平均分子量(Mw)1000〜7000のTg−10℃以下のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。可塑剤量は、ビニル系重合体100質量部に対して0〜400質量部の範囲で添加することが好ましく、0〜200質量部であることがより好ましく、0〜100質量部であることが特に好ましい。
【0084】
密着性付与剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メチルシラン類などが用いられてよい。
【0085】
また、溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。それらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
【0086】
本発明に係る硬化性組成物は、以上のような成分を含有するが、その製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、攪拌装置、遊星式攪拌装置等を用いて、混合することにより製造することができる。
【0087】
本発明による硬化性組成物は、比較的高温でも貯蔵安定性に優れることから、組成物をより低い粘度で扱うことが可能となり、高温での液状射出成形等に好適である。本発明において、硬化性組成物を流動させる際には、30℃以上80℃未満の温度で行なうのが好ましいが、40℃以上70℃未満の温度で流動させることがより好ましい。また、本発明においては、硬化性組成物を30℃以上80℃未満の温度で流動させるとともに、さらに30℃以上で流動させながら硬化反応をおこなうことができる。すなわち本発明の硬化性組成物を、射出成形(RIM、LIM等)用樹脂として用いることも可能である。
【0088】
本発明の硬化性組成物を成形体として用いる場合の成形方法としては、特に限定されず、一般に使用されている各種の成形方法を用いることができる。例えば、注型成形、圧縮成形、トランフファー成形、射出成形、押し出し成形、回転成形、中空成形、熱成形等が挙げられる。特に自動化、連続化が可能で、生産性に優れるという観点から射出成形によるものが好ましい。
【0089】
本発明の硬化性組成物を成形体として硬化させた場合には、前記成形体を実質的に破損させずに、脱型することができる。成形体が実質的に破損しないとは、成形体がその役割を果たす程度に良好な表面を有することである。
【0090】
本発明の硬化性組成物は、限定はされないが、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、コーティング材、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、注型材料、人工大理石、各種成形材料、及び網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材等の様々な用途に利用可能である。更に、本発明の硬化性組成物から得られたゴム弾性を示す成形体は、ガスケット、パッキン類を中心に広く使用することができる。例えば自動車分野ではボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジン及びサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用などのホース類、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。家電分野では、パッキン、Oリング、ベルトなどに使用できる。具体的には、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等が挙げられる。建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。スポーツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。海洋・土木分野では、構造用材料として、ゴム伸縮継手、支承、止水板、防水シート、ラバーダム、弾性舗装、防振パット、防護体等、工事副材料としてゴム型枠、ゴムパッカー、ゴムスカート、スポンジマット、モルタルホース、モルタルストレーナ等、工事補助材料としてゴムシート類、エアホース等、安全対策商品としてゴムブイ、消波材等、環境保全商品としてオイルフェンス、シルトフェンス、防汚材、マリンホース、ドレッジングホース、オイルスキマー等に使用できる。その他、板ゴム、マット、フォーム板等にも使用できる。
【実施例】
【0091】
<ビニル系重合体の合成>
以下に本発明の実施例を合成例、比較例と共に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」は特に断らない限り質量基準である。
【0092】
(重合体Aの製造方法) 1リットルの褐色セパラブルフラスコにアクリル酸ブチル(以下「BA」ともいう。)246質量部、1,4−ジヨードキシレン6.9質量部、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(以下「V―65」ともいう。)0.96質量部、
酢酸ブチル246質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。内温を60℃に上昇させ重合反応を開始し、2.5時間後にBAの重合率は88%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw16700、Mn10500、Mw/Mn1.59であった。
【0093】
(重合体Bの製造方法) 1リットルの褐色セパラブルフラスコにBA249質量部、1,4−ジヨードキシレン2.3質量部、V―65 0.32質量部、酢酸ブチル249質
量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。内温を60℃に上昇させ重合反応を開始し、3時間後にBAの重合率は89%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw56860、Mn35100、Mw/Mn1.62であった。
【0094】
(重合体Cの製造方法) 1リットルのセパラブルフラスコにBA246質量部、1,4−ジヨードキシレン6.9質量部、2−エチルヘキサン酸錫0.78質量部、酢酸ブチル246質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。内温を65℃に上昇させ、高圧水銀ランプを光源として光照射[照射強度:1.0J/cm2(365nm)]により重合反応を開始し、3時間後にBAの重合率は91%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw16360、Mn11600、Mw/Mn1.41であった。
【0095】
(重合体Dの製造方法) 1リットルの褐色セパラブルフラスコにBA246質量部、ヨウ素2.4質量部、4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(以下「ACVA」ともいう。)4.9質量部、酢酸ブチル246質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。内温を70℃に上昇させ重合反応を開始し、5.5時間後にBAの重合率は85%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw20350、Mn11000、Mw/Mn1.85であった。
【0096】
(重合体Eの製造方法) 重合体A50質量部をジメチルアセトアミド50質量部に溶解させ、アクリル酸カリウム5.2質量部を加え、70℃で8時間加熱攪拌した。ジメチルアセトアミドを減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、残渣にトルエンを加え、不溶分をろ過により除去した。濾液のトルエンを再び減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、重合体Eを得た。得られた重合体のアクリロイル基数は1.8であった。
【0097】
(重合体Fの製造方法) 重合体B50質量部をジメチルアセトアミド50質量部に溶解させ、アクリル酸カリウム1.7質量部を加え、70℃で8時間加熱攪拌した。ジメチルアセトアミドを減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、残渣にトルエンを加え、不溶分をろ過により除去した。濾液のトルエンを再び減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、重合体Fを得た。得られた重合体のアクリロイル基数は1.8であった。
【0098】
(重合体Gの製造方法) 重合体C50質量部をジメチルアセトアミド50質量部に溶解させ、アクリル酸カリウム5.2質量部を加え、70℃で8時間加熱攪拌した。ジメチルアセトアミドを減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、残渣にトルエンを加え、不溶分をろ過により除去した。濾液のトルエンを再び減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、重合体Gを得た。得られた重合体のアクリロイル基数は1.8であった。
【0099】
(重合体Hの製造方法) 重合体A50質量部を酢酸エチル50質量部に溶解させ、アミノエタノール5.9質量部を加え、70℃で8時間加熱攪拌した。未反応のアミノエタノールを精製除去し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥した。得られた重合体10質量部を再び酢酸エチル10質量部に溶解させ、アクリル酸エチルイソシアネート(以下「AOI」ともいう)0.32質量部、トリエチルアミン0.5質量部を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。未反応のAOI、トリエチルアミンを精製除去し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、重合体Hを得た。得られた重合体のアクリロイル基数は1.7であった。
【0100】
(重合体Iの製造方法) 重合体D50質量部をテトラヒドロフラン200質量部に溶解させ、グリシン6.8質量部を加え、50℃で8時間加熱攪拌した。未反応のグリシンを精製除去し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥した。得られた重合体10質量部を酢酸エチル10質量部に溶解させ、アクリル酸−4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテル(以下「4HBAGE」ともいう)0.55質量部、テトラブチルアンモニウムブロマイド(以下「TBAB」ともいう)1.5量部、70℃で3時間加熱攪拌した。未反応の4HBAGE、TBABを精製除去し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、重合体Iを得た。得られた重合体のアクリロイル基数は1.8であった。
【0101】
(重合体Jの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にアクリル酸ブチル(以下「BA」ともいう。)341質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(7)、以下「NMP」ともいう。]17.0質量部、酢酸ブチル341質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。2時間後にBAの重合率は74%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw8600、Mn6230、Mw/Mn1.38であった。次にオイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にPBA重合体215質量部、BA45質量部、メタクリル酸(以下「MAA」ともいう。)6質量部、酢酸ブチル221質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBAの重合率は96%、MAAの重合率は98%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへ4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(以下「4HBAGE」ともいう。)23質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド(以下「TBAB」ともいう。)9質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点での4HBAGEの反応率は97%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw13150、Mn7460、Mw/Mn1.76、E型粘度(25℃)68900mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは2.6個であった。
【0102】
【化7】

【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
重合体E〜Jを用いて表3に示す組成物を作製した。配合量の単位は質量部である。これらの組成物を型枠に充填し、150℃、5分間硬化させることにより、約2mm厚のゴム状の硬化物が得られた。
表3における略号は以下のものを示す。
・IBXA:イソボロニルアクリレート
・ナイパーBW:ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂社製
【0106】
得られた硬化物について、ゲル分率の測定をおこなった(表3)。ただし、ゲル分率は、硬化物の未硬化部分抽出前と抽出後の硬化物の重量比により求めた。未硬化部分の抽出は、硬化物をトルエンに浸漬(25℃、3日間)することにより行った。
【0107】
得られた硬化物について、2号ダンベル試験片を打ち抜き、JIS K 7113に準拠して引張試験をおこなった。測定条件は23℃×55%RH、引張速度200mm/min)とした。
【0108】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の硬化性組成物は、優れた耐候性や耐熱性等を有するため、建築用途、自動車関連用途、電気・電子用途等で幅広く応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を、1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物であって、該ビニル系重合体が下記の工程により製造されたものであることを特徴とする硬化性組成物。
(1)ハロゲン化合物の存在下で、ビニル系モノマーのラジカル重合反応を行い、末端にハロゲン原子を有するビニル系重合体を製造する工程。
(2)上記ビニル系重合体の末端のハロゲン原子を、(メタ)アクリロイル基に置換する工程。
【請求項2】
上記ハロゲン化合物が、1分子あたり2個のヨウ素原子を含有し、該ヨウ素原子が芳香族環に結合した炭素原子に結合した構造を有するヨウ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記(1)の工程で得られたビニル系重合体が、(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記(1)の工程で得られたビニル系重合体の数平均分子量が、3000〜50000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
上記(1)の工程で得られたビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.0未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
更に、硬化剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2010−265399(P2010−265399A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118490(P2009−118490)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】