説明

硬化性組成物

【課題】貯蔵安定性が改善された硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、金属塩を含有する充填剤(B)と、分子内に下記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)とを含有することを特徴とする硬化性組成物である。充填剤(B)に含有されている金属塩をアクリルオリゴマー(C)のシクロヘキセン構造内に取り込み触媒作用を抑制し、貯蔵安定性の向上を図る。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性シリル基を含有する重合体、金属塩を含有する充填剤及びアクリルオリゴマーを含有し、接着剤、シーリング材として有用な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋性シリル基を有する重合体を含有する、いわゆる変成シリコーン系の硬化性組成物は、作業性、広温度領域での柔軟性が良いことから建築物の内外装の部材間やジョイント部の目地に充填し、風雨の侵入を防止する建築用シーリング材や、各種基材を接着させる接着剤等として広く使用されている。
【0003】
架橋性シリル基を有する重合体とアミンなどの硬化剤とを配合した変成シリコーン系の硬化性組成物を混合状態で貯蔵すると、貯蔵中に硬化反応が進行し、貯蔵安定性が悪化する。
【0004】
そのため、従来では、1成分型の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムを配合したり、一液型湿気硬化性樹脂組成物にウレタン化合物で表面処理した炭酸カルシウムを含むことにより、貯蔵安定性を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−176411号公報
【特許文献2】特開2000−44833号公報
【特許文献3】特開平10−245221号公報
【特許文献4】特許第3685031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、架橋性シリル基を有する重合体と脂肪酸処理された炭酸カルシウムとを配合した変成シリコーン系シーリング材を硬化させると、湿気存在下で炭酸カルシウムの脂肪酸処理剤の金属による触媒作用により重合体のシリル基が加水分解縮合し、貯蔵安定性が悪くなる、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、貯蔵安定性が改善された硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次に示す(1)〜(5)である。
(1) 加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、
金属塩を含有する充填剤(B)と、
分子内に下記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

(2) 前記金属塩を含有する充填剤(B)が、コロイダル炭酸カルシウムであることを特徴とする上記(1)に記載の硬化性組成物。
(3) 前記金属塩を含有する充填剤(B)が、更に、重質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする上記(2)に記載の硬化性組成物。
(4) コロイダル炭酸カルシウムの含有量が、重合体(A)100質量部に対して50質量部以上250質量部以下であり、
アクリルオリゴマー(C)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の硬化性組成物。
(5) 前記アクリルオリゴマー(C)が、3官能以上の多官能ポリエステルアクリレートであることを特徴とする上記(1)から(4)の何れか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充填剤(B)に含有されている金属塩の触媒作用を抑制することができるため、貯蔵安定性が改善された硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
本発明の硬化性組成物(以下、「本発明の組成物」という。)は、加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、金属塩を含有する充填剤(B)と、分子内に下記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)とを含有することを特徴とする硬化性組成物である。
【化2】

【0012】
<加水分解性シリル基を含有する重合体(A)>
加水分解性シリル基を含有する重合体(A)(以下、「重合体(A)」という。)について以下に説明する。本発明における、重合体(A)は、加水分解性シリル基を含有する重合体である。重合体(A)は、特に制限されず、例えば、変成シリコーン系ポリマーが挙げられる。変成シリコーン系ポリマーは、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基および/または加水分解性基により、シロキサン結合を形成し架橋して硬化物となる性質を有する。変成シリコーン系ポリマーは、その主鎖としては、例えば、ポリエーテル重合体、ポリエステル重合体、エーテル/エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物重合体、ジエン系化合物重合体が挙げられる。加水分解性シリル基はこのような主鎖の末端または側鎖に結合していればよい。
【0013】
ポリエーテル重合体としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリフェニレンオキシドの繰返し単位を有するものが例示される。ポリエステル重合体としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、ピルビン酸、乳酸等のカルボン酸、カルボン酸無水物、それらの分子内および/または分子間エステルおよびそれらの置換体を繰返し単位として有するものが例示される。エーテル/エステルブロック共重合体としては、例えば、上述したポリエーテル重合体に用いられる繰返し単位および上述したポリエステル重合体に用いられる繰返し単位の両方を繰返し単位として有するものが例示される。
【0014】
エチレン性不飽和化合物重合体およびジエン系化合物重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の単独重合体およびこれらの2種以上の共重合体等が挙げられる。より具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0015】
加水分解性シリル基は、ケイ素原子と直接結合した加水分解性基を有するケイ素原子含有基またはシラノール基であれば特に制限されない。加水分解性シリル基は、湿気、架橋剤等の存在する条件下で縮合触媒を使用することにより脱水反応等の縮合反応を起こすことができる。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が挙げられる。中でも、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
【0016】
変成シリコーン系ポリマーは、その製造方法について特に制限されない。例えば、特公昭61−18569号公報に記載されているような従来公知の方法によって製造することができる。また、市販品としては、例えば、カネカ社製のMSポリマーS−203、MSポリマーS−303、MSポリマーS−903、MSポリマーS−911、サイリルポリマーSAT200、サイリルポリマーMA430、サイリルポリマーMAX447;旭硝子社製のエクセスターESS−3620、エクセスターESS−3430、エクセスターESS−2420、エクセスターESS−2410等が挙げられる。
【0017】
重合体(A)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
重合体(A)は、その分子量について特に限定されず、粘度、作業性の観点から、数平均分子量(Mn)が、1,000〜30,000であるのが好ましく、3,000〜15,000であるのがより好ましい。このような範囲の場合、硬化性組成物の粘度が適度となり、取り扱いが容易となる。尚、本発明においては、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定されたものである。
【0019】
<充填剤(B)>
充填剤(B)について説明する。本発明の組成物では、充填剤(B)は、金属塩を含有するものが用いられる。本発明に用いられる充填剤(B)は、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などが挙げられる。炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウムが挙げられる。本発明では、コロイダル炭酸カルシウムが好適に用いられる。また、脂肪酸、変性脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等により表面処理された炭酸カルシウムも用いることができる。脂肪酸には、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などが含有されており、脂肪酸等により表面処理された炭酸カルシウムには、Na、Kが含まれる。具体的には、脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、カルファイン200(丸尾カルシウム社製)、白艶華CCR(白石工業社製)等が好適に用いられる。変性脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、ライトンA−4(重質炭酸カルシウム、備北粉化工業社製)、脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムとして、シーレッツ200(丸尾カルシウム社製)、スノーライトSS(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製)等が好適に用いられる。中でも、脂肪酸等で表面処理されたものが、特に好ましい。表面処理された炭酸カルシウムは、チクソ性を高くするため形状保持性および作業性に寄与する。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、充填剤(B)としてコロイダル炭酸カルシウムが用いられる場合、コロイダル炭酸カルシウムの含有量は、上述した重合体(A)100質量部に対し、50質量部以上250質量部以下であるのが好ましい。これは、コロイダル炭酸カルシウムの含有量が重合体(A)100質量部に対して50質量部より小さいと粘度とチクソ性が低下するからである。また、コロイダル炭酸カルシウムの含有量が重合体(A)100質量部に対して250質量部を越えると硬化後の組成物の物性が低下するからである。
【0021】
<シクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)>
分子内に上記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)について以下に説明する。本発明において使用することのできるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)であれば、特に限定されないが、3官能以上のアクリルオリゴマーであることが好ましい。シクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)に結合されているアクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジ(メタ)アクリレート等の2官能のアクリルオリゴマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌ−ル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等の3官能のアクリルオリゴマー;ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等の4官能のアクリルオリゴマー;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5官能以上のアクリルオリゴマー;およびこれらの多官能アクリルオリゴマーの各種誘導体から得られるオリゴマーなどが挙げられる。
【0022】
これらのうち、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、低粘度、低毒性、高硬化性であることから好ましい。
【0023】
また、シクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)の数平均分子量(Mn)は、170以上20000以下であることが好ましく、より好ましくは500以上5000以下である。
【0024】
また、アクリルオリゴマー(C)の含有量は、上述した重合体(A)100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であるのが好ましい。これは、アクリルオリゴマー(C)の含有量が重合体(A)100質量部に対して1質量部より小さいと貯蔵安定性が低下するからである。また、アクリルオリゴマー(C)の含有量が重合体(A)100質量部に対して20質量部を越えると硬化後の組成物の物性が低下するからである。
【0025】
このような分子内に上記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)としては、市販品を利用することができ、東亞合成社製のM−8030等が例示される。
【0026】
重合体(A)に、多官能のポリエステルアクリレートなどの分子内に上記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)を添加することにより、コロイダル炭酸カルシウムの脂肪酸処理剤に含有されているK、Na等の金属塩をシクロヘキセン構造のアルケン部分で結合させることにより金属塩の触媒作用を抑制することができ、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0027】
また、本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、金属塩を含有する充填剤(B)以外の充填剤、可塑剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、安定剤、分散剤、溶剤が挙げられる。
【0028】
充填剤としては、各種形状の有機または無機のものが挙げられる。上記のような金属塩を含有する充填剤(B)以外に、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック:これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物等が挙げられる。
【0029】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等を用いることができる。また、連鎖移動剤を用いず、150℃以上350℃以下の重合温度で重合され、数平均分子量が500以上5000以下のアクリル重合体を用いることができる。
【0030】
シランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、特に湿潤面への接着性を向上させる効果に優れ、更に汎用化合物であることから好適に挙げられる。
【0031】
顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでも両方でもよい。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を用いることができる。
【0032】
染料は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、樹脂成形品が黒色である場合には、黒色染料、黄色染料、赤色染料、青色染料、褐色染料が挙げられる。
【0033】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
【0035】
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0036】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
【0037】
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
【0038】
安定剤としては、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。
【0039】
分散剤は、固体を微細な粒子にして液中に分散させる物質をいい、ヘキサメタリン酸ナトリウム、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム、界面活性剤等が挙げられる。
【0040】
上記の各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明の組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記各成分を減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分に混練し、均一に分散させる等により混合する方法が挙げられる。得られた本発明の組成物は、密閉容器中で貯蔵され、使用時に空気中の湿気により常温で硬化物を得ることができる。
【0042】
このように、本発明の組成物は、加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、金属塩を含有する充填剤(B)と、分子内に上記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)とを含有することを特徴とする硬化性組成物である。コロイダル炭酸カルシウムの脂肪酸処理剤に含有されているK、Na等の金属塩をシクロヘキセン構造のアルケン部分で結合し、触媒作用を抑制することで、貯蔵安定性を向上させることができ、優れた硬化性と接着性を確保することができる。
【0043】
本発明の組成物の用途は特に限定されないが、本発明の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、建築用、土木用、コンクリート用、木材用、金属用、ガラス用、プラスチック用等のシーリング材、シール剤、ポッティング剤、弾性接着剤、コーティング材、ライニング材、接着剤、コンクリートやモルタル中の構造用接着剤、ひび割れ注入材等の用途に好適に用いられる。また、建築用シーリング材としては、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材等が挙げられ、特に変成シリコーン系シーリング材に好適に用いることができる。
【0044】
また、本発明の組成物は、難接着性部材用の接着剤としても好適に使用できる。本発明の組成物を適用できる難接着性部材の材料としては、例えば、ABS樹脂、AES樹脂、アルミの焼き付け塗装、EPDM、軟質塩化ビニル樹脂類、ガラス、SUSが挙げられる。これらの難接着性部材は、例えば、自動車、車輌、建築、電子部品等に使用される。また、本発明の組成物は、難接着性部材以外の部材にも使用することができる。
【0045】
本発明の組成物を難接着性部材に接着させる方法は特に限定されない。例えば、本発明の組成物を難接着性部材に塗布、浸漬して、本発明の組成物を厚さ1mm以上10mm以下で使用し、難接着性部材同士または難接着性部材と他の部材とを接着させることができる。本発明の組成物は湿気等の水分によって硬化することができ、硬化は5℃以上40℃以下、30%RH以上70%RH以下の条件下で行うことが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<硬化性組成物の調製(実施例1〜7および比較例1、2)>
「表1」に示す各成分を、同表に示す添加量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して、「表1」に示される各組成物を調製した。各々の実施例、比較例における各成分の添加量(質量部)を「表1」に示す。また、アクリルオリゴマー(C)1、(C)2の各分子量、官能基、酸価、示性式を「表2」に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
上記「表1」に示される各成分は、以下のとおりである。
・変成シリコーンポリマー:MSP−S810、カネカ社製
・コロイダル炭酸カルシウム:カルファイン200、丸尾カルシウム社製、Na濃度:360ppm程度
・重質炭酸カルシウム:スーパーS、丸尾カルシウム社製
・ポリエステルアクリレート1:アロニクスM8560、東亞合成社製
・ポリエステルアクリレート2:アロニクスM8030、東亞合成社製
【0050】
<貯蔵安定性>
上記のようにして得られた配合直後の各組成物をゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により、初期の各組成物の分子量を測定した後、配合直後の各組成物を密閉容器に入れ、温度50℃、95%RHの雰囲気下で14日間貯蔵した後、GPCにより、同様に、貯蔵後の各組成物の分子量を測定した。結果を上記「表1」に示す。「表1」中、○、△、×の評価基準は以下の通りである。
・分子量の増加率が、150%未満で分子量が殆ど増加せず貯蔵安定性が良好なもの:○
・分子量の増加率が、150%から300%のもの:△
・分子量の増加率が、300%超で分子量が大幅に増加し、貯蔵安定性が不良のもの:×
【0051】
「表1」に示すように、重合体(A)にアクリルオリゴマー(C)1、(C)2を添加しない組成物(比較例1および2)は、分子量が増大し、貯蔵後の貯蔵安定性が悪化した。一方、重合体(A)にアクリルオリゴマー(C)1、(C)2を添加した組成物(実施例1〜7)は、分子量が貯蔵前後でほとんど変化しないか、分子量の増大が抑制され、貯蔵安定性が改善された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明に係る硬化性組成物は、貯蔵安定性が改善されるので、コンクリートや金属等の接着剤、建築用シーリング材等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を含有する重合体(A)と、
金属塩を含有する充填剤(B)と、
分子内に下記一般式(1)で示されるシクロヘキセン構造のアルケンを含有するアクリルオリゴマー(C)とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

【請求項2】
前記金属塩を含有する充填剤(B)が、コロイダル炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記金属塩を含有する充填剤(B)が、更に、重質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
コロイダル炭酸カルシウムの含有量が、重合体(A)100質量部に対して50質量部以上250質量部以下であり、
アクリルオリゴマー(C)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記アクリルオリゴマー(C)が、3官能以上の多官能ポリエステルアクリレートであることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2011−201995(P2011−201995A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69694(P2010−69694)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】