説明

硬化性自己支持形構造および方法

【課題】特に歯科材料として有用な新規組成物を提供する。
【解決手段】結晶成分を含む樹脂系と、60重量%より多い充填材系と、開始剤系とを含む組成物であって、第1の形状と、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性(malleability)とを有する硬化性自己支持形構造の形態であるが、ただし、充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料、特に歯科用材料、ならびに製造方法および使用方法に関する。これらの材料は、輸送および貯蔵の間に維持することができる所望の形状へと形成するために十分な内部強度を有し、かつ十分な展性(malleability)を有し後に第2の形状へとカスタマイズし硬化させることが可能である。これらの材料を、インレー、オンレー、ベニア、仮クラウン、永久クラウン、ブリッジ、ならびに充填材、歯科矯正装置、歯の複製またはスプリントおよび歯科用印象用トレーのような口腔補綴装置を含む様々な用途において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
回復歯科学は、今日の歯科産業における重要な市場である。特に、仮クラウンおよび永久クラウンによる歯の修復は共通の手順であり、一般的に複数回の歯科予約を必要とする。現在の技術は、ペースト、2部粉末/液体系、予成形金属仮クラウンおよびセラミックまたは磁器/金属永久クラウンを使用する。
【0003】
現在入手可能な重合性樹脂は、一般的にフリーラジカル重合性モノマー(例えば、アクリレート、メタクリレートおよびアクリルアミド)である。これらは、フリーラジカル重合および重合速度の制御のための促進剤または活性剤として、第三級アミンのような還元剤、およびペルオキシドのような酸化剤を一般的に含む開始剤系と一緒に使用される。
【0004】
暫定的な(すなわち、仮の)歯科回復を行うための一般的手続きは、以下の工程を含む。最初に、歯を調製する前にアルギナート印象を取る。印象をすすぎ、取り置き、そして湿潤紙タオルに包む。次いで、歯を調製し、天然の歯に適合するように正確な濃淡のアクリル粉末を選択する。アクリル液体樹脂およびアクリルポリマー(そのうち一つは酸化剤を含み、他方は還元剤を含む)を一緒に混合し、そして印象に置く。組成物が濃厚化し、不透明な外観を形成するまで(約45〜60秒)、印象を別の場所に置く。一方、調製された歯および周囲組織をワセリンで覆う。これは、調製物からの仮アクリルの容易な除去
を確実にし、アクリル混合物による歯および組織を刺激から保護する。アクリル混合物による印象を口内に取り付け、取り外し可能な状態に硬化されるために十分な時間で所定の位置に保持する。アクリル材料を印象から除去し、著しい過剰量のアクリルを削除する。アクリル材料がゴム状態の間、アクリル材料を口の内外に置く。アクリルが完全に硬化するまで、アクリル材料を口から除去し、取り置く。アクリル回復剤の適合をチェックし、必要に応じて適合するように適応させる。過剰量のアクリルをアクリルバーまたはストーンで削除し、平滑な仕上げへと研磨する。次いで、仮アクリルを所定の位置へとセメント結合させる。
【0005】
液体樹脂およびポリマー粉末の初期混合を排除し、それによって、より能率的にかかる補綴装置を作成することが望ましい。また、印象を取る工程を排除することも望ましい。口内で印象をとるために一般に使用される歯科ワックスは、患者の口部にカスタマイズされる装置を作成するために多くの望ましい性質を示す。これらの性質は展性、ローメモリー、自己支持形になるために十分な強度、ならびに図1に示される熱および流動学的性質を含む。これらのワックス(例えばパラフィン)材料は、一般的に、55℃付近の融点を有し、40℃付近で軟化転移を有する。弾力率および粘着率G’およびG’’は25℃において約106パスカル(Pa)であり、べとつくことなく容易に変形させるために十分に低い。これらの材料は、患者の口部に適合するようにカスタマイズされる装置を作成するための望ましい性質を示すが、それらは(例えば、重合により)硬化可能ではなく、それらは耐圧強度および耐磨耗性のような望ましい性質を有する。結果として、これらの材料は歯科用補綴の用途に適切でない。
【0006】
米国特許第6,057,383号(ボルケル(Volkel)ら)は、重合性ワックスをベースとし、展性および硬化性であるが、一般的に0〜60重量%の少量の繊維をベースとするかまたは繊維をベースとせず、かつ一般的に20重量%超の多量のワックスをベースとする歯科用材料を開示する。このように、これらの材料は、一般的に乏しい機械的特性、例えば曲げ強さおよび耐摩耗性を有する。他の熱可塑性の成形コンパウンドが調製されるが、これらは一般的に、含まれるポリマーの高分子量のため、それらの融点(Tm)超では高い粘性があり、Tm未満ではいくらか弾性である。さらに、これらの組成物は一般的に、展性になる前に、著しく室温より高く加温されなければならない。
【0007】
特に室温または体温で、すでに十分展性である所望の形状に予成形することができる材料を高充填し、特注形状の装置を形成することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6057383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物を提供する。組成物は、第1の形状を有する硬化性、自己支持形(すなわち、自立)構造の形態である。自己支持形構造は、第2の形状に再形成される十分な展性を有し、それによって、装置の簡略化されたカスタマイズ、例えば、歯科用補綴装置の簡略化カスタマイズされた適合を提供する。第2の形状に再形成されたら、例えば、改善された機械的特性を有する硬化組成物を形成するために、標準の光重合条件下でフリーラジカル硬化メカニズムを使用して、組成物を硬化することができる。意義深いことに、本発明の組成物に関して、第2の形状の構造を硬化時に、硬化構造は追加の化粧材料(veneering material)を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において、「樹脂系」は1以上の樹脂を含み得、それぞれ、1以上のモノマー、オリゴマーおよび/または重合性ポリマーを含み得る。
【0011】
用語「自己支持形」は、自立時に(すなわち、包装または容器の支持なしで)、少なくとも約2週間、室温(すなわち、約20℃から約35℃)で著しく変形することなく、組成物が寸法安定性であり、かつその形状(例えば、クラウンの予成形形状)を維持することを意味する。好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも約1ヵ月間、より好ましくは少なくとも約6ヵ月間、室温で寸法安定性である。好ましくは、本発明の組成物は、室温より高い温度、より好ましくは約40℃まで、より好ましくは約50℃まで、そしてより好ましくは約60℃までで寸法安定性である。開始剤系を活性化する条件がない場合、および重力以外の外部の力がない場合、この定義は適用される。
【0012】
用語「十分な展性(mallability;柔軟性、順応性)」は、自己支持形構造が、穏やかな力(すなわち、軽い指圧から、歯科用複合器具のような小型ハンドツールの手動作動により適用される力の範囲の力)の下で、特注形成され得、例えば、患者の口部に適合され得ることを意味する。
【0013】
硬化(例えば、加硫)前の高い展性(好ましくは、室温または体温より高い加熱なしで)および硬化後の高い強度(好ましくは、少なくとも約25MPaの曲げ強さ)のユニークな組合せは、多数の適用可能性を有する組成物を提供する。これらの適用としては、制限されないが、仮、中間および永久クラウンおよびブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、インプラント、総義歯および義歯、ならびに歯科用印象用トレー、歯科矯正装置(例えば、保持装置、ナイトガード)、歯の複製またはスプリント、顎顔面補綴および他のカスタマイズされた構造を含む歯科用回復剤および歯科用補綴が挙げられるが、制限されない。また、例えば、充填材(特に、包装可能な材料)として、本発明の組成物を使用することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、結晶成分を含む樹脂系と、60重量%より多い充填材系(好ましくは、70重量%より多い充填材系)と、開始剤系とを含む組成物である。この組成物は、第1の形状を有する硬化性自己支持形構造の形態である。この自己支持形構造は、好ましくは、約15℃から38℃の温度(より好ましくは、一般的な室温および体温を包括する約20℃から38℃、そして最も好ましくは室温)で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する。有利に、本発明の組成物は、展性になるために体温より高く(または、好ましくは室温より高く)まで加熱する必要がない。
【0015】
一般的に、および好ましくは、少なくとも一部の充填材系は、粒子状充填材を含む。好ましくは、本実施形態および様々な他の実施形態において、充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維は20重量%未満の量で存在する。
【0016】
結晶成分は、自己支持形の第1の形状を維持するように補助するモルフォロジーを提供する。このモルフォロジーは、三次元網状組織(連続的または不連続的)構造であり得る非共有構造を含む。所望である場合、結晶成分は、重合および/または架橋のための部位を提供する1以上の反応基を含み得る。かかる結晶成分が存在しないか、または反応基を含まない場合、エチレン系不飽和成分のようなもう1つの樹脂成分によって、かかる反応部位は提供される。
【0017】
従って、特定の実施形態に関して、樹脂系は、好ましくは少なくとも1つのエチレン系不飽和成分を含む。好ましいエチレン系不飽和成分は、モノ−、ジ−またはポリ−アクリレートおよびメタクリレート、不飽和アミド、ビニル化合物(ビニルオキシ化合物を含む)ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択さえる。このエチレン系不飽和成分は結晶成分であり得るが、特定の好ましい実施形態においては非晶質である。
【0018】
結晶成分としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタンまたはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、結晶成分は、第一級ヒドロキシル基末端基を含む飽和、直鎖、脂肪族ポリエステルポリオールを含む。例えば、結晶成分は、任意に樹枝状、ハイパーブランチドまたは星状構造を有し得る。
【0019】
結晶成分は、任意に、結晶性ペンダント部分および次の一般式:
【化1】

(式中、Rは水素または(C1〜C4)アルキル基であり、Xは−CH2−、−C(O)O−、−O−C(O)−、−C(O)−NH−、−HN−C(O)−、−O−、−NH−、−O−C(O)−NH−、−HN−C(O)−O−、−HN−C(O)−NH−または−Si(CH32−であり、mはポリマー中の繰返し単位の数(好ましくは2以上)であり、かつnは、結晶ドメインまたは結晶領域を含有するポリマーを形成するために十分な側鎖長および構造を提供するために十分大きい)を有するポリマー材料(すなわち、2以上の繰返し単位を有する材料、それによってオリゴマー性材料が含まれる)であり得る。
【0020】
結晶成分の代わり、または結晶成分と組み合わせて、組成物は、第1の形状を維持するように補助する三次元網状(連続的または非連続的)構造であり得る非共有構造を含む組成物にモルフォロジーを提供できる充填材を含み得る。好ましくは、かかる充填材はナノスコピック粒子を有し、より好ましくは、充填材はナノスコピック粒子を有する無機材料である。非共有構造の形成を強化するために、無機材料は、表面ヒドロキシル基を含み得る。最も好ましくは、無機材料はヒュームドシリカを含む。
【0021】
さらに、1以上の界面活性剤の使用も、かかる非共有構造の形成を強化することができる。特に好ましい組成物は、樹脂系および開始剤系に加えて、結晶成分またはナノスコピック粒子状充填材(好ましくは、ミクロンサイズ粒子状充填材およびナノスコピック粒子状充填材)を含む充填材系のいずれか、および界面活性剤系、あるいは結晶成分および充填材系の両方および界面活性剤系を含む。本明細書で使用される場合、充填材系は1以上の充填材を含み、かつ界面活性剤系は1以上の界面活性剤を含む。
【0022】
従って、本発明のもう1つの実施形態は、樹脂系と、少なくとも一部分が、約50ナノメートル(nm)以下の平均一次粒子径を有するナノスコピック粒子を含む無機材料である充填材系と、開始剤系と、界面活性剤系とを含む組成物を含む。この組成物は、第1の形状と、好ましくは約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性とを有する硬化性自己支持形構造の形態である。界面活性剤系およびナノスコピック粒子を有する、かかる好ましい実施形態において、樹脂系は、好ましくは、少なくとも1つのエチレン系不飽和成分を含み、充填材系は50重量%より多い量で存在する。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、モノ−、ジ−またはポリ−アクリレートおよびメタクリレート、不飽和アミド、ビニル化合物ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される非晶質成分と、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタン、および結晶性ペンダント部分と以下の一般式
【化2】

(式中、Rは水素または(C1〜C4)アルキル基であり、Xは−CH2−、−C(O)O−、−O−C(O)−、−C(O)−NH−、−HN−C(O)−、−O−、−NH−、−O−C(O)−NH−、−HN−C(O)−O−、−HN−C(O)−NH−または−Si(CH32−であり、mはポリマー中の繰返し単位の数(好ましくは、2以上)であり、かつnは、結晶ドメインまたは結晶領域を含有するポリマーを形成するために十分な側鎖長および構造を提供するために十分大きい)とを有するポリマー材料(オリゴマー材料を含む)、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される結晶成分とを含む樹脂系を含む。この組成物はさらに、約60重量%より多い充填材系と、開始剤系とを含み、第1の形状を有する硬化性自己支持形構造の形態である。自己支持形構造は、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する。好ましくは、充填材系は繊維を含み、組成物の全重量を基準として繊維は20重量%未満の量で存在する。
【0024】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明の組成物は、次式
【化3】

(式中、各Qは、独立して、ポリエステルセグメント、ポリアミドセグメント、ポリウレタンセグメント、ポリエーテルセグメントまたはそれらの組み合わせを含む)の結晶化合物を含む樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物であって、第1の形状と、第2の形状へと形成されるために十分な展性とを有する硬化性自己支持形構造の形態である。
【0025】
本発明の組成物は、ロープ形(充填材に関しては)、球形、シート形、または複合もしくは半仕上げ形状である予成形物品(予成形クラウンと同様)の形態であり得る様々な歯科用製品の形態であり得る。一般的に、本明細書で指される歯科用製品は硬化性形態であるが、この用語はまた、その硬化形態で最終的歯科用製品に関して使用され得る。
【0026】
好ましい歯科用製品としては、予成形クラウン、予成形インレー、予成形オンレー、予成形ブリッジ、予成形ベニア、予成形歯科矯正装置、予成形顎顔面補綴、予成形の歯の複製または予成形の歯スプリントが挙げられる。あるいは、歯科用製品は、(包装可能な材料のような)充填材であり得る。特に好ましい歯科用製品としては、予成形クラウンおよび予成形ブリッジが挙げられ、そしてより好ましくは予成形クラウンである。
【0027】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含み、第1の形状と、第2の形状へと形成されるために十分な展性とを有する硬化性自己支持形構造の形態である組成物を含む予成形歯科用クラウンを提供する。
【0028】
本発明は、歯科用印象用トレーも提供する。好ましいトレーは、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含み、第1の形状と、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性とを有する硬化性自己支持形構造の形態である。好ましくは、歯科用印象用トレーは、少なくとも1つの構造表面を含む。好ましくは、構造表面は多孔性基材により形成される。あるいは、構造表面はマイクロ複製表面である。
【0029】
本発明は、組成物の調製方法も提供する。この方法は、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを組み合わせて混合物を形成する工程と、混合物を、第1の形状を有する硬化性自己支持形構造へと形成する工程とを含み、第1の形状を有する硬化性自己支持形構造は、第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する。
【0030】
本発明は、歯科用製品の調製方法も提供する。この方法は、組成物が、第1の半仕上げ形状(例えば、予成形クラウンまたは予成形ブリッジの形状)を有する硬化性自己支持形展性構造の形態である、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物を提供する工程と、自己支持形展性構造を第2の形状へと形成する工程と、第2の形状を有する自己支持形構造を硬化して歯科用製品を形成する工程とを含む。好ましくは、自己支持形展性構造を第2の形状へと形成する工程は、約15℃から38℃の温度で生じる。本明細書において、自己支持形展性構造を第2の形状へと形成する工程は、軽い指圧から、歯科用複合器具のような小型ハンドツールの手動作動により適用される力の範囲の力の下で生じる。
【0031】
本発明は、歯科用トレーを調製する方法も提供する。この方法は、組成物が、予成形歯科用トレーの第1の半仕上げ形状を有する硬化性自己支持形展性構造の形態である、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物を提供する工程と、自己支持形展性構造を、患者に適合するように特注製造された第2の形状へと形成する工程と、第2の形状を有する自己支持形構造を硬化して歯科用トレーを形成する工程とを含む。好ましくは、自己支持形展性構造を第2の形状へと形成する工程は、約15℃から38℃の温度で生じる。
【0032】
本発明は、式
【化4】

(式中、各Qは、独立して、ポリエステルセグメント、ポリアミドセグメント、ポリウレタンセグメント、ポリエーテルセグメントまたはそれらの組み合わせを含む)の化合物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】歯科用ワックスの流体力学的応答(ベースプレートワックス(Baseplate Wax),オールシーズン#2ピンク(All−Season #2 Pink),パターソン デンタル サプリ(Patterson Dental Supply)(ミネソタ州、セントポール))。固体系は弾性率G’を表し、開放系は粘性率G’’を表す。
【図2】比較例1(四角)および実施例1(円)の流動学。固体系は弾性率G’を表し、開放系は粘性率G’’を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、第1の形状、好ましくは歯科用クラウンの形状を有する硬化性、自己支持形(すなわち、自立)構造の形態である、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物を提供する。樹脂系(1以上の樹脂)、充填材系(1以上の充填材)および開始剤系(1以上の開始剤)を以下の通り選択する。初期自己支持形構造を形成するために、組成物を比較的容易に成型することができ、自己支持形構造は、室温で、少なくとも約2週間、その第1の形状を維持することができ(開始剤系を活性化する条件がなく、および重力以外の外部の力がなく)、自己支持形構造は、第2の形状に再形成される十分な展性を有する(好ましくは、約15℃から38℃の温度、より好ましくは、約20℃から38℃の温度、そして最も好ましくは室温)で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する。
【0035】
本発明の組成物は、予成形された歯科用製品に特に十分に適切である。本明細書で使用される場合、予成形された歯科用製品は、患者に適合させるために次いで変性される(例えば、成型される、適合される、削除される)ことができる(第2の形状)所望の半仕上げ形状(第1の形状)で、歯科医に提供されるものである。本明細書において、予成形された物品の半仕上げ形状は、成形される最終成形物品のファクシミリであり、ロープ、球またはシートの形状でない。これは、更に詳細に以下で記載される。一般的に、これは、本発明の組成物が、好ましくはポジ印象およびネガ印象による型を使用して形状に形成さ
れたことを意味し、そして得られた成形材料は、形成デバイス、好ましくは型から、著しい変形を生じずに開放された。
【0036】
本発明の組成物は、予成形クラウンおよび複雑な形状を有する他の予成形歯科用製品のために特に有用であるが、それらは、充填材等を調製するための材料として使用することができる。型、包装、輸送等から成型、除去する時、後者に関して必要な条件は厳密ではなく、予成形クラウンおよび複雑な形状を有する他の予成形歯科用製品に関しては、一般的に充填材がロープ状で歯科医に提供されるため、厳密である。
【0037】
一般的に、本発明の硬化性自己支持形組成物は、ワックスの融点未満でワックスに類似した流動学的特性を有し、ここではそれらを比較的容易に変形(すなわち、それらは展性である)することができ、低弾性回復を示す。しかしながら、本発明の組成物は、それらの軟化点以上では自由流動流体(すなわち液体)でない。すなわち、本発明の組成物は、穏やかな(例えば手)圧力下で、明らかな質量流動を示すが、軟化点を超える液体流動を示さない。
【0038】
一般的に、本発明の硬化性組成物の動的弾力率および動的粘着率は広範囲に変化する。さらに、硬化性組成物は、一般的に主に粘着度がない。好ましくは、動的弾性率(すなわち弾性率)G’は、約0.005Hzの周波数で、少なくとも約100キロパスカル(kPa)、より好ましくは、少なくとも約200kPa、そして最も好ましくは、少なくとも約1000kPaである。好ましくは、弾性率G’は、約0.005Hzの周波数で、約50,000kPa以下、より好ましくは約10,000kPa以下、そして最も好ましくは約5000kPa以下である。好ましくは、動的粘性率(すなわち粘性率)G’’は、約0.005Hzの周波数で、少なくとも約50kPa、より好ましくは少なくとも約200kPa、そして最も好ましくは少なくとも約1000kPaである。好ましくは、粘性率G’’は、約0.005Hzの周波数で、約50,000kPa以下、より好ましくは約10,000kPa以下、そして最も好ましくは約5000kPa以下である。
【0039】
本発明の硬化性組成物の所望の自己支持形(すなわち、自立)構造は、三次元網状組織(連続的または不連続的)構造であり得る非共有構造を含むモルフォロジーを生じることによって維持され得る。これは、樹脂系における結晶成分の使用、または1以上の界面活性剤により一般的に補助される1以上の充填材の使用、または1以上の界面活性剤と任意に組み合わせられる結晶成分および1以上の充填材の両方の使用から生じ得る。これらの成分は、更に詳細に以下で議論される。
【0040】
適切な開始剤系、例えばフリーラジカル光開始剤により、所望の製品を形成するために本発明の硬化性組成物を硬化することができる(例えば、加硫)。好ましくは、得られた硬化組成物(すなわち硬化構造)は、少なくとも約25メガパスカル(MPa)、より好ましくは少なくとも約40MPa、さらにより好ましくは少なくとも約50MPa、そして最も好ましくは少なくとも約60MPaの曲げ強さを有する。
【0041】
特定の適用(例えばクラウン)に関して、得られる硬化組成物は、エナメル様固体であり、好ましくは少なくとも約100MPaの耐圧強度を有する。歯科用印象トレーのような他の適用に関して、より低い耐圧強度を有する材料を使用することができる。
【0042】
特定の適用(例えばクラウン)に関して、得られる硬化組成物は、エナメル様固体であり、好ましくは少なくとも約20MPaの直径引張強度を有する。歯科用印象トレーのような他の適用に関して、より低い直径引張強度を有する材料を使用することができる。
【0043】
特定の適用(例えばクラウン)に関して、得られる硬化組成物は、エナメル様固体であり、好ましくは少なくとも約1000MPaの曲げ弾性率を有する。歯科用印象トレーのような他の適用に関して、より低い曲げ弾性率を有する材料を使用することができる。
【0044】
樹脂系
本発明の硬化性組成物は、樹脂系を含む。樹脂系は、それらを口部環境で使用するために適切にさせる十分な強度および加水分解安定性を有する硬化材料を形成することができる1以上の硬化性有機樹脂を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、樹脂は1以上のモノマー、オリゴマーおよび/または重合性ポリマーを含み、これはそれらの組み合わせを含む。本文において、オリゴマーおよびポリマーは両方とも使用されるが、本明細書において用語「ポリマー」および「ポリマー性」は、2以上の繰返し単位を有するいずれかの材料を指すために使用され、それによりオリゴマーが包括される。従って、特に明記しない限り、ポリマーはオリゴマーを含む。さらに、本明細書において、ホモポリマーおよびコポリマーを包括するために、用語ポリマーを使用し、本明細書において、2以上の異なる繰返し単位を有する材料(例えば、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー)を包括するために、用語コポリマーを使用する。
【0046】
好ましい有機樹脂は、好ましくはフリーラジカル機構により硬化性(例えば、重合性および/または架橋性)であり、かつモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む。樹脂系は、反応成分(すなわち重合および/または架橋可能な成分)を含み、これは結晶性であっても結晶性でなくてもよい。非晶質反応成分を含む樹脂系は任意に結晶成分を含み得、それは反応であっても反応性でなくてもよい。
【0047】
好ましくは、少なくともいくつかの樹脂成分はエチレン系不飽和を含み、付加重合を受けることができる。適切な樹脂は、好ましくは少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマー(すなわち、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む)を含む。
【0048】
適切な重合性樹脂成分の例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールモノ−およびジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス(1−(2−アクリルオキシ))−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス(1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ))−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、トリス(ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスGMA、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、分子量200〜500のポリエチレングリコールのビス−アクリレートおよびビス−メタクリレート、米国特許第4,652,274号(ボエッチャー(Boettcher)ら)のもののようなアクリル化モノマーの共重合性混合物、ならびに米国特許第4,642,126号(ザドー(Zador))のもののようなアクリル化オリゴマーのようなモノ−、ジ−またはポリ−(メタ)アクリレート(アクリレートおよびメタクリレートを含む);(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミドおよびメタアクリルアミド)、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス−アクリルアミド、およびβ−メタクリルアミドエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミドおよびジアセトンメタクリルアミドのような不飽和アミド;ウレタン(メタ)アクリレート;ならびにスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペートおよびジビニルフタレートのようなビニル化合物が挙げられる。樹脂系において所望であれば、2以上のかかる材料の混合物を使用することができる。
【0049】
好ましくは、樹脂系の総量は、組成物の総重量に基づいて少なくとも約10重量%、より好ましくは、少なくとも約13重量%、そして最も好ましくは約15重量%である。好ましくは、樹脂系の総量は、組成物の総重量に基づいて約60重量%以下、より好ましくは、約50重量%以下、そして最も好ましくは約40重量%以下である。
【0050】
上記成分は、一般的に非結晶性(すなわち、非晶質)である。樹脂系は、また、初期の予成形された形状を維持するために非共有三次元構造を付与するために結晶成分を含み得る。この結晶成分は、重合(架橋も含む)可能な反応基を有しても有さなくてもよい。好ましくは、結晶成分は重合性である。好ましくは、結晶成分は、ポリマー(オリゴマーを含む)である。より好ましくは、結晶成分は、重合性ポリマー材料である。
【0051】
「結晶」は、示差走査熱量測定(DSC)によって組成物において測定される場合、材料が20℃以上で結晶融点を示することを意味する。観察された吸熱のピーク温度を結晶融点とする。結晶相は、材料が構成される隣接した化学部分に、非常に規則正しいレジストリがある形態を材料が仮定する、複数の格子を含む。格子の範囲内における包装配備(即席の配向)は、その化学的および幾何学的側面において非常に規則的である。
【0052】
ポリマー鎖の長いセグメントが20℃以上で非晶質および結晶状態または相の両方に現れるという点で、結晶成分は「半結晶状態」であり得る。非晶質相は、ポリマー鎖のランダムにもつれ合った集団であると考えられる。非晶質ポリマーのX線回折パターンは、ポリマー構造の配列を示さない拡散後光である。非晶質ポリマーは、真の融解または一次転移以外のガラス転移温度で軟化特性を示す。半結晶状態の材料は、特徴的な融点を示し、これ以上では結晶格子が混乱せず、それらの同一性を迅速に失う。かかる「半結晶」材料のX線回折パターンは、同心円または点の対称配列のいずれかによって一般的に識別され、それは結晶オーダーの性質を示す。したがって、本明細書において「結晶」成分は、半結晶材料を含む。
【0053】
結晶成分は、好ましくは室温(すなわち20℃〜25℃)超で結晶化する少なくとも1つの材料を含む。成分(例えば、成分の骨格鎖(すなわち主鎖)またはペンダント置換基(すなわち側鎖)において、成分がポリマーである場合)に存在する結晶化部分の凝集によって提供され得るかかる結晶化度は、周知の結晶学的、熱量測定または動的/機械的方法によって決定されることができる。本発明の目的のために、この成分は、実験的に測定される(例えばDSCによって)約20℃を超える少なくとも1つの融解温度(Tm)を樹脂系に与える。好ましくは、この成分は、樹脂系に約30℃〜100℃のTmを与える。2以上の結晶性材料が結晶成分で使用される場合、異なる2以上の融点が見られる。
【0054】
結晶成分の数平均分子量は、広範囲にわたり変化し得る。好ましくは、分子量は10,000グラム/モル(g/モル)未満、好ましくは約5000グラム/モル以下である。好ましくは、分子量は少なくとも約150グラム/モル、より好ましくは少なくとも約400グラム/モルである。約150未満の分子量では、結晶の融点は非常に低くなり得る。約10,000より大きい分子量では、結晶の融点は非常に高くなり得る。
【0055】
樹脂系で使用するために適切な結晶性モノマーは、ウレタン、エーテル、エステル、アミド、イミド基またはそれらの組み合わせを含むモノマーを含む。好ましい結晶性モノマーは、重合および/または架橋可能な反応基を含む。1より大きい反応官能性を有するモノマーが特に好ましい。
【0056】
樹脂系で使用するために適切な結晶性ポリマー(オリゴマーを含む)は、結晶性の主鎖(すなわち、直鎖)またはペンダント(すなわち側鎖)セグメントを有することができる。好ましい材料は、重合および/または架橋可能な反応基を含む。少なくとも2以上の反応官能性を有する結晶性オリゴマーまたはプレポリマーが特に好ましい。
【0057】
結晶可能な主鎖または骨格鎖部分を有する適切な結晶材料の例としては、制限されないが、ポリエステル(ポリカプロラクトンを含む)、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、より低く、例えば、C2〜C3オレフィンから形成される)およびポリウレタンが挙げられる。
【0058】
好ましい結晶性材料は、第一級ヒドロキシル末端基を含む飽和、直鎖、脂肪族ポリエステルポリオール(特にジオール)である。本発明の樹脂系の結晶成分として有用な市販品として入手可能な材料の例としては、イノレックス ケミカル カンパニー(Inolex Chemical Co.)(ペンシルバニア州、フィラデルフィア)から商品名レクソレズ(LEXOREZ)の下で入手可能ないくつかの樹脂が挙げられる。本発明の組成物において有用な他のポリエステルポリオールの例としては、ルコ ポリマー コーポレーション(Ruco Polymer Corp.)(ニューヨーク州、ヒックスヴィル)からの商品名ルコフレックス(RUCOFLEX)の下で入手可能なものである。本発明で有用であるポリカプロラクトンの例は、ダウ ケミカル カンパニー(Dow Chemical Co.)(ミシガン州、ミッドランド)から商品名トーン(TONE)0230、トーン(TONE)0240およびトーン(TONE)0260の下で入手可能なものを含む。特に好ましい材料は、重合性、不飽和官能基を誘導するために(例えば、第一級ヒドロキシル末端基により)変性される飽和、直鎖状、脂肪族ポリエステルポリオール、例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリロイルクロリドまたはメタクリル酸無水物により反応されたポリカプロラクトンジオールである。
【0059】
また、結晶性材料は、例えば、分枝度を変更することにより樹枝状、ハイパーブランチドまたは星型構造を有する。樹枝状ポリマーは多官能性化合物であり、デンドリマー、規則的デンドロン、デンドリグラフトおよびハイパーブランチドポリマーを含む既知の樹枝状構造のいずれもを含む。樹枝状ポリマーは、多数の末端反応基を有する高密度分岐構造を有するポリマーである。樹枝状ポリマーは、全てが1以上の分岐点を含む繰返し単位のいくつかの層または世代を含む。デンドリマーおよびハイパーブランチドポリマーを含む樹枝状ポリマーは、少なくとも2つの異なる種類の反応基を有するモノマー単位の縮合、付加またはイオン反応によって調製することができる。
【0060】
樹枝状ポリマーは、共通のコアから発する複数のデンドロンから構成され、そしてコアは通常、原子群を含む。樹枝状ポリマーは、一般的に周面基、2以上の分岐官能性を有する内部分枝連結、および隣接分枝連結を共有結合する二価の結合から成る。
【0061】
デンドロンおよびデンドリマーは、理想的であっても非理想的であってもよく、すなわち不完全または欠陥があってもよい。不完全性は、通常、不完全な化学反応または回避不可な競争副反応のいずれかの結果である。
【0062】
ハイパーブランチドポリマーは、よりほぼ完全な規則的な構造デンドリマーと比較して、高レベルの非理想的な不規則分枝配列を含む樹枝状ポリマーである。具体的には、ハイパーブランチドポリマーは、全ての繰返し単位が分枝連結を含むというわけではない比較的高い数の不規則な分枝配列を含む。従って、直鎖ポリマーおよびデンドリマーの間の中間体として、ハイパーブランチドポリマーを見ることができる。それでもなお、個々の高分子に対する、それらの比較的高い分枝連結含有量のため、それらは樹枝状である。
【0063】
星型ポリマーは一般的に、中心コアから発するポリマー鎖からなる。
【0064】
デンドリマー、デンドロン、デンドリグラフト、ハイパーブランチドポリマーおよび星型の調製および特徴描写は周知である。デンドリマーおよびデンドロンの例、およびその合成方法は、米国特許第4,507,466(トマリア(Tomalia)ら)、4,558,120号(トマリア(Tomalia)ら)、4,568,737号(トマリア(Tomalia)ら)、4,587,329号(トマリア(Tomalia)ら)、4,631,337号(トマリア(Tomalia)ら)、4,694,064号(トマリア(Tomalia)ら)、4,713,975号(トマリア(Tomalia)ら)、4,737,550号(トマリア(Tomalia))、4,871,779号(キラト(Killat)ら)および4,857,599号(トマリア(Tomalia)ら)において述べられる。例えば、ハイパーブランチドポリマーの例およびその調製方法は、米国特許第5,418,301号(フルト(Hult)ら)において述べられる。いくつかの樹枝状ポリマーは、また、市販品として入手可能である。例えば、3−および5−世代ハイパーブランチドポリエステルポリオールは、ペルストープ ポリオールズ インコーポレイテッド(Perstorp Polyols Inc.)(オハイオ州、トレド)から得ることができ、例えば、星型ポリマーの例およびその調製方法は、米国特許第5,830,986号(メリル(Merrill)ら)、5,859,148号(ボルグレブ(Borggreve)ら)、5,919,870号(レッチフォード(Letchford)ら)および6,252,014号(ノース(Knauss))において述べられる。
【0065】
本発明において有用な樹枝状ポリマーは、いずれかの数の世代、好ましくは3から5世代を含む。
【0066】
一般的に、結晶性の周辺基を有するか、または結晶性の周辺基へと、もう1つの化合物と反応することができる周辺基を有する既知の樹枝状ポリマーのいずれも、本発明の組成物において、樹脂系において使用するために適切である。適切な樹枝状ポリマーの例としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタン等の縮合ポリマーも挙げられる。
【0067】
結晶性ペンダント部分(すなわち、側鎖)を有する適切な結晶性ポリマー材料の例としては、制限されないが、以下の一般式:
【化5】

(式中、Rは水素または(C1〜C4)アルキル基であり、Xは−CH2−、−C(O)O−、−O−C(O)−、−C(O)−NH−、−HN−C(O)−、−O−、−NH−、−O−C(O)−NH−、−HN−C(O)−O−、−HN−C(O)−NH−または−Si(CH32−であり、mはポリマー中の繰返し単位の数であり、かつnは、結晶ドメインまたは結晶領域を含有するポリマーを形成するために十分な側鎖長および構造を提供するために十分大きい)を有するポリマー材料が挙げられる。好ましくは、mは少なくとも2であり、より好ましくは、2から100であり、そして好ましくはnは少なくとも10である。結晶性ポリマー材料は、ペンダント(側鎖)結晶性部分を含むモノマーの重合によって、またはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステルまたはポリ−α−オレフィンポリマーまたはコポリマーの化学変性によるペンダント結晶性部分の導入によって調製され得る。かかる側鎖結晶性または「コーム状」ポリマーの結晶特性を決定する調製およびモルフォロジー/配座特性は、プレート(Plate)およびシバブ(Shibaev)、「コーム−ライク ポリマーズ.ストラクチャー アンド プロパティー(Comb−Like Polymers.Structure and Properties)」,ジャーナル オブ ポリマー サイエンス,マクロモレキュラー レビュース(Journal of Polymer Science,Macromolecular Reviews), 8巻,117−253頁(1974年)により論評される。
【0068】
適切な結晶性材料の例は、非第三級高級アルキルアルコールのアクリレートまたはメタクリレートエステルから誘導されたアクリレートまたはメタクリレートポリマーである。本明細書で使用される場合、用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。これらのアルコールのアルキル基は、少なくとも約12、好ましくは約16〜26の炭素原子を含む。結晶性ポリマー材料を製造するために使用され得る結晶性モノマーの例としては、ドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、エイコサニル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物が挙げられる。ヘキサデシル(メタクリレート)およびオクタデシル(メタ)アクリレートは、モノマー−ポリマー&ダジァク ラボラトリーズ,インコーポレイテッド(Monomer−Polymer & Dajac Laboratories,Inc.)(ペンシルバニア州、フィースタービル(Feasterville))およびポリサイエンシセス インコーポレイテッド(Polysciences,Inc.)(ペンシルバニア州、ワリングトン(Warrington))から市販品として入手可能である。アルキル部分が約30から約50の炭素原子を含む非第三級アルコールの(メタ)アクリレートエステルは、ペトロライト コーポレイテッド(Petrolite Corp.)(オクラホマ州、タルサ)から商品名ユニリン(UNILIN)の下で市販品として入手可能である。結晶性オリゴマーまたはポリマーが融点を有する限り、それは非結晶性モノマーを含み得る。得られるポリマーが室温より高い融解または軟化温度を有することを条件として、1以上の側鎖結晶性アクリレートおよびメタクリレートモノマーと組み合わせて、アクリレートもしくはメタクリレート、またはフリーラジカル反応性である他のビニルモノマーは、任意に利用されることができる。かかるフリーラジカル反応性モノマーの例としては、制限されないが、第三級ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ブチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーの様々な組み合わせを使用することができる。
【0069】
ポリ−1−デセン、ポリ−1−ドデセン、ポリ−1−テトラデセンおよびポリ−1−ヘキサデセンのような高級α−オレフィンモノマー、ならびにビニルテトラデカノエート、ビニルヘキサデカノエートおよびビニルオクタデカノエートのような高級ビニルエステルから誘導される側鎖結晶性ポリマー材料も適切である。
【0070】
本発明で使用される追加的な側鎖結晶性ポリマー材料は、ペンダント重合性基を有するポリマーを含む。ペンダント重合性基は、側鎖結晶性ポリマーにおいて官能性モノマーの組み入れによって導入され得る。
【0071】
有用な官能性モノマーは、ヒドロキシル、アミノ、アズラクトン、オキサゾリニル、3−オキソブタノイル(すなわち、アセトアセチル)、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、アズイリジニル、ハロゲン化アシル、ビニルオキシまたは無水物基のような更なる反応が可能な官能基を含む約36までの炭素原子を有する、それらの不飽和脂肪族、脂環族および芳香族化合物を含む。
【0072】
次の一般式
【化6】

(式中、R1は水素、(C1〜C4)アルキル基、またはフェニル基、好ましくは水素またはメチル基であり、R2は、エチレン系不飽和基を官能基Aに結合する単一結合または二価架橋基であり、好ましくは34まで、より好ましくは18まで、最も好ましくは10までの炭素原子、ならびに任意に酸素および窒素原子を含有し、R2が単一結合ではない場合、好ましくは、
【化7】

から選択され、式中、R3は1〜6の炭素原子を有するアルキレン基、5から10の炭素原子を有する5員または6員シクロアルキレン基、または各アルキレン基が1〜6の炭素原子を含むか、または6〜16の炭素原子を有する二価芳香族基であるアルキレン−オキシアルキレンであり、かつAは、共有結合を形成する共反応性官能基と反応可能な官能基であり(不飽和モノマーの一部である)、好ましくは、ヒドロキシル、アミノ(特に、第二級アミノ)、カルボニル、イソシアナト、アジリジニル、エポキシ、ハロゲン化アシル、ビニルオキシ、アズラクトン、オキサゾリニル、アセトアセチルおよび無水物基からなる類より選択される)を有する官能性モノマーも適切である。
【0073】
代表的なヒドロキシル基置換官能性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシフェノール、2−(4−アクリロイルオキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAモノアクリレートとも称される)、2−プロピン−1−オールおよび3−ブチン−1−オールのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0074】
代表的なアミノ基置換官能性モノマーとしては、2−メチルアミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノシクロヘキシルメタクリレート、N−(3−アミノフェニル)アクリルアミド、4−アミノスチレン、N−アクリロイルエチレンジアミンおよび4−アミノフェニル−4−アクリルアミドフェニルスルホンが挙げられる。
【0075】
代表的なアズラクトン基置換官能性モノマーとしては、2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4−メチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−4−メチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−イソプロペニル−3−オキサ−1−アザ[4.5]スピロデク−1−エン−4−オン;2−エテニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン−6−オン;2−エテニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−オキサゼピン−7−オン;2−イソプロペニル−5,6−ジヒドロ−5,5−ジ(2−メチルフェニル)−4H−1,3−オキサジン−6−オン;2−アクリロイルオキシ−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−(2−アクリロイルオキシ)エチル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン;2−エテニル−4,5−ジヒドロ−6H−1,3−オキサジン−6−オンおよび2−エテニル−4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチル−6H−1,3−オキサジン−6−オンが挙げられる。
【0076】
代表的なオキサゾリニル基置換官能性モノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−(5−ヘキセニル)−2−オキサゾリン、2−アクリルオキシ−2−オキサゾリン、2−(4−アクリルオキシフェニル)−2−オキサゾリンおよび2−メタクリルオキシ−2−オキサゾリンが挙げられる。
【0077】
代表的なアセトアセチル基置換官能性モノマーとしては、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、スチリルアセトアセテート、イソプロペニルアセトアセテートおよびヘキセ−5−エニルアセトアセテートが挙げられる。
【0078】
代表的なカルボニル基置換官能性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピオン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ−酪酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−5−メチル安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−安息香酸、フタル酸モノ−(2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル)エステル、2−ブチノン酸および4−ペンチノン酸が挙げられる。
【0079】
代表的なイソシアナト基置換官能性モノマーとしては、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニルジメチルベンジルイソシアネート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトスチレン、2−メチル−2−プロペノイルイソシアネート、4−(2−アクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ)フェニルイソシアネート、アリル2−イソシアナトエチルエーテルおよび3−イソシアナト−1−プロペンが挙げられる。
【0080】
代表的なエポキシ基置換官能性モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、チオグリシジル(メタ)アクリレート、3−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル(メタ)アクリレート、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−(4−アクリロイルオキシ−フェニル)プロパン、4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、および3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0081】
代表的なアジリジニル基置換官能性モノマーとしては、N−(メタ)アクリロイルアジリジン、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、4−(1−アジリジニル)ブチル(メタ)アクリレート、2−(2−(1−アジリジニル)エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−(1−アジリジニル)エトキシカルボニルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、12−(2−(2,2,3,3−テトラメチル−1−アジリジニル)エトキシカルボニルアミノ)ドデシル(メタ)アクリレート、および1−(2−プロペニル)アジリジンが挙げられる。
【0082】
代表的なハロゲン化アシル基置換官能性モノマーとしては、(メタ)アクリロイルクロリド、α−クロロアクリロイルクロリド、アクリロイルオキシアセチルクロリド、5−ヘキセノイルクロリド、2−(アクリロイルオキシ)プロピオニルクロリド、3−(アクリロイルチオキシ)プロピオノイルクロリド、および3−(N−アクリロイル−N−メチルアミノ)プロピオノイルクロリドが挙げられる。
【0083】
代表的なビニルオキシ基置換官能性モノマーとしては、2−(エテニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(エチニルオキシ)−1−プロパン、4−(エチニルオキシ)−1−ブテン、および4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートが挙げられる。
【0084】
代表的な無水物基置換官能性モノマーとしては、無水マレイン酸、無水アクリル酸、無水イタコン酸、3−アクリロイルオキシ無水フタル酸、および2−メタクリルオキシシクロヘキサンジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0085】
官能性主鎖(すなわち直鎖)またはペンダント(すなわち側鎖)結晶性オリゴマーまたはポリマーセグメントから出発し、重合性基の導入は、好ましくは、適切な不飽和化合物との反応によって、有機化学の既知の方法により、特定の(メタ)アクリル、アリルまたはビニル化合物において生じる。メタクリル酸によるポリマー上でアルコール基のエステル化によって、またはメタクリル酸塩化物またはメタクリル酸無水物によるアシル化によって、例えば、重合性メタクリレート基を導入することができる。さらに、2−イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)による結晶性ポリマーにおけるアルコール基の反応は特に適切である。
【0086】
同様に、官能化された結晶性出発材料は、メタクリル酸基の代わりに他の不飽和重合性基、例えばアクリル、ビニル、アリル、ビニルエーテルまたはスチレンで変性されることができる。適切な試薬は、アクリル酸、アクリル酸塩化物、ビニル酢酸および4−ビニル安息香酸である。好ましい重合性基は、メタクリレートおよびアクリレート基である。
【0087】
もう1つの結晶成分としては、次式:
【化8】

(式中、各Qは、独立して、ポリエステルセグメント、ポリアミドセグメント、ポリウレタンセグメント、ポリエーテルセグメントまたはそれらの組み合わせを含む)の化合物が挙げられる。好ましくは、各Qは、独立して、ポリ(カプロラクトン)セグメントを含む。より好ましくは、かかる結晶性化合物は、エポキシ、酸、アルコールおよびエチレン系不飽和反応部位を含む。特に好ましくは、かかる材料は、メタクリル、アクリル、ビニルおよびスチリル基のような不飽和重合性基を含む。
【0088】
充填材系
充填材系に用いられる充填材は、樹脂系に組み入れるために多種多様な従来の充填材から選択されることができる。好ましくは、充填材系は、医学用途のために使用される組成物に組み入れるために適切な1以上の従来の材料、例えば、歯科用回復組成物において現在使用される充填材を含む。従って、本発明の組成物において使用される充填材は、樹脂系に組み入れられ、および特に樹脂系の結晶成分と混合される。
【0089】
充填材は、事実上、粒子状または繊維状の両方であり得る。粒子状充填材は一般的に、20:1以下、そしてより一般的に10:1以下である長さと幅の比率または縦横比を有するものとして定義され得る。20:1より大きい、より一般に100:1より大きい縦横比を有するものとして繊維は定義され得る。球形から楕円、またはよりフレークまたはディスクのような平らなものの範囲で、粒子の形状は変化し得る。巨視的特性は、充填材粒子の形状、特に形状の均一性に高く依存し得る。
【0090】
好ましい粒子状充填材は、微細に粉砕され、約10マイクロメートル(すなわちミクロン)未満の平均粒径(好ましくは、直径)を有する。好ましいミクロンサイズ粒子状充填材は、少なくとも約0.2ミクロンから1マイクロメートルまでの平均粒径を有する。ナノスコピック粒子は、200nm(0.2ミクロン)未満の平均一次粒子径を有する。充填材は、単峰形であるかまたは多峰形(例えば、二峰形)粒径分布を有し得る。
【0091】
ミクロンサイズ粒子は、後硬化磨耗性を改善するために非常に有効である。対照的に、ナノスコピック充填材は、一般的に、粘性およびチキソトロピー変性因子として使用される。それらのサイズの小ささ、高い表面領域および関連する結合水素のため、これらの材料は、凝集された網状組織に集合することが知られている。この種類の材料(「ナノスコピック」材料)は、約1000ナノメートル(nm)以下の平均一次粒子径(すなわち、非凝集材料の最大寸法、例えば直径)を有する。好ましくは、ナノスコピック粒子状材料は、少なくとも約2ナノメートル(nm)および好ましくは少なくとも約7nmの平均一次粒子径を有する。好ましくは、ナノスコピック粒子状材料は、大きさで約50nm以下およびより好ましくは約20nm以下の平均一次粒子径を有する。かかる充填材の平均表面積は、好ましくは、少なくともグラムにつき約20平方メートル(m2/g)、より好ましくは、少なくとも約50m2/gおよび好ましくは少なくとも約100m2/gである。
【0092】
充填材は、無機材料であり得る。それはまた、重合性樹脂において不溶性であり、任意に無機充填材で充填された架橋有機材料であり得る。充填材は、好ましくは一般的に無毒性であり、口部での使用のために適切である。充填材は、放射線不透過性であり得るか、放射線半透過性であり得るか、または放射線透過性であり得る。歯科用途において使用される充填材は一般的に本質的にセラミックである。
【0093】
適切な無機充填材の例は、石英、窒化物(例えば窒化ケイ素)、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、BaまたはAl由来のガラス、コロイド状シリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、チタニアおよび亜鉛ガラス、ジルコニア−シリカ充填材、および米国特許第4,695,251号(ランドクレブ(Randklev))に記載されるもののような低モーズ硬度充填材のような天然由来または合成材料である。
【0094】
適切な有機充填材粒子の例としては、充填されたかまたは充填されていない粉状ポリカーボネート、ポリエポキシド等を含む。好ましい充填材粒子は石英、サブミクロンシリカおよび米国特許第4,503,169号(ランドクレブ(Randklev))に記載の種類の非ガラス状ミクロスフィアである。有機および無機材料から製造される充填材の組み合わせと同様に、これらの充填材の混合物も使用することができる。
【0095】
任意に、充填材粒子の表面を、充填材および樹脂系の間の結合を強化するために、シランカップリング剤のような表面処理で処理することができる。カップリング剤は、アクリレート、メタクリレート等のような反応硬化基で官能化されることができる。
【0096】
非共有構造を付与するために使用される充填材粒子は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアまたはこれらの材料の互いまたは炭素との混合物から成り得る。それらの合成状態において、表面ヒドロキシル基の存在のため、これらの材料は一般的に親水性である。しかしながら、この特性を変性するために適切なアルキルシランのような試薬による処理によって材料を変性することもできる。所望の性質に依存して、例えば、充填材粒子の表面は中性、疎水性または反応性になり得る。ヒュームドシリカは、その低コスト、市販品としての入手可能性および広範囲の利用可能な表面特性のために、自己支持形特性を付与するための好ましい化合物である。
【0097】
好ましくは、充填材系の総量は、組成物の総重量に基づいて50重量%より大きく、より好ましくは、60重量%より大きく、そして最も好ましくは70重量%より大きい。充填材系が繊維を含む場合、繊維は、組成物の総重量に基づいて20重量%未満の量で存在する。好ましくは、充填材系の総量は、組成物の総重量に基づいて約95重量%以下、そしてより好ましくは約80重量%以下である。著しく、本発明の樹脂系で充填されたかかる高充填材は、特に展性組成物を提供する際に予想外である。
【0098】
開始剤系
本発明の組成物は、開始剤系、すなわち1つの開始剤または2以上の開始剤の混合物を含み、それは樹脂系の硬化(例えば、重合および/または架橋)のために適切である。開始剤は好ましくはフリーラジカル開始剤であり、それを様々な方法(例えば熱および/または放射線)で活性化することができる。従って、例えば、開始剤系は、熱開始剤系(例えばアゾ化合物およびペルオキシド)または光開始剤系であり得る。好ましくは、開始剤系は1以上の光開始剤を含む。より好ましくは、開始剤系は、約300ナノメートル(nm)から約1200nmのスペクトル領域において活性であり、適切な波長および強度の光への暴露時にエチレン系不飽和部分のフリーラジカル重合および/または架橋を促進することができる少なくとも1つの光開始剤を含む。多種多様なかかる光開始剤を使用することができる。光開始剤は、好ましくは樹脂系において溶解する。好ましくは、それらは、典型的歯科作業および研究所条件下で貯蔵を可能にし使用するために十分に貯蔵安定性であり、望ましくない着色がない。可視光光開始剤が好ましい。
【0099】
適切な開始剤(すなわち開始剤系)の1つの種類は、3成分または三元光開始剤系を含む米国特許第5,545,676号(パラゾット(Palazzotto)ら)において記載される。この系は、ヨードニウム塩、例えば、ジアリールヨードニウム塩を含み、それは単純な塩(例えば、Cl-、Br-、I-またはC25SO3-のようなアニオンを含む)または金属錯体塩(例えば、SbF5OH-またはAsF6-を含む)であり得る。所望であれば、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。この三元光開始剤系の第2の成分は感光剤であり、それは約400nmから約1200nmの範囲の波長において光吸収可能である。この三元光開始剤系の第3の成分は電子供与体であり、アミン(第1の開始剤系に関して記載されるように、アミノアルデヒドおよびアミノシランまたは他アミンを含む)、アミド(リンアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、ウレア(チオウレアを含む)、フェロセン、スルフィン酸およびそれらの塩、フェロシアニド塩、アスコルビン酸およびその塩、ジチオカルバミン酸およびその塩、キサンテート塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ならびにテトラフェニルホウ酸塩を含む。
【0100】
三元光開始剤系における使用のために適切な感光剤の例としては、ケトン、クマリン染料(例えばケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料およびピリジニウム染料が挙げられる。ケトン(例えばモノケトンまたはα−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトンおよびp−置換アミノスチリルケトン化合物が好ましい感光剤である。特に好ましい可視光感光剤の例としては、カンファキノン、グリオキサル、ビアセチル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、3,3,7,7−テトラメチル−1.2−シクロヘプタンジオン、3,3,8,8−テトラメチル−1,2−シクロオクタンジオン、3,3,18,18−テトラメチル−1,2−シクロオクタデカンジオン、ジピバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオンおよび1,2−シクロヘキサンジオンを含む。これらの中で、カンファキノンが最も好ましい感光剤である。
【0101】
光開始剤のもう1つの種類は、欧州特許出願第173567号(イング(Ying))に記載のもののようなアシルホスフィンオキシドを含む。適切なアシルホスフィンオキシドは、好ましくは、一般式(R42−P(=O)−C(=O)R5のもの(式中、各R4は、独立して炭化水素基、好ましくはアルキル基、脂環式基、アリール基およびアラルキル基であり、そのいずれかは、ハロ−、アルキル−またはアルコキシ−基により置換され得るか、または2つのR4基は一緒になって、リン原子と一緒に環を形成し得、かつR5は、炭化水素基、好ましくは、S−、O−またはN−含有5員または6員複素環式基、または−Z−C(=O)−P(=O)−(R42基であり、Zは2〜6の炭素原子を有するアルキレンまたはフェニレンのような二価の炭化水素基を表す)である。適切なアシルホスフィンオキシドの例としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。任意に、第三級アミン還元剤は、アシルホスフィンオキシドと一緒に使用することができる。本発明で有用な第三級アミンの実例としては、上記のもの、ならびにエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
【0102】
光開始剤としてモノ−およびジ−ケトンを使用することもできる。かかる系の例は、米国特許第4,071,424号(ダート(Dart)ら)に記載されている。
【0103】
光開始剤のさらにもう1つの種類は、ボレートアニオンを含むイオン染料−対イオン錯体開始剤および相補的カチオン染料を含む。これらの光開始剤で有用なボレートアニオンは、一般的に、式B(R64-(式中、各R6が、独立して、アルキル、アリール、アルカリール、アリル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式および飽和または不飽和複素環式基である)のものであり得る。カチオン性対イオンは、カチオン染料、第四級アンモニウム基、遷移金属配位錯体等であり得る。対イオンとして有用なカチオン染料は、カチオン性メチン、ポリメチン、トリアリールメチン、インドリン、チアジン、キサンテン、オキサジンまたはアクリジン染料であり得る。対イオンとして有用な第四級アンモニウム基は、トリメチルセチルアンモニウム、セチルピリジニウムおよびテトラメチルアンモニウムであり得る。他の有機カチオンは、ピリジニウム、ホスホニウムおよびスルホニウムを含み得る。対イオンとして有用であり得るカチオン遷移金属配位錯体は、ピリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチルフェナントロリン、2,4,6−トリ(2−ピリジル−s−トリアジン)および関連した配位子のような配位子とのコバルト、ルテニウム、オスミウム、亜鉛、鉄およびイリジウムの錯体であり得る。例えば、ボレート塩光開始剤は、米国特許第4,772,530号(ゴットシャルキ(Gottschalkea)ら)、4,954,414号(アデア(Adair)ら)、4,874,450号(ゴットシャルキ(Gottschalkea))、5,055,372号(シャンクリン(Shanklin)ら)および5,057,393号(シャンクリン(Shanklin)ら)に記載される。
【0104】
好ましい可視光誘発開始剤は、適切な水素供与体(例えば、第1の開始剤系に関して上記されたもののようなアミン)および任意に、ジアリールヨードニウムの単純または金属錯体塩、発色団置換ハロメチル−s−トリアジンまたはハロメチルオキサゾールと組み合わせられるカンファキノンを含む。特に好ましい可視光誘発光開始剤は、α−ジケトン、例えばカンファキノンと、追加的な水素供与体および任意に、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ブロミド、ヨージドまたはヘキサフルオロホスフェートとの組み合わせを含む。
【0105】
好ましい紫外線誘発重合開始剤は、ケトン、例えばベンジルおよびベンゾイン、アシロインおよびアシロインエーテルを含む。好ましい紫外線誘発重合開始剤は、両方ともチバ スペシャルティー ケミカルズ コーポレイション(Ciba Speciality Chemicals Corp.)(ニューヨーク州、タリータウン(Tarrytown))から、商品名イルガキュア(IRGACURE)651の下で入手可能な2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびベンゾインメチルエーテル(2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン)を含む。
【0106】
開始剤系は、所望の硬化(例えば、重合および/または架橋)速度を提供するのに十分な量で存在する。光開始剤に関して、この量は、光源、放射エネルギーに暴露される層の厚さおよび光開始剤の吸光係数に部分的に依存する。好ましくは、開始剤系は、組成物の重量に基づいて、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.03重量%、最も好ましくは少なくとも約0.05重量%の総量で存在する。好ましくは、開始剤系は、組成物の重量に基づいて、約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、最も好ましくは約2.5重量%以下の総量で存在する。
【0107】
界面活性剤系
本発明の組成物は、界面活性剤系、すなわち1つの界面活性剤または2以上の界面活性剤の混合物を含み得る。これらの界面活性剤は、少量で使用する場合、非共有三次元構造の形成を強化する無機充填材材料のような組成物の他の成分と相互作用し得る。かかる界面活性剤は、非イオン性、アニオン性またはカチオン性であり得る。界面活性剤は、樹脂系と共重合性であり得るか、または非共重合性であり得る。使用可能な界面活性剤の選択の考慮事項は、系の成分が水素結合に関与することができる程度である。
【0108】
好ましくは、界面活性剤系の総量は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.05重量%、より好ましくは、少なくとも約0.1重量%、そして最も好ましくは、少なくとも約0.2重量%である。好ましくは、界面活性剤系の総量は、組成物の総重量に基づいて、約5.0重量%以下、より好ましくは約2.5重量%以下、そして最も好ましくは約1.5重量%以下である。
【0109】
典型的な非イオン性界面活性剤は、通常、有機脂肪族またはアルキル芳香族疎水性化合物と、親水性のエチレンオキシドのようなアルキレンオキシドとの縮合生成物である。縮合生成物の酸化エチレン鎖長ならびに出発炭化水素化合物の長さは、疎水性および親水性素子の間の所望の釣合いを達成するために調節することができる。かかる界面活性剤の例としては、ローヌ−プーラン(Rhone−Poulenc)(ニュージャージー州、クランベリー(Cranbury))から商品名イゲパル(IGEPAL)COの下で入手可能なノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールおよびダウ ケミカル カンパニー(Dow Chemical Co.)(ミシガン州、ミッドランド(Midland))から商品名テルギトール(TERGITOL)NPの下で入手可能なノニルフェニルポリエチレングリコールエーテルを含む。
【0110】
他の非イオン性界面活性剤としては、制限されないが、ICI(英国、チェシャー州、ランコーン(Runcorn))から商品名スパン(SPAN)の下で入手可能なソルビタン脂肪酸エステル、およびICIから商品名トウィン(TWEEN)の下で入手可能なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。他の良好な非イオン性界面活性剤としては、制限されないが、グリセリン、エチレンジアミン、エチレングリコール、プロピレングリコールのような短鎖多官能性分子、ならびにダウ ケミカル(Dow Chemical)から商品名ユコン(UCON)の下で入手可能なポリアルキレングリコール、ICIからの商品名アトラス(ATLAS)G−2240の下で入手可能なポリオキシエチレンソルビトール、ダウ ケミカル(Dow Chemical)から商品名カルボワックス(CARBOWAXの)下で入手可能なポリエチレングリコールおよびそれらのメチルエーテルのような長鎖多官能性分子が挙げられる。
【0111】
典型的なカチオン性界面活性剤としては、制限されないが、少なくとも1つのより高い分子量基および2または3のより低い分子量基がカチオンを生じるために共通の窒素原子に連結し、電気的に平衡なアニオンが、ハロゲン化物(例えばブロミドまたはクロリド)、アセテート、ニトリルおよび低級アルコスルフェート(例えば、メトスルフェート)からなる群より選択される第四級アンモニウム塩が挙げられる。窒素上のより高い分子量置換基は、しばしば高級アルキル基であり、少なくとも約10の炭素原子を含み、より低い分子量置換基は、ヒドロキシにより置換されていてよい約1〜約4の炭素原子の低級アルキルである。置換基の1以上はアリール部分を含み得るか、またはベンジルまたはフェニルのようなアリール部分により置換され得る。より低い分子量置換基の中で、ヒドロキシル末端基を有するポリオキシエチレン部分のような低級ポリアルコキシ部分によって置換される約1〜約4の炭素原子の低級アルキルも可能である。本発明での使用に有用な第四級アンモニウムハロゲン化物界面活性剤の例としては、制限されないが、アクゾ ノーベル(Akzo Nobel)(イリノイ州、マクコック(McCook))から商品名アーカード(ARQUAD)2HT−75の下で入手可能なビス(水素化タローアルキル)ジメチル第四級アンモニウムクロリド、アクゾ ノーベル(Akzo Nobel)から商品名アーカード(ARQUAD)2C−75の下で入手可能なジメチルジ(ココアルキル)第四級アンモニウムクロリド、およびアクゾ ノーベル(Akzo Nobel)から商品名デュオメーン(DUOMEEN)TDOの下で入手可能なN−(タローアルキル)−1,3−プロパンジアミンジオレエートが挙げられる。
【0112】
典型的なアニオン性界面活性剤としては、制限されないが、BASF(ドイツ、ルードヴィヒスハーヘン)から商品名エーロゾル(AEROSOL)MAの下で入手可能なジヘキシルナトリウムスルホスクシネート、チバ スペシャルティー ケミカルズ(Ciba Speciality Chemicals)から商品名アルロウェット(ALROWET)D−65の下で入手可能なジオクチルナトリウムスルホスクシネート、W.R.グレイス(W.R.Grace)(メリーランド州、コロンビア)から商品名ダキサド(DAXAD)30、ローム アンド ハース(Rohm and Haas)(ペンシルバニア州、フィラデルフィア)からタモール(TAMOL)731の下で入手可能な重合カルボン酸のナトリウム塩、ローム アンド ハース(Rohm and Haas)から商品名ネカル(NEKAL)BA−75の下で入手可能なナトリウムアルキルナフタレンスルホネート、ならびにナトリウムオレエート、ナトリウムステアレート、硫酸化ひまし油、亜鉛ヒドロキシステアレートが挙げられる。
【0113】
任意の添加剤
組成物は、顔料(例えば、色合い調整のために従来から使用されている顔料)、香料、薬剤、安定剤(例えばBHT)、粘度調節剤等のような任意の薬剤を追加的に含み得る。それらが樹脂と共重合されるように、かかる薬剤は任意に反応官能性を含み得る。
【0114】
使用方法および製品
本発明の組成物を、三次元形状、予成形シート、アーチ形トレー、ロープ、ボタン、織ウェブまたは不織ウェブ等のような様々な形式に成形することができる(例えば、成型)。例えば、組成物を押出、射出成型、圧縮成型、熱形成、真空形成、プレス、カレンダリングおよびローラーを使用するウェブプロセスを含む様々な方法で(第1の形状を形成するために)成形することができる。一般的に、半仕上げの形状は、ポジティブ印象とネガティブ印象を有する型を使用して形成される。
【0115】
成形物品を、個々に、または複数の単位で販売することができ、好ましくはそれらを、組成物に含まれる開始剤系を活性化し得る熱および/または光から保護する方法で包装する。
【0116】
通常、適切な大きさおよび形状(第1の形状)の予成形物品を選択し、約15℃から38℃の温度(好ましくは、典型的室温および体温を含む約20℃から38℃、およびより好ましくは室温)で特注形成する。この成形は、指または選択された器具(例えば、歯科用複合器具の手動作動)による圧力の適用、削除、切断、彫刻、研磨等を含む様々な方法により行われる。所望の特注形状が達成されたら、開始剤系の活性化を引き起こすためにそれを熱/放射線に暴露することによって物品を硬化(例えば、加硫)する。単一工程、または中間で行われる特注形成の連続工程による複数の工程のいずれかで、これを実行することができる。これらの工程の1以上は、酸素のない不活性雰囲気または真空において実行され得る。仕上げ形成および硬化工程の後、所望であれば、硬化物品を研磨、削除等により形状において変性することができる。物品の最終的な特注形状が得られたら、意図された用途のために必要であれば、それを本磨、塗工または他の表面処理を行うことができる。好ましくは、本発明の組成物から調製される最終的な特注成形物品は、追加的なベニア材料(例えば所望の外観または性質を提供する第2の材料)を必要としない。意図された適用は、粘着的に、機械的に、または両方の組み合わせにより、第2の物品への特注成形硬化物品の取付け、接着、あるいは付着を必要とする。
【0117】
仮の歯科用クラウンの調製のために、適切な形状および大きさの予成形クラウンを選択し、予成形クラウンを、必要とされる削除および成形の範囲を決定するために、任意にクラウン上にマークを付けて、調製された歯の上に固定する。予成形クラウンを口部から除去し、次いで必要とされる形状および大きさ調整を切断、削除、成形等によって行い、歯の調製物上に再固定し、追加的な形状調整を行い、歯茎、側面および咬合の適合を含む最適な特注部品を提供する。次いで、典型的に、数秒間、所望により口部で歯科用硬化光にそれを暴露し、次いで、それを注意深く口部から除去し、最終硬化のために硬化チャンバー中で任意に熱と組み合わせて硬化光にそれを暴露することにより、予成形および再形成クラウンを硬化することができる。研磨、削除等により仕上げ調整を行い、所望であれば、仕上げクラウンを本磨およびクリーニングする。次いで、口部に置かれる前に、仕上げクラウンをそのまま、または適切な樹脂に沿ってセメント結合させることができる。
【0118】
本発明は、本明細書で記載されるように自己支持形組成物から形成されるカスタマイズ可能な歯科用印象トレーを含む。歯科用トレーは、患者の歯の正確な印象を得るために一般に使用される。一般的に、トレーは、予成形カスタマイズ可能な物品として、大きさの範囲にかかわらず供給される。このトレーは、印象用材料(例えば、ポリビニルシロキサン、ポリエーテルまたはポリスルフィドのような1以上の流動性エラストマー材料)で充填され、上顎または下顎の歯の周囲でプレスされた。次いで、トレー内に含まれる印象用材料は、その場で硬化される。一般的な「全てに適合するサイズ」のトレーよりも正確に患者の口部に適合するように形成することができるカスタマイズされたトレーの使用により患者の快適さの増加をともなって、より正確な印象を得ることができる。従って、本発明の組成物は、カスタマイズ可能な歯科印象トレーを製造するために使用されることができる。
【0119】
歯科用印象トレーのための主な要件の1つは、印象用材料がトレーの内部表面に付着するということである。それらの形状のために、機械的連結は、硬化の間、歯および印象材料の間で一般的に形成される。硬化後でさえ印象用材料は可撓性であるが、口部から除去の間、不十分な粘着力がトレーまたは裂け目から印象用材料を分離させる。現在のトレー技術は、この結合を生じるために印象用材料でそれを充填する前の、トレーへの接着剤の添加に依存する。本発明はこれを考慮に入れるが、歯科用印象トレーは、マイクロ複製表面であり得るか、または例えば多孔性基材によって形成されることができる少なくとも1つの構造表面(すなわち、くぼみ、穴、隆起等から形成される三次元構造を有する表面)を含み得る。かかる構造表面は、印象材料および歯の間で形成されるものと同様に、トレーの表面および硬化印象材料の間で機械的連結を提供する。しかしながら、トレーおよび印象材料の間の連結は、より広範囲であり、従って印象材料/歯境界面より強い。このように、接着剤のための必要条件は排除される。トレーのこの構造表面を、制限されないが、多孔性基材(例えば、フィルム、フォームおよびニット、織布および不織布を含む)のような第2の構造層の成型、エンボシングまたはラミネート化を含む多くの方法で作製することができる。第2の層が基材材料にラミネートされる場合、例えば、前記ラミネート化はまた、機械的性質の強化を通して他の方法で寄与し得る。
【0120】
本発明の硬化性、自己支持形構造(例えば歯科用製品)は、個々に、または集合体として販売前に包装され得る。かかる包装材料は、これらの製品を開始剤系を活性化する、従って、例えば、光開始剤の場合、光への暴露から生じ得るような早期硬化を引き起こす条件から保護しなければならない。加えて、包装材料は任意に製品の表面に適合され、それにより、輸送の間、損傷に抵抗する追加的な機械強度を提供する。例えば、予成形クラウンまたはトレーは、全面でポリエチレン層に充填することができる。ポリエチレンは機械的構造を提供し、そして水との接触を回避するために密封することができる。ポリエチレンが適切な染料、例えばカーボンブラックで充填される場合、それが密閉製品に達し得る前に、入射光は吸収されるだろう。かかる包装層がいくぶん硬質である場合、および本発明の予成形物品と同様の包装材料が成形される場合、包装は出荷および貯蔵の間、予成形製品の寸法安定性を強化することができる。特定の場合、従って包装は製品系の必要不可欠な部分を形成し得る。
【0121】
本発明は、また、多くの予成形歯列矯正の用途において有用である。例えば、硬化性組成物は、リンガルリテイナー、スペースリテイナー、ホック、ボタンまたはスプリントのような特注器具に作製されることができる。もう1つの例として、組成物は、密接に患者の歯の湾曲に適合するように適応された歯列矯正ブラケットのためのカスタムベース、または口腔の隣接構造との接触を回避するために特定の角度で配向されたタイウィングを有する歯列矯正ブラケットのような器具の一部を製造するために使用されることができる。処理期間に歯の間の空間を隠すためにアーチワイヤーに接着される歯の複製を製造するために、組成物を使用することができる。さらに、他の歯列矯正器具のための強い定着具を確立するために隣接する歯の群を一緒に結合するために、組成物を使用することができる。加えて、アーチワイヤーの滑動を予防するために、または他の器具の移動を予防するために、ある位置でアーチワイヤーに接着される材料の小滴へと、組成物を形成することができる。歯列矯正の用途において使用される場合、本発明の組成物は生体内で所望の形状に形成することができ、次いで口腔でその場で硬化することができる。あるいは、所望であれば患者の歯の構造の模型を使用して、口腔の外側の所望の構成に組成物を形成することができる。組成物が口腔の外側に形成される場合、組成物は好ましくは口腔における配置前に硬化される。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、本発明の範囲を説明するために与えられるが、制限されない。特記されない限り、全ての部およびパーセンテージは重量によるものであり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0123】
試験方法
早期硬化弾性率および粘性率(流動学)試験
組成物の流動学を示す弾性率G’および粘性率G’’を試験手順に従って測定した。組成物試料をオーブン中で70℃まで加熱し、約2ミリメートル(mm)の厚さを有するシートに、2枚のテフロン(登録商標)線ガラスプレート間でプレスした。室温まで冷却および48時間老化後、得られたシートから直径8mmのディスクを切断した。8mmの平行プレート取付具を使用して、レオメトリックス(Rheometrics)RDA II動的機械的分析器(レオメトリック サイエンティフィック(ニュージャージー州、ピスケートウェイ(Piscataway)により、流動学的測定を実行した。早期硬化複合物のディスクに対する周波数(Hz)に応じて、弾性率および粘性率を25℃で測定し、結果をキロパスカル(kPa)で報告した。
【0124】
早期硬化クラウン形成試験
本試験の目的は、組成物を自己支持形クラウンに製造することができたかどうか決定し、次いでそのクラウンが展性であるか、形成可能であるか、および室温で整備可能であるかを定性的に決定することである。複合試料を手で、厚さ2mmのほぼ臼歯の大きさの「カップ」に形成し、わずかに減った上顎の中央門歯のポジティブ型と3M ESPEポリカーボネートクラウン#10のネガティブ型の間で85℃でプレスした。それぞれ、ポジティブ型とネガティブ型は、3M ESPE インプリント(IMPRINT) II モノフェース(Monophase)および3M ESPE エクスプレス(EXPRESS) STD パテマテリアル(Putty Material)(3M カンパニー(3M Co.)(ミネソタ州、セントポール))から調製された。組成物試料がこの試験方法を「合格する」ために、室温まで冷却後、いずれの著しい変形もなく、プレスされたクラウンは容易に型から除去されなければならない。
【0125】
チポドント(TYPODONT)アーチ(コロンビア デントフォーム(Columbia Dentoform)(ニューヨーク州、ロングアイランドシティー))上で、より重い減った上顎中央臼歯に特注適応される能力に基づいて、クラウン試料をさらに評価した。(1)取り扱いの間、それはいかに良好にその形状を保持するか、(2)はさみでいかに容易にそれを削除できるか、および(3)減った歯の上に置かれている間、分断またはいずれかの弾性的変形のいずれもなく、それをいかに良好に、複合器具によりクラウン形状を適応させることにより、減った歯の中央臼歯上に特注適合することができるか、ということに関してクラウン試料を十分に検査した。組成物がこの試験方法を「合格する」ために、成形クラウン試料がこれらの3つの品質パラメータのそれぞれに良好に適合することが要求される。
【0126】
早期硬化複合包装性試験
以下の手順に従って、複合材料の包装性を定性的に決定した。下部アーチモデル(コロンビア デンタフォーム コーポレーション(Columbia Dentaform Corporation)(ニューヨーク州、ロングアイランドシティー)からのSM−PVR−860)の第1臼歯を、メシオ・オキュルソ(mesio occluso)空洞調製により調製した。金属マトリックスバンド(デッド ソフト(dead soft)HO バンド−ヨン(Band−Young)、ヘンリー シーン カタログ(Henry Schein catalog)からのユニバーサル#1型)を、トフレミレ(Tofflemire)マトリックスリテイナー(ヘンリー シーン カタログ(Henry Schein catalog)からのユニバーサル型)の補助により、臼歯の周囲で適合させた。次いで、このモデルを小型加熱チャンバーに置き、それを38℃の一定温度に保持した。モデルが38℃の温度に達したら、それを加熱チャンバーから取り出し、試験される複合物のペレットを、調製された歯腔に置いた。二重末端アマルガムプラガー(ヘンリー シーン カタログ(Henry Schein catalog)からの1/2ブラックDE)により、空洞にペレットを詰め込むことによって、複合物の包装性を評価した。プラギング器具の周囲に流動するよりむしろ圧縮される複合材料の能力を決定した。評価は、いくらかの詰め込み力を金属マトリックスバンドに移し、それによりバンドが変形する複合材料の能力も含む。両者が空洞において凝縮され、バンドを変形させる複合材料は包装可能であると判断された。
【0127】
早期硬化示差走査熱量測定(DSC)試験
試料の結晶化度および融点は、TA インストルメンツ(TA Instruments)(デラウェア州、ニューキャッスル)からのDSC 2920器具を使用する示差走査熱量測定法によって決定した。少なくとも72時間老化された重量5mg〜10mgの試料を、標準アルミニウムパンに置き、そして5℃/分で−40℃から120℃で加熱した。得られた温度記録図を、結晶種の融解と関連する融点範囲および吸熱ピークの証拠に関して検査した。吸熱ピークがないことは、試料に結晶成分がないことを示す。
【0128】
後硬化曲げ強さ(FS)および曲げ弾性率(FM)試験
以下の試験手順に従って、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。2mm×2mm×25mmの試験バーを形成するために、予熱された型において65℃で組成物試料をプレスした。バーを24時間室温で老化し、2つの反対位置に配置されたビスルックス モデル(VISILUX Model)2500ブルーライトガン(3Mカンパニー(3M Co.))に暴露することによって、90秒間光硬化した。次いで、デンタカラー(Dentacolor)XS装置(クルツァー インコーポレイテッド(Kulzer,Inc.)(ドイツ))において180秒間、バーを後硬化し、600グリット紙やすりで軽く磨き、成型プロセスからのフラッシュを除去した。24時間、37℃で蒸留水に貯蔵後、ANSI/ADA(アメリカン ナショナル スタンダード(American National Standard)/アメリカン デンタル アソシエーション(American Dental Association))規格番号27(1933)に従い、0.75mm/分のクロスヘッド速度で、インストロン(Instron)テスター(インストロン(Instron)4505、インストロン コーポレイション(Instron Corp.)(マサチューセッツ州、カントン))においてバーの曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。硬化複合物の6本のバーを調製し、6回の測定の平均としてメガパスカル(MPa)で報告される結果により測定された。
【0129】
後硬化圧縮強度(CS)試験
ANSI/ADA規格番号27(1993)によって、圧縮強度を測定した。特に組成物試料を85℃まで加熱し、シリコーンゴムプラグでキャップされた4mm(内径)ガラス管およびチューブに詰め込み、そして5分間、約0.28MPaで軸方向に圧縮した。2つの反対位置に配置されたビスルックス モデル(VISILUX Model)2500ブルーライトガン(3Mカンパニー(3M Co.))に暴露することによって、90秒間試料を光硬化し、次いで、デンタカラー(Dentacolor)XS ライトボックス(クルツァー インコーポレイテッド(Kulzer,Inc.))において180秒間、照射した。次いで、硬化試料をダイヤモンド鋸で切断し、CSの測定のために、長さ8mmの円筒プラグを形成した。試験前に、24時間、37℃で、プラグを蒸留水に貯蔵した。10キロニュートン(kN)ロードセルを有するインストロン(Instron)テスター(インストロン(Instron)4505、インストロン コーポレイション(Instron Corp.))上で、測定を実行した。硬化複合物の5本のプラグを調製し、5回の測定の平均としてMPaで報告される結果で測定された。
【0130】
後硬化直径引張強さ(DTS)試験
ANSI/ADA規格番号27(1993)によって、直径引張強さを測定した。組成物試料をガラス管において圧縮し、圧縮強度試験に関して上記された通り硬化した。次いで、DTSの測定のために、硬化試料を長さ2.2mmのディスクに切断した。上記の通りディスクを水に貯蔵し、10kNロードセルを有するインストロン(Instron)テスター(インストロン(Instron)4505、インストロン コーポレイション(Instron Corp.))により、1メートル/分のクロスヘッド速度で測定した。硬化複合物の5つのディスクを調製し、5回の測定の平均としてMPaで報告される結果で測定された。
【0131】
【表1】

【0132】
出発材料
樹脂A
ポリエチレンジオール(PE−ジオール(25g(g))およびメタクリル酸無水物(4.0ml、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を、フリーラジカルを除去するためのBHT(0.02g)とともに丸底フラスコに添加した。フラスコを10分間、窒素パージし、次いで100℃で一晩撹拌しながら加熱した。得られた材料をメタノールへ注入し、濾過によって回収し、熱トルエンに溶解し、メタノールで再沈殿し、濾過によって再回収し、一晩真空乾燥した。乾燥固体を樹脂Aと称した。1H NMRによる分析は、メタクリレート官能性へのジオールの完全な転換を指示した。
【0133】
樹脂B
酢酸エチル(溶液82g)、HEMA(2.5g)およびトルエン(50g)中のオクタデシルアクリレート(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))の58重量%溶液を磁気的に撹拌し、水冷式コンデンサー、熱電対および窒素引入口を備えている三つ口反応容器に充填した。撹拌しながら溶液を窒素下で115℃に加熱し、トルエン(3g)に溶解された第三級ブチルペルオキシベンゾエート(0.1g、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を容器に充填した。わずかな発熱(約3〜5℃の温度増加)が観察された。30分後、樹脂のペンダントヒドロキシル基単位を官能化するために、ジブチルススジラウレート(0.68g、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))の触媒量の存在下で3.34gのIEMを添加した。得られる混合物を60℃の撹拌浴で一晩煽動した。得られるメタクリレート官能性樹脂を、メタノールによる沈殿およびその後の濾過によって単離した。乾燥固体を樹脂Bと称した。光開始剤、ダロカー(DAROCUR)1173(チバ−ガイギー(Ciba−Geigy)(ニューヨーク州、ホーソン))の存在下でHEMA−IEM付加物およびイソオクチルアクリレートの混合物の架橋により、メタクリレート官能性を確認し、UV光に暴露した。
【0134】
樹脂C
以下の手順に従って、ポリカプロラクトン4−アームスター樹脂を調製した。ポリオールPP50(35.6g、0.1モル(mol))およびε−カプロラクトン(320.0g、2.8モル、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))をガラス容器に添加し、窒素下で110℃に加熱した。ファストキャット(FASTCAT)4224(0.21g、0.5ミリモル(mmol)、アトフィナ ケミカルズ インコーポレイテッド(Atofina Chemicals,Inc.)(ペンシルバニア州、フィラデルフィア))を添加し、混合物を5時間170℃で加熱した。冷却後、褐色個体(融点48−52℃)が形成し、濾過によって回収し、乾燥した。固体は、709のOH当量を有した。一部の固体(50.0g、18mmol)をメタクリル酸無水物(11.09g、72mmol、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))およびBHT(0.35g、1.6mmol)と混合した。17時間100℃で加熱し、室温に冷却後、黄褐色固体を得た。乾燥固体を樹脂Cと称した。
【0135】
樹脂D
オリゴVDM(25g、1.7×10-1モル)およびTHF(250ml)の撹拌溶液に、窒素下で、オクタデシルアルコール(29.7g、1.1×10-1モル)、HEMA(1.5g、1.2×10-2モル)およびDBU(0.2g、1.3×10-3モル)を窒素下で添加した。得られた懸濁液を40℃まで加熱し、約12時間、一晩撹拌しながらこの温度を維持した。メタノール中に注ぎ入れ、真空下で12時間、80℃でメタノール/THF溶媒をエバポレーションすることにより、得られた黄色オレンジ粘性液を単離した。乾燥材料を樹脂Dと称した。
【0136】
THEI(10)−IEM
窒素雰囲気下でメカニカルスターラーを備えた250mlの3つ口フラスコにおいて、連続的に撹拌しながら1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌル酸(4.30g、0.016モル)をε−カプロラクトン(54.70g、0.48モル)中に懸濁させた。数滴のスズ(II)エチルヘキサノエートを添加し、混合物を一晩130℃〜150℃で加熱した。透明黄色液体が得られた。反応温度を50℃まで低下させ、次いで、BHT(50mg)を添加し、続いて5滴のジブチルスズジラウレートを添加した。次いで、IEM(7.66g、0.049モル)を50℃で45分かけて充填した。20分間撹拌後、加熱を停止した。液体は、IR、NMRおよびGPCによって特徴づけられる材料へと固化した。(Mw=6.46E+03、Mn=5.69E+03、P=1.14)1.14)
【0137】
THEI(5)−IEM
ε−カプロラクトンの量が27.35g、0.24モルまで半分にされたのを除き、THEI(10)−IEMに関して記載される通り、この生成物を調製した。得られた生成物は、IR、NMRおよびGPCによって特徴づけられる固体として単離した。(Mw=4.36E+03、Mn=2.859E+03、P=1.53)
【0138】
ビスGMA(5)−IEM
乾燥空気雰囲気および反応物ビスGMA(18.50g、0.036モル)、ε−カプロラクトン(42.10g、0.369モル)およびIEM(11.6g、0.074モル)を利用したことを除き、THEI(10)−IEMに関して記載される通り、この生成物を調製した。得られた生成物は、IRおよびNMRによって特徴づけられる固体として単離した。
【0139】
GGDA(5)−IEM
乾燥空気雰囲気および反応物グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート(トリグリセロールジアクリレート)、ε−カプロラクトンおよびIEMを利用したことを除き、ビスGMA(5)−IEMに関して記載される通り、この生成物を調製した。得られた生成物は、固体として単離した。
【0140】
LEX110−IEM
20.0g(20mmol)のレクソレズ(LEXOREZ)−1150−110、6.24g(40mmol)の2−イソシアナトエチルメタクリレート、70gのアセトンおよび0.03g(0.05mmol)のジブチルスズジラウレートの混合物を5時間、50℃まで加熱した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、白色固体として生成物を提供した。
【0141】
LEX160−IEM
20.0g(28mmol)のレクソレズ(LEXOREZ)−1150−160、8.57g(55mmol)の2−イソシアナトエチルメタクリレート、70gのアセトンおよび0.03g(0.05mmol)のジブチルスズジラウレートの混合物を5時間、50℃まで加熱した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、白色固体として生成物を提供した。
【0142】
実施例1〜14および比較例1(CE−1)
自己支持形光硬化性組成物
以下の手順に従って、自己支持形、光硬化性複合物(実施例1〜14および比較例1)を調製した。最初は、水浴のビスGMA、UDMA、ビスGMA/UDMA/ビス−EMS6/TEGDMAブレンドにおいて光開始剤成分を溶解した。次いで、30分間、85℃でオーブンにおいて加熱されたスクリューキャップ(フラクテック(Flakteck)(サウスカロライナ州、ランドラム(Landrum)))および閉鎖カップを有するMAX20プラスチックミキシングカップに、成分(表1で示される各実施例に関する名称および量)を計量した。カップを、DAC150FVスピードミキサー(フラクテック(Flakteck))に置き、スピン混合を3000rpmで1分間実行した。次いで、カップを85℃で30分間再加熱し、続いて3000rpmでもう1分混合し、最終的なブレンド複合物を与えた。早期硬化物理特性試験を容易さに関して、同様のブレンドされた複合物を、光開始剤(CPQおよびEDMA)なしで製造した。
【0143】
【表2】

【0144】
実施例15
歯科用印象用トレー調製および模擬使用
自己支持形、光硬化性複合物は、表1で示されるこの実施例15で使用される各成分に関する名称および量で、実施例1−14に記載される手順によって調製された。
【0145】
バルク複合物を、厚さ約2mmまで、2つのシリコナイズド紙ライナー(TPK 7120、3Mカンパニー(3M Co.))の間のカーヴァープレスにおいてプレスし、40℃まで加熱した。2つの紙ライナーを処分し、シートを不織布(ソンタラ(SONTARA)8010、デュポン(DuPont)(テネシー州、オールドヒッコリー(Old Hickory)))の2層間で、40℃で、手による圧力下で手動でラミネート化した。まだ暖かい間に、得られるラミネートの10cm×10cmシートを下顎のストーンモデル上に置き、ゆるく輪郭に適合するように成形され、一晩室温まで冷却させた。輪郭形状を慎重にモデルから除去し、自己支持形、展性の硬化可能な特注のトレーを提供するために、ハンドルを含む印象トレーの形状に切断された。
【0146】
室温での貯蔵数日後、特注のトレーの使用について、下顎ストーンモデル上でシミュレーションされた。湿ったクリネックス(登録商標)(Kleenex)ティッシュペーパーの数層を完全なアーチに沿って最初に置き、続いて、特注のトレーを上部に置いた。特注部品は、トレーの全長に沿って単純な指圧を適用することによって、容易に提供された。次いで、20秒間、ビスルックス モデル(VISILUX Model)2500硬化光(3Mカンパニー(3M Co.))によって、トレーをタック硬化し、続いて、デンタカラー(Dentacolor)XS ユニット(クルツァー インコーポレイテッド(Kulzer,Inc.))において180秒間、さらに硬化した。それによって、硬質、剛性、強靭なトレーが得られた。
【0147】
次いで、このトレーをインプリント(IMPRINT) II モノフェース(Monophase)印象材料(Impressioning Material)(3M カンパニー(3M Co.))で充填し、ストーンモデル(ティッシュペーパー層なしで)にプレスし、印象材料が硬化するまでその場に保持した。この時点で、硬化された印象材料と一緒に、全アーチの印象を得るためにストーンモデルからトレーを切断した。優れた粘着性は、硬化された印象材料およびトレーの不織表面の間で観察された。
【0148】
実施例16〜32
自己支持形光硬化性複合物
自己支持形、光硬化性複合物(実施例16〜32)は、表2に示される各実施例に関する成分名および量で、実施例1−14に関して記載される手順によって調製された。
【0149】
【表3】

【0150】
試料評価(実施例1−14、16−32および比較例1)
複合試料(実施例1−14、16−32および比較例1)を、早期硬化弾性率および粘性率、早期硬化クラウン構造、ならびに後硬化曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強度、および直径引張強度に関して、本明細書に記載の試験方法に従って評価した。非常に可撓性であり、自己支持形ではない比較例1の試料を除き、全試料は、早期硬化クラウン構造試験を合格した。他の評価からの結果は、表3(実施例1−14および比較例1)および表4(実施例16−32)に提供される。
【0151】
【表4】

【0152】
比較例1と比較すると、実施例1は、ビスGMAへのヒュームドシリカおよび界面活性剤の添加が、得られた複合物の弾性率および粘性率を著しく増加させ、それによって複合物の物理的性質を非常に可撓性の自己支持形から変化させたことを示す。図2に示されるように、弾性率および粘性率(それぞれ、G’およびG’’)は、約103(比較例1に関して)から、約105パスカル(Pa)(実施例1に関して)まで増加する。これは、実施例1の複合物が、図1に示される歯科ベースプレートワックスのものにより類似した室温での性質を有することを示唆する。さらに、実施例1の率の周波数依存は減少し、歯科ワックスのものに類似する、より固体様特性を示す。その融点以上で自由流動液体へと変形する歯科ワックスとは異なる点が注意され、本発明の組成物は軟化するが、その融点または融解範囲以上で、自由流動液体(すなわち液体)にならない。
【0153】
比較例1と比較すると、実施例2−5は、ビスGMAへのトーン(TONE)0230−IEM光硬化性ポリマーの添加が、得られる複合物の弾性率および粘性率を著しく増加させ、それによって複合物の物理的な自然が非常に可撓性の自己支持形から変化したことを示す。さらに、表3の結果から、界面活性剤/ヒュームドシリカ成分の更なる添加が率を増加させ、トーン(TONE)0230−IEMポリマー量の増加により増加すると結論づけることができる。これらの強化された性質は、トーン(TONE)0230−IEMポリマーの結晶性によると推理される。
【0154】
比較例1と比較すると、実施例6−10は、トーン(TONE)0230−IEMポリマーで達成された同一方法で、得られる複合物の弾性率および粘性率を著しく増加させるために、他の種類のポリマー(ポリマーA−D)の添加が、ビスGMAに添加することができることを示す。実施例8および実施例9の比較により、界面活性剤/ヒュームドシリカ成分の添加の率に対する明確な影響を示す。
【0155】
比較例1と比較すると、実施例11は、弾性率および粘性率が、ビスGMAに単独で界面活性剤ARQ(ポリマー添加剤なしで)の添加によって著しく増加し得ることを示す。
【0156】
比較例1と比較すると、実施例12−13は、界面活性剤TPEG(実施例12)を加えたか、またはビスGMAへのヒュームドシリカM5(実施例13)を加えたトーン(TONE)0230−IEMポリマーの添加によって弾性率および粘性率が著しく増加し得ることを示す。
【0157】
比較例1と比較すると、実施例14は、高レベルのトーン(TONE)0230−IEMポリマー単独(ビスGMAなしで)の利用によって弾性率および粘性率が著しく増加し得ることを示す。硬化後、全試料(実施例1−14)は、歯科物品、例えば歯科クラウンとして有用であるように、十分な曲げ弾性率および曲げ強さ、圧縮強度および寸法引張強さを有する硬質、強靭材料に変化した。
【0158】
【表5】

【0159】
表4に示される結果から、硬化に続いて、全ての試料(実施例16−32)は、歯科物品、例えば歯科クラウンとして有用であるように、十分な曲げ弾性率および曲げ強さ、圧縮強度および寸法引張強さを有する硬質、強靭な材料へと変換されたことを結論することができる。
【0160】
試料評価(結晶化度および包装性)
表3および表4で提供される試験結果に加えて、実施例2、3、13、14、24、25および26、ならびに市販材料レボテック(REVOTEK)LC樹脂(GCデンタル プロダクツ コーポレーション(GC Dental Products Corp.)(日本))は、本明細書で記載される早期硬化DSC試験方法に従って評価された場合、20℃超の融点を有する結晶成分を含有するものとして確認された。市販材料シュアフィル(SUREFIL)高密度後回復剤(High DensityPosterior Restorative)(デントスプリー(Dentsply))の試料は、20℃未満の融点を有する結晶成分の存在に明らかにした。すなわち、本明細書で定義されるような結晶成分は存在しない。対照して、実施例1および市販材料プロジギー(PRODIGY)濃縮性複合回復剤系(Condensable Composite Restorative System)(カー(Kerr)(カリフォルニア州、オレンジ(Orange)))およびトリアド(TRIAD)可視光硬化仮材料(Visible Light Cure Provisional Material)(デントスプリー カーク(Dentsply Caulk)(デラウェア州、ミルフォード(Milford))のDSC評価は、結晶成分がいずれも存在しないことを示唆した。これらのDSC測定の結果を表5に提供する。また、(加熱しないで試料がプレスされたことを除き、本明細書に提供された試験方法に従って)4つの市販材料の弾性率(G’)および粘性率(G’’)を表5に提供する。
【0161】
【表6】

【0162】
加えて、本明細書で記載される早期硬化複合包装性試験方法によって評価される場合、実施例28−32は包装性複合材料であることが示された。市販材料シュアフィル(SUREFIL)回復剤およびプロジギー(PRODIGY)濃縮性複合回復剤も、同一の包装性試験方法によって評価され、包装性複合材料であると決定された。
【0163】
試料評価(実施例15)
実施例15からの複合試料は、本明細書で記載される試験方法によって、後硬化曲げ強さおよび曲げ弾性率に関して評価された。硬化させた後、得られる硬質、強靭材料は、歯科物品、例えば歯科印象トレーとして使用される材料のために非常に許容できる、次の曲げ強さおよび曲げ弾性率値を有した。曲げ強さ=66MPa(標準偏差=5)および曲げ弾性率=915MPa(標準偏差=115)。
【0164】
特許、特許文献および本明細書で引用され刊行物の全開示は、それぞれが個々に組み入れられるように、それら全体で引用により組み入れられる。本発明への様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明が、本明細書に明らかにされた実例となる実施形態および実施例により過度に制限されるように意図されないこと、およびかかる実施例および実施形態は、次の通り、本明細書に明らかにされた請求項によってのみ制限されるように意図された本発明の範囲のみの例により提供されることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶成分を含む樹脂系と、60重量%より多い充填材系と、開始剤系とを含む組成物であって、第1の形状と、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性(malleability)とを有する硬化性自己支持形構造の形態であるが、ただし、充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在する組成物。
【請求項2】
室温で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
充填材系が70重量%より多い、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
充填材系の少なくとも一部分が粒子性充填材を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
第2の形状の構造の硬化時に、硬化構造が少なくとも約25MPaの曲げ強さを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
結晶成分が反応基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
結晶成分が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタンまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
結晶成分が、第一級ヒドロキシル末端基を含有する飽和直鎖脂肪族ポリエステルポリオールを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ヒドロキシル末端基が重合性不飽和官能基を導入するために変性されている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
結晶成分が、結晶性ペンダント部分を有しかつ以下の一般式
【化1】

(式中、Rは水素または(C1〜C4)アルキル基であり、Xは−CH2−、−C(O)O−、−O−C(O)−、−C(O)−NH−、−HN−C(O)−、−O−、−NH−、−O−C(O)−NH−、−HN−C(O)−O−、−HN−C(O)−NH−または−Si(CH32−であり、mはポリマー中の繰返し単位の数であり、かつnは、結晶ドメインまたは結晶領域を含有するポリマーを形成するために十分な側鎖長および構造を提供するために十分大きい)を有するポリマー材料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
充填材系が、ナノスコピック粒子を含む無機材料を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
無機材料が表面ヒドロキシル基を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤系をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
約0.005Hzの周波数において約100kPaから約50,000kPaのG’値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
結晶成分が、樹枝状、ハイパーブランチドまたは星状構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
結晶成分を含む樹脂系と、70重量%より多い充填材系と、開始剤系とを含む組成物であって、第1の形状を有しかつ第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する硬化性自己支持形構造の形態であるが、ただし、充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在する組成物。
【請求項17】
第2の形状の構造に硬化した時、硬化構造が追加の化粧材料(veneering material)を必要としない、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
樹脂系と、少なくとも一部分が、約50nm以下の平均一次粒子径を有するナノスコピック粒子を含む無機材料である充填材系と、界面活性剤系と、開始剤系とを含む組成物であって、第1の形状を有しかつ第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する硬化性自己支持形構造の形態である組成物。
【請求項19】
充填材系が、組成物の全重量を基準として50重量%より多い量で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
第1の形状を有する硬化性自己支持形構造が、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
第1の形状を有する硬化性自己支持形構造が、室温で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
樹脂系が結晶成分をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
結晶成分が、樹枝状、ハイパーブランチドまたは星状構造を有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
第2の形状の構造に硬化した時、硬化構造が少なくとも約25MPaの曲げ強さを有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項26】
少なくとも1つのエチレン系不飽和成分および結晶成分を含む樹脂系と、
60重量%より多い充填材系と、
開始剤系と、を含む組成物であって、
第1の形状を有しかつ約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する硬化性自己支持形構造の形態である組成物。
【請求項27】
ただし、充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
エチレン系不飽和成分が結晶成分である、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
結晶成分が、樹枝状、ハイパーブランチドまたは星状構造を有する、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
組成物が界面活性剤系をさらに含み、かつ充填材系がミクロンサイズの粒子性充填材およびナノスコピック粒子性充填材を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも1つのエチレン系不飽和成分を含む樹脂系と、
50重量%より多い、少なくとも一部分が、約50nm以下の平均一次粒子径を有するナノスコピック粒子を含む無機材料である充填材系と、
開始剤系と、
界面活性剤系と、を含む組成物であって、
第1の形状を有しかつ第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する硬化性自己支持形構造の形態である組成物。
【請求項32】
第1の形状を有する硬化性自己支持形構造が、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
充填材系が、ミクロンサイズの粒子性充填材をさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
樹脂系が結晶成分をさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項35】
モノ−、ジ−またはポリ−アクリレートおよびメタクリレート、不飽和アミド、ビニル化合物ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される非晶質成分、
ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリウレタン、および、結晶性ペンダント部分と以下の一般式
【化2】

(式中、Rは水素または(C1〜C4)アルキル基であり、Xは−CH2−、−C(O)O−、−O−C(O)−、−C(O)−NH−、−HN−C(O)−、−O−、−NH−、−O−C(O)−NH−、−HN−C(O)−O−、−HN−C(O)−NH−または−Si(CH32−であり、mはポリマー中の繰返し単位の数であり、かつnは、結晶ドメインまたは結晶領域を含有するポリマーを形成するために十分な側鎖長および構造を提供するために十分大きい)とを有するポリマー材料、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される結晶成分、
を含む樹脂系と、
60重量%より多い充填材系と、
開始剤系と、を含む組成物であって、
第1の形状を有しかつ約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性とを有する硬化性自己支持形構造の形態であるが、ただし、充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在する組成物。
【請求項36】
界面活性剤系をさらに含み、かつ充填材系がナノスコピック粒子状充填材をさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
充填材系がミクロンサイズ粒子状充填材をさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
次式
【化3】

(式中、各Qは、独立して、ポリエステルセグメント、ポリアミドセグメント、ポリウレタンセグメント、ポリエーテルセグメントまたはそれらの組み合わせを含む)の結晶化合物を含む樹脂系と、
充填材系と、
開始剤系とを含む組成物であって、
第1の形状を有しかつ第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する硬化性自己支持形構造の形態である組成物。
【請求項39】
各Qが、独立して、ポリ(カプロラクトン)セグメントを含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
結晶化合物が重合性基を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
請求項1に記載の組成物を含む、歯科用製品。
【請求項42】
予成形クラウン、予成形インレー、予成形オンレー、予成形ブリッジ、予成形ベニア、予成形歯科矯正装置、予成形顎顔面補綴、予成形の歯の複製または予成形の歯スプリントである、請求項41に記載の歯科用製品。
【請求項43】
充填材である、請求項41に記載の歯科用製品。
【請求項44】
請求項16に記載の組成物を含む、歯科用製品。
【請求項45】
予成形クラウン、予成形インレー、予成形オンレー、予成形ブリッジ、予成形ベニア、予成形歯科矯正装置、予成形顎顔面補綴、予成形の歯の複製または予成形の歯スプリントである、請求項44に記載の歯科用製品。
【請求項46】
充填材である、請求項44に記載の歯科用製品。
【請求項47】
請求項18に記載の組成物を含む、歯科用製品。
【請求項48】
予成形クラウン、予成形インレー、予成形オンレー、予成形ブリッジ、予成形ベニア、予成形歯科矯正装置、予成形顎顔面補綴、予成形の歯の複製または予成形の歯スプリントである、請求項47に記載の歯科用製品。
【請求項49】
充填材である、請求項47に記載の歯科用製品。
【請求項50】
請求項18に記載の組成物を含む、歯科用印象用トレー。
【請求項51】
自己支持形構造が少なくとも1つの構造表面を有する、請求項50に記載の歯科用印象用トレー。
【請求項52】
構造表面が多孔性基材により形成されている、請求項51に記載の歯科用印象用トレー。
【請求項53】
構造表面がマイクロ複製表面である、請求項51に記載の歯科用印象用トレー。
【請求項54】
樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物であって、第1の形状を有しかつ第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する硬化性自己支持形構造の形態である組成物を含む、予成形歯科用クラウン。
【請求項55】
第1の形状を有する硬化性自己支持形構造が、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する、請求項54に記載の予成形歯科用クラウン。
【請求項56】
充填材系が、組成物の全重量を基準として60重量%より多い量で存在する、請求項54に記載の予成形歯科用クラウン。
【請求項57】
充填材系が、組成物の全重量を基準として70重量%より多い量で存在する、請求項54に記載の予成形歯科用クラウン。
【請求項58】
第2の形状を形成し第2の形状の構造を硬化した時に、硬化構造が追加の化粧材料を必要としない、請求項54に記載の予成形歯科用クラウン。
【請求項59】
パッケージに入っている、請求項54に記載の予成形歯科用クラウン。
【請求項60】
パッケージが光遮断パッケージである、請求項59に記載の予成形歯科用クラウン。
【請求項61】
樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含み、第1の形状を有しかつ約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する硬化性自己支持形構造の形態である、予成形歯科用印象用トレー。
【請求項62】
硬化性自己支持形構造が少なくとも1つの構造表面を有する、請求項61に記載の予成形歯科用印象用トレー。
【請求項63】
構造表面が多孔性基材により形成されている、請求項62に記載の予成形歯科用印象用トレー。
【請求項64】
構造表面がマイクロ複製表面である、請求項62に記載の予成形歯科用印象用トレー。
【請求項65】
充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在することを条件として、結晶成分を含む樹脂系と、60重量%より多い充填材系と、開始剤系とを組み合わせて混合物を形成する工程と、
混合物を第1の形状を有する硬化性自己支持形構造へと形成する工程とを含み、
第1の形状を有する硬化性自己支持形構造は約15℃から38℃の温度で第2の形状へ
と形成されるために十分な展性を有する、組成物の調製方法。
【請求項66】
第1の形状が半仕上げ歯科用製品である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
充填材系が繊維を含む場合、組成物の全重量を基準として繊維が20重量%未満の量で存在することを条件として、結晶成分を含む樹脂系と、70重量%より多い充填材系と、開始剤系とを組み合わせて混合物を形成する工程と、
混合物を第1の形状を有する硬化性自己支持形構造へと形成する工程とを含み、
第1の形状を有する硬化性自己支持形構造は第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する
組成物の調製方法。
【請求項68】
第1の形状が半仕上げ歯科用製品である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
樹脂系と、少なくとも一部分が、約50nm以下の平均一次粒子径を有するナノスコピック粒子を含む無機材料である充填材系と、開始剤系とを組み合わせて混合物を形成する工程と、
混合物を第1の形状を有する硬化性自己支持形構造へと形成する工程とを含み、
第1の形状を有する硬化性自己支持形構造は第2の形状へと形成されるために十分な展性を有する
組成物の調製方法。
【請求項70】
第1の形状が半仕上げ歯科用製品である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
組成物が、第1の半仕上げ形状を有する硬化性自己支持形展性構造の形態である、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物を提供する工程と、
自己支持形展性構造を、約15℃から38℃の温度で第2の形状へと形成する工程と、
第2の形状を有する自己支持形構造を硬化して歯科用製品を形成する工程と
を含む、歯科用製品の調製方法。
【請求項72】
半仕上げ形状が、予成形クラウン、予成形インレー、予成形オンレー、予成形ブリッジ、予成形ベニア、予成形歯科矯正装置、予成形顎顔面補綴、予成形の歯の複製または予成形の歯スプリントの形状である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
組成物が、予成形クラウンまたは予成形ブリッジの第1の半仕上げ形状を有する硬化性自己支持形展性構造の形態である、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物を提供する工程と、
自己支持形展性構造を、第2の形状へと形成する工程と、
第2の形状を有する自己支持形構造を硬化して歯科用製品を形成する工程と
を含む、歯科用製品の調製方法。
【請求項74】
自己支持形展性構造を第2の形状へと形成する工程が、約15℃から38℃の温度で生じる、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
組成物が、予成形歯科用トレーの第1の半仕上げ形状を有する硬化性自己支持形展性構造の形態である、樹脂系と、充填材系と、開始剤系とを含む組成物を提供する工程と、
自己支持形展性構造を、患者に適合するように特注製造された第2の形状へと形成する工程と、
第2の形状を有する自己支持形構造を硬化して歯科用トレーを形成する工程とを含む、歯科用トレーの調製方法。
【請求項76】
次式
【化4】

(式中、各Qは、独立して、ポリエステルセグメント、ポリアミドセグメント、ポリウレタンセグメント、ポリエーテルセグメントまたはそれらの組み合わせを含む)の化合物。
【請求項77】
各Qが、独立して、ポリ(カプロラクトン)セグメントを含む、請求項76に記載の化合物。
【請求項78】
結晶化合物が重合性基を含む、請求項76に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−149685(P2009−149685A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−63630(P2009−63630)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【分割の表示】特願2003−520681(P2003−520681)の分割
【原出願日】平成14年8月15日(2002.8.15)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】