説明

硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム

【課題】ヒト硬膜外腔に冷却用のカテーテルを入れ脊髄を冷却する際に、硬膜外腔の温度検知のため生体内に温度センサを入れずに、温度をモニタする方法を提供する。
【解決手段】硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル1、ポンプ2,熱交換器3、冷却機4を備え、冷却カテーテル1に流入する潅流液9の温度を測定する入口温度検出手段6と、冷却カテーテル1から流出する潅流液9の温度を測定する出口温度検出手段7、潅流液9の流量を検出する流量検出手段5、および前記の各検出手段により検出される潅流液9の各温度の値と潅流液流量の値から冷却カテーテル1が挿入されている硬膜外腔温度を推定する温度推定手段8とを有する硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓血管外科手術、整形外科手術、細胞移植手術などの臨床で脊髄に隣接する硬膜外腔を冷却する際に利用できる硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムおよび温度モニター方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床において臓器や血液を冷却する際の温度を知るためには、測定希望部位にサーミスタや熱電対などの温度センサを挿入したり、取り付けたりしている。
【0003】
例えば温度プローブを搭載したカテーテルシステムのように、カテーテル本体から離れて位置する先端に取り付けられた温度プローブにより、血管内を流れる血液の温度を監視する温度モニターシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、頭部冷却装置のように頭部体温を知るために、頸動脈体温と頸静脈体温だけを温度センサーで測定して、これら温度の中間値として推定する温度モニターシステムが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特表2005−506118号公報
【特許文献2】特開2003−126139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脊髄の持続的冷却を施行する際に、冷却カテーテルを挿入する硬膜外腔の温度を知ることは患者の安全上きわめて重要である。しかし冷却カテーテル以外に温度センサを追加挿入することは、リスクを増加させることになる。またセンサを硬膜外腔内に留置できたとしても、カテーテルからの距離を一定にすることは困難で、同じ温度でも脊髄の冷却状態が同じとは言い切れないことが多い。カテーテル先端に温度センサを組み込むことが望ましいが、カテーテルの製作が難しく、単価の上昇や、故障の原因になるなどの問題を生じる恐れが多い。
【0006】
本発明は、冷却カテーテル以外に温度センサを追加挿入すること、およびカテーテル先端部に温度センサを組み込むことをせずして、硬膜外腔の温度を精度よくモニターすることができる硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム及びそれを用いた温度モニター方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、硬膜外腔に挿入される冷却カテーテル内を流れる潅流液の流量と入口と出口における温度差を測定し、冷却カテーテルを介して硬膜外腔から潅流液に伝達された熱量を計算し、この熱量から硬膜外腔と潅流液の温度差を求め、かつ潅流液の入口温度を加えることで硬膜外腔の温度を推定することができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、第1の本発明は、硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、冷却カテーテルの入口における潅流液温度を検出する入口温度検出手段、冷却カテーテルの出口における潅流液温度を検出する出口温度検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、前記の各手段により得られた潅流液入口温度、潅流液出口温度及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを要旨とするものである。
【0009】
また、第2の本発明は、硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、潅流液を冷却カテーテル入口部位から冷却カテーテルを経由せずに冷却カテーテル出口部位に流すことのできるバイパス回路を備え、バイパス回路を流れる潅流液温度及び冷却カテーテル出口から流れる潅流液温度を検出する温度検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、前記の各手段により得られた潅流液温度及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを要旨とするものである。
【0010】
また、第3の本発明は、硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、熱交換器及び冷却機が冷却カテーテルに流入する潅流液の温度を一定に設定し維持できるものであり、冷却カテーテルの入口における潅流液温度を感知する入口温度感知部を有し冷却カテーテルの入口と出口における潅流液の温度差を直接検出する温度差検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、潅流液温度設定値と前記の各手段により得られた潅流液温度差及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを要旨とするものである。
【0011】
また、第4の本発明は、硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、熱交換器及び冷却機が冷却カテーテルに流入する潅流液の温度を一定に設定し維持できるものであり、冷却カテーテルの出口における潅流液温度を検出する出口温度検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、潅流液温度設定値と前記の各手段により得られた潅流液出口温度及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有していることを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを要旨とするものである。
【0012】
また、第5の本発明は、上記した各本発明において、好ましくは、さらに冷却カテーテルが皮下組織に接触している部分での熱の移動を知るための体温検出手段を有しており、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、前記の体温検出手段により得られた体温の値を加味して硬膜外腔温度を推定する硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムである。
【0013】
また、第6の本発明は、上記の第1〜4の本発明である硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)入口温度(Tin)と出口温度(Tout)から出入口間の温度差(ΔT)を求めるステップ、
(2)潅流液流量[容量](F)と潅流液の比重(γ)から潅流液流量[重量](W)を求めるステップ、
(3)出入口間の温度差(ΔT)と潅流液流量[重量](W)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせることで硬膜外腔から潅流液に移動した熱量(Qf)を求めるステップ、
(4)冷却カテーテルの種類に関する情報と、(2)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)のテーブルを用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(5)移動した熱量(Qf)を熱貫流量(A)で除することにより硬膜外腔温度(Te)と入口温度(Tin)との温度差(ΔTe)を求めるステップ、
(6)温度差(ΔTe)に入口温度(Tin)を加算することで硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法を要旨とするものである。
【0014】
また、第7の本発明は、上記の第1〜4の本発明である硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)入口温度(Tin)と出口温度(Tout)から出入口間の温度差(ΔT)を求めるステップ、
(2)潅流液流量[容量](F)と潅流液の比重(γ)から潅流液流量[重量](W)を求めるステップ、
(3)出入口間の温度差(ΔT)と潅流液流量[重量](W)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせることで硬膜外腔から潅流液に移動した熱量(Qf)を求めるステップ、
(4)冷却カテーテルの種類に関する情報と、(2)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)についての関数式を用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(5)移動した熱量(Qf)を熱貫流量(A)で除することにより硬膜外腔温度(Te)と入口温度(Tin)との温度差(ΔTe)を求めるステップ、
(6)温度差(ΔTe)に入口温度(Tin)を加算することで硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法を要旨とするものである。
【0015】
また、第8の本発明は、上記の第5の本発明である硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)潅流液流量[容量](F)と潅流液の比重(γ)から潅流液流量[重量](W)を求めるステップ、
(2)冷却カテーテルの種類に関する情報と、(1)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)についての関数式を用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(3)(1)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせ、(2)のステップで求めた熱貫流量(A)で除することにより熱交換に関する係数(B)を求めるステップ、
(4)冷却カテーテルのうち、硬膜外腔に挿入されている部分の長さ(Le)、皮下組織に挿入されている部分の長さ(Lb)、冷却カテーテルの有効流路長(La)と、(3)のステップで求めた熱交換に関する係数(B)から、硬膜外腔温度推定方程式の係数(a、b及びc)を求めるステップ、
(5)入口温度(Tin)、出口温度(Tout)及び体温(Tb)と、(4)のステップで求めた硬膜外腔温度推定方程式の係数(a、b及びc)から、硬膜外腔温度推定方程式により硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法を要旨とするものである。
【0016】
また、第9の本発明は、上記の第1〜4の本発明である硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、潅流液流量[重量](W)を一定値とした場合に、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)入口温度(Tin)と出口温度(Tout)から出入口間の温度差(ΔT)を求めるステップ、
(2)一定値の潅流液流量[重量](W)と(1)のステップで求めた出入口間の温度差(ΔT)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせることで硬膜外腔から潅流液に移動した熱量(Qf)を求めるステップ、
(3)冷却カテーテルの種類に関する情報と、一定値の潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)のテーブルを用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(4)移動した熱量(Qf)を熱貫流量(A)で除することにより硬膜外腔温度(Te)と入口温度(Tin)との温度差(ΔTe)を求めるステップ、
(5)温度差(ΔTe)に入口温度(Tin)を加算することで硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法を要旨とするものである。
【0017】
また、第10の本発明は、上記の第1〜5の本発明である硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムにおいて、さらに、冷却中の硬膜外腔温度がたどると予想される経過を推定する予定経時的変化発生器、患者の情報を入力することで予定経時的変化を補正することができる補正手段、温度推定手段が示す実際の推定温度の実経時的変化と予定経時的変化とを比較して異なる経過をたどる場合に異常を検知し原因を判断する比較判断手段、および検知した異常を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷却カテーテル以外に温度センサを追加挿入する必要がなくなるため、温度センサ挿入の際に生じるリスクを抑え、安全性を向上させることが可能となる。また冷却カテーテル先端に温度センサを組み込むことによる単価の上昇や、故障の原因になるなどの問題を生じる恐れを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔温度推定原理〕
まず本発明において採用される温度推定原理について説明する。
図1に硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムにおける基本構成回路を示す。図にあって冷却カテーテル1、ポンプ2,熱交換器3、冷却機4で硬膜外腔冷却システムを構成している。この回路にさらに流量検出手段5、入口温度検出手段6、出口温度検出手段7、温度推定手段8を加えることで硬膜外腔の温度推定を行い、推定された温度を表示する温度表示手段30を有している。
【0020】
この温度モニターシステムにおいては、式(1)、(2)に示す関係が成り立つ。すなわち、硬膜外腔10から冷却カテーテル1内を流れる潅流液9に移動する熱量Qeは、
Qe =(Te − Tin)×A (1)
また、冷却カテーテル1内で生じた潅流液9のもつ熱量の変化Qfは、
Qf =c×F×γ×(Tout − Tin)=c×W×ΔT (2)
となる。ここで、
A:単位温度差当たりの熱貫流量:カテーテル材質、寸法や潅流液流量に依存。温度による影響を受け非線形性を有する場合もある。
【0021】
c:流体の比熱
F:流体の流量
γ:比重量
W:重量流量(単位時間に通過する流体の重量W=Fγ)
Te :硬膜外腔温度
Tout:冷却カテーテル出口での流体温度
Tin :冷却カテーテル入口での流体温度
ΔT:冷却カテーテル出入口温度差(Tout − Tin)
である。
【0022】
また、Qe=Qfであるから、式(1)、(2)を以下のように変形すると
(Te − Tin)×A = c×W×ΔT
(Te − Tin) = c×W×ΔT/A
Te = B×ΔT + Tin (3)
となる。ここで、熱交換に関する係数B=c×W/A である。ただし、正確にはこの係数Bは流量に依存して変化するので流量の関数として示すこともある。
【0023】
式(3)の関係をグラフにすると図2のように示される。図2から分かるように入口温度検出器6と出口温度検出器7により出入口の温度差(ΔT)を知ることで硬膜外腔の温度(Te)を求めることが出来る。直線14と15の違いは、冷却カテーテルの挿入長さ、寸法形状、材質、などの違いと潅流液の流速の違いなどによって生じる熱貫流率の違いによるものである。
【0024】
〔皮下組織の熱の影響を考慮した場合〕
実際に冷却カテーテルを背中から脊髄に隣接する硬膜外腔に挿入する場合には、冷却カテーテルが背骨に至る前に皮下組織を通過することとなる。皮下組織が薄い場合はこの区間での熱の移動は無視できるが、この区間が長ければその間に無視できない量の熱の移動が起こり、硬膜外腔温度の推定の際に誤差をもたらすこととなる。そこで、次に皮下組織で流体に移動する熱量も加味して硬膜外腔温度の推定を行なう。
【0025】
まず冷却カテーテルを皮下組織に接触する区間と硬膜外腔に接触する区間とに分けて、Tinをその区間の入口温度Tmに、Toutをその区間の出口温度Tnに、Teを周囲温度Tbなどに置き換え、式(3)にそれらを代入すれば、各区間での熱の出入りを表す式が求まる。それぞれの区間の出口温度が次の区間の入口温度になることを利用して、各区間で求めた式をまとめていくと、硬膜外腔温度Teを推定する式(4)を得ることができる。
(ただし、熱交換に関する係数Bはカテーテルの有効長さすべてを利用した場合の値であるので、各区間の流路長さ、すなわち硬膜外腔に挿入された部分の長さLe,皮下組織部分の長さLbを、カテーテルの有効流路長Laで除した値で係数Bを除す必要がある。)
【0026】
Te = aTout−bTin−cTb (4)
ここでa、b、c、は熱交換に関する係数Bと各区間の長さLe、Lb、Laなどの関数として表される値である。各区間の長さと潅流液流量が一定であれば定数となる。Tbはカテーテルが接触している皮下組織の温度である。この部分の温度は未知ではなく、冷却カテーテルを挿入した部位の近傍での浅い皮下温度や直腸温または腋窩温で代用できるので測定可能な値である。よって式(4)から硬膜外腔温度Teは、冷却カテーテルを流れる潅流液の出入口温度を知ることで推定できることが分かる。
【0027】
次に本発明の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムにおける各構成について説明する。
【0028】
本発明に使用する冷却カテーテルは、挿入部位を冷却可能な構造であればどのような形状であってもよいが、好ましくは複数の内腔を有するカテーテルにおいて、灌流液流入ルーメンと灌流液流出ルーメンを少なくとも一つずつ有し、潅流液流入ルーメンと潅流液流出ルーメンがカテーテル先端部で連通することによりカテーテル内に灌流液循環流路を形成していれば良い(例えば、WO03/105736号パンフレット、特開2007−167127号公報を参照)。一例として、2軸のダブルルーメンカテーテルの先端部にてルーメンが互いに連通するタイプの形状を図13に示す。
【0029】
図13(A)は上記のタイプの局所冷却カテーテルの全体図を示している。先端部においてルーメンが互いに連通している(図13(B))。ルーメン形状は2軸のダブルルーメンならば特に限定はしないが、好ましくはカテーテル外壁との接触面積が大きいため熱交換効率のよい形状の図13(C)が好ましい。
【0030】
本発明に使用するポンプは、流体を輸送可能なものならばどのようなものでもよいが、好ましくはローラーポンプ、ギアポンプ、往復動ポンプ、ターボ形ポンプ、再生ポンプである。
【0031】
本発明に使用する熱交換器は一般に知られているものならばどのようなものでもよいが、好ましくはスパイラル式熱交換器、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器、多管円筒式熱交換器、多重円管式熱交換器、渦巻管式熱交換器、渦巻式熱交換器、渦巻板式熱交換器、タンクコイル式熱交換器、タンクジャケット式熱交換器がよい。
【0032】
本発明に使用する冷却機は、一般に使用されているものならばどのようなものでもよいが、ペルチェ素子を利用した冷却機は装置が小型化でき騒音も無いため好ましい。
【0033】
本発明に用いられる灌流液は、特に限定されないが熱伝導率の高い水、生理的食塩水、エチレングリコール、エチレングリコール水溶液が好ましい。
【0034】
本発明において用いられる、冷却カテーテルを流れる潅流液の温度検出手段としては、
サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、IC化温度センサー、水晶温度計などが好ましい。
【0035】
冷却カテーテルの入口と出口における潅流液の温度差を検出する温度差検出手段としては、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、IC化温度センサー、水晶温度計などが好ましい。
【0036】
潅流液の流量検出手段としては、電磁流量計、超音波流量計、レーザー流量計などを用いて直接流量を検出する方法や、ポンプの回転速度から検出する方法などが挙げられる。
【0037】
体温検出手段としては、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、IC化温度センサー、水晶温度計などが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、図面に示す実施例に基づいて、本発明の詳細を説明する。実施例1〜5は、上記した第1〜5の本発明に基づく装置的な具体例を示し、実施例6〜10は、上記した第6〜10の本発明に基づく処理手順の具体例を示している。
【0039】
実施例1(図1を参照)
図1に本発明の実施例1を示す。図にあって冷却カテーテル1、ポンプ2,および冷却機4に接続された熱交換器3で硬膜外腔冷却システムを構成している。この回路にさらに流量検出手段5、入口温度検出手段6、出口温度検出手段7、温度推定手段8を加えることで硬膜外腔温度Teの推定を行う。
【0040】
ポンプ2で圧力を加えられた潅流液9は、熱交換器3に向かい冷却機4に接続された熱交換器3を通過する際に熱を奪われ低温となる。熱交換器3で冷却され、冷却カテーテル1に流入する潅流液9の温度Tinを入口温度検出手段6により測定する。冷却カテーテル1を通過して硬膜外腔10から熱を奪って温度が上昇して流出してきた潅流液9の温度Tout を、出口温度検出手段7により測定する。その後、潅流液9はポンプ2に吸引され、熱交換器3に送られる。この際、ポンプが負荷圧力に影響なく一定の流量を流せる場合は、ポンプ2の回転数から流量検出手段5により潅流液9の流量Fが推定される。これらの温度Tin, Tout, 流量Fの情報を温度推定手段8に送り、硬膜外腔10の温度Te を推定する。なお、熱交換器3とポンプ2の配列順序は逆になっても良い。
【0041】
実施例2(図3を参照)
図3に本発明の実施例2を示す。図にあって冷却カテーテル1、ポンプ2,および温度制御機能付冷却機16に接続された熱交換器3で硬膜外腔冷却システムを構成している。この回路にさらに流量検出手段5、バイパス回路17,温度検出手段18、温度推定手段8およびチューブ鉗子19,20を加えることで硬膜外腔温度Teの推定を行う。
【0042】
ポンプ2で圧力を加えられた潅流液9は、冷却機16に接続された熱交換器3を通過する際に熱を奪われ低温となる。熱交換器3で冷却され、冷却カテーテル1に流入する潅流液9の温度Tinを測定するために、硬膜外腔冷却を開始する前に、バイパス回路17を閉ざしていたチューブ鉗子19を開放し、逆に冷却カテーテル1の手前のチューブをチューブ鉗子20で閉鎖することで、潅流液9を温度検出手段18に導き温度を測定し、この温度を潅流液9の入口温度Tin とする。以後この測定値を次回の測定までの間の入口温度Tinとして利用する。硬膜外腔冷却を開始するには、バイパス回路17をチューブ鉗子19を閉じることで閉鎖し、逆に冷却カテーテル1の手前のチューブを閉鎖していたチューブ鉗子20を開放する。これにより潅流液9はバイパス回路17を流れるのを止め、冷却カテーテル1を潅流するようになる。冷却カテーテル1を通過して硬膜外腔10から熱を奪って温度が上昇して流出してきた潅流液9の温度Tout を温度検出手段18により測定する。その後潅流液9はポンプ2に吸引され、熱交換器3に送られる。この際、ポンプ回転数から流量検出手段5により潅流液9の流量Fが推定される。これらの温度Tin, Tout, 流量Fの情報を温度推定手段8に送り、硬膜外腔10の温度Te を推定する。なお、熱交換器3とポンプ2の配列順序は逆になっても良い。
【0043】
実施例3(図4を参照)
図4に本発明の実施例3を示す。図にあって冷却カテーテル1、ポンプ2,および温度制御機能付冷却機16に接続された熱交換器3で硬膜外腔冷却システムを構成している。この回路にさらに流量検出手段5、入口温度感知部21,温度差検出手段22、温度推定手段8、熱電対23を加えることで硬膜外腔温度Teの推定を行う。
【0044】
熱電対23は二種類の異種金属がループを形成するように両端で接合されたもので、両接合部分24,25での温度差によって起電力が生じることを利用して温度を測定する。
【0045】
ポンプ2で圧力を加えられた潅流液9は、熱交換器3に向かい温度制御機能付冷却機16に接続された熱交換器3を通過する際に熱を奪われ一定の低い温度となる。この冷却機16の設定温度、または設定温度に補正を加えた値を、冷却カテーテル1に流入する潅流液9の入口温度Tinとする。温度Tinの潅流液9は熱電対23の一端24が組み込まれている入口温度感知部21を通過して冷却カテーテル1に向かう。冷却カテーテル1を通過して硬膜外腔10から熱を奪って温度が上昇して流出してきた温度Toutの潅流液9は、熱電対23の他端25が組み込まれている温度差検出手段22を流れることによって潅流液9の出入口間の温度差ΔTを測定する。その後、潅流液9はポンプ2に吸引され、熱交換器3に送られる。この際、流量検出手段5により潅流液9の流量Fが測定される。冷却機の設定温度Tin、検出した温度差ΔT(Tout −Tin)、流量Fの情報を温度推定手段8に送り、硬膜外腔10の温度Teを推定する。なお、熱交換器3とポンプ2の配列順序は逆になっても良い。
【0046】
実施例4(図5を参照)
図5に本発明の実施例4を示す。図にあって冷却カテーテル1、ポンプ2,および温度制御機能付冷却機16に接続された熱交換器3で硬膜外腔冷却システムを構成している。この回路にさらに流量検出手段5、出口温度検出手段7、温度推定手段8を加えることで硬膜外腔温度Teの推定を行う。
【0047】
ポンプ2で圧力を加えられた潅流液9は、熱交換器3に向かい温度制御機能付冷却機16に接続された熱交換器3を通過する際に熱を奪われ一定の低い温度となる。この冷却機16の設定温度、または設定温度に補正を加えた値を、冷却カテーテル1に流入する潅流液9の入口温度Tinとする。冷却カテーテル1を通過して硬膜外腔10から熱を奪って温度が上昇して流出してきた潅流液9の温度Tout を、出口温度検出手段7により測定する。その後、潅流液9はポンプ2に吸引され、熱交換器3に送られる。この際、ポンプ回転数から流量検出手段5により潅流液9の流量Fが推定される。これらの温度Tin, Tout, 流量Fの情報を温度推定手段8に送り、硬膜外腔10の温度Te を推定する。なお、熱交換器3とポンプ2の配列順序は逆になっても良い。
【0048】
実施例5(図6を参照)
図6に本発明の実施例5を示す。図にあって冷却カテーテル1、ポンプ2,および冷却機4に接続された熱交換器3で硬膜外腔冷却システムを構成している。この回路にさらに流量検出手段5、入口温度検出手段6、出口温度検出手段7、体温検出手段27,温度推定手段8を加えることで硬膜外腔温度Teの推定を行う。
【0049】
ポンプ2で圧力を加えられた潅流液9は、熱交換器3に向かい冷却機4に接続された熱交換器3を通過する際に熱を奪われ低温となる。熱交換器3で冷却され、冷却カテーテル1に流入する潅流液9の温度Tinをサーミスタや熱電対などの入口温度検出手段6により測定する。冷却カテーテル1を通過して硬膜外腔や皮下組織から熱を奪って温度が上昇して流出してきた潅流液9の温度Tout を、出口温度検出手段7により測定する。その後、潅流液9はポンプ2に吸引され、熱交換器3に送られる。この際、プローブ26を持つ流量検出手段5により潅流液9の流量Fが測定される。また体温検出手段で測定した体温Tbと温度Tin, Tout, 流量Fの情報を温度推定手段8に送り、硬膜外腔の温度Te を推定する。
【0050】
なお流量検出手段のプローブ26は、硬膜外腔冷却システムの潅流液9が流れる回路が閉鎖回路であれば回路のどの場所においても良い。また体温検出手段による温度測定も、カテーテル近傍の皮下組織温ではなく、直腸温や腋窩温を代わりに用いても良い。また、熱交換器3とポンプ2の配列順序は逆になっても良い。
【0051】
実施例6(図7を参照)
図7に本発明の実施例6を示す。図にあって冷却カテーテル選択手段29、流量検出手段5、入口温度検出手段6、出口温度検出手段7からの情報を基に、温度推定手段8が硬膜外腔温度Teの推定を行う際の手順を示している。
【0052】
出口温度検出手段7から出口温度Toutが、入口温度検出手段6から入口温度Tin が温度推定手段8に入力されると、step1で両者の差を取った出入口温度差ΔT(=Tout−Tin)を計算する。流量検出手段5から流量Fの情報が入力されるとstep2で潅流液の比重量γを掛けた重量流量W(=F×γ)が計算される。step3でこの重量流量Wに出入口温度差ΔTと潅流液9の比熱cを掛け合わせて、冷却カテーテル内で潅流液9が得た熱量Qf(=c×W×ΔT)を求める。step4で潅流液9の重量流量Wと、冷却カテーテル選択手段29から入力されたカテーテルサイズを基に、冷却カテーテルのサイズと流量でマトリックス表示されている係数A(単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量)を選択する。step5で熱量Qf(=Qe)を係数Aで割ることで硬膜外腔と潅流液9の温度差ΔTe(=Te−Tin)の値を求める。step6で得られた温度差ΔTeに潅流液入口温度Tin を加算することで硬膜外腔温度Teが求まる。この温度Teの経時的変化を温度表示手段30に表示する。
【0053】
実施例7(図8を参照)
図8に本発明の実施例7を示す。図にあって冷却カテーテル選択手段29、流量検出手段5、入口温度検出手段6、出口温度検出手段7からの情報を基に、温度推定手段8が硬膜外腔温度Teの推定を行う際の手順を示している。
【0054】
出口温度検出手段7から出口温度Toutが、入口温度検出手段6から入口温度Tin が温度推定手段8に入力されると、step1で両者の差を取った出入口温度差ΔT(=Tout−Tin)を計算する。流量検出手段5から流量Fの情報が入力されるとstep2で潅流液の比重量γを掛けた重量流量W(=F×γ)が計算される。step3でこの重量流量Wに出入口温度差ΔTと潅流液9の比熱cを掛け合わせて、冷却カテーテル内で潅流液9が得た熱量Qf(=c×W×ΔT)を求める。step4で潅流液9の重量流量Wの値から、冷却カテーテル選択手段29から入力されたカテーテルサイズを基に、冷却カテーテルの寸法毎に用意した、重量流量Wと係数A(単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量)の関数から係数Aを求める。step5で熱量Qf(=Qe)を係数Aで割ることで硬膜外腔と潅流液9の温度差ΔTe(=Te−Tin)の値を求める。step6で得られた温度差ΔTeに潅流液入口温度Tin を加算することで硬膜外腔温度Teが求まる。この温度Teの経時的変化を温度表示手段30で表示する。
【0055】
実施例8(図9を参照)
図9に本発明の実施例8を示す。図にあって冷却カテーテル情報入力手段31、流量検出手段5、体温検出手段27,入口温度検出手段6、出口温度検出手段7からの情報を基に、温度推定手段8が硬膜外腔温度Teの推定を行う際の手順を示している。流量検出手段5から流量Fの情報が入力されるとstep1で潅流液の比重量γを掛けた重量流量W(=F×γ)が計算される。step2で、冷却カテーテル情報入力手段31から入力された冷却カテーテルの寸法をもとに、冷却カテーテルの寸法毎に用意した、重量流量Wと係数A(単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量)の関数を選び出し、この関数にstep1で求めた重量流量を代入し係数Aを求める。step3で重量流量に比熱を掛け合わせ、係数Aで除すことで熱交換に関する係数Bを求める。step4で係数Bと冷却カテーテルの接触部位別の区間長さLe、Lbおよび有効流路長Laをもとに、硬膜外腔温度推定方程式の係数a、b、cを求める。step5でこれらの係数を入力した硬膜外腔温度推定方程式に、出口温度検出手段7、入口温度検出手段6、体温検出手段27によって測定された値を代入することで、硬膜外腔温度の推定値Teが求まる。この温度Teの経時的変化を温度表示手段30で表示する。
【0056】
実施例9(図10を参照)
図10に本発明の実施例9を示す。図にあって冷却カテーテル選択手段29、入口温度検出手段6、出口温度検出手段7からの情報を基に、温度推定手段8が硬膜外腔温度Teの推定を行う際の手順を示している。この実施例は潅流液9の重量流量として一定の値Wconstしか用いない場合に利用する。
【0057】
また冷却カテーテル出口温度検出手段7から出口温度Toutが、入口温度検出手段6から入口温度Tin が温度推定手段8に入力されると、step1で両者の差を取った出入口温度差ΔT(=Tout−Tin)を計算する。Step2で重量流量Wconstにこの出入口温度差ΔTと潅流液9の比熱cを掛け合わせて、冷却カテーテル内で潅流液9が得た熱量Qf(=c×W×ΔT)を求める。step3で冷却カテーテル選択手段29の寸法に合わせて係数A(単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量)を選択する。step4で熱量Qf(=Qe)をこの係数Aで割ることで硬膜外腔と潅流液9の温度差ΔTe(=Te−Tin)の値を求める。step5で得られた温度差ΔTeに潅流液入口温度Tin を加算することで硬膜外腔温度Teが求まる。この温度Teの経時的変化を温度表示手段30で表示する。
【0058】
実施例10(図11を参照)
図11に本発明の実施例10を示す。図にあって流量マニュアル設定または流量検出手段32、体温検出手段27、入口温度検出手段6、出口温度検出手段7からの情報を基に、温度推定手段8が硬膜外腔温度Teの推定を行う。また一方で入口温度検出手段6と流量マニュアル設定または流量検出手段5から、および体温検出手段27からの情報と、補正手段34により体重、年齢などから脊髄内熱流入量などの値を推定し補正係数αとして経時変化発生器33に入力される情報を基に、冷却が理想的に行われた場合の、硬膜外腔温度予定経時変化Tee(t)を推定する。
【0059】
温度推定手段8が推定した硬膜外腔温度Teの実経時的変化Te(t)と硬膜外腔温度の予定経時変化Tee(t)とを比較判断手段35において比較し、両者の差異が大きい場合は、比較判断手段35に組み込まれた判断アルゴリズムに基づいて、差異が生じた原因を推定し、表示手段36に表示する。
【0060】
〔判断アルゴリズム〕
図12に硬膜外腔温度Te(t)の推定値の経時的変化のパターンを示す。ここでは曲線37が予定経時的変化発生器33が出力した予定経時変化Tee(t)のパターンとする。温度推定手段8が経時的に推定した温度Te(t)が、予定したTee(t)ほど低下せず曲線39で示される時間経過を取る場合は、脊髄に流入する血流量が多く、熱を奪いきれない状況と判断する。冷却カテーテルのサイズを大きくするか、潅流液のカテーテル入口温度を低下させるか、潅流液の流量を増加させることを勧告する。一方、曲線38で示された経時変化をする場合は、カテーテルの留置位置が悪く、熱移動量が少ないと判断する。冷却カテーテルの交換や再挿入を勧告する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の基本構成回路を示す説明図ならびに本発明の実施例1を示す概略図である。
【図2】出入口温度と硬膜外腔温度の関係を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例2を示す概略図である。
【図4】本発明の実施例3を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例4を示す概略図である。
【図6】本発明の実施例5を示す概略図である。
【図7】本発明の実施例6を示す概略図である。
【図8】本発明の実施例7を示す概略図である。
【図9】本発明の実施例8を示す概略図である。
【図10】本発明の実施例9を示す概略図である。
【図11】本発明の実施例10を示す概略図である。
【図12】硬膜外腔温度Teの経時的変化を示す本発明の実施例10の補足説明図である。
【図13】2軸のダブルルーメンカテーテルの先端部にてルーメンが互いに連通するタイプの一例を示す概略図である。(A)全体形状の一例を示す概略図(B)カーテル先端部の長手方向の断面図(C)カテーテルA-A’部分断面図
【符号の説明】
【0062】
1 冷却カテーテル
2 ポンプ
3 熱交換器
4 冷却機
5 流量検出手段
6 入口温度検出手段
7 出口温度検出手段
8 温度推定手段
9 潅流液
10 硬膜外腔
11 脊髄
12 硬膜
13 クモ膜
14 直線
15 直線
16 温度制御機能付冷却機
17 バイパス回路
18 温度検出手段
19 チューブ鉗子
20 チューブ鉗子
21 入口温度感知部
22 温度差検出手段
23 熱電対
24 接合部分
25 接合部分
26 プローブ
27 体温検出手段
28 皮下組織
29 冷却カテーテル選択手段
30 温度表示手段
31 冷却カテーテル情報入力手段
32 流量マニュアル設定または流量検知手段
33 予定経時変化発生器
34 補正手段
35 比較判断手段
36 表示手段
37 曲線
38 曲線
39 曲線
40 ダブルルーメンカテーテル
41 分岐部
42 カテーテル先端部
43 枝管(延長管)
44 ハブ
45 潅流液流入または潅流液流出ルーメン
46 潅流液流出または潅流液流入ルーメン
47 隔壁
48 潅流液流入ルーメンと潅流液流出ルーメン連通部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、冷却カテーテルの入口における潅流液温度を検出する入口温度検出手段、冷却カテーテルの出口における潅流液温度を検出する出口温度検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、前記の各手段により得られた潅流液入口温度、潅流液出口温度及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム。
【請求項2】
硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、潅流液を冷却カテーテル入口部位から冷却カテーテルを経由せずに冷却カテーテル出口部位に流すことのできるバイパス回路を備え、バイパス回路を流れる潅流液温度及び冷却カテーテル出口から流れる潅流液温度を検出する温度検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、前記の各手段により得られた潅流液温度及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム。
【請求項3】
硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、熱交換器及び冷却機が冷却カテーテルに流入する潅流液の温度を一定に設定し維持できるものであり、冷却カテーテルの入口における潅流液温度を感知する入口温度感知部を有し冷却カテーテルの入口と出口における潅流液の温度差を直接検出する温度差検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、潅流液温度設定値と前記の各手段により得られた潅流液温度差及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム。
【請求項4】
硬膜外腔に挿入される脊髄冷却用の冷却カテーテル、ポンプ、熱交換器及び冷却機を備え、熱交換器及び冷却機が冷却カテーテルに流入する潅流液の温度を一定に設定し維持できるものであり、冷却カテーテルの出口における潅流液温度を検出する出口温度検出手段、潅流液の流量を検出する流量検出手段、潅流液温度設定値と前記の各手段により得られた潅流液出口温度及び潅流液流量の値から硬膜外腔温度を推定する温度推定手段並びに推定した温度を表示する表示手段を有していることを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムにおいて、さらに冷却カテーテルが皮下組織に接触している部分での熱の移動を知るための体温検出手段を有しており、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、前記の体温検出手段により得られた体温の値を加味して硬膜外腔温度を推定するものである請求項1〜4のいずれかに記載の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)入口温度(Tin)と出口温度(Tout)から出入口間の温度差(ΔT)を求めるステップ、
(2)潅流液流量[容量](F)と潅流液の比重(γ)から潅流液流量[重量](W)を求めるステップ、
(3)出入口間の温度差(ΔT)と潅流液流量[重量](W)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせることで硬膜外腔から潅流液に移動した熱量(Qf)を求めるステップ、
(4)冷却カテーテルの種類に関する情報と、(2)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)のテーブルを用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(5)移動した熱量(Qf)を熱貫流量(A)で除することにより硬膜外腔温度(Te)と入口温度(Tin)との温度差(ΔTe)を求めるステップ、
(6)温度差(ΔTe)に入口温度(Tin)を加算することで硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)入口温度(Tin)と出口温度(Tout)から出入口間の温度差(ΔT)を求めるステップ、
(2)潅流液流量[容量](F)と潅流液の比重(γ)から潅流液流量[重量](W)を求めるステップ、
(3)出入口間の温度差(ΔT)と潅流液流量[重量](W)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせることで硬膜外腔から潅流液に移動した熱量(Qf)を求めるステップ、
(4)冷却カテーテルの種類に関する情報と、(2)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)についての関数式を用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(5)移動した熱量(Qf)を熱貫流量(A)で除することにより硬膜外腔温度(Te)と入口温度(Tin)との温度差(ΔTe)を求めるステップ、
(6)温度差(ΔTe)に入口温度(Tin)を加算することで硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法。
【請求項8】
請求項5記載の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)潅流液流量[容量](F)と潅流液の比重(γ)から潅流液流量[重量](W)を求めるステップ、
(2)冷却カテーテルの種類に関する情報と、(1)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)についての関数式を用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(3)(1)のステップで求めた潅流液流量[重量](W)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせ、(2)のステップで求めた熱貫流量(A)で除することにより熱交換に関する係数(B)を求めるステップ、
(4)冷却カテーテルのうち、硬膜外腔に挿入されている部分の長さ(Le)、皮下組織に挿入されている部分の長さ(Lb)、冷却カテーテルの有効流路長(La)と、(3)のステップで求めた熱交換に関する係数(B)から、硬膜外腔温度推定方程式の係数(a、b及びc)を求めるステップ、
(5)入口温度(Tin)、出口温度(Tout)及び体温(Tb)と、(4)のステップで求めた硬膜外腔温度推定方程式の係数(a、b及びc)から、硬膜外腔温度推定方程式により硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムを用いる方法であって、潅流液流量[重量](W)を一定値とした場合に、硬膜外腔温度を推定する温度推定手段が、
(1)入口温度(Tin)と出口温度(Tout)から出入口間の温度差(ΔT)を求めるステップ、
(2)一定値の潅流液流量[重量](W)と(1)のステップで求めた出入口間の温度差(ΔT)と潅流液の比熱(c)を掛け合わせることで硬膜外腔から潅流液に移動した熱量(Qf)を求めるステップ、
(3)冷却カテーテルの種類に関する情報と、一定値の潅流液流量[重量](W)から、冷却カテーテルの種類ごとの単位時間、単位温度差当たりの熱貫流量(A)のテーブルを用いて熱貫流量(A)を求めるステップ、
(4)移動した熱量(Qf)を熱貫流量(A)で除することにより硬膜外腔温度(Te)と入口温度(Tin)との温度差(ΔTe)を求めるステップ、
(5)温度差(ΔTe)に入口温度(Tin)を加算することで硬膜外腔温度(Te)を求めるステップ、
からなる処理手順を行う手段であり、推定した硬膜外腔温度を温度表示手段に表示することを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニター方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬膜外腔冷却時の温度モニターシステムにおいて、さらに、冷却中の硬膜外腔温度がたどると予想される経過を推定する予定経時的変化発生器、患者の情報を入力することで予定経時的変化を補正することができる補正手段、温度推定手段が示す実際の推定温度の実経時的変化と予定経時的変化とを比較して異なる経過をたどる場合に異常を検知し原因を判断する比較判断手段、および検知した異常を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする硬膜外腔冷却時の温度モニターシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−195385(P2009−195385A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38795(P2008−38795)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(597131598)
【出願人】(596147736)
【出願人】(507398947)
【Fターム(参考)】