説明

硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 キュア性に優れ、短時間で脱形成形可能なシクロペンタン発泡の厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)の存在下で反応・発泡させる厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、ポリイソシアネート(A)が、ポリメリックMDI(A1−1)と、側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)とを反応させて生成したイソシアネート基含有プレポリマー(A1)及び整泡剤(A2)を含有するものであり、ポリオール(B)が、4種類のポリエーテルポリオール(B1)〜(B4)を含有するものであり、触媒(C)が、ウレタン化触媒(C1)と三量化触媒(C2)を含有するものであり、発泡剤(D)がシクロペンタン(D1)及び水(D2)を併用することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュア性に優れ、短時間で成形可能な厚物用シクロペンタン発泡の硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱性能、寸法安定性および施工性が優れているために、冷蔵庫、冷凍倉庫、建築材料等の断熱材としてまたスプレー用途として広範囲に使用されている。これは、従来、硬質ポリウレタンフォームの発泡剤として低熱伝導率かつ好適な沸点を有するトリクロロフルオロメタン(以下、CFC−11と記す)が使用されていたことが大きな理由である。しかし、クロロフルオロカーボン類(以下、CFC類と記す)は、分子中に塩素原子を含みかつ非常に安定な分子であるために拡散効果によりオゾン層まで達し、オゾンと反応し地球のオゾン層を破壊する物質であるとの説が出され、既に1995年末、CFC類の使用は全廃さている。現在、硬質ポリウレタンフォームの発泡剤としては、その代替物であるハイドロクロロフルオロカーボン類(以下、HCFC類と記す)が用いられ、特に断熱性能が要求されるものに関しては、HCFC類の中でも低い熱伝導率をもつHCFC−141bの使用が主流となっている。
【0003】
一般に、断熱用途の硬質ポリウレタンフォームは、セル内に発泡剤が封入された独立気泡構造をとっている。このため沸点が常温以上(25℃以上)の発泡剤を用いた場合、常温または低温下で、セル内に封入された発泡剤の液化に起因したセル内圧力の低下がおこる。この現象は発泡剤固有の蒸気圧によるものであり、その結果として、硬質ポリウレタンフォームは収縮する。すなわち、これら常温以上(25℃以上)の沸点をもつ発泡剤を用いた発泡技術を実用化する上で最も困難な問題は、常温以下での硬質ポリウレタンフォーム収縮の回避つまり良好な寸法安定性を保持させることである。
【0004】
生産コスト削減、省エネルギーにつながる課題として、硬質ポリウレタンフォームの低密度化の要求がある。産業上の利用価値を損なわずにこの要求に応えるためには、常温以下での収縮がより少なく低密度化可能な硬質ポリウレタンフォームの製造法の確立が必須となる。また、地球環境/オゾン層保護の要求が強まる中、HCFC類もまた分子中に塩素分子を含むためODPがゼロではなく、2004年から規制の対象となることが既に決まっている。HCFC類の代替化合物としては、ハイドロフルオロカーボン類(以下、HFC類と記す)、またシクロペンタン(以下、CPと記す)に代表されるハイドロカーボン)(以下、HCと記す)類等のODPがゼロの発泡剤が検討されている。しかし、HFC類の中には1,1,1,2−テトラフルオロエタン(沸点:−26.2℃)、1,1−ジフルオロエタン(沸点:−24.2℃)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(沸点:−48.5℃)等のような沸点が0℃以下の化合物も多く、工業上これらを発泡剤として取扱うには高圧ガス対応といった設備対応が必要となる。
【0005】
HC類を発泡剤とした場合、防爆設備対応にする必要があるものの、レジンプレミックスは液状で比較的取扱いやすい利点がある。特に、HC類の中で熱伝導率の低いものとしてCPが挙げられる。また、発泡剤として使用に適した沸点をもつものとしては炭素数が5〜6のHC類がある。CP又はHC類を発泡剤中の成分として用いた例として、特許文献1があり、さらにエステルポリオールを使用することにより、良好な諸物性を維持した上で特にCFC−11削減発泡技術同等以下の熱伝導率を実現した例として、非特許文献1が知られている。しかしながら、CPの沸点は49.3℃であり、上記産業上の低密度化要求に応えるためにはやはり、常温以下での収縮の問題が不可避なものとなる。
【0006】
【特許文献1】特開平2−91132号公報
【非特許文献1】The Society of the Plastics Industry,Inc.Polyurethane Devision(1995)p.292〜295
【0007】
このような問題を解決するため、特許文献2にかかる技術が提案されている。しかしながら、特許文献2の技術では、ポリオール混合物とシクロペンタンとの相溶性が悪いため、濁りや二層分離が起きやすく、ひいては均一なフォームが得られにくくなるといった問題があることが分かった。
【0008】
【特許文献2】特開平10−1827756号公報
【0009】
また、厚物断熱材(厚さ100mm以上)における硬質ポリウレタンフォームにおいては、キュア性不足のためフォーム内部に割れが生じる場合が多い。この点を改善するには、成形時間を長くする等の方法があるが、このような方法は生産性の低下につながるため、根本的な解決が望まれている。なお、以後本願において「厚物断熱材」とは、厚さ100mm以上の断熱材を言うものとし、「厚さ」とは、目的とする断熱方向の距離を言うものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ポリオールとシクロペンタンとの相溶性や、キュア性に優れるため短時間で成形可能なシクロペンタン発泡の厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、
ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)の存在下で反応・発泡させる厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、
ポリイソシアネート(A)が、ポリメリックMDI(A1−1)と、側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)とを反応させて生成したイソシアネート基含有プレポリマー(A1)及び整泡剤(A2)を含有するものであり、
ポリオール(B)が、以下のポリオール(B1)〜(B4)を含有するものであり、
触媒(C)が、ウレタン化触媒(C1)と三量化触媒(C2)を含有するものであり、
発泡剤(D)がシクロペンタン(D1)及び水(D2)を併用する
ことを特徴とする、厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
ポリオール(B1):
シュークロースを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜6、水酸基価=300〜600mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B2):
ソルビトールを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜6、水酸基価=300〜600mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B3):
グリセリンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=2〜4、水酸基価=1000〜1500mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B4):
エチレンジアミンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜5、水酸基価=400〜800mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
【発明の効果】
【0012】
本発明により、キュア性に優れ、短時間で成形可能な厚物用シクロペンタン発泡の厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いるポリイソシアネート(A)は、ポリメリックMDI(A1−1)と、側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)とを反応させて生成したイソシアネート基含有プレポリマー(A1)及び整泡剤(A2)を含有するものである。
【0014】
ポリメリックMDI(A1−1)は、アニリンとホルマリンとの縮合反応によって得られる縮合混合物(ポリアミン)をホスゲン化等によりアミノ基をイソシアネート基に転化し、必要に応じて異性化することによって得られる、縮合度の異なる有機イソシアネート化合物の混合物を意味し、縮合時の原料組成比や反応条件を変えることによって、最終的に得られるポリメリックMDIの組成を変えることができる。本発明に用いられるポリメリックMDIは、イソシアネート基への転化後の反応液、又は反応液から溶媒の除去、又は一部MDIを留出分離した缶出液、反応条件や分離条件等の異なった数種の混合物であってもよい。また、イソシアネート基の一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものであってもよい。
【0015】
ポリメリックMDI(A1−1)の平均官能基数は2.3以上であり、好ましくは官能基数が2.3〜3.1である。イソシアネート含量は、28〜33質量%であり、好ましくは28.5〜32.5質量%である。また粘度(25℃)は50〜500mPa・sが好ましく、特に100〜300mPa・sが特に好ましい。
【0016】
ポリメリックMDI(A1−1)中には、1分子中にベンゼン環及びイソシアネート基を各2個有するジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、いわゆる二核体と言われている成分を含有する。MDIを構成する異性体は、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート(以後、2,2′−MDIと略称する)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(以後、2,4′−MDIと略称する)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(以後、4,4′−MDIと略称する)の3種類である。MDIの異性体構成比は特に限定はないが、4,4′−MDI含有量が70質量%以上、好ましくは90〜99.9質量%であるほうが、得られるフォームの強度が向上するので好ましい。なお、ポリメリックMDIのMDI含有量や、MDIの異性体構成比は、GPCやガスクロマトグラフィー(以下、GCと略記する)によって得られる各ピークの面積百分率を基に検量線から求めることができる。
【0017】
本発明に用いられるポリメリックMDI(A1−1)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記する)における二核体(1分子中にベンゼン環を2個有するもの)成分のピーク面積比が20〜70%となるものであり、好ましくは25〜65%となるものである。二核体のピーク面積比が70%を越えると、得られる硬質ポリウレタンフォームの強度が低下し、かつ、脆くなりやすくなる。一方20%未満の場合は、得られるポリイソシアネートの粘度が高くなり、金型への充填性が低下しやすい。
【0018】
本発明では必要に応じて、前述のポリメリックMDI以外のポリイソシアネートを用いることができる。例えば、MDIのイソシアヌレート変性物、ウレトンイミン変性物、アロファネート変性物等が挙げられる。また、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらのポリメリック体やウレタン化物、ウレア化物、アロファネート化物、ビウレット化物、カルボジイミド化物、ウレトンイミン化物、ウレトジオン化物、イソシアヌレート化物等が挙げられ、更にこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる低分子ポリオール(A1−2)は、側鎖アルキル基を有する低分子ポリオールである。ポリメリックMDI(A1−1)を側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)でウレタン変性することにより、イソシアネート基含有プレポリマー(A1)と整泡剤(A2)との相溶性が改善できる。その結果、シクロペンタンとの相溶性が悪い整泡剤(A2)をポリオール液に配合しておく必要がなくなり、シクロペンタンを配合したポリオール液の安定性が向上することになり、均一なフォームが得られることになる。また、キュア性改善にも寄与することが分かった。
【0020】
このような側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)としては、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、水素添加ビスフェノールA、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。本発明においては、分子量が小さいものほど、プレポリマーに側鎖アルキル基を効率的に導入できるため、1,2−プロパンジオールが最も好ましい。
【0021】
本発明に用いられるポリイソシアネート(A)は、前述のポリメリックMDI(A1−1)と側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)とを40〜100℃にて反応させて、イソシアネート基含有プレポリマー(A1)を合成し、後述する整泡剤(A2)を添加することで得られる。ポリメリックMDI(A1−1)と側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)の割合は、イソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)のモル比でNCO/OH=50/1〜1000/1が好ましい。OHが少なすぎる場合は、キュア性向上の効果が見込めない。OHが多すぎる場合は、得られるポリイソシアネートの粘度が高くなるため、実際の製造の際の送液が困難になる。このようにして得られたポリイソシアネート(A)のイソシアネート含量は28〜31質量%が好ましく、29〜30.5質量%が特に好ましい。
【0022】
本発明に用いられる整泡剤(A2)としては、公知のシリコーン系界面活性剤が挙げられ、例えば東レ・ダウコーニング製のL−5340、L−5420、L−5421、L−5740、L−580、SZ−1142、SZ−1642、SZ−1605、SZ−1649、SZ−1675、SH−190、SH−192、SH−193、SF−2945F、SF−2940F、SF−2936F、SF−2938F、SRX−294A、信越化学工業製のF−305、F−341、F−343、F−374、F−345、F−348、ゴールドシュミット製のB−8404、B−8407、B−8465、B−8444、B−8467、B−8433、B−8466、B−8870、B−8450等が挙げられる。整泡剤(A2)の使用量は、ポリオール(B)に対して、0.1〜5質量%となる量が適当である。
【0023】
本発明に用いるポリイソシアネート(A)には、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等の各種添加剤や助剤を添加することができる。
【0024】
本発明に用いられるポリオール(B)は、以下のポリオール(B1)〜(B4)を含有するものである。
シュークロースを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜6、水酸基価=300〜600mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B2):
ソルビトールを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜6、水酸基価=300〜600mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B3):
グリセリンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=2〜4、水酸基価=1000〜1500mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B4):
エチレンジアミンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜5、水酸基価=400〜800mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
【0025】
各ポリオールの最も好ましい質量配合比は(B1):(B2):(B3):(B4)=60:20:15:5である。
【0026】
本発明に用いられる触媒(C)は、ウレタン化触媒(C1)と三量化触媒(C2)を含有することを特徴とする。ウレタン化触媒(C1)としては、N−メチルイミダゾール、トリメチルアミノエチルピペラジン、トリプロピルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物、アセチルアセトン金属塩等の金属錯化合物等が挙げられる。三量化触媒(C2)としては、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,3,5−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン等のトリアジン類、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2−エチルアジリジン等のアジリジン類等のアミン系化合物、3級アミンのカルボン酸塩等の第四級アンモニウム化合物、ジアザビシクロウンデセン、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ナトリウムメトキシド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物等を挙げることができる。これらの(C1)及び(C2)は、1種又は2種以上併用して用いることがでる。全触媒(C)の使用量は、ポリオールに対して、0.01〜15質量%となる量が適当である。
【0027】
更に、反応促進のための助触媒として、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物を使用することができる。
【0028】
発泡剤(D)は、シクロペンタン及び水である。発泡剤がシクロペンタンのみの場合は、得られるフォームが収縮しやすい。発泡剤の使用量は、ポリオールに対してシクロペンタンが0.1〜30質量%、水が0.1〜3質量%である。
【0029】
本発明ではその他の添加剤を用いることができる。この添加剤としては、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、有機又は無機の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等が挙げられる。本発明では、難燃剤を用いるのが好ましい。難燃剤としては、トリエチルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート等のリン酸エステル類、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル等の亜リン酸エステル類のリン酸化合物等が挙げられる。
【0030】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法の具体的な手順は、前述のイソシアネート基末端プレポリマー を含有するポリイソシアネート(A)と、前述のポリオール(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)、発泡剤(E)、及びその他の添加剤等の存在下、後述する装置を用いて混合し、発泡、硬化させるという方法である。
【0031】
本発明によって得られる硬質ポリウレタンフォームは、ウレタン結合やウレア結合といった化学結合を有するものである。また、製造条件によっては、発泡時にイソシアヌレート基を生成させることができる。イソシアヌレート基は、イソシアネート基を触媒により三量化させて生成され、機械的強度や耐熱性等を向上させることができる。
【0032】
この際のイソシアネートインデックス(全イソシアネート基/全活性水素基×100)は、50〜800、好ましくは80〜300である。
【0033】
硬質ポリウレタンフォームを製造するにあたっては、各原料液を均一に混合可能であればいかなる装置でも使用することができる。例えば、小型ミキサーや、一般のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧又は高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧又は高圧発泡機、連続ライン用の低圧又は高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を使用することができる。
【0034】
本発明によって得られる硬質ポリウレタンフォームは、厚物断熱材として最適なものであるが、このほかにもボード、パネル、冷蔵庫、庇、ドア、雨戸、サッシ、コンクリート系住宅、バスタブ、低温タンク機器、冷凍倉庫、パイプカバー、合板への吹き付け、結露防止、スラブ等、各種断熱材用途に適用できる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において、「%」は「質量%」を示す。
【0036】
〔硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネートの合成〕
合成例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器に、P−MDI(1)を983kg仕込み、攪拌しながら40℃に加温した。次いで1,2−PDを5kg仕込み、攪拌しながら80℃にて4時間反応させ、その後、L−6900を1.83kg、B−8466を7.31kg仕込み、均一に混合して硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネートNCO−1を得た。NCO−1のNCO含量は30.1%であった。NCO−1の外観において、濁りや沈殿は確認されなかった。
【0037】
合成例2
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器に、MR−200を983kg仕込み、攪拌しながら40℃に加温した。次いで1,2−PDを5kg仕込み、攪拌しながら80℃にて4時間反応させて硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネートNCO−2を得た。NCO−2のNCO含量は30.2%であった。NCO−2の外観において、濁りや沈殿は確認されなかった。
【0038】
合成例3
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器に、MR−200を983kg仕込み、攪拌しながら40℃に加温した。次いでL−6900を1.83kg、B−8466を7.31kg仕込み、均一に混合して硬質ポリウレタンフォーム用ポリイソシアネートNCO−3を得た。NCO−3のNCO含量は30.0%であった。NCO−3の外観において、濁りが確認された。
【0039】
合成例1〜3において
MR−200:日本ポリウレタン工業製ポリメリックMDI
商品名、ミリオネート(登録商標)MR−200
イソシアネート含量=31.1%
MDI含有量=40%
MDI中の4,4′−MDI以外の異性体含有量=0.1%
25℃の粘度=130mPa・s
1,2−PD:1,2−プロパンジオール
L−6900:東レ・ダウコーニング製シリコン整泡剤
B−8466:ゴールドシュミット製シリコン整泡剤
【0040】
〔ポリオールプレミックスの配合〕
以下に示す質量配合比で混合して、ポリオールプレミックスOH−1、2を得た。
OH−1
ポリオール−1:60kg
ポリオール−2:20kg
ポリオール−3: 5kg
ポリオール−4:15kg
CAT−11 :1.5kg
CAT−12 :0.15kg
CAT−21 :0.3kg
水 :1.9kg
シクロペンタン:16.1kg
【0041】
OH−2
ポリオール−1:60kg
ポリオール−2:20kg
ポリオール−3: 5kg
ポリオール−4:15kg
CAT−11 :1.5kg
CAT−12 :0.15kg
CAT−21 :0.3kg
水 :1.9kg
シクロペンタン:16.1kg
L−6900 :0.3kg
B−8466 :1.2kg
【0042】
上記配合例において
ポリオール−1:
シュークロースを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られたポリエーテルポリオール、平均官能基数=4.4、水酸基価=400mgKOH/g
ポリオール−2:
ソルビトールを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られたポリエーテルポリオール、平均官能基数=5.0、水酸基価=460mgKOH/g
ポリオール−3:
グリセリンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られたポリエーテルポリオール、平均官能基数=3.0、水酸基価=1120mgKOH/g
ポリオール−4:
エチレンジアミンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られたポリエーテルポリオール、平均官能基数=4.0、水酸基価=640mgKOH/g
CAT−11:
N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン
CAT−12:
ペンタメチルジエチレントリアミン
CAT−21:
トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサハイドロ−S−トリアジン
L−6900:
東レ・ダウコーニング製シリコン整泡剤
B−8466:
ゴールドシュミット製シリコン整泡剤
【0043】
OH−1は濁り等の外観不良は確認されなかったが、OH−2は濁りが確認された。
【0044】
〔厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造・評価〕
実施例1、比較例1、2
NCO−1とOH−1(実施例1)、NCO−2とOH−2(比較例1)、NCO−3とOH−1(比較例2)という組み合わせで、イソシアネートを45℃±1℃、ポリオールを20℃±1℃に調整した後、2.0リットルのポリエチレン製ビーカーにイソシアネートインデックス120で配合し、回転数5000rpmで攪拌ミキサーにより数秒間攪拌混合し、あらかじめ45℃に保温した500×500×100mmのアルミ製モールド中で、実施例1では硬化時間を3分、比較例1、2では硬化時間を3分、4分、5分としてモールド発泡を行い、得られたフォームについてキュア性を確認した。パック率は130%とした。結果を表1に示す。
【0045】
比較例3
ミリオネートMR−200(上記記載)とOH−2という組み合わせで、イソシアネートを45℃±1℃、ポリオールを20℃±1℃に調整した後、2.0リットルのポリエチレン製ビーカーにイソシアネートインデックス120で配合し、回転数5000rpmで攪拌ミキサーにより数秒間攪拌混合し、あらかじめ45℃に保温した500×500×100mmのアルミ製モールド中で、硬化時間を6分としてモールド発泡を行い、得られたフォームについてキュア性を確認した。パック率は130%とした。
【0046】
【表1】

【0047】
キュア性は、モールドから取り出したフォームの中央部をカットし、フォーム断面の「割れ」が確認されないものを合格、「割れ」が確認されるものを不合格として評価した。
【0048】
キュア性について、実施例1の処方は硬化時間3分としたものでも、フォーム断面の「割れ」は確認されず、良好なキュア性を示した。また熱伝導率も良好であった。
【0049】
比較例1の処方においては、硬化時間3分では、フォーム断面に「割れ」が確認されたので、キュア性は不合格であり、硬化時間を4分にすると、フォーム断面に微細ではあるが「割れ」が確認されたので、キュア性は不合格であり、硬化時間5分でようやくキュア性が合格したものとなった。この比較例の処方では、実施例の処方と比較すると生産性がかなり低いということが言える。
【0050】
比較例2の処方では、未変成のポリメリックMDIと整泡剤をあらかじめ混合したものを使用したために、泡が均一にフォーム内に分散していないため、熱伝導率が悪いものとなっている。また、キュア性も実施例に比べると今一歩であった。
【0051】
比較例3においては、硬化時間を6分とかなり長くしたにも関わらず、フォーム断面に「割れ」が確認されたので、キュア性は不合格であった。また、ポリオールプレミックスとシクロペンタンの相溶性が不十分であるため、泡が均一にフォーム内に分散していないため、熱伝導率が悪いものとなっている。この処方では、前述の比較例1と比較しても生産性がかなり低いということが言える。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)の存在下で反応・発泡させる厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、
ポリイソシアネート(A)が、ポリメリックMDI(A1−1)と、側鎖アルキル基を有する低分子ポリオール(A1−2)とを反応させて生成したイソシアネート基含有プレポリマー(A1)及び整泡剤(A2)を含有するものであり、
ポリオール(B)が、以下のポリオール(B1)〜(B4)を含有するものであり、
触媒(C)が、ウレタン化触媒(C1)と三量化触媒(C2)を含有するものであり、
発泡剤(D)がシクロペンタン(D1)及び水(D2)を併用する
ことを特徴とする、厚物断熱材用硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
ポリオール(B1):
シュークロースを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜6、水酸基価=300〜600mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B2):
ソルビトールを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜6、水酸基価=300〜600mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B3):
グリセリンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=2〜4、水酸基価=1000〜1500mgKOH/gであるポリエーテルポリオール
ポリオール(B4):
エチレンジアミンを主成分とする開始剤にプロピレンオキサイドの付加により得られ、平均官能基数=3〜5、水酸基価=400〜800mgKOH/gであるポリエーテルポリオール


【公開番号】特開2009−179752(P2009−179752A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21676(P2008−21676)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】