説明

硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】水を発泡剤として用い、接着性、寸法安定性に優れる、軽量硬質フォームの製造方法の提供。
【解決手段】ポリオールとポリイソシアネートとを整泡剤、触媒および発泡剤の存在下にスプレー法で反応、発泡させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、発泡剤として水を用い、水の使用量がポリオール100質量部に対し0.5〜15質量部であり、ポリオールとしてポリオール(AA)を用いることを特徴とする。ただしポリオール(AA)とは、フェノール類、アルデヒド類、および、アルカノールアミン類を反応させて得られたマンニッヒ化合物に、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをこの順で開環付加重合させて得られ、水酸基価が100〜400mgKOH/gであり、かつ、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの合計量に対するエチレンオキシドの割合が55質量%を超え80質量%以下であるポリエーテルポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレー法による硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。より詳しくは、原料系の粘度が低く、軽量な硬質発泡合成樹脂が製造可能であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム等の硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールとポリイソシアネートとを整泡剤、触媒および発泡剤の存在下に反応、発泡させて、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリイソシアヌレートフォーム等の硬質発泡合成樹脂(以下、硬質フォームという。)を製造することは広く行われている。ここで硬質フォームを製造する際に用いられるポリオールとして、マンニッヒ化合物にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリオール(以下、マンニッヒポリオールともいう。)は、製造される硬質フォームが機械的強度および難燃性に優れるという点から、硬質フォーム製造用のポリオールとして好適に採用されている。特に建築現場等において断熱材として施工される硬質フォームの原料として、マンニッヒポリオールは比較的よく採用されている。ここで建築現場等で断熱材等として硬質フォームを製造する際には、スプレー法が多く採用される。ここでスプレー法とは原料を高圧で送液し、スプレーガンから原料液を施工対象となる壁面等に吹き付け、その壁面等で発泡させて断熱材等とする方法である。スプレー法の利点は、施工の際に対象となる壁面等の形状に左右されず、所望の厚さの断熱材を施工できる点である。
【0003】
このスプレー法により硬質フォームを施工する際に、マンニッヒポリオールを原料として採用する場合には、特にマンニッヒポリオールの粘度を低く抑え、スプレー法による施工でも良質な硬質フォームが得られるように種々の検討がなされている(特許文献1〜3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−173826号公報
【特許文献2】特開平8−301820号公報
【特許文献3】特表2002−524630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で近年断熱材を含めて硬質フォームの軽量化が強く求められている。特にマンニッヒポリオールを用いることで得られる機械的強度および難燃性等の特性を犠牲にすることなく、軽量化を行うことには困難があった。さらに、従来発泡剤として用いられてきた塩素化フッ素化等の化合物を削減しながら上記課題を達成することは困難であった。特に軽量化のために水をやや多く用いた場合に、接着性に優れ、収縮がほとんどなく、機械的強度等のフォーム特性に優れる硬質フォームを得る方法の開発が望まれていた。
【0006】
すなわち本発明は上記の問題を解決し、やや多くの水を発泡剤として用い、軽量で、接着性に優れ、かつ収縮がほとんどない、機械的特性の良好な硬質フォームを製造し、かつ、原料の貯蔵安定性に優れた硬質フォームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、ポリオールとポリイソシアネートとを整泡剤、触媒および発泡剤の存在下にスプレー法で反応、発泡させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、発泡剤の少なくとも一部として水を用い、水の使用量がポリオール100質量部に対し0.5〜15質量部であり、ポリオールの少なくとも一部として下記ポリオール(AA)を用いることを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供する。ただし、ポリオール(AA)とは、フェノール類、アルデヒド類、および、アルカノールアミン類を反応させて得られたマンニッヒ化合物に、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをこの順で開環付加重合させて得られ、水酸基価が100〜400mgKOH/gであり、かつ、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの合計量に対するエチレンオキシドの割合が55質量%を超え80質量%以下であるポリエーテルポリオールである。
【0008】
また、前記マンニッヒ化合物を得る際の原料の割合が、フェノール類の1モルに対し、アルデヒド類の1〜1.8モル、アルカノールアミン類の2〜2.5モルであることが好ましい。また、前記ポリオール(AA)の水酸基価が200〜350mgKOH/gであることが好ましい。また、前記ポリオール(AA)におけるプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの合計量に対するエチレンオキシドの割合が56〜65質量%であることが好ましい。また、前記ポリオール(AA)の割合が、ポリオールのうち、10〜100質量%であることが好ましい。また、前記ポリイソシアネートの25℃における粘度が50〜150mPa・sであることが好ましい。また、前記ポリオールとして、ポリマー微粒子が安定に分散したポリオールを用いることが好ましい。また、製造された硬質発泡合成樹脂の密度が15〜30kg/mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、比較的多量の水を発泡剤として用い、軽量で、接着性、圧縮強度、寸法安定性に優れ、かつ収縮がほとんどなく外観が良好で、機械的特性の良好な硬質フォームを製造が可能となった。また原料の貯蔵安定性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の硬質フォームの製造方法においては、ポリオールとポリイソシアネートとを整泡剤、触媒および発泡剤の存在下にスプレー法で反応、発泡させて硬質発泡合成樹脂を製造する。以下にその詳細について説明する。
【0011】
(ポリオール(AA))
本発明において、ポリオールの少なくとも一部として、ポリオール(AA)を用いる。ここでポリオール(AA)とは、フェノール類、アルデヒド類、および、アルカノールアミン類を反応させて得られたマンニッヒ化合物に、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをこの順で開環付加重合させて得られ、水酸基価が100〜400mgKOH/gであり、かつ、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの合計量に対するエチレンオキシドの割合が55質量%を超え80質量%以下であるポリエーテルポリオールである。すなわちポリオール(AA)はマンニッヒポリオールである。またこのポリオール(AA)は、前記マンニッヒ化合物にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。
【0012】
前記マンニッヒ化合物は、フェノール類、アルデヒド類、および、アルカノールアミン類を反応させて得られる。ここでフェノール類としては、フェノール、ノニルフェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられる。このうちノニルフェノールがポリオールとイソシアネートとの相溶性を改良しセル外観を向上させる点で好ましい。また、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられ、ホルムアルデヒドがフォームの接着性を向上させる点で好ましい。また、アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、アミノエチルエタノールアミン等が挙げられる。このうちジエタノールアミンが、フォームの強度向上とポリオールの粘度低減のバランスを取る上で好ましい。
【0013】
また、前記マンニッヒ化合物を得る際の原料の割合が、フェノール類の1モルに対し、アルデヒド類の1〜1.8モル、アルカノールアミン類の2〜2.5モルであることが好ましい。ここでフェノール類に対してアルデヒド類が上記範囲より過剰であると、硬質フォームを製造する際に臭気が発生しやすく好ましくない。またフェノール類に対してアルデヒド類が上記範囲より少ないと、ポリオール(AA)の粘度が高くなりやすく、また、得られる硬質フォームの接着性が低くなりやすいという問題があり好ましくない。またアルデヒド類に対してアルカノールアミン類が上記範囲より過剰であると、得られる硬質フォームが収縮しやすい傾向にあり好ましくない。またアルデヒド類に対してアルカノールアミン類が上記範囲より少ないと、ポリオール(AA)の粘度が高くなりやすく、また、硬質フォームを製造する際に臭気が発生しやすく好ましくない。上記原料の割合のうち、フェノール類の1モルに対するアルデヒド類の割合は、1.2〜1.7モルがより好ましく、1.4〜1.6モルがさらに好ましい。また同じくアルデヒド類の1モルに対するアルカノールアミン類の割合は、1.15〜2モルがより好ましく、1.2〜1.8モルがさらに好ましい。
【0014】
またポリオール(AA)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドを用いる。マンニッヒ化合物に開環付加重合させるアルキレンオキシドの順序は、プロピレンオキシドを先にし、エチレンオキシドを後にする。またプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの合計量に対するエチレンオキシドの割合は、55質量%を超え80質量%以下である。この範囲は、56〜65質量%がより好ましい。開環付加重合の順番をこの順とすることでポリオール(AA)の水酸基の多くは一級水酸基となり、ポリオール(AA)の反応性が高くなり、イソシアネートとの反応性が高くなる結果、外観が良好になりやすく好ましい。また同時に得られる硬質フォームの接着性の向上に効果がある。また上記割合を超えてエチレンオキシドの割合が多くなると、得られる硬質フォームの圧縮強度が低くなり、その結果得られる硬質フォームに収縮が発生しやすい傾向にあり好ましくない。さらに低沸点の含フッ素化合物を発泡剤として用いる場合に、低沸点の含フッ素化合物とポリオールとの相溶性が低くなりやすく、発泡剤を含めたポリオール混合物の蒸気圧が高くなりやすく、原料の保存の点、特に夏季の高温環境において容器の耐圧が問題となりやすく好ましくない。また上記割合よりエチレンオキシドの割合が少なくなると、ポリオール(AA)の粘度が高くなる傾向にあり、また得られる硬質フォームの接着性が低くなる傾向にあり好ましくない。すなわち上記割合とすることで、ポリオール(AA)と発泡剤として用いる水との相溶性が向上し、さらにイソシアネートを含む原料の混合性が良好となり、得られる硬質フォームの外観向上、機械的特性の向上に効果がある。ここでポリオール(AA)の一級水酸基の割合は、60〜100%が好ましい。
【0015】
またポリオール(AA)の水酸基価は、100〜400mgKOH/gであるが、200〜350mgKOH/gが好ましい。ポリオール(AA)の水酸基価が400mgKOH/gを超えて大きいと、ポリオール(AA)中に存在するアルキレンオキシド由来のオキシアルキレン鎖の量が少なくなる。この結果、ポリオール(AA)の粘度が高くなりやすい、製造される硬質フォームが脆くなりやすい、かつ、硬質フォームの接着性が不充分になりやすい等の問題があり好ましくない。ポリオール(AA)の水酸基価が100mgKOH/g未満であると、得られる硬質フォームに収縮が発生しやすくなり好ましくない。すなわち上記範囲内であれば、原料の混合性を良好に保ちながら、圧縮強度等の硬質フォームの機械的強度が確保しやすく好ましい。
【0016】
本発明に用いるポリオールのうち、ポリオール(AA)の割合は、10〜100質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。この範囲であれば、得られる硬質フォームの機械的強度、難燃性等の特徴を備えつつ、軽量化が達成できる。
【0017】
(ポリオール(AB))
本発明においてはポリオールとして、前述のポリオール(AA)に加えて、以下に説明するポリオール(AB)を併用することが好ましい。すなわち、ポリオール(AB)とは、開始剤として芳香族化合物(ただし芳香族アミン化合物を除く)を用い、アルキレンオキシドを開環付加重合させて製造されたポリエーテルポリオール、または、芳香族化合物を含むモノマーを重縮合して製造されたポリエステルポリオールであって、水酸基価が100〜700mgKOH/gであるポリオールである。このポリオール(AB)のうちのポリエステルポリオールを製造するために用いるモノマーとしては、芳香環を有するジオールまたは芳香環を有するジカルボン酸を用いる。芳香環を有するジオールとしては、ビスフェノールAにエチレンオキシドを付加させて得られたジオール等が挙げられる。また芳香環を有するジカルボン酸としては、テレフタル酸等のフタル酸類が挙げられる。
【0018】
ポリオール(AB)のうちポリエーテルポリオールの製造に用いる開始剤としては、芳香族アミン化合物を除く芳香族化合物を用いるが、ビスフェノールAを用いることが好ましい。上記の芳香族化合物とは、縮合化合物であっても、非縮合化合物であってもよい。縮合化合物としては、フェノール類をアルカリ触媒の存在下で過剰のホルムアルデヒド類と縮合結合させたレゾール型初期縮合物、このレゾール型初期縮合物を合成する際に非水系で反応させたベンジリック型初期縮合物、過剰のフェノール類を酸触媒の存在下でホルムアルデヒド類と反応させたノボラック型初期縮合物等が挙げられる。これらの初期縮合物の分子量は、200〜10000程度のものが好ましい。上記において、フェノール類としては、フェノール、ノニルフェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられ、また、アルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。また非縮合化合物としては、ビスフェノールA、レゾルシノール等の多価フェノール類等が挙げられる。またここで用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。
【0019】
またポリオール(AB)の水酸基価は、100〜700mgKOH/gであるが、200〜600mgKOH/gが好ましい。ポリオール(AB)の水酸基価が上記範囲内であれば、ポリオール化合物の混合性を保ちつつ充分な難燃性を付与でき好ましい。
【0020】
本発明に用いるポリオールのうち、ポリオール(AB)の割合は、10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。ポリオール(AB)の割合が上記範囲にあれば、得られる硬質フォームに適度な難燃性を付与でき、かつその他の機械特性等を損ねることがない。
【0021】
(ポリマー分散ポリオール(W))
本発明においてはポリオールとして、ポリマー微粒子が安定に分散したポリオールを用いることが好ましい。ポリマー微粒子が安定に分散したポリオールを用いることにより、硬質フォームの製造の際の収縮を効果的に抑制できる。特に軽量(具体的にはコア密度が15〜30kg/mである)硬質フォームを製造する際に、収縮の抑制に顕著な効果がある。このポリマー微粒子が安定に分散したポリオールは、ポリオールにポリマー微粒子を安定に分散させて製造してもよく、ポリマー微粒子が安定に分散したポリオールと前記ポリオール(AA)等とを混合して製造してもよい。しかし、ポリオールにおけるポリマー微粒子の安定性が高く、かつ、本発明に係るポリオールの製造が容易であることから、後者が特に好ましい。なお、ポリマー微粒子が安定に分散したポリオールを、以下、ポリマー分散ポリオールという。また、本発明において、ポリオール(AA)等と混合するのに好適なポリマー分散ポリオールを、以下、ポリマー分散ポリオール(W)という。
【0022】
本発明においてポリマー分散ポリオール(W)とは、後述するポリエーテルポリオール(X)、後述するアミン系ポリエーテルポリオール(Y)および任意にその他(ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)以外)のポリオール(Z)を含むポリオールである。ポリマー分散ポリオール(W)におけるポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)およびその他のポリオール(Z)の混合比は、質量比で(X)/(Y)/(Z)が、5〜97/3〜35/0〜92が好ましく、10〜60/5〜35/10〜85がより好ましく、25〜50/8〜25/25〜67が特に好ましい。ポリマー分散ポリオール(W)の平均水酸基価は200〜800mgKOH/gが好ましく、250〜750mgKOH/gがより好ましい。ポリマー分散ポリオール(W)における混合比、および、ポリマー分散ポリオール(W)の平均水酸基価が上記範囲にあると、ポリマー微粒子が安定に分散しやすく好ましい。
【0023】
(ポリエーテルポリオール(X))
上記のポリエーテルポリオール(X)は、水酸基価が84mgKOH/g以下であってかつオキシエチレン基含有量40質量%以上のポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオール(X)の水酸基価は、84mgKOH/g以下であるが、5〜84mgKOH/gが好ましく、30〜60mgKOH/gが特に好ましい。またポリエーテルポリオール(X)の製造に用いる開始剤としては、3価以上の多価アルコールが好ましい。その具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオールが挙げられる。またポリエーテルポリオール(X)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド単独、または、プロピレンオキシド等の炭素数3以上のアルキレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましい。ここでポリエーテルポリオール(X)におけるエチレンオキシドに由来するオキシエチレン基の含有量は40質量%以上であるが、50〜90質量%が好ましい。
【0024】
(アミン系ポリエーテルポリオール(Y))
上記のアミン系ポリエーテルポリオール(Y)は、後述するアミン化合物を開始剤としてアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が250〜900mgKOH/gであるポリエーテルポリオールである。ただし前述したポリオール(AA)のうち水酸基価が上記範囲に入るものであってもよい。アミン系ポリエーテルポリオール(Y)の水酸基価は、250〜900mgKOH/gであるが、300〜800mgKOH/gが好ましく、350〜800mgKOH/gが特に好ましい。またアミン系ポリエーテルポリオール(Y)の製造に用いる開始剤のアミン化合物としては、脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。脂肪族アミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン等が挙げられる。脂環族アミンとしては、ピペリジン類、ピペラジン類、ピロリジン類等が挙げられ、ピペラジン類が特に好ましく、アミノアルキル基で置換されたピペラジンが最も好ましい。ピペラジン類はウレタン結合生成反応を促進する触媒としての効果が高く、硬質フォーム製造時の反応性を高くする効果が得られる。ピペリジン類としては、1−(2−アミノエチル)ピペリジン等が挙げられる。ピペラジン類としては、ピペラジン、N−アミノメチルピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン等が挙げられる。ピロリジン類としては、1−(2−アミノエチル)ピロリジン等が挙げられる。またアミン系ポリエーテルポリオール(Y)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が好ましい。
【0025】
(ポリオール(Z))
上記のその他のポリオール(Z)は、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)以外の任意のポリオールである。すなわちその他のポリオール(Z)とは、ポリオール(AA’)、ポリオール(AB)およびポリオール(V)からなる群から選ばれる1種以上のポリオールである。ただしポリオール(AA’)とは、ポリオール(AA)のうち、水酸基価の範囲がはずれる点でポリオール(Y)以外のポリエーテルポリオールである。またポリオール(V)とは、前述のポリオール(AA)、ポリオール(AB)、ポリエーテルポリオール(X)、またはアミン系ポリエーテルポリオール(Y)以外のポリオールである。このポリオール(V)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、多価アルコール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等が挙げられる。その他のポリオール(Z)の水酸基価は、200〜1000mgKOH/gが好ましく、400〜850mgKOH/gが特に好ましい。
【0026】
(ポリマー微粒子)
本発明におけるポリマー微粒子は、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合して得られるポリマー微粒子であることが好ましい。この重合性不飽和結合を有するモノマーの具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2,4−ジシアノ−1−ブテン等のニトリル系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、その他のジエン系モノマー;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和脂肪酸エステル系モノマー;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系モノマー;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらモノマーは2種以上併用してもよい。
【0027】
重合性不飽和結合を有するモノマーの組み合わせとしては、ニトリル系モノマー5〜90質量%と他のモノマー10〜95質量%の組み合わせが好ましい。ニトリル系モノマーとスチレン系モノマーの組み合わせ、またはニトリル系モノマーとカルボン酸ビニルエステル系モノマーの組み合わせが、低粘度で分散安定性の良好なポリマー分散ポリオールを得るために好ましい。前記モノマーの組み合わせとしては、アクリロニトリルとスチレンの組み合わせ、および、アクリロニトリルと酢酸ビニルの組み合わせが特に好ましく、アクリロニトリルと酢酸ビニルの組み合わせが分散安定性が良好であるため特に好ましい。
【0028】
アクリロニトリルとスチレンの組み合わせの場合、その割合はアクリロニトリル/スチレンが質量比で90〜40/10〜60が好ましく、85〜60/15〜40が最も好ましい。アクリロニトリルと酢酸ビニルの組み合わせの場合、その割合はアクリロニトリル/酢酸ビニルが質量比で50〜10/50〜90が好ましく、40〜15/60〜85が最も好ましい。
【0029】
上記モノマーの使用量は特に限定されないが、ポリマー分散ポリオール(W)中のポリマー微粒子の濃度としては約1〜50質量%が好ましく、2〜45質量%が特に好ましく、5〜40質量%が最も好ましい。
【0030】
(ポリマー分散ポリオール(W)の製造方法)
ポリマー分散ポリオール(W)を製造する方法は下記の2通りの方法等が挙げられる。
【0031】
第1の方法は、必要に応じて溶媒の存在下、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)およびその他のポリオール(Z)の混合物の中で重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させ直接粒子を析出させる方法である。第2の方法は、必要に応じて粒子を安定化させるグラフト化剤の存在下、溶媒中で重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させ粒子を析出させた後、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)およびその他のポリオール(Z)の混合物と溶媒を置換する方法である。本発明ではどちらの方法も採用でき、第1の方法が特に好ましい。
【0032】
重合性不飽和結合を有するモノマーの重合は、通常ラジカル重合が採用される。ラジカル重合の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNという)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、アセチルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシド、過硫酸塩等が挙げられる。特にAIBN、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)が好ましい。
【0033】
ポリマー微粒子の分散安定性を良くするために、グラフト化剤を使用できる。グラフト化剤としては、ポリエーテル鎖やポリエステル鎖を有する化合物であって、分子内に重合性不飽和結合を有する化合物が使用できる。
【0034】
上記グラフト化剤としては、不飽和結合を分子内に有する活性水素化合物を開始剤として使用し、アルキレンオキシドを付加重合して得られる高分子量のポリオールまたはモノオール;ポリエーテルポリオールに無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を反応させた後、必要に応じてアルキレンオキシドを付加して得られた高分子量のポリオールまたはモノオール;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブテンジオール等の不飽和結合を分子内に有するアルコールと他のポリオールとポリイソシアネートとの反応物;アリルグリシジルエーテル等の不飽和結合を分子内に有するエポキシ化合物とポリオールとの反応物等が挙げられる。これらの化合物は水酸基を有することが好ましいがそれに限定されない。
【0035】
(ポリオール)
本発明においてはポリオールとしては、上述したポリオール(AA)を用いることを必須とする。本発明におけるポリオールとしては、さらに水酸基価が100〜700mgKOH/gであり、かつ、ポリマー微粒子が安定に分散しているポリオール混合物が好ましい。ここでポリオール混合物の水酸基価は100〜700mgKOH/gが好ましいが、150〜600mgKOH/gがより好ましい。上記水酸基価がこの範囲であれば、良好な物性の硬質フォームが得られる。またポリマー微粒子の濃度としては、ポリオール混合物のうち0.05〜4質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましい。ポリマー微粒子の濃度が上記範囲であれば、得られる硬質フォームの収縮が効果的に抑制できる。すなわち、ポリマー濃度が25質量%のポリマー分散ポリオール(W)を混合してポリオール混合物を得るとした場合には、ポリマー分散ポリオール(W)の割合は、0.2〜16質量%が好ましく、0.8〜4質量%がより好ましい。
【0036】
本発明におけるポリオールとしては、ポリオール(AA)および場合によってポリマー分散ポリオール(W)に加えて、前述したポリオール(AB)を混合してもよい。本発明においては、上記の各ポリオールに加えて、さらに別途アミン系ポリエーテルポリオール(Y)を用いることが好ましい。このさらに併用するアミン系ポリエーテルポリオール(Y)は後述する発泡剤により使い分けることが好ましい。
【0037】
すなわち発泡剤として、水と低沸点の含フッ素化合物とを併用する場合には、アミン系ポリエーテルポリオール(YC)を用いることが好ましい。ただしアミン系ポリエーテルポリオール(YC)とは、脂肪族アミンを開始剤として用い、プロピレンオキシドのみを、または、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとをこの順で、開環付加重合させて得られるアミン系ポリエーテルポリオールである。この好適な例としては、エチレンジアミンを開始剤とし、プロピレンオキシドのみを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。このアミン系ポリエーテルポリオール(YC)を用いると、冬季等の低温環境においても軽量な硬質フォームが得やすく好ましい。
【0038】
また発泡剤として、水のみを用いる場合には、アミン系ポリエーテルポリオール(YD)を用いることが好ましい。ただしアミン系ポリエーテルポリオール(YD)とは、脂環族アミンを開始剤として用い、エチレンオキシドのみを、または、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとをこの順で、開環付加重合させて得られるアミン系ポリエーテルポリオールである。この好適な例としては、1−(2−アミノエチル)ピペラジンを開始剤とし、エチレンオキシドのみを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。このアミン系ポリエーテルポリオール(YD)を用いると、水とポリオールとの混合性が向上し、外観不良が発生しにくく好ましい。
【0039】
本発明においては、上述の各ポリオールに加えてさらにその他の活性水素含有化合物を混合して併用してもよい。ここでその他の活性水素含有化合物としては、ポリオール類、多価フェノール類、ポリアミン類が挙げられる。ここで併用してもよいポリオール類とは、ポリオール(AA)、ポリオール(AB)、ポリマー分散ポリオール(W)以外の任意のポリオールであり、ポリエーテルポリオール(X)、アミン系ポリエーテルポリオール(Y’)、ポリオール(V)からなる群から選ばれる1種以上からなる。ただしアミン系ポリエーテルポリオール(Y’)とは、アミン系ポリエーテルポリオール(Y)のうち、ポリオール(AA)以外のアミン系ポリエーテルポリオールである。
【0040】
また併用してもよい多価フェノール類としては、具体的には、レゾール型初期縮合物、ベンジリック型初期縮合物、ノボラック型初期縮合物、ビスフェノールA、レゾルシノール等が例示できる。また併用してもよいポリアミン類としては、前述の脂肪族アミン、脂環族アミンの他、芳香族アミン類が挙げられる。この芳香族アミン類としては、ジアミノトルエン、ジエチルジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0041】
(発泡剤)
本発明においては、発泡剤の少なくとも一部として水を用いる。また発泡剤として、低沸点の含フッ素化合物、不活性ガスを併用することができる。本発明においては、発泡剤として、水のみを用いるか、または、水と低沸点の含フッ素化合物とを併用することが好ましい。発泡剤としての水の使用量は、ポリオール100質量部に対し0.5〜15質量部が好ましく、0.5〜8質量部が特に好ましい。水の使用量が0.5質量部未満であると、得られた硬質フォームが軽くなりにくく好ましくない。また使用量が15質量部を超えて多いと、水とポリオール化合物との混合性が悪くなりやすく好ましくない。
【0042】
前記の低沸点の含フッ素化合物としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(HFE−236pc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−254pc)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(HFE−347mcc)等が挙げられる。このうち低沸点の含フッ素化合物としては、HFC−134a、HFC−245faおよびHFC−365mfcからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。発泡剤としての低沸点の含フッ素化合物を使用する場合の使用量は、ポリオール100質量部に対し1〜100質量部が好ましく、5〜60質量部が特に好ましい。また前記の不活性ガスとしては、空気、窒素、炭酸ガス等が挙げられる。
【0043】
前記低沸点の含フッ素化合物と水とを併用すると、軽量の硬質フォームを得やすい、得られた硬質フォームの寸法安定性および機械的特性に優れる、さらに硬質フォームの断熱特性に優れるといった点で好ましい。しかし含フッ素化合物の使用は環境に負荷を与えるという点を考慮すると水のみを発泡剤として用いることも好ましい。
【0044】
(ポリイソシアネート)
本発明においてポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネートまたはこれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。このうち、クルードMDI、またはその変性体が好ましく、クルードMDIの変性体が特に好ましい。
【0045】
ポリイソシアネートの25℃における粘度は50〜150mPa・sが好ましい。この粘度が50mPa・s未満であると、得られる硬質フォームが収縮しやすくなり好ましくない。またこの粘度が、150mPa・sを超えて大きいと、スプレー法による吹き付け施工時の、操作性が悪くなり、また得られる硬質フォームの外観不良を生じやすく好ましくない。
【0046】
ポリイソシアネートの使用量は、ポリオールおよびその他の活性水素化合物の活性水素の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表して(通常この100倍で表した数値をイソシアネート指数という)、50〜300が好ましい。ここで、触媒としてウレタン化触媒を主に用いるウレタン処方においては、ポリイソシアネート化合物の使用量はイソシアネート指数で、50〜140が好ましく、60〜130がより好ましい。また触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を主に用いるイソシアヌレート処方においては、ポリイソシアネート化合物の使用量はイソシアネート指数で、120〜300が好ましく、150〜250がより好ましい。
【0047】
(触媒)
本発明において用いられる触媒としては、ウレタン化反応を促進する触媒であれば特に制限はない。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの3級アミン類;ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。またイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を併用してもよく、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩等が挙げられる。また硬質フォームの製造方法としてスプレー発泡を採用する場合には、反応を短時間で完結させるために、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒を併用することが好ましい。触媒の使用量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0048】
(整泡剤)
本発明においては良好な気泡を形成するため整泡剤を用いる。整泡剤としては例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。整泡剤の使用量は、適宜選定すればよいが、ポリオール化合物100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0049】
(その他の配合剤)
本発明では、上述したポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤の他に、任意の配合剤が使用できる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0050】
(スプレー法)
本発明の硬質フォームの製造方法はスプレー法である。スプレー法による発泡製造方法は種々の方法が知られているが、このうち特に配合液をミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡が好ましい。ここでスプレー発泡とは、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とを吹き付けながら反応させる発泡方法であり、触媒等の選定により反応を短時間で完結させることを特徴とする。スプレー発泡は、建築現場において壁、天井等に硬質フォームの断熱材を施工する際に採用されることが多い。スプレー発泡は、工事現場にて直接硬質フォームを製造することから、工事コストを抑制できる、凹凸のある施工面にも隙間なく施工できる等の長所を有する。具体的な施工例としては、マンション、オフィスビル、プレハブ冷凍倉庫等の断熱材が挙げられ、また近年は高気密用戸建住宅の断熱材としても採用されつつある。
【0051】
(硬質フォーム)
本発明の製造方法により製造される硬質フォームの密度は、15〜30kg/mが好ましい。この密度は、発泡剤を多く用いれば軽くすることは可能であるが、発泡剤を多く用いると得られた硬質フォームが収縮しやすい傾向がある。ただし前述のポリマー分散ポリオール(W)を使用すると、発泡剤の使用量を増やし、軽量化を行った場合でも、収縮が少なく、寸法安定性に優れた硬質フォームが製造しやすく好ましい。
【実施例】
【0052】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお以下の例のうち、例1、2はポリマー分散ポリオールの製造例を、例3〜25は硬質ポリウレタンフォームの製造例を、例26〜46は硬質ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造例を表す。ただし例3〜17および例26〜40は実施例を、例18〜25および例41〜46は比較例を表す。また表中で処方を表した部分の数値の単位は質量部である。実施例および比較例で用いた原料は、各表に示したとおりであるが、その詳細は以下のとおりである。また表中の略号として、ANはアクリロニトリル、STはスチレン、VAは酢酸ビニルを表す。
【0053】
(ポリオール化合物)
ポリオールAA1:ノニルフェノール1モルに対し、ホルムアルデヒドを1.5モル、ジエタノールアミンを2.2モル反応させてマンニッヒ化合物1を得た。このマンニッヒ化合物1に対し、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)をこの順で開環付加重合させて、25℃における粘度が1000mPa・s、水酸基価が300mgKOH/gのマンニッヒポリオールを得た。このときのPOとEOとの合計量に対するEOの割合は、60質量%であった。
ポリオールAX2:上記マンニッヒ化合物1に対し、POとEOとをこの順で開環付加重合させて、25℃における粘度が3000mPa・s、水酸基価が300mgKOH/gのマンニッヒポリオールを得た。このときのPOとEOとの合計量に対するEOの割合は、23質量%であった。
ポリオールAX3:上記マンニッヒ化合物1に対し、POとEOとをこの順で開環付加重合させて、25℃における粘度が500mPa・s、水酸基価が300mgKOH/gのマンニッヒポリオールを得た。このときのPOとEOとの合計量に対するEOの割合は、90質量%であった。
【0054】
ポリオールAB1:開始剤としてビスフェノールAを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が280mgKOH/gのポリオキシエチレンポリオール。
ポリオールAB2:ジエチレングリコールとテレフタル酸とを重縮合して得られた、水酸基価が250mgKOH/gのポリエステルポリオール。
【0055】
ポリオールX1:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとを混合して反応させて得られた、水酸基価が50mgKOH/g、オキシエチレン基の割合が55質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール。
【0056】
ポリオールYC1:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールYC2:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が500mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールYD3:開始剤として1−(2−アミノエチル)ピペラジンを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリオキシエチレンポリオール。
【0057】
ポリオールZ1:開始剤としてショ糖とグリセリンの混合物(混合比は質量比で1.5:1)を用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が300mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
ポリオールZ2:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた、水酸基価が650mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール。
【0058】
(発泡剤)
発泡剤1:HFC−245fa。
発泡剤2:HFC−365mfc。
発泡剤3:HFC−134a。
【0059】
(例1)
表1に示したポリオールを混合して用いた。5Lの加圧反応槽にこのポリオール混合物のうち70質量%を投入し120℃に昇温した。温度を保ちながら、ポリオール混合物の残り、表1に示したモノマーおよびAIBNの混合物を撹拌下で4時間かけて投入した。投入終了後、温度を保ちながら30分撹拌した。モノマーの反応率は92%であった。反応終了後、120℃の温度、50Paの圧力のもとで2時間かけて未反応モノマーを除去した。以上によりポリオールW1を得た。ポリオールW1の水酸基価は325mgKOH/g、25℃における粘度は4000mPa・sであった。
【0060】
(例2)
表1に示したポリオールを混合して用いた。5Lの加圧反応槽にこのポリオール混合物、表1に示したモノマーおよびAIBNの混合物を投入した。撹拌下で80℃まで昇温した。温度を保ちながら10時間撹拌した。モノマーの反応率は85%であった。反応終了後、110℃の温度、50Paの圧力のもとで2時間かけて未反応モノマーを除去した。以上によりポリオールW2を得た。ポリオールW2の水酸基価は330mgKOH/g、25℃における粘度は1500mPa・sであった。
【0061】
(例3〜25:硬質ポリウレタンフォームの製造例)
表2〜4に示したポリオールを混合してそれぞれ用いた。また発泡剤は表2〜4に示したものを用いた。ポリオール混合物および発泡剤に以下の触媒、整泡剤、難燃剤を添加、混合してポリオール組成物とした。触媒としては、トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液(トリエチレンジアミン濃度33%。商品名DABCO33LV)を2.0質量部、2−エチルヘキサン酸鉛のミネラルスピリット溶液(鉛濃度:20%、商品名:ニッカオクチックス鉛20%、日本化学産業社製)を1.0質量部用いた。整泡剤としては、シリコーン整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を1.5質量部用いた。難燃剤としては、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート(商品名:TMCPP、大八化学社製)を15質量部用いた。
【0062】
ポリイソシアネートとして、例3〜15、18〜25に関しては、25℃における粘度が120mPa・sであるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:C−1155、日本ポリウレタン工業社製)を、例16、17に関しては25℃における粘度が粘度180mPa・sであるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:MR−200、日本ポリウレタン工業社製)を用いた。
【0063】
(例26〜46:硬質ポリイソシアヌレートの製造例)
表5〜7に示したポリオールを混合してそれぞれ用いた。また発泡剤は表5〜7に示したものを用いた。ポリオール混合物および発泡剤に以下の触媒、整泡剤、難燃剤を添加、混合してポリオール組成物とした。触媒としては、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン(商品名:ポリキャット41、エアプロダクツ社製)を2.0質量部と、2−エチルヘキサン酸カリウムのジエチレングリコール溶液(カリウム濃度15%、商品名:プキャット15G、日本化学産業社製)を4.0質量部、2−エチルヘキサン酸鉛のミネラルスピリット溶液(鉛濃度:20%、商品名:ニッカオクチックス鉛20%、日本化学産業社製)を2.0質量部用いた。整泡剤としては、SH−193を1.5質量部用いた。難燃剤としては、TMCPPを20質量部用いた。
【0064】
ポリイソシアネートとして例26〜38、41〜46に関しては、25℃における粘度が120mPa・s/25℃であるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:C−1155、日本ポリウレタン工業社製)を、例39、40に関しては25℃における粘度が180mPa・sであるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:MR−200、日本ポリウレタン工業社製)を用いた。
【0065】
(評価)
前述のポリオール混合物とポリイソシアネートとを、液温35℃、室温10℃にて、ガスマー社製発泡機(FF−1600)を用いてスプレー法にて、壁面に貼り付けたボードに吹き付け、硬質フォームの製造を各々実施した。具体的な施工は、10℃に冷却した600×600mmのフレキシブルボードに、厚さ1mmの下吹き層を施工した後に、厚さ25mmでさらに2層施工した。
【0066】
25mmで2層施工した時のスキン層を挟んで厚さ40mm、縦横40mmのフォーム試料片を切り出し、この試料片から、コア密度(単位:kg/m)、低温収縮度(単位:%)、高温収縮度(単位:%)を評価した。低温収縮度は−30℃で24時間経過後の発泡方向に対して垂直方向(ボード平面に水平方向)の寸法変化率を、高温収縮度は、70℃、48時間経過後の発泡方向に対して垂直方向の寸法変化率を示す。初期接着性に関しては、施工1分後にフォームをフレキシブルボードから剥がした時のフォームの付着具合で評価を行い、良好なもの(強固に接着しているもの)を○、不良なもの(ほとんど接着していないもの)を×とした。
【0067】
難燃性に関しては、表2〜4に関してはJIS−A−9511に基づいて自己消火性(単位:mm)を測定した。表5〜7に関してはそのコア部分を厚さ10mmに切り出し、コーンカロリーメーター(東洋精機製作所社製)にてISO−5600 Part1に準拠した燃焼試験を実施し、建築基準法に基づく難燃材料以上の難燃性を示すものを○、示さない物を×とした。またドラム缶の膨れ状態は、ポリオールシステム液を200Lのドラム缶に、空間の体積が1、ポリオール混合物が占める体積が10となるよう充填し、45℃で2週間加温して評価した。ドラム缶の天板の膨れ状態を目視で確認し、膨れがほとんど見られないものを○、膨れが著しいものを×とした。セル外観は製造されたフォームを切断し内部のセル状態、および、フォーム底面(ボードとの接着面)の荒れ状態を○良好、△普通、×不良の3段階で評価した。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
表2〜7に示したように、本発明の硬質フォームの製造方法により製造された硬質フォームはいずれも良好な初期接着性、寸法安定性、機械的特性、難燃性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る、軽量で接着性に優れる硬質フォームの製造方法は、建築現場で施工されるスプレー発泡による硬質フォームの施工に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネートとを整泡剤、触媒および発泡剤の存在下にスプレー法で反応、発泡させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、
発泡剤の少なくとも一部として水を用い、水の使用量がポリオール100質量部に対し0.5〜15質量部であり、ポリオールの少なくとも一部として下記ポリオール(AA)を用いることを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(AA):フェノール類、アルデヒド類、および、アルカノールアミン類を反応させて得られたマンニッヒ化合物に、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをこの順で開環付加重合させて得られ、水酸基価が100〜400mgKOH/gであり、かつ、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの合計量に対するエチレンオキシドの割合が55質量%を超え80質量%以下であるポリエーテルポリオール。
【請求項2】
前記マンニッヒ化合物を得る際の原料の割合が、フェノール類の1モルに対し、アルデヒド類の1〜1.8モル、アルカノールアミン類の2〜2.5モルである請求項1に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオール(AA)の水酸基価が200〜350mgKOH/gである、請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオール(AA)におけるプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの合計量に対するエチレンオキシドの割合が56〜65質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール(AA)の割合が、ポリオールのうち、10〜100質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートの25℃における粘度が50〜150mPa・sである請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項7】
製造された硬質発泡合成樹脂の密度が15〜30kg/mである請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−17027(P2011−17027A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239882(P2010−239882)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【分割の表示】特願2004−371366(P2004−371366)の分割
【原出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】