説明

硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤

【課題】ベタイン型両性界面活性剤を含有し石鹸を含まない硬質表面用洗浄剤に対し、洗浄時の良好な泡立ち使用感と、すすぎ時の良好な泡切れを奏するためのすすぎ促進剤の提供。
【課題の解決手段】4級アンモニウム塩を含む化合物であることを特徴とする、ベタイン型両性界面活性剤を含有し石鹸を含まない硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。前記4級アンモニウム塩を含む化合物は、ジェミニ型4級アンモニウム塩及び/又は4級アンモニウムを含むカチオンポリマーが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡立ち、洗浄力に優れた硬質表面用洗浄剤のすすぎ性の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
19世紀末からの人口の爆発的な増加はとどまるところを知らず、2050年以降、世界の人口は100億人を超えることが予想されている。この爆発的な人口増加によって、地球の様々な資源が不足する状況になることが予測され、日本では、安定に供給されてきた水資源においても、遠からず、不足することが予測されている。このような、状況の中で、日々の生活で清潔な暮らしを営むために使用される洗浄剤においても、できるだけ少量の水ですすぎができる性能に対する要求も高まってきている。
【0003】
一般的に、硬質表面用洗浄剤に用いられる界面活性剤としては、石鹸やアルキルスルホン酸系等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤、アミンオキサイド型あるいはベタイン型両性界面活性剤等多種多様の界面活性剤が、それぞれの特性に応じて用途を定めたり、配合処方を工夫して使用されている。例えば、石鹸は、金属石鹸スカムを形成するため、総じて、水アカの除去能力が低い。そこで、この金属スカム除去能力を高めて洗浄性能を向上し、かつ、すすぎ性を高めるために、カチオン界面活性剤と両性界面活性剤との混合系に石鹸を併用する発明が開示されている(特許文献1)。しかしながら、石鹸の使用は、カチオン界面活性剤とコンプレックスを形成することによって、汚れの界面に効率よく吸着し汚れとの界面張力を低下させ得るものの、すすぎ性の点で十分な改良がなされたとは言えない状況であった。
一方、アルキルスルホン酸系アニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤あるいは両性界面活性剤は、金属スカムを発生することがなく、水回り用の洗浄成分として多用されている。これらの界面活性剤を使用した提案では、特定の界面活性剤を使用したり、あるいは、多種の界面活性剤を使用したり、更には、多様な成分を配合することで、高い洗浄性に加え、そのすすぎ性を高めている。そのような発明として、特定のグリコシドを含有してなる硬質表面用洗浄剤組成物(特許文献2)、特定の非イオン界面活性剤を配合してなる非イオン洗浄剤組成物(特許文献3)、特定のカチオン性界面活性剤とアミノ酸系両性界面活性剤を含有してなる洗浄剤組成物(特許文献4)、特定のノニオン界面活性剤、及び特定の脂肪酸(塩)を含有する食器洗い用液体洗浄剤組成物(特許文献5)、特定のアニオン界面活性剤、特定の両性界面活性剤、特定の陰イオン性界面活性剤、特定の非イオン性界面活性剤、及び特定の水溶性2価アルコールを含有する洗浄剤組成物(特許文献6)がある。
更に、泡切れを対象としたものではないが、洗浄後のヌルツキの向上を図ったものとして、カチオン性界面活性剤、金属キレート剤、水溶性溶剤及び増粘多糖類を含有する台所まわり用液体洗浄剤組成物(特許文献7)が知られている。
本発明者らは、高い洗浄力を有し、かつ、泡切れ性の良い硬質表面用泡洗浄剤の開発するにあたり、金属スカムの発生のない、両性界面活性剤を使用する一方、石鹸とある種他成分との併用が必ずしもすすぎ性の改良に結びつかないことを考慮し、石鹸を用いない硬質表面用泡洗浄剤処方の確立を目標とした。両性界面活性剤は、基本的に泡立ちが良く洗浄力も高いが、低濃度でも泡立つため、そのすすぎ性能は満足できるものではない。そこで、本発明者らは、すすぎ性の改良を目指して他成分との組合わせを鋭意検討し、本発明を完成するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−53092号公報
【特許文献2】特開平10−8090号公報
【特許文献3】特開2002−180087号公報
【特許文献4】特開2002−121588号公報
【特許文献5】特開2004−203989号公報
【特許文献6】特開2005−281639号公報
【特許文献7】特開平10−204480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属スカムを発生しないベタイン型両性界面活性剤を含有し石鹸を含まない硬質表面用洗浄剤のすすぎ性の問題を改善するにあたり、効果的なすすぎ促進剤を提供することによって、その硬質表面用洗浄剤の実用性並びに使用性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の構成が優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)4級アンモニウム塩を含む化合物であることを特徴とする、ベタイン型両性界面活性剤を含有し石鹸を含まない硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
(2)前記4級アンモニウム塩を含む化合物が、ジェミニ型4級アンモニウム塩及び/又は4級アンモニウムを含むカチオンポリマーである(1)に記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
(3)前記ベタイン型両性界面活性剤が、アルキルカルボベタイン及び/又はアルキルアミドカルボベタインである(1)又は(2)に記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
(4)前記4級アンモニウム塩を含む化合物の前記ベタイン型両性界面活性剤に対する配合比率が、1/10〜1/800である(1)乃至(3)のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
(5)前記硬質表面用洗浄剤が、更にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール系界面活性剤を含有する(1)ないし(4)のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。

【発明の効果】
【0007】
本発明では、硬質表面用洗浄剤の洗浄成分として、金属スカムを発生せず、洗浄力が高く、しかも泡立ち性能も良いベタイン型両性界面活性剤を主たる洗浄成分として使用する。本発明は、このベタイン型両性界面活性剤にすすぎ促進剤として4級アンモニウム塩を含む化合物を配合することによって、すすぎ性を著しく向上させ、高い洗浄力と高いすすぎ性能を両立させたので、本硬質表面用洗浄剤の実用性並びに使用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0009】
本発明で使用されるベタイン型両性界面活性剤としては、アルキルカルボベタイン、アルキルアミドカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタインのいずれであっても良く、具体的には、ラウリル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル−N,N−ジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン等が挙げられる。
なかんずく、ラウリル−N,N−ジメチル酢酸ベタインで代表されるアルキルカルボベタイン、及び、例えばラウリルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタインで例示されるアルキルアミドカルボベタインが好ましい。
これらのベタイン型両性界面活性剤は、泡立ち、洗浄力及びすすぎ性のバランスを考えると、好ましくは0.1〜10質量%の間で配合される。
【0010】
また、本発明ですすぎ促進剤として使用される4級アンモニウム塩を含む化合物としては、ジアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、ジェミニ型4級アンモニウム塩が挙げられ、具体的には、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、1,4−ビス[3,3´−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド等が代表的である。又、4級アンモニウムを含むカチオンポリマーとしては、ローディア日華株式会社製のRD−491やRD−497等が挙げられる。
なかでも、ジェミニ型4級アンモニウム塩及び/又は4級アンモニウムを含むカチオンポリマーが、本発明の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤としての性能に優れている。
【0011】
本発明では、すすぎ促進剤としての4級アンモニウム塩を含む化合物は、ベタイン型両性界面活性剤に対して1/10〜1/800の比率で配合されるのが好ましい。
特許文献1において、4級アンモニウム塩を含む化合物とベタイン型両性界面活性剤の配合比率は、9/1〜1/9の比率であるのに対し、本発明で前者の配合量が低薬量でも高いすすぎ性能を奏し得るのは石鹸の有無が影響しているものと考えられる。
なお、検討の結果、4級アンモニウム塩を含む化合物は、ベタイン型両性界面活性剤に対してのみすすぎ促進剤として効果的であって、アミノ酸系両性界面活性剤に対しては有効でないことも確認された。
【0012】
本発明では、すすぎ性を一層向上させるために、硬質表面用洗浄剤の成分として、更にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール系界面活性剤が含有されるのが好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、株式会社ADEKA製のプルロニック等があり、好ましくはエチレンオキサイド含有量は50%以下、更に好ましくはエチレンオキサイド含有量は20%以下である。これらの具体例としては、プルロニックL61、プルロニックL71、プルロニックL101、プルロニック25R−1、プルロニック25R−2等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いる硬質表面用洗浄剤には、付加すべき特性に応じて、有機酸および/またはその塩、他の種類の界面活性剤、溶剤、増粘剤、香料、除菌剤、防錆剤、キレート剤、消臭剤、撥水剤、防汚剤等を適宜配合しても良い。
【実施例】
【0014】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤について、更に詳細に説明する。
実施例に先立って、実施例における試験方法について説明する。
【0015】
(1)すすぎ性
すすぎ易さとは、硬表面に洗浄剤組成物を適用した後のすすぎ工程で泡切れが良いものであり、すすぎ水で希釈された時の泡立ちが関係する。つまり、洗浄剤組成物を一定の水で希釈した時に、その泡立ちが少ないほどすすぎ性は良いと判定されることから、水道水で0.1%濃度に希釈した液の泡量を測定することによってすすぎ性を評価した。
<泡量>
100mL有栓メスシリンダーに洗浄剤組成物を水道水で0.1%濃度に希釈した液を30mL(20℃)入れ、手で5秒間に10回、上下に振った後に静置して20秒経過後の泡残量(mL)を測定した。この試験で泡残量が少ないほどすすぎ性が良い。
【0016】
(2)スプレーした時の泡立ち
市販のトリガースプレー容器(トリガースプレーはキャニヨン株式会社製)に洗浄剤組成物を充填し、タイル壁面に向けて20cmの距離からスプレーし、そのときのタイル壁面での泡立ちを下記基準で目視判定した。
◎:非常に良く泡立ち、使用感も良い。
○:良く泡立ち、使用感も良い。
△:やや泡立つが、使用感があまりよくない。
×:ほとんど泡立たず、使用感がよくない。
【0017】
(3)洗浄力
<モデル石鹸カス汚れ>
黒色タイル板表面にステアリン酸カルシウム10部、イオン交換水10部、エタノール80部の混合液を均等に付着させ、次いでこれを約200℃で1時間加熱してフィルム状に熟成した石鹸カス汚垢板を作製した。
<洗浄力試験>
洗浄力試験機のウレタン製スポンジ(4cm×9cm×3cm)に洗浄剤組成物を2mL含浸させ、600gの荷重下で10回こすり洗浄試験を行った。洗浄力は予め作製した標準判定用汚垢板(完全に汚れが落ちたものを10とし全く汚れが落ちていないものを1として10段階の判定用汚垢板を作製)を用いて、汚れ落ちの程度を比較判定した。洗浄力数値が10を◎、9〜8を○、7〜6を△、5〜1を×として評価した。
【0018】
(4)すすぎ性実用試験
外寸900mm(W)×700mm(D)×600mm(H)サイズのステンレス浴槽内に洗浄剤組成物を市販トリガースプレー容器を用いて15回スプレー(約10mL噴射)し、ウレタンスポンジで浴槽内全体をこすった後、シャワーで水洗し、泡がなくなるまでのすすぎ時間を測定した。なお、このときのシャワー水量は約12L/分であった。
【0019】
<試験1>
表1に示す組成の実施例及び比較例を調製し、すすぎ性(泡量)、トリガースプレーでスプレーした時の泡立ちを試験した。
【0020】
【表1】

【0021】
比較例1のように、4級アンモニウム塩を配合していない場合には、すすぎ性試験での泡残量が多く、すすぎ性が良くないのに対し、ベンザルコニウム型、ジアルキル型、ジェミニ型の4級アンモニウム塩や4級アンモニウムを含むカチオンポリマーを配合した実施例1〜6では、いずれも、泡残量が減少しており、これらの4級アンモニウム塩やカチオンポリマーを配合することによりすすぎ性の改善効果が認められた。また、実施例1〜6はスプレーした時の泡立ちも良く、使用感も良好であった。
【0022】
<試験2>
本発明のすすぎ効果に対するpHの影響を調べた(表2)。pH3〜11の範囲で、4級アンモニウム塩を配合していない比較例2〜5は泡残量が多かったのに対し、4級アンモニウム塩を配合した実施例7〜10では、明らかに泡残量が減少し、すすぎ性が改善されていると判断される。本発明のすすぎ効果は、幅広いpH範囲で認められ、その有用性は高い。

【0023】
【表2】

【0024】
<試験3>
本発明で用いる4級アンモニウム塩添加濃度の影響について調べた。(表3)
4級アンモニウム塩のベタイン型両性界面活性剤に対する配合比率が1/10〜1/800の範囲で効果が認められた。(実施例11〜18)

【0025】
【表3】

【0026】
<試験4>
4級アンモニウム塩のすすぎ促進効果(泡減少効果)が、ベタイン型両性界面活性剤以外の界
面活性剤にも見られるかどうかを確認した。(表4)
比較例7〜15に見られるように、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤を用いた場合には、4級アンモニウム塩を添加しても泡減少効果は認められず、すすぎ促進効果は観察されなかった。即ち、ベタイン型両性界面活性剤に4級アンモニウム塩を配合した場合のみ泡減少効果が認められ、すすぎ改善効果を確認できた。
【0027】
【表4】

【0028】
<試験5>
表5に示す実施例及び比較例につき、すすぎ性試験(泡残量)、すすぎ性実用試験、トリガースプレーでスプレーした時の泡立ち、モデル石鹸カス汚れに対する洗浄力を試験した。実施例20〜23と比較例16〜18の結果から、本実施例で採用したすすぎ性試験(泡残量)の評価とすすぎ性実用試験との間で相関性が認められ、4級アンモニウム塩の配合効果が明らかとなった。更に、4級アンモニウム塩とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとの相乗効果も確認された。すすぎ性実用試験において4級アンモニウム塩を配合した実施例20,22はそれを配合していない比較例16〜18よりもすすぎ時間が約20%短縮され、更に、4級アンモニウム塩とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを配合した実施例21,23では約30%短縮されることが明らかになった。また、実施例20〜23は、スプレーした時の泡立ちが良くて使用感もあり、洗浄力も良好であることを確認した。
【0029】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤は、広範な洗浄用途を目的として利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4級アンモニウム塩を含む化合物であることを特徴とする、ベタイン型両性界面活性剤を含有し石鹸を含まない硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
【請求項2】
前記4級アンモニウム塩を含む化合物が、ジェミニ型4級アンモニウム塩及び/又は4級アンモニウムを含むカチオンポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
【請求項3】
前記ベタイン型両性界面活性剤が、アルキルカルボベタイン及び/又はアルキルアミドカルボベタインであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
【請求項4】
前記4級アンモニウム塩を含む化合物の前記ベタイン型両性界面活性剤に対する配合比率が、1/10〜1/800であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。
【請求項5】
前記硬質表面用洗浄剤が、更にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤のすすぎ促進剤。

【公開番号】特開2013−23642(P2013−23642A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161649(P2011−161649)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】