説明

硬質表面用洗浄剤組成物

【課題】泡質が良く、拭き取り性に優れた、4級アンモニウム塩を含有する硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄方法を提供する。
【解決手段】(a)アミンオキシド型界面活性剤を0.01〜3質量%、(b)4級アンモニウム塩、(c)炭素数が2〜6のアルカノールアミン、(d)アルキル基の炭素数が1〜3、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、(e)炭素数が1〜3のアルカノール、(f)アルキル(炭素数8〜16)又はアルケニル(炭素数8〜16)グリコシド型界面活性剤、及び水を含有し、(f)/(a)の質量比が0.01〜0.3である硬質表面用洗浄剤組成物を、泡吐出機構を有するトリガースプレーヤーを用いて泡状で硬質表面に噴霧し、付着した泡を拭き取って、硬質表面を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用洗浄剤組成物及び硬質表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活場面では様々な場所で汚れが発生する。それらの汚れを除去するために各種の洗浄剤が開発され、その洗浄力を強化すべく検討がなされてきた。これら努力により、頑固な汚れを落とすための手段が多く提案されている。一般に洗浄剤は、浴室、台所、床等の処理対象の異なる汚れを除去するため、それぞれに適した組成のものが用いられている。例えば、レンジ、オーブン、レンジまわりの壁や床、換気扇といった台所まわりに用いられる台所まわり用洗浄剤としては、熱、日光、空気中の酸素等の作用により変質した油汚れを除去するため、界面活性剤、溶剤及びアルカリ剤等を含む洗浄剤が用いられている。また、浴槽、浴室の壁及び床といった浴室に用いられる浴室用洗浄剤としては、金属石鹸、特に脂肪酸のカルシウム塩の汚れを除去するため、界面活性剤、溶剤、金属イオン封鎖剤等を含む洗浄剤が用いられている。かかる洗浄剤は、高い洗浄性能を発揮するためpH10以上のアルカリ性に調整される場合が多い。更に、台所や食卓等で用いられる洗浄剤には、硬質表面に殺菌効果を付与できるものが望ましい場合もある。
【0003】
特許文献1には、汚れが付着し難く、また付着した汚れを容易に洗浄でき、且つ良好な仕上がり性を付与することのできる硬質表面用洗浄剤組成物として、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤と、4級アンモニウム基又は3級アミノ基を有するモノマー単位を含む重合体とを特定の重量比で含有する硬質表面用洗浄剤組成物が記載されている。特許文献1には、前記重合体とともに、アミンオキシド型界面活性剤、4級アンモニウム型界面活性剤、アルカノールアミン、グリコール系溶剤、アルキルグリコシド型界面活性剤、エタノールを含有する組成物が開示されている(表1、本発明品6)。
【0004】
また、特許文献2には、硬質表面に対する洗浄力、拭き取り性、拭き残り低減性に優れた洗浄剤組成物として、特定のアルケニルコハク酸又はその塩、水溶性有機溶剤、アミン化合物、及び水を特定条件で含有する硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。
【0005】
一方、硬質表面の洗浄では洗浄剤を、トリガー式スプレーヤー等を用いて対象物に泡状に噴霧して用いることが行われている。特許文献1、2にも、それぞれの組成物を起泡させて硬質表面に適用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−146395号公報
【特許文献2】特開2008−044993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、良好な仕上がり性を付与できるとされているが、これは水によるすすぎを前提としたものであり、台所や食卓等の硬質表面に適用した後に、織布や不織布などで拭き取るような使用形態での拭き取り性については具体的な効果は示されていない。特許文献2は、拭き取り性に優れたものであるが、硬質表面に殺菌効果を付与できる組成で、優れた拭き取り性が得られる組成については示唆がない。更に、拭き取り洗浄で洗浄剤を泡状で硬質表面に適用する場合には、拭き取りやすい泡質であることが望まれるが特許文献2にはこの点についての示唆がない。
【0008】
また、殺菌効果を得るためには、殺菌剤を配合した組成物を殺菌したい箇所に直接接種して、一定時間作用させる必要がある。殺菌したい部分を覆うように、直接接種すると液または泡の量は多くなり、よりレベルの高い拭き取り性が必要になる。すなわち、硬質表面への殺菌効果の付与を目的として殺菌剤を配合した硬質表面用の洗浄剤組成物では、タオルなどでの拭き取る際に過剰な液があった場合にも、拭き取り操作の物理力での泡立ちが抑制され、速やかに泡が消えて拭き取りやすいことが求められるが、特許文献2にはこの点についての記載もない。
【0009】
本発明の課題は、4級アンモニウム塩を含有し、泡質が良く、拭き取り性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)アミンオキシド型界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を0.01〜3質量%、(b)4級アンモニウム塩〔以下、(b)成分という〕、(c)炭素数が2〜6のアルカノールアミン〔以下、(c)成分という〕、(d)アルキル基の炭素数が1〜3、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコールモノアルキルエーテル〔以下、(d)成分という〕、(e)炭素数が1〜3のアルカノール〔以下、(e)成分という〕、(f)アルキル(炭素数8〜16)又はアルケニル(炭素数8〜16)グリコシド型界面活性剤〔以下、(f)成分という〕、及び水を含有し、(f)/(a)の質量比が0.01〜0.3である硬質表面用洗浄剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、泡吐出機構を有するトリガースプレーヤーを用いて泡状で硬質表面に噴霧し、付着した泡を拭き取る硬質表面の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、4級アンモニウム塩を含有し、泡質が良く、拭き取り性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<(a)成分>
本発明で用いるアミンオキシド型界面活性剤は、泡立ちの観点から、アミド基で分断されても良い炭素数8〜22の炭化水素基を1つ有するアミンオキシドが挙げられ、具体的には下記一般式(1)の化合物が好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、R1はアミド基で分断されても良い炭素数8〜22の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニルを示し、R2及びR3はそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0016】
一般式(1)においてR1は炭素数8〜14のアルキル基、又は炭素数8〜14のアルカノイルアミノプロピル基が好ましく、特に炭素数10〜14のアルキル基が好ましく、R2、R3はメチル基が好ましい。
【0017】
より具体的には、N−デシル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−ミリスチル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−カプロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−ミリスチロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシドを挙げることができる、特にN−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−ミリスチル−N,N−ジメチルアミンオキシドが起泡性の点から好ましい。
【0018】
<(b)成分>
本発明で用いる4級アンモニウム塩は、低濃度でも十分な殺菌性能を発現するという観点から、ジアルキル(炭素数8〜22)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数8〜22)ジメチルベンジルアンモニウム塩、及びアルキル基の炭素数が8〜22のアルキルピリジニウム塩から選ばれる4級アンモニウム塩が好適に用いられる。塩としてはクロル塩、ブロモ塩、硫酸塩、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステル塩、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していても良いベンゼンスルホン酸塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩が好適である。より具体的には、アルキル(炭素数8〜14)ジメチルベンジルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0019】
<(c)成分>
本発明で用いる炭素数が2〜6のアルカノールアミンとしては、皮脂汚れなどの洗浄性能に寄与の大きいアルカリ領域でのpH緩衝能をもつ点、仕上がり性がよい点、及びにおいが悪くない点などから、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられ、モノエタノールアミン及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールから選ばれるアルカノールアミンが好適である。
【0020】
<(d)成分>
本発明で用いるアルキル基の炭素数が1〜3、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、皮脂汚れなどの洗浄力と高揮発性による仕上がり性良好な点、及びにおいが悪くないという点からアルキル基の炭素数が1〜3のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、アルキル基の炭素数が1〜3のエチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。プロピレングリコールモノメチルエーテルが用いられる場合、1−メトキシ−2−プロパノール及び異性体である2−メトキシ−1−プロパノールのいずれでもよく両者の混合物を用いてもよい。脱臭処理を加えたものを用いてもよい。
【0021】
<(e)成分>
本発明で用いる炭素数が1〜3のアルカノールとしては、皮脂汚れなどの洗浄力と高揮発性による仕上がり性良好な点、及びにおいが悪くないという点からエタノール、イソプロピルアルコールが挙げられるが、エタノールが好ましい。エタノールが用いる場合、メタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサンなどで変性された工業用アルコールを用いてもよく、日本薬局方で指定されている純度99.5%以上の無水エタノール、水を4〜5%含有する純度70から90%の消毒用エタノールなどを用いることができる。
【0022】
<(f)成分>
本発明で用いるアルキル(炭素数8〜16)又はアルケニル(炭素数8〜16)グリコシド型界面活性剤は泡立ちを阻害せずに拭き取り性を向上させるという観点から、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜16、好ましくは10〜14であり、糖の平均縮合度が1〜2、好ましくは1.1〜1.8の化合物であり、具体的には下記一般式(2)で表される化合物が好適である。
4(OR5xy (2)
〔式中、R4は炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基、好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R5は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Gは炭素数5〜6の還元糖に由来する残基を示し、xはその平均値が0〜5となる数を示し、yはその平均値が1〜2となる数を示す。〕
【0023】
上記一般式(2)において、R4で表されるアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基としては、洗浄力と拭き取り性向上の点から特に炭素数10〜16のものが好ましい。またR5で示されるアルキレン基としては、溶解性の点から、特に炭素数2のものが好ましい。また、Gで示される炭素数5〜6の還元糖に由来する残基は、使用される単糖類もしくは2糖類以上の糖によってその構造が決定される。Gで示される残基の原料としては、単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち好ましい原料は、それらの入手性及び低コストの点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。
【0024】
また、上記一般式(2)の中のxは、その平均値が0〜5、好ましくは0〜2、より好ましくは0〜1、特に好ましくは0である。このxの値により(f)成分の水溶性及び結晶性を調節することができる。すなわち、xが大きい値となるほど(f)成分の水溶性が高くなりかつ結晶性が低くなる傾向にある。
【0025】
また一般式(2)の中のyの平均値が1より大きい場合、つまり(f)成分が2つ以上の糖鎖を親水性基とする場合、糖鎖の結合様式が1−2、1−3、1−4,1−6結合又はα−、β−ピラノシド結合もしくはフラノシド結合及びこれらの混合された結合様式である任意の混合物を含むことが可能である。
【0026】
上記の一般式(2)の中のyは、その平均値が1〜2、好ましくは1.1〜1.8、特に好ましくは1.2〜1.6である。このyの値(糖縮合度)は1H−NMRにより測定できる。具体的な測定方法としては、特開平8−53696号広報第6頁第10欄26行目〜7頁第11欄15行目を参照できる。
【0027】
<硬質表面用洗浄剤組成物>
本発明では(a)成分のアミンオキシド型界面活性剤の含有量は、洗浄剤組成物中に0.01〜3質量%であり、0.03〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましく、0.1〜0.2質量%が更に好ましい。洗浄力の確保、起泡性の確保の点から0.01質量%以上であり、拭き取り時の泡消え性及び拭き取りやすさの点から3質量%以下である。
【0028】
本発明では(b)成分の4級アンモニウム塩の含有量は、洗浄剤組成物中に0.001〜1質量%が好ましく、0.002〜0.1質量%がより好ましく、0.005〜0.01質量%が更に好ましい。殺菌・抗菌性能確保の点から0.001質量%以上が好ましく、仕上がりのよさ、泡性能への影響の点から1質量%以下が好ましい。
【0029】
本発明では(c)成分の炭素数が2〜6のアルカノールアミンの含有量は、洗浄剤組成物中に0.05〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。洗浄性能確保の点から0.05質量%以上が好ましく、基剤臭の点から2質量%以下が好ましい。
【0030】
本発明では(d)成分のアルキル基の炭素数が1〜3、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコールモノアルキルエーテルの含有量は、洗浄剤組成物中に0.5〜3質量%が好ましく、0.8〜2.5質量%がより好ましく、1〜2質量%が更に好ましい。洗浄性能、泡消え性及び拭き取り性向上確保の点から0.5質量%以上が好ましく、基剤臭の点から3質量%以下が好ましい。
【0031】
本発明では(e)成分の炭素数が1〜3のアルカノールの含有量は、洗浄剤組成物中に0.5〜4質量%が好ましく、0.8〜3.5質量%がより好ましく、2〜3質量%が更に好ましい。洗浄性能、泡消え性及び拭き取り性向上確保の点から0.5質量%以上が好ましく、引火点、及び基剤臭の点から4質量%以下が好ましい。並存する界面活性剤やその他香料などの低引火点成分による若干のずれはあるが、本発明における洗浄剤組成物の引火点は(e)成分である炭素数が1〜3のアルカノール量でほぼ決まり、(e)成分がエタノールの場合、エタノールが3質量%以下であれば引火点はほぼ70℃以上であり、通常の使用、特に火を用いる台所周りの使用においても引火の可能性は低く、安全に使用できるものと考えられる。本発明の洗浄剤組成物の引火点は70℃以上、更に80℃以上が好ましい。ここで、洗浄剤組成物の引火点とはJIS K2251−1で規定されるタグ密閉法での値を指し、たとえばタグ密閉式自動引火点試験器ATG−7型(田中科学機器製作(株)製)などで測定できる。
【0032】
また(d)成分と(e)成分の質量比は、洗浄性能の点から、(d)/(e)=0.5〜2、更に0.8〜1.5が好ましい。
【0033】
本発明では(f)成分のアルキル(炭素数8〜16)又はアルケニル(炭素数8〜16)グリコシド型界面活性剤の含有量は、泡質改善、拭き取り性向上、及び仕上がり性の良さの点から、洗浄剤組成物中に0.001〜1質量%が好ましく、0.002〜0.1質量%がより好ましく、0.004〜0.05質量%がさらに好ましい。
【0034】
また、本発明では、(f)/(a)の質量比は0.01〜0.3であり、0.02〜0.25が好ましく、0.025〜0.1がより好ましく、0.025〜0.05が更に好ましい。泡消え性、拭き取り性向上、及び仕上がり性の良さの点から0.01以上であり、起泡性と泡質のバランスを考慮すると0.3以下である。
【0035】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解/分散/乳化させた形態、すなわち液体組成物であることが好ましく、洗浄剤組成物に用いる水は脱イオン水や蒸留水、あるいは次亜塩素酸を0.5〜10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。
【0036】
また本発明の洗浄剤組成物には、上記成分の他、更に必要に応じて、(a)成分及び(f)成分以外の非イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を添加することができる。(a)成分及び(f)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、蔗糖脂肪酸エステル類、脂肪酸グリセリンエステル類、高級脂肪酸アルカノールアミド類又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば炭素数8〜22の炭化水素基を有するスルホベタイン及びカルボベタイン等が挙げられる。なお、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(b)成分の殺菌性能を阻止しないという観点から陰イオン界面活性剤の含有量は少ない方が好ましく、組成物中、0.005質量%以下、更に0.0001質量%以下が好ましく、より好ましくは陰イオン界面活性剤を実質的に含有しないことである。
【0037】
また本発明の洗浄剤組成物には、上記成分の他、更に必要に応じて、パラトルエンスルホン酸などのハイドロトロープ剤、クエン酸やEDTAなどのキレート剤、香料、染料、顔料、防腐剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0038】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の20℃におけるpHは、好ましくは9〜12、より好ましくは10〜11.5である。pH調整剤としては、酸剤として硫酸、塩酸、リン酸などが挙げられるが、クエン酸、りんご酸、コハク酸などの有機酸を用いてもよい。またアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物や炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられるが、拭き取り性の観点から、(c)成分の炭素数が2〜6のアルカノールアミンをアルカリ剤として使用することが好ましい。洗浄性能の点からpHは9以上が好ましく、より好ましくは、10以上である。
【0039】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の粘度は、特にスプレー用途に供される場合、1〜10mPa・sが好ましい。この粘度はB型粘度計(TOKIMEC社製)を用い、ローターNo.1、20℃の条件で60rpm、1分間攪拌後の粘度を測定したものである。
【0040】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、泡吐出機構を有するトリガースプレーヤー容器に充填してなるスプレー式洗浄剤物品として用いることが好適である。スプレー容器としては、泡形成機構を有するエアゾールやトリガー式スプレーヤーを具備する容器が挙げられる。本発明ではトリガー式スプレーヤーを具備した容器に充填することが好ましい。トリガー式スプレーヤーとしては実公平6−34858号公報、特公昭63−2668号公報に記載のものを用いることができる。本発明では特に(i)泡形成機構を有し、(ii)吐出口の吐出面積が0.3〜0.7mm2であり、(iii)1回のストロークで0.3〜2.0gの液体洗浄剤組成物を吐出するトリガー式スプレーヤーが好適である。
【0041】
泡形成機構としては、好ましくはスピンエレメント及び直径4〜8mmの円形状の空間部分にじゃま板を数個設置された液体通過板を有するものが好適である。ここでスピンエレメントとは、スピンエレメントを通じて液状物の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出する機構であり、その詳細な構造としては特開平8−332422号公報や特開平8−108102号公報の図4(b)、特開2002−68265号公報の図1などを参考にすることができる。
【0042】
泡形成機構のもう一つの部材である液体通過板は、直径5〜7mmの円形状の空間部分にじゃま板を好ましくは3〜8個設置されたものであり、通過する板を平面で見た場合に、好ましくは幅0.8〜1.2mm、長さ2〜4mmの長方形状のじゃま板が好適である。また、じゃま板を除いた空間部分に対するじゃま板の占める面積は30〜90面積%、好ましくは40〜80面積%、より好ましくは40〜70面積%が好適であり、このような液体通過板を設置することで、垂直表面への泡の付着滞留性が良好になる。
【0043】
本発明に用いるスプレー容器入り洗浄剤の容器は、一般に使用されている容器を用いることができる。例えば、ポリエチレンを原料として得られるものであり、ブロー成型などによって製造することができる。容器の肉厚は底面と側面と異なってもよく、0.05〜2.0mmである。容器を不透明化することによって、内容物の安定性が高まるが、不透明化のために容器に酸化チタン等を含有するものが用いられる。容器に充填される液体洗浄剤組成物の量は、取り扱い上、200〜700mlが望ましい。また液の充填は、常識的な空隙を残して行われる。
【0044】
本発明の本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、スプレー容器入り洗浄剤として、前記トリガースプレーヤーを用いて硬質表面である住居製品や窓ガラスなどの垂直表面あるいは傾斜した表面に泡状に付着させるのに優れている。よって、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、泡吐出機構を有するトリガースプレーヤーを用いて泡状で硬質表面に噴霧し、5秒〜5分程度放置した上で、付着した泡を拭き取る硬質表面の洗浄方法が提供される。付着後の泡の拭き取りには、布巾、タオルなどの布や不織布、ティッシュペーパーやキッチンペーパーなどの紙製品を用いることが好適である。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、居間、部屋、台所、浴室、トイレといった居住まわり等の硬質表面(各種物品、床、壁も含む)等の軽い洗浄に用いられる。この場合、本発明の組成物は、泡立ち、軽い拭き取り操作できれいに拭き取れ、跡残りが無く、乾燥も早いため、別途水拭きや二度拭き(清め拭き)する必要がない。
【実施例】
【0045】
下記表1及び表2に示す配合組成により組成物を調製した。なお、表中の成分濃度は有効成分の質量%を示す。pH調整にはクエン酸を用いた。得られた各組成物について下記の評価方法により泡質、拭き取り性、殺菌性能、及び洗浄性能について評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0046】
<泡質>
泡の硬さ・やわらかさ(流動性)を評価する方法として下記の方法を用いた。黒のアクリル板を水平面から30度の傾斜で固定し、下端から30cmの位置に、板と垂直の方向で10cm離れたところからトリガースプレーヤーで組成物を1回スプレーした。泡が付着してから流れ落ちて下端に到達するまでの時間(秒)を計測した。トリガーは市販の「かんたんマイペット」(花王(株)製)のトリガーを水で十分洗浄・乾燥させ、ノズル先端のツマミは下ろした状態(狭い泡)で用いた。
【0047】
なお、この時間(秒)が長いほど硬くて拭き取りにくい泡、時間(秒)が短いほど軟らかくて拭き取りやすい泡、であることを示す。30秒以内であることが好ましい。ただし10秒未満といった短すぎる場合は泡質が軟らかすぎて付着性の点から好ましくない。台所まわりや食卓での使用を考えた場合、この時間は15〜30秒が好ましい。
【0048】
<拭き取り性>
学振型摩擦堅牢度試験機AB-301(テスター産業(株)製)の可動台上に黒のアクリル板を水平に固定し、摩擦子(アクリル板との接触部分40mm×40mm)に乾いたタオルを取り付け1kgの荷重がかかるように設定して、アクリル板上の摩擦子がかかる位置にトリガースプレーヤーで組成物を1回スプレーし、可動台を動かして(振幅45mm、速度60往復/分)、摩擦子があたる部分の泡が消えるまでの往復回数を計測した。トリガーは泡質評価と同じく、市販の「かんたんマイペット」(花王(株)製)のトリガーを水で十分洗浄・乾燥させ、ノズル先端のツマミは下ろした状態(狭い泡)で用いた。
【0049】
なお、この回数が多いほど拭き取りにくく、回数が少ないほど拭き取りやすいことを示す。10回以内であることが好ましい。
【0050】
<殺菌性能>
大腸菌(菌株NBRC3972)をニュートリエント寒天培地(Difco社製のNutrient Agar試薬を能書どおりに調製)上で37℃/24時間培養を2回繰り返したものをかきとり、1/2ニュートリエント液体培地(Difco社製、Nuturient Broth試薬を能書の1/2濃度で調製したもの)に懸濁・分散させて、1/2ニュートリエント液体培地を用いて菌濃度を2.5〜13×108cfu/mLに調製し、3質量%ウシ血清アルブミン水溶液と等容量混合して試験菌液とした。内径75mmのガラスシャーレに、直径20mm、厚さ1mm、表面グレード2Bのステンレス鋼製円板を滅菌したものを置き、円板表面に上記の試験菌液10μLをピペットマンで接種し塗り広げた。25±1℃の条件でガラスシャーレのふたをして放置し、菌液の乾燥を確認した後に、速やかに組成物を接種した。ガラスシャーレのふたをして5分静置し、組成物接種から5分後に、接種した組成物が流れ落ちないように注意しながら10mLのLP希釈液(日水製薬社製のものを能書通りに調製したもの)に投入し、組成物の殺菌性能を不活性化して、LP希釈液中の菌濃度を混釈培養法でカウントした。組成物の代わりに0.05%Tween80水溶液を用いて同じ操作を行ったものを対照操作として、LP希釈液中の対照操作との菌数の対数差を計算し殺菌性能の指標とした。
【0051】
なお、この数値が大きい方が殺菌性能が高いことを示し、2.0以上であることが好ましい。
【0052】
<洗浄性能>
皮脂汚れに含まれる脂肪酸の代表としてラウリン酸をポリプロピレン板に塗布したものをモデル汚れとして用いた。ラウリン酸を加温溶解させて0.5質量%のスダンIIIを添加して色づけを行ったものに、2cm×7cm×1mmのポリプロピレン板を一部ディップして引き上げ均一に汚れづけしたものを室温で冷ましたものをモデル汚れとした。一定量(50g)の組成物を50mlのビーカーに取り分け、モデル汚れが付着したポリプロピレン板を、汚れが付着した部分がすべて浸かるように浸漬させた。室温で30分間静置した後に板を静かに引き上げ、別の50mlビーカー用意した溶解液(ソフタノール70H(日本触媒(株)製)5質量%添加エタノール溶液)に浸漬し、更に超音波を15分印加して板に残留した汚れを完全に溶解させた。モデル汚れを30分浸漬させた組成物にもソフタノール70H(日本触媒(株)製)を5質量%添加し、よく攪拌した。組成物へのラウリン酸溶解量と板に残留したラウリン酸量を、分光光度計(日立UV−3300)で500nmのピーク(スダンIIIの吸収極大付近)に注目して定量し、以下の式により洗浄率を算出した。
洗浄率(%)=100×(組成物への溶解量)/(組成物への溶解量+板への残留量)
【0053】
なお、この数値は大きい方が洗浄性能が高いことを示し、60%以上が好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1より、(a)成分と(f)成分の質量比が(f)/(a)=0.01〜0.3を満たす実施例1〜3は、泡質が軟らかく拭き取り性もよいことがわかる。
【0057】
(f)/(a)の値が0.01未満の比較例1及び2は、泡質改善効果及び拭き取り性改善効果が不十分であり、(f)/(a)の値が0.3を超える比較例3では、泡が軟らかすぎて好ましくないだけでなく、(f)成分が多すぎるためか、拭き取り性は期待されるほど改善しないことがわかる。
【0058】
また、表2中、比較例4は特許文献1(特開2002−146395号)の表1の「本発明品6」から「重合体1」を除いたものにほぼ相当する組成であるが、(f)/(a)の値が0.3を超えているため、拭き取り性及び洗浄性能が低い。また、表2中、比較例5は特許文献2(特開2008−44993号)の表1の「本発明品1」に相当する組成であるが、アルケニルコハク酸ジカリウム系に(f)成分を添加しても、本発明のような泡質改善効果及び拭き取り性改善効果は得られないことがわかる。また、溶剤の比率(d)/(e)が適当でないため洗浄性能は実施例に比べてやや劣る結果となっている。比較例5に(b)成分を添加した比較例6では、泡質改善効果及び拭き取り性改善効果が得られない上に、アニオン成分と(b)成分が静電相互作用するため、期待される殺菌性能は得られないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミンオキシド型界面活性剤を0.01〜3質量%、(b)4級アンモニウム塩、(c)炭素数が2〜6のアルカノールアミン、(d)アルキル基の炭素数が1〜3、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、(e)炭素数が1〜3のアルカノール、(f)アルキル(炭素数8〜16)又はアルケニル(炭素数8〜16)グリコシド型界面活性剤、及び水を含有し、(f)/(a)の質量比が0.01〜0.3である硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)が下記一般式(1)の化合物である請求項1に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【化1】


〔式中、R1はアミド基で分断されても良い炭素数8〜22の炭化水素基を示し、R2及びR3はそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。〕
【請求項3】
(b)がジアルキル(炭素数8〜22)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数8〜22)ジメチルベンジルアンモニウム塩、及びアルキル基の炭素数が8〜22のアルキルピリジニウム塩から選ばれる4級アンモニウム塩である請求項1又は2に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(c)がモノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンから選ばれるアルカノールアミンである請求項1〜3のいずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(d)がプロピレングリコールモノメチルエーテルである請求項1〜4のいずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項6】
(e)がエタノールである請求項1〜5のいずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物を、泡吐出機構を有するトリガースプレーヤーを用いて泡状で硬質表面に噴霧し、付着した泡を拭き取る硬質表面の洗浄方法。

【公開番号】特開2012−121959(P2012−121959A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272467(P2010−272467)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】