磁力式金属片搬送装置
【課題】 収容された金属部品のブリッジ現象を確実に防止できるとともに、小型に形成でき、金属部品搬送以外の目的にも使用可能な磁力式金属片搬送装置を提供すること。
【解決手段】 磁力式で金属片を搬送する搬送装置であって、搬送面下部には、上側に開口部を有し、下方に向けて湾曲する円弧状の底面を有する収容部が取り付けられ、搬送面には、磁石板が下方に移動する側の搬送面半面を横切るとともに下方に傾斜して取付けられる排出ガイド部が取り付けられ、収容部の底面と搬送面との接続部の輪郭の曲率中心が、ディスクのうち下方に配されるディスクの回転軸と略同心であることを特徴とする搬送装置である。
【解決手段】 磁力式で金属片を搬送する搬送装置であって、搬送面下部には、上側に開口部を有し、下方に向けて湾曲する円弧状の底面を有する収容部が取り付けられ、搬送面には、磁石板が下方に移動する側の搬送面半面を横切るとともに下方に傾斜して取付けられる排出ガイド部が取り付けられ、収容部の底面と搬送面との接続部の輪郭の曲率中心が、ディスクのうち下方に配されるディスクの回転軸と略同心であることを特徴とする搬送装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、金属片同士が引っかかり或いは絡み合って生ずるブリッジ現象を容易に解消可能であって、小型に形成可能な磁力式金属片搬送装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
磁力式金属片運搬装置は、特に、ボルト、ナット或いはビスなどの小さな組立用部品を所定量ずつ搬送するために用いられる。これら、組立用小部品は、磁力式金属片搬送装置に備えられた収容部内に収容され、磁力式金属片搬送装置の搬送面に沿って所定量ずつ所定場所へ搬送される。
【０００３】
特許文献１は、このような磁力式金属片搬送装置の一例を開示する。また、図６は、特許文献１に開示される磁力式金属片搬送装置を示す。
特許文献１の磁力式金属片搬送装置（Ｄ）は、上下一対に配されるスプロケット（Ｓ）と、一対のスプロケット（Ｓ）同士を接続するチェーン環（Ｃ）を備える。チェーン環（Ｃ）には複数の磁石板（Ｍ）が所定間隔をおいて取り付けられている。
金属片が搬送される搬送面（Ｆ）は、スプロケット（Ｓ）の回転軸に対して平行に配され、搬送面（Ｆ）の背面側に磁石板（Ｍ）が吸着するとともに搬送面（Ｆ）を介して金属部品を吸引し、上方へと搬送する。
搬送面（Ｆ）下部には、金属部品が収容される収容部（Ａ）が配される。
【０００４】
上記構造の搬送装置（Ｄ）によれば、金属部品は収容部（Ａ）内の一定箇所から取り出されることとなる。このような一定箇所の取り出しは、ブリッジ現象（収容部（Ａ）内部に配された部品同士が引っかかり或いは絡み合う現象）を生じやすくする。
このようなブリッジ現象の発生を防止するため、特許文献１に開示される搬送装置（Ｄ）は収容部（Ａ）を振動させる振動装置（Ｖ）を備えている。
【０００５】
【特許文献１】特開２００３−２７６８４６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
特許文献１に開示されるような搬送装置（Ｄ）は、ブリッジ現象発生防止のため、振動装置（Ｖ）を別個に設ける必要がある。そして、ブリッジ現象発生防止機能を確実に発揮させようとするためには、振動装置（Ｖ）で常に収容部（Ａ）を振動させる必要がある。振動装置（Ｖ）からの振動は、搬送面（Ｆ）にも伝達されるため、搬送中の部品が振動によって、落下する問題を招来することとなる。
加えて、振動装置（Ｖ）からの振動は、搬送装置（Ｄ）の機械的騒音を生じさせることとなる。
更には、装置の大型化を招き、金属部品を搬送する目的以外で、搬送装置（Ｄ）を使用することは困難である。
【０００７】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、収容された金属部品のブリッジ現象を確実に防止できるとともに、小型に形成でき、金属部品搬送以外の目的にも使用可能な磁力式金属片搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１記載の発明は、上下一対に配される駆動ディスクと、該一対の駆動ディスクを接続する環状帯体と、前記一対の駆動ディスクのうち一方に接続するモータと、該環状帯体に取付けられる磁石板からなる駆動機構と、前記駆動ディスクの回転軸に対して直角に配される搬送面を備えるとともに前記駆動機構を収容するケーシングからなる磁力式金属片搬送装置であって、前記搬送面下部には、上側に開口部を有し、下方に向けて湾曲する円弧状の底面を有する金属片収容部が取り付けられ、前記搬送面には、前記磁石板が下方に移動する側の前記搬送面半面を横切るとともに下方に傾斜して取付けられる金属片排出ガイド部が取り付けられ、前記金属片収容部の底面と前記搬送面との接続部の輪郭の曲率中心が、前記駆動ディスクのうち下方に配される駆動ディスクの回転軸と略同心であることを特徴とする磁力式金属片搬送装置である。
請求項２記載の発明は、前記金属片収容部が、金属切削加工装置から排出される切削屑を受け止めるように配されることを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置である。
請求項３記載の発明は、前記搬送面と対向する側の前記ケーシングの面には支持軸が取り付けられ、該支持軸が、前記金属片排出ガイド部の下方への傾斜を増加させるように、前記ケーシングを回転可能に支持することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置である。
請求項４記載の発明は、前記金属片収容部が、機械油とともに金属の切削屑を収容する容器と管路を介して接続することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置である。
【発明の効果】
【０００９】
請求項１記載の発明によれば、磁石板の移動軌跡の曲率中心と収容部底面と搬送面の接続部輪郭の曲率中心が略同心であるので、磁石板の移動に伴って、収容部内で撹拌作用が生じ、好適にブリッジ現象を防止可能となる。更に、収容部底面が円弧状に湾曲しているので、収容部内部で金属片が好適に移動可能となり、撹拌作用を促進させることが可能である。したがって、確実にブリッジ現象の発生を防止することが可能となり、好適な金属片搬送を行うことができる。
また、ブリッジ現象の発生を防止するための追加の設備を備える必要がないため、装置を小型化することができる。
請求項２記載の発明によれば、上述の如く、装置を小型化できるため、例えば、フライス盤或いはボール盤等の金属切削加工装置から発生する切削屑を直接受け止めることが可能となり、金属部品のみならず、切削屑の搬送にも好適に使用可能となる。
請求項３記載の発明によれば、ケーシングを所望に応じて傾斜させることができ、ブリッジ現象抑止効果を一層高めることができる。
請求項４記載の発明によれば、離れた場所に配されるフライス盤或いはボール盤等の金属切削加工装置から排出される金属屑を好適に搬送可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本発明に係る磁力式金属片搬送装置の実施形態について、図を参照しつつ説明する。図１は、磁力式金属片搬送装置の概略構成を示す正面図である。図２は、図１に示す磁力式金属片搬送装置の側面図である。
磁力式金属片搬送装置（１）は、略直方体形状に形成されたケーシング（２）とケーシング（２）内部に配された駆動機構（３）を備える。
【００１１】
ケーシング（２）の正面側に現れる面は、搬送面（２１）とされる。搬送面（２１）は地面に対して直角上方に延び、平滑な面を有している。搬送面（２１）下部には、金属片収容部（４）が取り付けられ、金属片収容部（４）は正面側に向けて搬送面（２１）から突出している。
金属片収容部（４）は下方に向けて湾曲する底部（４１）と、底部（４１）両端から上方に突出する側部（４２）から構成される。側部（４２）は、ケーシング（２）側面部に固定される。底部（４１）は、正面側端縁から搬送面（２１）の接続縁に向けて、下方へ傾斜している。
このように形成された金属片収容部（４）は、上側及び正面側に開口し、この開口部分からボルト、ナット、ビスといった金属製小部品或いは切削機械から排出される金属屑が供給される。そして、これら金属製小部品や金属屑といった金属片は金属片収容部（４）に収容される。
【００１２】
搬送面（２１）上部には金属片排出ガイド部（５）が取り付けられている。図１に示す如く、金属片排出ガイド部（５）は、搬送面（２１）右半面を横切るとともに下方に向けて傾斜し、ケーシング（２）右側面から右方へ突出する。また、図２に示す如く、金属片排出ガイド部（５）は断面略Ｕ字形状に形成され、金属片排出ガイド部（５）の奥側側壁はケーシング（２）の右側面部と接続し、固定される。
【００１３】
駆動機構（３）は、ケーシング（２）内部において、上下一対に配される円板状の駆動ディスク（３１）と、一対の駆動ディスク（３１）同士を接続する環状帯体（３２）からなる。
駆動ディスク（３１）が、スプロケットである場合には、環状帯体（３２）にはチェーンが用いられ、駆動ディスク（３１）が、Ｖ型プーリである場合には、環状帯体（３２）にはＶ型ベルトが用いられ、駆動ディスク（３１）が、タイミングプーリである場合には、環状帯体（３２）にはタイミングベルトが使用可能である。尚、本発明はこれに限られるものではなく、これらに類する組み合わせも駆動ディスク（３１）及び環状帯体（３２）に包含される。
環状帯体（３２）には、複数の正面視矩形に形成されるとともに平板状に形成された磁石板（３３）が取付けられ、磁石板（３３）はそれぞれ所定間隔をおいて配される。
【００１４】
駆動ディスク（３１）は、ケーシング（２）背面側の面に回転可能に取付けられる。一対の駆動ディスク（３１）のうち上側に配される駆動ディスク（３１）はケーシング（２）背面側に取付けられるモータ（６）と接続し、モータ（６）からの駆動力が伝達される。また、これら駆動ディスク（３１）の回転軸は、搬送面（２１）に対して直角である。
図１に示す如く、駆動ディスク（３１）の回転軸が、金属片収容部（４）と搬送面（２１）との半円弧状の接続部輪郭の曲率中心と略同心となるように、下側に配される駆動ディスク（３１）が配される。
【００１５】
ケーシング（２）の下方には基台部（７）が配設され、ケーシング（２）の背面側には、基台部（７）上面から上方に立設する支柱（７１）が配される。ケーシング（２）の背面は支持軸（７２）を介して支柱（７１）と接続し、支持軸（７２）はケーシング（２）を回転可能に支持する。
【００１６】
モータ（６）は、上側の駆動ディスク（３１）を正面から見て時計回りに回転させる。これにより、搬送面（２１）右半面側に位置する磁石板（３３）は下方に向けて移動する。そして、搬送面（２１）左半面側に位置する磁石板（３３）は搬送面（２１）を吸着しつつ上方に向けて移動する。
金属片収容部（４）内に配された金属片は、上方へ向けて移動する磁石板（３３）に吸引されて、搬送面（２１）上を摺動して上方へ移動する。そして、上側の駆動ディスク（３１）によって、磁石板（３３）の位置が搬送面（２１）左半面から右半面に移り、磁石の移動方向が反転されると、磁石板（３３）に吸引された金属片の移動方向も反転する。そして、金属片は搬送面（２１）右半面上を摺動し、下方へ移動する。
金属片が、金属片排出ガイド部（５）底面に衝突すると、金属片排出ガイド部（５）底面は、金属片の下方への移動を妨げ、金属片は磁石板（３３）の吸引から解除される。金属片排出ガイド部（５）は、下方に向けて傾斜しているので、磁石板（３３）の磁力から解放された金属片は、重力に従い、金属片排出ガイド部（５）に案内され、下方へ移動する。
金属片排出ガイド部（５）先端部（右端部）は、次工程で用いられる装置等に接続し（図示せず）、金属片排出ガイド部（５）から排出された金属片は次工程で用いられる。
【００１７】
金属片排出ガイド部（５）により金属片の吸着が解除された磁石板（３３）は更に下方へ移動し、金属片収容部（４）の位置に達する。そして、この磁石板（３３）は金属片収容部（４）内の金属片を吸着しつつ、金属片収容部（４）と搬送面（２１）との接続輪郭内側を通過する。
これにより、金属片収容部（４）内部に蓄えられた金属片群には、下側の駆動ディスク（３１）の回転軸を中心とした旋回力が加えられ、金属片収容部（４）内で撹拌作用が生ずる。
結果として、搬送装置（１）が作動している間、金属片収容部（４）内には撹拌作用が生じ続けることとなり、金属片収容部（４）内のブロック現象の発生を確実に防止できることとなる。
【００１８】
図３は、ケーシング（２）を支持軸（７２）周りに回転させて、所定角度傾斜させた状態を示す。この傾斜により、金属片排出ガイド部（５）の角度を一層下方に向けて傾斜させることができる。
尚、支持軸（７２）をモータの回転シャフトと接続させて、ケーシング（２）を支持軸（７２）の回転とともに回転動作させる形態を採用してもよい。支持軸（７２）と接続するモータを所定回転角度の範囲で往復回転動作させることで、ケーシング（７２）に左右方向の往復傾斜動作を生じさせることができる。
金属片収容部（４）はケーシング（２）とともに移動するので、金属片収容部（４）内部に収容された金属片に左右方向の力を与えることができる。これにより、重力、磁石板（３３）の移動に伴う旋回力に加えて左右方向の揺動力も金属片に付加することができるので、一層金属片収容部（４）内部の撹拌作用が高まることとなる。
尚、このようなケーシング（２）の繰り返し傾斜動作は、モータによる手段以外にも、ケーシング（２）の側面をシリンダ等の押圧手段で押圧し、ケーシング（２）を支持軸（７２）に対して回転させ、傾斜させるといった手段も採用可能である。
【００１９】
図４は、磁力式金属片搬送装置（１）の他の使用形態を示す図である。
磁力式金属片搬送装置（１）は、フライス盤やボール盤等の切削屑が集積される容器（８）内に配される。ケーシング（２）の背面側がビスやボルト等の固定手段によって、容器（８）の内壁面と接続固定される。
金属片収容部（４）は、正面側に突出し、容器（８）内部を横断する。これにより、容器（８）内に集積される金属の切削屑が金属片収容部（４）により受け止められる。
【００２０】
本発明の磁力式金属片搬送装置（１）は、非常に薄く形成されるため、このように切削屑を収容する容器（８）内にも容易に配置固定可能である。そして、ブロック現象防止のための特別な装置を要することなく、ブロック現象を防止できるので、容器（８）内が機械油で満たされているような場合でも、好適に使用可能となる。
加えて、このように搬送装置（１）が機械油で満たされた容器（８）内に配されるときには、磁石板（３３）とケーシング（２）の搬送面（２１）の背面側の面との摺動による摩擦が機械油により緩和されることとなる。よって、ケーシング（２）或いは磁石板（３３）の磨耗を最小限化可能である。
【００２１】
図５は、磁力式金属片搬送装置（１）の他の使用形態を示す図である。
図４に示す例において、磁力式金属片搬送装置（１）ごと容器（８）内部に配する形態を示したが、金属片収容部（４）の正面側を閉塞し、上側のみが開口した容器状とし、この金属片収容部（４）と容器（８）とを管路（８１）で接続する形態を採用してもよい。管路途中にはポンプ（８２）を配し、ポンプ（８２）が容器（８）内に収容された微細な金属屑と機械油をともに金属片収容部（４）へ供給する。
金属片収容部（４）からは更に管路（８３）が延出し、管路（８３）途中に配されたポンプ（８４）によって、金属片収容部（４）に送られた機械油が容器（８）へ戻される。
容器（８）内には、例えば、機械部品搬送コンベアから除去された金属粉等の金属屑が集積されている。
金属片収容部（４）と搬送面（２１）との間にはパッキンが配され、金属片収容部（４）から機械油が漏れないようにされている。
【００２２】
図５に示すような、管路（８１，８３）による循環路を形成することで、機械油の中から金属片を除去するという濾過システムを構築可能である。このような形態は、離れた場所にある金属片収集容器（８）から金属片を除去するのに好適に使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【００２３】
本発明は、ねじやビスなどの小さな金属部品の運搬に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の概略正面図である。
【図２】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の概略側面図である。
【図３】本発明に係る磁力式金属片搬送装置のケーシングを傾斜させた状態を示す図である。
【図４】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の使用形態の一例を示す図である。
【図５】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の使用形態の一例を示す図である。
【図６】従来の磁力式金属片搬送装置を示す図である。
【符号の説明】
【００２５】
１・・・・・磁力式金属片搬送装置
２・・・・・ケーシング
３・・・・・駆動機構
３１・・・・駆動ディスク
３２・・・・環状帯体
３３・・・・磁石板
４・・・・・金属片収容部
５・・・・・金属片排出ガイド部
６・・・・・モータ
７２・・・・支持軸
８・・・・・容器
８１・・・・管路
８３・・・・管路
【技術分野】
【０００１】
本発明は、金属片同士が引っかかり或いは絡み合って生ずるブリッジ現象を容易に解消可能であって、小型に形成可能な磁力式金属片搬送装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
磁力式金属片運搬装置は、特に、ボルト、ナット或いはビスなどの小さな組立用部品を所定量ずつ搬送するために用いられる。これら、組立用小部品は、磁力式金属片搬送装置に備えられた収容部内に収容され、磁力式金属片搬送装置の搬送面に沿って所定量ずつ所定場所へ搬送される。
【０００３】
特許文献１は、このような磁力式金属片搬送装置の一例を開示する。また、図６は、特許文献１に開示される磁力式金属片搬送装置を示す。
特許文献１の磁力式金属片搬送装置（Ｄ）は、上下一対に配されるスプロケット（Ｓ）と、一対のスプロケット（Ｓ）同士を接続するチェーン環（Ｃ）を備える。チェーン環（Ｃ）には複数の磁石板（Ｍ）が所定間隔をおいて取り付けられている。
金属片が搬送される搬送面（Ｆ）は、スプロケット（Ｓ）の回転軸に対して平行に配され、搬送面（Ｆ）の背面側に磁石板（Ｍ）が吸着するとともに搬送面（Ｆ）を介して金属部品を吸引し、上方へと搬送する。
搬送面（Ｆ）下部には、金属部品が収容される収容部（Ａ）が配される。
【０００４】
上記構造の搬送装置（Ｄ）によれば、金属部品は収容部（Ａ）内の一定箇所から取り出されることとなる。このような一定箇所の取り出しは、ブリッジ現象（収容部（Ａ）内部に配された部品同士が引っかかり或いは絡み合う現象）を生じやすくする。
このようなブリッジ現象の発生を防止するため、特許文献１に開示される搬送装置（Ｄ）は収容部（Ａ）を振動させる振動装置（Ｖ）を備えている。
【０００５】
【特許文献１】特開２００３−２７６８４６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
特許文献１に開示されるような搬送装置（Ｄ）は、ブリッジ現象発生防止のため、振動装置（Ｖ）を別個に設ける必要がある。そして、ブリッジ現象発生防止機能を確実に発揮させようとするためには、振動装置（Ｖ）で常に収容部（Ａ）を振動させる必要がある。振動装置（Ｖ）からの振動は、搬送面（Ｆ）にも伝達されるため、搬送中の部品が振動によって、落下する問題を招来することとなる。
加えて、振動装置（Ｖ）からの振動は、搬送装置（Ｄ）の機械的騒音を生じさせることとなる。
更には、装置の大型化を招き、金属部品を搬送する目的以外で、搬送装置（Ｄ）を使用することは困難である。
【０００７】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、収容された金属部品のブリッジ現象を確実に防止できるとともに、小型に形成でき、金属部品搬送以外の目的にも使用可能な磁力式金属片搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
請求項１記載の発明は、上下一対に配される駆動ディスクと、該一対の駆動ディスクを接続する環状帯体と、前記一対の駆動ディスクのうち一方に接続するモータと、該環状帯体に取付けられる磁石板からなる駆動機構と、前記駆動ディスクの回転軸に対して直角に配される搬送面を備えるとともに前記駆動機構を収容するケーシングからなる磁力式金属片搬送装置であって、前記搬送面下部には、上側に開口部を有し、下方に向けて湾曲する円弧状の底面を有する金属片収容部が取り付けられ、前記搬送面には、前記磁石板が下方に移動する側の前記搬送面半面を横切るとともに下方に傾斜して取付けられる金属片排出ガイド部が取り付けられ、前記金属片収容部の底面と前記搬送面との接続部の輪郭の曲率中心が、前記駆動ディスクのうち下方に配される駆動ディスクの回転軸と略同心であることを特徴とする磁力式金属片搬送装置である。
請求項２記載の発明は、前記金属片収容部が、金属切削加工装置から排出される切削屑を受け止めるように配されることを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置である。
請求項３記載の発明は、前記搬送面と対向する側の前記ケーシングの面には支持軸が取り付けられ、該支持軸が、前記金属片排出ガイド部の下方への傾斜を増加させるように、前記ケーシングを回転可能に支持することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置である。
請求項４記載の発明は、前記金属片収容部が、機械油とともに金属の切削屑を収容する容器と管路を介して接続することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置である。
【発明の効果】
【０００９】
請求項１記載の発明によれば、磁石板の移動軌跡の曲率中心と収容部底面と搬送面の接続部輪郭の曲率中心が略同心であるので、磁石板の移動に伴って、収容部内で撹拌作用が生じ、好適にブリッジ現象を防止可能となる。更に、収容部底面が円弧状に湾曲しているので、収容部内部で金属片が好適に移動可能となり、撹拌作用を促進させることが可能である。したがって、確実にブリッジ現象の発生を防止することが可能となり、好適な金属片搬送を行うことができる。
また、ブリッジ現象の発生を防止するための追加の設備を備える必要がないため、装置を小型化することができる。
請求項２記載の発明によれば、上述の如く、装置を小型化できるため、例えば、フライス盤或いはボール盤等の金属切削加工装置から発生する切削屑を直接受け止めることが可能となり、金属部品のみならず、切削屑の搬送にも好適に使用可能となる。
請求項３記載の発明によれば、ケーシングを所望に応じて傾斜させることができ、ブリッジ現象抑止効果を一層高めることができる。
請求項４記載の発明によれば、離れた場所に配されるフライス盤或いはボール盤等の金属切削加工装置から排出される金属屑を好適に搬送可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本発明に係る磁力式金属片搬送装置の実施形態について、図を参照しつつ説明する。図１は、磁力式金属片搬送装置の概略構成を示す正面図である。図２は、図１に示す磁力式金属片搬送装置の側面図である。
磁力式金属片搬送装置（１）は、略直方体形状に形成されたケーシング（２）とケーシング（２）内部に配された駆動機構（３）を備える。
【００１１】
ケーシング（２）の正面側に現れる面は、搬送面（２１）とされる。搬送面（２１）は地面に対して直角上方に延び、平滑な面を有している。搬送面（２１）下部には、金属片収容部（４）が取り付けられ、金属片収容部（４）は正面側に向けて搬送面（２１）から突出している。
金属片収容部（４）は下方に向けて湾曲する底部（４１）と、底部（４１）両端から上方に突出する側部（４２）から構成される。側部（４２）は、ケーシング（２）側面部に固定される。底部（４１）は、正面側端縁から搬送面（２１）の接続縁に向けて、下方へ傾斜している。
このように形成された金属片収容部（４）は、上側及び正面側に開口し、この開口部分からボルト、ナット、ビスといった金属製小部品或いは切削機械から排出される金属屑が供給される。そして、これら金属製小部品や金属屑といった金属片は金属片収容部（４）に収容される。
【００１２】
搬送面（２１）上部には金属片排出ガイド部（５）が取り付けられている。図１に示す如く、金属片排出ガイド部（５）は、搬送面（２１）右半面を横切るとともに下方に向けて傾斜し、ケーシング（２）右側面から右方へ突出する。また、図２に示す如く、金属片排出ガイド部（５）は断面略Ｕ字形状に形成され、金属片排出ガイド部（５）の奥側側壁はケーシング（２）の右側面部と接続し、固定される。
【００１３】
駆動機構（３）は、ケーシング（２）内部において、上下一対に配される円板状の駆動ディスク（３１）と、一対の駆動ディスク（３１）同士を接続する環状帯体（３２）からなる。
駆動ディスク（３１）が、スプロケットである場合には、環状帯体（３２）にはチェーンが用いられ、駆動ディスク（３１）が、Ｖ型プーリである場合には、環状帯体（３２）にはＶ型ベルトが用いられ、駆動ディスク（３１）が、タイミングプーリである場合には、環状帯体（３２）にはタイミングベルトが使用可能である。尚、本発明はこれに限られるものではなく、これらに類する組み合わせも駆動ディスク（３１）及び環状帯体（３２）に包含される。
環状帯体（３２）には、複数の正面視矩形に形成されるとともに平板状に形成された磁石板（３３）が取付けられ、磁石板（３３）はそれぞれ所定間隔をおいて配される。
【００１４】
駆動ディスク（３１）は、ケーシング（２）背面側の面に回転可能に取付けられる。一対の駆動ディスク（３１）のうち上側に配される駆動ディスク（３１）はケーシング（２）背面側に取付けられるモータ（６）と接続し、モータ（６）からの駆動力が伝達される。また、これら駆動ディスク（３１）の回転軸は、搬送面（２１）に対して直角である。
図１に示す如く、駆動ディスク（３１）の回転軸が、金属片収容部（４）と搬送面（２１）との半円弧状の接続部輪郭の曲率中心と略同心となるように、下側に配される駆動ディスク（３１）が配される。
【００１５】
ケーシング（２）の下方には基台部（７）が配設され、ケーシング（２）の背面側には、基台部（７）上面から上方に立設する支柱（７１）が配される。ケーシング（２）の背面は支持軸（７２）を介して支柱（７１）と接続し、支持軸（７２）はケーシング（２）を回転可能に支持する。
【００１６】
モータ（６）は、上側の駆動ディスク（３１）を正面から見て時計回りに回転させる。これにより、搬送面（２１）右半面側に位置する磁石板（３３）は下方に向けて移動する。そして、搬送面（２１）左半面側に位置する磁石板（３３）は搬送面（２１）を吸着しつつ上方に向けて移動する。
金属片収容部（４）内に配された金属片は、上方へ向けて移動する磁石板（３３）に吸引されて、搬送面（２１）上を摺動して上方へ移動する。そして、上側の駆動ディスク（３１）によって、磁石板（３３）の位置が搬送面（２１）左半面から右半面に移り、磁石の移動方向が反転されると、磁石板（３３）に吸引された金属片の移動方向も反転する。そして、金属片は搬送面（２１）右半面上を摺動し、下方へ移動する。
金属片が、金属片排出ガイド部（５）底面に衝突すると、金属片排出ガイド部（５）底面は、金属片の下方への移動を妨げ、金属片は磁石板（３３）の吸引から解除される。金属片排出ガイド部（５）は、下方に向けて傾斜しているので、磁石板（３３）の磁力から解放された金属片は、重力に従い、金属片排出ガイド部（５）に案内され、下方へ移動する。
金属片排出ガイド部（５）先端部（右端部）は、次工程で用いられる装置等に接続し（図示せず）、金属片排出ガイド部（５）から排出された金属片は次工程で用いられる。
【００１７】
金属片排出ガイド部（５）により金属片の吸着が解除された磁石板（３３）は更に下方へ移動し、金属片収容部（４）の位置に達する。そして、この磁石板（３３）は金属片収容部（４）内の金属片を吸着しつつ、金属片収容部（４）と搬送面（２１）との接続輪郭内側を通過する。
これにより、金属片収容部（４）内部に蓄えられた金属片群には、下側の駆動ディスク（３１）の回転軸を中心とした旋回力が加えられ、金属片収容部（４）内で撹拌作用が生ずる。
結果として、搬送装置（１）が作動している間、金属片収容部（４）内には撹拌作用が生じ続けることとなり、金属片収容部（４）内のブロック現象の発生を確実に防止できることとなる。
【００１８】
図３は、ケーシング（２）を支持軸（７２）周りに回転させて、所定角度傾斜させた状態を示す。この傾斜により、金属片排出ガイド部（５）の角度を一層下方に向けて傾斜させることができる。
尚、支持軸（７２）をモータの回転シャフトと接続させて、ケーシング（２）を支持軸（７２）の回転とともに回転動作させる形態を採用してもよい。支持軸（７２）と接続するモータを所定回転角度の範囲で往復回転動作させることで、ケーシング（７２）に左右方向の往復傾斜動作を生じさせることができる。
金属片収容部（４）はケーシング（２）とともに移動するので、金属片収容部（４）内部に収容された金属片に左右方向の力を与えることができる。これにより、重力、磁石板（３３）の移動に伴う旋回力に加えて左右方向の揺動力も金属片に付加することができるので、一層金属片収容部（４）内部の撹拌作用が高まることとなる。
尚、このようなケーシング（２）の繰り返し傾斜動作は、モータによる手段以外にも、ケーシング（２）の側面をシリンダ等の押圧手段で押圧し、ケーシング（２）を支持軸（７２）に対して回転させ、傾斜させるといった手段も採用可能である。
【００１９】
図４は、磁力式金属片搬送装置（１）の他の使用形態を示す図である。
磁力式金属片搬送装置（１）は、フライス盤やボール盤等の切削屑が集積される容器（８）内に配される。ケーシング（２）の背面側がビスやボルト等の固定手段によって、容器（８）の内壁面と接続固定される。
金属片収容部（４）は、正面側に突出し、容器（８）内部を横断する。これにより、容器（８）内に集積される金属の切削屑が金属片収容部（４）により受け止められる。
【００２０】
本発明の磁力式金属片搬送装置（１）は、非常に薄く形成されるため、このように切削屑を収容する容器（８）内にも容易に配置固定可能である。そして、ブロック現象防止のための特別な装置を要することなく、ブロック現象を防止できるので、容器（８）内が機械油で満たされているような場合でも、好適に使用可能となる。
加えて、このように搬送装置（１）が機械油で満たされた容器（８）内に配されるときには、磁石板（３３）とケーシング（２）の搬送面（２１）の背面側の面との摺動による摩擦が機械油により緩和されることとなる。よって、ケーシング（２）或いは磁石板（３３）の磨耗を最小限化可能である。
【００２１】
図５は、磁力式金属片搬送装置（１）の他の使用形態を示す図である。
図４に示す例において、磁力式金属片搬送装置（１）ごと容器（８）内部に配する形態を示したが、金属片収容部（４）の正面側を閉塞し、上側のみが開口した容器状とし、この金属片収容部（４）と容器（８）とを管路（８１）で接続する形態を採用してもよい。管路途中にはポンプ（８２）を配し、ポンプ（８２）が容器（８）内に収容された微細な金属屑と機械油をともに金属片収容部（４）へ供給する。
金属片収容部（４）からは更に管路（８３）が延出し、管路（８３）途中に配されたポンプ（８４）によって、金属片収容部（４）に送られた機械油が容器（８）へ戻される。
容器（８）内には、例えば、機械部品搬送コンベアから除去された金属粉等の金属屑が集積されている。
金属片収容部（４）と搬送面（２１）との間にはパッキンが配され、金属片収容部（４）から機械油が漏れないようにされている。
【００２２】
図５に示すような、管路（８１，８３）による循環路を形成することで、機械油の中から金属片を除去するという濾過システムを構築可能である。このような形態は、離れた場所にある金属片収集容器（８）から金属片を除去するのに好適に使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【００２３】
本発明は、ねじやビスなどの小さな金属部品の運搬に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の概略正面図である。
【図２】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の概略側面図である。
【図３】本発明に係る磁力式金属片搬送装置のケーシングを傾斜させた状態を示す図である。
【図４】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の使用形態の一例を示す図である。
【図５】本発明に係る磁力式金属片搬送装置の使用形態の一例を示す図である。
【図６】従来の磁力式金属片搬送装置を示す図である。
【符号の説明】
【００２５】
１・・・・・磁力式金属片搬送装置
２・・・・・ケーシング
３・・・・・駆動機構
３１・・・・駆動ディスク
３２・・・・環状帯体
３３・・・・磁石板
４・・・・・金属片収容部
５・・・・・金属片排出ガイド部
６・・・・・モータ
７２・・・・支持軸
８・・・・・容器
８１・・・・管路
８３・・・・管路
【特許請求の範囲】
【請求項１】
上下一対に配される駆動ディスクと、該一対の駆動ディスクを接続する環状帯体と、前記一対の駆動ディスクのうち一方に接続するモータと、該環状帯体に取付けられる磁石板からなる駆動機構と、
前記駆動ディスクの回転軸に対して直角に配される搬送面を備えるとともに前記駆動機構を収容するケーシングからなる磁力式金属片搬送装置であって、
前記搬送面下部には、上側に開口部を有し、下方に向けて湾曲する円弧状の底面を有する金属片収容部が取り付けられ、
前記搬送面には、前記磁石板が下方に移動する側の前記搬送面半面を横切るとともに下方に傾斜して取付けられる金属片排出ガイド部が取り付けられ、
前記金属片収容部の底面と前記搬送面との接続部の輪郭の曲率中心が、前記駆動ディスクのうち下方に配される駆動ディスクの回転軸と略同心であることを特徴とする磁力式金属片搬送装置。
【請求項２】
前記金属片収容部が、金属切削加工装置から排出される切削屑を受け止めるように配されることを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置。
【請求項３】
前記搬送面と対向する側の前記ケーシングの面には支持軸が取り付けられ、
該支持軸が、前記金属片排出ガイド部の下方への傾斜を増加させるように、前記ケーシングを回転可能に支持することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置。
【請求項４】
前記金属片収容部が、機械油とともに金属の切削屑を収容する容器と管路を介して接続することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置。
【請求項１】
上下一対に配される駆動ディスクと、該一対の駆動ディスクを接続する環状帯体と、前記一対の駆動ディスクのうち一方に接続するモータと、該環状帯体に取付けられる磁石板からなる駆動機構と、
前記駆動ディスクの回転軸に対して直角に配される搬送面を備えるとともに前記駆動機構を収容するケーシングからなる磁力式金属片搬送装置であって、
前記搬送面下部には、上側に開口部を有し、下方に向けて湾曲する円弧状の底面を有する金属片収容部が取り付けられ、
前記搬送面には、前記磁石板が下方に移動する側の前記搬送面半面を横切るとともに下方に傾斜して取付けられる金属片排出ガイド部が取り付けられ、
前記金属片収容部の底面と前記搬送面との接続部の輪郭の曲率中心が、前記駆動ディスクのうち下方に配される駆動ディスクの回転軸と略同心であることを特徴とする磁力式金属片搬送装置。
【請求項２】
前記金属片収容部が、金属切削加工装置から排出される切削屑を受け止めるように配されることを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置。
【請求項３】
前記搬送面と対向する側の前記ケーシングの面には支持軸が取り付けられ、
該支持軸が、前記金属片排出ガイド部の下方への傾斜を増加させるように、前記ケーシングを回転可能に支持することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置。
【請求項４】
前記金属片収容部が、機械油とともに金属の切削屑を収容する容器と管路を介して接続することを特徴とする請求項１記載の磁力式金属片搬送装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００７−１２６２８２（Ｐ２００７−１２６２８２Ａ）
【公開日】平成１９年５月２４日（２００７．５．２４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３２２８７９（Ｐ２００５−３２２８７９）
【出願日】平成１７年１１月７日（２００５．１１．７）
【出願人】（０００１４０５９１）株式会社下西製作所 (21)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年５月２４日（２００７．５．２４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１１月７日（２００５．１１．７）
【出願人】（０００１４０５９１）株式会社下西製作所 (21)
【Ｆターム（参考）】
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