磁場解析装置および磁場解析方法
【課題】磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる磁場解析装置を提供する。
【解決手段】磁場解析装置1は、制御部3、記憶装置5、メディア入出力部6、入力部7、表示部9、プリンタポート11等が、バス13を介して互いに接続されている。磁場解析装置1は、解析条件と磁場の運動方程式を記憶して、前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数および変数の初期値および定数を演算して、磁場の運動方程式の解を演算し、磁場の運動方程式の解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する演算手段とを有している。磁場解析装置1は、磁場の運動方程式と前記入力情報に基づき、演算手段を用いて空間における任意の磁場を演算する。
【解決手段】磁場解析装置1は、制御部3、記憶装置5、メディア入出力部6、入力部7、表示部9、プリンタポート11等が、バス13を介して互いに接続されている。磁場解析装置1は、解析条件と磁場の運動方程式を記憶して、前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数および変数の初期値および定数を演算して、磁場の運動方程式の解を演算し、磁場の運動方程式の解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する演算手段とを有している。磁場解析装置1は、磁場の運動方程式と前記入力情報に基づき、演算手段を用いて空間における任意の磁場を演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場解析装置および磁場解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ等の磁気エネルギーを駆動源とする電気機器は、高精度化、高効率化が要求されると同時に、開発スピードのアップが求められている。
【0003】
このような要求を満たすためには電気機器の磁場解析による検証は不可欠となっている。
【0004】
磁場解析の手法としては従来、有限要素法が広く用いられてきた。
【0005】
例えば特許文献1では、空気中に磁気コアが存在する場合の磁場解析例として、有限要素法を用いた解析方法が記載されている。
【0006】
また、磁場解析においては磁性体の磁化を求めるために磁化曲線を用いる必要があるが、従来は特許文献2に記載のように、ヒステリシスを無視した曲線(初期磁化曲線)を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−188042号公報
【特許文献2】特開平05−54161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように、有限要素法によって磁場解析を行う場合は、対象とする電気機器を含んだ空間全域をメッシュ分割する必要がある。
【0009】
そのため、大規模、複雑形状の電気機器の解析や、積層鉄心等の高アスペクト比問題を取り扱う場合、解析に膨大な時間と解析機器のメモリを要し、十分な精度で効率よく磁場解析を行うのが困難であるという問題があった。
【0010】
また、特許文献2のように、初期磁化曲線を用いて磁性体の磁化を求めた場合は、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮しないため、実機における磁性体の挙動を正確に把握できないという問題があった。
【0011】
さらに、特許文献2では、磁化特性の温度依存性を考慮していないため、時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できないという問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる磁場解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明者は鋭意検討の結果、情報処理装置を使って磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の解を演算し、磁場の運動方程式の解に基づいて磁性体が配置された空間の任意の場所の磁場を演算することにより、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができることを見出し、本発明をするに至った。
【0014】
また、磁性体の磁化を求める際に、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いることにより、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した磁場解析を行うことができることも見出し、本発明をするに至った。
【0015】
即ち、第1の発明は、磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析装置であって、前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と、磁場の運動方程式を記憶する記憶手段と、前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数、変数の初期値および定数を演算して、前記磁場の運動方程式の解を演算し、該解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する演算手段と、を有することを特徴とする磁場解析装置である。
【0016】
第2の発明は、コンピュータを第1の発明に記載の磁場解析装置として機能させるためのプログラムである。
【0017】
第3の発明は、磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析方法であって、前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と磁場の運動方程式を記憶する工程(a)と、前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数および変数の初期値および定数を演算して、磁場の運動方程式の解を演算し、磁場の運動方程式の解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する工程(b)と、を有することを特徴とする磁場解析方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、磁性体を有する系に対して、解析対象を含む空間全域をメッシュ分割する必要なく、かつ磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した、十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる磁場解析装置を提供することができる。
【0019】
また、磁性体を構成する粒子のラグランジアンから導出された磁場の運動方程式の解を演算しているため、入力が変化しない場合、系の全エネルギーが保存される。
【0020】
さらに、本発明では、磁性体の磁化を求める際に、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いているため、磁気ヒステリシスを考慮した解析ができ、かつ時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】磁場解析装置1のハードウェア構成を示す図である。
【図2】記憶装置5を示す図である。
【図3】SPMモータ31の構成の概略を示す図である。
【図4】図3のステータティース43の1つの周囲の拡大斜視図である。
【図5】磁場解析装置1を用いた磁場の解析の手順を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)はコイル45の拡大斜視図であって、図6(b)はコイル45を、ローカル導体に分割した例を示す図である。
【図7】直方体導体45aとローカル座標の関係を示す図である。
【図8】円弧状柱状導体45cとローカル座標の関係を示す図である。
【図9】磁性体の磁場計算に用いる要素の説明図である。
【図10】スピン群1001を示す模式図である。
【図11】磁性体の磁化(磁化ベクトル)の具体的な計算方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
【0023】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係る磁場解析装置1のハードウェア構成を説明する。
【0024】
なお、図1のハードウェア構成は例示であり、これに限定されないのは当然である。
【0025】
図1に示すように、磁場解析装置1は制御部3、記憶装置5、メディア入出力部6、入力部7、表示部9、プリンタポート11等がバス13を介して互いに接続されている。
【0026】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、記憶部としての記憶装置5に格納されたプログラムに従って、バス13を介して接続された各装置を駆動制御する。
【0027】
図2に示すように、記憶装置5には、磁場解析装置1の各構成部分を駆動制御するための制御プログラム15、本発明を実施するための磁場解析プログラム17が格納されている。
【0028】
磁場解析プログラム17は、解析条件を有する情報である入力情報21と、入力情報21に基づき、磁場の運動方程式に基づいて磁場を演算する演算プログラム19とを有している。
【0029】
メディア入出力部6は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD等のメディアとの間で情報の入出力を行う装置である。
【0030】
入力部7は、キーボード、マウス等の入力装置であり、表示部9はディスプレイ等の表示機器である。
【0031】
プリンタポート11には出力装置としてのプリンタ12等が接続される。
【0032】
次に、磁場解析装置1を用いた磁場の解析の手順について図3〜11を参照して説明する。
【0033】
ここではPMモータ(Permanent Magnet Motor)の一種である、SPMモータ31(Surface Permanent Magnet Motor)の磁場解析を例にして説明する。
【0034】
まず、SPMモータ31の構成の概略を図3および図4を参照して説明する。
【0035】
図3に示すように、SPMモータ31は回転子(移動子)であるロータ33と固定子であるステータ35を有している。
【0036】
ロータ33は鉄等の磁性体である円柱状のロータコア37を有し、ロータコア37の表面には永久磁石39が設けられている。
【0037】
ロータコア37の軸中心には棒状のロータシャフト41が設けられている。
【0038】
ステータ35は磁性体である歯状のステータティース43とステータティース43の外側に設けられた円筒状の磁性体であるコアバック44、コアバック44の外側に設けられた円筒状のフレーム46から構成されている。
【0039】
図3および図4に示すように、ステータティース43には、金属等の導電体であるコイル45が巻きつけられている。
【0040】
なお、実際のSPMモータ31ではコイル45は仕様に応じたターン数でステータティース43に巻きつけられて束となっているが、本実施形態では、図3および図4に描かれているように、コイル一本一本をモデル化せず、コイルの束を一つの導体として扱う。
【0041】
このような構造のSPMモータ31は、永久磁石39の磁場、およびコイル45に電流を流すことにより発生する磁場によって、ロータ33、ステータ35が磁化する。磁性体の磁気エネルギーの偏差によりSPMモータ31は駆動する。
【0042】
そのため、SPMモータ31の磁場解析を行うためにはコイル45、永久磁石39がロータ33、ステータ35を構成する磁性体上に作る磁場ベクトルを計算し、これら磁性体の磁化現象を解析する必要がある。
【0043】
次に、解析の手順について図5〜図11を参照して説明する。
【0044】
なお、以下の手順においてはSPMモータ31を、複数に要素分割して要素ごとの粒子の集合体とし、剛体モデルとして扱っているが、本発明はこれに限定されることはなく、粒子を用いずに要素ごとの剛体モデルとして扱ってもよい。
【0045】
また、以下の手順において、磁性体とは、ロータ33、ステータ35を構成する磁性体と永久磁石39を指し示し、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係によってこれらは区別される。
【0046】
まず、磁場解析装置1の制御部3は磁場解析プログラム17を起動し、解析したいSPMモータ31の解析条件としての三次元構造(形状、座標点)、質量密度、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係(詳細は後述)や初期条件、導体の電流密度ベクトルを記憶装置5の入力情報21として記憶する(図5のステップ101)。
【0047】
これらの物理量は例えばメディア入出力部6を介してCD−ROM等の記録媒体から読込んだものであってもよい。
【0048】
また、SPMモータ31の三次元構造の情報とは例えばCAD等のデータである。
【0049】
さらに、あらかじめ上記物理量が入力情報21として記憶されている場合は、上記ステップは不要である。
【0050】
電流密度ベクトルは、コイル45の作る磁場ベクトルを計算する際に必要になる。
【0051】
さらに、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係は磁化ベクトル(太字の)Mを計算する際に必要になるものである。具体的には、当該関係はスピン系の平衡状態で表現される関係であり、後述するようにモンテカルロ法を用いて平衡状態におけるスピン系を求めることにより、磁化ベクトルを計算する。
【0052】
以上が図5のステップ101の詳細である。
【0053】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、入力情報21の有する三次元構造の情報から、磁性体をN個の粒子(粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素(本実施例では立方体要素)に分割し、粒子の位置ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ102)。
【0054】
ここで、Nは任意の整数であり、粒子の数Nおよび位置ベクトルは入力情報21の有する三次元構造およびあらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状により計算される。
【0055】
以上が図5のステップ102の詳細である。
【0056】
次に、制御部3は、入力情報21の有する三次元構造の情報から、導体(図6(a)に示すコイル45)を図6(b)に示すようにローカル導体(直方体導体45a、45bと円弧状柱状導体45c、45d)に分割し、それぞれの導体が作る磁場ベクトルを計算するための係数を計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ103)。
【0057】
ここで、図5のステップ103について、具体的に説明する。
【0058】
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
【0059】
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、制御部3は、図7に示すように、ローカル座標系(xs,ys,zs)を適用する。
【0061】
このローカル座標系においてはローカル導体(直方体導体45a)の重心を原点Osとし、直方体導体45aの寸法はxs方向に2a、ys方向に2b、zs方向に2cの長さを持つものとする。
【0062】
また原点Osに粒子は位置するものとする。
【0063】
制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている導体の三次元構造と電流密度ベクトルを読み込み、ローカル導体(直方体導体45a)の寸法であるa,b,cと粒子位置ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0064】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
【0065】
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、制御部3は、図8に示すようにローカル座標系(xc,yc,zc)を適用する。
【0067】
このローカル座標系においては原点Ocは円弧の中心軸上に存在し、かつ円弧状柱状導体45cの高さ方向(図8のzc方向)に対して円弧状柱状導体45cが対称となる点に存在するものとする。
【0068】
また、xc,yc,zcは、xc−yc平面でみると、+xc軸を基点とし、円弧状柱状導体45cの円弧が+zc軸からみて反時計回りになるようして決定する。
【0069】
円弧状柱状導体45cの内径と外径の平均値をRcとし、径方向の厚さを2ra、zc方向の高さを2zbとする。
【0070】
電流は+xc軸を基点として、+zcから見て反時計回りの方向への角度をθとし、電流はこの方向に一様な電流密度jで流れているものとする。
【0071】
粒子は円筒座標系で(Rc、θ/2、0)に位置するものとする。
【0072】
制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている導体の三次元構造と電流密度ベクトルを読み込み、ローカル導体(円弧状柱状導体45c)の寸法であるra、zb、θ、Rcおよび粒子位置ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0073】
さらに、あらかじめ上記物理量が入力情報21として記憶されている場合は、上記ステップは不要である。
【0074】
以上が図5のステップ103の詳細である。
【0075】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、このステップまでに計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成するN個の粒子の位置ベクトルと、あらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状により、磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数を計算し記憶装置5に記憶する(図5のステップ104)。
【0076】
ここで、図5のステップ104について、具体的に説明する。
【0077】
分割した多面体要素(本実施形態では立方体要素)を2次元表示すると図9に示す形状となる。
【0078】
ここで、粒子の位置ベクトルを(太字の)rg、粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の要素境界面の中点をq点とし、粒子の位置ベクトルとq点との中間点にp点を定義する。
【0079】
制御部3は、ステップ102において計算し記憶装置5に記憶している磁性体を構成する粒子(粒子を重心とする多面体要素(本実施形態では立方体要素))の位置ベクトルを読み込む。
【0080】
なお、ステップ113において粒子の位置ベクトルが更新され記憶装置5に記憶されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0081】
制御部3は、粒子の位置ベクトルとあらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状から、磁性体を構成するすべての粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点とq点の位置ベクトルと要素境界面への法線ベクトル(太字の)nを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0082】
次に、制御部3は、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素の境界面積ΔS、および粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積ΔVを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0083】
以上が図5のステップ104の詳細である。
【0084】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、ステップ103で記憶装置5に記憶されているコイルの寸法およびこのステップまでに記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを用いて、ビオ・サバールの法則を積分することにより得られる解析解により、通電されたコイル45が、磁性体を構成する粒子上に作る磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ105)。
【0085】
ここで、図5のステップ105について、具体的に説明する。
【0086】
ここでは、任意の位置ベクトルが図4における磁性体としてのステータティース43のある点Pであると仮定した場合に、通電されたコイル45がP点の位置ベクトル上に作る磁場ベクトルを計算する手順を例に説明する。
【0087】
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
【0088】
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、図7に示すようにローカル座標系(xs,ys,zs)を適用する。
【0090】
このローカル座標系はステップ103で説明している。
【0091】
次に、P点の位置ベクトルをローカル座標系(xs,ys,zs)に変換する。
【0092】
通電された直方体導体がP点に作る磁場ベクトルは、以下に示す式(1)〜(3)で記載される。
【0093】
【数1】
【0094】
ここで、(太字の)rpsはローカル座標系(xs,ys,zs)でのP点の位置ベクトルであり、xps,yps,zpsはxs,ys,zs方向の値である。
πは円周率である。
【0095】
Hxs、Hys、Hzsはローカル座標系(xs,ys,zs)における磁場ベクトルの各成分である。
jは電流密度である。
【0096】
また、xi,yj,zkはxs,ys,zs方向の積分の上限、下限を表しており、式(4)に示す関係が成立する。
【0097】
【数2】
【0098】
ここで、a,b,cは直方体導体の寸法である。
【0099】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
【0100】
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、図8に示すようにローカル座標系(xc,yc,zc)を適用する。
【0102】
このローカル座標系はステップ103において説明している。
【0103】
ローカル座標系(xc,yc,zc)に変換後のP点の位置ベクトルを以下の式(5)に示すように円筒座標系(太字の)rpc=(Rpc、φpc、Zpc)に変換する。
【0104】
通電された円弧状柱状導体45cがP点に作る磁場ベクトルは、以下の式(6)〜(11)で表される。
【0105】
【数3】
【0106】
ここで、Hrc、Htc、Hzcは円筒座標系での磁場ベクトルの各成分である。
jは電流密度である。
【0107】
ra、θ、zbは円弧状柱状導体45cの寸法であり、Rcは円弧の内径と外径の平均値である。
【0108】
sgnはZkの符号であり、Rj、Zkは積分の上限、下限を表しており、式(12)に示す関係が成立する。
【0109】
【数4】
【0110】
以上が任意の点Pにコイルが作る磁場ベクトルの計算手順である。
【0111】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ104で既に計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成するすべての粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内部のp点の位置ベクトルを読み込む。
【0112】
次に、制御部3は、p点の位置ベクトルをローカル座標系(xs,ys,zs)に変換し、ステップ103で計算され記憶装置5に記憶されている直方体導体45aの寸法と、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを読み込み、式(1)〜(4)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
【0113】
なお、電流密度ベクトルがステップ116で更新され記憶装置5に記憶されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0114】
次に、制御部3は、式(1)〜(4)で計算された磁場ベクトルをグローバル座標系(x,y,z)に変換し、変換後の磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
【0115】
これにより、通電された直方体導体45aが、p点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0116】
さらに制御部3は、p点の位置ベクトルをローカル座標系(xc,yc,zc)に変換し、さらに円筒座標系(太字の)rpc=(Rpc、φpc、Zpc)に変換する。
【0117】
次に制御部3は、ステップ103で計算し記憶装置5に記憶している円弧状柱状導体45cの寸法ra、θ、zbおよびRcを読み込み、また、制御部3はステップ101で入力情報21として記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを読み込む。
【0118】
なお、電流密度ベクトルがステップ116で更新され記憶装置5に記憶されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0119】
制御部3は式(6)〜(12)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
【0120】
次に、計算された磁場ベクトルを直交座標系に変換し、さらにグローバル座標系(x,y,z)に変換し記憶装置5に記憶する。
【0121】
これにより、通電された円弧状柱状導体45cがp点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0122】
以上が、図5のステップ105の詳細である。
【0123】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用いて磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式から束縛を考慮せずに仮想時間刻みδt後の磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ106)。
【0124】
ここで、図5のステップ106について、具体的に説明する。
【0125】
磁性体を構成するN個の粒子のラグランジアンを式(13)〜式(15)で表される形とする。
【0126】
【数5】
【0127】
ここで、式(13)において、αは仮想質量、太字のrは位置ベクトル、太字のHは磁場ベクトル、太字の傍点付きHは磁場ベクトルの時間微分、太字のMは磁化ベクトル、太字のnは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の法線ベクトル、太字のHextは外部からの印加磁場ベクトル、ΔSは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の要素境界面の面積、ΔVは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積、χは磁気感受率、μ0は真空の透磁率、λはラグランジュの未定定数、πは円周率、sは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の要素境界面数である。
【0128】
また、各物理量の添え字ipはi番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内でのp点の物理量、添え字jqはj番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内でのq点の物理量を示す。
【0129】
p点、q点はステップ104において説明している。
【0130】
式(13)において、mは粒子の質量、vは速度、φ(ri−rj)はi番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギである。添え字i、jはそれぞれ、i、j番目の粒子の物理量を示す。
【0131】
次に、正準変数を(太字の)Hip、(太字の傍点付き)Hipとし、式(13)〜式(15)で示されるラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入すると、磁場の運動方程式は式(16)のように記載できる。
【0132】
【数6】
【0133】
ここで、式(16)の右辺第2項は、ラグランジュの未定定数を通して束縛(磁化ベクトルの発散は0)を課している。
【0134】
式(16)の右辺第3項は外部からの印加磁場ベクトルが変化したときにすばやく追従させるための減衰項であり、γは減衰定数である。
【0135】
式(16)の右辺第2項に示される束縛を含んだ運動方程式を解くにあたり、本実施形態では、一般化された束縛の導入法であるSHAKE法を採用する。
【0136】
束縛を考慮せずに蛙跳び法により式(16)を離散化すると以下の式(17)、式(18)、(19)になる。
【0137】
【数7】
【0138】
ここで、δtは磁化現象の収束計算を行う上で用いる仮想時間刻みである。
【0139】
添え字のnは任意の整数であり、nδtにおける物理量、n−1/2は(n−1/2)δtにおける物理量、n+1/2は(n+1/2)δtにおける物理量、n+1は(n+1)δtおける物理量に対応している。
【0140】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ104において既に計算され記憶装置5に記憶されている粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点、q点の位置ベクトルを読み込む。
【0141】
次に、制御部3は、ステップ105で既に計算され記憶装置5に記憶されているコイルが磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内部のp点に作る磁場ベクトルを外部からの印加磁場ベクトルとして読み込む。
【0142】
さらに、制御部3は、ステップ104で既に計算され、記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子の要素境界面積、法線ベクトルおよび粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積を読み込む。
【0143】
また、制御部3はあらかじめ記憶装置5に記憶されている減衰定数、仮想質量、仮想時間刻みを読み込む。
【0144】
次に、制御部3はあらかじめ記憶装置5に記憶されている磁場ベクトル、磁場ベクトルの時間微分の初期値を読み込む。
【0145】
なお、制御部3は後述するステップ107において磁場ベクトル、磁場ベクトルの時間微分が更新されている場合は、その値を読み込む。
【0146】
一方、磁化ベクトルは、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係と、磁場ベクトルから求められる。
【0147】
前述のように、磁性体の磁化と磁場の関係はスピン系(の平衡状態)で表現される関係である。
【0148】
より具体的には、磁性体の磁化と磁場の関係は、磁性体モデルのスピン系の平衡状態で表現される磁場とスピンの関係と、スピン系の平衡状態におけるスピンの総和で表現されるスピンと磁化の関係を有している。
【0149】
また、以下に述べるようにスピン系の平衡状態はモンテカルロ法を用いて求められ、スピン系の平衡状態から磁化ベクトルが求められる。
【0150】
ここで、磁性体モデルの概略および磁化ベクトルの具体的な計算方法について、図10および図11を参照して具体的に説明する。
【0151】
まず、磁性体モデルの概略について図10を参照して説明する。
【0152】
磁性体は磁気モーメントを有しており、磁気モーメントを作り出すのがスピンである。
【0153】
ここで、磁性体内のある粒子に図10に示すように、Ns個のスピン2001の集合であるスピン群1001を持たせた場合、エネルギー式は磁性体モデルを用いて記述できる。
【0154】
磁性体モデルとしてはハイゼンベルグモデルが用いられる。
【0155】
あるいは、ハイゼンベルグモデルの簡易系であるイジングモデルが用いられる。
【0156】
ここでは、イジングモデルを例に説明する。
【0157】
イジングモデルはハイゼンベルグモデルにおけるスピンを1軸方向成分のみと考え、±1で表現するものである。
【0158】
図10において、磁場h(あるいは磁場ベクトル)が印加されている場での、スピンの1つであるスピンSiに相互作用するエネルギーE1は以下の式(イ)で表される。
【0159】
【数8】
【0160】
また、スピン間の相互作用エネルギーE2は以下の式(ロ)で表される。
【0161】
【数9】
【0162】
ここで、Sjは隣接スピン、Jは交換積分(スピン間の相互作用の強さ)である。なお、以後は図10に示すような「スピン全体の状態」を「スピン系」と表現することにする。
【0163】
式(イ)と式(ロ)をまとめたハミルトニアンHiは以下の式(ハ)で表される。
【0164】
【数10】
【0165】
式(ハ)は磁束密度Bやスピンが同方向に揃うとエネルギーが低くなり、スピン系が安定する。
【0166】
なお、ハイゼンベルグモデルを用いる場合、式(ハ)に相当するハミルトニアンHiは以下の式(ハ−2)で表される。
【0167】
【数11】
【0168】
スピン系の総和は以下の式(ニ)で表される。
【0169】
【数12】
【0170】
次に、磁化ベクトルの具体的な計算方法について、図11を参照して説明する。
【0171】
まず、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、磁性体の磁化と磁場の関係(磁場とスピンの関係を示す式(イ)〜(ニ)、および後述する式(ホ)、(へ))や初期条件(スピン2001の数、スピン系、温度、最大磁化等)を記憶装置5から読み込む(図11のステップ201)。
【0172】
なお、ステップ201は、最初にステップ106を実行するときにのみ実行され、2回目以降は実行されない。
【0173】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、磁場解析装置1によって計算された直近の計算結果、具体的には磁場(磁場ベクトル)を式(イ)(式(ハ)もしくは式(ハー2))に代入する(図11のステップ202)。
【0174】
なお、磁場解析装置1が始めてステップ106を実行する場合は、ステップ202は実行されず、磁場(磁場ベクトル)はステップ201の初期条件が用いられる。
【0175】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、式(ニ)からスピン系のエネルギー(ここではH1と称する)を求める(図11のステップ203)。
【0176】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、図10に示すスピン群1001の中の一部のスピンを無作為に反転させる(図11のステップ204)。ここでは1つのスピンを反転させたものとする。
【0177】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、1つのスピンが反転した状態でのエネルギー(ここではH2と称する)を、式(ニ)から求め、H1とH2の差分dH(dH=H2−H1)を求める(図11のステップ205)。
【0178】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、dHが0以下であるか否かを判断し、0以下の場合はステップ207に進み、0より大きい場合はステップ208に進む(図11のステップ206)。
【0179】
0以下の場合はスピン系を更新し、ステップ211に進む(図11のステップ207)。即ち、1つのスピンが反転した状態のスピン系を選択してステップ210に進む。
【0180】
一方、0より大きい場合、即ち1つのスピンを反転させるとエネルギーが上がる場合は、スピン系がこの状態(1つのスピンが反転した状態)で存在する確率P(H)をボルツマン分布を用いた以下の式(ホ)から求める(図11のステップ208)。
【0181】
【数13】
【0182】
ここで、Tはステップ201で読み込んだものを用いる。
【0183】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、P(H)が一様乱数Ra[0,1]以上か否かを判断し(図11のステップ209)、Ra以上の場合はステップ207に進んで(1つのスピンが反転した状態の)スピン系を選択する。
【0184】
一方、Ra以下の場合は、スピン系を更新せずに(反転前のスピン系を選択して)ステップ210に進む。
【0185】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、ステップ203〜ステップ210までの一連の演算の反復回数がスピン2001の数であるNs回(1モンテカルロステップ、1MS)に達したか否かを判断し、1MSに達した場合はステップ211に進み、達しない場合はステップ203に戻って演算を続ける(図11のステップ210)。
【0186】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、選択されたスピン系に基づき、式(ヘ)より磁化M(磁化ベクトル)を求める(図11のステップ211)。
【0187】
即ち、式(ヘ)はスピンと磁化の関係を示しており、式(ヘ)に平衡状態におけるスピン系を構成するスピンを代入して磁化M(磁化ベクトル)を求める。
【0188】
【数14】
【0189】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、磁化M(磁化ベクトル)が収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たす場合はステップ213に進み、満たさない場合はステップ203に戻って演算を続ける(図11のステップ212)。
【0190】
具体的には、ステップ211で求められた磁化M(磁化ベクトル)と、1つ前の1MS後にステップ211で求められたMとの差分が一定値以内であるか否かを判定し、一定値以内の場合はステップ213に進み、満たさない場合はステップ203に戻って演算を続ける。
【0191】
収束条件を満たす場合は磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、数モンテカルロステップ分(多くても数十回程度)の磁化Mの平均値を計算し、これを磁化M(磁化ベクトル)とする(図11のステップ213)。
【0192】
このように、本実施形態では、磁性体の磁化を求める際に、スピン系(の平衡状態)で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いており、モンテカルロ法を用いて求めた平衡状態におけるスピン系から、磁性体の磁化を求めている。
【0193】
そのため、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した解析が可能であり、実機における磁性体の挙動を正確に把握できる。また、モンテカルロ法の適用にあたって、確率変数にボルツマン分布を用いているため、時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できる。
【0194】
以上が磁化ベクトルの具体的な計算方法である。
【0195】
次に、制御部3は、式(17)、式(18)、(19)を、磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内の全てのp点に対して計算し、計算された磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
【0196】
以上が、図5のステップ106の詳細である。
【0197】
次に、磁場解析装置1の制御部3はステップ106で計算し記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルに束縛力を加え、計算された磁場ベクトルを、記憶装置5に記憶する(図5のステップ107)。
【0198】
ここで、図5のステップ107について、具体的に説明する。
【0199】
磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルに以下に示す式(20)、式(21)に従って束縛力を加える。
【0200】
【数15】
【0201】
ここで、太字のHは磁場ベクトル、αは仮想質量、δtは仮想時間刻み、γは減衰定数、Nは磁性体を構成する粒子数、sは磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の面数であり、添え字のiは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量、ipは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の物理量、添え字のnは任意の整数であり、nδtにおける物理量、n+1は(n+1)δtにおける物理量に対応している。
【0202】
磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用いて、ステップ106で計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルを読み込む。
【0203】
制御部3は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている仮想質量、仮想時間刻み、減衰定数を読み込む。
【0204】
制御部3は、磁性体を構成する粒子各々に対して式(20)、式(21)に基づく計算を行い、計算された磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
【0205】
以上が、ステップ図5の107の詳細である。
【0206】
次に、磁場解析装置1の制御部3はステップ107で求めた磁場ベクトルが束縛条件を満たしているかを判断し、満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップ107に戻る(図5のステップ108)。
【0207】
具体的には制御部3は、ステップ107で計算し記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子各々の磁場ベクトルから計算される磁化ベクトルを用いて式(22)に基づく計算を行う。
【0208】
【数16】
【0209】
ここで、添え字のn+1は(n+1)δtおける物理量に対応している。
【0210】
erriは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の束縛条件に対する誤差値である。
【0211】
磁化ベクトル(太字の)Mは、以下のように求められる。
【0212】
即ち、ステップ107において計算され記憶装置5に記憶されている磁場ベクトルを制御部3が読み込み、当該磁場ベクトルと、ステップ101より入力情報21に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係から磁化ベクトルを求める。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0213】
法線ベクトル(太字の)nには、ステップ104において既に計算され記憶装置5に記憶されているものを制御部3は読み込み代入する。
【0214】
制御部3は、すべての粒子に対して、誤差の値が式(23)を満たさなければステップ107に戻る。
【0215】
【数17】
【0216】
式(23)においてA1は任意の誤差判別値であり、あらかじめ記憶装置5に任意の値が記憶されている。
【0217】
以上が図5のステップ108の詳細である。
【0218】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、磁性体の磁化現象が定常状態に到達したかを判断し、条件を満たしていれば次のステップに進む。(図5のステップ109)
ここで、図5のステップ109について、具体的に説明する。
【0219】
磁性体を構成する粒子が定常状態に到達したかは、以下の式(24)により判断される。
【0220】
【数18】
【0221】
ここで、太字のHは磁場ベクトル、μ0は真空の透磁率、Nは磁性体を構成する粒子の粒子数、sは磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の面数であり、添え字のipは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点での物理量である。
【0222】
さらに、添え字のnは任意の整数であり、nδtにおける物理量、n―1は(n―1)δt、n+1は(n+1)δtおける物理量に対応している。
【0223】
また、A2は磁性体の磁場ベクトルが定常状態に到達したかを判断するための任意の誤差判定値である。
【0224】
磁場解析装置1の制御部3は、あらかじめ記憶装置5に記憶されているA2、μ0を読み込む。
【0225】
また、制御部3は、ステップ109で計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルを読み込む。
【0226】
次に、制御部3は式(24)を計算し、式(24)を満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップ106に戻る。
【0227】
以上が図5のステップ109の詳細である。
【0228】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、磁性体を構成するすべての粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトル、磁化ベクトル、磁束密度ベクトルと、コイルを構成するすべての粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトル、磁束密度ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ110)。
【0229】
以下にステップ110を具体的に説明する。
【0230】
(磁性体を構成する粒子)
磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルは以下の式(25)で表される。
【0231】
【数19】
【0232】
ここで、(太字の)ex=(1,0,0)、(太字の)ey=(0,1,0)、(太字の)ez=(0,0,1)である。
【0233】
太字のHは磁場ベクトル、太字のnは法線ベクトルであり、添え字iは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量を表し、添え字ipは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の物理量である。
【0234】
磁性体を構成する粒子の磁化ベクトルは、磁性体の磁化と磁場の関係から求められる。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0235】
磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上での磁束密度ベクトルは、式(26)で表される。
【0236】
【数20】
【0237】
ここで、太字のBは磁束密度ベクトル、太字のHは磁場ベクトル、太字のMは磁化ベクトルであり、添え字のiは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量を指し示す。
【0238】
μ0は真空の透磁率である。
【0239】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ110までで計算されている、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点での磁場ベクトルを記憶装置5から読み込む。
【0240】
次に、制御部3は、ステップ104で既に計算され記憶装置5に記憶されている法線ベクトルを読み込み、式(25)に基づいて磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上での磁場ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0241】
さらに、制御部3は、このステップで計算された磁場ベクトルと、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係から、磁性体を構成する粒子の磁化ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0242】
次に制御部3は、このステップで計算された磁場ベクトルと磁化ベクトルを式(26)に代入し、磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上の磁束密度ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0243】
なお、真空の透磁率はあらかじめ記憶装置5に記憶されているものを制御部3が読み込む。
【0244】
(コイルを構成する粒子)
コイルを構成する粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルは式(27)、式(28)で記載される。
【0245】
【数21】
【0246】
ここで、太字のrは位置ベクトル、太字のHは磁場ベクトル、Nは磁性体を構成する粒子の数、sおよびΔSは磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素の境界面数と境界面積、太字のMは磁化ベクトル、太字のnは法線ベクトルであり、添え字のiはコイルを構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量、jは磁性体を構成する粒子の内、j番目の粒子の位置ベクトル上での物理量であり、jqは磁性体を構成する粒子の内、j番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素のq点での物理量を指し示す。
【0247】
式(27)の右辺第一項は、磁性体を構成する粒子がコイルを構成する粒子の位置ベクトル上に作る磁場ベクトルを記述する項であり、式(28)で表される。
【0248】
式(27)の右辺第二項は、コイルを構成する粒子がコイルを構成する粒子の位置ベクトル上に作る磁場ベクトルであり式(1)〜(12)で表される。
【0249】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ103において計算し記憶装置5に記憶されているコイルを構成する粒子の位置ベクトルを記憶装置5より読み込む。
【0250】
なお、ステップ113においてコイルを構成する粒子の位置ベクトルが更新されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0251】
次に、制御部3はステップ102より計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子の数と多面体要素の面数、および粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のq点の位置ベクトルを読み込む。
【0252】
また、制御部3はこのステップで計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子の磁化ベクトルを読み込む。
【0253】
さらに、制御部3はステップ103において計算され記憶装置5に記憶されているコイルの寸法およびステップ101で入力情報21として記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを読み込む。
【0254】
なお、ステップ116において電流密度ベクトルが更新されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0255】
その後、制御部3は式(27)、式(28)および式(1)〜(12)に従い、コイルを構成する粒子の位置ベクトル上での磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0256】
制御部3は、コイルを構成する粒子の位置ベクトル上での磁束密度ベクトル(太字の)Biを、すでに計算されているコイルを構成する粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルに真空の透磁率を掛けて計算し記憶装置5に記憶する。
【0257】
真空の透磁率は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている。
【0258】
以上が、ステップ110の詳細である。
【0259】
このように、制御部3は、磁場の運動方程式を解くことにより磁性体の磁化現象を解析する。
【0260】
そのため、有限要素法のように空間全域をメッシュ分割する必要がなく、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる。
【0261】
また、運動方程式を解くため、行列を扱わず、計算に必要なメモリ量は粒子数に比例する。
【0262】
次に、磁場解析装置1の制御部3はSPMモータ31を構成する全ての粒子に働く力ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ111)。
【0263】
以下に図5のステップ111を具体的に説明する。
【0264】
(磁性体を構成する粒子に働く力ベクトル)
正準変数を太字のri、太字の傍点付きriとし、式(13)のラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入する。
【0265】
すると、磁性体を構成する粒子に働く力は式(29)のように記載される。
【0266】
【数22】
【0267】
ここで、μ0は真空の透磁率、太字のHは磁場ベクトル、太字のMは磁化ベクトル、太字のrは位置ベクトル、ΔVは体積、Nは磁性体を構成する粒子数であり、添え字のi、jは磁性体を構成する粒子の内、i番目、j番目の粒子の物理量を指し示し、iqは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子を重心とする多面体要素内のq点の物理量を指し示す。
【0268】
また、φ(ri−rj)はi番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギである。
【0269】
本実施形態ではSPMモータを剛体(粒子間の相対距離が不変)とする。
【0270】
剛体モデルとすると、磁性体を構成する粒子に働く力は式(30)のように記載される。
【0271】
【数23】
【0272】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ110までにおいて計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点での磁場ベクトルを読み込む。
【0273】
制御部3は、p点での磁場ベクトルと、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係から、p点での磁化ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0274】
また、制御部3は、ステップ104で計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積を読み込む。
【0275】
次に、制御部3は、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルの偏微分を計算し、その値に基づいて、式(30)より力ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0276】
(コイルを構成する粒子に働く力ベクトル)
コイルを構成する粒子のうち、i番目の粒子の位置ベクトルを太字のri、その位置ベクトルでの電流の単位ベクトルを太字のti、磁束密度ベクトルを太字のBi、電流の流れる方向のコイルの長さをLiとすると、コイルを構成する粒子の内、i番目の粒子に働く力ベクトルは以下の式(31)で記載される。
【0277】
【数24】
【0278】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ103において計算され記憶装置5に記憶されているコイルを構成する粒子の位置ベクトルを読み込む。
【0279】
なお、ステップ113においてコイルを構成する粒子の位置ベクトルが更新されている場合は制御部3はその値を読み込む。
【0280】
また、制御部3はステップ103において計算され記憶装置5に記憶されているコイルの寸法を読み込む。
【0281】
次に、制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されているコイルの電流密度ベクトルを読み込む。
【0282】
なお、制御部3は、ステップ116においてコイルの電流密度ベクトルが更新されている場合はその値を用いる。
【0283】
制御部3は、式(31)に基づいて、コイルを構成する粒子に働く力ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0284】
以上が、図5のステップ111の詳細である。
【0285】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、ステップ111で計算した可動部(移動子)を構成する粒子に働く力ベクトルから、可動部(移動子)の回転量、角速度、並進量、並進速度を計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ112)。
【0286】
以下に図5のステップ112を具体的に説明する。
【0287】
剛体の並進運動の運動方程式は式(32)で表される。
【0288】
【数25】
【0289】
ここで、mtotは可動部(移動子)の質量、太字のrcは可動部(移動子)において任意に定めた代表点の位置ベクトル、太字のFは可動部(移動子)を構成する粒子に働く力ベクトル、Nは可動部(移動子)を構成する粒子数である。
【0290】
次に、任意の固定点の周りの回転運動の運動方程式は式(33−1)、式(33−2)、式(33−3)で表される。
【0291】
【数26】
【0292】
ここで、I1、I2、I3は剛体の主慣性モーメント、ω1、ω2、ω3は慣性主軸座標系での角速度、N1、N2、N3は慣性主軸座標系でのトルクである。
【0293】
本実施例のSPMモータ31のロータ31はロータシャフト41を通じてある回転軸に固定されている。
【0294】
固定された回転軸をz軸とすると、ロータ31の運動は以下のように計算される。
【0295】
ロータ31はロータシャフト41を通じてz軸に固定されているため、z軸周りの回転運動の運動方程式を解くことで、ロータ31の運動は計算される。
【0296】
z軸周りのロータ31の回転運動の運動方程式は式(34)で表される。
【0297】
【数27】
【0298】
ここで、Izはロータ31の慣性モーメント、ωzはz方向の角速度、Nzはz方向のトルクである。
【0299】
式(34)を蛙飛び法で離散化すると、以下の式(35)、式(36)を得る。
【0300】
【数28】
【0301】
ここで、θzはz軸周りの回転量であり、dtは微小時間刻み幅である。
【0302】
また、添え字のn−1/2、n、n+1/2、n+1はそれぞれ(n―1/2)dt、ndt、(n+1/2)dt、(n+1)dt秒での物理量に対応している。
【0303】
時間刻み幅は記憶装置5にあらかじめ任意の値が記憶されているものを制御部3が読み込む。
【0304】
回転量、角速度の初期値は記憶装置5にあらかじめ任意の値が記憶装置5に記憶されている。
【0305】
なお、すでにステップ112においてロータ31の回転量、角速度が更新されている場合はその値を用いる。
【0306】
制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されているロータ31の三次元構造と質量密度により慣性モーメントを計算する。
【0307】
さらに、制御部3は、ロータ31を構成する粒子の位置ベクトルと、ステップ111で計算し記憶装置5に記憶されているロータ31を構成する粒子に働く力ベクトルに基づいて、式(35)、式(36)を計算し、dt秒後のロータ31の回転量と角速度を計算し記憶装置5に記憶する。
【0308】
以上が、図5のステップ112の詳細である。
【0309】
次に、磁場解析装置1の制御部3はステップ112で計算した微小時間後の回転量や重心の移動量を基に、移動子を構成している粒子の位置ベクトルを計算し、記憶する(図5のステップ113)。
【0310】
次に、磁場解析装置1の制御部3は必要に応じてSPMモータ31を構成する粒子の位置ベクトル、力ベクトル、磁場ベクトル、磁束密度ベクトル、磁化ベクトルをプリンタポート11を介してプリンタ12より出力する(図5のステップ114)。
【0311】
次に、磁場解析装置1の制御部3は所定の終了条件(時間、移動量等)を満たしているかを判断し、満たしている場合は解析を終了し、満たしていない場合はステップ116に進む(図5のステップ115)。
【0312】
次に、磁場解析装置1の制御部3は必要に応じてコイル45に流れる電流密度ベクトルを更新し、ステップ104に戻る(図5のステップ116)。
【0313】
以上が本実施形態に係る磁場解析の手順である。
【0314】
このように、本実施形態によれば、磁場解析装置1が粒子のラグラジアンから導出される運動方程式を解くことで磁性体の磁化現象を計算する。
【0315】
そのため、有限要素法のように空間全域をメッシュ分割する必要がなく、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる。
【0316】
また、行列を扱わないので、計算に必要なメモリは粒子(要素)数に比例する。そのため、非対称密行列を扱う計算に比べてメモリを大幅に減少させることができる。
【0317】
さらに、本実施形態によれば、磁性体の磁化を求める際に、モンテカルロ法を用いて求めた平衡状態のスピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いている。
【0318】
そのため、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した解析が可能であり、実機における磁性体の挙動を正確に把握できる。また、モンテカルロ法の適用にあたって、確率変数にボルツマン分布を用いているため、時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できる。
【0319】
また、本実施形態によれば、磁性体を構成する粒子のラグランジアンから導出された磁場の運動方程式の解を演算しているため、外部からの入力が変化しない場合、系の全エネルギーが保存される。
【産業上の利用可能性】
【0320】
上記した実施形態では、本発明を磁性体を構成する粒子のラグラジアンから導出される運動方程式を解くことで磁性体の磁化現象を計算した場合について説明したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、運動方程式であればラグランジアンから導出されたもの以外のものであってもよい。
【0321】
また、上記した実施形態では本発明をSPMモータ31の磁場解析に使用したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、磁性体が配置された空間における任意の磁場を解析するものであれば、例えばリニアモータ等のSPMモータ31以外のモータ、あるいは磁性体で空間を囲む磁気シールドにおいて、磁性体でシールドされた空間内の磁場解析に用いても良い。
【符号の説明】
【0322】
1…………磁場解析装置
3…………制御部
5…………記憶装置
7…………入力部
9…………表示部
11………プリンタポート
12………プリンタ
13………バス
31………SPMモータ
33………ロータ
35………ステータ
37………ロータコア
39………永久磁石
41………ロータシャフト
43………ステータティース
44………コアバック
45………コイル
46………フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場解析装置および磁場解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ等の磁気エネルギーを駆動源とする電気機器は、高精度化、高効率化が要求されると同時に、開発スピードのアップが求められている。
【0003】
このような要求を満たすためには電気機器の磁場解析による検証は不可欠となっている。
【0004】
磁場解析の手法としては従来、有限要素法が広く用いられてきた。
【0005】
例えば特許文献1では、空気中に磁気コアが存在する場合の磁場解析例として、有限要素法を用いた解析方法が記載されている。
【0006】
また、磁場解析においては磁性体の磁化を求めるために磁化曲線を用いる必要があるが、従来は特許文献2に記載のように、ヒステリシスを無視した曲線(初期磁化曲線)を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−188042号公報
【特許文献2】特開平05−54161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように、有限要素法によって磁場解析を行う場合は、対象とする電気機器を含んだ空間全域をメッシュ分割する必要がある。
【0009】
そのため、大規模、複雑形状の電気機器の解析や、積層鉄心等の高アスペクト比問題を取り扱う場合、解析に膨大な時間と解析機器のメモリを要し、十分な精度で効率よく磁場解析を行うのが困難であるという問題があった。
【0010】
また、特許文献2のように、初期磁化曲線を用いて磁性体の磁化を求めた場合は、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮しないため、実機における磁性体の挙動を正確に把握できないという問題があった。
【0011】
さらに、特許文献2では、磁化特性の温度依存性を考慮していないため、時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できないという問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる磁場解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明者は鋭意検討の結果、情報処理装置を使って磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の解を演算し、磁場の運動方程式の解に基づいて磁性体が配置された空間の任意の場所の磁場を演算することにより、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができることを見出し、本発明をするに至った。
【0014】
また、磁性体の磁化を求める際に、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いることにより、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した磁場解析を行うことができることも見出し、本発明をするに至った。
【0015】
即ち、第1の発明は、磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析装置であって、前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と、磁場の運動方程式を記憶する記憶手段と、前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数、変数の初期値および定数を演算して、前記磁場の運動方程式の解を演算し、該解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する演算手段と、を有することを特徴とする磁場解析装置である。
【0016】
第2の発明は、コンピュータを第1の発明に記載の磁場解析装置として機能させるためのプログラムである。
【0017】
第3の発明は、磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析方法であって、前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と磁場の運動方程式を記憶する工程(a)と、前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数および変数の初期値および定数を演算して、磁場の運動方程式の解を演算し、磁場の運動方程式の解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する工程(b)と、を有することを特徴とする磁場解析方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、磁性体を有する系に対して、解析対象を含む空間全域をメッシュ分割する必要なく、かつ磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した、十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる磁場解析装置を提供することができる。
【0019】
また、磁性体を構成する粒子のラグランジアンから導出された磁場の運動方程式の解を演算しているため、入力が変化しない場合、系の全エネルギーが保存される。
【0020】
さらに、本発明では、磁性体の磁化を求める際に、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いているため、磁気ヒステリシスを考慮した解析ができ、かつ時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】磁場解析装置1のハードウェア構成を示す図である。
【図2】記憶装置5を示す図である。
【図3】SPMモータ31の構成の概略を示す図である。
【図4】図3のステータティース43の1つの周囲の拡大斜視図である。
【図5】磁場解析装置1を用いた磁場の解析の手順を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)はコイル45の拡大斜視図であって、図6(b)はコイル45を、ローカル導体に分割した例を示す図である。
【図7】直方体導体45aとローカル座標の関係を示す図である。
【図8】円弧状柱状導体45cとローカル座標の関係を示す図である。
【図9】磁性体の磁場計算に用いる要素の説明図である。
【図10】スピン群1001を示す模式図である。
【図11】磁性体の磁化(磁化ベクトル)の具体的な計算方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
【0023】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係る磁場解析装置1のハードウェア構成を説明する。
【0024】
なお、図1のハードウェア構成は例示であり、これに限定されないのは当然である。
【0025】
図1に示すように、磁場解析装置1は制御部3、記憶装置5、メディア入出力部6、入力部7、表示部9、プリンタポート11等がバス13を介して互いに接続されている。
【0026】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、記憶部としての記憶装置5に格納されたプログラムに従って、バス13を介して接続された各装置を駆動制御する。
【0027】
図2に示すように、記憶装置5には、磁場解析装置1の各構成部分を駆動制御するための制御プログラム15、本発明を実施するための磁場解析プログラム17が格納されている。
【0028】
磁場解析プログラム17は、解析条件を有する情報である入力情報21と、入力情報21に基づき、磁場の運動方程式に基づいて磁場を演算する演算プログラム19とを有している。
【0029】
メディア入出力部6は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD等のメディアとの間で情報の入出力を行う装置である。
【0030】
入力部7は、キーボード、マウス等の入力装置であり、表示部9はディスプレイ等の表示機器である。
【0031】
プリンタポート11には出力装置としてのプリンタ12等が接続される。
【0032】
次に、磁場解析装置1を用いた磁場の解析の手順について図3〜11を参照して説明する。
【0033】
ここではPMモータ(Permanent Magnet Motor)の一種である、SPMモータ31(Surface Permanent Magnet Motor)の磁場解析を例にして説明する。
【0034】
まず、SPMモータ31の構成の概略を図3および図4を参照して説明する。
【0035】
図3に示すように、SPMモータ31は回転子(移動子)であるロータ33と固定子であるステータ35を有している。
【0036】
ロータ33は鉄等の磁性体である円柱状のロータコア37を有し、ロータコア37の表面には永久磁石39が設けられている。
【0037】
ロータコア37の軸中心には棒状のロータシャフト41が設けられている。
【0038】
ステータ35は磁性体である歯状のステータティース43とステータティース43の外側に設けられた円筒状の磁性体であるコアバック44、コアバック44の外側に設けられた円筒状のフレーム46から構成されている。
【0039】
図3および図4に示すように、ステータティース43には、金属等の導電体であるコイル45が巻きつけられている。
【0040】
なお、実際のSPMモータ31ではコイル45は仕様に応じたターン数でステータティース43に巻きつけられて束となっているが、本実施形態では、図3および図4に描かれているように、コイル一本一本をモデル化せず、コイルの束を一つの導体として扱う。
【0041】
このような構造のSPMモータ31は、永久磁石39の磁場、およびコイル45に電流を流すことにより発生する磁場によって、ロータ33、ステータ35が磁化する。磁性体の磁気エネルギーの偏差によりSPMモータ31は駆動する。
【0042】
そのため、SPMモータ31の磁場解析を行うためにはコイル45、永久磁石39がロータ33、ステータ35を構成する磁性体上に作る磁場ベクトルを計算し、これら磁性体の磁化現象を解析する必要がある。
【0043】
次に、解析の手順について図5〜図11を参照して説明する。
【0044】
なお、以下の手順においてはSPMモータ31を、複数に要素分割して要素ごとの粒子の集合体とし、剛体モデルとして扱っているが、本発明はこれに限定されることはなく、粒子を用いずに要素ごとの剛体モデルとして扱ってもよい。
【0045】
また、以下の手順において、磁性体とは、ロータ33、ステータ35を構成する磁性体と永久磁石39を指し示し、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係によってこれらは区別される。
【0046】
まず、磁場解析装置1の制御部3は磁場解析プログラム17を起動し、解析したいSPMモータ31の解析条件としての三次元構造(形状、座標点)、質量密度、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係(詳細は後述)や初期条件、導体の電流密度ベクトルを記憶装置5の入力情報21として記憶する(図5のステップ101)。
【0047】
これらの物理量は例えばメディア入出力部6を介してCD−ROM等の記録媒体から読込んだものであってもよい。
【0048】
また、SPMモータ31の三次元構造の情報とは例えばCAD等のデータである。
【0049】
さらに、あらかじめ上記物理量が入力情報21として記憶されている場合は、上記ステップは不要である。
【0050】
電流密度ベクトルは、コイル45の作る磁場ベクトルを計算する際に必要になる。
【0051】
さらに、スピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係は磁化ベクトル(太字の)Mを計算する際に必要になるものである。具体的には、当該関係はスピン系の平衡状態で表現される関係であり、後述するようにモンテカルロ法を用いて平衡状態におけるスピン系を求めることにより、磁化ベクトルを計算する。
【0052】
以上が図5のステップ101の詳細である。
【0053】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、入力情報21の有する三次元構造の情報から、磁性体をN個の粒子(粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素(本実施例では立方体要素)に分割し、粒子の位置ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ102)。
【0054】
ここで、Nは任意の整数であり、粒子の数Nおよび位置ベクトルは入力情報21の有する三次元構造およびあらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状により計算される。
【0055】
以上が図5のステップ102の詳細である。
【0056】
次に、制御部3は、入力情報21の有する三次元構造の情報から、導体(図6(a)に示すコイル45)を図6(b)に示すようにローカル導体(直方体導体45a、45bと円弧状柱状導体45c、45d)に分割し、それぞれの導体が作る磁場ベクトルを計算するための係数を計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ103)。
【0057】
ここで、図5のステップ103について、具体的に説明する。
【0058】
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
【0059】
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、制御部3は、図7に示すように、ローカル座標系(xs,ys,zs)を適用する。
【0061】
このローカル座標系においてはローカル導体(直方体導体45a)の重心を原点Osとし、直方体導体45aの寸法はxs方向に2a、ys方向に2b、zs方向に2cの長さを持つものとする。
【0062】
また原点Osに粒子は位置するものとする。
【0063】
制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている導体の三次元構造と電流密度ベクトルを読み込み、ローカル導体(直方体導体45a)の寸法であるa,b,cと粒子位置ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0064】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
【0065】
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、制御部3は、図8に示すようにローカル座標系(xc,yc,zc)を適用する。
【0067】
このローカル座標系においては原点Ocは円弧の中心軸上に存在し、かつ円弧状柱状導体45cの高さ方向(図8のzc方向)に対して円弧状柱状導体45cが対称となる点に存在するものとする。
【0068】
また、xc,yc,zcは、xc−yc平面でみると、+xc軸を基点とし、円弧状柱状導体45cの円弧が+zc軸からみて反時計回りになるようして決定する。
【0069】
円弧状柱状導体45cの内径と外径の平均値をRcとし、径方向の厚さを2ra、zc方向の高さを2zbとする。
【0070】
電流は+xc軸を基点として、+zcから見て反時計回りの方向への角度をθとし、電流はこの方向に一様な電流密度jで流れているものとする。
【0071】
粒子は円筒座標系で(Rc、θ/2、0)に位置するものとする。
【0072】
制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている導体の三次元構造と電流密度ベクトルを読み込み、ローカル導体(円弧状柱状導体45c)の寸法であるra、zb、θ、Rcおよび粒子位置ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0073】
さらに、あらかじめ上記物理量が入力情報21として記憶されている場合は、上記ステップは不要である。
【0074】
以上が図5のステップ103の詳細である。
【0075】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、このステップまでに計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成するN個の粒子の位置ベクトルと、あらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状により、磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数を計算し記憶装置5に記憶する(図5のステップ104)。
【0076】
ここで、図5のステップ104について、具体的に説明する。
【0077】
分割した多面体要素(本実施形態では立方体要素)を2次元表示すると図9に示す形状となる。
【0078】
ここで、粒子の位置ベクトルを(太字の)rg、粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の要素境界面の中点をq点とし、粒子の位置ベクトルとq点との中間点にp点を定義する。
【0079】
制御部3は、ステップ102において計算し記憶装置5に記憶している磁性体を構成する粒子(粒子を重心とする多面体要素(本実施形態では立方体要素))の位置ベクトルを読み込む。
【0080】
なお、ステップ113において粒子の位置ベクトルが更新され記憶装置5に記憶されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0081】
制御部3は、粒子の位置ベクトルとあらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状から、磁性体を構成するすべての粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点とq点の位置ベクトルと要素境界面への法線ベクトル(太字の)nを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0082】
次に、制御部3は、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素の境界面積ΔS、および粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積ΔVを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0083】
以上が図5のステップ104の詳細である。
【0084】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、ステップ103で記憶装置5に記憶されているコイルの寸法およびこのステップまでに記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを用いて、ビオ・サバールの法則を積分することにより得られる解析解により、通電されたコイル45が、磁性体を構成する粒子上に作る磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ105)。
【0085】
ここで、図5のステップ105について、具体的に説明する。
【0086】
ここでは、任意の位置ベクトルが図4における磁性体としてのステータティース43のある点Pであると仮定した場合に、通電されたコイル45がP点の位置ベクトル上に作る磁場ベクトルを計算する手順を例に説明する。
【0087】
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
【0088】
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、図7に示すようにローカル座標系(xs,ys,zs)を適用する。
【0090】
このローカル座標系はステップ103で説明している。
【0091】
次に、P点の位置ベクトルをローカル座標系(xs,ys,zs)に変換する。
【0092】
通電された直方体導体がP点に作る磁場ベクトルは、以下に示す式(1)〜(3)で記載される。
【0093】
【数1】
【0094】
ここで、(太字の)rpsはローカル座標系(xs,ys,zs)でのP点の位置ベクトルであり、xps,yps,zpsはxs,ys,zs方向の値である。
πは円周率である。
【0095】
Hxs、Hys、Hzsはローカル座標系(xs,ys,zs)における磁場ベクトルの各成分である。
jは電流密度である。
【0096】
また、xi,yj,zkはxs,ys,zs方向の積分の上限、下限を表しており、式(4)に示す関係が成立する。
【0097】
【数2】
【0098】
ここで、a,b,cは直方体導体の寸法である。
【0099】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
【0100】
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、図8に示すようにローカル座標系(xc,yc,zc)を適用する。
【0102】
このローカル座標系はステップ103において説明している。
【0103】
ローカル座標系(xc,yc,zc)に変換後のP点の位置ベクトルを以下の式(5)に示すように円筒座標系(太字の)rpc=(Rpc、φpc、Zpc)に変換する。
【0104】
通電された円弧状柱状導体45cがP点に作る磁場ベクトルは、以下の式(6)〜(11)で表される。
【0105】
【数3】
【0106】
ここで、Hrc、Htc、Hzcは円筒座標系での磁場ベクトルの各成分である。
jは電流密度である。
【0107】
ra、θ、zbは円弧状柱状導体45cの寸法であり、Rcは円弧の内径と外径の平均値である。
【0108】
sgnはZkの符号であり、Rj、Zkは積分の上限、下限を表しており、式(12)に示す関係が成立する。
【0109】
【数4】
【0110】
以上が任意の点Pにコイルが作る磁場ベクトルの計算手順である。
【0111】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ104で既に計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成するすべての粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内部のp点の位置ベクトルを読み込む。
【0112】
次に、制御部3は、p点の位置ベクトルをローカル座標系(xs,ys,zs)に変換し、ステップ103で計算され記憶装置5に記憶されている直方体導体45aの寸法と、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを読み込み、式(1)〜(4)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
【0113】
なお、電流密度ベクトルがステップ116で更新され記憶装置5に記憶されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0114】
次に、制御部3は、式(1)〜(4)で計算された磁場ベクトルをグローバル座標系(x,y,z)に変換し、変換後の磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
【0115】
これにより、通電された直方体導体45aが、p点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0116】
さらに制御部3は、p点の位置ベクトルをローカル座標系(xc,yc,zc)に変換し、さらに円筒座標系(太字の)rpc=(Rpc、φpc、Zpc)に変換する。
【0117】
次に制御部3は、ステップ103で計算し記憶装置5に記憶している円弧状柱状導体45cの寸法ra、θ、zbおよびRcを読み込み、また、制御部3はステップ101で入力情報21として記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを読み込む。
【0118】
なお、電流密度ベクトルがステップ116で更新され記憶装置5に記憶されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0119】
制御部3は式(6)〜(12)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
【0120】
次に、計算された磁場ベクトルを直交座標系に変換し、さらにグローバル座標系(x,y,z)に変換し記憶装置5に記憶する。
【0121】
これにより、通電された円弧状柱状導体45cがp点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0122】
以上が、図5のステップ105の詳細である。
【0123】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用いて磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式から束縛を考慮せずに仮想時間刻みδt後の磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ106)。
【0124】
ここで、図5のステップ106について、具体的に説明する。
【0125】
磁性体を構成するN個の粒子のラグランジアンを式(13)〜式(15)で表される形とする。
【0126】
【数5】
【0127】
ここで、式(13)において、αは仮想質量、太字のrは位置ベクトル、太字のHは磁場ベクトル、太字の傍点付きHは磁場ベクトルの時間微分、太字のMは磁化ベクトル、太字のnは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の法線ベクトル、太字のHextは外部からの印加磁場ベクトル、ΔSは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の要素境界面の面積、ΔVは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積、χは磁気感受率、μ0は真空の透磁率、λはラグランジュの未定定数、πは円周率、sは粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の要素境界面数である。
【0128】
また、各物理量の添え字ipはi番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内でのp点の物理量、添え字jqはj番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内でのq点の物理量を示す。
【0129】
p点、q点はステップ104において説明している。
【0130】
式(13)において、mは粒子の質量、vは速度、φ(ri−rj)はi番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギである。添え字i、jはそれぞれ、i、j番目の粒子の物理量を示す。
【0131】
次に、正準変数を(太字の)Hip、(太字の傍点付き)Hipとし、式(13)〜式(15)で示されるラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入すると、磁場の運動方程式は式(16)のように記載できる。
【0132】
【数6】
【0133】
ここで、式(16)の右辺第2項は、ラグランジュの未定定数を通して束縛(磁化ベクトルの発散は0)を課している。
【0134】
式(16)の右辺第3項は外部からの印加磁場ベクトルが変化したときにすばやく追従させるための減衰項であり、γは減衰定数である。
【0135】
式(16)の右辺第2項に示される束縛を含んだ運動方程式を解くにあたり、本実施形態では、一般化された束縛の導入法であるSHAKE法を採用する。
【0136】
束縛を考慮せずに蛙跳び法により式(16)を離散化すると以下の式(17)、式(18)、(19)になる。
【0137】
【数7】
【0138】
ここで、δtは磁化現象の収束計算を行う上で用いる仮想時間刻みである。
【0139】
添え字のnは任意の整数であり、nδtにおける物理量、n−1/2は(n−1/2)δtにおける物理量、n+1/2は(n+1/2)δtにおける物理量、n+1は(n+1)δtおける物理量に対応している。
【0140】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ104において既に計算され記憶装置5に記憶されている粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点、q点の位置ベクトルを読み込む。
【0141】
次に、制御部3は、ステップ105で既に計算され記憶装置5に記憶されているコイルが磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内部のp点に作る磁場ベクトルを外部からの印加磁場ベクトルとして読み込む。
【0142】
さらに、制御部3は、ステップ104で既に計算され、記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子の要素境界面積、法線ベクトルおよび粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積を読み込む。
【0143】
また、制御部3はあらかじめ記憶装置5に記憶されている減衰定数、仮想質量、仮想時間刻みを読み込む。
【0144】
次に、制御部3はあらかじめ記憶装置5に記憶されている磁場ベクトル、磁場ベクトルの時間微分の初期値を読み込む。
【0145】
なお、制御部3は後述するステップ107において磁場ベクトル、磁場ベクトルの時間微分が更新されている場合は、その値を読み込む。
【0146】
一方、磁化ベクトルは、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係と、磁場ベクトルから求められる。
【0147】
前述のように、磁性体の磁化と磁場の関係はスピン系(の平衡状態)で表現される関係である。
【0148】
より具体的には、磁性体の磁化と磁場の関係は、磁性体モデルのスピン系の平衡状態で表現される磁場とスピンの関係と、スピン系の平衡状態におけるスピンの総和で表現されるスピンと磁化の関係を有している。
【0149】
また、以下に述べるようにスピン系の平衡状態はモンテカルロ法を用いて求められ、スピン系の平衡状態から磁化ベクトルが求められる。
【0150】
ここで、磁性体モデルの概略および磁化ベクトルの具体的な計算方法について、図10および図11を参照して具体的に説明する。
【0151】
まず、磁性体モデルの概略について図10を参照して説明する。
【0152】
磁性体は磁気モーメントを有しており、磁気モーメントを作り出すのがスピンである。
【0153】
ここで、磁性体内のある粒子に図10に示すように、Ns個のスピン2001の集合であるスピン群1001を持たせた場合、エネルギー式は磁性体モデルを用いて記述できる。
【0154】
磁性体モデルとしてはハイゼンベルグモデルが用いられる。
【0155】
あるいは、ハイゼンベルグモデルの簡易系であるイジングモデルが用いられる。
【0156】
ここでは、イジングモデルを例に説明する。
【0157】
イジングモデルはハイゼンベルグモデルにおけるスピンを1軸方向成分のみと考え、±1で表現するものである。
【0158】
図10において、磁場h(あるいは磁場ベクトル)が印加されている場での、スピンの1つであるスピンSiに相互作用するエネルギーE1は以下の式(イ)で表される。
【0159】
【数8】
【0160】
また、スピン間の相互作用エネルギーE2は以下の式(ロ)で表される。
【0161】
【数9】
【0162】
ここで、Sjは隣接スピン、Jは交換積分(スピン間の相互作用の強さ)である。なお、以後は図10に示すような「スピン全体の状態」を「スピン系」と表現することにする。
【0163】
式(イ)と式(ロ)をまとめたハミルトニアンHiは以下の式(ハ)で表される。
【0164】
【数10】
【0165】
式(ハ)は磁束密度Bやスピンが同方向に揃うとエネルギーが低くなり、スピン系が安定する。
【0166】
なお、ハイゼンベルグモデルを用いる場合、式(ハ)に相当するハミルトニアンHiは以下の式(ハ−2)で表される。
【0167】
【数11】
【0168】
スピン系の総和は以下の式(ニ)で表される。
【0169】
【数12】
【0170】
次に、磁化ベクトルの具体的な計算方法について、図11を参照して説明する。
【0171】
まず、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、磁性体の磁化と磁場の関係(磁場とスピンの関係を示す式(イ)〜(ニ)、および後述する式(ホ)、(へ))や初期条件(スピン2001の数、スピン系、温度、最大磁化等)を記憶装置5から読み込む(図11のステップ201)。
【0172】
なお、ステップ201は、最初にステップ106を実行するときにのみ実行され、2回目以降は実行されない。
【0173】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、磁場解析装置1によって計算された直近の計算結果、具体的には磁場(磁場ベクトル)を式(イ)(式(ハ)もしくは式(ハー2))に代入する(図11のステップ202)。
【0174】
なお、磁場解析装置1が始めてステップ106を実行する場合は、ステップ202は実行されず、磁場(磁場ベクトル)はステップ201の初期条件が用いられる。
【0175】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、式(ニ)からスピン系のエネルギー(ここではH1と称する)を求める(図11のステップ203)。
【0176】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、図10に示すスピン群1001の中の一部のスピンを無作為に反転させる(図11のステップ204)。ここでは1つのスピンを反転させたものとする。
【0177】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、1つのスピンが反転した状態でのエネルギー(ここではH2と称する)を、式(ニ)から求め、H1とH2の差分dH(dH=H2−H1)を求める(図11のステップ205)。
【0178】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、dHが0以下であるか否かを判断し、0以下の場合はステップ207に進み、0より大きい場合はステップ208に進む(図11のステップ206)。
【0179】
0以下の場合はスピン系を更新し、ステップ211に進む(図11のステップ207)。即ち、1つのスピンが反転した状態のスピン系を選択してステップ210に進む。
【0180】
一方、0より大きい場合、即ち1つのスピンを反転させるとエネルギーが上がる場合は、スピン系がこの状態(1つのスピンが反転した状態)で存在する確率P(H)をボルツマン分布を用いた以下の式(ホ)から求める(図11のステップ208)。
【0181】
【数13】
【0182】
ここで、Tはステップ201で読み込んだものを用いる。
【0183】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、P(H)が一様乱数Ra[0,1]以上か否かを判断し(図11のステップ209)、Ra以上の場合はステップ207に進んで(1つのスピンが反転した状態の)スピン系を選択する。
【0184】
一方、Ra以下の場合は、スピン系を更新せずに(反転前のスピン系を選択して)ステップ210に進む。
【0185】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、ステップ203〜ステップ210までの一連の演算の反復回数がスピン2001の数であるNs回(1モンテカルロステップ、1MS)に達したか否かを判断し、1MSに達した場合はステップ211に進み、達しない場合はステップ203に戻って演算を続ける(図11のステップ210)。
【0186】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、選択されたスピン系に基づき、式(ヘ)より磁化M(磁化ベクトル)を求める(図11のステップ211)。
【0187】
即ち、式(ヘ)はスピンと磁化の関係を示しており、式(ヘ)に平衡状態におけるスピン系を構成するスピンを代入して磁化M(磁化ベクトル)を求める。
【0188】
【数14】
【0189】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、磁化M(磁化ベクトル)が収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たす場合はステップ213に進み、満たさない場合はステップ203に戻って演算を続ける(図11のステップ212)。
【0190】
具体的には、ステップ211で求められた磁化M(磁化ベクトル)と、1つ前の1MS後にステップ211で求められたMとの差分が一定値以内であるか否かを判定し、一定値以内の場合はステップ213に進み、満たさない場合はステップ203に戻って演算を続ける。
【0191】
収束条件を満たす場合は磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用い、数モンテカルロステップ分(多くても数十回程度)の磁化Mの平均値を計算し、これを磁化M(磁化ベクトル)とする(図11のステップ213)。
【0192】
このように、本実施形態では、磁性体の磁化を求める際に、スピン系(の平衡状態)で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いており、モンテカルロ法を用いて求めた平衡状態におけるスピン系から、磁性体の磁化を求めている。
【0193】
そのため、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した解析が可能であり、実機における磁性体の挙動を正確に把握できる。また、モンテカルロ法の適用にあたって、確率変数にボルツマン分布を用いているため、時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できる。
【0194】
以上が磁化ベクトルの具体的な計算方法である。
【0195】
次に、制御部3は、式(17)、式(18)、(19)を、磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内の全てのp点に対して計算し、計算された磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
【0196】
以上が、図5のステップ106の詳細である。
【0197】
次に、磁場解析装置1の制御部3はステップ106で計算し記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルに束縛力を加え、計算された磁場ベクトルを、記憶装置5に記憶する(図5のステップ107)。
【0198】
ここで、図5のステップ107について、具体的に説明する。
【0199】
磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルに以下に示す式(20)、式(21)に従って束縛力を加える。
【0200】
【数15】
【0201】
ここで、太字のHは磁場ベクトル、αは仮想質量、δtは仮想時間刻み、γは減衰定数、Nは磁性体を構成する粒子数、sは磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の面数であり、添え字のiは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量、ipは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の物理量、添え字のnは任意の整数であり、nδtにおける物理量、n+1は(n+1)δtにおける物理量に対応している。
【0202】
磁場解析装置1の制御部3は、演算プログラム19を用いて、ステップ106で計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルを読み込む。
【0203】
制御部3は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている仮想質量、仮想時間刻み、減衰定数を読み込む。
【0204】
制御部3は、磁性体を構成する粒子各々に対して式(20)、式(21)に基づく計算を行い、計算された磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
【0205】
以上が、ステップ図5の107の詳細である。
【0206】
次に、磁場解析装置1の制御部3はステップ107で求めた磁場ベクトルが束縛条件を満たしているかを判断し、満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップ107に戻る(図5のステップ108)。
【0207】
具体的には制御部3は、ステップ107で計算し記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子各々の磁場ベクトルから計算される磁化ベクトルを用いて式(22)に基づく計算を行う。
【0208】
【数16】
【0209】
ここで、添え字のn+1は(n+1)δtおける物理量に対応している。
【0210】
erriは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の束縛条件に対する誤差値である。
【0211】
磁化ベクトル(太字の)Mは、以下のように求められる。
【0212】
即ち、ステップ107において計算され記憶装置5に記憶されている磁場ベクトルを制御部3が読み込み、当該磁場ベクトルと、ステップ101より入力情報21に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係から磁化ベクトルを求める。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0213】
法線ベクトル(太字の)nには、ステップ104において既に計算され記憶装置5に記憶されているものを制御部3は読み込み代入する。
【0214】
制御部3は、すべての粒子に対して、誤差の値が式(23)を満たさなければステップ107に戻る。
【0215】
【数17】
【0216】
式(23)においてA1は任意の誤差判別値であり、あらかじめ記憶装置5に任意の値が記憶されている。
【0217】
以上が図5のステップ108の詳細である。
【0218】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、磁性体の磁化現象が定常状態に到達したかを判断し、条件を満たしていれば次のステップに進む。(図5のステップ109)
ここで、図5のステップ109について、具体的に説明する。
【0219】
磁性体を構成する粒子が定常状態に到達したかは、以下の式(24)により判断される。
【0220】
【数18】
【0221】
ここで、太字のHは磁場ベクトル、μ0は真空の透磁率、Nは磁性体を構成する粒子の粒子数、sは磁性体を構成する粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素の面数であり、添え字のipは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点での物理量である。
【0222】
さらに、添え字のnは任意の整数であり、nδtにおける物理量、n―1は(n―1)δt、n+1は(n+1)δtおける物理量に対応している。
【0223】
また、A2は磁性体の磁場ベクトルが定常状態に到達したかを判断するための任意の誤差判定値である。
【0224】
磁場解析装置1の制御部3は、あらかじめ記憶装置5に記憶されているA2、μ0を読み込む。
【0225】
また、制御部3は、ステップ109で計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルを読み込む。
【0226】
次に、制御部3は式(24)を計算し、式(24)を満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップ106に戻る。
【0227】
以上が図5のステップ109の詳細である。
【0228】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、磁性体を構成するすべての粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトル、磁化ベクトル、磁束密度ベクトルと、コイルを構成するすべての粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトル、磁束密度ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ110)。
【0229】
以下にステップ110を具体的に説明する。
【0230】
(磁性体を構成する粒子)
磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルは以下の式(25)で表される。
【0231】
【数19】
【0232】
ここで、(太字の)ex=(1,0,0)、(太字の)ey=(0,1,0)、(太字の)ez=(0,0,1)である。
【0233】
太字のHは磁場ベクトル、太字のnは法線ベクトルであり、添え字iは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量を表し、添え字ipは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点の物理量である。
【0234】
磁性体を構成する粒子の磁化ベクトルは、磁性体の磁化と磁場の関係から求められる。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0235】
磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上での磁束密度ベクトルは、式(26)で表される。
【0236】
【数20】
【0237】
ここで、太字のBは磁束密度ベクトル、太字のHは磁場ベクトル、太字のMは磁化ベクトルであり、添え字のiは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量を指し示す。
【0238】
μ0は真空の透磁率である。
【0239】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ110までで計算されている、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点での磁場ベクトルを記憶装置5から読み込む。
【0240】
次に、制御部3は、ステップ104で既に計算され記憶装置5に記憶されている法線ベクトルを読み込み、式(25)に基づいて磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上での磁場ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0241】
さらに、制御部3は、このステップで計算された磁場ベクトルと、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係から、磁性体を構成する粒子の磁化ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0242】
次に制御部3は、このステップで計算された磁場ベクトルと磁化ベクトルを式(26)に代入し、磁性体を構成する粒子の位置ベクトル上の磁束密度ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0243】
なお、真空の透磁率はあらかじめ記憶装置5に記憶されているものを制御部3が読み込む。
【0244】
(コイルを構成する粒子)
コイルを構成する粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルは式(27)、式(28)で記載される。
【0245】
【数21】
【0246】
ここで、太字のrは位置ベクトル、太字のHは磁場ベクトル、Nは磁性体を構成する粒子の数、sおよびΔSは磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素の境界面数と境界面積、太字のMは磁化ベクトル、太字のnは法線ベクトルであり、添え字のiはコイルを構成する粒子の内、i番目の粒子の位置ベクトル上での物理量、jは磁性体を構成する粒子の内、j番目の粒子の位置ベクトル上での物理量であり、jqは磁性体を構成する粒子の内、j番目の粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素のq点での物理量を指し示す。
【0247】
式(27)の右辺第一項は、磁性体を構成する粒子がコイルを構成する粒子の位置ベクトル上に作る磁場ベクトルを記述する項であり、式(28)で表される。
【0248】
式(27)の右辺第二項は、コイルを構成する粒子がコイルを構成する粒子の位置ベクトル上に作る磁場ベクトルであり式(1)〜(12)で表される。
【0249】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ103において計算し記憶装置5に記憶されているコイルを構成する粒子の位置ベクトルを記憶装置5より読み込む。
【0250】
なお、ステップ113においてコイルを構成する粒子の位置ベクトルが更新されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0251】
次に、制御部3はステップ102より計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子の数と多面体要素の面数、および粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のq点の位置ベクトルを読み込む。
【0252】
また、制御部3はこのステップで計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体を構成する粒子の磁化ベクトルを読み込む。
【0253】
さらに、制御部3はステップ103において計算され記憶装置5に記憶されているコイルの寸法およびステップ101で入力情報21として記憶装置5に記憶されている電流密度ベクトルを読み込む。
【0254】
なお、ステップ116において電流密度ベクトルが更新されている場合は、制御部3はその値を読み込む。
【0255】
その後、制御部3は式(27)、式(28)および式(1)〜(12)に従い、コイルを構成する粒子の位置ベクトル上での磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0256】
制御部3は、コイルを構成する粒子の位置ベクトル上での磁束密度ベクトル(太字の)Biを、すでに計算されているコイルを構成する粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルに真空の透磁率を掛けて計算し記憶装置5に記憶する。
【0257】
真空の透磁率は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている。
【0258】
以上が、ステップ110の詳細である。
【0259】
このように、制御部3は、磁場の運動方程式を解くことにより磁性体の磁化現象を解析する。
【0260】
そのため、有限要素法のように空間全域をメッシュ分割する必要がなく、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる。
【0261】
また、運動方程式を解くため、行列を扱わず、計算に必要なメモリ量は粒子数に比例する。
【0262】
次に、磁場解析装置1の制御部3はSPMモータ31を構成する全ての粒子に働く力ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ111)。
【0263】
以下に図5のステップ111を具体的に説明する。
【0264】
(磁性体を構成する粒子に働く力ベクトル)
正準変数を太字のri、太字の傍点付きriとし、式(13)のラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入する。
【0265】
すると、磁性体を構成する粒子に働く力は式(29)のように記載される。
【0266】
【数22】
【0267】
ここで、μ0は真空の透磁率、太字のHは磁場ベクトル、太字のMは磁化ベクトル、太字のrは位置ベクトル、ΔVは体積、Nは磁性体を構成する粒子数であり、添え字のi、jは磁性体を構成する粒子の内、i番目、j番目の粒子の物理量を指し示し、iqは磁性体を構成する粒子の内、i番目の粒子を重心とする多面体要素内のq点の物理量を指し示す。
【0268】
また、φ(ri−rj)はi番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギである。
【0269】
本実施形態ではSPMモータを剛体(粒子間の相対距離が不変)とする。
【0270】
剛体モデルとすると、磁性体を構成する粒子に働く力は式(30)のように記載される。
【0271】
【数23】
【0272】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ110までにおいて計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点での磁場ベクトルを読み込む。
【0273】
制御部3は、p点での磁場ベクトルと、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されている磁性体の磁化と磁場の関係から、p点での磁化ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。なお、具体的な方法はステップ106で説明した方法(ステップ201〜ステップ213参照)と同様である。
【0274】
また、制御部3は、ステップ104で計算され記憶装置5に記憶されている磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積を読み込む。
【0275】
次に、制御部3は、磁性体を構成する粒子を重心とする多面体要素内のp点の磁場ベクトルの偏微分を計算し、その値に基づいて、式(30)より力ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0276】
(コイルを構成する粒子に働く力ベクトル)
コイルを構成する粒子のうち、i番目の粒子の位置ベクトルを太字のri、その位置ベクトルでの電流の単位ベクトルを太字のti、磁束密度ベクトルを太字のBi、電流の流れる方向のコイルの長さをLiとすると、コイルを構成する粒子の内、i番目の粒子に働く力ベクトルは以下の式(31)で記載される。
【0277】
【数24】
【0278】
磁場解析装置1の制御部3は、ステップ103において計算され記憶装置5に記憶されているコイルを構成する粒子の位置ベクトルを読み込む。
【0279】
なお、ステップ113においてコイルを構成する粒子の位置ベクトルが更新されている場合は制御部3はその値を読み込む。
【0280】
また、制御部3はステップ103において計算され記憶装置5に記憶されているコイルの寸法を読み込む。
【0281】
次に、制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されているコイルの電流密度ベクトルを読み込む。
【0282】
なお、制御部3は、ステップ116においてコイルの電流密度ベクトルが更新されている場合はその値を用いる。
【0283】
制御部3は、式(31)に基づいて、コイルを構成する粒子に働く力ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0284】
以上が、図5のステップ111の詳細である。
【0285】
次に、磁場解析装置1の制御部3は、ステップ111で計算した可動部(移動子)を構成する粒子に働く力ベクトルから、可動部(移動子)の回転量、角速度、並進量、並進速度を計算し、記憶装置5に記憶する(図5のステップ112)。
【0286】
以下に図5のステップ112を具体的に説明する。
【0287】
剛体の並進運動の運動方程式は式(32)で表される。
【0288】
【数25】
【0289】
ここで、mtotは可動部(移動子)の質量、太字のrcは可動部(移動子)において任意に定めた代表点の位置ベクトル、太字のFは可動部(移動子)を構成する粒子に働く力ベクトル、Nは可動部(移動子)を構成する粒子数である。
【0290】
次に、任意の固定点の周りの回転運動の運動方程式は式(33−1)、式(33−2)、式(33−3)で表される。
【0291】
【数26】
【0292】
ここで、I1、I2、I3は剛体の主慣性モーメント、ω1、ω2、ω3は慣性主軸座標系での角速度、N1、N2、N3は慣性主軸座標系でのトルクである。
【0293】
本実施例のSPMモータ31のロータ31はロータシャフト41を通じてある回転軸に固定されている。
【0294】
固定された回転軸をz軸とすると、ロータ31の運動は以下のように計算される。
【0295】
ロータ31はロータシャフト41を通じてz軸に固定されているため、z軸周りの回転運動の運動方程式を解くことで、ロータ31の運動は計算される。
【0296】
z軸周りのロータ31の回転運動の運動方程式は式(34)で表される。
【0297】
【数27】
【0298】
ここで、Izはロータ31の慣性モーメント、ωzはz方向の角速度、Nzはz方向のトルクである。
【0299】
式(34)を蛙飛び法で離散化すると、以下の式(35)、式(36)を得る。
【0300】
【数28】
【0301】
ここで、θzはz軸周りの回転量であり、dtは微小時間刻み幅である。
【0302】
また、添え字のn−1/2、n、n+1/2、n+1はそれぞれ(n―1/2)dt、ndt、(n+1/2)dt、(n+1)dt秒での物理量に対応している。
【0303】
時間刻み幅は記憶装置5にあらかじめ任意の値が記憶されているものを制御部3が読み込む。
【0304】
回転量、角速度の初期値は記憶装置5にあらかじめ任意の値が記憶装置5に記憶されている。
【0305】
なお、すでにステップ112においてロータ31の回転量、角速度が更新されている場合はその値を用いる。
【0306】
制御部3は、ステップ101より入力情報21として記憶装置5に記憶されているロータ31の三次元構造と質量密度により慣性モーメントを計算する。
【0307】
さらに、制御部3は、ロータ31を構成する粒子の位置ベクトルと、ステップ111で計算し記憶装置5に記憶されているロータ31を構成する粒子に働く力ベクトルに基づいて、式(35)、式(36)を計算し、dt秒後のロータ31の回転量と角速度を計算し記憶装置5に記憶する。
【0308】
以上が、図5のステップ112の詳細である。
【0309】
次に、磁場解析装置1の制御部3はステップ112で計算した微小時間後の回転量や重心の移動量を基に、移動子を構成している粒子の位置ベクトルを計算し、記憶する(図5のステップ113)。
【0310】
次に、磁場解析装置1の制御部3は必要に応じてSPMモータ31を構成する粒子の位置ベクトル、力ベクトル、磁場ベクトル、磁束密度ベクトル、磁化ベクトルをプリンタポート11を介してプリンタ12より出力する(図5のステップ114)。
【0311】
次に、磁場解析装置1の制御部3は所定の終了条件(時間、移動量等)を満たしているかを判断し、満たしている場合は解析を終了し、満たしていない場合はステップ116に進む(図5のステップ115)。
【0312】
次に、磁場解析装置1の制御部3は必要に応じてコイル45に流れる電流密度ベクトルを更新し、ステップ104に戻る(図5のステップ116)。
【0313】
以上が本実施形態に係る磁場解析の手順である。
【0314】
このように、本実施形態によれば、磁場解析装置1が粒子のラグラジアンから導出される運動方程式を解くことで磁性体の磁化現象を計算する。
【0315】
そのため、有限要素法のように空間全域をメッシュ分割する必要がなく、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる。
【0316】
また、行列を扱わないので、計算に必要なメモリは粒子(要素)数に比例する。そのため、非対称密行列を扱う計算に比べてメモリを大幅に減少させることができる。
【0317】
さらに、本実施形態によれば、磁性体の磁化を求める際に、モンテカルロ法を用いて求めた平衡状態のスピン系で表現される磁性体の磁化と磁場の関係を用いている。
【0318】
そのため、磁性体の本来有する磁気ヒステリシスを考慮した解析が可能であり、実機における磁性体の挙動を正確に把握できる。また、モンテカルロ法の適用にあたって、確率変数にボルツマン分布を用いているため、時間とともに温度が変化する場合の磁性体の挙動を正確に把握できる。
【0319】
また、本実施形態によれば、磁性体を構成する粒子のラグランジアンから導出された磁場の運動方程式の解を演算しているため、外部からの入力が変化しない場合、系の全エネルギーが保存される。
【産業上の利用可能性】
【0320】
上記した実施形態では、本発明を磁性体を構成する粒子のラグラジアンから導出される運動方程式を解くことで磁性体の磁化現象を計算した場合について説明したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、運動方程式であればラグランジアンから導出されたもの以外のものであってもよい。
【0321】
また、上記した実施形態では本発明をSPMモータ31の磁場解析に使用したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、磁性体が配置された空間における任意の磁場を解析するものであれば、例えばリニアモータ等のSPMモータ31以外のモータ、あるいは磁性体で空間を囲む磁気シールドにおいて、磁性体でシールドされた空間内の磁場解析に用いても良い。
【符号の説明】
【0322】
1…………磁場解析装置
3…………制御部
5…………記憶装置
7…………入力部
9…………表示部
11………プリンタポート
12………プリンタ
13………バス
31………SPMモータ
33………ロータ
35………ステータ
37………ロータコア
39………永久磁石
41………ロータシャフト
43………ステータティース
44………コアバック
45………コイル
46………フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析装置であって、
前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と、磁場の運動方程式を記憶する記憶手段と、
前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数、変数の初期値および定数を演算して、前記磁場の運動方程式の解を演算し、該解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する演算手段と、
を有することを特徴とする磁場解析装置。
【請求項2】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、スピン系の平衡状態で表現される関係であることを特徴とする請求項1記載の磁場解析装置。
【請求項3】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、
磁性体モデルのスピン系の平衡状態で表現される磁場とスピンの関係と、
スピン系の平衡状態におけるスピンの総和で表現されるスピンと磁化の関係と、
を有することを特徴とする請求項2記載の磁場解析装置。
【請求項4】
前記解析条件は、
磁性体モデルのスピン系のエネルギー式にモンテカルロ法を適用することによりスピン系の平衡状態を求める平衡状態算出手段を有することを特徴とする請求項3記載の磁場解析装置。
【請求項5】
前記平衡状態算出手段は、
前記磁性体のスピン系を設定し、前記スピン系を構成するスピンの一部を無作為に反転させ、反転前後のエネルギーの差分を求める差分算出手段と、
前記差分が0以下の場合、もしくは0より大きく、ボルツマン分布を用いた確率変数が一様乱数よりも大きい場合に反転後のスピン系を選択し、それ以外の場合は反転前のスピン系を選択する選択手段と、
前記差分算出手段、前記選択手段を1モンテカルロステップ繰り返す繰り返し手段と、
を有することを特徴とする請求項4記載の磁場解析装置。
【請求項6】
前記磁性体モデルは、ハイゼンベルグモデルであり、スピン系のエネルギー式のハミルトニアンは以下の式(1−1)で表され、スピン系の総和は式(1−2)で表されることを特徴とする請求項4記載の磁場解析装置。
【数1】
【請求項7】
前記磁性体模型は、イジングモデルであり、前記エネルギー式のハミルトニアンは以下の式(2−1)で表され、スピン系の総和は式(2−2)で表されることを特徴とする請求項5に記載の磁場解析装置。
【数2】
【請求項8】
前記確率変数は以下の式(3)で表されることを特徴とする請求項7記載の磁場解析装置。
【数3】
【請求項9】
前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて前記磁性体の磁化を求める磁化算出手段を有することを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項10】
前記スピン系と磁化の関係は、以下の式(4)で表される関係を有し、
前記磁化算出手段は、前記式(4)を用いて磁化を計算することを特徴とする請求項9に記載の磁場解析装置。
【数4】
【請求項11】
前記磁化算出手段は、前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて、磁化を計算し、前記磁化が収束条件を満たすか否かを判定し、収束条件を満たす場合は磁化の平均値を求める手段であることを特徴とする請求項9または10のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項12】
前記磁場の運動方程式の変数は、前記磁性体を構成する粒子の磁場ベクトルであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項13】
前記磁場の運動方程式の係数は、
前記磁性体を構成する粒子の位置ベクトルと、
前記磁性体の磁化と磁場の関係と、
から演算されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項14】
前記磁場の運動方程式は、
磁場の項を含む粒子のラグランジアンを磁場ベクトルと磁場ベクトルの時間微分を正準変数としてラグランジュの運動方程式に代入することで求められたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項15】
前記空間には導体がさらに配置されており、
前記解析条件は導体の形状と電流を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項16】
前記粒子のラグランジアンは、前記磁性体を構成する粒子をN個としたとき以下の式(A)〜(C)で表される関数であることを特徴とする請求項14記載の磁場解析装置。
【数5】
α:仮想質量
(太字の)r:位置ベクトル
(太字の)H:磁場ベクトル
(太字の傍点付き)H:磁場ベクトルの時間微分
(太字の)M:磁化ベクトル
(太字の)n:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の法線ベクトル
(太字の)Hext:外部からの印加磁場ベクトル
ΔS:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の面積
ΔV:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積
χ:磁気感受率
μ0:真空の透磁率
λ:ラグランジュの未定定数
π:円周率
s:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面数
添え字ip:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点での物理量
添え字jq:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のq点での物理量
m:質量
v:速度
φ(ri−rj):i番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギ
添え字i、j:i番目の粒子とj番目の粒子の物理量
【請求項17】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(D)で表される式であることを特徴とする請求項16記載の磁場解析装置。
【数6】
【請求項18】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(E)、(F)、(G)で表される離散化された式と、以下の式(H)、(I)で表される束縛力を加えた式とを有することを特徴とする請求項17記載の磁場解析装置。
【数7】
γ:減衰定数
δt:仮想的な時間刻み
添え字n:nδtにおける物理量
添え字n−1/2:(n−1/2)δtにおける物理量
添え字n+1/2:(n+1/2)δtにおける物理量
添え字n+1:(n+1)δtにおける物理量
【請求項19】
前記磁性体はモータのロータおよびステータであることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項20】
前記導体はモータのコイルであることを特徴とする請求項15に記載の磁場解析装置。
【請求項21】
前記磁性体はPMモータ(Permanent Magnet Motor)のロータおよびステータであることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項22】
前記導体はPMモータ(Permanent Magnet Motor)のコイルであることを特徴とする請求項15に記載の磁場解析装置。
【請求項23】
前記磁性体は磁気シールドを構成する磁性体であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項24】
コンピュータを請求項1から23のいずれかに記載の磁場解析装置として機能させるためのプログラム。
【請求項25】
磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析方法であって、
前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と磁場の運動方程式を記憶する工程(a)と、
前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数および変数の初期値および定数を演算して、磁場の運動方程式の解を演算し、
磁場の運動方程式の解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する工程(b)と、
を有することを特徴とする磁場解析方法。
【請求項26】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、スピン系の平衡状態で表現される関係であることを特徴とする請求項25記載の磁場解析方法。
【請求項27】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、
磁性体モデルのスピン系の平衡状態で表現される磁場とスピンの関係と、
スピン系の平衡状態におけるスピンの総和で表現されるスピンと磁化の関係と、
を有することを特徴とする請求項26記載の磁場解析方法。
【請求項28】
前記解析条件は、
磁性体モデルのスピン系のエネルギー式にモンテカルロ法を適用することによりスピン系の平衡状態を求める平衡状態算出工程を有することを特徴とする請求項27記載の磁場解析方法。
【請求項29】
前記平衡状態算出工程は、
前記磁性体のスピン系を設定し、前記スピン系を構成するスピンの一部を無作為に反転させ、反転前後のエネルギーの差分を求める差分算出手工程と、
前記差分が0以下の場合、もしくは0より大きく、ボルツマン分布を用いた確率変数が一様乱数よりも大きい場合に反転後のスピン系を選択し、それ以外の場合は反転前のスピン系を選択する選択工程と、
前記差分算出工程、前記選択工程を1モンテカルロステップ繰り返す繰り返し工程と、
を有することを特徴とする請求項28記載の磁場解析方法。
【請求項30】
前記磁性体モデルは、ハイゼンベルグモデルであり、スピン系のエネルギー式のハミルトニアンは以下の式(1−1)で表され、スピン系の総和は式(1−2)で表されることを特徴とする請求項28記載の磁場解析方法。
【数8】
【請求項31】
前記磁性体模型は、イジングモデルであり、前記エネルギー式のハミルトニアンは以下の式(2−1)で表され、スピン系の総和は式(2−2)で表されることを特徴とする請求項28に記載の磁場解析方法。
【数9】
【請求項32】
前記確率変数は以下の式(3)で表されることを特徴とする請求項31記載の磁場解析方法。
【数10】
【請求項33】
前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて前記磁性体の磁化を求める磁化算出工程を有することを特徴とする請求項27〜32のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項34】
前記スピン系と磁化の関係は、以下の式(4)で表される関係を有し、
前記磁化算出工程は、前記式(4)を用いて磁化を計算することを特徴とする請求項33に記載の磁場解析方法。
【数11】
【請求項35】
前記磁化算出工程は、前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて、磁化を計算し、前記磁化が収束条件を満たすか否かを判定し、収束条件を満たす場合は磁化の平均値を求める手段であることを特徴とする請求項33または34のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項36】
前記磁場の運動方程式の変数は、前記磁性体を構成する粒子の磁場ベクトルであることを特徴とする請求項25〜35のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項37】
前記磁場の運動方程式の係数は、
前記磁性体を構成する粒子の位置ベクトルと、
前記磁性体の磁化と磁場の関係と、
から演算されることを特徴とする請求項25〜36のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項38】
前記磁場の運動方程式は、
磁場の項を含む粒子のラグランジアンを磁場ベクトルと磁場ベクトルの時間微分を正準変数としてラグランジュの運動方程式に代入することで求められたことを特徴とする請求項25〜37のいずれかに記載の磁場解析方法。
【請求項39】
前記空間には導体がさらに配置されており、
前記解析条件は導体の形状と電流を有することを特徴とする請求項25〜38のいずれかに記載の磁場解析方法。
【請求項40】
前記粒子のラグランジアンは、前記磁性体を構成する粒子をN個としたとき以下の式(A)〜(C)で表される関数であることを特徴とする請求項38記載の磁場解析方法。
【数12】
α:仮想質量
(太字の)r:位置ベクトル
(太字の)H:磁場ベクトル
(太字の傍点付き)H:磁場ベクトルの時間微分
(太字の)M:磁化ベクトル
(太字の)n:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の法線ベクトル
(太字の)Hext:外部からの印加磁場ベクトル
ΔS:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の面積
ΔV:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積
χ:磁気感受率
μ0:真空の透磁率
λ:ラグランジュの未定定数
π:円周率
s:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面数
添え字ip:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点での物理量
添え字jq:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のq点での物理量
m:質量
v:速度
φ(ri−rj):i番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギ
添え字i、j:i番目の粒子とj番目の粒子の物理量
【請求項41】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(D)で表される式であることを特徴とする請求項40記載の磁場解析方法。
【数13】
【請求項42】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(E)、(F)、(G)で表される離散化された式と、以下の式(H)、(I)で表される束縛力を加えた式とを有することを特徴とする請求項41記載の磁場解析方法。
【数14】
γ:減衰定数
δt:仮想的な時間刻み
添え字n:nδtにおける物理量
添え字n−1/2:(n−1/2)δtにおける物理量
添え字n+1/2:(n+1/2)δtにおける物理量
添え字n+1:(n+1)δtにおける物理量
【請求項1】
磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析装置であって、
前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と、磁場の運動方程式を記憶する記憶手段と、
前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数、変数の初期値および定数を演算して、前記磁場の運動方程式の解を演算し、該解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する演算手段と、
を有することを特徴とする磁場解析装置。
【請求項2】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、スピン系の平衡状態で表現される関係であることを特徴とする請求項1記載の磁場解析装置。
【請求項3】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、
磁性体モデルのスピン系の平衡状態で表現される磁場とスピンの関係と、
スピン系の平衡状態におけるスピンの総和で表現されるスピンと磁化の関係と、
を有することを特徴とする請求項2記載の磁場解析装置。
【請求項4】
前記解析条件は、
磁性体モデルのスピン系のエネルギー式にモンテカルロ法を適用することによりスピン系の平衡状態を求める平衡状態算出手段を有することを特徴とする請求項3記載の磁場解析装置。
【請求項5】
前記平衡状態算出手段は、
前記磁性体のスピン系を設定し、前記スピン系を構成するスピンの一部を無作為に反転させ、反転前後のエネルギーの差分を求める差分算出手段と、
前記差分が0以下の場合、もしくは0より大きく、ボルツマン分布を用いた確率変数が一様乱数よりも大きい場合に反転後のスピン系を選択し、それ以外の場合は反転前のスピン系を選択する選択手段と、
前記差分算出手段、前記選択手段を1モンテカルロステップ繰り返す繰り返し手段と、
を有することを特徴とする請求項4記載の磁場解析装置。
【請求項6】
前記磁性体モデルは、ハイゼンベルグモデルであり、スピン系のエネルギー式のハミルトニアンは以下の式(1−1)で表され、スピン系の総和は式(1−2)で表されることを特徴とする請求項4記載の磁場解析装置。
【数1】
【請求項7】
前記磁性体模型は、イジングモデルであり、前記エネルギー式のハミルトニアンは以下の式(2−1)で表され、スピン系の総和は式(2−2)で表されることを特徴とする請求項5に記載の磁場解析装置。
【数2】
【請求項8】
前記確率変数は以下の式(3)で表されることを特徴とする請求項7記載の磁場解析装置。
【数3】
【請求項9】
前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて前記磁性体の磁化を求める磁化算出手段を有することを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項10】
前記スピン系と磁化の関係は、以下の式(4)で表される関係を有し、
前記磁化算出手段は、前記式(4)を用いて磁化を計算することを特徴とする請求項9に記載の磁場解析装置。
【数4】
【請求項11】
前記磁化算出手段は、前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて、磁化を計算し、前記磁化が収束条件を満たすか否かを判定し、収束条件を満たす場合は磁化の平均値を求める手段であることを特徴とする請求項9または10のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項12】
前記磁場の運動方程式の変数は、前記磁性体を構成する粒子の磁場ベクトルであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項13】
前記磁場の運動方程式の係数は、
前記磁性体を構成する粒子の位置ベクトルと、
前記磁性体の磁化と磁場の関係と、
から演算されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の磁場解析装置。
【請求項14】
前記磁場の運動方程式は、
磁場の項を含む粒子のラグランジアンを磁場ベクトルと磁場ベクトルの時間微分を正準変数としてラグランジュの運動方程式に代入することで求められたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項15】
前記空間には導体がさらに配置されており、
前記解析条件は導体の形状と電流を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項16】
前記粒子のラグランジアンは、前記磁性体を構成する粒子をN個としたとき以下の式(A)〜(C)で表される関数であることを特徴とする請求項14記載の磁場解析装置。
【数5】
α:仮想質量
(太字の)r:位置ベクトル
(太字の)H:磁場ベクトル
(太字の傍点付き)H:磁場ベクトルの時間微分
(太字の)M:磁化ベクトル
(太字の)n:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の法線ベクトル
(太字の)Hext:外部からの印加磁場ベクトル
ΔS:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の面積
ΔV:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積
χ:磁気感受率
μ0:真空の透磁率
λ:ラグランジュの未定定数
π:円周率
s:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面数
添え字ip:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点での物理量
添え字jq:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のq点での物理量
m:質量
v:速度
φ(ri−rj):i番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギ
添え字i、j:i番目の粒子とj番目の粒子の物理量
【請求項17】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(D)で表される式であることを特徴とする請求項16記載の磁場解析装置。
【数6】
【請求項18】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(E)、(F)、(G)で表される離散化された式と、以下の式(H)、(I)で表される束縛力を加えた式とを有することを特徴とする請求項17記載の磁場解析装置。
【数7】
γ:減衰定数
δt:仮想的な時間刻み
添え字n:nδtにおける物理量
添え字n−1/2:(n−1/2)δtにおける物理量
添え字n+1/2:(n+1/2)δtにおける物理量
添え字n+1:(n+1)δtにおける物理量
【請求項19】
前記磁性体はモータのロータおよびステータであることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項20】
前記導体はモータのコイルであることを特徴とする請求項15に記載の磁場解析装置。
【請求項21】
前記磁性体はPMモータ(Permanent Magnet Motor)のロータおよびステータであることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項22】
前記導体はPMモータ(Permanent Magnet Motor)のコイルであることを特徴とする請求項15に記載の磁場解析装置。
【請求項23】
前記磁性体は磁気シールドを構成する磁性体であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の磁場解析装置。
【請求項24】
コンピュータを請求項1から23のいずれかに記載の磁場解析装置として機能させるためのプログラム。
【請求項25】
磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を情報処理装置を使って解析する磁場解析方法であって、
前記磁性体の形状と、スピン系で表現される前記磁性体の磁化と磁場の関係を有する解析条件と磁場の運動方程式を記憶する工程(a)と、
前記解析条件から、前記磁性体を構成する粒子の磁場の運動方程式の係数および変数の初期値および定数を演算して、磁場の運動方程式の解を演算し、
磁場の運動方程式の解に基づき、前記空間における任意の点の磁場を演算する工程(b)と、
を有することを特徴とする磁場解析方法。
【請求項26】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、スピン系の平衡状態で表現される関係であることを特徴とする請求項25記載の磁場解析方法。
【請求項27】
前記磁性体の磁化と磁場の関係は、
磁性体モデルのスピン系の平衡状態で表現される磁場とスピンの関係と、
スピン系の平衡状態におけるスピンの総和で表現されるスピンと磁化の関係と、
を有することを特徴とする請求項26記載の磁場解析方法。
【請求項28】
前記解析条件は、
磁性体モデルのスピン系のエネルギー式にモンテカルロ法を適用することによりスピン系の平衡状態を求める平衡状態算出工程を有することを特徴とする請求項27記載の磁場解析方法。
【請求項29】
前記平衡状態算出工程は、
前記磁性体のスピン系を設定し、前記スピン系を構成するスピンの一部を無作為に反転させ、反転前後のエネルギーの差分を求める差分算出手工程と、
前記差分が0以下の場合、もしくは0より大きく、ボルツマン分布を用いた確率変数が一様乱数よりも大きい場合に反転後のスピン系を選択し、それ以外の場合は反転前のスピン系を選択する選択工程と、
前記差分算出工程、前記選択工程を1モンテカルロステップ繰り返す繰り返し工程と、
を有することを特徴とする請求項28記載の磁場解析方法。
【請求項30】
前記磁性体モデルは、ハイゼンベルグモデルであり、スピン系のエネルギー式のハミルトニアンは以下の式(1−1)で表され、スピン系の総和は式(1−2)で表されることを特徴とする請求項28記載の磁場解析方法。
【数8】
【請求項31】
前記磁性体模型は、イジングモデルであり、前記エネルギー式のハミルトニアンは以下の式(2−1)で表され、スピン系の総和は式(2−2)で表されることを特徴とする請求項28に記載の磁場解析方法。
【数9】
【請求項32】
前記確率変数は以下の式(3)で表されることを特徴とする請求項31記載の磁場解析方法。
【数10】
【請求項33】
前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて前記磁性体の磁化を求める磁化算出工程を有することを特徴とする請求項27〜32のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項34】
前記スピン系と磁化の関係は、以下の式(4)で表される関係を有し、
前記磁化算出工程は、前記式(4)を用いて磁化を計算することを特徴とする請求項33に記載の磁場解析方法。
【数11】
【請求項35】
前記磁化算出工程は、前記磁性体の磁化と磁場の関係を用いて、磁化を計算し、前記磁化が収束条件を満たすか否かを判定し、収束条件を満たす場合は磁化の平均値を求める手段であることを特徴とする請求項33または34のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項36】
前記磁場の運動方程式の変数は、前記磁性体を構成する粒子の磁場ベクトルであることを特徴とする請求項25〜35のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項37】
前記磁場の運動方程式の係数は、
前記磁性体を構成する粒子の位置ベクトルと、
前記磁性体の磁化と磁場の関係と、
から演算されることを特徴とする請求項25〜36のいずれか一項に記載の磁場解析方法。
【請求項38】
前記磁場の運動方程式は、
磁場の項を含む粒子のラグランジアンを磁場ベクトルと磁場ベクトルの時間微分を正準変数としてラグランジュの運動方程式に代入することで求められたことを特徴とする請求項25〜37のいずれかに記載の磁場解析方法。
【請求項39】
前記空間には導体がさらに配置されており、
前記解析条件は導体の形状と電流を有することを特徴とする請求項25〜38のいずれかに記載の磁場解析方法。
【請求項40】
前記粒子のラグランジアンは、前記磁性体を構成する粒子をN個としたとき以下の式(A)〜(C)で表される関数であることを特徴とする請求項38記載の磁場解析方法。
【数12】
α:仮想質量
(太字の)r:位置ベクトル
(太字の)H:磁場ベクトル
(太字の傍点付き)H:磁場ベクトルの時間微分
(太字の)M:磁化ベクトル
(太字の)n:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の法線ベクトル
(太字の)Hext:外部からの印加磁場ベクトル
ΔS:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の面積
ΔV:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面の頂点と粒子位置を頂点とする多面体要素体積
χ:磁気感受率
μ0:真空の透磁率
λ:ラグランジュの未定定数
π:円周率
s:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素境界面数
添え字ip:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のp点での物理量
添え字jq:粒子の位置ベクトルを重心とする多面体要素内のq点での物理量
m:質量
v:速度
φ(ri−rj):i番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギ
添え字i、j:i番目の粒子とj番目の粒子の物理量
【請求項41】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(D)で表される式であることを特徴とする請求項40記載の磁場解析方法。
【数13】
【請求項42】
前記磁場の運動方程式は、以下の式(E)、(F)、(G)で表される離散化された式と、以下の式(H)、(I)で表される束縛力を加えた式とを有することを特徴とする請求項41記載の磁場解析方法。
【数14】
γ:減衰定数
δt:仮想的な時間刻み
添え字n:nδtにおける物理量
添え字n−1/2:(n−1/2)δtにおける物理量
添え字n+1/2:(n+1/2)δtにおける物理量
添え字n+1:(n+1)δtにおける物理量
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−47785(P2011−47785A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196229(P2009−196229)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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