説明

磁場計測装置

【課題】セルにおいて光の散乱や収差の少ない光学面の数を減らすことを目的とする。
【解決手段】磁場計測装置は、光を透過させる第1平板111と第2平板112とを有する直方体形状のセルユニット110に形成された複数のセルSの内部にはポンプ光によって励起される原子が封入されている。磁場計測装置は、各セルSに対して第2平板112の側からポンプ光P2を入射させると共に、各セルに入射したポンプ光P2と交差するようにプローブ光P1を第2平板の側から入射させ、セルユニット110の各セルに入射して第1平板111を透過した各プローブ光の偏光面の回転角を検出部130において検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓または脳から発生する磁場を測定する装置として、光ポンピングを利用した磁気センサーが利用されている。このような磁気センサーとしては、アルカリ金属原子等のガスが封入された各セルに、円偏光成分を有するポンプ光と直線偏光成分を有するプローブ光とが直交するように照射され、心臓や脳から発せられる磁場をプローブ光によって検出するものがある。下記特許文献1には、そのような光ポンピング原子磁力計が開示されている。特許文献1の技術は、ポンプ光とプローブ光とをセルの別の面から各々入射し、セルを透過したポンプ光をミラーで反射させて再びセルに入射させることで光ポンピングの効率を上げるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−236598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、ポンプ光とプローブ光とをセルの異なる面から入射させる構成のため、プローブ光が出射する面も含めると、セルにおいて光を透過させる面は4面必要となる。そのため、光を透過させる面は、光の散乱や収差の少ない光学面が要求される。
本発明は、セルにおいて光の散乱や収差の少ない光学面の数を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る磁場計測装置は、ポンプ光により励起される原子からなる原子群を内部に収容し、少なくとも対向する2面が光を透過させる平板で構成された第1平板と第2平板とを有するセルユニットと、前記セルユニットの内部空間における複数の各領域に対し前記第2平板の側からポンプ光を入射させると共に、前記各領域に入射した前記ポンプ光と交差するようにプローブ光を前記第2平板の側から入射させる照射手段と、
前記セルユニットの前記各領域に入射して前記第1平板を透過した各プローブ光の偏光面の回転角を検出する検出手段とを備える。この構成によれば、ポンプ光とプローブ光が同一面から入射されるため、従来と比べて光の散乱や収差の少ない光学面の数を減らすことができる。
【0006】
また、本発明に係る磁場計測装置は、上記磁場計測装置において、前記セルユニットの前記各領域はスペーサーによって仕切られ、仕切られた各領域が一つのセルとして構成されており、前記照射手段は、前記第2平板と対向する第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面との間で前記ポンプ光及び前記プローブ光を反射させて伝播させるアレイイルミネーターを有し、前記第1の面には、前記第1の面に向かう前記ポンプ光及び前記プローブ光の各々の一部を透過させる光分岐手段が設けられていることとしてもよい。この構成によれば、ポンプ光とプローブ光が同一面から入射されるため、従来と比べて光の散乱や収差の少ない光学面の数を減らすことができる。
【0007】
また、本発明に係る磁場計測装置は、ポンプ光により励起される原子からなる原子群を内部に収容し、少なくとも対向する2面が光を透過させる平板で構成された第1平板と第2平板とを有するセルユニットが複数配列されたセルアレイユニットと、前記各セルユニットの内部空間における複数の各領域に対しポンプ光を前記第2平板の側から入射させると共に、前記各領域に入射した前記ポンプ光と交差するようにプローブ光を前記第2平板の側から入射させる照射手段と、前記各セルユニットの前記各領域に入射して前記第1平板を透過した各プローブ光の偏光面の回転角を検出する検出手段とを備える。この構成によれば、ポンプ光とプローブ光が同一面から入射されるため、従来と比べて光の散乱や収差の少ない光学面の数を減らすことができ、またセルユニットの配列方向における磁場成分の分布を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る磁場計測装置の構成例を示す図である。
【図2】実施形態に係るセルアレイセンサーの断面を表わす模式図である。
【図3】図2に示すセルアレイセンサーのA−A断面を表わす模式図である。
【図4】図2に示すセルアレイセンサーを拡大した図である。
【図5】変形例(1)に係るセルアレイセンサーの断面を表わす模式図である。
【図6】変形例(2)に係るセルアレイセンサーを表わす図である。
【図7】変形例(2)に係るセルアレイセンサーを表わす図である。
【図8】変形例(3)に係るセルアレイセンサーを表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
図1は、本発明に係る実施形態の磁場計測装置の構成例を示すブロック図である。磁場計測装置1は、生体の心臓等から発せられる磁場を測定する装置であり、セルアレイセンサー10、ポンプ光光源20、プローブ光光源30、信号処理部40を備える。ポンプ光光源20及びプローブ光光源30は、無偏光のレーザービームを各々出力する装置である。セルアレイセンサー10は、ポンプ光光源20及びプローブ光光源30から出力されるレーザービームを用いて生体から発せられる磁場を検出して出力する。ここで、セルアレイセンサー10の構造について図2及び図3を用いて説明する。
【0010】
図2は、セルアレイセンサー10の断面を示す模式図である。図3は、図2のA−A断面を示す模式図である。セルアレイセンサー10は、セルアレイ110と、アレイイルミネーター120と、検出部130とを有する。セルアレイ110は、セルユニットの一例である。図2に示すように、セルアレイ110は、上板(第1平板)111、下板(第2平板)112、及び隔壁(スペーサー)113とを有する。また、セルアレイ110は、図3に示すように、xy平面に平行な方向に平板114,115(図3参照)が設けられている。上板111の上部には後述する検出部130が設けられている。隔壁113は、上板111及び下板112によって挟まれ、隔壁113によって、上板111と下板112と平板114,115とで囲まれた内部空間が仕切られている。セルアレイ110は、隔壁113によって仕切られた各領域Sを一つ一つのセルとして、x軸方向に複数のセルが配列された構造となっている。この例では、x軸方向に8つのセルSが配列されているが、複数のセルSが一次元方向に配列されていればセルSの数は8つに限らない。
【0011】
上板111及び下板112は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはプラスチック等の光を透過する材料で形成される。隔壁113及び平板114,115は、セラミックス等、不透明な材料で形成される。不透明な材料で形成するのは、隣接するセルSへの光学的なクロストークを防止するためであるが、隔壁113及び平板114,115は、上板111及び下板112と同様の透明な材料で形成されてもよい。上板111、下板112、隔壁113、平板114,115は、低融点ガラス、光学接着、または溶着により、セルアレイ110と外部との気密性が保たれた状態で接合される。各セルSには、ポンプ光によって励起される原子群の一例として、気体の状態のアルカリ金属原子(カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、またはセシウム(Cs)等)が封入されている。
【0012】
また、セルアレイ110の各セルに対応する下板112の表面において、ポンプ光及びプローブ光が入射する各位置に、誘電体多層膜や波長板の光学部材で構成された変換部140(140a,140b)(図4参照)が設けられている。変換部140bは、ポンプ光光源20から出力されたレーザービームP2を円偏光成分を有するポンプ光に変換し、変換部140aは、プローブ光光源30から出力されたレーザービームP1を直線偏光成分を有するプローブ光に変換する。ポンプ光光源20及びプローブ光光源30から出力された各レーザービームはセルアレイ10の下板112から入射する前に変換部140によってポンプ光及びプローブ光に各々変換される。アルカリ金属原子は、ポンプ光の偏光方向に応じてスピン偏極して磁化された状態(光ポンピング)となり、当該セルSにおける磁場に応じた角周波数で歳差運動を行う。
【0013】
アレイイルミネーター120は、回折格子(光分岐手段)121、光カプラー122(122A,122B)、導光体123を有する。上記変換部140とアレイイルミネーター120は、本発明に係る照射手段の一例として機能するものである。回折格子121は、セルアレイ110の下板112と対向する平板124(第1の面)の内側に設けられている。また、光カプラー122は平板124の上端部に設けられ、導光体123は平板124と平板125(第2の面)との間に設けられている。
ポンプ光光源20から出射されたレーザービームP2と、プローブ光光源30から出射されたレーザービームP1は、光ファイバー等の伝送手段によってアレイイルミネーター120に導かれ、光カプラー122A,122Bを介して光結合される。アレイイルミネーター120に導かれた光は、回折格子121および導光体123の下面で繰り返し反射されることにより分岐したビーム(光束)となり、1次元的に広がるビームアレイとなる。
【0014】
図4は、セルSの構造の詳細を示す模式図であり、図2の一部を拡大したものである。アレイイルミネーター120において、この図の右方向からレーザービームP2(実線)が入射され、この図の左方向からレーザービームP1(破線)が入射される。レーザービームP1は、アレイイルミネーター120の上面に設けられた回折格子121に達すると、回折格子121によってプローブ光の一部が反射され、一部が回折格子121を透過する。回折格子121で反射されたプローブ光の一部は、アレイイルミネーター120の下面で反射されて再び回折格子121に向かう。このようにして、レーザービームP1は、アレイイルミネーター120における回折格子121と下面とによって透過と反射とを繰り返し、図中右方向(x軸正方向)に伝播される。レーザービームP2もレーザービームP1と同様にしてアレイイルミネーター120によって図中左方向(x軸負方向)に伝播される。
【0015】
回折格子121を透過したレーザービームP1とレーザービームP2は、セルアレイ10の下板112の表面において、変換部140により円偏光成分を有するポンプ光P2と直線偏光成分を有するプローブ光P1に変換される。ポンプ光P2とプローブ光P1は、各セルS内において略直交するように下板112から各セルSに入射する。各セルSにポンプ光P2が入射すると、各セルS内のアルカリ金属原子は光ポンピングし、当該セルSにおける磁場の大きさに応じて歳差運動を行う。各セルSに入射したプローブ光P1は、当該セルS内のアルカリ金属原子の歳差運動による回転力に応じて偏光面が回転され、当該セルSの上板111の部分を透過する。各セルSから上板111を透過したプローブ光は各検出部130に入射する。
【0016】
各検出部(検出手段)130は、ビームスプリッター131と、2分割PD(Photo Detector)132とを有する。ビームスプリッター131は、反射透過面を有する。ビームスプリッター131は、反射透過面に入射した光のうち、ある偏光成分(第1偏光成分)を反射し、それと直交する偏光成分(第2偏光成分)を透過させる。すなわち、ビームスプリッター131は、入射したプローブ光P1を、直交する2つの偏光成分に分離する。ビームスプリッター131は、反射透過面が、セルに入射する前のプローブ光P1の偏光面と45°で交わるように設置される。2分割PD132は、プローブ光の波長に感度を有する。2分割PD132は、第1偏光成分および第2偏光成分の各光量に応じた電流を出力する。この図の例では、各検出部130で検出された第1偏光成分および第2偏光成分の差分を求めることで各セルSにおけるy軸方向の磁場の情報を得ることができる。
【0017】
図1に戻り、信号処理部40について説明する。信号処理部40は、プロセッサーおよびメモリーを有する。信号処理部40は、各検出部130から出力された第1偏光成分および第2偏光成分の差分に基づいてプローブ光の偏光面の回転角度を求め、各セルSにおける磁場の強さを算出して出力する。なお、算出結果は、磁場測定装置1と接続されたCRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置に出力してもよいし、PC等の他の装置に有線又は無線により送信してもよい。
【0018】
上述した磁場測定装置1により生体が発する磁場を検出する際は以下のようにして行う。磁場測定装置1は、磁場の測定を指示する操作部(図示略)を介して磁場の測定指示が利用者からなされると、ポンプ光光源20及びプローブ光光源30からレーザービームP1及びP2を照射する。信号処理部40は、セルアレイ110を透過して各検出部130から出力されたプローブ光P1の第1偏光成分及び第2偏光成分の検出結果からプローブ光の偏光面の方位を求め、各セルSにおける磁場を測定する。
【0019】
本実施形態では、1次元方向に複数のセルSが配列されたセルアレイ10に対し下板112からポンプ光及びプローブ光を各セルSに入射させ、上板111から出射したプローブ光を検出することで各セルSにおける磁場を測定する構成のため、少なくとも上板111と下板112の2面が光を透過させるように構成されていればよい。そのため、セル毎にセルを製造する場合と比べて、磁場の測定がばらつく要因となる光学面の収差や散乱等の要因が減り、各セルにおける磁場の測定のばらつきが軽減される。
【0020】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0021】
(1)上述した実施形態では、隔壁113によって各セルSが仕切られたセルアレイ110の例を説明したが、図5に示すように、セルアレイの内部空間を仕切る隔壁を設けず、上板111、下板112、平板114,115(図示略)、隔壁113a,113bによってセルアレイ110Aを構成してもよい。なお、この図において、検出部130及び変換部140の図示は省略する。セルアレイ110Aの内部空間には、実施形態と同様のアルカリ金属原子が封入されると共に、ヘリウム(He)あるいはアルゴン(Ar)等の希ガス、または窒素(N)等の非磁性のガスがバッファーガスとして封入される。このバッファーガスは、アルカリ金属原子が内部空間を移動しないように圧力が調整されて封入されている。内部空間におけるアルカリ金属原子の移動が抑制されている状態において、ポンプ光P2とプローブ光P1とを実施形態と同様の方法でセルアレイ110Aに照射し、セルアレイ110Aの上板111を透過したプローブ光を検出することで、内部空間においてポンプ光とプローブ光とが交差する各領域SAにおける磁場を測定する。
【0022】
(2)上述した実施形態では、1次元方向にセルSが配列されたセルアレイ110を有するセルアレイセンサー10を例に説明したが、図6に示すように、図2に示したセルアレイセンサー10をxy平面上に複数配列して2次元のセルアレイセンサー10Bを構成するようにしてもよい。なお、図示を省略するが、各セルアレイ110とアレイイルミネーター120の間には変換部140が設けられている。セルアレイセンサー10がこのように配列されることによって、xz平面におけるy軸方向の磁場成分を測定することができるので、実施形態と比べて広範囲に磁場を測定することができる。また、セルアレイセンサー10Bをy軸方向に配列してy軸方向の磁場成分の3次元分布を測定するようにしてもよい。配列された各セルアレイ110は、本発明に係るセルアレイユニットの一例であり、アレイイルミネーター120及び変換部(図示略)は本発明に係る照射手段の一例である。
【0023】
また、例えば、図7に示すようにセルアレイセンサー10Cを構成してもよい。セルアレイセンサー10Cのセルアレイ110Cは、実施形態と同様、光を透過させる材料で形成された上板111及び下板112と、不透明な材料で形成された平板114,115,116,117、及び隔壁113を有する。セルアレイ110Cは、隔壁113で仕切られた各領域が一つのセルSとして形成されている。各セルSの上板111の部分には、各セルSに対応する検出部130が設けられている。また、セルアレイ110Cの下板112の下側にはアレイイルミネーター120Aが設けられている。アレイイルミネーター120Cは、実施形態に係るアレイイルミネーター120と同じ構造を有し、アレイイルミネーターの上面及び下面がセルアレイ110Cの下板112と略同じ大きさとなるように形成されている。なお、この図において変換部140の図示は省略する。セルアレイセンサー10Cにおいて、図中X軸負方向の各セルSに対応する所定位置からレーザービームP2を入射し、図中X軸正方向の各セルSに対応する所定位置からレーザービームP1を入射することにより、セルアレイ110Cの各セルSにおけるy軸方向の磁場成分を測定することができる。また、このように構成することで、図6に示したセルアレイセンサー10Bと比べて、セルアレイ間の位置合わせが不要になり、セルアレイ及びアレイイルミネーターを構成する部品の数を少なくすることができるので、セルアレイセンサーの構造や製造工程を簡素化することができる。セルアレイ110Cは、本発明に係るセルアレイユニットの一例であり、アレイイルミネーター120及び変換部(図示略)は、本発明に係る照射手段の一例である。
【0024】
(3)磁場の検出感度を高めるために、セルアレイを生体等の磁場源に近づけると共に、各セル内に入射したポンプ光及びプローブ光を折り返し反射させることによって高感度の磁場検出を行うセルアレイセンサーの例を図8に示す。セルアレイ110Dは、図8に示すように、磁場源Qの上部に配置される。セルアレイ110Dは、各セルSの内部に入射したポンプ光及びプローブ光を各々反射させるミラー118(118a,118b)が設けられている点以外は実施形態に係るセルアレイ10と同様の構造である。セルアレイ110Dの各セルSに対応する上板111の部分には、検出部130が設けられている。アレイイルミネーター120は、セルアレイ110C及び各検出部130の上部に設けられている。また、この図では図示を省略するが、アレイイルミネーター120を透過したレーザービームP1及びP2をポンプ光及びプローブ光に変換する変換部が各セルに対応する上板111の各位置に設けられている。
【0025】
上板111を介して各セルS内にポンプ光P2が入射すると、各セルS内のアルカリ金属原子はポンプ光によってスピン偏極する。ポンプ光P2はミラー118aに達するとセルの内部に向けて反射され、入射時とは反対の回転方向の円偏光となって(入射時の偏光が右回り円偏光である場合には、反射時の偏光は左回り円偏光となる)、再びアルカリ金属原子を通過する。光ポンピングしているアルカリ金属原子は、反射したポンプ光によって1回目のポンプ光の入射時と同じ方向にスピン偏極する。各セル内Sのアルカリ金属原子は、磁場源Qの磁場の強度に応じて歳差運動を行う。上板111から各セルS内に入射したプローブ光P1は、歳差運動を行っているアルカリ金属原子を通過することで、プローブ光P1の偏光面が回転される。偏光面が回転されたプローブ光P1は各セルSのミラー118bによって反射され、再びアルカリ金属原子を通過する。反射されたプローブ光P1は、入射時とは逆方向にアルカリ金属原子を通過するためファラデー効果の非相反性により1回目の偏向面の回転方向と同じ方向に偏向面が回転されて上板111の方向に向かう。各セルSから上板111を透過した各プローブ光P1は検出部130で第1偏光成分と第2偏光成分とに分離されて検出される。
本変形例では、微弱な磁場を発する磁場源Qにセルアレイ110Dを近づけると共に、セルアレイ110Dの各セルS内部にミラー118を設けることで、アルカリ金属原子のスピン偏極の緩和時間が長くなると共にプローブ光の偏向面の回転角度が強調され、生体から発せられる微弱な磁場を高感度に検出することができる。
【0026】
(4)上述した実施形態では、アレイイルミネーター120を用いてレーザービームをセルアレイ10に照射する例を説明したが、光ファイバ等の光導波路を用いて、セルアレイ10における各セルSの下板112の部分にレーザービームを照射するようにしてもよい。
【0027】
(5)上述した実施形態に係るセルアレイにおいて、アルカリ金属原子のスピン偏極の緩和時間を長くするため、セルアレイを構成する上板111、下板112、隔壁113、及び平板114,115の内壁をパラフィン等の非緩和物質でコーティングしてもよい。
また、アルカリ金属原子と共に、変形例(1)で示したバッファーガスが封入されていてもよい。また、アルカリ金属原子は、常時気体の状態である必要はなく、磁場を測定するときに気体の状態であればよい。磁場計測装置1において、測定時にセルアレイを加熱することによりアルカリ金属原子を気体化する加熱・冷却手段を備えるようにしてもよい。さらに、セルにおいて磁性媒体として用いられるガスはアルカリ金属に限定されない。ポンプ光によりスピン偏極するものであれば、どのような原子が用いられてもよい。
【0028】
(6)上述した実施形態では、ポンプ光光源20及びプローブ光光源30から出力されたレーザービームをセルアレイ10の下板112の表面においてポンプ光及びプローブ光に変換する例を説明したが、ポンプ光光源20及びプローブ光光源30から出力されたレーザービームをポンプ光及びプローブ光に変換してアレイイルミネーター120に入射させるように構成してもよい。
【0029】
(7)上述した実施形態に係るセルアレイ110は直方体の形状である例であったが、セルアレイ110の形状は、少なくとも対向する2面が光を透過させる平板で形成されているものであれば直方体以外の多面体の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・・磁場計測装置、10,10A,10B,10C,10D・・・セルアレイセンサー、20・・・ポンプ光光源、30・・・プローブ光光源、40・・・信号処理部、110,110A,110C,110D・・・セルアレイ、111・・・上板、112・・・下板、113,113a,113b・・・隔壁、114,115,116,117,124,125・・・平板、118,118a,118b・・・ミラー、120・・・アレイイルミネーター、121・・・回折格子、122,122A,122B・・・光カプラー、123・・・導光体、140,140a,140b・・・変換部、S,SA・・・セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ光により励起される原子からなる原子群を内部に収容し、少なくとも対向する2面が光を透過させる平板で構成された第1平板と第2平板とを有するセルユニットと、
前記セルユニットの内部空間における複数の各領域に対し前記第2平板の側からポンプ光を入射させると共に、前記各領域に入射した前記ポンプ光と交差するようにプローブ光を前記第2平板の側から入射させる照射手段と、
前記セルユニットの前記各領域に入射して前記第1平板を透過した各プローブ光の偏光面の回転角を検出する検出手段と
を備えることを特徴とする磁場計測装置。
【請求項2】
前記セルユニットの前記各領域はスペーサーによって仕切られ、仕切られた各領域が一つのセルとして構成されており、
前記照射手段は、前記第2平板と対向する第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面との間で前記ポンプ光及び前記プローブ光を反射させて伝播させるアレイイルミネーターを有し、前記第1の面には、前記第1の面に向かう前記ポンプ光及び前記プローブ光の各々の一部を透過させる光分岐手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の磁場計測装置。
【請求項3】
ポンプ光により励起される原子からなる原子群を内部に収容し、少なくとも対向する2面が光を透過させる平板で構成された第1平板と第2平板とを有するセルユニットが複数配列されたセルアレイユニットと、
前記各セルユニットの内部空間における複数の各領域に対しポンプ光を前記第2平板の側から入射させると共に、前記各領域に入射した前記ポンプ光と交差するようにプローブ光を前記第2平板の側から入射させる照射手段と、
前記各セルユニットの前記各領域に入射して前記第1平板を透過した各プローブ光の偏光面の回転角を検出する検出手段と
を備えることを特徴とする磁場計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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