説明

磁場誘導エネルギー貯蔵システムおよび装置

【課題】高周波磁場変動で誘起した誘導電源を利用し、安全であるだけでなく、磁場の接受方向の死角を最小化し、誘導式充電技術を大きく前進させる、磁場誘導エネルギー貯蔵システム及び装置を提供すること。
【解決手段】本発明が提供する磁場誘導エネルギー貯蔵システムは、一次コイル上で高周波変動磁場誘導を利用し、相互誘導によりエネルギー貯蔵装置の二次コイル上で誘導電流を発生させ、エネルギー貯蔵装置が誘導電流をその中に貯蔵する。本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵システム、装置及びその用途は、生体内感知装置または微小電気機械装置等に応用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場誘導エネルギー貯蔵システム、装置及びその用途に関し、特に、汎用型磁場誘導エネルギー貯蔵システム、等方性磁場誘導エネルギー貯蔵装置及び生体内感知装置、微小電気機械装置等の用途に用いることができる、磁場誘導エネルギー貯蔵システムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1831年、ファラデーは、コイルの中に磁場がある場合、元々電流のないコイルに、コイル内の磁場に変化が発生すると電流が発生することを発見した。ロシアの物理学者レンツ(H. F. E. Lenz、1804−1865)は、誘導電流が発生する場合、電流の流れる方向はその誘導電流を発生させた磁場変化を妨げる方向と一致する、というレンツの法則(Lenz’s low)を1834年に発表した。
【0003】
ファラデーの法則は、磁場が瞬間的にコイルを通過するとき、コイルの中で誘導起電力εが発生することを説明している。
【0004】
【数1】

【0005】
ここで、Nはコイル中のワイヤの巻数、(dΦB/dt)は磁束(ΦB)の変化率を表す。磁束は、磁場の大きさB、コイルの面積Aと関係がある。
【0006】
【数2】

【0007】
現在の科学技術が発達した時代において、生物医学の応用上ではすでに多くのバイオセンサを人体内部に入れることができるようになっているが、電源が有限であるという問題のために、生物体内のセンサを長期間動作させることができず、多くの生命、財産が犠牲となり、損耗されている。商業的民生用途の面では、たくさんの電器用品が電源を得てその動作を駆動しており、従来の充電エネルギー貯蔵方式は充電電池を直接電源の両極に接触させて充電の目的を達している。従来の充電方式は電極両端に火花を生じ不安定になることがあるため、不必要な危険を生じさせている。
【0008】
中華民国特許出願第092137227号の内容は、誘導コイルから構成され、充電電池と一体として設置された誘導モジュールが設けられ、電磁誘導で充電端が伝送する磁性エネルギーを電気エネルギーに変換し、前記充電電池の充電を行うものであり、磁場接受の等方性の設計はない。また、中華民国特許出願第093120759号においても、磁場接受の等方性の設計はなく、使用者の使用上不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中華民国特許出願第092137227号明細書
【特許文献2】中華民国特許出願第093120759号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
旧型の誘導式充電装置と比較して、より便利かつ空間区域の制限を受けない駆動電源で、先行技術が克服できない作動時間の短さ、空間区域の制限等の問題を解決するため、本発明の目的は、高周波磁場変動で誘起した誘導電源を利用し、安全であるだけでなく、磁場の接受方向の死角を最小化し、誘導式充電技術を大きく前進させる、磁場誘導エネルギー貯蔵システム及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が提供する磁場誘導エネルギー貯蔵システムは、一次コイル上で高周波変動磁場誘導を利用し、相互誘導によりエネルギー貯蔵装置の二次コイル上で誘導電流を発生させ、エネルギー貯蔵装置が誘導電流をその中に貯蔵する。従来の充電エネルギー貯蔵方式は電池を電源の両極に直接接触させて充電の目的を達しており、電極両端に火花を生じる不安定性を引き起こす可能性があり、そのとき空間内に易燃性の物品があったり、空気中に高純度の易燃成分が含有されていたりする場合、きわめて大きな危険性が発生するが、本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵システムは、危険な事故につながる多くの危機を回避することができる。簡単にいうと、本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵システムは、磁場の発射端及び磁場の接受端を指し、つまり一組のシステムであって、発射端が磁場を発射した後、接受端が磁場を接受して交流電流を生成し、その交流電流が濾波整流回路を通過した後直流電流になり、直流電流を電器用品に供給し、電器用品を動作させることができるものである。
【0012】
本発明が提供する磁場誘導エネルギー貯蔵システムは、無線充電の効果を達することができるほか、充電エネルギー貯蔵時の安全性を向上することができる。もうひとつの重点は、磁場発射端の高周波コイル巻き付け形式を使用者の形態に基づき変えることができる点であり、つまり、このシステムの高周波コイルの形式は異なる形式とすることができ、カスタマイズの目的を達することができる。
【0013】
本発明が提供する磁場誘導エネルギー貯蔵装置は、エナメル線を円形中空内で完全に被覆する形式で、主要部分を内部に被覆しており、このため磁場誘導の死角をなくし、先行技術が克服できなかった作動時間の短さ、空間区域の制限等の問題を解決し、且つ使用上の安全性を大きく向上できる。このほか、本発明はさらにその「汎用性」価値を強調しており、つまり本装置はあらゆる誘導式充電が必要な設備中に使用することができる。
【0014】
本発明の提供する磁場誘導エネルギー貯蔵システムは、汎用型磁場発生装置と誘導エネルギー貯蔵装置とを含み、そのうち、前記磁場発生装置が、(a)高周波交番強磁界を生成するために用いる汎用型磁場発生器と、(b)前記磁場発生器が生成する磁場を接受するために用いる磁場誘導エネルギー貯蔵装置とを含み、前記磁場誘導エネルギー貯蔵装置が、(i)少なくとも2つの低ヒステリシス係数を持つ磁性材料の物体を含み、前記物体間が相互に垂直に構成され、誘導電流の貯蔵に用いる磁化可能な芯と、(ii)三軸(X軸、Y軸、Z軸)または三軸中のいずれか二軸で前記磁化可能な芯に巻き付け、誘導電流を生成するために用いるコイルとを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の誘導エネルギー貯蔵装置の低ヒステリシス係数磁性材料は柱体形式とし、かつ相互に垂直に構成され、ソフトフェライト、コバルトまたはニッケルから成るグループから選択することができる。
【0016】
本発明のシステム中の磁場発生器は、高周波交番強磁界を生成することができ、本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵装置に結合される。前記磁場誘導エネルギー貯蔵装置はさらに濾波整流回路、電池またはキャパシタを含む。具体的な最良の実施例において、前記磁場発生器は高周波撚り線を巻き付けた物体、過電流検知回路、機能制御パネルを含むことができ、そのうち、前記物品は容器、衣類(例えば内部に高周波撚り線を含むジャケット)、敷物等を含むが、それに限らないものとする。
【0017】
本発明が提供する磁場誘導エネルギー貯蔵システムは、磁場による無線充電、直接給電の電源供給システムとすることができる。
【0018】
本発明が別に提供する磁場誘導エネルギー貯蔵装置は、三軸(X軸、Y軸、Z軸)または三軸中のいずれか二軸で前記磁化可能な金属に巻き付け、誘導電流を生成するために用いる。具体的な良い実施例において、前記コイルは2本とし、三軸中のいずれか二軸でそれぞれ前記磁化可能な芯に巻き付ける。具体的な最良の実施例においては、前記コイルは3本とし、三軸(X軸、Y軸、Z軸)でそれぞれ前記磁化可能な芯に巻き付け、等方性磁場誘導の目的を達することができ、特に体内に埋め込むバイオセンサに適している。
【0019】
本発明が提供する磁場誘導エネルギー貯蔵装置のうち、コイルはエナメル線とすることができ、好ましくは高周波撚り線とし、高電流及び高周波磁場の流通に耐えることができる。
【0020】
本発明が提供する磁場誘導エネルギー貯蔵装置は、操作上バイオセンサ、特に体内に埋め込むバイオセンサに連結することができる。具体的な実施例においては、磁場を接受する高周波コイル、濾波整流回路、充電電池、バイオセンサをワイヤで接続する。具体的なより良い実施例においては、磁場を接受する高周波コイル、濾波整流回路、バイオセンサをワイヤで接続する。具体的な最良の実施例においては、体内に埋め込むバイオセンサ、濾波整流回路、充電電池、磁場を接受する高周波コイルをワイヤで接続し、これによりバイオセンサがより長い使用期間と安全性を得ることができる。これらバイオセンサは長期間体内観察を行う電荷結合素子(charge-coupled device)、ペースメーカー(Pace maker)及び動エネルギー供給ミニチュアバルブまたはスイッチ(Powering miniature valve or switch)等を含むが、それに限らないものとし、これらバイオセンサが貯蔵するエネルギーをより安定させ、より多くし、かつ使用時間をより長くすることができる。
【0021】
本発明の等方性磁場誘導エネルギー貯蔵装置は、操作上玩具や家電に連結することができる。例えば、頻繁に充電する必要がある自動的に埃の吸い取りを行う吸塵器内に本発明の等方性磁場誘導エネルギー貯蔵装置を設置して、本発明のシステムで磁場による無線充電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵システムの構成図である。
【図2】汎用型磁場誘導エネルギー貯蔵システムの構成図である。
【図3】本発明の等方性磁場誘導エネルギー貯蔵装置の構成図である。
【図4】高周波コイルを均一にソフトフェライトコアに巻きつけた状態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
関連技術を熟知した者が本発明の技術内容を理解し、実施できるようにすると共に、本明細書に開示した内容、特許請求の範囲及び図面に基づき、本発明の関連目的及び利点を容易に理解できるようにするため、実施方式において本発明の特徴と利点を詳細に説明する。本発明の内容及びいくつかの具体的な実施例と図面に基づいて以下で説明する。実際に本発明は異なる形式で実施することが可能であり、本文中の開示した実施例のみに限定されると推断されてはならない。
【実施例1】
【0024】
磁場誘導エネルギー貯蔵システム10の実施
本発明はファラデーの法則を設計の中心とし、高周波交番磁界発生装置及びそのコイル装置を組み合わせて交番磁界を生成し、相互誘導作用によって、本発明が提供する等方性磁場誘導エネルギー貯蔵装置上に交流電流が誘起され、その電流を本装置中に貯蔵するものである。
【0025】
本実施方式は次のとおりである。
(1)3つのソフトフェライトコア30を相互に垂直な方式で排列する。そして、
(2)高周波エナメル線40を三軸(X軸、Y軸、Z軸)で前記3つのソフトフェライトコアにそれぞれ均一に巻き付け、図4に示すような等方性磁場誘導エネルギー貯蔵装置20を形成し、続いてワイヤ70で整流濾波器50とリチウムマイクロ電池60を接続し、さらにバイオセンサ110に接続する。
【0026】
市販または自作のモジュール化高周波交番磁界発生回路90により、外部接続した高周波撚り線を巻き付けた容器を制御することができ、回路の起動時に、前記容器内で高周波交番磁界区域80を生成するほか、進度の把握に便利なように、前記回路に機能制御パネル100を接続することができる。
【実施例2】
【0027】
体内バイオセンサの使用実施例
体内に本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵装置に接続したペースメーカーが埋め込まれている患者において、毎日一定時間に高周波撚り線を含む上着を着用すると、本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵システムを起動した後、前記ペースメーカーは磁場誘導エネルギー貯蔵装置から無線充電を行うため、ペースメーカーを取り出して充電する心配をする必要がない。
【0028】
本発明について最良の実施例を上記のように開示したが、これらは本発明を限定するものではない。関連技術を熟知した者によって本発明の要旨の範囲内で行われた変更や修正は、すべて本発明の特許保護範囲に含まれるものとする。本発明の保護範囲は特許請求の範囲に準じる。
【符号の説明】
【0029】
10 本発明の磁場誘導エネルギー貯蔵システム
20 本発明の等方性磁場誘導エネルギー貯蔵装置
30 ソフトフェライトコア
40 高周波コイル
50 整流、濾波及び保護装置
60 リチウムマイクロ電池
70 ワイヤ
80 高周波交番磁界発生区域
90 高周波交番磁界発生回路
100 機能制御パネル
110 バイオセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場誘導エネルギー貯蔵システムであって、
汎用型磁場発生装置と誘導エネルギー貯蔵装置とを含み、そのうち、
前記磁場発生装置が、
(a)高周波交番強磁界を生成するために用いる汎用型磁場発生器と、
(b)前記磁場発生器が生成する磁場を接受するために用いる磁場誘導エネルギー貯蔵装置と
を含み、
前記磁場誘導エネルギー貯蔵装置が、
(i)少なくとも2つの低ヒステリシス係数を持つ磁性材料の物体を含み、物体間が相互に垂直に構成され、誘導電流の貯蔵に用いる磁化可能な芯と、
(ii)三軸(X軸、Y軸、Z軸)または三軸のうちいずれか二軸で前記磁化可能な芯に巻き付け、誘導電流を生成するために用いるコイルと
を含むことを特徴とする、磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
前記低ヒステリシス係数を持つ磁性材料の物体が柱体形式であることを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項3】
前記低ヒステリシス係数を持つ磁性材料の物体が、ソフトフェライト、コバルトまたはニッケルから成るグループから選択することができることを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項4】
前記コイルが2本あり、三軸のうちいずれか二軸でそれぞれ前記磁化可能な芯に巻き付けられたことを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項5】
前記コイルが3本あり、三軸(X軸、Y軸、Z軸)でそれぞれ前記磁化可能な芯に巻き付けられたことを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項6】
前記磁場発生器がさらに、高周波撚り線を巻きつけた物体、過電流検知回路、機能制御パネルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項7】
前記物体が容器、衣類、敷物であることを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
前記磁場誘導エネルギー貯蔵装置がさらに、濾波整流装置、キャパシタまたは電池を含むことを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項9】
磁場から無線充電し、直接給電する電源供給システムとすることができることを特徴とする、請求項1に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
磁場誘導エネルギー貯蔵装置であって、
(a)少なくとも2つの低ヒステリシス係数を持つ磁性材料の物体を含み、前記物体間が相互に垂直に構成され、誘導電流を貯蔵するために用いる磁化可能な芯と、
(b)三軸(X軸、Y軸、Z軸)または三軸のうちいずれか二軸で前記磁化可能な芯に巻き付けられ、誘導電流を生成するために用いるコイルと
を含むことを特徴とする、磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
さらに濾波整流装置を含むことを特徴とする、請求項10に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
さらにキャパシタまたは電池を含み、誘導電流の貯蔵に用いることを特徴とする、請求項11に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
前記低ヒステリシス係数を持つ磁性材料の物体が柱体形式であることを特徴とする、請求項10に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記低ヒステリシス係数を持つ磁性材料の物体が、ソフトフェライト、コバルトまたはニッケルから成るグループから選択することができることを特徴とする、請求項10に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
前記コイルが、高周波撚り線とすることができることを特徴とする、請求項10に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記コイルが2本あり、三軸のうちいずれか二軸でそれぞれ前記磁化可能な芯に巻き付けられたことを特徴とする、請求項15に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記コイルが3本あり、三軸(X軸、Y軸及Z軸)でそれぞれ前記磁化可能な芯に巻き付けられたことを特徴とする、請求項15に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
操作においてバイオセンサに連結可能であることを特徴とする、請求項10に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項19】
前記バイオセンサが体内に埋め込まれるバイオセンサであることを特徴とする、請求項18に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項20】
前記バイオセンサが長期間体内観察を行う電荷結合素子、ペースメーカーあるいは動エネルギー供給ミニチュアバルブまたはスイッチであることを特徴とする、請求項19に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
操作において玩具または家電に連結可能であることを特徴とする、請求項10に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。
【請求項22】
前記家電が自動的に埃を吸い取る吸塵器であることを特徴とする、請求項10に記載の磁場誘導エネルギー貯蔵装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−178036(P2009−178036A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13499(P2009−13499)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(501078579)ナショナル・ヤン・ミン・ユニヴァーシティ (3)
【Fターム(参考)】