説明

磁性トナー用疎水性磁性酸化鉄粒子粉末及びその製造方法

【課題】 本発明は、非極性溶媒中での分散性が良好であり、水蒸気吸着量の少ない磁性トナー用として好適な疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を提供する。
【解決手段】 磁性酸化鉄粒子表面にシランカップリング剤が5.0×10−3〜1.5×10−2mmol/m被覆された平均粒子径0.05〜0.5μmの疎水性磁性酸化鉄粒子粉末であって、スチレン/n−ブチルアクリレート中で前記疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を分散させた塗膜の光沢度が60%以上であり、Pの含有量が0.05wt%以下である磁性トナー用疎水性磁性酸化鉄粒子粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非極性溶媒中での分散性が良好であり、水蒸気吸着量の少ない磁性トナー用疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電潜像現像法の一つとして、キャリアを使用せずに樹脂中にマグネタイト粒子粉末等の黒色磁性酸化鉄粒子粉末を混合分散させた複合体粒子を現像剤として用いる所謂、一成分系磁性トナーによる現像法が広く知られ、汎用されている。
【0003】
近時、レーザービームプリンターやデジタル複写機の高速化や高画質化に伴って、現像剤である磁性トナーの特性向上が強く要求されており、その為には、トナー中で酸化磁性鉄粒子が出来るだけ内包され、かつ、分散した状態が望ましい。
【0004】
磁性トナーは粉砕法で製造されているが、粒子径の微小化、均一化、さらなる低温定着性などの機能付与において、重合法トナーに移行しつつある。
【0005】
重合法トナーは、重合性単量体中で磁性酸化鉄粒子を分散させて作ることから、親水性表面である磁性酸化鉄粒子を疎水化して重合性単量体中で分散をさせることが重要になってくる。
【0006】
乾式で磁性酸化鉄粒子を疎水化処理する手段として、ミキサー型混合機又はホイール型混合機で処理する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、乾式で磁性酸化鉄粒子と処理剤をただ混合するだけでは、均一な疎水化が困難であり、非極性溶媒中での分散性が悪い。
【0007】
湿式で磁性酸化鉄粒子を疎水化処理する手段として、水系媒体中で処理する方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、磁性酸化鉄粒子に吸湿性の高いリンを含むものであり、水蒸気吸着量が多く、非極性溶媒中での分散性が悪い。
【0008】
気相で磁性酸化鉄粒子を疎水化処理する手段として、処理剤を気化接触して反応させる方法が開示されている(特許文献3参照)。しかし、高温で熱処理することから凝集しやすく、非極性溶媒中での分散性が悪い。
【0009】
その他の手段として、混練にて処理する方法が開示されている(特許文献4参照)。しかし、処理時間が短く、不均一になりやすい。
【0010】
【特許文献1】特開平03−221965号公報
【特許文献2】特開2005−263619号公報
【特許文献3】特開2000−327948号公報
【特許文献4】特開2006−232578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって本発明は、前述した種々の問題を解決した疎水化された磁性酸化鉄粒子粉末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0013】
即ち、本発明は、磁性酸化鉄粒子表面にシランカップリング剤が5.0×10−3〜1.5×10−2(5.0E−3〜1.5E−2)mmol/m被覆された平均粒子径0.05〜0.5μmの疎水性磁性酸化鉄粒子粉末であって、スチレン/n−ブチルアクリレート中で前記疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を分散させた塗膜の光沢度が60%以上であり、Pの含有量が0.05wt%以下である磁性トナー用疎水性磁性酸化鉄粒子粉末(本発明1)。
【0014】
また、本発明は、シランカップリング剤の固着率が80%以上である前記疎水性磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明2)。
【0015】
また、本発明は、温度25℃、相対湿度90%の雰囲気における水蒸気吸着量(V90)が0.4mg/m以下である前記疎水性磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明3)。
【0016】
また、本発明は、核となる磁性酸化鉄粒子を水性媒体中で疎水化処理した後、乾燥させ、得られた乾燥物を120℃以下かつ周速10m/sec以上で回転させながら熱処理することを特徴とする疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法である(本発明4)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る磁性トナー用疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、磁性酸化鉄粒子表面に水性媒体中で疎水化処理した乾燥物を高速回転しながら熱処理することにより、シランカップリング剤の固着率が高く、Pの含有量が0.05wt%以下であることから水蒸気吸着量が低いので、スチレン/n−ブチルアクリレート中での分散性が良好な疎水性磁性酸化鉄粒子粉末であり、重合磁性トナー用として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末について述べる。
【0020】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末のシランカップリング剤の被覆量は、5.0×10−3〜1.5×10−2mmol/m(5.0E−3〜1.5E−2mmol/m)である。5.0×10−3mmol/m(5.0E−3mmol/m)未満の場合には、疎水化処理が不十分であり、水蒸気吸着量が高くなり、分散性が悪くなる。1.5×10−2mmol/m(1.5E−2mmol/m)を超える場合には、凝集して分散性が悪くなる。好ましくは7.0×10−3〜1.2×10−2mmol/m(7.0E−3〜1.2E−2mmol/m)である。
【0021】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、後出する測定方法で評価したシランカップリング剤の固着率が80%以上であることが好ましい。固着率が80%未満の場合には、溶出した疎水化剤が多くなるため、分散性が悪くなる。より好ましくは82%以上であり、上限値は99%程度である。
【0022】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、後出する測定方法で評価したシランカップリング剤のカーボン量としての付着量が0.5〜2.0wt%が好ましく、より好ましくは0.5〜1.5wt%である。
【0023】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、後出する測定方法で評価したシランカップリング剤のカーボン量としての固着量が0.4〜2.0wt%が好まし、より好ましくは0.45〜1.20wt%である。
【0024】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の平均粒子径は0.05〜0.5μmである。
平均粒子径が0.05μm未満の場合、磁性酸化鉄粒子相互間の凝集力が大きく分散が困難となる。0.5μmを超える場合、着色力が劣り隠ぺい力も低い。好ましくは0.1〜0.3μm、より好ましくは0.15〜0.25μmである。
【0025】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、スチレン/n−ブチルアクリレート中で分散させて塗膜を形成したときの光沢度が60%以上である。塗膜の光沢度が60%未満の場合、分散性が悪く、トナー中での分散状態が悪いことを意味する。好ましくは64%以上、より好ましくは64〜80%である。
【0026】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末のBET比表面積は、3.0〜13.0m/gが好ましい。BET比表面積が3.0m/g未満の場合、凝集していることからスチレン/n−ブチルアクリレート中の分散性が悪い。BET比表面積が13.0m/gを超える場合、疎水化処理が不十分であり、水蒸気吸着量(V90)が多くなる。より好ましくは4.0〜12.0m/gである。
【0027】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の水蒸気吸着量(V90)は、0.40mg/m以下が好ましい。水蒸気吸着量(V90)が0.40mg/mを超える場合、スチレン/n−ブチルアクリレート中の分散性が悪くなる。より好ましくは0.30mg/m以下であり、下限値は0.10mg/m程度である。
【0028】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末のPの含有量は0.05wt%以下であることが好ましい。0.05wt%を超える場合には、水蒸気吸着量が高くなり、分散性が悪くなる。好ましくは0.04wt%以下であり、より好ましくは0.03wt%である。
【0029】
次に、本発明に核となる磁性酸化鉄粒子粉末について述べる。
【0030】
本発明における核となる磁性酸化鉄粒子は、平均粒子径が0.05〜0.5μmである。平均粒子径が0.05μm未満の場合、磁性酸化鉄粒子相互間の凝集力が大きく分散が困難となり、疎水化処理にも不利である。0.5μmを超える場合、着色力が劣り隠ぺい力も低い。好ましくは0.1〜0.3μm、より好ましくは0.15〜0.25μmである。BET比表面積が5〜15m/gである。
【0031】
本発明における核となる磁性酸化鉄粒子は、マグネタイト粒子((FeO)・Fe、0<x≦1)からなり、必要により、鉄以外の元素Si、Al、P、Mn、Ni、Zn、Cu、Mg、Co、Tiから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含有してもよい。
【0032】
なお、Pを含有する場合は0.05wt%以下とする。本発明における核となる磁性酸化鉄粒子のPの含有量が0.05wt%を超える場合には、疎水化処理を行っても水蒸気吸着量が高くなり、分散性が悪くなる。好ましくは0.04wt%以下である。
【0033】
本発明における核となる磁性酸化鉄粒子は、必要によりあらかじめ粒子表面が、Si、Al、Tiの化合物から選ばれる少なくとも1種からなる中間被覆物によって被覆されていてもよい。
【0034】
本発明における核となる磁性酸化鉄粒子を中間被覆物によって被覆することによって、疎水化剤の脱離をより抑制することができる。
【0035】
本発明における核となる磁性酸化鉄粒子粉末の一次粒子の粒子形状は、八面体状、六面体状、粒状、球状などの等方形状である。分散性を考慮すると球状が好ましい。
【0036】
本発明における核となる磁性酸化鉄粒子粉末の保磁力は2.4〜15.9kA/m(30〜200Oe)が好ましい。より好ましくは3.2〜13.5kA/m(40〜170Oe)である。
【0037】
本発明おける核となる磁性酸化鉄粒子粉末の飽和磁化値は81.0〜90.0Am/kg(81.0〜90.0emu/g)が好ましい。より好ましくは、84.0〜90.0Am/kg(84.0〜90.0emu/g)である。
【0038】
本発明における磁性酸化鉄粒子は、第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液を酸素含有ガス、好ましくは空気をスラリー中に吹き込みながら酸化させ、酸化反応終了後のスラリーをろ過、洗浄して磁性酸化鉄粒子を得ることができる。得られた磁性酸化鉄粒子スラリーを常法に従って乾燥させて疎水化処理を行っても良いが、水性媒体中で疎水化処理することを考えると、乾燥工程を経ずにそのまま磁性酸化鉄粒子を含有するスラリーを用いて疎水化処理することが好ましい。
【0039】
水酸化第一鉄コロイドを生成させる際のアルカリ溶液の量は、求める磁性酸化鉄粒子の形状に応じて調整すればよい。具体的には、水酸化第一鉄コロイドのpHが8.0未満となるように調整すれば球状粒子が得られ、8.0〜9.5となるように調整すれば六面体状粒子が得られ、9.5を超えるように調整すれば八面体状粒子が得られるので、適宜調整する。
【0040】
本発明における第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液、塩化第一鉄水溶液等を使用することができる。
【0041】
本発明における水酸化アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等の各水溶液を使用することができる。
【0042】
本発明における酸化反応温度は、85〜100℃である。85℃未満である場合には、針状含水酸化鉄粒子が副生しやすくなり、100℃を越える場合も磁性酸化鉄粒子は生成するが工業的ではない。
【0043】
次に、本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の製造法について述べる。
【0044】
本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、核となる磁性酸化鉄粒子を水性媒体中で疎水化処理した後、乾燥し、乾燥物を120℃以下かつ周速10m/sec以上で回転させながら熱処理して得ることができる。
【0045】
疎水化処理は、具体的には、疎水化処理を水性媒体中で磁性酸化鉄粒子を十分に分散させながら疎水化剤であるシランカップリング剤を添加して行う。
【0046】
疎水化処理における水性媒体は、水のみでも良いし、疎水化された磁性酸化鉄粒子の凝集を抑制するために少量のアルコールを添加しても良い。
【0047】
疎水化処理を行う際の水性媒体のpHは、シランカップリング剤を加水分解しながら処理するため、pHは3〜7が好ましい。また、予備的に加水分解液を作製してから添加しても良い。
疎水化処理を行う際の水性媒体の温度は、30〜80℃が好ましい。
【0048】
本発明におけるシランカップリング剤としては一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0049】
<化1>
Si(OR4−a
:炭素数が15以下であるアルキル基
:−CH、−C
a:1〜3の整数
【0050】
シランカップリング剤としては、メチルトリエキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトシキシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、必要に応じてRがアルキル基以外のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等を加えてもよい。
【0051】
シランカップリング剤の添加量は、核となる磁性酸化鉄粒子に対して1.0〜3.5重量%である。
【0052】
疎水化処理に用いる処理装置は、磁性酸化鉄粒子を十分に分散させるため、また、疎水化処理時は疎水化凝集を防ぐためディスパー、ホモミキサーのような高せん断力分散機が好ましい。
【0053】
疎水化処理後は、常法に従って乾燥する。
【0054】
本発明においては、乾燥物を120℃以下かつ周速10m/sec以上で回転させながら熱処理する。熱処理時の温度が120℃を超える場合、縮合反応が進みすぎて磁性酸化鉄粒子同士が合一しやすくなり、分散性が悪化する。好ましくは80〜110℃である。熱処理時の周速が10m/sec未満の場合、解さい力が弱いため磁性酸化鉄粒子同士が合一しやすくなり、分散性が悪化する。また、固着率も低くなる。より好ましい周速は11〜30m/secである。
【0055】
熱処理処理装置はヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサーのような高速回転混合機が好ましい。
【0056】
次に、本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末を含有する磁性トナーについて述べる。
【0057】
本発明に係る磁性トナーは、懸濁重合法によって得ることができる。懸濁重合法においては、重合性単量体と磁性酸化鉄粒子粉末とを、必要により更に、着色剤、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を添加した混合物を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させて所望の粒子サイズとすることにより得られる。
【0058】
もちろん、所定量の結着剤樹脂と所定量の磁性酸化鉄粒子粉末とを混合、混練、粉砕による公知の方法によっても行うことができる。具体的には、磁性酸化鉄粒子粉末と結着剤樹脂とを、必要により更に離型剤、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤等を添加した混合物を混合機により十分に混合した後、加熱混練機によって結着剤樹脂中に磁性酸化鉄粒子粉末等を分散させ、次いで、冷却固化して樹脂混練物を得、該樹脂混練物を粉砕及び分級を行って所望の粒子サイズとすることにより得られる。
【0059】
<作用>
本発明において、最も重要な点は、本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、磁性酸化鉄粒子表面にシランカップリング剤が5.0×10−3〜1.5×10−2mmol/m(5.0E−3〜1.5E−2mmol/m)被覆された平均粒子径0.05〜0.5μmの疎水性磁性酸化鉄粒子粉末であって、スチレン/n−ブチルアクリレート中で疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を分散させた塗膜の光沢度が60%以上であり、Pの含有量が0.05wt%以下であることから、樹脂中での分散性が良好であるという事実である。
【0060】
これらの事実について本発明者は次のように考えている。
【0061】
本発明のシランカップリング剤で被覆された疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、磁性酸化鉄粒子の粒子表面に水性媒体中で疎水化処理した乾燥物を120℃以下かつ周速10m/sec以上で回転させながら熱処理することにより、疎水化剤であるシランカップリング剤の固着率が高く、Pの含有量が0.05wt%以下であることから水蒸気吸着量が低いので、スチレン/n−ブチルアクリレート中での分散性が良好になると考えている。
【実施例】
【0062】
次に、実施例並びに比較例により、本発明を説明する。
【0063】
<平均粒子径>
磁性酸化鉄粒子粉末の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により撮影した写真(倍率1万倍)を4倍に拡大して、300個についてマーチン径により求めた値である。
【0064】
<BET比表面積>
磁性酸化鉄粒子粉末のBET比表面積は、Mono Sorb MS−II(湯浅アイオニックス(株)製)を用いBET法により求めた。
【0065】
<Pの含有量>
磁性酸化鉄粒子粉末のPの含有量は、蛍光X線分析装置 3063M(理学電機工業(株)製)を使用して測定した。
【0066】
<付着量・固着量・固着率>
疎水性磁性酸化鉄粒子粉末付着量、固着量、固着率評価は、炭素分析装置 EMIA−80((株)堀場製作所製)を用いてカーボン量を測定することにより行った。
まず、疎水性磁性酸化鉄粒子粉末のカーボン量を測定し付着量とした。次に、100mlのビーカーに疎水性磁性酸化鉄粒子粉末10gとトルエン100gを入れ、超音波洗浄器 BRANSONIC 5510(ヤマト科学(株)製)を用いて超音波を30分間照射した。その後、ろ過、乾燥した粉末のカーボン量を測定し固着量とした。固着率は次式で求めた。
固着率(%)=固着量/付着量×100
【0067】
<被覆量>
シランカップリング剤の被覆量は次式で求めた。
被覆量(mmol/m)=(カーボン量/100/M×1000(mmol/g))/核粒子の比表面積(m/g)
M:シランカップリング剤のR基に含まれる炭素の総分子量
【0068】
<磁気特性>
磁性酸化鉄粒子粉末の磁気特性は、振動試料型磁力計 VSM−3S−15(東英工業(株)製)を用いて外部磁場796kA/mで測定した値で示した。
【0069】
<水蒸気吸着量(V90)>
水蒸気吸着装置 BELSORP aqua3(日本ベル(株)製)を用いて、25℃、相対湿度90%における疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の単位面積当たりの水蒸気吸着量(V90)mg/mで示した。
【0070】
<スチレン/n−ブチルアクリレート分散塗膜の光沢度>
磁性酸化鉄粒子粉末20g、スチレン16g、n−ブチルアクリレート4gを100mlのビーカーに入れ、ディスパーの回転数を1000rpmで15分間分散させたペーストをPETフィルム上に置き、1milのフィルムアプリケーターで塗布し、乾燥した塗布膜面の光沢度(60°)をデジタル変角光沢計 UGV−5D(スガ試験機(株)製)で測定した。
【0071】
<磁性トナー中での分散性>
磁性トナー中の疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の分散性は、磁性トナーをウルトラミクロトーム MT2C(RESEACH MANFACTURING製)を用いてスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(倍率10000倍)で観察し、視野内の磁性酸化鉄粒子粉末の凝集状態を観察し、4段階で評価した。凝集物が少ないほど分散性が良いことを示す。
凝集物;0〜1個 分散度◎
2〜5個 ○
5〜10個 △
11個以上 ×
【0072】
<磁性酸化鉄粒子の製造>
(核粒子A)
硫酸第一鉄溶液(Fe2+の濃度;1.723mol/l、比重;1.248g/cc)31.942kg、NaOH(18.5N)4.806l(当量比=0.95)および水17.396lに、90℃にて空気を吹き込んで磁性酸化鉄粒子の芯粒子を生成した。尚、この時のFe3+/Fe2+を0.70(mol%)に調整した。芯粒子生成中の反応溶液のpH値は6.7であった。
【0073】
次いで、反応溶液のpH値が10.0になるように前記NaOHを添加し、残った硫酸第一鉄の微細な磁性酸化鉄粒子からなる表面層の生成反応を行った。
【0074】
芯粒子の表面に微細な磁性酸化鉄粒子からなる表面層の生成反応が終了後、水洗を行って、磁性酸化鉄粒子スラリーを得た。少量抜き取って乾燥した磁性酸化鉄粒子は平均粒子径が0.19μm、BET比表面積が9.0m/gであった。残った磁性酸化鉄粒子スラリー中の固形分は2.5kgであった。
【0075】
(核粒子B)
Fe3+/Fe2+を0.90(mol%)、ヘキサメタリン酸ソーダをP/Fe2+で0.05(mol%)仕込み時の水に入れた以外は核粒子Aと同様にして核粒子Bを得た。
【0076】
(核粒子C)
Fe3+/Fe2+を0.50(mol%)に変えた以外は核粒子Aと同様にして核粒子Cを得た。
【0077】
(核粒子D)
硫酸第一鉄溶液(Fe2+の濃度;1.723mol/l、比重;1.248g/cc)31.942kg、NaOH(18.5N)4.806l(当量比=0.95)および水17.396lに、90℃にて空気を吹き込んで30分間熟成した。その後、NaOHを加えて反応溶液のpH値は8.9にして磁性酸化鉄粒子の芯粒子を生成した。その後は核粒子Aと同様にして核粒子Dを得た。
【0078】
(核粒子E)
ヘキサメタリン酸ソーダをP/Fe2+で0.25(mol%)仕込み時の水に添加した以外は核粒子Aと同様にして核粒子Eを得た。
【0079】
得られた核となる磁性酸化鉄粒子の諸特性を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例1
<疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の製造>
得られた核粒子スラリーの固形分濃度を10wt%にし、ホモミキサーの回転数を5000rpmにした。pH6、40℃に調整し十分に分散させて、n−ヘキシルトリメトキシシランを加え、加水分解を行いながら疎水化処理を行った。生成した疎水性磁性酸化鉄粒子をろ過・水洗し、80℃で乾燥した。その後、乾燥物をヘンシェルミキサーに投入し、100℃に加温し、周速15m/secで1時間攪拌しながら熱処理を行い、疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0082】
実施例2〜8、比較例1〜7
核粒子の種類、シランカップリング剤の種類及び量、熱処理条件を種々変化させた以外は実施例1と同様にして疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0083】
得られた疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の諸特性を表2、表3に示す。
【0084】
なお、比較例3は乾燥後、熱処理をせずにピンミルで粉砕したものである。比較例5は、120℃に加温した回転炉にn−ヘキシルトリメトキシシランを徐添加し、気化した疎水化剤と磁性酸化鉄粒子とを接触・反応させた後、大型るつぼに入れて160℃で60分間熱処理を行った後、ピンミルで粉砕したものである。
【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
使用例1
<磁性トナーの製造>
イオン交換水500重量部に懸濁安定剤としてコロイダルシリカ S−150(伯東化学(株)製)5重量部を加え70℃に加温して水系媒体を得た。
スチレン: 80重量部
n−ブチルアクリレート: 20重量部
ジビニルベンゼン: 0.3重量部
疎水性磁性酸化鉄粒子粉末 82重量部
【0088】
上記混合物をペイントコンデキショナーを用いて分散させた。これに重合開始剤2,2‘−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)1.5重量部を溶解させた。
前記水系媒体中に上記重合性単量体を投入し、70℃、N雰囲気下においてホモミキサーにて8000rpmで10分間攪拌し、液滴形成を行った。その後パドルで攪拌しながら70℃で8時間反応させた。反応終了後、NaOHでpH12にして懸濁安定剤を除去し、ろ過、水洗、乾燥して磁性トナー1を得た。重量平均粒径は7.5μmであった。
【0089】
使用例2〜12
疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の種類を種々変化させた以外は使用例1と同様にして磁性トナーを得た。
【0090】
得られた磁性トナーの諸特性を表4に示す。
【0091】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に本発明に係る疎水性磁性酸化鉄粒子粉末は、磁性酸化鉄粒子表面にシランカップリング剤が5.0×10−3〜1.5×10−2(5.0E−3〜1.5E−2)mmol/m被覆された平均粒子径0.05〜0.5μmの疎水性磁性酸化鉄粒子粉末であって、スチレン/n−ブチルアクリレート中で疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を分散させた塗膜の光沢度が60%以上であり、Pの含有量が0.05wt%以下であることから、樹脂中での分散性が良好であるので、磁性トナー用酸化鉄粉末として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性酸化鉄粒子表面にシランカップリング剤が5.0×10−3〜1.5×10−2mmol/m被覆された平均粒子径0.05〜0.5μmの疎水性磁性酸化鉄粒子粉末であって、スチレン/n−ブチルアクリレート中で前記疎水性磁性酸化鉄粒子粉末を分散させた塗膜の光沢度が60%以上であり、Pの含有量が0.05wt%以下である磁性トナー用疎水性磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項2】
シランカップリング剤の固着率が80%以上である請求項1記載の疎水性磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項3】
温度25℃、相対湿度90%の雰囲気における水蒸気吸着量(V90)が0.4mg/m以下である請求項1記載の疎水性磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項4】
核となる磁性酸化鉄粒子を水性媒体中で疎水化処理した後、乾燥させ、得られた乾燥物を120℃以下かつ周速10m/sec以上で回転させながら熱処理することを特徴とする疎水性磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法。


【公開番号】特開2008−282002(P2008−282002A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100802(P2008−100802)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】