説明

磁性ビーズ及び磁性キレート材料

【課題】本発明は、金属イオンを捕集、除去、濃縮、回収することが可能であり、製造が容易であり、製造における環境上の問題が小さく、高い金属イオン捕集能力を備えた磁性キレート材料を作製するための前駆体である磁性ビーズ及び磁性キレート材料を提供することにある。
【解決手段】磁性キレート材料の前駆体である磁性ビーズにおいて、HLB値が6.7以下である親油性界面活性剤を使用した懸濁重合法で作製されたことを特徴とする磁性ビーズ及びこの磁性ビーズを使用して作製された磁性キレート材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ビーズ及び磁性キレート材料に関するものである。詳しくは、本発明の磁性ビーズとは、外部磁場の働きにより容易に分散と凝集の制御が可能であり、水中や有機溶媒中に含まれる微量の金属イオンを回収するために用いることができる分離機能性材料として使用できる磁性キレート材料の前駆体となる磁性ビーズである。
【背景技術】
【0002】
様々な磁性ビーズが、診断薬担体、細菌分離単体、細胞分離担体、核酸分離精製担体、蛋白分離精製担体、固定化酵素担体、ドラッグデリバリー担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料などの用途において開発され、使用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。特に生体内外中の担体等を選択的分離する用途については、磁性ビーズの製法や精製も煩雑である。
【0003】
特許文献1は、磁化処理及び親油化処理が施された超常磁性体ではない磁性体を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを懸濁重合して磁性ポリマー粒子を得る方法であるが、スチレンを主体とする重合性モノマーが使用されている。スチレン系の重合体は、磁性体との親和性が低いために、重合反応系(モノマー)において良好に分散されていた磁性体が、重合後のポリマー粒子内部において分離凝集したり、ポリマー粒子表面に析出したりするという問題を改善する必要がある。
【0004】
特許文献2は、親油化処理が施された磁性体を、ビニル芳香族モノマーを含む有機相に分散させ、この分散体を、ホモジナイザーを用いて水性相へ均質に分散させた後重合することにより、比較的小粒径の磁性ポリマー粒子を得る方法であるが、粒子内部における磁性体の均一分散性に劣るものとなり、当該磁性体は、粒子表面近傍に局在化される。このため、磁性ポリマー粒子から鉄イオンが溶出したり、酸性条件下において磁性体が溶解流出したりして、磁性ポリマービーズとしての特性が損なわれるという問題がある。
【0005】
特許文献3は、特定の官能基を有する多孔ポリマー粒子の存在下に鉄化合物を析出させ、この鉄化合物を酸化することで、当該多孔ポリマー粒子の内部に磁性体を導入し、均一径の磁性ポリマー粒子を得る方法であるが、磁性ポリマー粒子の製造工程が複雑であり、また、磁性体がポリマーによってカプセル化されていないため、鉄イオンが溶出するという問題がある。
【0006】
特許文献4は、アルキル(メタ)アクリレートを含有するモノマー中に超常磁性体を分散させて調製したモノマー組成分を水性媒体中に分散させて懸濁液を得、この懸濁液中において、前記モノマーを重合させた磁性ポリマー粒子を得る方法であるが、本磁性ポリマー粒子の金属イオン捕集能力が十分といえない。
【0007】
他方、産業廃水等に含まれる有害金属イオンを、金属回収用キレート磁性粒子を使用して処理する方法が提案され、この中で金属回収用キレート磁性粒子の前駆体として磁性ビーズの製造方法がある(例えば、特許文献5参照)。これはスチレンを主体として、グリシジルメタクリレート等の活性基を有するモノマーとマグネタイトから、水系溶媒における懸濁重合により磁性粒子を得て、この活性基にさらに金属に対するキレート形成基を有する化合物を反応させている。本発明者らの検討によれば、この磁性粒子においては表面近傍に存在する活性基の密度が極めて低く、従って得られる磁性キレート粒子の金属イオン捕集能力もまた極めて低いものである。
【0008】
また、水から有機及び無機化学種の両方を除去する方法として、磁性酸化鉄粒子が組み込まれており、かつ、ポリマービーズ表層等に錯化性又は及びイオン交換樹脂等が組み込まれているポリマービーズが提案されている(例えば、特許文献6参照)。これは、重合性モノマー、及び磁性酸化粒子、多孔質化剤等の有機相を分散させるために有機リン分散剤を含み、かつ、ポリマービーズの強度及び耐久性を改善するためゴム強化剤が組み込んで作製したポリマービーズであるが、作製が煩雑であり、当該ビーズの物性も十分とはいえない。また、多孔質剤として、シクロヘキサノール及びトルエンの溶媒を使用するが、これらの親油性溶媒の使用は製造における環境上の問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59−221302号公報
【特許文献2】特公平4−3088号公報
【特許文献3】特公平5−10808号公報
【特許文献4】特開平10−270233号公報
【特許文献5】特開2003−275758号公報
【特許文献6】特表2007−530717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属イオンを捕集、除去、濃縮、回収することが可能であり、製造が容易であり、製造における環境上の問題が小さく、高い金属イオン捕集能力を備えた磁性キレート材料を作製するための前駆体である磁性ビーズ及び磁性キレート材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、以下の発明を見出した。
(1)磁性キレート材料の前駆体である磁性ビーズにおいて、HLB値が6.7以下である親油性界面活性剤を使用した懸濁重合法で作製されたことを特徴とする磁性ビーズ。
(2)親油性界面活性剤の添加質量が、懸濁重合法で磁性ビーズを作製する際に使用される総モノマー使用質量に対して、0.2〜6.0質量%である(1)記載の磁性ビーズ。
(3)(1)又は(2)の磁性ビーズを使用して作製された磁性キレート材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、金属イオンを捕集、除去、濃縮、回収することが可能であり、製造が容易であり、製造における環境上の問題が小さく、高い金属イオン捕集能力を備えた磁性キレート材料を作製するための前駆体である磁性ビーズと、この磁性ビーズを使用して作製された磁性キレート材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、磁性キレート材料の前駆体である磁性ビーズは、磁性物質を含む疎水性樹脂粒子である。
【0014】
磁性物質は、例えばマグネタイト、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト、マンガンフェライト、マンガン−亜鉛フェライト等の各種酸化鉄粉体やコロイド粒子等が使用できるが、繰り返し使用に耐えられるように、特に耐酸性の高いストロンチウムフェライトまたはバリウムフェライトの使用が好ましい。
【0015】
磁性物質の平均粒径は0.1〜2μmが好ましい。0.1μm未満では取り扱いに困難が生じることがあり、2μmを超えると分散性が低下してくる場合がある。なお、この平均粒径は、マイクロトラック(登録商標)MT3300EX(装置名、日機装社製)を使用し、分散媒である水の屈折率を1.33、被測定物の屈折率を2.42として測定して求めた。疎水性樹脂粒子中の配合量は5〜70質量%が好ましい。5質量%未満では磁気に対する感応性が小さくなる場合があり、70質量%を超えると、次の懸濁重合工程に悪影響が出る場合がある。磁性物質を含む磁性ビーズを製造する際には、これらがモノマーに良好に分散することが好ましい。
【0016】
疎水性樹脂は、活性基を有するモノマーの重合膜で形成される。そして、該疎水性樹脂は、疎水性モノマーが51質量%以上含まれる組成物が重合された樹脂をいう。疎水性モノマーとは、25℃におけるイオン交換水に対する溶解度が1.0質量%未満のモノマーである。活性基とは、金属に対するキレート形成基を導入するための基であり、具体的にはエポキシ基、ビニル基、カルボキシル基、エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。これらの活性基の中では、金属に対するキレート形成基を有する化合物との反応性に優れるとともに、活性基自体の安定性が比較的良好であるエポキシ基が好ましい。
【0017】
活性基を有するモノマーの具体例としては、エポキシ基含有化合物としてはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなど、ビニル基含有化合物としてはジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレートなど、カルボキシル基含有化合物としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸など、エステル基含有化合物としてはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートなど、ヒドロキシル基含有化合物としては2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレートなど、アミノ基含有化合物としてはアミノメチルアクリレート、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、ビニルピリジンなど、ハロゲン原子含有化合物としてはクロロメチルスチレンなどを挙げることができる。これら活性基を有するモノマーは単独で用いても良いが、2種以上組み合わせて用いても良い。本発明者における検討によれば、活性基を有するモノマーとしてはグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートが好ましい。また架橋剤として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多官能性モノマーを併用しても良い。
【0018】
重合開始剤は水不溶または難溶のものが好ましい。具体的には例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルペルオクテート、α−クミルペルオキシピバレート等の過酸化物系開始剤が挙げられる。また、重合を進める温度は使用する重合開始剤の種類により定めれば良い。例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等では60℃以上の温度が適合し、過酸化物と還元剤とを組み合わせるレドックス系では60℃以下の温度でも重合を進めることができる。
【0019】
磁性物質を含む磁性ビーズは、磁性物質、親油性界面活性剤、疎水性モノマー、開始剤を使用し、これらを混合した油相と、親水性界面活性剤を含む水相を乳化した後、懸濁重合法によって作製される。ここで、安定した磁性ビーズを作製するためには、安定した懸濁液を形成してポリマー反応させることが必要であるが、前段として磁性物質を含む安定した油相を形成させることが必須である。また、油相において、親油性の溶剤等を使用することもできるが、(1)親油性溶剤を使用することにより、磁性ビーズにおけるポリマー成分の構成比率が小さくなるため、磁性ビーズが薄膜化する、(2)特に有害な親油性溶剤を使用すると、磁性ビーズを作製する際に溶剤の安全管理が必要となるとともに、製造における環境上の問題となるため、親油性溶剤を使わないことが好ましく、本発明においては使用していない。
【0020】
親油性界面活性剤について、特に制限はなく、アニオン、カチオン、両性及び非イオン性の界面活性剤を用いることができるが、親油性界面活性剤のHLB値が6.7以下のものを選択し、使用する。より好ましいHLB値は6.0以下であり、さらに好ましいHLB値は5.0以下である。具体的な例としては、アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。親油性界面活性剤の使用は、表面親油化処理をしていない、または表面親油化処理が弱い磁性物質を、磁性ビーズの原料として使用する場合には、特に有効である。
【0021】
親油性界面活性剤の添加量は、使用するモノマー総質量の0.2〜6.0質量%が好ましい。より好ましくは、0.3〜5.5質量%であり、さらに好ましくは、0.5〜5.0質量%である。親油性界面活性剤の添加量が0.2質量%より小さいと、磁性物質とモノマーのなじみが不十分となり、磁性物質近傍に形成される磁性ビーズの被膜ポリマー量が小さくなるため、該磁性ビーズを前駆体として作製された磁性キレート材料のキレート付加量も小さくなり、該磁性キレート材料としての金属イオン捕集能力が小さくなる。他方、親油性界面活性剤の添加量が6.0質量%より大きいと、油相の分散が不十分になり、作製される磁性ビーズの粒子径が大きくなるため、該磁性ビーズを前駆体として作製された磁性キレート材料の粒子径も大きくなり、これによって該磁性キレート材料の表面積が小さくなるため、該磁性キレート材料の金属イオン捕集能力が小さくなることがある。
【0022】
懸濁安定剤として水相に使われる親水性界面活性剤は、特に制限はなく、安定、かつ均一に分散された懸濁液ができるものが選択され、公知のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤及び保護コロイド剤を挙げることができる。アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩型、硫酸塩型、スルホン酸型、リン酸エステル型等を挙げることができる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン型、多価アルコール型等を挙げることができる。カチオン界面活性剤としては、4級アンモニウム塩型、アルキルピリジニウム型等を挙げることができる。両性界面活性剤としては、アミノ酸型、ベタイン型等を挙げることができる。保護コロイド剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩の縮合物、ビニル系高分子、ゼラチン、天然ガム類等を挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0023】
磁性ビーズの粒径は1〜1000μmが好ましい。1μm未満では、磁性ビーズ材料に含まれるフェライトの含有量が少なくなるため、磁気に対する感応性が小さくなることがある。1000μmを超えると、該磁性ビーズを前駆体として作製する磁性キレート材料の比表面積が小さくなるため単位質量あたりの金属イオン捕集能力が小さくなってくる場合がある。なお、この粒径は、マイクロトラック(登録商標)MT3300EX(日機装(株)製)を使用し、分散媒である水の屈折率を1.33、被測定物の屈折率を1.50として測定して求めた。
【0024】
本発明で作製した磁性物を含む磁性ビーズは、表面に活性基を有するモノマーの重合膜が存在する。この磁性ビーズの活性基と金属に対するキレート形成基を有する化合物とを反応させて磁性キレート材料を作製する。
【0025】
金属に対するキレート形成基を有する化合物の具体例としては、イミノジ酢酸、アミノメチルホスホン酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、イミノジエタノール等を挙げることができる。また、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン類、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリン、プロリン等のアミノ酸類、グルカミン、N−メチルグルカミン等の糖類、3,6,10,13−テトラチアシクロテトラデカ−1−オキシ酢酸、2−(3,6,10,13−テトラチアシクロテトラセク−1−オキシ)ヘキサン酸、ジアザ−18−クラウン−6−エーテル等のクラウンエーテル類等を挙げることができる。
【0026】
金属に対するキレート形成基を有する化合物と活性基との反応を行なわせる条件について、特に制限はなく、それらの組み合わせに応じて必要な反応条件を用いれば良い。例えば、イミノジ酢酸、ジエチレントリアミン、N−メチルグルカミンのようなアミノ基を有する化合物の場合、エポキシ基、エステル基、ハロゲン原子等に対しては、必要に応じて炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の塩基を併用して加熱することにより導入することができる。反応溶媒としては水が好ましく、必要に応じてメタノールやエタノール等のアルコール類や、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の助溶媒を併用することができる。磁性キレート材料に導入されるキレート形成基の量は、キレート吸着される金属量から間接的に求められ、磁性キレート材料1gあたり0.5mmol〜2.5mmolとすることが好ましい。0.5mmol未満では吸着処理に多量の磁性キレート材料が必要になることがある。2.5mmolを超えるキレート形成基を導入するためには、活性基を有するモノマーを大量に使用する必要があり、磁気に対する感応性が小さくなる場合がある。
【0027】
磁性キレート材料の粒径は1〜1000μmが好ましい。1μm未満では、磁性キレート材料に含まれるフェライトの含有量が少なくなるため、磁気に対する感応性が小さくなることがある。1000μmを超えると、磁性キレート材料の比表面積が小さくなるため、単位質量あたりの金属イオン捕集能力が小さくなってくる場合がある。なお、この粒径は、マイクロトラック(登録商標)MT3300EX(日機装(株)製)を使用し、分散媒である水の屈折率を1.33、被測定物の屈折率を1.50として測定して求めた。
【0028】
磁性キレート材料を使用することで、産業廃水、河川水、地下水から、簡単かつ安全に効率よく、金属イオンを捕集、除去、濃縮、回収することが可能となる。キレート磁性体粒子の金属イオン吸着性能に及ぼす因子は、金属イオンの種類や濃度、共存イオンの種類や濃度、処理水のpH、処理水中での磁性キレート材料の懸濁状態等いくつかある。このうち、処理水のpH制御は重要な要素であり、磁性キレート材料に導入されているキレート形成基の特性に応じて、吸着に最適なpHに調整する必要がある。例えばイミノジ酢酸型の磁性キレート材料の場合、回収すべき金属がHgの時にはpH2以上、Ni、Co、Zn、Pb等の金属の場合にはpH5以上とするのが好ましい。
【0029】
本発明による磁性ビーズを前駆体とした磁性キレート材料を処理水に添加して金属キレートを形成させる際には、磁性キレート材料が処理水中に均一に懸濁されている必要がある。槽式の処理設備の場合、磁性キレート材料を被処理水に添加し、攪拌羽根で攪拌する方法、エアレーションなど曝気による方法、電磁石制御により磁性体粒子を攪拌する方法などを例示することができる。次いで、本発明による磁性キレート材料は、永久磁石、電磁石、超電導磁石によって短時間に集磁され、処理水から分離された後、少量の水系媒体に再分散される。吸着した金属イオンは、系のpHを低下させることにより脱着され、金属イオンが脱着された磁性キレート材料は、必要に応じ塩酸、硫酸などの酸で洗浄し、次いで希水酸化ナトリウムなどのアルカリで再生され、再使用することが可能となる。これにより、磁性キレート材料は、金属イオン脱着時に必要に応じ塩酸、硫酸などの酸で洗浄されるため、耐酸性が必要とされる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の部数や百分率は、特にことわりのない場合、質量基準である。
【0031】
実施例1
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)2g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ1を得た。該磁性ビーズを、マイクロトラック(登録商標)MT3300EX(日機装(株)製)を使用し、分散媒である水の屈折率を1.33、被測定物の屈折率を1.50として測定したところ、平均粒径が15μmであった。
【0032】
次いで、磁性ビーズ1の乾燥質量1.0gを、イミノジ酢酸ナトリウム2.0g、エタノール8.5ml、水20mlとともに4時間還流した。生成物は水50mlで希釈し、反応容器の底に磁石を当てた状態で、上澄みをデカンテーションによって除去した。水50mlを加えてはデカンテーションを行なう操作をさらに2回繰り返し、最後に磁石を当てて容器内に残った成分を濾取して、磁性キレート材料1を得た。磁性キレート材料1を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料を、マイクロトラック(登録商標)MT3300EX(日機装(株)製)を使用し、分散媒である水の屈折率を1.33、被測定物の屈折率を1.50として測定したところ、平均粒径が60μmであった。
【0033】
実施例2
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)0.4g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ2を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を、磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、12μmであった。
【0034】
次いで、磁性ビーズ2を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料2を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、51μmであった。
【0035】
実施例3
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)10g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ3を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を、磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、10μmであった。
【0036】
次いで、磁性ビーズ3を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料3を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、58μmであった。
【0037】
実施例4
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ジラウリン酸グリコール(HLB値:約2.0)0.4g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ4を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を、磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、16μmであった。
【0038】
次いで、磁性ビーズ4を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料4を得た。磁性キレート材料4を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、69μmであった。
【0039】
実施例5
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ジラウリン酸グリコール(HLB値:約2.0)10g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ5を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を、磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、13μmであった。
【0040】
次いで、磁性ビーズ5を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料5を得た。磁性キレート材料5を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、63μmであった。
【0041】
実施例6
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノパルミテート(HLB値:約6.7)0.4g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ6を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を、磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、9μmであった。
【0042】
次いで、磁性ビーズ6を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料6を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の粒平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、50μmであった。
【0043】
実施例7
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノパルミテート(HLB値:約6.7)10g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ7を得た。該磁性ビーズの粒子径を磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、17μmであった。
【0044】
次いで、磁性ビーズ7を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料7を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の粒子径を磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、68μmであった。
【0045】
実施例8
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)2g、バリウムフェライト140g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ8を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、12μmであった。
【0046】
次いで、磁性ビーズ8を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料8を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、55μmであった。
【0047】
実施例9
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ジビニルベンゼン20g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)2g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ9を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、15μmであった。
【0048】
次いで、磁性ビーズ9を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料9を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、63μmであった。
【0049】
実施例10
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート20g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)2g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ10を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、16μmであった。
【0050】
次いで、磁性ビーズ10を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料10を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、68μmであった。
【0051】
実施例11
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)0.2g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ11を得た。該磁性ビーズは、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0052】
次いで、磁性ビーズ11を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料11を得た。該磁性キレート材料は、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0053】
実施例12
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)14g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ12を得た。該磁性ビーズは、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0054】
次いで、磁性ビーズ12を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料12を得た。該磁性キレート材料は、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0055】
実施例13
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ジラウリン酸グリコール(HLB値:約2.0)0.2g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ13を得た。該磁性ビーズは、目視で0.5mmから20mmの不定形が主であった。
【0056】
次いで、磁性ビーズ13を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料13を得た。該磁性キレート材料は、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0057】
実施例14
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ジラウリン酸グリコール(HLB値:約2.0)14g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ14を得た。該磁性ビーズは、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0058】
次いで、磁性ビーズ14を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料14を得た。該磁性キレート材料は、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0059】
実施例15
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノパルミテート(HLB値:約6.7)0.2g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ15を得た。該磁性ビーズは、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0060】
次いで、磁性ビーズ15を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料15を得た。該磁性キレート材料は、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0061】
実施例16
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノパルミテート(HLB値:約6.7)14g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ16を得た。該磁性ビーズは、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0062】
次いで、磁性ビーズ16を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料16を得た。該磁性キレート材料は、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0063】
実施例17
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、ソルビタンモノステアレート(HLB値:約4.7)2g、マグネタイト磁性粉70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ17を得た。該磁性ビーズの平均粒子径を磁性ビーズ1と同じ方法で調べたところ、16μmであった。
【0064】
次いで、磁性ビーズ17を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料17を得た。該磁性キレート材料を走査型電子顕微鏡で観察し、球状または楕円球状構造であることが分かった。該磁性キレート材料の平均粒子径を、磁性キレート材料1と同じ方法で調べたところ、69μmであった。
【0065】
比較例1
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は凝集しており、1〜3cmの塊状であった。水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ31を得た。該磁性ビーズは、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0066】
次いで、磁性ビーズ31を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料31を得た。該磁性キレート材料は、目視で0.5mmから20mmの不定形であった。
【0067】
比較例2
ボールミルにて予め混練しておいた、メタクリル酸グリシジル180g、ブチルアクリレート10g、ジビニルベンゼン10g、トリステアリン酸デカグリセリル(HLB値:約7.5)2g、バリウムフェライト70g、過酸化ベンゾイル1gの混合物を、ポリビニルアルコール(ケン化度98%、重合度1700)5gを溶解したイオン交換水2000gに添加し、ホモミキサーで3000rpm×5分間の分散を行なった。このものをフラスコに移し、窒素気流下にて80℃、8時間加熱攪拌した。生成物は、水洗後、磁石により集めて乾燥し、磁性ビーズ32を得た。該磁性ビーズは、光学顕微鏡で観察したところ、0.2mmから10mmの不定形であった。
【0068】
次いで、磁性ビーズ32を実施例1の磁性ビーズ1と同じ操作を行ない、磁性キレート材料32を得た。該磁性キレート材料は、光学顕微鏡で観察したところ、0.2mmから10mmの不定形であった。
【0069】
<銅イオン吸着能>
実施例1の磁性キレート材料1(0.2g)を、9.1mmol/リットルの硫酸第二銅水溶液50mlに添加し、20℃で3.5時間攪拌した後、磁石強度0.45Tの永久磁石を用いて固形分と母液を分離し、母液中に残存する銅イオンを誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により定量した。その結果、この磁性キレート材料1gあたりの銅イオン吸着能は0.98mmolであることが分かった。銅イオンを吸着した磁性キレート材料は1規定の塩酸20mlと30分攪拌して銅イオンを脱着させ、再度、9.1mmol/リットルの硫酸銅水溶液50mlを加え、1規定水酸化ナトリウムでpHを5に調整して銅イオンの吸着を行った。同様の操作を3回繰り返し、銅イオンの吸着能に変化がないことを確認できた。また、この操作中に磁性キレート材料の外観にも変化が見られなかった。同様の評価を実施例2〜17と比較例1〜2の磁性キレート材料についても行った。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
<ホウ素吸着能>
実施例1の磁性キレート材料の0.2gを、9.1mmol/リットルのホウ酸水溶液50mlに添加し、20℃で3.5時間攪拌した後、磁石強度0.45Tの永久磁石を用いて固形分と母液を分離し、母液中に残存するホウ素をICP−AESにより定量した。その結果、この磁性キレート材料1gあたりのホウ素吸着能は1.01mmolであることが分かった。ホウ素を吸着した磁性キレート材料は1規定の塩酸20mlと30分攪拌してホウ素を脱着させ、再度、9.1mmol/リットルのホウ酸水溶液50mlを加え、1規定水酸化ナトリウムでpHを5に調整してホウ素の吸着を行った。同様の操作を50回繰り返し、ホウ素の吸着能に変化がないことを確認できた。また、この操作中に磁性キレート材料の外観にも変化が見られなかった。同様の評価を実施例2〜17と比較例1〜2の磁性キレート材料についても行った。結果を表1に示す。
【0072】
磁性ビーズ1〜10及び磁性キレート材料1〜10の合成から、本発明の磁性ビーズは危険な反応条件を必要とすることなく合成することができ、かつ、有害な溶剤等を使っていないため、製造における環境上の問題が小さい。また、表1の結果から、本発明の磁性ビーズを前駆体として作製した磁性キレート材料は高い金属捕集能力を有していることが分かる。
【0073】
表1と、磁性ビーズ及び磁性キレート材料の作製結果より、HLB値が6.7以下である親油性界面活性剤を使用して作製した磁性ビーズ1〜10を前駆体とした磁性キレート材料1〜10と、HLB値がそうでない親油性界面活性剤を使用して作製した磁性ビーズ32を前駆体とした磁性キレート材料32について、磁性キレート材料1gあたりの銅吸着能、及びホウ素吸着能を比較すると、前者の方が良好であった。
【0074】
HLB値が6.7以下である親油性界面活性剤の添加質量が、懸濁重合法で磁性ビーズを作製する際に使用される総モノマー使用質量に対して、0.2〜6.0質量%である磁性ビーズ1〜10を前駆体とした磁性キレート材料1〜10と、親油性界面活性剤の添加質量がそうではない磁性ビーズ11〜17を前駆体とした磁性キレート材料11〜17について、磁性キレート材料1gあたりの銅吸着能、及びホウ素吸着能を比較すると、前者の方が良好であった。
【0075】
なお、耐酸性の良いバリウムフェライトを使った磁性ビーズ1を前駆体とした磁性キレート材料1と、そうではないマグネタイト磁性粉を使った磁性ビーズ17を前駆体とした磁性キレート材料17について、磁性キレート材料1gあたりの銅吸着能、及びホウ素吸着能を比較すると、前者の方が良好であった。
【0076】
結果、本発明の磁性ビーズ及び磁性キレート材料において、金属イオンを捕集、除去、濃縮、回収することが可能であり、製造が容易であり、製造における環境上の問題が小さく、高い金属イオン捕集能力を備えた磁性キレート材料を作製するための前駆体である磁性ビーズを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性キレート材料の前駆体である磁性ビーズにおいて、HLB値が6.7以下である親油性界面活性剤を使用した懸濁重合法で作製されたことを特徴とする磁性ビーズ。
【請求項2】
親油性界面活性剤の添加質量が、懸濁重合法で磁性ビーズを作製する際に使用される総モノマー使用質量に対して、0.2〜6.0質量%である請求項1記載の磁性ビーズ。
【請求項3】
請求項1又は2の磁性ビーズを使用して作製された磁性キレート材料。

【公開番号】特開2012−82328(P2012−82328A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230158(P2010−230158)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】