説明

磁性フィルム及びそれを用いた磁性カード

【課題】 不透明の書き込み、印字、印刷可能な表示可能層を有する磁石フィルム及びそれを用いた磁性カードの、残留成型歪、温度変化、湿度変化によるカール発生問題を解消させる。また、この問題解決に伴う磁性カード同士の磁気吸着防止機能も付加させる。
【解決手段】片面に多極着磁したボンド磁石製の可撓性磁性フィルム11の両面に、表示可能層12,13を設けた磁性フィルムP1とし、可撓性磁性フィルム11の厚みが50μm〜400μmで、表示可能層の片面と他の片面の伸縮力の差などで生じるカールが特定の加速試験において3.0mm以下であり、且つ磁気吸着面側の表示可能層13の厚みを15μm〜100μmとした。尚、表示可能層12,13の厚さは同じにしてもよく、多極着磁の磁極方向及び又は磁極間の距離をランダムに構成すれば磁気吸着を防止することができる。また、この技術は着磁を施さない磁性フィルムに応用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性フィルム及び磁性フィルムを用いた磁性カードに関するものである。
該磁性フィルムは、不透明の書き込み、印字、印刷可能な表示可能層を有する磁性フィルムであって、冷蔵庫、スチール棚、ホワイトボードなど磁石の被着体となるものに磁気貼着して見ることができる硬質磁性(永久磁石)フィルムと、同じ用途に使用されるが逆に磁石面に磁気吸着される軟質磁性(磁石の被着体となる)フィルムとがあり、発明の技術分野をより具体的に述べれば、夫々、ステッカー、表示物、絵画印刷物や、トレーディングカード、ポストカード(絵葉書)等に使用することができる磁性フィルム及び磁性フィルムを用いた磁性カードに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの、シート状磁石(該明細書ではシート状とはフィルム状より厚みが概ね厚いものを意味する)を応用したものとしてポストカードがあり、永久磁石であるシート状磁石の着磁面に弱粘着材を用いて、書き込み自由な被覆紙を貼着し、この被覆紙に葉書の様式を印刷し、シート状磁石の他の面側に装飾面を設けたことを特徴とする装飾用葉書が提案されている。
この構成によって、受信者が前記被覆紙を剥離除去することによって、磁石のエアーギャプ(非磁性体を介した磁石と被着体間の距離)が無くなるので必要な磁気吸着力が発揮できるようになるものがある。(特許文献1)
【0003】
又、フィルム状基材の一方の面に塗布によって、磁場配向した異方性の薄層の磁石層を有し、もう一方の片面側に印字可能な表面を有する郵便葉書用シートであり、前記磁石層上に、印字可能な表面を有するシートが、剥離可能に接着されていることを特徴とする郵便葉書用シートが提案されている。この構成によって、受信者が前記磁石層上の印字可能な表面を有するシートを剥離除去するまでは、磁気吸着による不都合がなく、受信者が、前記磁石層上の印字可能な表面を有するシートを剥離除去することで、磁石のエアーギャプが無くなるので必要な磁気吸着力が発揮できるようになるものがある。(特許文献2)
【0004】
従来のシート状磁石を応用した磁性シート、及び磁性ポストカードなどは、シート状磁石の非着磁面側に書き込み、印字、印刷可能な被覆紙を貼合せるか、書き込み、印字、印刷可能な紙類などを基材として塗布によって磁石層を形成し着磁を施したシート状磁石の着磁面側に、書き込み、印字、印刷可能な紙類などを剥離可能に接着したものであるので、磁石層、非着磁面側に貼着した書き込み、印字、印刷可能な紙類など、着磁面側に貼着した書き込み、印字、印刷可能な紙類など、各層が異質で製造時の歪み、及び温度、湿度の変化による伸縮差のあるものを貼合せたものであるために、カール現象が保存中ないし被着体に磁気吸着させた状態で発生する場合がある欠点が有り、又、カールする事によって磁気吸着できなくなり脱落する場合がある。
【0005】
従来の磁性フィルムのカール防止に関する先行技術文献としては、紙類(アート紙など)を基材として、片面に塗布によって等方性の薄層の磁石層を形成したもので、紙類の磁性層を形成する面に特定の疎水性合成樹脂膜を形成させることにより、磁性層の形成に水性塗布液を用いても製品が湿度変化によるカールを生じない製造方法が提案されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−91869号公報
【特許文献2】特開2003−80871号公報
【特許文献3】特公昭56−15123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の特許文献3による磁性シートは、鉄板に磁気吸着させた状態で、低湿度(例えば26°C、RH35%)、高湿度(例えば18°C、RH95%)における個々のカール性の試験に於いてはカールを生じないが、本発明の磁性フィルムのカール試験方法で試験するとカールの発生が認められる。即ち、非磁性体(プラスチック板など)の上に試験試料を置くことで、鉄板に磁気吸着させた状態のように磁気吸着力がカールを抑制することがない状態での、低湿度から高湿度それから低湿度の雰囲気に曝された履歴によってカールを生じる。
【0008】
又、前記の特許文献3と本発明の磁性シートとでは、カールの発生原因とカール防止対策が異なる。即ち、特許文献3は、磁気貼着紙の製造方法として、合成樹脂水性エマルジョン、合成ゴムラテックス、水分散型合成樹脂などのバインダーに粉末磁性材料を混合して調製した塗工腋を、直接紙類に塗布し、塗布面を熱風乾燥して、磁性層を形成させた後、着磁処理する製造方法である。このように塗布面側に熱風を当てて乾燥させると、紙が完全に乾燥しないうちに塗布層が硬化し固定されてしまうので、これを鉄板などの強磁性体に磁気貼着して使用した場合、大気の湿度低下するとともに紙の乾燥収縮が起こり、磁石と鉄板の吸着力に打勝ってカールするため、使用中に剥離したり、巻き上がったりする欠点があるし、又、保存中にも大気の湿度変化によって著しくカールし、使用不可能になると言う欠点がある。
【0009】
この欠点を防ぐため、塗布層の乾燥を紙側から行うと、今度は紙が乾燥過多となって破断しやすく、加工性を著しく損なうことになる。
このような欠点を改善するため、紙の表面に特定の性質をもつ疎水性の皮膜を施したのち、その上に所定の条件を満たした磁性層を形成させることによって解決している。
【0010】
それに対して、前記の先行技術文献1、先行技術文献2のカール原因は先行技術文献3と異なり、複層で断面が左右対称でないことによって、形成時の残存歪、温度変化及び湿度変化による伸縮力差によって生じるものである。
【0011】
又、本発明の磁性シートは、特定厚みの可撓性磁性フィルムの両面に表示可能層を設けて、例えばポストカードに用いようとするものであって、カール原因は片面と他の片面の表示可能層の形成時の残存歪、温度変化及び湿度変化による伸縮力差によって生じるものであって、その防止策として両面の表示可能層の組成と形成条件と厚みを調整することによって解決しようとするものであり、その良否を特定の試験方法によって判定することを特徴とする。
【0012】
又、先行技術文献1、先行技術文献2の磁性ポストカードにあっては、受信者が磁気吸着させるために着磁面側に貼合せている、書き込み、印刷可能な被覆紙を剥がして二つに分ける必要があるため、後日両者の関係が、分からなく成る事がある。本発明は上記の欠点も解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
磁性シートのカール性及び、カール性の解決手段に伴う磁性シート同士の磁気吸着による不都合を解決することを目的に研究を重ねた結果、カール性については材質及び構成を特定することで解決できる事を見出し、又そのカール試験方法について研究の結果、試験片を非磁性体(プラスチック板など)上に置き磁気吸着力のカール防止作用に頼らないで、低湿度から高湿度、それから低湿度の雰囲気に変える試験、即ち後述する試験方法1〜3の短期評価試験方法を見出し、磁性シート同士の磁気吸着問題については、多極着磁の磁極方向又は、磁極間を特定することで解決できることを見出し本発明を成すに至った。
【0014】
(1)、硬質磁性材料粉末と有機高分子であるバインダーより成る、片面に多極着磁を施したボンド磁石である可撓性磁性フィルムの両面に、表示可能層を設けた磁性フィルムであって、可撓性磁性フィルムの厚みが50μm〜400μmであり、表示可能層の片面と他の片面の伸縮力の差などで生じるカールが下記試験方法1乃至試験方法3に於いて、各々3.0mm以下であり、且つ磁気吸着面側の厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする磁性フィルムとする。
【0015】
(試験方法1) 60mm×60mmの試験試料を、水平に置かれた平滑で平坦な非磁性体製の平板上に乗せて、38〜42°Cの熱風循環式恒温装置内×120分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
(試験方法2) 試験方法1の試験後の試験試料を用いて、23〜27°C、RH90〜96%の恒温恒湿装置内×180分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
(試験方法3) 試験方法2の試験後の試験試料を用いて、38〜42°Cの熱風循環式恒温装置内×120分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
【0016】
なお、本発明において、可撓性磁性フィルムとは、磁性体粉末とバインダーであるプラスチック又は、ゴム・エラストマーから主体に構成される組成物を、加熱混練後フィルム状に成形したものを(フィルム状磁石の場合はその後、磁界を印加して着磁する)、直径15mmの丸棒に沿わせて曲げた時に亀裂を生じないものを言う。又、本発明の品名を磁性フィルムと言う。
【0017】
(2)、前記表示可能層の組成と形成条件と厚みが両面とも同じで、厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする前記(1)項記載の磁性フィルムとする。
【0018】
(3)、前記表示可能層が、塗布によって形成された層であることを特徴とする前記(1)項または(2)項記載の磁性フィルムとする。
【0019】
(4)、硬質磁性材料粉末がフエライト系磁石材料粉末、バインダーがポリプロピレンであり、可撓性磁性フィルムの厚み80μm〜350μm、両面の表示可能層の厚みが15μm〜60μmであり、多極着磁の極間が0.8〜2.5mm、垂直吸着力が0.5g/cm〜20g/cmであることを特徴とする前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の磁性フィルムとする。
【0020】
(5)、多極着磁の磁極方向が、縦方向に対して10°〜80°又は、マイナス10°〜マイナス80°の範囲内で任意の傾斜を設けて着磁したことを特徴とする前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の磁性フィルムとする。
【0021】
(6)、 多極着磁の各極間の距離が、ボンド磁石の厚みに対して適する極間寸法を基準極間とし、該基準極間×(4〜6)の寸法を1単位として、1単位毎に基準極間×0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の寸法でなる極間の範囲内で4〜6の磁極が存在し、その順番が連続する各単位内でランダムであることを特徴とする(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の磁性フィルムとする。
【0022】
(7)、多極着磁の各極間の距離が、ボンド磁石の厚みに対して適する極間寸法を基準極間とし、該基準極間×(4〜6)の寸法を1単位として、1単位毎に基準極間×0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の寸法でなる極間の範囲内で4〜6の磁極が存在し、その順番が連続する各単位内でランダムで、且つ磁極方向が縦方向に対して10°〜80°又は、マイナス10°〜マイナス80°の範囲内で任意の傾斜を設けて着磁したことを特徴とする(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の磁性フィルムとする。
【0023】
(8)、軟質磁性材料粉末と有機高分子であるバインダーより成る磁石の被着体となる可撓性磁性ボンド磁性フィルムの両面に、表示可能層を設けた磁性フィルムであって、可撓性磁性フィルムの厚みが50μm〜400μmであり、前期表示可能層を設けた片面と他の片面の伸縮力の差などで生じるカールが前記(試験方法1)乃至(試験方法3)に於いて、各々3.0mm以下であり、且つ磁気吸着面側の厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする磁性フィルムとする。
【0024】
(9)、前記表示可能層の組成と形成条件と厚みが両面とも同じで、厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする前記(8)項に記載の磁性フィルムとする。
【0025】
(10)、前記表示可能層が、塗布によって形成された層であることを特徴とする前記(8)または(9)項に記載の磁性フィルムとする。
【0026】
(11)、軟質磁性材料粉末がセンダスト粉末、四三酸化鉄粉末、Mn‐Znフエライト粉末、鉄粉より選ばれた1種又はこれらの混合物で、バインダーがポリプロピレンであり、ボンド磁性フィルムの厚み50μm〜350μmであり、両面の表示可能層の厚み15μm〜60μmであることを特徴とする(8)〜(10)項のいずれか1項に記載の磁性フィルムとする。
【0027】
(12)、前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の磁性フィルムを用いたことを特徴とする磁性カードとする。これにより、前記(1)〜(7)項によるものはボンド磁石タイプの磁性カードとして、(8)〜(11)項によるものは磁石の被着体タイプの磁性カードが得られる。
【発明の効果】
【0028】
(1)硬質磁性フィルム(ボンド゛磁石タイプの磁性フィルム)及び磁性カードの場合
1).可撓性の磁性フィルムの両面に表示可能層を設けた磁性フィルムとし、両面の表示可能層を塗膜、又は、両面の表示可能層の組成と形成条件と厚みを同じにすることで、伸縮力が同等の表示可能層を設けたこと、及び、特定の試験方法で評価することによって、従来の欠点であるカール発生問題を解決する事が出来た。
2).ボンド磁石の多極着磁の磁極方向又は、各磁極間の距離又は及び、磁極方向と各磁極間の距離を特定にしたことで、カール性を解決する手段に伴う磁性フィルム同士の磁気吸着による不都合を解決した。従って、副次的に従来の磁性ポストカードのように、受信者が磁気吸着させるために着磁面側に貼合せている、書き込み、印刷可能な被覆紙を剥がして二つに分ける必要がないため、後日両者の関係が、分からなく成る事がある欠点を解決した。
3).表示可能層を塗布によって形成する場合には、厚みを必要最小限にする事ができるので、磁石のエアーギャップの減少によりフィルム状磁石の厚みをより薄くしても必要な磁気吸着力を得られるので、総厚みの薄肉化、総自重の軽量化となった。
【0029】
(2)軟質磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)を応用した磁性カードの場合
硬質磁性フィルム(フィルム状のボンド磁石タイプ)を応用したポストカードと共通の効果(カールしない、総厚みの減少、軽量化)の他に、軟質磁性フィルムを応用した磁性フィルムの発明の効果としては、シート状磁石又はフィルム状磁石の着磁面を表側に向けて、貼付け又は内蔵した掲示板や壁面の磁界によって磁気吸着されるので、該磁性フィルムは単独では外部に磁気を出さないので磁性フィルム同士の磁気吸着及び磁気記録媒体などへの影響が全く無く、又、着磁工程が不用である。又、磁性カードの場合、何枚も端を揃えて容易に重ねる事ができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態を表わす磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の断面図を示す。
【図2】従来のボンド磁石シートの多極着磁を表わす平面図(極間が均一)を示す。
【図3】本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の傾斜着磁の一例を表わしたものであり、(a)は着磁面側から見た平面図、(b)は背面側から見た平面図を示す。
【図4】本発明における傾斜着磁された磁性カードの非着磁面と着磁面とを重ねた場合の吸着力低減を説明する模式図を表わしたものであり、(a)は平面図、(b)は最小単位の拡大図を示す。
【図5】本発明における傾斜着磁された磁性カードの着磁面同士を重ねた場合の吸着力低減を説明する模式図を表わしたものであり、(a)は平面図、(b)は最小単位の拡大図を示す。
【図6】従来のボンド磁石シートの多極着磁を表わす断面図を示す。
【図7】従来のボンド磁石シートを非着磁面と着磁面で磁気吸着したときの模式図を表わす断面図を示す。
【図8】本発明の磁性フィルム(多極着磁の磁極間がランダムなボンド磁石タイプ)の非着磁面と着磁面で磁気吸着したときの模式図を表わす断面図を示す。
【図9】本発明の磁性フィルム(多極着磁の磁極間がランダムなボンド磁石タイプ)の着磁面同士で磁気吸着したときの模式図を表わす断面図を示す。
【図10】本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を被着体に貼着した状態を表わす断面図を示す。
【図11】本発明の他の実施の形態を表わす磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)の断面図を示す。
【図12】本発明の他の磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)を被着体(磁石)に貼着した状態を表わす断面図を示す。
【図13】カール試験についての測定方法を表わす説明図を示す。
【図14】カール試験について、別の変形の場合の測定方法を表わす説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
(1). 図1は、本発明の実施の形態を示す断面図を表わしたものであり、P1は、本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を示す。
11は可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を示す。該可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)とは、永久磁石材料である硬質磁性材料粉末とバインダーである少量のプラスチック又は、ゴム・エラストマーから主体に構成される組成物を加熱混練後、厚み80μm〜400μmのフィルム状に成型後、磁界を印加して着磁したものであり、その可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を、直径15mmの丸棒に沿わせて曲げた時に亀裂を生じないものを言う。
【0032】
前記組成物中の硬質磁性材料粉末の充填量は、50〜65容積量%程度で用いられ、厚みは80μmより薄いと磁気吸着力が不足となる場合があり、400μmより厚いと磁気吸着力が用途的に過大となり又、自重が大きくなるのでポストカードなどに用いた場合は不都合である。
【0033】
12は、非着磁面側の表示可能層であり、13は、着磁面側の表示可能層である。
12、13としては、無機粉末等を含有した塗料を塗布した塗膜、合成紙無機粉末等を含有したプラスチックフィルムが挙げられる。尚、紙類(上質紙、コート紙等)は湿度変化による伸縮が大きいので好ましくない。
【0034】
合成紙としては、例えばユポ合成紙FEB,FGS,FPG,VJFP,VJF等((株)ユポコーポレイション製)、トヨジェットGP,MW,MT,YP等(東洋紡績(株)製)、ピーチコートSPUY,MP等(日清紡(株)製)が挙げられ、無機粉末等を含有したプラスチックフィルムとして、は半硬質塩化ビニルフィルム−10P(リケンテクノス(株)製)等が挙げられ、無機粉末等を含有した塗料としては、ポリエステル系SS16−611(東洋インキ(株)製)、ポリエステル系PALマット8,ポリエステル系RAM,ウレタンアクリル系ULA等(セイコーアドバンス(株)製)が挙げられる。
【0035】
前記、合成紙又は塩ビフィルムの磁性フィルムへの貼合せは、接着剤とラミネーターを用いて公知の方法で行う事が出来る。この場合に用いる接着剤としては、ポリエステル系(二液型)AP−368A/B(中央理化(株)製),ポリエステル系(二液型)TM595/CAT56(東洋モートン(株)製)等が挙げられる。
【0036】
前記、塗料の磁性フィルムへの塗布は、ブレードコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、ロールコーター、リバースロールコーター等公知の方法で行う事が出来る。
【0037】
非着磁面側の表示可能層と、着磁面側の表示可能層とを比較して、成型歪み、温度、湿度変化による伸縮力が同等であることが望ましく、この差が大きいと保管時及び貼着使用時にカールする問題を生じる可能性が大きくなる。
伸縮力が同等と成るように設計するには、各素材の収縮率、弾性係数、温度湿度変化と伸縮率、及び厚みなどで吟味して最終的には、前記カール性試験で判断するのが良い。
【0038】
その試験の結果で、3.0mm以下が好ましく、3.0mmを超えるとカールによる磁気吸着不良を招く可能性が大きくなる。
【0039】
又、13で示す着磁面側の厚みは、15μm〜100μmが好ましく、更に好ましくは15μm〜60μmである。15μmよりも薄いと可撓性磁性フィルムの自然色に対する隠蔽力不足となり商品価値が低下し、100μmより厚くなると磁石のエアーギャップ大となり磁気吸着力の低下が大きく不利である。
【0040】
(2). 図1に於いて、11は可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)であり、12は非着磁面側の白色でなる表示可能層であり、13は着磁面側の表示可能層である。12と13とは組成及び形成条件並びに厚みが同じであることが望ましく、同じでない場合は、12と13との伸縮力の差によるカール性が大きくなり、カール試験において、浮き上がり距離が3.0mm以上になる可能性が大きくなる。
【0041】
(3). 図1に於いて、12と13の表示可能層の形成が塗布による場合は、必要最少限の塗布が可能であり、磁石に対するエアーギャップの影響が少なくなることから磁性フィルムの厚みを薄く出来るので重量を軽減することに通じる。又、形成残存歪みを殆ど生じない利点があるので、ポストカードに応用する場合に非常に好ましい。
又、図1に於いて、12と13の表示可能層として市販の合成紙を応用する場合は、印刷方法に適したグレード(インキ受理層)を選ぶことで、後記するインキ受理層の加工をする必要がなく工程の省略となるので好ましい。
【0042】
表示可能層の両面又は非磁気吸着面側の表面にインキジェット等のインキ受理層を塗布しても良い。又、インクジェット受理層を設ける場合は、インクジェット受理層の厚みを2μm〜20μmが望ましく、2μmより薄いとインクの受理能不足となり、20μmより厚いと必要以上の受理能となり不経済である。
【0043】
インキ受理層の形成に用いる処理剤としては、特に制限はなく市販のものが使用できるが、インクジェット受理層の形成に用いる処理剤としては、例えば、パテラコールIJ−150R(無機質充填剤含有ウレタン樹脂系ディスパーシヨン)DIC(株)製、RSI−100(無機質充填剤含有ハイブリット樹脂系ディスパーシヨン)DIC(株)製、MZ−477、MZ−480、(無機質充填剤含有アクリル樹脂系ディスパーシヨン)高松油脂(株)製が挙げられる。又、塗布装置としては公知のものが使用できるが、例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0044】
(4). 図1の11は、可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)であり、これに用いる硬質磁性材料粉末(磁石材料粉末)として、フエライト系(ストロンチュウムフエライト、バリュウムフエライト)、希土類系(Sm―Co系、Nd―Fe−B系、Sm―Fe−N系)等が挙げられる。
【0045】
有機高分子であるバインダーとしては、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン)ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリアミド樹脂(6ナイロン、12ナイロン)アクリル樹脂(エチレンエチルアクリレート)塩素化ポリエチレン樹脂等のプラストマー、及び、塩素化ポリエチレン系エラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレン系エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体系エラストマー、エチレンプロピレン系エラストマー、エチレンエチルアクリレート系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。
【0046】
各種硬質磁性材料中、フエライト系は金属酸化物であるので、酸化劣化を生じないのでボンド磁石成型加工条件の影響を受け難いこと、安価であることから可撓性磁性フィルム用として好適である。又、各種バインダー中、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及び、ポリアミド−6は、加熱溶融粘度がゴム・エラストマーに比べて低いのでフエライト系磁石材料粉末を高充填した組成物に用いてフィルム成型をする場合に流動性に優れ、機械への負荷が少なく押出・圧延成型加工に好適であり、中でもポリプロピレンは、加工性、物性と経済性の点で好ましい。
【0047】
ポリプロピレンをバインダーとする場合は、低密度ポリエチレンを硬さ調整の目的で適量併用出来るし。また、極性を付与して接着性を改善すること、及び磁性材料との濡れ性相溶性を改善する目的で、不飽和カルボン酸変性αオレフィン又は共重合体、例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン・ポリプロピレン共重合体などの添加が好ましく、ポリプロピレンとポリエチレンの併用に当たっては、無水マレイン酸変性エチレン・ポリプロピレン共重合体の添加が好ましい。それらの添加量は、バインダー全量に対して5〜10パーセント程度が好ましい。
【0048】
トレーディングカードやポストカード(絵葉書)などの用途に用いる可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の仕様としては、硬質磁性材料をフエライト系磁石材料粉末、バインダーをポリプロピレンとし、可撓性可撓性磁性フィルムの厚みを80μm〜350μm、両面の表示可能層の厚みは15μm〜60μmであり、多極着磁の極間が0.8〜2.5mm、垂直吸着力が0.5g/cm〜20g/cmであることが望ましい。
【0049】
硬質磁性材料をフエライト系磁石材料粉末、バインダーをポリプロピレンとするのは前
記の通り加工性、物性と経済性の点から好ましく、可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の厚みを80μm〜350μm、とするのは80μmより薄いと磁気吸着力が不足する場合を生じ、350μmより厚いと吸着力過多となり不経済となるからである。又、両面の表示可能層の厚みを15μm〜60μmとするのは、15μmより薄いと隠ぺい力不足となり60μmより厚いと磁石のエアーギャップ、自重、総厚みへの影響が大きくなり不経済となるからである。
【0050】
又、多極着磁の極間を0.8mm〜2.5mmとするのは、0.8mmより狭いと極間で着磁する装置の作製が困難となって不経済であり、2.5mmより広いと、厚みに対する適正極間の範囲を逸脱するので吸着力の発現が低下する。又、垂直磁気吸着力を、0.5g/cm〜20g/cmとするのは、0.5g/cmより弱いと用途的に吸着力不足に成る場合があり、20g/cmより強いと用途的に過大であり不経済となるからである。
【0051】
(5). ボンド磁石タイプの磁性フィルム及び磁性カードの末端使用状況は、単体(1枚)で被着体であるスチールロッカー、スチールデスクなどに磁気吸着させるものであるが、包装や保管時などで、複数枚重ねた状態で取り扱われる。
図2は、従来の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の多極着磁を示す平面図である。
この従来の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)1001には、磁性フィルムの幅方向に対して直角方向(縦方向)に磁極方向を揃えて多極着磁が施されており、磁性フィルムの厚みが極間に対して極端に厚い場合を除き、多極着磁面に対して、背面(非着磁面)に極性を異にする磁極、即ち、着磁面のN極の背面にs極が生じ、着磁面のS極の背面にn極が生じることになる。
従って、磁性フィルムを用いて作成した磁性カードを表向きに重ねると非着磁面と他の磁性カードの着磁面が重なるので、N極とs極、S極とn極が弱い磁気吸引力で重なることになる。
尚、この弱い吸着力は、着磁面同士の吸着力の30%程度であり実用上問題にならないが、複数の磁性カードを上下左右端辺を揃えて重ねる作業においては好ましくない。
【0052】
本発明は、本発明のカール性を解決する手段に伴って生じるこの好ましくない磁気吸着の問題を解決するものである。即ち本発明の磁性フィルムが、先行技術のように着磁面側に磁気吸着を阻害する十分なエアーギャップ層を有しないために起こる現象であり、着磁方法を特定することで解決できる。
【0053】
本発明は、定尺に裁断した未着磁の磁性フィルムを用いて、縦方向に対して多極着磁の磁極方向を10°〜80°又は、マイナス10°〜マイナス80°の範囲内で任意の傾斜を設けて着磁することである。即ち、定尺に裁断した未着磁の磁性フィルムを10°〜80°又は、マイナス10°〜マイナス80°の範囲内で着磁機への供給角度をランダムにすることであり、供給方法としては手差し、又は自動供給装置において、従来のように方向を規制するガイドやストッパーなどを用いないで供給することで達成できる。
【0054】
そうして、可能性は少ないが、磁性カードを重ねた場合に後述する交差角が形成されない場合は、重ね合わせ順位を変えて交差角が形成される重ね合わせにすることで解決すれば良い。又、縦方向に対して多極着磁の磁極方向が、10°又はマイナス10°より小さい場合及び、80°又はマイナス80°を超えて、90°又はマイナス90°までに大きくなると、後述する磁性カードの着磁面同士における交差角が小さくなる可能性が大きくなり好ましくない。
【0055】
次に、本発明の吸着力低減作用について模式図にて説明する。
図3は本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の傾斜着磁の一例を表わしたものであり、図3(a)は着磁面側から見た平面図、図3(b)は背面側から見た平面図を示している。
図3(a)に表わされるように、この磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)101における磁極S,Nは、長手方向に対して反時計回りに30°傾斜着磁されたものとなっており、その背面となる非着磁面には、従来と同様に、図3(b)のように、N極の裏側にs極が、S極の裏側にn極が、時計回りに30°傾斜着磁したように表れる。
【0056】
図4は、図3のように傾斜着磁された磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を用いて作製された磁性カードを使って、非着磁面と着磁面を重ねた場合の吸着力低減を説明する模式図を表わしたものであり、図4(a)は平面図、図4(b)は最小単位の拡大図を示している。
これらの図に表わされるように、磁性カード201の非着磁面には傾斜角度Eでなる磁極s,nが形成されており、その面に対して異なる傾斜角度Fで着磁された磁性カード301を載せると、Gで表わされる交差角度で重なることになる。
ちなみに、現在の図面は、傾斜角度Eが30°、傾斜角度Fが60°であり、交差角度Gは30°となっている。
【0057】
そして、この状態における磁気吸着状況は、図4(b)に示されるように、傾斜着磁の一対の磁極同士、即ち、N極、S極、n極、s極が交差することにより四つの同一形状・面積のブロック「V(N,n同極反撥)、W(S,s同極反撥)、Y(N,s異極吸引)、Z(S,n異極吸引)」が形成され、反撥するブロック2個と異極吸引するブロック2個となるので磁気吸着力は略相殺され、磁性カード同士は、図4(a)で示されるように、この関係が多数構成されているので、同様に磁気吸着力は略相殺(磁気吸着力低減)される。
なお、この作用効果は、交差角度Gが0、或いは極めて小さくない限り奏することができるため、その条件の範囲であれば、傾斜角度E、傾斜角度Fは、上記数値以外でも実施可能であることはいうまでもない。
【0058】
また、この現象及び作用効果は、着磁面同士を重ねた場合でも同様に生ずるものであるが、図5を用いて説明する。
【0059】
即ち、図5は、図3のように傾斜着磁された磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を用いて作製された磁性カードを使って、着磁面同士を重ねた場合の吸着力低減を説明する模式図を表わしたものであり、図5(a)は平面図、図5(b)は最小単位の拡大図を示している。
これらの図に表わされるように、磁性カード401の着磁面には傾斜角度Eaでなる磁極S,Nが形成されており、その面に対して異なる傾斜角度Faで着磁された磁性カード501を載せると、Gaで表わされる交差角度で重なることになる。
ちなみに、現在の図面は、傾斜角度Eaが30°、傾斜角度Faが60°であり、交差角度Gaは90°となっている。
【0060】
そして、この状態における磁気吸着状況は、図5(b)に示されるように、傾斜着磁の一対の磁極同士、即ち、N極、S極、N1極、S1極が交差することにより四つの同一形状・面積のブロック「Va(N1,N同極反撥)、Wa(S1,S同極反撥)、Ya(S1,N異極吸引)、Za(N1,S異極吸引)」が形成され、反撥するブロック2個と異極吸引するブロック2個となるので磁気吸着力は略相殺され、磁性カード同士は、図5(a)で示されるように、この関係が多数構成されているので、同様に磁気吸着力は略相殺(磁気吸着力低減)される。
なお、この場合の作用効果についても、交差角度Gaが0、或いは極めて小さくない限り奏することができるため、その条件の範囲であれば、傾斜角度Ea、傾斜角度Faは、上記数値以外でも実施可能であることはいうまでもない。
【0061】
着磁面同士が重なる場合としては、例えば絵葉書の絵面がインキジェット印刷であり、背面に住所と宛名をボールペンで記入している場合などは、ボールペンのインキが絵面を汚染しないようにボールペンで記入面同士、即ち着磁面同士を重ね合わせて保管する場合があり、従来方式の着磁によると傾斜着磁が施されていないもの同士となるため強く磁気吸着して後での整理作業などの障害をきたすが、本発明着磁を施した磁性カードは殆ど磁気吸着力を生じないので好適である。
【0062】
(6). 次に、吸着力問題を解決する他の発明について述べる。
図6は、従来の磁性シート(ボンド磁石タイプ)の多極着磁の模式図を表わした断面図である。
この従来の磁性シート(ボンド磁石タイプ)1001における、nは非着磁面のN極を示し、sは非着磁面のS極を示し、Nは着磁面のN極を示し、Sは着磁面のS極を示しているが、その各々の磁石極間(d1、d2、d3、d4、d5、d6、d7、d8、d9)は均一である。
【0063】
そして、図7は、従来のボンド磁石1001,1001同士が非着磁面と着磁面でN極の中心線とs極の中心線、S極の中心線とn極の中心線が合致して磁気吸着している状態を示したものである。
このように、従来のボンド磁石の多極着磁は、夫々の極間距離が均一であるために、ボンド磁石同士が非着磁面と着磁面又は、着磁面と着磁面が接した場合に異極吸引によってS−n、N−s間又はS−N、N−S間で磁気吸着をするので、場合によっては不都合である。
【0064】
その現象を阻害するためには、夫々の極間距離を不均一とさせれば対峙するN−Sの位置が極の中心線上に来ないため磁気吸引を阻害することができる。
図8は、本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)91,91同士が非着磁面と着磁面でN極の中心線とs極の中心線、S極の中心線とn極の中心線が合致していない状態を示したものである。
この状態では著しく吸着力が低下するので不都合を生じる心配が無い。即ち、本発明は磁極間距離を特定範囲でランダムに着磁することである。
又、図9は、本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)91,91同士が着磁面同士でN極の中心線とS極の中心線、S極の中心線とN極の中心線が合致していない状態を示したものである。
この状態においても、著しく吸着力が低下するので不都合を生じる心配が無い。
【0065】
本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の極間は、ボンド磁石の厚みに対して適する極間寸法を基準極間として、この基準極間×(4〜6)の寸法を1単位として、1単位毎に基準極間×0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の極間の範囲内で4〜6個の磁極を存在させ、その順番が連続する各単位内でランダムである多極着磁とすることが好ましく、より好ましくは基準極間×5の寸法を1単位として、1単位毎に基準極間×0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の極間を各1個、計5個存在させ、その順番が連続する各単位内でランダムである多極着磁とすることである。例えば基準極間2mmの場合は、単位の寸法が10mmであり、その中に1.6mm、1.8mm、2.0mm、2.2mm、2.4mmの極間が各1個存在し、その順番がランダムであり、連続する各単位内の順番がランダムである多極着磁である。具体例を示せば、1単位を「 」で表わすと、「1.6mm、2.0mm、2.4mm、1.8mm、2.2mm」「2.0mm、2.4mm、1.8mm、2.2mm」・・・の如く各単位内の磁極の順番をランダムにすることになる。
【0066】
1単位が基準極間×4の場合は、基準極間×0.8、0.9、1.1、1.2の極間を各1個、計4個存在させ、基準極間×6の場合は、基準極間×0.8、0.9、1.1、1.2の極間を各1個と基準極間×1.0、の極間を2個の計6個存在させれば良い。
又、1単位が基準極間×4の寸法より小さいと極間をランダムにする自由度が少なくなり、1単位が基準極間×6の寸法より大きいと同寸法の極間が多くなり極間のランダム性の低下を招くので好ましくない。
尚、磁極間の寸法は、基準極間×(0.8〜1.2)とすることが、厚みに対して適する極間の範囲を逸脱しないので好ましい。
【0067】
本発明の磁極間ランダム方式は、従来公知の永久磁石を用いた多極着磁ロールの形式で、各極間を特定することで実施できるので、長尺(巻物)原反を連続して着磁することが出来る利点がある。そして、幅広の長尺の着磁済原反から磁性カードを裁断する際に、まず原反の横方向に磁性カードの縦寸法で帯状に裁断し、次いで磁気カードの横寸法で裁断すればよい。この場合、最初の端部の捨て代を、標準磁極間寸法の10倍程度の寸法範囲内でランダムに切り捨ててから開始することで、各帯状に裁断したものから製作した磁性カードの磁極パターンが他のカードの磁極パターンと一致すること(吸着力低減効果が生じない組み合わせ)は殆ど生じない。
【0068】
この裁断方法を、磁性ポストカード製作を例にすると、1020mm幅の原反から横方向に150mm×1020mmの帯状を裁断することで20枚製作する。次に、各帯状磁性フィルムの一方の端部を20mmの範囲内で寸法が一致することを避けるためにランダムの寸法で切り捨てた後、100mm毎に裁断して100mm×150mmの磁性ポストカード200枚を得る。
【0069】
このように、本発明の磁性カードの着磁面同士を重ねた場合、原理的に、磁極パターンが一致する可能性は極めて少ないので、前記の絵葉書の保管、整理などの場合に好適である。
尚、万一包装時の重ね合わせで磁気吸着するようなことがあった場合には、重ね合わせ順位を変えることで解決できる。
【0070】
(7). 次に、更に吸着力問題を解決する他の発明について述べる。上記の磁極間距離をランダムにする着磁方式について、非着磁面と着磁面を重ねた場合、可能性は非常に低いが極間パターンが一致した場合に吸着力低減効果が得られない欠点を改善するために、磁性カードの着磁を磁極間距離をランダムとし且つ、磁極方向をランダムに傾斜させる方式にすることによって極間パターンが一致した場合に吸着力低減効果が得られない可能性を極めて低くした。磁極方向をランダムに傾斜させる方式は前記(5)と同様にすることで実施できる。
【0071】
図10は、本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を被着体に貼着した状態を示す断面図であり、B1は、磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の被着体となる冷蔵庫、スチール棚、ホワイトボードなどを示し、P1は本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)を示す。
【0072】
次に軟質磁性材料粉を用いた磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)について述べる。
(8). 図11は、本発明の磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)の断面図を示す。
PS1は、本発明の磁性フィルム(磁石の被着体を用いた)であり、11Sは、可撓性の磁性ボンドフィルム(磁石の被着体)を示し、12Sは非磁気吸着面側の表示可能層を示し、13Sは磁気吸着面側の表示可能層を示す。
【0073】
本発明の、構成及び製造方法は、図1で説明した可撓性磁性フィルムの硬質磁性材料粉末(磁石材料粉末)を軟質磁性材料粉末(磁石の被着体材料粉末)に置換したものであり、その他の構成、製造方法は図1と同様にして得られる。但し可撓性磁性フィルムの厚みは50μm〜350μmが好ましく、50μmより薄いと必要な吸着力不足となる可能性が有り、350μmより厚いと必要な吸着力過多となり不経済である。
【0074】
(9). 軟質磁性材料粉末としては、鉄粉末、鉄との合金粉末(センダスト、パーマロイ、鉄・シリコン、鉄・コバルト、鉄・ニッケル・コバルト、)四三酸化鉄粉末、ソフトフエライト粉末(Mn・Zn、Mn・Ni)等が挙げられ、中でもセンダスト粉末、四三酸化鉄粉末、鉄粉末、ソフトフエライト粉末(Mn・Zn系)が性能、加工性、経済性の点から好ましい。
【0075】
図12は、本発明の他の可撓性磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)を、被着体(磁石)に磁気吸着させた状態を示す断面図であり、B2は、従来のボンド磁石シートからなる被着体を示し、PS1は本発明の可撓性磁性フィルムを示す。
【0076】
次に磁性フィルムを用いた磁性カードについて述べる。
(10). 磁性フィルムを用いた磁性カードの図示は省略するが、磁気貼着状態についてボンド磁石タイプの場合は図10が引用出来、磁石の被着体タイプの場合は図12が引用出来る。
磁性カードの製作は、前記「課題を解決するための手段」の(1)〜(11)項いずれか1項に記載の磁性フィルムに適宜印刷加工を施した後、所定のカードサイズに裁断することで得られ、ボンド磁石タイプは磁性フィルム製造後に着磁処理をしても良く、又、印刷処理後に行なうことも出来る。
【0077】
(11). 図13は、カール試験に於ける測定方法を示す説明図(断面図)であり、図14は、カール試験に於ける別の変形の場合の測定方法を示す説明図(断面図)である。U、はカール試験に用いる非磁性体製の平板、t1、t2、は試験試料、h1、h2、はカール試験での測定位置を示す。
【0078】
以下実施例を用いて、本発明を説明する。
なお、実施例は大別して、〔1〕ボンド磁石タイプの磁性フィルム、〔2〕磁石の被着体タイプの磁性フィルムについてとなるが、先ず、〔1〕ボンド磁石タイプの磁性フィルムについて、実施例1〜17にて説明する。
【実施例1】
【0079】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No1)
・ポリプロピレン(プライムポリプロ、E−203GP)(株)プライムポリマー製〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70重量部
・低密度ポリエチレン(ノバテックLD、LF−440HB)日本ポリエチレン株式会社製〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15重量部
・無水マレイン酸変性ポリオレフィン(モディック、F534A)三井化学(株)製〔樹脂〕〔相溶化剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15重量部
・ステアリン酸カルシユウム)(SC−100)堺化学(株)製〔滑剤〕・0.2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)製友化学(株)製〔酸化防住止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.15重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製 〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・0.35重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・730重量部

磁性材料粉の充填量 87.9重量%(56.0容積%)
【0080】
(ペレットの作成)
・上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で240°C〜270°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(可撓性磁性フィルムの作成)
・前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、240°C〜270°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度40°C〜60°C)にて200μm厚の可撓性磁性フィルムを作成する。
【0081】
(2)表示可能層の形成
・前記フィルムの片面をコロナ放電処理を施した後、無機質白色粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料SS16−611(東洋インキ(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。次に、他の面に同様にして処理する。
(3)着磁
・前記フィルムの片面に、公知の永久磁石型着磁ロール(極間2mmピッチ多極)に接触させて連続多極着磁を施す。此れによってボンド磁石タイプの磁性フィルムを得る。
【実施例2】
【0082】
(1)可撓性磁性フィルムの作成については、実施例1と同様にする。
(2)表示可能層の形成
・前記フィルムの片面を実施例1と同様にして25μm厚の表示可能層を形成し後、更に、無機質粉末等を含有するウレタン系樹脂インキジェット受理層用塗料パテラコールIJ−150R(DIC(株)製)を、コンマコーターを用いてドライ15μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。次に、他の面に同様にして処理する。
(3)着磁
・実施例1と同様にする。此れによってボンド磁石タイプの磁性フィルムを得る。
【実施例3】
【0083】
(1)可撓性磁性フィルムの作成については、実施例1と同様にする。
(2)表示可能層の形成
・前記フィルムの片面に、実施例1と同様にして25μm厚の表示可能層を形成し後、実施例2と同様にしてインキジェット受理層15μm厚を形成する。
次に、他の片面に実施例1と同様にして40μm厚の表示可能層を形成する。
(3)着磁
・40μm厚の表示可能層を着磁面側として、実施例1と同様にして着磁する。此れによってボンド磁石タイプの磁性フィルムを得る。
【実施例4】
【0084】
(1)可撓性磁性フィルムの作成については、実施例1と同様にする。
(2)表示可能層の形成
・前記フィルムの片面に、実施例1と同様にして40μm厚の表示可能層を形成し後、実施例2と同様にしてインキジェット受理層15μm厚を形成する。
次に、他の片面に実施例1と同様にして40μm厚の表示可能層を形成する。
(3)着磁
・40μm厚の表示可能層を着磁面側として、実施例1と同様にして着磁する。此れによってボンド磁石タイプの磁性フィルムを得る。
【実施例5】
【0085】
・表示可能層の形成以外は、実施例1と同様にする。
(表示可能層の形成)
・実施例1と同様にして、非着磁面側を30μm厚に、着磁面側を25μm厚とする。
【実施例6】
【0086】
(1)可撓性磁性フィルムの作成については、実施例1と同様にする。
(2)白色表示可能層の形成
・可撓性磁性フィルムの片面をコロナ放電処理を施した後、合成紙FPG(80μm厚)(株)ユポコ−ポレイション製を、ポリエステル樹脂系接着剤(2液型)(AP−368A/B)(中央理化(株)製)を用いてラミネーターで貼合わせる。次に、他の面も同様にして合成紙FPG(80μm厚)を貼合わせる。
(3)着磁
・実施例1と同様にする。此れによってボンド磁石タイプの磁性フィルムを得る。
【実施例7】
【0087】
・実施例6の合成紙を半硬質塩化ビニルフィルム10P(100μm厚)(リケンテクノス(株)製)に変えた以外は、実施例6と同様にする。
【0088】
(比較例1)
・表示可能層の形成以外は、実施例6と同様にする。
・実施例6と同様にして、非着磁面側の合成紙を80μm厚に、着磁面側の合成紙を60μm厚とする。
【0089】
(比較例2)
・表示可能層の形成以外は、実施例6と同様にする。
・実施例6の合成紙をコート紙(80μm厚)(王子製紙(株)製)に変えた事以外は、実施例5と同様にする。
【0090】
(比較例3)
・白色表示可能層の形成以外は、実施例6と同様にする。
・実施例6の合成紙をコート紙(王子製紙(株)製)に変えて、非着磁面側のコート紙を100μm厚に、着磁面側のコート紙を80μm厚にした事以外は、実施例6と同様にする。
【実施例8】
【0091】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No2)
・ポリエチレンテレフタレート(IP‐120B)(株)ベルポリエステルプロダックツ社製 〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・ポリエチレングリコール(PEG♯200)日油(株)製〔可塑剤〕・・・30重量部
・モンタン酸とブチレングリコールとのエステル化合物とモンタン酸カルシュウムの混合ワックス(リコワックスOP)クラリアントジャパン(株)製〔滑剤〕・・・・1重量部
・2,2’6,6’‐テトライソプロピルジフエニルカルボイミド(ビスカルボイミド)ライン・ケミー社製 〔加水分解防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ジメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製 〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・0.37重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔軟質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・673重量部

磁性材料粉の充填量 83.7重量%(56.0容積%)
【0092】
(ペレットの作成)
・IP‐120Bペレットを140°C×4時間熱風乾燥機にて攪拌乾燥処理を行なう
・上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で260°C〜290°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(可撓性磁性フィルムの作成)
・前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、260°C〜290°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度60°C〜80°C)にて200μm厚の可撓性磁性フィルムを作成する。
【0093】
(2)表示可能層の形成
・前記フィルムの片面をコロナ放電処理を施した後、無機質白色粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料SS16−611(東洋インキ(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。次に、他の面に同様にして処理する。
(3)着磁
・前記フィルムの片面に、公知の永久磁石型着磁ロール(極間2mmピッチ多極)に接触させて連続多極着磁を施す。此れによってボンド磁石タイプの磁性フィルムを得る。
【実施例9】
【0094】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No3)
・グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET‐G6763)イーストマンケミ
カル社製〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・ポリエチレングリコール(PEG♯200)日油(株)製〔可塑剤〕・・・30重量部
・モンタン酸とブチレングリコールとのエステル化合物とモンタン酸カルシュウムの混合ワックス(リコワックスOP)クラリアントジャパン(株)製〔滑剤〕・・・・1重量部
・2,2’,6,6’‐テトライソプロピルジフエニルカルボイミド(ビスカルボイミド)ライン・ケミー社製〔加水分解防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・2重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ヂメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3‐ラウリルチオプロピオネイト)(スミライザーTP‐D)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・・0.37重量部
・OP‐56(異方性・機械配向型ストロンチュウムフエライト)DOWAエフテック(株)製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・700重量部

磁性材料粉の充填量 84.2重量%(56.0容積%)
【0095】
(ペレットの作成)
・PET‐G6763のペレットを、140°C×4時間熱風乾燥機にて乾燥処理を行なう。
・上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で230°C〜260°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(可撓性磁性フィルムの作成)
・前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、230°C〜260°Cで300μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度60°C〜80°C)にて200μm厚の可撓性磁性フィルムを作成する。この2本ロール圧延機にて圧延時に、ストロンチュウムフエライトが機械配向型であるので磁化容易軸(結晶C軸)がフィルムの厚み方向に配向される。
【0096】
(2)表示可能層の形成
・実施例1と同様に行なう。
(3)着磁
・実施例1と同様に行なう。
【実施例10】
【0097】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
・150μm厚のフィルムを押出し、その直後に圧延機にて100μm厚の可撓性磁性フィルムを作成する以外は、実施例9と同様に行なう。
(2)表示可能層の形成
・非着磁面側を20μm厚に、着磁面側を20μm厚にする以外は、実施例1と同様に行なう。
(3)着磁
・実施例1と同様に行なう。
【実施例11】
【0098】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No4)
・6−ナイロン樹脂(Nylon1011FB)宇部興産(株)製〔樹脂〕・70重量部
・エチレンメタアクリレート共重合体(ベイマックG)デュポン社製・・・・30重量部
〔エラストマー〕
・置換ジフエニルアミン(ナウガード445)ユニロイヤル社製〔酸化防止剤〕1重量部
・ステアリン酸カルシュウム(SC−100)堺化学(株)製〔滑剤〕・・・・1重量部
・モンタン酸とブチレングリコールとのエステル化合物とモンタン酸カルシュウムの混合ワックス(リコワックスOP)クラリアントジャパン(株)製〔滑剤〕・・・・1重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・612重量部

磁性材料粉の充填量 85.6重量%(56.0容積%)
【0099】
(ペレットの作成)
・Nylon1011FBのペレットを100°C×4時間熱風乾燥機にて乾燥処理を行なう
・上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、KCK80型混練押出機で230°C〜260°Cで混練して紐状に押出し、ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(可撓性磁性フィルムの作成)
・前記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフイッシュテール型ダイス(400mm幅)を付けて、230°C〜260°Cで400μm厚のフィルムを押出し、その直後にφ12インチ2本ロール圧延機(表面温度40°C〜60°C)にて200μm厚の可撓性磁性フィルムを作成する。
【0100】
(2)表示可能層の形成
・前記フィルムの片面に、無機質粉末等を含有するポリエステル系樹脂塗料PALマット8 120ホワイト(セイコーアドバンス(株)製)をコンマコーターを用いて、ドライ30μm厚に成るように塗布し60°C〜90°C×12分乾燥炉を通して乾燥する。次に、他の面を同様にして処理する。
(3)着磁
・実施例1と同様に行なう。
【実施例12】
【0101】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No4)
・スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体)(クレイトンG1657)クレイトン社製〔エラストマー〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70重量部
・エチレン・プロピレン共重合体(EPO7P)(日本合成ゴム(株)製)〔エラストマー〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30重量部
・エチレン・αオレフィン共重合オリゴマー(ルーカント)三井化学(株)製10重量部
・モンタン酸とブチレングリコールとのエステル化合物とモンタン酸カルシュウムの混合ワックス(リコワックスOP)クラリアントジャパン(株)製〔滑剤〕・・・・1重量部
・3,9‐ビス[2‐〔3‐(3‐ターシャリーブチル‐4‐ヒドロオキシ‐5‐メチルフエニルオキシ)プロピオニルオキシ〕‐1,‐1‐ヂメチルエチル]‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(スミライザーGA‐80)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.15重量部
・スミライザーTP-D(ペンタエリスリトール テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネイト)住友化学(株)製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・0.35重量部
・等方性ストロンチュウムフエライト(HM403)フィージャーマグネティックス社製
〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・826重量部

磁性材料粉の充填量 88.1重量%(56.0容積%)
【0102】
(ペレットの作成)
・上記配合に従って加圧ニーダー(40L)にて140°C×15分混練後、冷却した後ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
(フィルムの作成)
・上記ペレットをφ18インチ2本ロール圧延機(表面温度90°C)にてペレット圧延を行い200μm厚のフィルムを作成する。
【0103】
(2)白色表示可能層の形成
・前記フィルムの片面に、実施例11と同様にしてドライ30厚の白色表示可能層を形成し、次に他の片面を同様に処理する。
(3)着磁
・実施例1と同様に着磁する。
【実施例13】
【0104】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
(配合)(配合No6)
・塩素化ポリエチレン(エラスレン301A)昭和電工(株)製〔エラストマー〕
100重量部
・エポキシ化大豆油(W100EL)DIC(株)製・・・・・・・・・・・・5重量部
・ステアリン酸カルシュウム(SC−100)堺化学(株)製・・・・・・1.5重量部
・ジラウリルチオプロピオネート(スミライザーTPL−R)住友化学(株)製
0.3重量部
・ストロンチュウムフエライト・異方性・機械配向型(OP-56) DOWAエフテック(株)製〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・629重量部

磁性材料粉の充填量 85.4重量%(56.0容積%)
【0105】
(ペレットの作成)
・上記配合に従って加圧ニーダー(40L)にて120°C×15分混練後、冷却した後ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
【0106】
(フィルムの作成)
・上記ペレットをφ18インチ2本ロール圧延機(表面温度75°C)にてペレット圧延を行い200μm厚のフィルムを作成する。
【0107】
(2)表示可能層の形成
・前記フィルムの片面に、実施例11と同様にしてドライ30μm厚の表示可能層を形成し、次に他の片面を同様に処理する。
(3)着磁
・実施例1と同様に着磁する。
【実施例14】
【0108】
(1)可撓性磁性フィルムの作成
・可撓性磁性フィルムの厚みを330μmとする以外は、実施例13と同様にする。
(2)表示可能層の形成
・合成紙をFEB(95μm厚)(株)ユポコ−ポレイション製を使用する以外は、実施例7と同様にする。
(3)着磁
・実施例1と同様に着磁する。
【0109】
(比較例4)
(1)可撓性磁性フィルムの作成は、厚みを400μmとする他は、実施例13と同様にする。
(2)表示可能層の形成は、実施例13と同様にする。
(3)着磁は、実施例1と同様に着磁する。
【0110】
(比較例5)
(1)可撓性磁性フィルムの作成
・実施例13における配合No6の磁性材料を、等方性ストロンチュウムフエライト粉末(HM403)フィージャーマグネティックス社製〔硬質磁性材料〕に変えた配合(配合No13)以外は、実施例13と同様にして、180μm厚のフィルムを作成。
(2)表示可能層の形成
1.非着磁面側のみに表示可能層を設けた磁性フィルム本体を作成。
・コート紙(110μm厚)を、ポリエステル系(二液型)接着剤AP−368A/B(中央理化(株)製)を用いてラミネーターで貼合わせた後、実施例1と同様に着磁する。
・ 着磁面側に被覆層を設けた磁性フィルムを作成する。
・1.で作成した磁性フィルム本体に、上質紙(150μm厚)をノンサポートタイプのアクリル系微粘着剤(707寺岡製作所社製)を用いてラミネーターで貼合わせる。
【0111】
(比較例6)
(1)磁性フィルム本体の作成
(配合)(配合No14)
・塩化ビニル/酢酸ビニル(VAGH)ユニオンカーバイト社製〔樹脂〕12.5重量部
・ポリウレタン溶液(固形分25%)(ニッポラン3022(ニホンポリウレタン社製))〔樹脂〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35重量部
・異方性ストロンチュウムフエライト粉末(FH801)(戸田工業社製)〔硬質磁性材料〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・メチルエチルケトン〔溶剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60重量部
・トルエン〔溶剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60重量部
・シクロヘキサン〔溶剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30重量部
磁性材料粉の充填量 82.5重量%(55.2容積%)
【0112】
(塗工液の作成)
・ボールミル18時間分散混合処理をして磁性塗料を得る。
(磁性層の形成)
・白色ペット50μm厚フィルム(ルミラーE20)(東レ社製)の片面にリバースコーターにて乾燥膜厚60μmに成るよう塗布し磁場配向〔面内配向〕後、熱風乾燥炉にて乾燥する。(着磁)
・面内配向(異方性ストロンチュウムフエライトの結晶のC軸を面方向に配向)しているので磁性シートの流れ方向に対して直角方向が多極着磁の磁極方向に成るようにして、実施例1と同様に着磁する。
(着磁面側に被覆層を設けた磁性フィルムの作成)
・磁性フィルム本体の磁性層面に、合成紙(80μm厚)(SEK−80)(日清紡社製)を、ノンサポートタイプのアクリル系微粘着剤(707)(寺岡製作所社製)を用いてラミネーターで貼合わせる。
【実施例15】
【0113】
・着磁以外は、実施例1と同様にする。
(着磁)
(1)実施例
・実施例1における未着磁の磁性フィルムの定尺カット品を用いて、公知の永久磁石型着磁ロール(極間2mmピッチ多極)にて、各磁極方向を図7のように、縦方向に対して略30°傾けて着磁を施す。即ち、従来公知の着磁は定尺カット品の縦方向端部に平行に着磁されるように着磁ロールへの供給方向をガイドを設けるなどで規制していたが、本発明の実施方法は磁極方向をランダムにするために、定尺カット品をフリーハンドで略30°に傾けて供給して着磁を施す。
(2)非着磁面と着磁面との吸着力測定用の試料の作成
・30°に傾けて着磁を施したものと、60°に傾けて着磁を施したものを作成する。
・この30°に傾けて着磁を施した非着磁面と、60°に傾けて着磁を施した着磁面を重ねると磁極の交差角が30°となる。
(3)着磁面同士の吸着力測定用の試料の作成
・30°に傾けて着磁を施したものと、60°に傾けて着磁を施したものを作成する。
・この30°に傾けて着磁したものと、60°に傾けて着磁を施したものを着磁面同士重ねると磁極の交差角が90°となる。
【実施例16】
【0114】
・着磁以外は、実施例1と同様にする。
(着磁)
・実施例1における未着磁の磁性フィルムを用いて、基準極間を2.0mmとする各極間がランダムである永久磁石型着磁ロールを用いて着磁を施す。
即ち、従来公知のる永久磁石型着磁ロールは、組み込む永久磁石の厚みを2.0mm均一とするのに対して、本発明を実施する着磁ロールは、組み込む永久磁石の厚みを、1単位の寸法が10mmで、その中に1.6mm、1.8mm、2.0mm、2.2mm、2.4mmの極間が各1個存在し、その順番が連続する各単位内でランダムであるように組み込んだ着磁ロールを用いて着磁を施す。
【実施例17】
【0115】
・着磁以外は、実施例1と同様にする。
(着磁)
(1)実施例
・実施例1における未着磁の磁性フィルムの定尺カット品を用いて、実施例16で用いた極間がランダムである永久磁石型着磁ロールで、実施例15と同様に磁極方向を略30°傾けて着磁を施す。
(2)非着磁面と着磁面との吸着力測定用の試料の作成
・30°に傾けて着磁を施したものと、60°に傾けて着磁を施したものを作成する。
・この30°に傾けて着磁を施した非着磁面と、60°に傾けて着磁を施した着磁面を重ねると磁極の交差角が30°となる。
(3)着磁面同士の吸着力測定用の試料の作成
・30°に傾けて着磁を施したものと、60°に傾けて着磁を施したものを作成する。
・この30°に傾けて着磁したものと、60°に傾けて着磁を施したものを着磁面同士重ねると磁極の交差角が90°となる。
【0116】
次に、〔2〕磁石の被着体タイプの磁性フィルムについて、実施例18〜24にて説明する。
【実施例18】
【0117】
・実施例1の配合(配合No1)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No7)とする。
・磁性材料粉の充填量 87.9重量%(56.0容積%)
・ 配合の他は実施例1と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例19】
【0118】
・実施例8の配合(配合No2)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)に置換した配合(配合No8)とする。
・磁性材料粉の充填量 83.7重量%(56.0容積%)
・配合の他は実施例1と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例20】
【0119】
・実施例9の配合(配合No3)におけるにおける硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(OP−56)を、軟質磁性材料であるセンダスト粉末(SFR,日本アトマイズ工業(株)製)に置換した(配合No9)とする。
・磁性材料粉の充填量 83.6重量%(51.0容積%)
・配合の他は実施例9と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例21】
【0120】
・実施例20の可撓性磁性フィルムの厚みを60μmとする他は、実施例20と同様にする。
【実施例22】
【0121】
・実施例11の配合(配合No4)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料であるMn−Znフエライト(BSF547、戸田工業(株)製)に置換した配合(配合No10)とする。
・磁性材料粉の充填量 85.6重量%(56.0容積%)
・配合の他は実施例9と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例23】
【0122】
・実施例12の配合(配合No5)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエライト(HM403)を、軟質磁性材料である鉄粉(RDL−300A、パウダーテック(株)製)に置換した配合(配合No11)とする。
・磁性材料粉の充填量 85.6重量%(56.0容積%)
・配合の他は実施例12と同様にする。但し着磁は不要である。
【実施例24】
【0123】
(1)実施例
・実施例14の配合(配合No6)における硬質磁性材料であるストロンチュウムフエ
ライト(HM403)を、軟質磁性材料である鉄粉(RDL−300A、パウダーテック(株)製)と四三酸化鉄(BL−10、チタン工業(株)製)の併用とし、その容積比を1:2にしたものに置換した配合(配合No12)とする。
・磁性材料粉の充填量 86.9重量%(55.0容積%)
・配合の他は実施例14と同様にする。但し着磁は不要である。
【0124】
(2)表示可能層の形成
・、実施例6と同様にする。
(3)着磁
・着磁は不要である。
【0125】
次に、性能評価試験方法等について説明する。
【0126】
1)可撓性磁性フィルムの成形加工性
・フィルムの成形時の機械への負荷、成形フィルムの表面性、厚み分布、耳つれ、中弛みなどを観察する。
◎:特に良好、○:良好、△:やや劣る、×:悪い、に評価する
【0127】
2)可撓性磁性フィルムの可撓性
・21〜25°Cの室温で3時間以上放置したものを、フィルムの縦方向と横方向から夫々20mm×100mmの短冊形の試験試料を採集して、直径15mmの丸棒に沿わせて曲げた時の状態を観察する。
○:亀裂を生じない、△:表面に微細なクラックを生じる、×:折れる、に評価する。
【0128】
3)磁性フィルムのカール性
下記の(試験方法1)〜(試験方法3)を行い、図13に示す測定方法を表わす説明図における試験試料t1の浮き上がり距離h1、或いは、図14に示す別の変形の場合の測定方法を表わす説明図に示される試験試料t2の浮き上がり距離h2の測定を行う。
なお、図13及び図14におけるUは、非磁性体製の平板である。
そして、次の記号を用いて総合評価する。
・ :優れる 、○:良い 、やや悪い:△ 、悪い:×
【0129】
(試験方法1) 60mm×60mmの試験試料を、水平に置かれた平滑で平坦な非磁性体製の平板上に乗せて、38〜42°Cの熱風循環式恒温装置内×120分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
【0130】
(試験方法2) 試験方法1の試験後の試験試料を用いて、23〜27°C、RH90〜96%の恒温恒湿装置内×180分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
【0131】
(試験方法3) 試験方法2の試験後の試験試料を用いて、38〜42°Cの熱風循環式恒温装置内×120分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
【0132】
4)磁性フィルムの吸着力
4)−1.標準吸着力(鉄板との吸着力)
・1辺が約50mmの正方形の試料片を、平滑なプラスチック板の表面に、両面テープを用いて試料片の非着磁面を貼着し、測定面に背面中央に引掛けを設けた1辺が40mmの正方形の平滑な鉄板(2mm厚)を磁気吸着させて、垂直方向に引き離すに要する力を、鉄板背面の引掛けにバネ秤を引っ掛けて測定してg/cmを算出する。
【0133】
4)−2.着磁面同士の吸着力
・1辺が40mmの正方形の試料片を、1辺が試料の縦方向に合わせて2枚採取し、縦方向を合わせて着磁面同士を重ね、片方の背面を平滑なプラスチック板に両面テープにて貼合せ、他の非重ね面を背面中央に引掛けを設けたプラスチック板(2mm厚)に両面テープを用いて貼合せ、垂直方向に引き離すに要する力を、プラスチック板背面の引掛けにバネ秤を引っ掛けて測定してg/cmを算出する。
【0134】
4)−3.非着磁面と着磁面の吸着力
・上記、4)−2において着磁面同士を重ねることを、非着磁面と着磁面を重ねることに変える以外は4)−2と同様にする。
【0135】
4)−4.磁石面との吸着力
・0.4mm厚で2.5mmピッチの多極着磁を施したシート状磁石の着磁面に、0.12mm厚のプラスチィックフィルムをラミネートしたもので、鉄板との磁気吸着力が15g/cmのものを、1辺を約50mmの正方形として平滑なプラスチック板に両面テープにて貼合せ標準被着体とする。此れに対して1辺が40mmの正方形の試料片を、背面中央に引掛けを設けた平滑なプラスチック板に両面テープにて貼合せ、垂直方向に引き離すに要する力を、プラスチック板背面の引掛けにバネ秤を引っ掛けて測定してg/cmを算出する。

【表1】

【0136】
次に試験結果について説明する。
各実施例及び比較例について各試験を行いその結果を表に纏めた。
表1は、可撓性磁性フィルムを一定にして、表示可能層の種類・材質を変えた場合、及び、表示可能層の非着磁面側の厚みと、着磁面側の厚みの比を変えた場合のカール性を試験した結果である。
非着磁面側の厚みと着磁面側の厚みを同じくするものは、主として加工時の残留歪み、温度、湿度変化に依る伸縮力が同じであることから、塗膜、合成紙、プラスチック(PVC)間の差が少なくカール性が優れる。但し比較例2のように紙は湿度変化による伸縮が大きいので、非着磁面側の厚みと着磁面側の厚みを同じであっても、非着磁面側(表面側)が湿度変化を受け易いために、他の面より伸縮の変化が早く、大きなカールを生じる。
又、実施例5のように塗膜は形成時の残存歪が少ないので、両面の僅かの厚み差はカール性への影響は少なく問題ないことが分かる。
又、比較例1のように両者に厚み差があると、カールを生じ、比較例3のように紙おいては、両者に厚み差があると更にカールが大きくなることが分かる。
【0137】
又、実施例2、実施例3の如く塗膜の一部としてインクジェット受理層を設けた程度では、カール性への影響は少なく問題ないことが分かる。又、実施例4のようにインクジェット受理層の厚みを差引かないでもカール試験の許容範囲の3mm以下に成ることがわかる。そうして、実施例1〜実施例7はカール性が少なく優れた結果である。

【表2】

【0138】
表2は、先行特許文献1(磁性葉書)と類似の仕様のものと、先行特許文献2(磁性葉書)と類似の仕様のものと、先行特許文献2と類似の仕様のものはカール性が大きく実用上問題を生じる可能性がある。

【表3】

【0139】
表3は、可撓性磁性フィルムの配合のバインダーを変えた場合と、厚みを変えた場合の、加工性、カール性、吸着力を試験した結果である。
バインダーの種類と加工性に於いては、PP、PET、PET‐G、6‐ナイロン、CPE,いずれも良好であるが、カール性においては、表示可能層の非着磁面側の厚みと、着磁面側の厚みを同じであるので、主として加工時の残留歪み、温度湿度変化に依る伸縮力が両者同じに成ることから、カール性が優れる結果を呈する。
そうして、実施例1、実施例8〜実施例13、比較例4はカール性が少なく優れた結果を呈する。
【0140】
磁気吸着力に於いては、実施例8、実施例9は、磁性材料が異方性ストロンチュウムフエライトであるので他の等方性ストロンチュウムフエライトを使用したものより磁力が優れるので可撓性磁性フィルムの厚みが薄くとも同じような吸着力が得られている。又、比較例4は可撓性磁性フィルムの厚みが400μmで他のものよりも厚みが厚いので吸着力が強く、用途的に過多となり不経済である。

【表4】

【0141】
表4は、本発明の着磁形式に於ける、非着磁面と着磁面及び、着磁面同士の吸着力低減効果を示す試験結果である。
被着体と着磁面との磁気吸着力は、従来のものと同様で非着磁面と着磁面及び着磁面同士の磁気吸着力が殆んど無いことが好ましいが、試験結果で分かる通り顕著な効果が認められる。

【表5】

【0142】
表5は、磁石の被着体タイプの磁性フィルムについての性能を試験したものである。配合的にはボンド磁石タイプの磁性フィルムの配合中の磁性材料粉(硬質磁性材料粉)を磁石の被着体となる(軟質磁性材料粉)と置換したものであるので、加工性、カール性については表1、表3のボンド磁石タイプと同様な結果を呈する。
【0143】
磁石との磁気吸着力については、従来多く使用されている磁石シートの着磁面側を表面側に向けてたボード又は、壁に対する磁気吸着力、即ち、前記(3)試験方法など、4)磁性フィルムの吸着力、4)−3.磁石面との吸着力は、通常必要とする値を充分満たしている。
本発明の磁性フィルムは、カール性、及び、被磁気吸着力が優れたものである事が分かる。
【0144】
以上の試験結果の他に、実施例1〜14、18〜24、及び、比較例1〜3、5、6の各磁性フィルムをポストカードサイズに裁断して、実施例1〜14、比較例1〜3については、スチールロツカーに磁気吸着させ、又、実施例18〜24は、前記(3)試験方法など、4)磁性フィルムの吸着力、4)−3.磁石面との吸着力に記載と同様な仕様のボードに、磁気吸着させて平成21年5月20日〜平成21年11月20日まで東京都江東区亀戸にあるオフィスビルの室内に放置して観察した。
【0145】
その結果は、カール試験に基づいた評価と同様であり、各実施例の磁性フィルムは実用条件においても問題なく、各比較例の磁性フィルムは湿度の高い日や、湿度の低い日にカール性が大きくて実使用上問題になる可能性が大きく好ましくない。
【産業上の利用可能性】
【0146】
ステッカー、掲示物、絵画印刷物、トレーディングカード、ポストカード(絵葉書)、案内書などに広く利用してスチールロッカー、スチールデスク、冷蔵庫、又は、マグネット掲示板に容易に貼着又は剥離することができる。絵葉書、案内書に利用した場合には、受信者が読み終わった後に貼着し、用済み後容易に剥離することが出来るなど、その利用価値は大きい。
【符号の説明】
【0147】
11 可撓性磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)
12 非着磁面側の表示可能層
13 着磁面側の表示可能層
11S 可撓性磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)
12S 非磁気吸着面側の表示可能層
13S 磁気吸着面側の表示可能層
91 多極着磁の磁極間がダンラムな磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)
101 多極着磁の磁極方向がダンラムな磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)
201、301、401、501 磁性カード(ボンド磁石タイプ)
1001 従来の磁石シート(多極着磁の極間が均一であるボンド磁石タイプ)
N、N1 磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の着磁面のN極
S、S1 磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の着磁面のS極
n 磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の非着磁面のn極
s 磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)の非着磁面のs極
d1、d2、d3、d4、d5、d6、d7、d8、d9 磁石極間
E、Ea、F、Fa 傾斜角度
G、Ga 交差角度
V、Va ブロック(N極同極反撥)
W、Wa ブロック(S極同極反撥)
Y、Ya ブロック(異極吸引)
Z、Za ブロック(異極吸引)
P1 本発明の磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)
PS1 本発明の磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)
B1 磁性フィルム(ボンド磁石タイプ)に対する被着体
B2 磁性フィルム(磁石の被着体タイプ)に対する被着体(ボンド磁石シート)
U 非磁性体製の平板
t1、t2 試験試料
h1、h2 浮き上がり距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質磁性材料粉末と有機高分子であるバインダーより成る、片面に多極着磁を施したボンド磁石である可撓性磁性フィルムの両面に、不透明の書き込み、印字、印刷可能な表示可能層を設けた磁性フィルムであって、可撓性磁性フィルムの厚みが50μm〜400μmであり、前記表示可能層の片面と他の片面の伸縮力の差などで生じるカールが下記(試験方法1)乃至(試験方法3)に於いて、各々3.0mm以下であり、且つ磁気吸着面側の厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする磁性フィルム。

(試験方法1)60mm×60mmの試験試料を、水平に置かれた平滑で平坦な非磁性体製の平板上に乗せて、38〜42°Cの熱風循環式恒温装置内×120分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
(試験方法2)試験方法1の試験後の試験試料を用いて、23°〜27°C、RH90〜96%の恒温恒湿装置内×180分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
(試験方法3)試験方法2の試験後の試験試料を用いて、38〜42°Cの熱風循環式恒温装置内×120分処理後のカールによる非磁性体製の平板からの浮き上がり距離が最大の箇所の距離を測定する。
【請求項2】
前記表示可能層の組成と形成条件と厚みが両面とも同じで、厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の磁性フィルム。
【請求項3】
前記表示可能層が、塗布によって形成された層であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性フィルム。
【請求項4】
硬質磁性材料粉末がフエライト系磁石材料粉末、バインダーがポリプロピレンであり、可撓性磁性フィルムの厚み80μm〜350μm、両面の表示可能層の厚み15μm〜60μmであり、多極着磁の極間が0.8〜2.5mm、垂直吸着力が0.5g/cm〜20g/cmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項5】
多極着磁の磁極方向が、縦方向に対して10°〜80°又は、マイナス10°〜マイナス80°の範囲内で任意の傾斜を設けて着磁したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項6】
多極着磁の各極間の距離が、ボンド磁石の厚みに対して適する極間寸法を基準極間とし、該基準極間×(4〜6)の寸法を1単位として、1単位毎に基準極間×0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の寸法でなる極間の範囲内で4〜6の磁極が存在し、その順番が連続する各単位内でランダムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項7】
多極着磁の各極間の距離が、ボンド磁石の厚みに対して適する極間寸法を基準極間とし、該基準極間×(4〜6)の寸法を1単位として、1単位毎に基準極間×0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の寸法でなる極間の範囲内で4〜6の磁極が存在し、その順番が連続する各単位内でランダムで、且つ磁極方向が縦方向に対して10°〜80°又は、マイナス10°〜マイナス80°の範囲内で任意の傾斜を設けて着磁したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項8】
軟質磁性材料粉末と有機高分子であるバインダーより成る磁石の被着体となる可撓性磁性ボンド磁性フィルムの両面に、不透明の書き込み、印字、印刷可能な表示可能層を設けた磁性フィルムであって、可撓性磁性フィルムの厚みが50μm〜400μmであり、前記表示可能層で成る片面と他の片面の伸縮力の差などで生じるカールが、前記(試験方法1)乃至(試験方法3)に於いて、各々3.0mm以下であり、且つ磁気吸着面側の厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする磁性フィルム。
【請求項9】
前記表示可能層の組成と形成条件と厚みが両面とも同じで、厚みが15μm〜100μmであることを特徴とする請求項8に記載の磁性フィルム。
【請求項10】
前記表示可能層が、塗布によって形成された層であることを特徴とする請求項8または9に記載の磁性フィルム。
【請求項11】
軟質磁性材料粉末がセンダスト粉末、四三酸化鉄粉末、Mn‐Znフエライト粉末、鉄粉より選ばれた1種又はこれらの混合物で、バインダーがポリプロピレンであり、ボンド磁性フィルムの厚み50μm〜350μmであり、両面の表示可能層の厚み15μm〜60μmであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項12】
前記、請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁性フィルムを用いたことを特徴とする磁性カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−198813(P2011−198813A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61035(P2010−61035)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000110893)ニチレイマグネット株式会社 (24)
【Fターム(参考)】