説明

磁性体ペーストおよびそれを用いた電子部品

【課題】高透磁率を有し、かつ抗折強度の高い基材を得ることができる磁性体ペーストを提供するとともに、このような磁性体ペーストを用いることにより、高性能で高い強度を有する電子部品を提供する。
【解決手段】磁性体ペーストは、平均粒径が0.5〜3μmの小径の磁性体焼結粉末、平均粒径が5〜10μmの大径の磁性体焼結粉末、ガラス粉末および有機成分を含む。ここで、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の質量比を80/20〜90/10の範囲とする。この磁性体ペーストを硬化させて基材12,16,22,26を作製し、基材上に電極パターン14,18,24,28を形成して、基材の積層体10を焼成することにより、高透磁率を利用したインダクタンスを有し、強度の高い電子部品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁性体ペーストおよびそれを用いた電子部品に関し、特にたとえば、硬化させることによって磁性体基材を得ることができる磁性体ペーストと、それを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁性体ペーストとして、例えば、無機粉末と感光性有機成分とからなるペーストであって、無機粉末が0.1〜5μmの中心粒子径を有する軟磁性体粉末とガラス粉末とを含み、軟磁性体粉末とガラス粉末との質量比が20/80〜70/30の範囲にある感光性軟磁性体ペーストが知られている。この感光性軟磁性体ペーストは、例えば、ディスプレイパネルに視認性と電磁波シールド性を付与するために用いられる。
【0003】
この場合、ディスプレイ用のガラス基板の表面に感光性金属ペーストと感光性軟磁性体ペーストとを塗布することにより、積層塗布膜が形成される。この積層塗布膜にフォトマスクを介して活性光線を照射して露光し、現像することによって、メッシュ状の金属層と黒色層の積層体が形成される。抵抗値の小さい金属層により電磁波シールド性が付与され、感光性軟磁性体ペーストから形成される黒色層により視認性と電磁波シールド性が付与される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/009051号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の感光性軟磁性体ペーストでは、磁性体粉末として軟磁性体の仮焼結粉末が用いられており、磁性体の焼結粉末に比べて高透磁率が得られにくい。また、この感光性軟磁性体ペーストでは、粒子径の揃った磁性体粉末が用いられており、磁性体粉末間にスペースができるため、得られた黒色層中において、磁性体粉末の充填率が高くなりにくい。さらに、軟磁性体粉末とガラス粉末の質量比が20/80〜70/30であり、無機成分中に占める磁性体粉末の量が少ない。これらのことから、従来の感光性軟磁性体ペーストは、高透磁率を有する基材が得られにくい構成となっている。
【0006】
このように、従来の感光性軟磁性体ペーストを硬化させて得られる基材では、高透磁率を得ることが困難であり、コモンモードチョークコイルや積層型LC部品などの磁性体基材として使用することが困難である。また、このような感光性軟磁性体ペーストを用いて基材を作製すると、軟磁性体の仮焼結粉末を用いているため、高い抗折強度を得ることが困難である。そのため、この感光性軟磁性体ペーストを用いて電子部品を作製すると、十分な強度を有する電子部品を得ることが困難である。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、高透磁率を有し、かつ抗折強度の高い基材を得ることができる磁性体ペーストを提供することである。
また、この発明の目的は、このような磁性体ペーストを用いることにより、高性能で高い強度を有する電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、平均粒径が0.5〜3μmの小径の磁性体焼結粉末、平均粒径が5〜10μmの大径の磁性体焼結粉末、ガラス粉末および有機成分を含み、小径の磁性体焼結粉末と大径の磁性体焼結粉末とを混合した磁性体焼結粉末とガラス粉末との質量比について、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の比率が80/20〜90/10の範囲にある、磁性体ペーストである。
磁性体焼結粉末を用いることにより、磁性体仮焼結粉末を用いた場合に比べて、磁性体粉末自体の透磁率を高くすることができるとともに、磁性体粉末自体の強度を大きくすることができる。たとえば、1000℃以上で焼結した軟磁性体粉末を用いることにより、磁性体ペーストを磁性体粉末の焼結温度より低い800〜900℃で焼成しても、高透磁率の基材を得ることができる。
このような磁性体焼結粉末がある程度の大きさを有しているとき、磁性体ペーストを硬化して得られる基材の透磁率を高くすることができる。ここで、大径の磁性体焼結粉末により高い透磁率を得ることができるが、大径の磁性体焼結粉末だけであると、磁性体焼結粉末の間にスペースが形成され、性体焼結粉末の密度が小さくなって、高い透磁率を得ることができない。そこで、小径の磁性体焼結粉末を加えることによって、高い透磁率を得るための大径の磁性体焼結粉末の間のスペースが小径の磁性体焼結粉末で充填され、高い透磁率を有する基材を得ることができる。さらに、大径の磁性体焼結粉末の間のスペースに小径の磁性体焼結粉末が充填され、ガラス成分と磁性体粉末との接触面積を大きくすることができる。それにより、磁性体ペーストを硬化させて得られる基材の強度を高くすることができる。
このように、大径の磁性体焼結粉末の間のスペースに小径の磁性体焼結粉末を充填するために、小径の磁性体焼結粉末の平均粒径を0.5〜3μmとし、大径の磁性体焼結粉末の平均粒径を5〜10μmにすることが好ましい。このような高い透磁率と高い強度を得るために、磁性体焼結粉末の割合を大きくする必要があり、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の質量比が80/20〜90/10の範囲にあることが好ましい。
【0009】
このような磁性体ペーストにおいて、大径の磁性体焼結粉末と小径の磁性体焼結粉末との質量比について、大径磁性体粉末/小径磁性体粉末の比率が20/80〜55/45の範囲にあることが好ましい。
大径磁性体粉末/小径磁性体粉末の質量比を20/80〜55/45の範囲とすることにより、大径の磁性体焼結粉末の間に十分に小径の磁性体焼結粉末が充填された高密度の基材を作製することができる。磁性体焼結粉末の密度を高くするとともに、ガラス成分と磁性体粉末との接触面積を大きくすることにより、高い透磁率を得ることができるとともに、基材の抗折強度を大きくすることができる。
【0010】
また、この発明は、上述の磁性体ペーストを硬化して基材を形成し、基材上に電極パターンを形成し、電極パターンを形成した基材を焼成することにより形成される、電子部品である。
この発明の磁性体ペーストを用いることにより、透磁率が高く、抗折強度の高い基材を得ることができる。したがって、この基材に電極パターンを形成し、焼成することによって、高透磁率を利用した電子部品を得ることができる。
【0011】
このような電子部品において、電極パターンを形成した複数の基材を積層して積層体を形成し、積層体を焼成することにより形成することができる。
電極パターンを形成した複数の基材を積層し、得られた積層体を焼成することにより、積層型の電子部品を得ることができる。したがって、インダクタンスを利用した高性能の積層型コモンモードチョークコイルや積層型LC部品などを作製することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、高透磁率で抗折強度の高い基材を作製することができる磁性体ペーストを得ることができる。
また、この発明の磁性体ペーストを用いて形成した基材を用いることにより、高透磁率を利用したインダクタンスを有し、破損しにくい電子部品を得ることができる。
【0013】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の磁性体ペーストを用いた積層型コモンモードチョークコイルの製造工程を示す斜視図である。
【図2】この発明の電子部品としての積層型コモンモードチョークコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の磁性体ペーストは、磁性体焼結粉末と、ガラス粉末と、有機成分と、溶剤とを含む。磁性体焼結粉末としては、たとえば、Fe23−NiO−CuO−ZnO系フェライトなどの軟磁性体の焼結粉末が用いられる。このような磁性体焼結粉末は、小径の磁性体焼結粉末と大径の磁性体焼結粉末との混合物で構成される。小径の磁性体焼結粉末としては、0.5〜3μmの平均粒径を有するものが用いられ、大径の磁性体焼結粉末としては、5〜10μmの平均粒径を有するものが用いられる。小径の磁性体焼結粉末と大径の磁性体焼結粉末との混合比率としては、大径の磁性体焼結粉末/小径の磁性体焼結粉末の質量比が20/80〜55/45の比率となるように調整される。
【0016】
また、ガラス粉末としては、たとえば、SiO2−B23−K2O系ガラスが用いられる。磁性体焼結粉末とガラス粉末との混合比率としては、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の質量比が80/20〜90/10の比率となるように調整される。
【0017】
さらに、有機成分としては、たとえば、アクリルポリマーと光反応性モノマーと光重合開始剤などが用いられる。ここで、たとえば、光反応性モノマーとして、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、光重合開始剤として、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの混合物が用いられる。
【0018】
なお、ここでは、光硬化性の有機成分を例示したが、必ずしも光硬化性の材料を用いる必要はない。この発明の磁性体ペーストは、硬化して基材を形成したのち、最終的に焼成されて電子部品の磁性体素材を得ることができるが、光硬化以外の方法で磁性体ペーストを硬化させてもよい。この場合、磁性体ペーストの硬化方法に応じて、有機成分を選択することができる。
【0019】
磁性体ペーストは、これらの材料を含むものであり、たとえば、積層型電子部品を作製するために用いられる。たとえば、積層型コモンモードチョークコイルを作製する場合、図1に示すように、積層体10が形成される。積層体10を形成するために、平面状のベース上に磁性体ペーストが塗布され、光硬化させることにより、積層体10に用いられる板状の基材が形成される。
【0020】
積層体10は、第1の基材12を含み、第1の基材12上に電極ペーストなどを用いて第1の引出し電極パターン14が形成される。第1の引出し電極パターン14は、第1の基材12の一端から中央部に延びるように形成される。第1の基材14の一端において、第1の引出し電極パターン14は、端縁の中央部から一方側にずれた位置に引き出される。
【0021】
第1の基材12の下面には、第2の基材16が配置される。第2の基材16上には、第1の巻線電極パターン18が形成される。第1の巻線電極パターン18は、第2の基材16の中央部から外側に向かって渦巻き状に形成され、第1の引出し電極パターン14が引き出された端部に対向する端部に引き出される。第1の引出し電極パターン14と第1の巻線電極パターン18とは、互いに対向する位置に引き出される。第1の引出し電極パターン14と第1の巻線電極パターン18とは、第1の基材16の中央部に形成されたビアホール20において接続される。
【0022】
第2の基材16の下面には、第3の基材22が配置される。第3の基材22上には、第2の巻線電極パターン24が形成される。第2の巻線電極パターン24は、第3の基材22の中央部から外側に向かって渦巻き状に形成され、第1の巻線電極パターン18が引き出された端部に引き出される。ここで、第1の巻線電極パターン18の引出し位置から間隔を隔てた位置に、第2の巻線電極パターン24が引き出される。第1の巻線電極パターン18と第2の巻線電極パターン24とは、同じ向きに巻回するように形成される。
【0023】
第3の基材22の下面には、第4の基材26が配置される。第4の基材26上には、第2の引出し電極パターン28が形成される。第2の引出し電極パターン28は、第1の引出し電極パターン14の引き出された側の端部から第4の基材26の中央部に延びるように形成される。第2の引出し電極パターン28は、第1の引出し電極パターン14と同じ側の端部において、第1の引出し電極パターン14と間隔を隔てた位置に引き出される。第2の巻線電極パターン24と第2の引出し電極パターン28とは、第3の基材22の中央部に形成されたビアホール30において接続される。
【0024】
第1の基材12の上面および第4の基材26の下面には、電極パターンの形成されていない基材32が配置される。これらの基材12,16,22,26,32が積層されて、積層体10が形成される。積層体10の端部において、第1の引出し電極パターン14、第1の巻線電極パターン18、第2の巻線電極パターン24、第2の引出し電極パターン28に接続されるようにして、4つの外部電極パターンが形成される。そして、外部電極パターンが形成された積層体10を焼成することにより、図2に示すように、基体34の対向する端部に外部電極36a,36b,36c,36dを有する積層型コモンモードチョークコイル40が形成される。
【0025】
なお、この磁性体ペーストを用いることにより、積層型コモンモードチョークコイル以外にも、積層型LC部品などの電子部品を作製することができる。この場合、コンデンサを形成するためのコンデンサ用電極の間には、誘電体材料で形成された基材が用いられ、インダクタンス形成部における基材として磁性体ペーストで形成された基材が用いられる。
【0026】
この磁性体ペーストに用いられる磁性体粉末として、焼結体が用いられているため、仮焼結体の磁性体粉末を用いた場合に比べて、高い透磁率と高い強度を有する磁性体粉末を得ることができる。たとえば、1000℃以上で焼結した磁性体粉末を用いることにより、基材を磁性体粉末の焼結温度より低い800〜900℃で焼成しても、高い透磁率を得ることができる。また、高い透磁率を得るためには、ある程度以上の平均粒径を有する磁性体粉末が必要であるが、大径の磁性体焼結粉末を用いることにより、磁性体ペーストを用いて形成された基材の透磁率を高くすることができる。さらに、小径の磁性体焼結粉末と大径の磁性体焼結粉末とを用いることにより、大径の磁性体粉末の間のスペースに小径の磁性体焼結粉末を充填することができる。これにより、ガラス成分と磁性体粉末との接触面積を大きくすることができ、より高い透磁率を得ることができるとともに、得られた基材の抗折強度を高めることができる。
【0027】
ここで、小径の磁性体焼結粉末の平均粒径を0.5〜3μmとし、大径の磁性体焼結粉末の平均粒径を5〜10μmとすることにより、大径の磁性体焼結粉末の間のスペースに小径の磁性体焼結粉末が入り込みやすくなり、磁性体ペーストを硬化させた基材における磁性体焼結粉末の密度を高めることができる。特に、大径磁性体粉末/小径磁性体粉末の質量比を20/80〜55/45の範囲とすることにより、大径の磁性体焼結粉末の間に十分に小径の磁性体焼結粉末が充填され、磁性体ペーストを硬化させることにより、高密度に磁性体焼結粉末が充填された基材を得ることができる。
【0028】
また、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の質量比を80/20〜90/10の範囲とすることにより、磁性体焼結粉末の割合が多くなり、磁性体ペーストを硬化させることにより、磁性体焼結粉末の密度が高い基材を得ることができる。そのため、基材の透磁率を高くすることができる。
【0029】
このように、この発明の磁性体ペーストを用いることにより、高透磁率で、抗折強度の高い基材を得ることができる。そのため、このような基材を用いて電子部品を形成することにより、良好な特性を有するインダクタンス成分を含む高強度の電子部品を得ることができる。
【実施例1】
【0030】
本発明の磁性体ペーストを用いて形成された基材の透磁率および抗折強度を調べるために、実験を行った。まず、2つの平均粒径を有する磁性体焼結粉末、ガラス粉末、アクリルポリマー、光反応性モノマー、溶剤、光重合開始剤および分散剤を準備した。磁性体焼結粉末として、Fe23−NiO−CuO−ZnO系フェライトを準備した。また、ガラス粉末として、平均粒径1μmのSiO2−B23−K2O系ガラス粉末を準備した。また、光反応性モノマーとして、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートを準備した。また、光重合開始剤として、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの混合物を準備した。また、溶剤として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを準備した。
【0031】
次に、アクリルポリマー26.0質量%、溶剤40.3質量%、光反応性モノマー27.6質量%、2,4−ジエチルチオキサントン2.8質量%、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン0.9質量%、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド1.4質量%、その他の添加剤1.0質量%を混合して、溶剤と有機成分との混合物を作製した。
【0032】
そして、これらの磁性体焼結粉末、ガラス粉末、アクリルポリマーと光反応性モノマーと溶剤と光重合開始剤との混合物および分散剤を調合し、混合した。得られた混合物に対して三本ロールで練肉を行い、感光性磁性体ペーストを作製した。この感光性磁性体ペーストを用いて厚さ1mmの塗膜を形成し、リング形状にくり抜き、870℃で焼成を行って、磁性体のリングを形成した。
【0033】
なお、磁性体焼結粉末として、表1に示すような2種類の平均粒径を有するものを準備し、表1に示すような質量比でこれらの磁性体焼結粉末を混合した。また、磁性体焼結粉末とガラス粉末の質量比を表1のように変えて、感光性磁性体ペーストを作製した。さらに、感光性磁性体ペースト中の無機粉末(磁性体焼結粉末とガラス粉末との混合物)の割合を表1に示す割合となるようにして、感光性磁性体ペーストを作製した。
【0034】
このようにして得られたリングについて、周波数100MHzにおける透磁率および抗折強度を測定し、その結果を表1に示した。ここで、透磁率は、アジレント社製インピーダンスアナライザE4991Aを用いて測定した。また、抗折強度は、JISR1601に基づいて測定した。さらに、それぞれのリングについて、総合評価を示した。ここで、透磁率が15以上で、抗折強度が30MPa以上のものを好ましい範囲として、「○」印を付した。また、透磁率が12〜15で、抗折強度が20〜30MPaのものを許容範囲として、「△」印を付した。そして、透磁率および抗折強度がこれらの範囲に達しないものを好ましくない範囲として、「×」印を付した。なお、表1において、試料番号に*印を付したものは、本発明の範囲外のものであることを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の試料番号4からわかるように、大径磁性体焼結粉末の平均粒径が10μmより大きい場合、リングの抗折強度が19MPaとなってしまう。これは、磁性体焼結粉末の平均粒径が大きすぎることにより、ガラス成分との接触面積が小さくなるためであると考えられる。
【0037】
また、試料番号5からわかるように、小径磁性体焼結粉末が含まれておらず、大径磁性体焼結粉末のみが用いられている場合、リングの抗折強度が16MPaになってしまう。これは、大径磁性体焼結粉末のみが用いられているため、ガラス成分との接触面積が小さくなるためであると考えられる。
【0038】
また、試料番号11からわかるように、ガラス粉末に対して磁性体焼結粉末の量が少ない場合、リングの透磁率が10.2になってしまう。これは、ガラス粉末に対して磁性体焼結粉末の量が少なく、磁性体粉末の密度が小さくなるためであると考えられる。
【0039】
また、試料番号12からわかるように、ガラス粉末に対して磁性体焼結粉末の量が多い場合、リングの抗折強度が11MPaになってしまう。これは、磁性体焼結粉末に対してガラス粉末の量が少なく、磁性体焼結粉末を十分に結合することができないためであると考えられる。
【0040】
また、試料番号13からわかるように、大径磁性体焼結粉末の平均粒径が3μmである場合、リングの透磁率が11.5になってしまう。これは、高い透磁率を得るためには、ある程度の平均粒径を有する磁性体焼結粉末が必要であるためであると考えられる。
【0041】
また、試料番号14からわかるように、小径磁性体焼結粉末の平均粒径が5μmである場合、リングの抗折強度が18MPaになってしまう。これは、小径磁性体焼結粉末と大径磁性体焼結粉末の平均粒径の差が小さく、大径磁性体焼結粉末の間のスペースを小径磁性体焼結粉末で充填するという効果が得られないためであると考えられる。
【0042】
それに対して、各材料を本発明の範囲内の平均粒径および量となるように調整した磁性体ペーストを用いると、高い透磁率と高い抗折強度を得ることができる。
なお、試料番号3に示すように、大径磁性体粉末/小径磁性体粉末の質量比が20/80〜55/45の範囲外にある場合、透磁率および抗折強度は許容範囲内であるが、磁性体焼結粉末が高密度に充填されず、比較的低い透磁率となっている。
【符号の説明】
【0043】
10 積層体
12 第1の基材
14 第1の引出し電極パターン
16 第2の基材
18 第1の巻線電極パターン
20 ビアホール
22 第3の基材
24 第2の巻線電極パターン
26 第4の基材
28 第2の引出し電極パターン
30 ビアホール
32 基材
34 基体
36a,36b,36c,36d 外部電極
40 積層型コモンモードチョークコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.5〜3μmの小径の磁性体焼結粉末、平均粒径が5〜10μmの大径の磁性体焼結粉末、ガラス粉末および有機成分を含み、
前記小径の磁性体焼結粉末と前記大径の磁性体焼結粉末とを混合した磁性体焼結粉末と前記ガラス粉末との質量比について、磁性体焼結粉末/ガラス粉末の比率が80/20〜90/10の範囲にある、磁性体ペースト。
【請求項2】
前記大径の磁性体焼結粉末と前記小径の磁性体焼結粉末との質量比について、大径磁性体粉末/小径磁性体粉末の比率が20/80〜55/45の範囲にある、請求項1に記載の磁性体ペースト。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁性体ペーストを硬化して基材を形成し、前記基材上に電極パターンを形成し、前記電極パターンを形成した前記基材を焼成することにより形成される、電子部品。
【請求項4】
前記電極パターンを形成した複数の前記基材を積層して積層体を形成し、前記積層体を焼成することにより形成される、請求項3に記載の電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−84818(P2012−84818A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232070(P2010−232070)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】