説明

磁性繊維素材

【課題】
磁性体粉末を付与した繊維素材であって、磁性体粉末を肌側に使用した場合でも、肌に対して不快な感触が少なく、且つ、耐洗濯性に優れた、柔軟性のある磁性繊維素材を提供する。
【解決手段】
繊維基材の片面に、磁性体粉末と樹脂バインダーからなる磁性体層が積層された繊維素材であって、該磁性体粉末が等方性を示すフェライト系磁性体粉末およびサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の混合物であることを特徴とする磁性繊維素材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰痛・肩凝りなどを改善するための血行促進を可能とすることを目的とした磁束密度(以下 磁力)を有する磁性体を付与した繊維素材に関するものであり、さらに柔軟性、耐久性を兼ね備えた繊維素材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、腰痛・肩凝りなどの神経痛や筋肉痛の磁力による軽快化効果や血行改善効果はよく知られており、これを利用した製品が上市されている。特許文献1には、伸縮性と復元性があって通気性を有する繊維素材を用いて、表面布地と裏面布地の2層構成とし、その間に永久磁石を組み込んだ腹巻が開示されている。
また、特許文献2には、強磁性体をエポキシ系、ポリエステル系、ポリウレタン系のポリマーで被覆し、それらを粘着性のあるシートに塗布したパッチが開示されている。
しかし、これらの磁石そのものを用いた繊維製品では、磁石による異物感が強く、重いため不快な着用感があり、また、固まり感のある異物を挟んだものであり、強く押さえられた場合、痛みを感ずることがあった。また、シートを利用し、直接人体に貼付するものでは、粘着剤による痒みやかぶれが発生し易く、動きの激しい身体部位に貼付した場合ではシートが剥がれる等の不具合があり、更に、湾曲の大きい身体部位には貼付しにくいといった問題があった。
【0003】
一方、特許文献3や特許文献4には、磁化粉末(フェライト)を合成樹脂または合成ゴムに分散させ、不織布に積層させた後、低電圧を印加して磁化する磁気シートが開示されている。
また、特許文献5には、磁性体粉末(フェライト)を樹脂バインダーに分散させた塗布剤を繊維上に印刷的手法で印刷した後、磁場配向処理や着磁処理をする方法が開示されている。
【0004】
これらの方法では、磁性体粉末を付与した繊維素材で磁性体粉末を肌側に使用した場合、磁性体が金属化合物であることから肌に対して不快な感触が発生したり、肌の弱い人では金属アレルギーが発生する虞がある。逆に磁性体粉末を肌側とは反対の外側に使用した場合、摩擦などの抵抗により、磁性体粉末が脱落するなどの不具合がある。
【0005】
【特許文献1】特開平02−215478号公報
【特許文献2】特開2000−309522号公報
【特許文献3】特開平02−26735号公報
【特許文献4】特開平08−195307号公報
【特許文献5】特開2002−129470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、特定の磁性体が付与されながら繊維基材本来の柔軟性、吸放湿性、吸水性、通気性などの快適性を維持し、耐洗濯性、剥離強度などの耐久性に優れた衣料用にも用いることができる繊維素材およびその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の磁性繊維素材は、
(1)繊維基材の片面に、磁性体粉末と樹脂バインダーからなる磁性体層が積層された繊維素材であって、該磁性体粉末が等方性を示すフェライト系磁性体粉末およびサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の混合物であることを特徴とする磁性繊維素材である。
また、(2)樹脂バインダーのガラス転移温度が−70〜0℃であることを特徴とする(1)に記載の磁性繊維素材である。
また(3)フェライト系磁性体粉末およびサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の重量比率が1:9〜7:3であることを特徴とする(1)〜(2)に記載の磁性繊維素材である。
また、(4)フェライト系磁性体粉末の粒径が0.01〜5μm、サマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の粒径が5〜500μmであることを特徴とする(1)〜(3)に記載の磁性繊維素材である。
また、(5)磁性体層の表面に樹脂フィルムおよび/または繊維布帛が積層されていることを特徴とする(1)に記載の磁性繊維素材である。
また、(6)樹脂フィルムの100%モジュラスが0.1〜50N/mmであることを特徴とする(5)に記載の磁性繊維素材である。
また、(7)等方性を示すフェライト系磁性体粉末とサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の混合物を樹脂バインダーに分散してなる磁性体塗布剤を繊維基材の片面に付与し、次いで熱処理、着磁処理を行った後に、磁性体粉末が付与された側へ樹脂フィルムまたは別の繊維布帛を積層することを特徴とする磁性繊維素材の製造方法である。
また、(8)等方性を示すフェライト系磁性体粉末とサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の混合物を樹脂バインダーに分散してなる磁性体塗布剤を繊維基材の片面に付与し、次いで熱処理した後、磁性体粉末が付与された側へ樹脂フィルムまたは別の繊維布帛を積層し、着磁処理の順で処理することを特徴とする磁性繊維素材の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維基材としての柔軟性、吸放湿性、吸水性、通気性などの快適性を維持しながら、磁性体粉末が分散された樹脂バインダーを保護し、耐久性に優れた磁性体を有する繊維素材を得ることができる。また、磁力線の皮膚深部への浸透を図り、もって磁気の持つ血管を拡張する効果を基礎とする腰痛・肩凝りなどの神経痛や筋肉痛の治療および血行改善など種々の効果を期待出来る繊維素材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の磁性繊維素材は、繊維基材の片面に、磁性体粉末が分散された樹脂バインダーを付与し、さらに柔軟性を有する樹脂フィルムかまたは別の繊維布帛が積層される構成のものである。柔軟性を有する樹脂フィルムや繊維布帛を適時に接着、貼り合せて積層することで、磁性体粉末が分散された樹脂バインダーを保護し、耐久性(耐洗濯性、樹脂バインダーの脱落など)に優れた磁性体が付与された衣料用にも用いられる繊維素材となるものである。さらに、繊維基材が有する柔軟性、吸放湿性、吸水性、通気性などの快適性が維持されたものである。
【0010】
本発明の繊維基材に用いられる繊維としては、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維、レーヨンなどの再生繊維や綿、ウールなどの天然繊維またはこれらを混用したものを挙げることができ、磁性体粉末が分散された樹脂バインダーが付与できれば、特に限定されるものではない。また、それら繊維基材の構成は織物、編物、不織布等を用いることができ特に限定されるものではない。但し、衣料用に使用する場合は、ソフトな風合いが要求されるため、布帛の風合い評価に関する力学特性試験法(KES法)に基づく、曲げ特性(B値)で0.070g・cm/cm未満であることが好ましい。
【0011】
本発明において用いられる磁性体は等方性を示すフェライト系磁性体とサマリウム−鉄−窒素系磁性体の混合物を用いる。ネオジウム−鉄−ホウ素系磁性体は耐酸化性に劣り、洗濯などにより、錆汚れや磁力の低下などを引き起こすため衣料用繊維素材に対して付与するには不適である。耐洗濯性(耐酸化性)の面からはフェライト系磁性体およびサマリウム−鉄−窒素系磁性体が好適であるが、フェライト系磁性体は着磁後の磁力が弱い。磁力の絶対値を上げるためには、フェライト系磁性体を300g/m以上付与することが必要であるが、重くなり、着用感が悪くなる。磁力の絶対値を上げるには、磁性体をサマリウム−鉄−窒素系磁性体を用いることで、バインダー中の磁力(磁束密度)を上げることが可能であるが、使用量が増えるとコストが上昇する虞がある。
上記課題を解決するため、本発明では粒径の大きなサマリウム−鉄−窒素系磁性体と粒径の小さいフェライト系磁性体を混合して使用することにより重量の増加が抑えられるため、着用感が良好で、必要な磁力を有する磁性衣料用繊維素材が得られる。
使用する磁性体の大きさは、フェライト磁性体粉末の平均粒径は0.01〜5μmが好ましく、更に好ましくは0.1〜2μmである。平均粒径が0.01μm未満であると、製造に手間がかかり、コストが高い物になってしまう。5μmより大きいと樹脂バインダーとサマリウム−鉄−窒素系磁性体と混合し繊維素材上に付与した場合に、磁性体のかさ密度が上がらず、十分な磁力が得られにくくなる虞がある。
また、サマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の平均粒径は5〜500μmが好ましく、更に、5〜200μmが好ましい。平均粒径が、5μm未満であると摩擦等で熱を発生し易く、自然発火、及び着火の危険性がある。また、500μmより大きいと、付与時に、目づまり等の不具合が発生したり、繊維素材に付与したときの表面ざらつき感が出て、違和感や不快を感じることになる。
本発明では、磁力性能が重要であると共に、風合い、触感、耐洗濯性も重要であり、これらを実現するためには、樹脂バインダーで付与する磁性体部は低体積でより高磁力であることが好ましく、そのためには磁性体をより高密度とする必要がある。低体積でより高磁力を実現するために、本発明ではフェライト磁性体とサマリウム−鉄−窒素系磁性体を混合する方法に至ったものである。
フェライト磁性体とサマリウム−鉄−窒素系磁性体の混合比率は重量比で1:9〜7:3が好ましい。フェライト磁性体が多すぎると十分な磁力が得られない虞があり、サマリウム−鉄−窒素系磁性体が多すぎると磁力の性能としては向上するが、それ以上にコスト面でのデメリットが大きくなる。
【0012】
樹脂バインダーと磁性体粉末の混合割合は特に限定されるものではなく、着磁後の磁力が0.1〜30mTであれば良い。更に、磁性体の塗布量は300g/m以下であることが好ましい。塗布重量が300g/mより多いと、重くなり、着用感が悪くなる。磁気の作用を皮膚下深部に及ぼすためには、強い磁力が必要となるが、その場合、多量の磁性体粉末を樹脂バインダーとともに繊維基材へ付与することが必要となる。その場合、繊維素材は非常に硬いものとなり衣料用繊維素材として着用感は不快なものとなる。一方、衣料用繊維素材としての快適性を重視すれば、磁性体の付与量を少なくすればよいが、当然磁気の効果は得られにくくなる。
また、磁性体の磁力は強力であるほど効果が得られるが、磁性体がフェライト系磁性体粉末またはサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末またはこれらの混合物の場合、磁性体付与量と磁力は相関関係にあり、現実的な実使用においては30mTより大きい磁力を付与しようとする場合、磁性体を大量に付与しなければならず、この場合、ごつごつとした異物を挟んだ格好となるため、痛みや不快感が出るなどの不具合が発生する虞ある。
【0013】
また、本発明の磁性繊維素材は衣料用にも用いるため、使用する樹脂バインダーは柔軟性を有する必要があり、バインダーの物性としてはガラス転移温度(以下Tg)が−70〜0℃の範囲であることが必要であり、特に−60〜−20℃の範囲であることが特に好ましい。Tgが0℃より高いと風合いが硬くなり、不快である。また−70℃より低いと、洗濯などの物理的外力に対して磁性体を保持できない虞がある。その他のバインダーの物性としては特に限定されるものではなく、上記の磁性体粉末が分散され、繊維基材上に付与後、繊維基材との密着性の観点から選択すれば良い。バインダーの種類については特に限定されるものではないが、風合いがソフトで洗濯耐久性を有するアクリル系またはウレタン系バインダーが好適である。
【0014】
また、磁性体含有の樹脂バインダーを繊維基材上に塗布する方法としては、たとえば、公知のコーティング機械を用いて、全面にコーティングしてもよいが、樹脂バインダー等が多量にあると柔軟性が低下して、衣料用繊維基材が本来持っている柔軟性、吸放湿性、吸水性、通気性等の特性を損なう虞がある。そのため、スクリーン印刷法、ロールプリント法、プレス法、コーティング法等の公知の印刷手法を用いて、ドット状、多数の波線からなる線状など、不連続状態の柄や模様にて付与することが好ましい。
また、磁性体を含有する樹脂バインダーを塗布する面積比率は繊維基材に対して5〜100%が好ましく、この範囲内で風合いなどを考慮して設定すればよい。面積比率が5%未満であると十分な磁力の効果を得ることが難しくなる。
【0015】
次に、繊維基材の磁性体が付与された面を、樹脂フィルムまたは別の繊維布帛により被覆することが好ましい。
使用できる樹脂フィルムとしては、ウレタン系、シリコン系、オレフィン系、ポリエステル系、及びポリスチレン系の合成樹脂が挙げられる。さらに、繊維素材の快適性を損なわないために、多孔質や透湿性を有する樹脂フィルムを使用することがより好ましい。使用する樹脂フィルムの物性としては100%モジュラスが0.1〜50N/mmであることが好ましく、特に好ましくは0.1〜5N/mmである。100%モジュラスが0.1N/mmより小さいと摩擦などの応力を受けた場合に破れたりする虞がある。また、100%モジュラスが50N/mmより大きいとフィルムの厚みを非常に薄くしないと柔軟性が得られ難く、その場合、フィルムの強度が低下するため洗濯等の耐久性が十分得られない虞がある。使用するフィルムの厚みとしては樹脂物性との関係から、必要とする柔軟性が得られる厚みであれば特に限定されるものではない。
また、貼り合わせる繊維布帛としてはポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンなどの合成繊維もしくは、レーヨンなどの再生繊維や綿、ウールなどの天然繊維またはこれらを混用したものを挙げることができる。また、それらの形態としては、織物、編物、不織布等いかなるものであってもよいが、柔軟性の観点から0.1〜2.0mmの厚さが好ましいが特に限定するものではない。
被覆方法は公知のラミネート法、プレス法を使用すればよく、特に限定はされるものではない。例えば1液型、2液型の溶剤系接着剤や水系の接着剤、ホットメルト樹脂や湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂などの接着剤を用いることができる。
このようにフィルムまたは別の繊維布帛を積層させることで、磁性体を含有する樹脂バインダーを保護することにより、耐洗濯性、樹脂バインダーの脱落などの耐久性を向上させることができる。また、樹脂バインダー塗布面を肌側に使用した場合は、磁性体を含む樹脂が肌に触れることによる違和感の低減についても効果が発揮される。
【0016】
さらに、着磁の方法としては、コンデンサー着磁電源の印加電圧を利用して着磁コイルに磁界を形成させ、印加電圧を500〜5000Vに設定して、コンデンサーに電荷を蓄積し、この蓄積された電荷をパルス電流として着磁コイルに放出し大きな磁界を得る方法や、磁性体粉末の有する磁化保磁力(iHc)の3倍以上の磁性永久磁石に1秒以上、更に好ましくは30秒以上接触させる方法が好ましく用いられるが、特に限定はされるものではない。また、本発明は、等方性を有する磁性体を使用するものであり、一般に磁力を向上させるために行われる磁場配向処理を必要としないため、加工も簡略化できる。
用いる着磁方式に関しては、磁気の作用を皮膚下深部にまで及ぼすために、磁力線が生地表面から遠くまで発生する単極着磁によっておこなわれることが特に好ましい。
【0017】
繊維素材に磁力を付与させる加工工程としては、磁性体粉末を樹脂バインダーに均一分散して得られた磁性体塗布剤を繊維素材の片面に印刷的手法により付与し、次いで熱処理による乾燥工程、着磁処理工程、磁性体粉末が付与された側への柔軟性を有する樹脂フィルムかまたは別の繊維布帛を貼り合わせる積層処理工程の順で処理される。または磁性体塗布剤の付与工程、熱処理工程、柔軟性を有する樹脂フィルムかまたは別の繊維布帛を貼り合わせる積層処理工程、着磁処理工程の順でも良い。
【0018】
本発明の磁性繊維素材は、磁性体が付与されながら繊維基材本来の柔軟性、吸放湿性、吸水性、通気性などの快適性を維持し、耐久性(耐洗濯性、樹脂バインダーの脱落など)に優れた衣料用にも用いることのできる繊維素材である。本発明の繊維素材の衣料用用途としては、スーツ等の肩パット、スポーツシャツ、インナー、サポーター、靴の中敷き、靴下等の用途が挙げられるが、用途の制約については特に限定されない。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明する。なお、各実施例は本発明を限定するものではない。
本明細書に述べる品質評価は次の方法に依った。
(1)磁力(磁束密度)
ガウスメーター GM−4002(電子磁気工業(株)製)を用いて繊維素材の磁力を測定した。単位はmT。
(2)触感評価 (官能評価)
繊維素材の磁性体粉末が付与された部分の表面触感を評価した。
○ : スムーズでなめらかな感触
× : ざらついた感触
(3)風合い
布帛の風合い評価に関する力学特性試験法(KES法)に基づく、曲げ特性(B値)で評価した。
標準状態(20±2℃、相対湿度65±2%)の試験室中で純曲げ試験機(KES−FB
2 カトーテック)を用いて、繊維素材試料の曲げ特性(B値)を測定した。
○ : 0.03g・cm/cm未満
△ : 0.03〜0.07g・cm/cm未満
× : 0.07g・cm/cm以上
(4)洗濯耐久性
JIS L 0217 103法 に準じて、繊維素材試料を5回洗濯後の外観変化を確認し、下記の基準により評価した。
○ : 錆が認められない
× : 錆が認められる
(5)コスト
○ : 高い
× : 安い
【0020】
〔実施例1〕
樹脂バインダーとしてガラス転移温度(Tg)が−65℃である水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックスE−4800)50部に対し、架橋剤(日華化学(株)製 NKアシストCI)1部を混合した後、磁性体粉末として等方性サマリウム−鉄−窒素系磁性体(大同特殊鋼(株)製、平均粒径100μ)50部と等方性フェライトGP−500(戸田工業(株)製、平均粒径1.2μ)50部をハイスピード攪拌機で撹拌しつつ少量にわけて添加し分散した。さらに増粘剤(大日精化工業(株)製 ダイモネックス EDC−200)を0.05部添加し、粘度を20000cpsに調製し、磁性体粉末を分散させた樹脂バインダーを得た。これをポリエステル編物基材(目付け150g/m)に、100メッシュのスクリーン(厚み700μ)を用いて、自動スクリーン印刷機によりドットプリントを行った。形成されたドットの直径は5mm、ピッチは3mmである。樹脂バインダー塗布後100℃、60秒の条件で乾燥した。乾燥後の樹脂塗布量は1ドットあたり0.006gであった。次にこの樹脂バインダーを塗布した側にナイロン素材のハーフトリコット繊維布帛(目付け12g/m)を、湿気硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 タイフォースNH−300)を110℃で40g/mで塗布し、それぞれを圧着、ラミネートした。電磁コイル内に作成した磁性体繊維素材を入れ、15Tを発生する条件で電圧を印加して常温にて着磁処理を行い、磁性繊維素材を得た。評価結果を表1に示す。
【0021】
〔実施例2〕
実施例1において、ナイロンハーフトリコット繊維布帛の替わりにウレタン樹脂(三洋化成工業(株)製 サンプレン HMP−17A、100%モジュラス:4.9N/mm)を離型紙上に厚み10μで製膜したものを実施例1と同様な条件にてラミネートした。着磁以下の工程も実施例1と同様な条件により行い、目的とする磁性磁性繊維素材を得た。評価結果を表1に示す。
【0022】
〔比較例1〕
実施例1において、磁性体をネオジウム−鉄−ホウ素系磁性体(大同特殊鋼(株)製 ネオジオMQP−13−9 平均粒径100μ)100部に変更した以外はすべて実施例1と同じ条件にて行い、目的とする磁性磁性繊維素材を得た。評価結果を表1に示す。
【0023】
〔比較例2〕
実施例1において、磁性体を常磁性体であるアルミニウム粉末(昭和アルミパウダー(株)製、5502SW 平均粒径 14μ)100部に変更した以外はすべて実施例1と同じ条件にて行い、目的とする磁性磁性繊維素材を得た。評価結果を表1に示す。
【0024】
〔比較例3〕
実施例1において、磁性体を等方性フェライトGP−500(戸田工業(株)製、平均粒径1.2μ)100部のみに変更した以外はすべて実施例1と同じ条件にて行い、目的とする磁性磁性繊維素材を得た。評価結果を表1に示す。
【0025】
〔比較例4〕
実施例1において、磁性体を等方性サマリウム−鉄−窒素系磁性体(大同特殊鋼(株)製、平均粒径100μ)100部のみに変更した以外はすべて実施例1と同じ条件にて行い、目的とする磁性磁性繊維素材を得た。評価結果を表1に示す。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材の片面に、磁性体粉末と樹脂バインダーからなる磁性体層が積層された繊維素材であって、該磁性体粉末が等方性を示すフェライト系磁性体粉末およびサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の混合物であることを特徴とする磁性繊維素材。
【請求項2】
樹脂バインダーのガラス転移温度が−70〜0℃であることを特徴とする請求項1に記載の磁性繊維素材。
【請求項3】
フェライト系磁性体粉末およびサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の重量比率が1:9〜7:3であることを特徴とする請求項1〜2に記載の磁性繊維素材。
【請求項4】
フェライト系磁性体粉末の粒径が0.01〜5μm、サマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の粒径が5〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3に記載の磁性繊維素材。
【請求項5】
磁性体層の表面に樹脂フィルムおよび/または繊維布帛が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性繊維素材。
【請求項6】
樹脂フィルムの100%モジュラスが0.1〜50N/mmであることを特徴とする請求項5に記載の磁性繊維素材。
【請求項7】
等方性を示すフェライト系磁性体粉末とサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の混合物を樹脂バインダーに分散してなる磁性体塗布剤を繊維基材の片面に付与し、次いで熱処理、着磁処理を行った後に、磁性体粉末が付与された側へ樹脂フィルムまたは別の繊維布帛を積層することを特徴とする磁性繊維素材の製造方法。
【請求項8】
等方性を示すフェライト系磁性体粉末とサマリウム−鉄−窒素系磁性体粉末の混合物を樹脂バインダーに分散してなる磁性体塗布剤を繊維基材の片面に付与し、次いで熱処理した後、磁性体粉末が付与された側へ樹脂フィルムまたは別の繊維布帛を積層し、着磁処理の順で処理することを特徴とする磁性繊維素材の製造方法。

【公開番号】特開2008−88573(P2008−88573A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268078(P2006−268078)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】