磁性重合体粒子及びその製造方法、並びに、水分散体、カートリッジ及び画像形成装置
【課題】水分散性が良好で、紙やフィルムへの定着が可能な磁性重合体粒子及びこれを用いた水分散体、並びに、該水分散体を用いたカートリッジ及び画像形成装置を提供すること、並びに、水性媒体中での懸濁重合によって上記磁性重合体粒子を得る場合でも、粒子同士の凝集を抑制でき、良好な収率で所望の粒子を得ることができる磁性重合体粒子の製造方法を提供することである。
【解決手段】磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と、非架橋重合体とを含んで構成され、前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体全体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。
【解決手段】磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と、非架橋重合体とを含んで構成され、前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体全体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性重合体粒子およびその製造方法、並びに、水分散体、カートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性重合体粒子としては、電子写真における静電荷現像用の磁性トナーが公知である。また、その製造方法としては、親油化処理が施された磁性粉を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを、難水溶性無機粉末を懸濁保護剤に用いて懸濁重合する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは、磁化処理及び親油化処理が施された磁性粉を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを懸濁重合して磁性ポリマー粒子を得る方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
また、定着性や耐オフセット性等の改良を目的として、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂とを反応させ、架橋構造を形成した樹脂を構成成分とするトナーが開示されている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【0004】
一方、水分散体として利用される磁性重合体粒子としては、生理活性物質の固定用粒子が公知である。例えば、炭化水素油中に分散された磁性粉を、ビニル芳香族モノマーを含む有機相に分散させ、この分散体を、ホモジナイザーを用いて水性相へ均質に分散させた後重合することにより、比較的小粒径の磁性ポリマー粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0005】
また、特定の官能基を有する多孔ポリマー粒子の存在下に鉄化合物を析出させ、この鉄化合物を酸化することで、前記多孔ポリマー粒子の内部に磁性粉を導入し、2μm以上の粒径でかつ均一径の磁性ポリマー粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
また、親油処理した磁性粉を、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンのごとき疎水性単量体中に分散させて単量体組成物を調製し、この単量体組成物を水相に乳化分散させて懸濁液を得、得られた懸濁液にメタクリル酸メチルのごとき親水性単量体とアクリル酸などのカルボキシル基を有する親水性単量体とを添加した後、重合し、磁性重合体粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献8参照)。
【0007】
また、乳化重合によって作製された水酸基を有する0.05〜0.5μmの樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集及び融着してトナー化する技術、あるいは、結着樹脂と着色剤等のトナー構成成分を混合分散し水系媒体中に乳化した後、凝集及び融着してトナー化する技術が開示されており、上記着色剤の一つとしてマグネタイトが例示されている。(例えば、特許文献9、10参照)。
【0008】
また、1〜30nmの酸化鉄のごとき磁性粉がスチレンとグリシジルメタクリレートとから構成される架橋ポリマーに内包されている免疫測定用粒子の磁性粒子が開示されている(例えば、特許文献11参照)。この粒子は、過硫酸カリウム(KPS)のごとき水溶性重合開始剤を用いて乳化重合すると同時に、同じ水溶液中で塩化鉄を酸化させて酸化鉄を生成することにより得られる。
【0009】
さらに、生理活性物質を固定するための磁性重合体粒子として、カルボキシル基を有する粒子が知られている。例えば、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と磁性粉との混合物を懸濁重合して得られた粒子を、有機性塩基、水溶性溶剤で処理し、表面電荷を増大させることにより生理活性物質の固定用粒子とする技術が開示されている(例えば、特許文献12、13参照)。
【0010】
これに対し、磁気テープを作製するための磁性塗料として水酸基を有するポリマーをバインダー樹脂として使用する方法は公知である。例えば、特定割合の水酸基とカルボン酸基とを有する塩化ビニル系共重合体を磁性粉のバインダー樹脂とする磁性塗料が開示されている(例えば、特許文献14参照)。
【特許文献1】特開昭57−102666号公報
【特許文献2】特開昭59−221302号公報
【特許文献3】特開平7−225491号公報
【特許文献4】特開平8−44107号公報
【特許文献5】特開2004−310078号公報
【特許文献6】特公平4−3088号公報
【特許文献7】特公平5−10808号公報
【特許文献8】特開平9−208788号公報
【特許文献9】特開2004−295110号公報
【特許文献10】特開2005−91705号公報
【特許文献11】特開2004−331953号公報
【特許文献12】特開平10−87711号公報
【特許文献13】特開平10−270233号公報
【特許文献14】特公平4−34578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、水分散性が良好で、紙やフィルムへの定着が可能な磁性重合体粒子及びこれを用いた水分散体、並びに、該水分散体を用いたカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。また、本発明は、水性媒体中での懸濁重合によって上記磁性重合体粒子を得る場合でも、粒子同士の凝集を抑制でき、良好な収率で所望の粒子を得ることができる磁性重合体粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題は、以下の本発明によって達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と、非架橋重合体とを含んで構成され、
前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体全体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子におけるエチレン性不飽和単量体が、さらにカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、且つ、前記磁性粉を含まない前記重合体全体のカルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の磁性重合体粒子におけるカルボキシル基の一部または全部が塩構造を形成している磁性重合体粒子である。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子における架橋重合体の含有率が、磁性粉を含まない前記重合体全体の0.5〜49.5質量%の範囲である磁性重合体粒子である。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子の粒子内部に前記磁性粉が局在している磁性重合体粒子である。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子を含む水分散体である。
【0018】
請求項7に係る発明は、液体を収容する液体収容手段と、前記液体を保持する液体保持手段と、該液体保持手段に前記液体を供給する液体供給手段と、を有し、
前記液体収容手段に請求項6に記載の水分散体を収容するカートリッジである。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の水分散体を画像形成用記録液として用いた画像形成装置である。
【0020】
請求項9に係る発明は、A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体を含むエチレン性不飽和単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋樹脂とを、(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液に、重合開始剤及び表面が疎水化処理された磁性粉を含有させ混合物を作製する混合物作製工程と、
前記混合物を塩が溶解され且つ分散安定剤を加えた水性媒体中に分散して懸濁重合する懸濁重合工程と、
を有する磁性重合体粒子の製造方法である。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法におけるエチレン性不飽和単量体が、さらにC質量部のカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、
前記混合液が、(A+B+C+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液である磁性重合体粒子の製造方法である。
【0022】
請求項11に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法におけるエチレン性不飽和単量体と非架橋樹脂との混合液に、前記懸濁重合の重合温度以上の沸点を有する有機溶剤を含有させる磁性重合体粒子の製造方法である。
【0023】
請求項12に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における非架橋樹脂の一部または全部に、前記磁性粉をあらかじめ分散させて前記混合液に磁性粉を含有させる磁性重合体粒子の製造方法である。
【0024】
請求項13に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における疎水化処理が、カップリング剤による表面被覆処理である磁性重合体粒子の製造方法である。
【0025】
請求項14に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における塩が、無機塩である磁性重合体粒子の製造方法である。
【0026】
請求項15に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における分散安定剤が、無機粉体である磁性重合体粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、水分散性が良好で、紙やフィルムへの定着性が良好な磁性重合体粒子を得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに良好な水分散性を得ることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに良好な水分散性を得ることができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、水中での重合体粒子の膨潤を引き起こすことなく良好な定着性を確保することができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに良好な定着性を確保することができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、粒子特性にばらつきのない磁性重合体粒子が良好な状態で分散した水分散体を得ることができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、含まれる磁性重合体粒子の分散性が良好で定着性に優れた水分散体の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性を高めることができる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、定着性に優れた高画質の画像形成を維持することができる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、所望の含有率で磁性粉をばらつきを抑制して(均一に)分散し、良好な水分散性及び定着性を有する磁性重合体粒子を簡易にかつ良好な収率で製造することができる。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに磁性重合体粒子の水分散性を高めることができる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、重合を阻害することなく粒子中の磁性粉の分散性を高めることができる。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに磁性重合体粒子の定着性を高めることができる。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに粒子中の磁性粉の分散性を高めることができる。
請求項14に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、磁性重合体粒子の製造において良好な収率を得ることができる。
請求項15に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、重合中における粒子同士の凝集を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
<磁性重合体粒子>
本発明の実施の形態に係る磁性重合体粒子は、主として磁性の印刷インクなどの水系分散体に用いられる粒子状の磁性重合体である。したがって、一定以上の磁力を保持しつつ、水などの水性媒体中にばらつきを抑制して(均一に)分散させることが可能なものである。
なお、上記磁性重合体粒子とは、磁性粉が重合体中に分散されてなる磁性粉分散粒子で構成されるものである。
【0029】
上記水性媒体中への良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基を存在させることが有効である。このため、水性媒体に対して安定である粒子を構成する重合体の架橋成分が水酸基を有していることが望ましい。
【0030】
一方、前記水系分散体を画像形成用の記録液として用いる場合、前記磁性重合体粒子により構成される画像を記録媒体に定着させる必要がある。該定着には熱定着が好適に用いられるが、磁性重合体粒子がほとんど架橋成分であると良好な定着性が得られない場合がある。
【0031】
本発明では、重合体としてエチレン性不飽和単量体の架橋重合体に加えて非架橋重合体を用い、架橋重合体を水酸基を有するエチレン性不飽和単量体の架橋重合体とした場合に、水性媒体における分散性と重合体粒子の安定性および定着性との視点から、最適な水酸基量と架橋重合体及び非架橋重合体の成分比の範囲とを検討した。さらに本発明では、重合体粒子に一定量の磁性粉を含むが、該磁性粉の粒子中での分散性、含有量との関係からも前記水酸基量および成分比が最適となる範囲を見出した。
【0032】
本実施形態における重合体は、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と非架橋重合体とで構成されるが、この場合、架橋重合体をエチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含んで重合したものとし、これに非架橋重合体を含ませることにより、記録媒体に対する良好な定着性が確保できる。
なお、上記定着性とは熱により軟化して記録媒体に接着することを意味し、具体的には、50℃以上の加熱により軟化することをいう。
【0033】
この場合、前記磁性重合体粒子中に磁性粉が含まれるが、該磁性粉が定着の際粒子表面に露出していると、ばらつきが抑制された(均一な)定着が困難になり、また定着後も画像表面の凹凸が問題となる場合がある。したがって、前記定着性を良好とするためには、できる限り磁性粉は粒子内部に局在化していることが望ましい。
ここで、上記「粒子内部に局在化」とは、少なくとも粒子表面から深さ0.1μmの範囲には磁性粉が存在しない(「存在しない」とは含有率が10質量%以下であることをいう)ことを意味する。
【0034】
一方、前記磁性重合体粒子における水酸基量は、磁性粉の含有量によって異なるので、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量として定義されるものであり、本発明においては、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲であることが必要である。
【0035】
水酸基量が0.1mmol/gに満たないと、重合体粒子の水性媒体への分散性が悪くなる。また、5.0mmol/gを超えると、水中での重合体粒子の膨潤性が大きくなり操作性が悪くなる。
水酸基量は、0.2〜4.0mmol/gの範囲であることが望ましく、0.3〜3.0mmol/gの範囲であることがより好適である。
【0036】
また、前記水性媒体中へのさらに良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基に加えてカルボキシル基を存在させることが有効である。このためには、粒子を構成する重合体中の架橋成分が水酸基及びカルボキシル基を有していることが望ましい。具体的には、前記架橋重合体をエチレン性不飽和単量体が、さらにカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体をさらにカルボキシル基をも含まない疎水性単量体とすることが望ましい。
【0037】
この場合の磁性重合体粒子における水酸基量及びカルボキシル基量は、前記に準じて、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量及びカルボキシル基量として定義され、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲、カルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲であることが望ましい。
【0038】
すなわち、まず水酸基量については、前記カルボキシル基を含まない場合に準じた範囲とすることで、重合体粒子の水性媒体への良好な分散性、膨潤性抑制が維持される。また、この場合も水酸基量は、0.2〜4.0mmol/gの範囲であることがより望ましく、0.3〜3.0mmol/gの範囲であることがさらに好適である。
【0039】
一方、カルボキシル基量が前記範囲にあると、水酸基に対して少ない官能基数にもかかわらず良好な水性媒体への分散性、膨潤抑制効果が得られ、水酸基量の変動に対してもこれらの特性を維持できる。
カルボキシル基量は、0.008〜0.3mmol/gの範囲がより望ましく、0.01〜0.1mmol/gの範囲であることがさらに好適である。
【0040】
上記水酸基量は、一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記重合体に無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を一定量加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量を求めることができる。
【0041】
一方、カルボキシル基量も一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記重合体に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を一定量加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量を求めることができる。
【0042】
カルボキシル基が後述する塩構造(−COO−Y+:ここでY+はアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン、もしくはアンモニウムなどの有機カチオンを示す)を形成している場合は、塩酸等の酸で塩をカルボン酸に変換した後、上述の滴定を行いカルボキシル基量を求めることができる。
すなわち、本実施形態におけるカルボキシル基量とは、カルボキシル基が塩構造を形成している場合には、該塩構造に寄与しているカルボキシル基を含めたカルボキシル基量をいう。
【0043】
前記架橋重合体の含有率は、磁性粉を含まない前記重合体全体の0.5〜49.5質量%の範囲であることが望ましい。水酸基等を有する架橋重合体の含有率を上記範囲とすることにより、水中での重合体粒子の膨潤を引き起こすことなく良好な定着性を確保することができる。
上記架橋重合体の含有量は1〜49質量%の範囲であることがより望ましく、5〜25質量%の範囲であることがさらに好適である。
【0044】
上記架橋重合体の含有量は、架橋重合体及び非架橋重合体のテトラヒドロフラン(THF)に対する溶解性の違いを利用して求めることができる。すなわち、前記磁性重合体粒子をTHFを用いて、溶解分(非架橋重合体含有分)と不溶分(架橋重合体含有分)とに分離してそれぞれの質量を測定して求めることができる。
【0045】
具体的には、まず磁性粉の含有率がC質量%である磁性重合体粒子約1.0g(Ag)を秤量する。これにTHF50gを加えて20℃で24時間静置する。これを遠心分離で分け、JIS規格(JIS P3801)5種Cの定量用ろ紙を用いてろ過する。このろ液の溶剤分を真空乾燥し樹脂分である残査量(Bg)を計測する。この残査量がTHF溶解分である。
【0046】
上記より、THF不溶分は下記式(1)より求められる。
THF不溶分(g)=〔A−(A×C/100)〕−B ・・・ 式(1)
したがって、架橋重合体の含有率(%)は、これを重合体全体の質量である〔A−(A×C/100)〕で除すことにより下記式(2)により算出される。
架橋重合体の含有率(%)={1−B/〔A−(A×C/100)〕}×100 ・・・式(2)
【0047】
また、本実施形態における磁性重合体粒子における磁性粉の含有率は、2.5〜50質量%の範囲であり、3.0〜40質量%の範囲であることが望ましく、5.0〜30質量%の範囲であることがより好適である。
含有率が2.5質量%未満では、必要な磁力を得ることができない。50質量%を超えると、磁性粉の粒子中での均一分散性や重合体粒子の分散安定性が得られなくなる。
【0048】
本実施形態において、前記磁性粉は磁性重合体粒子中に均一に分散されていることが望ましい。ただし、上記均一に分散されているのは、粒子中での前記局在化した領域に関してである。またここで、分散に関する「均一」とは、系内に磁性粉の1次粒子が十数個集まった程度の大きさの凝集体が存在しないことをいう。以下も同様である。
この場合、磁性粉の含有率の粒径依存性が少ないこと(粒径により磁性粉の含有率が大きく変動しないこと)が好ましい。具体的には、個数平均粒径が2μmの磁性重合体粒子の磁性粉含有率(P質量%)と、5μmの磁性重合体粒子の磁性粉含有率(Q質量%)との比の(P/Q)が0.5以上であることが望ましく、0.6〜1.0の範囲であることがより好適である。粒径によらず磁性粉の含有率を上記一定範囲とすることにより、例えば磁性重合体粒子をマグネトグラフィ等に用いた場合に、現像性のコントロールがより行いやすくなるなどのメリットがある。
【0049】
また、粒子表面の磁性粉の存在状態は、表面の電子顕微鏡観察により確認することができ、本発明の磁性重合体粒子では、観察された重合体粒子すべての表面に飛び出した磁性粉が見られないことが望ましい。この観点からも、本願における磁性重合体粒子では、重合体が水酸基を有していること、及び非架橋重合体を含んでいることが有効に寄与している。
【0050】
本実施形態における磁性重合体粒子は粒子状であるが、個数平均粒径が0.5μm以上であることが望ましい。具体的には0.5〜5μmの範囲であることがより望ましく、1.0〜4.0μmの範囲であることがさらに好適である。
個数平均粒径が0.5μm以上であると、取り扱いやすく、後述する製造方法で水酸基の導入量や磁性粉の含有量の制御を容易に行うことができる。
【0051】
なお、上記個数平均粒径は、乾燥粒子を光学顕微鏡または電子顕微鏡にて写真撮影し、その中から無作為に選んだ100個から200個の粒子の粒子径を各々測定し、それらの合計を個数で除した値である。
【0052】
本実施形態における磁性重合体粒子は、水分散性に優れている。水分散性の評価は、重合体粒子の質量の20倍量の水に対し該磁性重合体粒子を投入し、これを攪拌したときの粒子状態の観察により行うことができる。この場合、前記水を収容する容器としては、開口面積が1〜10cm2程度のガラス容器を用いる。この評価において、磁性重合体粒子は、攪拌後に重合体粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に良好に分散していることが望ましい。
【0053】
本実施形態において、磁性重合体粒子がその粒子表面および内部にカルボキシル基を有する場合には、その一部または全部が塩構造を形成していることが望ましい。特に、水酸基量が少ない粒子の場合は上記塩構造を形成していることが水分散性に有効である。
ここで、前記塩構造とは、カルボキシル基の水素がアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンもしくはアンモニウムなどの有機カチオンに置換され、カルボン酸塩を形成していることを意味する。本発明においては、磁性重合体粒子におけるカルボキシル基の一部が塩構造を形成してもよいし、全部が塩構造を形成していてもよいが、全部が塩構造を形成していることがより好適である。
【0054】
本実施形態に用いる磁性粉、エチレン性不飽和単量体等の具体的内容は、後述する本発明の実施の形態に係る磁性重合体粒子の製造方法において説明する。
本発明の磁性重合体粒子の製造方法は、特に制限されず、乾式の溶融混練粉砕法により製造してもよいし、各種湿式の製造方法により製造してもよいが、後述する本発明の磁性重合体粒子の製造方法により製造することが、小粒径の重合体粒子を得る観点等から好ましい。
【0055】
<磁性重合体粒子の製造方法>
本発明者等が前述の磁性重合体粒子を得るため、その製造方法について検討した結果、疎水性単量体と、水酸基を有する単量体とを混合して水中で懸濁重合する場合には、重合中に粒子同士が凝集しやすく、また所望の共重合比の重合体を得ることが難しいということがわかった。その理由は、前記水酸基を有する単量体が、水中に単量体混合物として分散された油滴から水中にも拡散し、油滴以外の水中でも重合してしまうためであった。
【0056】
そして、重合体として疎水性成分を含む場合には、磁性粉表面が比較的親水性であることから、重合体粒子中に磁性粉が含まれにくくなり、さらに、重合体粒子中で疎水性単量体重合成分と親水性単量体重合成分とが相分離すると、それに伴い磁性粉の分散性も不均一化する傾向があった。また、粒子中の水酸基量が少ない場合、得られた重合体粒子の水への再分散性が低下するという傾向があった。
【0057】
本発明者等は、上記問題に対し、(1)単量体混合物を水系媒体中に安定で均一な懸濁粒子として存在させること、(2)磁性粉の単量体混合物中での分散性を向上させること、(3)これらの粒子を重合中に凝集させないようにすること、の3つの観点から改良を試みた。
【0058】
まず、前記(1)に対しては、単量体の混合量について、A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋重合体とを、(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合することにより、水系媒体中で安定な懸濁粒子を形成することが可能となることがわかった。
【0059】
また、前記(2)に関しては、磁性粉の表面を疎水化処理することで対応可能となった。前記のように磁性粉の表面は基本的に親水性であるため、疎水化処理を行うことにより疎水性単量体に対する親和性を高めることができ、磁性粉の粒子中での分散均一性及び含有量を高めることができた。さらに、前記非架橋樹脂の一部または全部に磁性粉をあらかじめ分散することにより、磁性粉の粒子内部への局在化が促進されることもわかった。
【0060】
さらに、上記の場合でも懸濁粒子から水性媒体中への単量体(磁性粉を含む場合もある)の拡散を防止するため、水性媒体中に塩を溶解させ、塩析効果により親水性単量体を含む単量体混合物を懸濁重合系の油層中に配置させることができた。
【0061】
一方、前記(3)に対しては、上記水性媒体中への塩の溶解が懸濁重合中に発生する乳化重合の発生を抑制することから、粒子の凝集にも効果があるといえる。そしてさらに、水性媒体中に分散安定剤を加えることにより、粒子の凝集同士の凝集が抑えられることが判明した。
そして、前記(1)〜(3)によって所望の性能を有する磁性重合体粒子が得られる。
【0062】
すなわち本発明においては、水酸基を有する単量体及び水酸基を有しない疎水性単量体と、架橋剤と、非架橋重合体との混合量の調整、磁性粉表面への疎水化処理、水性媒体中への塩の溶解及び分散安定剤の添加の4つの条件が満たされて初めて前記(1)〜(3)の作用が発揮され、親水性単量体、疎水性単量体及び磁性粉をばらつきを抑制した(均一な)状態で含む懸濁粒子中での安定した重合反応が可能となった。
そして、このようにすることにより、所望の含有率で磁性粉をばらつきを抑制して(均一に)分散し、良好な水分散性及び定着性を有する磁性重合体粒子を簡易にかつ良好な収率で製造することを実現した。
【0063】
以下、本発明の水酸基含有磁性重合体粒子の製造方法について、実施形態により詳細に説明する。なお、本実施形態におけるエチレン性不飽和単量体とは、ビニル基などのエチレン性不飽和基を有する単量体をいう。そして、下記水酸基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、および水酸基を有しない、あるいは水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体ともに前記エチレン性不飽和単量体に含まれる。
【0064】
(混合物作製工程)
−水酸基を有する単量体−
本実施形態で用いる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す表現であり、以下においてこれに準ずる。
【0065】
これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0066】
−カルボキシル基を有する単量体−
前述のように、本発明の磁性重合体粒子は重合体中に水酸基に加えてカルボキシル基を有していることが望ましい。この場合には、エチレン性不飽和単量体として、さらにカルボキシル基を有する単量体を用いることが望ましい。
【0067】
本実施形態で用いるカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノマレエートおよびメタクリロイルオキシエチルモノスクシネートなどを挙げることができる。
これらの中では、メタクリロイルオキシエチルモノフタレートを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合体粒子中の磁性粉の分散、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0068】
−水酸基を有しない疎水性単量体−
水酸基を有しない疎水性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;炭素数1〜18(より好適には、2〜16)のアルキル基若しくはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等);炭素数1〜12(より好適には、2〜10)のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エキトシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アリクレート、n−ブトキシメチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル;エチレン;塩化ビニル;酢酸ビニル;などを挙げることができる。
【0069】
これら中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが望ましく、更には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に好適である。
【0070】
なお、前記エチレン性不飽和単量体がカルボキシル基を有する単量体を含む場合には、上記水酸基を有しない疎水性単量体はさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体とするが、このカルボキシル基をも有しない疎水性単量体としては、実質、上記水酸基を有しない疎水性単量体がそのまま用いられる。
【0071】
前記水酸基を有する単量体と共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、1〜99質量%の範囲であることが望ましく、5〜95質量%の範囲であることがより望ましい。
また、前記エチレン性不飽和単量体として、水酸基を有する単量体に加えてカルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、これらと共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、20〜99質量%の範囲であることが望ましく、50〜90質量%の範囲であることがより好適である。
含有量を上記範囲とすることにより、粒子間、粒子内でばらつきが抑制された(均一な)重合が可能となり、重合体粒子としても前記水に対する分散性向上の効果を得ることができる。
【0072】
また、その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド類、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらも必要に応じて、前記水酸基を有する単量体及び疎水性単量体に加えて用いることができる。
【0073】
−架橋剤−
本発明では、後述する水性媒体に分散される反応性の混合物(前記エチレン性不飽和単量体等を含むもの)に、架橋剤を混合することが必要である。単量体混合液中へ架橋剤を添加することにより、重合中の凝集が抑制され、分散安定性が確保される。さらに、単量体混合液中への架橋剤の添加量を制御することにより、水酸基に起因する水に対する膨潤性をコントロールすることもできる。
【0074】
用いる架橋剤としては、公知の架橋剤を選択して用いることができ、好適なものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより望ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好適である。
架橋剤の添加量としては、全単量体成分100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲であることが望ましく、更には0.5〜50質量部の範囲であることがより好適である。
【0075】
−非架橋樹脂−
本実施形態に用いられる非架橋樹脂は、熱、紫外線、電子線等の外部エネルギー、あるいは溶剤蒸気、重合体からの溶剤揮発等で紙、フィルム等の被定着媒体に粒子を定着させる重合体であれば特に制限されない。なお、本発明の磁性重合体粒子には非架橋重合体が含まれるが、該非架橋重合体は上記非架橋樹脂を原材料とするものであり、後述の懸濁重合工程において非架橋樹脂が他の単量体と反応しない場合は、該非架橋樹脂がそのまま非架橋重合体となる。
【0076】
非架橋樹脂としては、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;などの単独重合体又は共重合体を例示することができる。
【0077】
特に好適な重合体としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィン、ワックス類を挙げることができる。
【0078】
これら中でも、特にポリエステルを用いて非架橋重合体とした場合には加熱定着に有効である。ポリエステルとしては、例えば、ビスフェノールAと多価芳香族カルボン酸とを主単量体成分とした重縮合物よりなる線状ポリエステル樹脂が好適に使用できる。
また、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体やスチレン−メタクリル酸アルキル共重合体も、物性の制御が容易で、後述の磁性粉の混合分散処理がしやすい点で好適に用いられる。
【0079】
上記非架橋樹脂としては、分子量(重量平均分子量)が5.0×103〜1.0×106の範囲のものを用いることが望ましく、1.0×104〜5.0×105の範囲のものを用いることがより好適である。また、ガラス転移点(Tg)は30〜90℃の範囲であることが望ましく、40〜80℃の範囲であることがより好適である。
【0080】
前述のように、本発明においては、A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋樹脂とを(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合することが必要である。具体的には、用いる非架橋樹脂の量を100質量部(E質量部)とした場合、A+B+Dを5〜99質量部の範囲とすることが望ましく、10〜90質量部の範囲とすることがより好適である。
【0081】
また、水酸基を有する単量体量(A質量部)と、水酸基を有しない疎水性単量体(B質量部)の比(A/B)は、95/5〜5/95の範囲とすることが望ましく、90/10〜10/90の範囲とすることがより好適である。
【0082】
さらに、エチレン性不飽和単量体として前記カルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、混合するカルボキシル基を有する単量体量をC質量部としたとき、(A+B+C+D)<Eなる関係を満たすように混合することが望ましい。具体的には、用いる非架橋重合体の量を100質量部(E質量部)とした場合、A+B+C+Dを5〜99質量部の範囲とすることが望ましく、10〜90質量部の範囲とすることがより好適である。
【0083】
また、水酸基を有する単量体量(A質量部)と、カルボキシル基を有する単量体量(C質量部)との比(A/C)は1000/1〜10/1の範囲とすることが望ましく、1000/5〜10/1の範囲とすることがより好適である。
この場合、水酸基を有する単量体量(A質量部)及びカルボキシル基を有する単量体量(C質量部)と、水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体(B質量部)との比((A+C)/B)は、95/5〜5/95の範囲とすることが望ましく、90/10〜 10/90の範囲とすることがより好適である。
【0084】
−磁性粉−
磁性粉としては、磁性を示すMO・Fe2O3またはM・Fe2O4の一般式で表されるマグネタイト、フェライト等を好適に用いることができる。ここで、Mは2価あるいは1価の金属イオン(Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li等)であり、Mとしては単独あるいは複数の金属を用いることができる。例えばマグネタイト、γ酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトの如き鉄系酸化物を挙げることができる。中でも安価なマグネタイトをより好適に用いることができる。
【0085】
また、他の金属酸化物として、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb等の金属を単独あるいは複数用いた非磁性の金属酸化物および上記磁性を示す金属酸化物を使用できる。例えば非磁性の金属酸化物として、Al2O3、SiO2、CaO、TiO2、V2O5、CrO2、MnO2、Fe2O3、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y2O3、ZrO2系等を使用することができる。
【0086】
後述する疎水化処理前の磁性粉の平均一次粒子径は、0.02〜2.0μmの範囲であることが望ましい。磁性粉の平均一次粒子径が上記範囲にあると、磁性粉が凝集し難く、重合性単量体中への均一な分散が容易となる。
【0087】
本発明においては、磁性粉はその表面が疎水化処理されている必要がある。疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行うことができるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが好適である。
【0088】
前記カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好適に用いられるのはシランカップリング剤であり、下記一般式(1)で示される構造のシラン化合物が特に好適である。
一般式(1): RmSiYn
(上記式中、Rはアルコオキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【0089】
具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0090】
特に、CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3(式中、pは2〜20の整数を表し、qは1〜3の整数を表す。)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤、C6H5−CrH2r−Si−(OCsH2s+1)3(式中、rは2〜20の整数を示し、sは1〜3の整数を示す。)で示されるアラルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して磁性粉を疎水化処理するのが好ましい。なお、ここで使用される“アラルキル” は、芳香族構造および脂肪族構造の両方を有する炭化水素基を意味する。即ち、アルキル基の水素原子の代わりに置換または未置換のアリール基が置換されている。そのアラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メシチル基等が挙げられる。
【0091】
上記各式におけるp、rが上記範囲にあると、磁性粉同士の合一を回避しつつ所望の疎水性を付与することができ、重合体粒子中に磁性粉を均一に分散させることができる。また、q、sが前記範囲にあると、シランカップリング剤の反応性がよく、所望の疎水化を行うことができる。
【0092】
前記のうちでは、特に、CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することが、重合性単量体中での良好な分散性を得る上で望ましい。
【0093】
磁性粉の疎水化処理は、例えばシランカップリング剤処理の場合は、磁性粉体を撹拌によりクラウド状としたものに気化したシランカップリング剤を反応させる乾式処理、又は、磁性粉体を溶媒中に分散させシランカップリング剤を滴下反応させる湿式法、あるいは、磁性粉体を溶媒中に分散させシランカップリング剤を混合した後ロータリーエバポレータのごとき蒸留装置で溶媒を蒸発させ、シランカップリング剤が付着した磁性粉体を熱処理する方法等の一般に知られた方法で処理することができる。また、前記の疎水化処理も併用可能である。
【0094】
前記疎水化処理での磁性粉に対する疎水化剤の処理量は、磁性粉100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲が望ましく、0.1〜10質量部の範囲とするのがより好適である。
【0095】
疎水化処理された磁性粉は、後述するように前記重合性単量体等の混合物に直接混合されても良いが、非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。この場合、非架橋樹脂の全量を上記分散に使用しても良いし、一部を磁性粉の混合分散に使用して残りを重合性単量体等の混合液に後添加しても良い。さらに、磁性粉の混合分散に使用する非架橋樹脂と、後添加する非架橋樹脂とは、同種のものであっても異なったものであっても良い。前述のように、前記非架橋樹脂の一部または全部に磁性粉をあらかじめ分散することにより、磁性粉の粒子内部への局在化を促進できる効果がある。
【0096】
磁性粉の含有量としては、求める磁力によって決定されるのであるが、本実施形態においては、磁性重合体粒子構成成分の総量に対して2.5〜50質量%の範囲とすることが望ましく、5〜30質量%の範囲とすることがより好適である。含有量を上記範囲とすることにより、十分な磁力が得られ、また重合体粒子として水性媒体に対する分散安定性を高めることができる。
【0097】
−重合開始剤−
本実施形態で使用する重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤等が好適なものとして挙げられるが、中でも油溶性開始剤が望ましい。
油溶性アゾ開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル等が挙げられる。油溶性過酸化物系開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、過酸化p−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化炭酸ジイソプロピル、過酸化ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシル、過酸化アセチルシクロヘキシルスルフォニル、過イソ酪酸t−ブチル、過ビバリン酸t−ブチル、過2−エチルヘキサン酸t−ブチル、過酸化t−ブチル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化ジクミル、過酸化メチルエチルケトン、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0098】
上記重合開始剤の添加量は特に制限されないが、全単量体成分100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲であることが望ましく、0.1〜5質量部であることがより好適である。
【0099】
−その他の添加剤−
本実施形態における単量体等の混合液には、必要に応じて有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、水に比較的溶解しにくく、沸点が後述の懸濁重合の重合温度よりも高く、重合を阻害しない有機溶媒であれば原理的には使用可能であり、上記単量体と相溶することが望ましい。例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類などが挙げられるがこれらに制限されない。
炭化水素類としては、脂肪族炭化水素類や芳香族炭化水素類が挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、石油系炭化水素、ナフテン系炭化水素などが挙げられ、芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、ドデシルベンゼンなどが挙げられる。
【0100】
前記アルコール類としては、炭素数8〜24(好適には12〜22)の脂肪族アルコール等が使用でき、非環式脂肪族アルコール及び脂環式アルコールの何れでもよい。また、天然アルコール及び合成アルコール(チーグラーアルコール及びオキソアルコール等)の何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0101】
非環式脂肪族アルコールとしては、飽和脂肪族アルコール及び不飽和脂肪族アルコール等が用いられる。非環式の飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、イソアミルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール及びテトラコセニルアルコール等が挙げられる。また、非環式の不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、テトラコセニルアルコール、ガドレイルアルコール及びリノレイルアルコール等が挙げられる。
【0102】
脂環式アルコールとしては、単環式脂肪族アルコール及び複環式脂肪族アルコール等が用いられる。単環式脂肪族アルコールとしては、例えば、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール及びステアリルシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。また、複環式脂肪族アルコールとしては、例えば、アダマンチルアルコール及びジシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
【0103】
前記ケトン類としては、炭素数4〜22(好適には6〜12)の脂肪族ケトン、芳香族ケトン等が使用でき、脂肪族ケトンでは非環式脂肪族ケトン及び脂環式ケトンの何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
前記エーテル類としては、炭素数6〜22(好適には7〜12)の脂肪族エーテル、芳香族エーテル等が使用でき、脂肪族エーテルでは非環式脂肪族エーテル及び脂環式エーテルの何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、メチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは数種類を混合して使用することができる。
【0104】
本実施形態の磁性重合体粒子には、更にポリマーの着色を目的とした染料、有機顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどを含有させることができる。その場合には磁性粉が分散された前記単量体等の混合物に前記各添加剤を直接混合することもできるが、特に有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を混合する場合は、前記磁性粉の場合に準じて、非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。この場合、非架橋樹脂の全量を上記分散に使用しても良いし、一部を顔料の混合分散に使用して残りを重合性単量体等の混合物に後添加しても良い。さらに、顔料の混合分散に使用する非架橋樹脂と、後添加する非架橋樹脂とは、同種のものであっても異なったものであっても良い。
【0105】
以上の各単量体等を含む混合物の作製方法としては、例えば、まず前記エチレン性不飽和単量体、非架橋樹脂、重合開始剤及びその他の必要な成分とを混合して単量体等の混合液を作製する。混合の方法は特に制限されない。
また、上記混合液への磁性粉の分散には公知の方法が適用できる。すなわち、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用できる。なお、あらかじめ単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性粉を分散させる場合には、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用できる。
【0106】
なお、混合物の作製方法としては、上記に限られず、例えば前記混合液作製の際に非架橋樹脂として磁性粉を混合したものを用いて、この段階で磁性粉を含有させてもよいし、前記単量体、非架橋樹脂、磁性粉等を一度に混合して混合物としてもよい。
【0107】
(懸濁重合工程)
−水性媒体−
本実施形態における水性媒体としては、水、若しくは水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を加えたものが好適に用いられ、この中でも水単独が特に望ましい。水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、懸濁させる単量体の性状にもよるが、全溶媒に対し30質量%以下であることが望ましく、10質量%以下が特に好適である。添加量を30質量%以下とすることにより、分散安定性を良好に保つことができる。
【0108】
−塩−
本発明においては、上記水性媒体に塩を溶解することを必須の要件とする。塩析効果によって乳化重合の反応が抑制され、懸濁粒子の分散安定性が得られ、良好な収率を実現することができる。
【0109】
溶解させる塩としては、水溶性の無機或いは有機塩類とも用いることができるが、特に無機塩類が前記塩析効果を有効に発揮できるため好適である。該無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられ、これらの中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウムがより望ましく、更には塩化ナトリウムが特に好適である。
【0110】
塩の添加量としては、分散安定性の観点から、分散媒体全体に対し5質量%以上溶解させることが望ましく、10質量%以上であることがより望ましく、15質量%以上であることが特に望ましい。
溶解量を5質量%以上とすることにより、前記塩析効果が過不足なく発揮され、乳化重合の発生を抑えることができる。
【0111】
−分散安定剤−
本実施形態においては、さらに前記水性媒体中に分散安定剤を存在させることを必須の要件とする。上記分散安定剤としては、公知の分散安定剤が使用できるが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の無機粉体を用いることが、懸濁粒子の分散性を高める上で有効であり、粒子同士の凝集を抑えることができるため好適である。また、上記無機粉体表面に表面改質剤がコーティングされていることが分散粒子の安定性を高める点で望ましい。さらに、前記無機紛体に加え、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等の界面活性剤を併用することもできるが、界面活性剤を併用する場合は、臨界ミセル濃度未満の添加が望ましい。
【0112】
上記分散安定剤の添加量は特に制限されないが、前記単量体及び磁性粉等を含む混合物100質量部に対して1〜100質量部の範囲であることが望ましく、2〜90質量部の範囲であることがより好適である。1質量部以上であることにより、良好な分散状態とすることができ、一方、100質量部以下であることにより微細粒子の派生を抑制し、懸濁粒子の粒度分布をシャープにすることができるという利点がある。
【0113】
また、前記水性媒体には、懸濁粒子の粒度調節の目的で増粘剤を加えることもできる。該増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリカルボン酸塩を添加することができる。
これらの増粘剤を用いた場合、水性媒体の粘度は100〜10000mPa・sの範囲とすることが望ましい。
【0114】
前記単量体等を含む混合物の前記塩等を含む水性媒体(以下、「分散媒体」という場合がある)への懸濁は、以下のようにして行うことができる。
すなわち、前記塩を溶解し且つ分散安定剤を存在させた水性媒体中に、親水性単量体、疎水性単量体、非架橋樹脂、磁性粉、重合開始剤、架橋剤等を加えた混合物を投入し、懸濁させる。懸濁の方法としては、公知の懸濁方法が利用できる。例えば、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ水性媒体中に単量体等を懸濁させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で懸濁する方法、超音波によって懸濁する方法等の機械的な懸濁方法が挙げられる。
【0115】
その他、上記の単量体等を添加した液体を準備し、それを多孔質膜から水性媒体中に押し出す、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁することもできる。
なお、懸濁される混合物と分散媒体との混合質量比(混合物/分散媒体)は10/100〜100/100の範囲とすることが望ましく、また、懸濁された粒子の個数平均粒径は0.5〜5.0μmの範囲とすることが望ましい。
【0116】
本実施形態においては、前記懸濁させた単量体及び磁性粉等を含む粒子を懸濁重合させることにより磁性重合体粒子を得る。重合反応は、大気下だけでなく、加圧下においても行うことができるが、これらその他の反応条件は、必要に応じて適用されるもので、特に限定されるものではない。
【0117】
反応条件としては、例えば、大気圧下で、前記懸濁粒子が分散した懸濁液を攪拌しながら、40〜100℃の反応温度で1〜24時間反応させることが、80%程度以上の高い収率で重合体粒子を得る等の観点から好適である。
【0118】
以上述べた方法により磁性粉を含む磁性重合体粒子が得られるが、上記例示した本発明の製造方法においては、塩が溶解され且つ無機粉体を主成分とする分散安定剤が加えられた水性媒体中に、単量体等の混合物を分散することにより、0.5μmに満たない分散液滴の生成が抑制されるため、粒径が0.5μmに満たない小粒径の粒子はほとんど形成されない。このため、本発明の磁性重合体粒子の製造方法は、水酸基量やカルボキシル基量の制御のしやすさの点だけでなく、前記本発明の磁性重合体粒子として好適な個数平均粒径が0.5μm以上のものを容易に得ることができる点でも優れている。
【0119】
こうして得られた重合体粒子は、分散安定剤を除去した後、そのまま洗浄、乾燥してもよいが、前記エチレン性不飽和単量体がカルボキシル基を有する単量体を含む場合、すなわち、重合体粒子中に水酸基に加えてカルボキシル基を有している場合には、さらに塩基性化合物で処理することが望ましい。これにより、重合体粒子中のカルボキシル基が塩構造に変化する。
【0120】
塩構造を形成する方法は、例えば磁性重合体粒子を、水もしくは水と水溶性有機溶剤との混合液、もしくは有機溶剤の存在下、塩基性化合物で処理すればよい。本実施形態においては、磁性重合体粒子の水系分散液に塩基性化合物を添加して処理を行ってもよいし、塩基性化合物が溶解した水系溶液に磁性重合体粒子を混合して処理してもよい。
【0121】
前記塩基性化合物としては、無機塩基性化合物、有機塩基性化合物のいずれをも使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基性化合物;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;その他、塩基性のトリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、モルホリン等のアルカノールアミン類;等が挙げられる。
これらの塩基性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、処理後の塩基性化合物の除去のしやすさから、無機塩基性化合物を用いることが望ましい。
【0122】
本実施形態において、上記塩基性化合物の使用量は、磁性重合体粒子の水系分散液の0.1〜20質量%の範囲とすることが望ましい。また、前記塩基性化合物による処理で得られる磁性重合体粒子においては、カルボキシル基が全て塩構造を形成していることが望ましいが、通常は前記使用量の範囲において、塩基性化合物は重合体粒子のカルボキシル基量に対して過剰となるように設定される。
【0123】
この際、磁性重合体粒子の水系分散液のpHは9以上であることが好適であり、より好適には11以上である。処理温度には特に制限はないが、50℃〜80℃程度に加温しても良い。処理時間には制限はないが、通常0.5〜5時間である。さらに、処理時の磁性重合体粒子の濃度は特に制限はないが、通常、1〜50質量%の範囲である。処理時間中に磁性重合体粒子が沈降する場合は、適度の撹拌を行うことが好ましい。そして、処理後は水洗により前記塩基性化合物が除去される。
【0124】
以上のようにして得られた磁性重合体粒子は、重合後あるいは処理後、場合によってはメタノール等の溶媒に希釈分散させ、濾別し、更に水洗や溶剤洗浄の後、噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によって粉体として単離することができる。
【0125】
本実施形態により得られた磁性重合体粒子における水酸基量、個数平均粒径は、前記に準じた方法により求めることができる。また、前記磁性重合体粒子の製造方法により得られる重合体粒子の好適な水酸基量、個数平均粒径は、前記本発明の磁性重合体粒子において説明した内容に準ずる。
なお、個数平均粒径の測定において、凝集粒子(複数の粒子が凝集したもの、あるいは1つの粒子に粒子が付着して変形した状態となったもの)がまったく見られないことが望ましい。
【0126】
また、本実施形態における磁性重合体粒子の分子量(重量平均分子量)は、その用途によって異なるものの、非架橋重合体については、5000〜1000000の範囲が望ましく、10000〜500000の範囲がより好適である。
【0127】
なお、上記数平均分子量は、前記THFを用いて溶解分として分離した成分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。GPCは、HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)を用い、カラムは、TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定した。
【0128】
<水分散体>
本実施形態における水分散体は、前記本発明の磁性重合体粒子を水などの水性媒体中に分散させた粒子分散体である。本発明の磁性重合体粒子においては、前述のように粒子中に磁性粉がばらつきが抑制されて(均一に)分散しているため、粒子表面にほとんど磁性粉が存在しない。また、表面に水酸基を有するため、良好な水分散性を示す。このため、本発明の水分散体は、後述する分散された粒子特性がばらつきなくあるいは効率よく反映される各種の用途に用いられる。
以下、実施形態により説明する。
【0129】
水性媒体としては、前記懸濁重合工程で説明したものに準じたものを用いることができる。
水分散体の製造に当たっては、通常の水分散体に使用することのできる各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を併用してもよい。
磁性重合体粒子の水分散性は、前記に準じた方法で評価することができ、本発明により得られた磁性重合体粒子の良好な水分散性は、前記本発明の磁性重合体粒子で述べた通りである。
【0130】
本実施形態において、水分散体における分散粒子径は、平均粒子径で0.5〜5μm程度の範囲とすることが可能であるが、1〜4μmの範囲とすることが望ましい。
また、水分散体の固形分濃度は特にこれを限定するものではないが、1〜50質量%の範囲が望ましく、5〜30質量%の範囲がより好適である。
【0131】
以上、本発明の磁性重合体粒子及びその製造方法、並びに水分散体の実施形態について詳細に説明したが、本発明により得られた磁性重合体粒子及びその水分散体は、画像形成材料、磁性流体、診断薬及び医薬品担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤及び化粧品添加剤等の用途に好適に使用可能である。特に前記磁性重合体粒子では、一定量以上の磁性粉がばらつきを抑制して(均一に)分散されており、また表面の水酸基による水性媒体での分散性に優れることから、磁性インクや湿式の画像形成法に用いる画像形成材料として好適に用いることができる。さらには粒子中および粒子表面の水酸基を利用して、所望の官能基に変換するための中間体として利用することもできる。
【0132】
<カートリッジ、画像形成装置>
前記本発明の水分散体は、画像形成材料の1つである画像形成用記録液として好適に用いることができる。
上記画像形成用記録液は、記録システムにより記録媒体上に画像を表示するものとして使用される。記録システムとしては、ヘッドからインク液滴を吐出させ、機械的に記録紙上に移動させて画像を表示させるインクジェットシステム、具体的には、サーマルインクジェット、バブルインクジェット、ピエゾインクジェット、マイクロドット型インクジェット、IRIS型インクジェット、マルチノズル型インクジェット等や、磁気潜像に画像記録用粒子を現像させて被転写媒体に転写し、定着して記録上に画像を表示させるマグネトグラフィー等のいずれの方式にも使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
これらの中でも、画像形成用記録液として好適に用いられるマグネトグラフィー方式を採用した画像形成装置及びそれに用いるカートリッジの一実施形態を、図面を用いてその概略を説明する。
マグネトグラフィーは、文字や画像などのパターン状の磁気潜像を形成し、それを磁性トナーによって可視化しハードコピーを得る方式である。図1は、マグネトグラフィー方式により画像形成を行う画像形成装置の主要部の一例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、図に示すように画像形成用記録液を保持した現像ロール(液体保持手段)10を磁気記録ドラム20に接触させて画像を形成するものである。
【0134】
まず、Co−Ni系の磁性メッキを主体として作られた磁気記録ドラム20に、画像信号に応じてラインスキャン方式により磁気記録ヘッド22で磁気記録ドラム上に磁気潜像を記録する。
次に、磁気記録ドラム20に記録液を保持した現像ロール10を接触させて、前記磁気潜像を磁性重合体粒子により可視像とする。この記録液として本発明の水分散体が用いられるが、現像ロール10への記録液の供給は、貯留槽(液体収容手段)12に貯留された記録液14に一部が接触し記録液14を保持した状態で他の部分が現像ロール10に接触して記録液14を塗布する記録液塗布ロール(液体供給手段)16によって行われる。また、記録液塗布ロール16への液保持量の調整は、メータリングブレード17により行われる。
なお、図に示すように、現像ロール10、貯留槽12、記録液塗布ロール16、メータリングブレード17等は、一体となってカートリッジ40を構成している。
【0135】
次いで、磁気記録ドラム20上の可視像を転写ロール24との接触部に移動させ、同時に電圧を印加した転写ロール24と磁気記録ドラム20との圧接部に記録媒体30を挿通することにより、記録媒体上に磁性重合体粒子の可視像を転写する。転写された磁性重合体粒子の可視像は、そのまま搬送され、図示しない定着器により圧力、熱を加えられて記録媒体30に定着される。
【0136】
一方、転写後の磁気記録ドラム20上の残留トナーはブレード26により除去され、磁気記録ドラム20表面の磁気潜像は消磁ヘッド28により消去される。なお、現像後に現像ロール10表面に残った記録液は、現像ロール10表面に圧接されるクリーニングブレード18により掻き取られ、貯留槽12に回収される。
【0137】
以上に例示したマグネトグラフィー方式を採用した画像形成装置に、水を含む分散媒に小粒径の磁性重合体粒子が均一に分散した本発明の水分散体を画像形成用記録液として用いることにより、定着性に優れた高画質の画像が得られるだけでなく、非水溶媒による作業環境の汚染も発生することがない。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中に示した「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0139】
<表面処理磁性粉の作製>
(磁性粉1)
乾燥したエタノール150部に磁性粉(戸田工業社製、商品名:MTS−010、平均粒径:0.13μm)150部を加え、ここに、2.5部のシランカップリング剤(チッソ社製、商品名:フェネチルトリメトキシシラン)を加え、超音波で磁性粉を分散した。この分散液をロータリーエバポレータでエタノールを蒸留し、磁性粉を乾固させた後、150℃で5時間熱処理した。このように処理した磁性粉は水になじまず(少量を水に混合して攪拌しても水面に浮いて沈降しない、以下もこれに準ずる)、表面が疎水化されていた。これを磁性粉1とした。
【0140】
(磁性粉2)
上記疎水化処理した磁性粉600部にスチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)400部を加え、加圧ニーダーで混練して、表面が樹脂被覆処理された磁性粉2を得た。
【0141】
<実施例1>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)7部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)12部、n−ブチルメタクリレート16部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)40部、シクロヘキサノン34部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉1:33部を加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤として2,2’−アゾビス{2,4―ジメチルバレロニトリル}(和光純薬(株)製、V−65)1.0部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0142】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで5分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0143】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、目開き100μmの篩を通した。篩い通過後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Aを得た。
この磁性重合体粒子Aを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ57部で、収率は83%であった。
【0144】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
この磁性重合体粒子Aを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群A1と平均粒径3μmの粒子群A2とに分画した。
これらについて、各々熱重量分析(TGA)による加熱による重量減少量から粒子中の磁性粉含有量を算出したところ、A1では30%、A2で32%であり、概ね一致していた。なお、TGAの測定は、昇温速度10℃/分として600℃まで昇温し、600℃で10分間保持する条件として行った。
【0145】
−水酸基量−
磁性重合体粒子Aを秤量してキャップ付き試験管に入れ、あらかじめ調製した無水酢酸(和光純薬(株)製)のピリジン(和光純薬(株)製)溶液を一定量加え、95℃の温度条件で24時間加熱した。
更に、蒸留水を加えて試験管中の無水酢酸を加水分解させた後、3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みとに分けた。粒子を更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にフェノールフタレイン(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0146】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(3)に従って水酸基量(mmol/g)を算出した。
水酸基量=((B−C)×0.1×f)/(w−(w×D/100)) ・・・ 式(3)
上記式(3)中、Bはブランク実験での滴下量(ml)、Cはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、wは粒子の重量(g)、Dは粒子中の磁性粉含有率(%)である。
その結果、磁性重合体粒子Aの水酸基量は0.68mmol/gであった。
【0147】
−架橋重合体の含有率−
架橋重合体の含有率は、前述のように、THF溶解分及びTHF不溶分中の成分量を各々測定することにより求めることができる。前記磁性粉含有率が32%である磁性重合体粒子A2について、上記の方法に従って、架橋重合体の含有率を求めたところ、47%であった。
【0148】
−個数平均粒径及び粒子形状−
前述のように、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から磁性重合体粒子Aの個数平均粒径を求めたところ、2.0μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0149】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
磁性重合体粒子Aの表面の磁性粉の存在状態を、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。具体的には、倍率を10000倍として100個の粒子について表面状態を確認したところ、すべての粒子において表面に磁性粉が飛び出している状態は観察されなかった。
さらに、磁性粉の粒子内部の存在状態について透過型電子顕微鏡(TEM)を使って断面観察したところ、図2の写真に示すように、磁性粉は良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0150】
(水分散体の作製、特性)
乾燥させた磁性重合体粒子Aを1部とり、開口面積が4cm2のガラス容器に収容した20部の純水に入れ攪拌し水分散体とした。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.2μmであった。
【0151】
(定着特性)
磁性重合体粒子Aをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスとが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Aは熱に対する定着性を有することがわかった。
【0152】
<実施例2>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)55部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉2:33部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0153】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0154】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換と洗浄とを繰り返し行い、磁性重合体粒子Bを得た。
この磁性重合体粒子Bを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ60部で、収率は82%であった。
【0155】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Bを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群B1と平均粒径3μmの粒子群B2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、B1では15%、B2では16%で、概ね一致していた。
【0156】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Bの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.41mmol/g、前記磁性粉含有率が16%である磁性重合体粒子B2の架橋重合体の含有率は38%であった。
【0157】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.5μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0158】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図2に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0159】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Bを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.8μmであった。
【0160】
(定着特性)
磁性重合体粒子Bをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに1分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Bは定着性を有することがわかった。
【0161】
<実施例3>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)1部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)12部、n−ブチルメタクリレート16部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、前記磁性粉1:33部を加え、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)40部、シクロヘキサノン34部をボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤として2,2’−アゾビス{2,4―ジメチルバレロニトリル}(和光純薬(株)製V−65)1.0部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0162】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)30部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0163】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、目開き100μmの篩を通した。通過した分散液を0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、20℃(室温)で1時間攪拌した。処理後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Cを得た。
この磁性重合体粒子Cを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ53部で、収率は80%であった。
【0164】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Cを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群C1と平均粒径3μmの粒子群C2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、C1では30%、C2では32%で、概ね一致していた。
【0165】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Bの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.4mmol/g、前記磁性粉含有率が32%である磁性重合体粒子C2の架橋重合体の含有率は47%であった。
【0166】
−カルボキシル基量−
磁性重合体粒子Cを10倍量のイオン交換水に再分散し、1N塩酸を加えてpHを3にした。このまま1時間20℃(室温)で攪拌を続け、濾過後、10倍量のイオン交換水で繰り返し洗浄した。遠心分離後、60℃で凍結乾燥した。得られた重合体粒子を秤量してキャップ付き試験管に入れ、0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)を一定量加え、20〜25℃(常温)で3時間反応させた。
これを3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みとに分けた後、粒子を更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にメチルオレンジ(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mの2−プロパノール性塩酸溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0167】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(4)に従ってカルボキシル基量(mmol/g)を算出した。
カルボキシル基量=((E−F)×0.1×f)/(x−(x×G/100)) ・・・ 式(4)
上記式(4)中、Eはブランク実験での滴下量(ml)、Fはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、xは粒子の重量(g)、Gは粒子中の磁性粉含有率(%)である。
その結果、磁性重合体粒子Cのカルボキシル基量は0.05mmol/gであった。
【0168】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.0μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0169】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図3に示すように、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0170】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Cを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。これを1週間静置させ、沈降堆積した粒子を再度攪拌したところ、粒子全体が良好に水中に再分散した。再分散性に優れたものであった。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は3.2μmであった。
【0171】
(定着特性)
磁性重合体粒子Cをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Cは定着性を有することがわかった。
【0172】
<実施例4>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)0.5部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)55部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉2:33部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0173】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0174】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換した。0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、20℃(室温)で1時間攪拌した。処理後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Dを得た。
この磁性重合体粒子Dを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ59部で、収率は80%であった。
【0175】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Dを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群D1と平均粒径3μmの粒子群D2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、D1では15%、D2では16%で、概ね一致していた。
【0176】
−水酸基量、カルボキシル基量、架橋重合体の含有率−
実施例1及び実施例3に準じて、磁性重合体粒子Dの水酸基量、カルボキシル基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.42mmol/g、カルボキシル基量は0.01mmol/g、前記磁性粉含有率が16%である磁性重合体粒子D2の架橋重合体の含有率は39%であった。
【0177】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.1μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0178】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図3に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0179】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Dを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。これを1週間静置させ、沈降堆積した粒子を再度攪拌したところ、粒子全体が良好に水中に再分散した。再分散性に優れたものであった。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は3.2μmであった。
【0180】
(定着特性)
磁性重合体粒子Dをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Dは定着性を有することがわかった。
【0181】
<実施例5>
(磁性重合体粒子の製造)
磁性粉1を200部に非架橋のスチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)400部を加え、バンバリーミキサーで混練して、磁性粉が分散された樹脂を得た。この樹脂73部と、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)7部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0182】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤としてリン酸カルシウム(和光純薬社製)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えてリン酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換と洗浄を繰り返し行い、磁性重合体粒子Eを得た。
この磁性重合体粒子Eを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ66部で、収率は80%であった。
【0183】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Eを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群E1と平均粒径3μmの粒子群E2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、E1では15%、E2では16%で、概ね一致していた。
【0184】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Eの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.43mmol/g、前記磁性粉含有率が16%である磁性重合体粒子E2の架橋重合体の含有率は38%であった。
【0185】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.3μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0186】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図2に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0187】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Eを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.8μmであった。
【0188】
(定着特性)
磁性重合体粒子Eをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Eは定着性を有することがわかった。
【0189】
<実施例6>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)26部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉2:33部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0190】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換と洗浄を繰り返し、磁性重合体粒子Fを得た。
この磁性重合体粒子Bを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ56部で、収率は81%であった。
【0191】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Fを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群F1と平均粒径3μmの粒子群F2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、F1では18%、F2では20%で、概ね一致していた。
【0192】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Fの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.6mmol/g、前記磁性粉含有率が20%である磁性重合体粒子F2の架橋重合体の含有率は52%であった。
【0193】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.5μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0194】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図2に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0195】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Fを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.8μmであった。
【0196】
(定着特性)
磁性重合体粒子Fをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士の融合が不完全で、粒子界面が残っており、スライドガラスとカバーガラスの接着力は弱く、すぐに剥がれてしまった。この結果から、磁性重合体粒子Fは定着性が不十分であることがわかった。
【0197】
<比較例1>
実施例2の磁性重合体粒子の製造において、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)55部のうちの28部をスチレン単量体(和光純薬(株)製)8部、n−ブチルメタクリレート20部に置き換えた以外は、実施例2に準じて懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Gを得た。
磁性重合体粒子Gを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ61部で、収率は83%と良好であった。また、実施例1に準じて乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.2μmであり、凝集粒子は全く見られなかった。
【0198】
しかし、実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Gをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が全く融合しておらず粒子界面に変化はなく、スライドガラスとカバーガラスとは全く接着していなかった。この結果から、この磁性重合体粒子は前記加熱条件で定着性を有しないことがわかった。
なお、磁性重合体粒子Gの水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.45mmol/gであった。このとき、架橋重合体の含有率は64%であった。
【0199】
<比較例2>
実施例2の磁性重合体粒子の製造において、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部を、スチレン単量体(和光純薬(株)製)3部、n−ブチルメタクリレート4部に変更した以外は、実施例2に準じて懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Hを得た。
磁性重合体粒子Hを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ、66部で、収率は80%であった。
【0200】
しかし、実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.5μmであり、凝集粒子が散在していた。また、実施例1に準じてこの磁性重合体粒子Iを平均粒径1μmの粒子群H1と、平均粒径3μmの粒子群H2とに分画し、粒子中の磁性粉含有率を算出したところ、H1では15%、H2では16%であり、磁性粉含有量は概ね一致していた。
なお、磁性重合体粒子Hの水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.01mmol/gであった。
【0201】
次に、粒子表面の磁性粉の存在状態について実施例1に準じてSEMで観察したところ、粒子表面に磁性粉が飛び出している部分が見られた。また、実施例1に準じて水分散体を作製しようとしたが、水面でダマ(粒子同士が固まったもの)になってしまい水中に良好に再分散せず、得られた磁性重合体粒子Hは水になじみにくいものであった。
【0202】
<比較例3>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)40部を30部とし、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)7部およびスチレン単量体(和光純薬(株)製)12部をスチレン単量体(和光純薬(株)製)22部、n−ブチルメタクリレート16部を20部、ジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を4部とした以外は、実施例1に準じて懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Iを得た。
磁性重合体粒子Iを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ55部で、収率は80%であった。
【0203】
しかし、実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Iをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が全く融合しておらず粒子界面に変化はなく、スライドガラスとカバーガラスとは全く接着していなかった。この結果から、この磁性重合体粒子は前記加熱条件で定着性を有しないことがわかった。
なお、磁性重合体粒子Iの水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.01mmol/gであった。このとき、架橋重合体の含有率は60%であった。
【0204】
<比較例4>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、分散媒体調製の際に塩化ナトリウムを加えない以外は、実施例1に準じて単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を懸濁させ、重合を行ったところ、イオン交換水による洗浄工程で、濾紙(ADVANTEC社製、No.5C、保留粒子径:1μm)を通過する白色の微小粒子が認められた。これにより、分散媒体中で乳化重合が派生していることが確認された。得られた磁性重合体粒子Jの収量を測定したところ38部で、収率は54%に低下した。
【0205】
磁性重合体粒子Jについて水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.03mmol/gと低かった。また、これらの重合体粒子を電子顕微鏡観察したところ、粒径のばらつきが大きかったが個数平均粒径は2.0μmであった。なお、凝集粒子が相当数観察された。
また、実施例1に準じて水分散体を作製しようとしたが、水面でダマ(粒子同士が固まったもの)になってしまい水中に良好に再分散せず、得られた磁性重合体粒子Jは水になじみにくいものであった。
【0206】
<比較例5>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、分散媒体調製の際に炭酸カルシウムを加えない以外は、実施例1に準じて単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を懸濁させ、重合を行おうとしたが、混合物は分散媒体中に良好に懸濁することができず、重合すると団子状の塊になってしまい、所望の重合体粒子を得ることができなかった。
【0207】
<比較例6>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、混合物作製の際にジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)を加えなかった以外は、実施例1に準じて懸濁重合を開始したところ、途中で粒子同士が凝集してしまい、所望の重合体粒子を得ることができなかった。
【0208】
以上のように、前記実施例では、重合時の懸濁粒子が安定しているため凝集を生じることがなく、水への分散性に優れ、加熱により良好な定着性を示す磁性重合体粒子を得ることができる。これに対し、必要な製造条件が不足している比較例では、収率、粒子状態、粒子特性等に何らかの問題が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施例1における磁性重合体粒子の断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3における磁性重合体粒子の断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0210】
10 現像ロール
12 貯留槽
14 記録液(画像形成用記録液)
16 記録液塗布ロール
17 メータリングブレード
18 クリーニングブレード
20 磁気記録ドラム
22 磁気記録ヘッド
24 転写ロール
26 ブレード
28 消磁ヘッド
30 記録媒体
40 カートリッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性重合体粒子およびその製造方法、並びに、水分散体、カートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性重合体粒子としては、電子写真における静電荷現像用の磁性トナーが公知である。また、その製造方法としては、親油化処理が施された磁性粉を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを、難水溶性無機粉末を懸濁保護剤に用いて懸濁重合する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは、磁化処理及び親油化処理が施された磁性粉を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを懸濁重合して磁性ポリマー粒子を得る方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
また、定着性や耐オフセット性等の改良を目的として、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂とを反応させ、架橋構造を形成した樹脂を構成成分とするトナーが開示されている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【0004】
一方、水分散体として利用される磁性重合体粒子としては、生理活性物質の固定用粒子が公知である。例えば、炭化水素油中に分散された磁性粉を、ビニル芳香族モノマーを含む有機相に分散させ、この分散体を、ホモジナイザーを用いて水性相へ均質に分散させた後重合することにより、比較的小粒径の磁性ポリマー粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0005】
また、特定の官能基を有する多孔ポリマー粒子の存在下に鉄化合物を析出させ、この鉄化合物を酸化することで、前記多孔ポリマー粒子の内部に磁性粉を導入し、2μm以上の粒径でかつ均一径の磁性ポリマー粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
また、親油処理した磁性粉を、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンのごとき疎水性単量体中に分散させて単量体組成物を調製し、この単量体組成物を水相に乳化分散させて懸濁液を得、得られた懸濁液にメタクリル酸メチルのごとき親水性単量体とアクリル酸などのカルボキシル基を有する親水性単量体とを添加した後、重合し、磁性重合体粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献8参照)。
【0007】
また、乳化重合によって作製された水酸基を有する0.05〜0.5μmの樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集及び融着してトナー化する技術、あるいは、結着樹脂と着色剤等のトナー構成成分を混合分散し水系媒体中に乳化した後、凝集及び融着してトナー化する技術が開示されており、上記着色剤の一つとしてマグネタイトが例示されている。(例えば、特許文献9、10参照)。
【0008】
また、1〜30nmの酸化鉄のごとき磁性粉がスチレンとグリシジルメタクリレートとから構成される架橋ポリマーに内包されている免疫測定用粒子の磁性粒子が開示されている(例えば、特許文献11参照)。この粒子は、過硫酸カリウム(KPS)のごとき水溶性重合開始剤を用いて乳化重合すると同時に、同じ水溶液中で塩化鉄を酸化させて酸化鉄を生成することにより得られる。
【0009】
さらに、生理活性物質を固定するための磁性重合体粒子として、カルボキシル基を有する粒子が知られている。例えば、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と磁性粉との混合物を懸濁重合して得られた粒子を、有機性塩基、水溶性溶剤で処理し、表面電荷を増大させることにより生理活性物質の固定用粒子とする技術が開示されている(例えば、特許文献12、13参照)。
【0010】
これに対し、磁気テープを作製するための磁性塗料として水酸基を有するポリマーをバインダー樹脂として使用する方法は公知である。例えば、特定割合の水酸基とカルボン酸基とを有する塩化ビニル系共重合体を磁性粉のバインダー樹脂とする磁性塗料が開示されている(例えば、特許文献14参照)。
【特許文献1】特開昭57−102666号公報
【特許文献2】特開昭59−221302号公報
【特許文献3】特開平7−225491号公報
【特許文献4】特開平8−44107号公報
【特許文献5】特開2004−310078号公報
【特許文献6】特公平4−3088号公報
【特許文献7】特公平5−10808号公報
【特許文献8】特開平9−208788号公報
【特許文献9】特開2004−295110号公報
【特許文献10】特開2005−91705号公報
【特許文献11】特開2004−331953号公報
【特許文献12】特開平10−87711号公報
【特許文献13】特開平10−270233号公報
【特許文献14】特公平4−34578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、水分散性が良好で、紙やフィルムへの定着が可能な磁性重合体粒子及びこれを用いた水分散体、並びに、該水分散体を用いたカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。また、本発明は、水性媒体中での懸濁重合によって上記磁性重合体粒子を得る場合でも、粒子同士の凝集を抑制でき、良好な収率で所望の粒子を得ることができる磁性重合体粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題は、以下の本発明によって達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と、非架橋重合体とを含んで構成され、
前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体全体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子におけるエチレン性不飽和単量体が、さらにカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、且つ、前記磁性粉を含まない前記重合体全体のカルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の磁性重合体粒子におけるカルボキシル基の一部または全部が塩構造を形成している磁性重合体粒子である。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子における架橋重合体の含有率が、磁性粉を含まない前記重合体全体の0.5〜49.5質量%の範囲である磁性重合体粒子である。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子の粒子内部に前記磁性粉が局在している磁性重合体粒子である。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の磁性重合体粒子を含む水分散体である。
【0018】
請求項7に係る発明は、液体を収容する液体収容手段と、前記液体を保持する液体保持手段と、該液体保持手段に前記液体を供給する液体供給手段と、を有し、
前記液体収容手段に請求項6に記載の水分散体を収容するカートリッジである。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の水分散体を画像形成用記録液として用いた画像形成装置である。
【0020】
請求項9に係る発明は、A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体を含むエチレン性不飽和単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋樹脂とを、(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液に、重合開始剤及び表面が疎水化処理された磁性粉を含有させ混合物を作製する混合物作製工程と、
前記混合物を塩が溶解され且つ分散安定剤を加えた水性媒体中に分散して懸濁重合する懸濁重合工程と、
を有する磁性重合体粒子の製造方法である。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法におけるエチレン性不飽和単量体が、さらにC質量部のカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、
前記混合液が、(A+B+C+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液である磁性重合体粒子の製造方法である。
【0022】
請求項11に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法におけるエチレン性不飽和単量体と非架橋樹脂との混合液に、前記懸濁重合の重合温度以上の沸点を有する有機溶剤を含有させる磁性重合体粒子の製造方法である。
【0023】
請求項12に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における非架橋樹脂の一部または全部に、前記磁性粉をあらかじめ分散させて前記混合液に磁性粉を含有させる磁性重合体粒子の製造方法である。
【0024】
請求項13に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における疎水化処理が、カップリング剤による表面被覆処理である磁性重合体粒子の製造方法である。
【0025】
請求項14に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における塩が、無機塩である磁性重合体粒子の製造方法である。
【0026】
請求項15に係る発明は、請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法における分散安定剤が、無機粉体である磁性重合体粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、水分散性が良好で、紙やフィルムへの定着性が良好な磁性重合体粒子を得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに良好な水分散性を得ることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに良好な水分散性を得ることができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、水中での重合体粒子の膨潤を引き起こすことなく良好な定着性を確保することができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに良好な定着性を確保することができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、粒子特性にばらつきのない磁性重合体粒子が良好な状態で分散した水分散体を得ることができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、含まれる磁性重合体粒子の分散性が良好で定着性に優れた水分散体の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性を高めることができる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、定着性に優れた高画質の画像形成を維持することができる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、所望の含有率で磁性粉をばらつきを抑制して(均一に)分散し、良好な水分散性及び定着性を有する磁性重合体粒子を簡易にかつ良好な収率で製造することができる。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに磁性重合体粒子の水分散性を高めることができる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、重合を阻害することなく粒子中の磁性粉の分散性を高めることができる。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに磁性重合体粒子の定着性を高めることができる。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに粒子中の磁性粉の分散性を高めることができる。
請求項14に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、磁性重合体粒子の製造において良好な収率を得ることができる。
請求項15に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、重合中における粒子同士の凝集を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
<磁性重合体粒子>
本発明の実施の形態に係る磁性重合体粒子は、主として磁性の印刷インクなどの水系分散体に用いられる粒子状の磁性重合体である。したがって、一定以上の磁力を保持しつつ、水などの水性媒体中にばらつきを抑制して(均一に)分散させることが可能なものである。
なお、上記磁性重合体粒子とは、磁性粉が重合体中に分散されてなる磁性粉分散粒子で構成されるものである。
【0029】
上記水性媒体中への良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基を存在させることが有効である。このため、水性媒体に対して安定である粒子を構成する重合体の架橋成分が水酸基を有していることが望ましい。
【0030】
一方、前記水系分散体を画像形成用の記録液として用いる場合、前記磁性重合体粒子により構成される画像を記録媒体に定着させる必要がある。該定着には熱定着が好適に用いられるが、磁性重合体粒子がほとんど架橋成分であると良好な定着性が得られない場合がある。
【0031】
本発明では、重合体としてエチレン性不飽和単量体の架橋重合体に加えて非架橋重合体を用い、架橋重合体を水酸基を有するエチレン性不飽和単量体の架橋重合体とした場合に、水性媒体における分散性と重合体粒子の安定性および定着性との視点から、最適な水酸基量と架橋重合体及び非架橋重合体の成分比の範囲とを検討した。さらに本発明では、重合体粒子に一定量の磁性粉を含むが、該磁性粉の粒子中での分散性、含有量との関係からも前記水酸基量および成分比が最適となる範囲を見出した。
【0032】
本実施形態における重合体は、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と非架橋重合体とで構成されるが、この場合、架橋重合体をエチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含んで重合したものとし、これに非架橋重合体を含ませることにより、記録媒体に対する良好な定着性が確保できる。
なお、上記定着性とは熱により軟化して記録媒体に接着することを意味し、具体的には、50℃以上の加熱により軟化することをいう。
【0033】
この場合、前記磁性重合体粒子中に磁性粉が含まれるが、該磁性粉が定着の際粒子表面に露出していると、ばらつきが抑制された(均一な)定着が困難になり、また定着後も画像表面の凹凸が問題となる場合がある。したがって、前記定着性を良好とするためには、できる限り磁性粉は粒子内部に局在化していることが望ましい。
ここで、上記「粒子内部に局在化」とは、少なくとも粒子表面から深さ0.1μmの範囲には磁性粉が存在しない(「存在しない」とは含有率が10質量%以下であることをいう)ことを意味する。
【0034】
一方、前記磁性重合体粒子における水酸基量は、磁性粉の含有量によって異なるので、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量として定義されるものであり、本発明においては、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲であることが必要である。
【0035】
水酸基量が0.1mmol/gに満たないと、重合体粒子の水性媒体への分散性が悪くなる。また、5.0mmol/gを超えると、水中での重合体粒子の膨潤性が大きくなり操作性が悪くなる。
水酸基量は、0.2〜4.0mmol/gの範囲であることが望ましく、0.3〜3.0mmol/gの範囲であることがより好適である。
【0036】
また、前記水性媒体中へのさらに良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基に加えてカルボキシル基を存在させることが有効である。このためには、粒子を構成する重合体中の架橋成分が水酸基及びカルボキシル基を有していることが望ましい。具体的には、前記架橋重合体をエチレン性不飽和単量体が、さらにカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体をさらにカルボキシル基をも含まない疎水性単量体とすることが望ましい。
【0037】
この場合の磁性重合体粒子における水酸基量及びカルボキシル基量は、前記に準じて、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量及びカルボキシル基量として定義され、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲、カルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲であることが望ましい。
【0038】
すなわち、まず水酸基量については、前記カルボキシル基を含まない場合に準じた範囲とすることで、重合体粒子の水性媒体への良好な分散性、膨潤性抑制が維持される。また、この場合も水酸基量は、0.2〜4.0mmol/gの範囲であることがより望ましく、0.3〜3.0mmol/gの範囲であることがさらに好適である。
【0039】
一方、カルボキシル基量が前記範囲にあると、水酸基に対して少ない官能基数にもかかわらず良好な水性媒体への分散性、膨潤抑制効果が得られ、水酸基量の変動に対してもこれらの特性を維持できる。
カルボキシル基量は、0.008〜0.3mmol/gの範囲がより望ましく、0.01〜0.1mmol/gの範囲であることがさらに好適である。
【0040】
上記水酸基量は、一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記重合体に無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を一定量加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量を求めることができる。
【0041】
一方、カルボキシル基量も一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記重合体に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を一定量加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量を求めることができる。
【0042】
カルボキシル基が後述する塩構造(−COO−Y+:ここでY+はアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン、もしくはアンモニウムなどの有機カチオンを示す)を形成している場合は、塩酸等の酸で塩をカルボン酸に変換した後、上述の滴定を行いカルボキシル基量を求めることができる。
すなわち、本実施形態におけるカルボキシル基量とは、カルボキシル基が塩構造を形成している場合には、該塩構造に寄与しているカルボキシル基を含めたカルボキシル基量をいう。
【0043】
前記架橋重合体の含有率は、磁性粉を含まない前記重合体全体の0.5〜49.5質量%の範囲であることが望ましい。水酸基等を有する架橋重合体の含有率を上記範囲とすることにより、水中での重合体粒子の膨潤を引き起こすことなく良好な定着性を確保することができる。
上記架橋重合体の含有量は1〜49質量%の範囲であることがより望ましく、5〜25質量%の範囲であることがさらに好適である。
【0044】
上記架橋重合体の含有量は、架橋重合体及び非架橋重合体のテトラヒドロフラン(THF)に対する溶解性の違いを利用して求めることができる。すなわち、前記磁性重合体粒子をTHFを用いて、溶解分(非架橋重合体含有分)と不溶分(架橋重合体含有分)とに分離してそれぞれの質量を測定して求めることができる。
【0045】
具体的には、まず磁性粉の含有率がC質量%である磁性重合体粒子約1.0g(Ag)を秤量する。これにTHF50gを加えて20℃で24時間静置する。これを遠心分離で分け、JIS規格(JIS P3801)5種Cの定量用ろ紙を用いてろ過する。このろ液の溶剤分を真空乾燥し樹脂分である残査量(Bg)を計測する。この残査量がTHF溶解分である。
【0046】
上記より、THF不溶分は下記式(1)より求められる。
THF不溶分(g)=〔A−(A×C/100)〕−B ・・・ 式(1)
したがって、架橋重合体の含有率(%)は、これを重合体全体の質量である〔A−(A×C/100)〕で除すことにより下記式(2)により算出される。
架橋重合体の含有率(%)={1−B/〔A−(A×C/100)〕}×100 ・・・式(2)
【0047】
また、本実施形態における磁性重合体粒子における磁性粉の含有率は、2.5〜50質量%の範囲であり、3.0〜40質量%の範囲であることが望ましく、5.0〜30質量%の範囲であることがより好適である。
含有率が2.5質量%未満では、必要な磁力を得ることができない。50質量%を超えると、磁性粉の粒子中での均一分散性や重合体粒子の分散安定性が得られなくなる。
【0048】
本実施形態において、前記磁性粉は磁性重合体粒子中に均一に分散されていることが望ましい。ただし、上記均一に分散されているのは、粒子中での前記局在化した領域に関してである。またここで、分散に関する「均一」とは、系内に磁性粉の1次粒子が十数個集まった程度の大きさの凝集体が存在しないことをいう。以下も同様である。
この場合、磁性粉の含有率の粒径依存性が少ないこと(粒径により磁性粉の含有率が大きく変動しないこと)が好ましい。具体的には、個数平均粒径が2μmの磁性重合体粒子の磁性粉含有率(P質量%)と、5μmの磁性重合体粒子の磁性粉含有率(Q質量%)との比の(P/Q)が0.5以上であることが望ましく、0.6〜1.0の範囲であることがより好適である。粒径によらず磁性粉の含有率を上記一定範囲とすることにより、例えば磁性重合体粒子をマグネトグラフィ等に用いた場合に、現像性のコントロールがより行いやすくなるなどのメリットがある。
【0049】
また、粒子表面の磁性粉の存在状態は、表面の電子顕微鏡観察により確認することができ、本発明の磁性重合体粒子では、観察された重合体粒子すべての表面に飛び出した磁性粉が見られないことが望ましい。この観点からも、本願における磁性重合体粒子では、重合体が水酸基を有していること、及び非架橋重合体を含んでいることが有効に寄与している。
【0050】
本実施形態における磁性重合体粒子は粒子状であるが、個数平均粒径が0.5μm以上であることが望ましい。具体的には0.5〜5μmの範囲であることがより望ましく、1.0〜4.0μmの範囲であることがさらに好適である。
個数平均粒径が0.5μm以上であると、取り扱いやすく、後述する製造方法で水酸基の導入量や磁性粉の含有量の制御を容易に行うことができる。
【0051】
なお、上記個数平均粒径は、乾燥粒子を光学顕微鏡または電子顕微鏡にて写真撮影し、その中から無作為に選んだ100個から200個の粒子の粒子径を各々測定し、それらの合計を個数で除した値である。
【0052】
本実施形態における磁性重合体粒子は、水分散性に優れている。水分散性の評価は、重合体粒子の質量の20倍量の水に対し該磁性重合体粒子を投入し、これを攪拌したときの粒子状態の観察により行うことができる。この場合、前記水を収容する容器としては、開口面積が1〜10cm2程度のガラス容器を用いる。この評価において、磁性重合体粒子は、攪拌後に重合体粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に良好に分散していることが望ましい。
【0053】
本実施形態において、磁性重合体粒子がその粒子表面および内部にカルボキシル基を有する場合には、その一部または全部が塩構造を形成していることが望ましい。特に、水酸基量が少ない粒子の場合は上記塩構造を形成していることが水分散性に有効である。
ここで、前記塩構造とは、カルボキシル基の水素がアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンもしくはアンモニウムなどの有機カチオンに置換され、カルボン酸塩を形成していることを意味する。本発明においては、磁性重合体粒子におけるカルボキシル基の一部が塩構造を形成してもよいし、全部が塩構造を形成していてもよいが、全部が塩構造を形成していることがより好適である。
【0054】
本実施形態に用いる磁性粉、エチレン性不飽和単量体等の具体的内容は、後述する本発明の実施の形態に係る磁性重合体粒子の製造方法において説明する。
本発明の磁性重合体粒子の製造方法は、特に制限されず、乾式の溶融混練粉砕法により製造してもよいし、各種湿式の製造方法により製造してもよいが、後述する本発明の磁性重合体粒子の製造方法により製造することが、小粒径の重合体粒子を得る観点等から好ましい。
【0055】
<磁性重合体粒子の製造方法>
本発明者等が前述の磁性重合体粒子を得るため、その製造方法について検討した結果、疎水性単量体と、水酸基を有する単量体とを混合して水中で懸濁重合する場合には、重合中に粒子同士が凝集しやすく、また所望の共重合比の重合体を得ることが難しいということがわかった。その理由は、前記水酸基を有する単量体が、水中に単量体混合物として分散された油滴から水中にも拡散し、油滴以外の水中でも重合してしまうためであった。
【0056】
そして、重合体として疎水性成分を含む場合には、磁性粉表面が比較的親水性であることから、重合体粒子中に磁性粉が含まれにくくなり、さらに、重合体粒子中で疎水性単量体重合成分と親水性単量体重合成分とが相分離すると、それに伴い磁性粉の分散性も不均一化する傾向があった。また、粒子中の水酸基量が少ない場合、得られた重合体粒子の水への再分散性が低下するという傾向があった。
【0057】
本発明者等は、上記問題に対し、(1)単量体混合物を水系媒体中に安定で均一な懸濁粒子として存在させること、(2)磁性粉の単量体混合物中での分散性を向上させること、(3)これらの粒子を重合中に凝集させないようにすること、の3つの観点から改良を試みた。
【0058】
まず、前記(1)に対しては、単量体の混合量について、A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋重合体とを、(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合することにより、水系媒体中で安定な懸濁粒子を形成することが可能となることがわかった。
【0059】
また、前記(2)に関しては、磁性粉の表面を疎水化処理することで対応可能となった。前記のように磁性粉の表面は基本的に親水性であるため、疎水化処理を行うことにより疎水性単量体に対する親和性を高めることができ、磁性粉の粒子中での分散均一性及び含有量を高めることができた。さらに、前記非架橋樹脂の一部または全部に磁性粉をあらかじめ分散することにより、磁性粉の粒子内部への局在化が促進されることもわかった。
【0060】
さらに、上記の場合でも懸濁粒子から水性媒体中への単量体(磁性粉を含む場合もある)の拡散を防止するため、水性媒体中に塩を溶解させ、塩析効果により親水性単量体を含む単量体混合物を懸濁重合系の油層中に配置させることができた。
【0061】
一方、前記(3)に対しては、上記水性媒体中への塩の溶解が懸濁重合中に発生する乳化重合の発生を抑制することから、粒子の凝集にも効果があるといえる。そしてさらに、水性媒体中に分散安定剤を加えることにより、粒子の凝集同士の凝集が抑えられることが判明した。
そして、前記(1)〜(3)によって所望の性能を有する磁性重合体粒子が得られる。
【0062】
すなわち本発明においては、水酸基を有する単量体及び水酸基を有しない疎水性単量体と、架橋剤と、非架橋重合体との混合量の調整、磁性粉表面への疎水化処理、水性媒体中への塩の溶解及び分散安定剤の添加の4つの条件が満たされて初めて前記(1)〜(3)の作用が発揮され、親水性単量体、疎水性単量体及び磁性粉をばらつきを抑制した(均一な)状態で含む懸濁粒子中での安定した重合反応が可能となった。
そして、このようにすることにより、所望の含有率で磁性粉をばらつきを抑制して(均一に)分散し、良好な水分散性及び定着性を有する磁性重合体粒子を簡易にかつ良好な収率で製造することを実現した。
【0063】
以下、本発明の水酸基含有磁性重合体粒子の製造方法について、実施形態により詳細に説明する。なお、本実施形態におけるエチレン性不飽和単量体とは、ビニル基などのエチレン性不飽和基を有する単量体をいう。そして、下記水酸基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、および水酸基を有しない、あるいは水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体ともに前記エチレン性不飽和単量体に含まれる。
【0064】
(混合物作製工程)
−水酸基を有する単量体−
本実施形態で用いる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す表現であり、以下においてこれに準ずる。
【0065】
これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0066】
−カルボキシル基を有する単量体−
前述のように、本発明の磁性重合体粒子は重合体中に水酸基に加えてカルボキシル基を有していることが望ましい。この場合には、エチレン性不飽和単量体として、さらにカルボキシル基を有する単量体を用いることが望ましい。
【0067】
本実施形態で用いるカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノマレエートおよびメタクリロイルオキシエチルモノスクシネートなどを挙げることができる。
これらの中では、メタクリロイルオキシエチルモノフタレートを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合体粒子中の磁性粉の分散、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0068】
−水酸基を有しない疎水性単量体−
水酸基を有しない疎水性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;炭素数1〜18(より好適には、2〜16)のアルキル基若しくはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等);炭素数1〜12(より好適には、2〜10)のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エキトシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アリクレート、n−ブトキシメチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル;エチレン;塩化ビニル;酢酸ビニル;などを挙げることができる。
【0069】
これら中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが望ましく、更には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に好適である。
【0070】
なお、前記エチレン性不飽和単量体がカルボキシル基を有する単量体を含む場合には、上記水酸基を有しない疎水性単量体はさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体とするが、このカルボキシル基をも有しない疎水性単量体としては、実質、上記水酸基を有しない疎水性単量体がそのまま用いられる。
【0071】
前記水酸基を有する単量体と共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、1〜99質量%の範囲であることが望ましく、5〜95質量%の範囲であることがより望ましい。
また、前記エチレン性不飽和単量体として、水酸基を有する単量体に加えてカルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、これらと共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、20〜99質量%の範囲であることが望ましく、50〜90質量%の範囲であることがより好適である。
含有量を上記範囲とすることにより、粒子間、粒子内でばらつきが抑制された(均一な)重合が可能となり、重合体粒子としても前記水に対する分散性向上の効果を得ることができる。
【0072】
また、その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド類、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらも必要に応じて、前記水酸基を有する単量体及び疎水性単量体に加えて用いることができる。
【0073】
−架橋剤−
本発明では、後述する水性媒体に分散される反応性の混合物(前記エチレン性不飽和単量体等を含むもの)に、架橋剤を混合することが必要である。単量体混合液中へ架橋剤を添加することにより、重合中の凝集が抑制され、分散安定性が確保される。さらに、単量体混合液中への架橋剤の添加量を制御することにより、水酸基に起因する水に対する膨潤性をコントロールすることもできる。
【0074】
用いる架橋剤としては、公知の架橋剤を選択して用いることができ、好適なものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより望ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好適である。
架橋剤の添加量としては、全単量体成分100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲であることが望ましく、更には0.5〜50質量部の範囲であることがより好適である。
【0075】
−非架橋樹脂−
本実施形態に用いられる非架橋樹脂は、熱、紫外線、電子線等の外部エネルギー、あるいは溶剤蒸気、重合体からの溶剤揮発等で紙、フィルム等の被定着媒体に粒子を定着させる重合体であれば特に制限されない。なお、本発明の磁性重合体粒子には非架橋重合体が含まれるが、該非架橋重合体は上記非架橋樹脂を原材料とするものであり、後述の懸濁重合工程において非架橋樹脂が他の単量体と反応しない場合は、該非架橋樹脂がそのまま非架橋重合体となる。
【0076】
非架橋樹脂としては、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;などの単独重合体又は共重合体を例示することができる。
【0077】
特に好適な重合体としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィン、ワックス類を挙げることができる。
【0078】
これら中でも、特にポリエステルを用いて非架橋重合体とした場合には加熱定着に有効である。ポリエステルとしては、例えば、ビスフェノールAと多価芳香族カルボン酸とを主単量体成分とした重縮合物よりなる線状ポリエステル樹脂が好適に使用できる。
また、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体やスチレン−メタクリル酸アルキル共重合体も、物性の制御が容易で、後述の磁性粉の混合分散処理がしやすい点で好適に用いられる。
【0079】
上記非架橋樹脂としては、分子量(重量平均分子量)が5.0×103〜1.0×106の範囲のものを用いることが望ましく、1.0×104〜5.0×105の範囲のものを用いることがより好適である。また、ガラス転移点(Tg)は30〜90℃の範囲であることが望ましく、40〜80℃の範囲であることがより好適である。
【0080】
前述のように、本発明においては、A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋樹脂とを(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合することが必要である。具体的には、用いる非架橋樹脂の量を100質量部(E質量部)とした場合、A+B+Dを5〜99質量部の範囲とすることが望ましく、10〜90質量部の範囲とすることがより好適である。
【0081】
また、水酸基を有する単量体量(A質量部)と、水酸基を有しない疎水性単量体(B質量部)の比(A/B)は、95/5〜5/95の範囲とすることが望ましく、90/10〜10/90の範囲とすることがより好適である。
【0082】
さらに、エチレン性不飽和単量体として前記カルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、混合するカルボキシル基を有する単量体量をC質量部としたとき、(A+B+C+D)<Eなる関係を満たすように混合することが望ましい。具体的には、用いる非架橋重合体の量を100質量部(E質量部)とした場合、A+B+C+Dを5〜99質量部の範囲とすることが望ましく、10〜90質量部の範囲とすることがより好適である。
【0083】
また、水酸基を有する単量体量(A質量部)と、カルボキシル基を有する単量体量(C質量部)との比(A/C)は1000/1〜10/1の範囲とすることが望ましく、1000/5〜10/1の範囲とすることがより好適である。
この場合、水酸基を有する単量体量(A質量部)及びカルボキシル基を有する単量体量(C質量部)と、水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体(B質量部)との比((A+C)/B)は、95/5〜5/95の範囲とすることが望ましく、90/10〜 10/90の範囲とすることがより好適である。
【0084】
−磁性粉−
磁性粉としては、磁性を示すMO・Fe2O3またはM・Fe2O4の一般式で表されるマグネタイト、フェライト等を好適に用いることができる。ここで、Mは2価あるいは1価の金属イオン(Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li等)であり、Mとしては単独あるいは複数の金属を用いることができる。例えばマグネタイト、γ酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトの如き鉄系酸化物を挙げることができる。中でも安価なマグネタイトをより好適に用いることができる。
【0085】
また、他の金属酸化物として、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb等の金属を単独あるいは複数用いた非磁性の金属酸化物および上記磁性を示す金属酸化物を使用できる。例えば非磁性の金属酸化物として、Al2O3、SiO2、CaO、TiO2、V2O5、CrO2、MnO2、Fe2O3、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y2O3、ZrO2系等を使用することができる。
【0086】
後述する疎水化処理前の磁性粉の平均一次粒子径は、0.02〜2.0μmの範囲であることが望ましい。磁性粉の平均一次粒子径が上記範囲にあると、磁性粉が凝集し難く、重合性単量体中への均一な分散が容易となる。
【0087】
本発明においては、磁性粉はその表面が疎水化処理されている必要がある。疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行うことができるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが好適である。
【0088】
前記カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好適に用いられるのはシランカップリング剤であり、下記一般式(1)で示される構造のシラン化合物が特に好適である。
一般式(1): RmSiYn
(上記式中、Rはアルコオキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【0089】
具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0090】
特に、CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3(式中、pは2〜20の整数を表し、qは1〜3の整数を表す。)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤、C6H5−CrH2r−Si−(OCsH2s+1)3(式中、rは2〜20の整数を示し、sは1〜3の整数を示す。)で示されるアラルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して磁性粉を疎水化処理するのが好ましい。なお、ここで使用される“アラルキル” は、芳香族構造および脂肪族構造の両方を有する炭化水素基を意味する。即ち、アルキル基の水素原子の代わりに置換または未置換のアリール基が置換されている。そのアラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メシチル基等が挙げられる。
【0091】
上記各式におけるp、rが上記範囲にあると、磁性粉同士の合一を回避しつつ所望の疎水性を付与することができ、重合体粒子中に磁性粉を均一に分散させることができる。また、q、sが前記範囲にあると、シランカップリング剤の反応性がよく、所望の疎水化を行うことができる。
【0092】
前記のうちでは、特に、CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することが、重合性単量体中での良好な分散性を得る上で望ましい。
【0093】
磁性粉の疎水化処理は、例えばシランカップリング剤処理の場合は、磁性粉体を撹拌によりクラウド状としたものに気化したシランカップリング剤を反応させる乾式処理、又は、磁性粉体を溶媒中に分散させシランカップリング剤を滴下反応させる湿式法、あるいは、磁性粉体を溶媒中に分散させシランカップリング剤を混合した後ロータリーエバポレータのごとき蒸留装置で溶媒を蒸発させ、シランカップリング剤が付着した磁性粉体を熱処理する方法等の一般に知られた方法で処理することができる。また、前記の疎水化処理も併用可能である。
【0094】
前記疎水化処理での磁性粉に対する疎水化剤の処理量は、磁性粉100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲が望ましく、0.1〜10質量部の範囲とするのがより好適である。
【0095】
疎水化処理された磁性粉は、後述するように前記重合性単量体等の混合物に直接混合されても良いが、非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。この場合、非架橋樹脂の全量を上記分散に使用しても良いし、一部を磁性粉の混合分散に使用して残りを重合性単量体等の混合液に後添加しても良い。さらに、磁性粉の混合分散に使用する非架橋樹脂と、後添加する非架橋樹脂とは、同種のものであっても異なったものであっても良い。前述のように、前記非架橋樹脂の一部または全部に磁性粉をあらかじめ分散することにより、磁性粉の粒子内部への局在化を促進できる効果がある。
【0096】
磁性粉の含有量としては、求める磁力によって決定されるのであるが、本実施形態においては、磁性重合体粒子構成成分の総量に対して2.5〜50質量%の範囲とすることが望ましく、5〜30質量%の範囲とすることがより好適である。含有量を上記範囲とすることにより、十分な磁力が得られ、また重合体粒子として水性媒体に対する分散安定性を高めることができる。
【0097】
−重合開始剤−
本実施形態で使用する重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤等が好適なものとして挙げられるが、中でも油溶性開始剤が望ましい。
油溶性アゾ開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル等が挙げられる。油溶性過酸化物系開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、過酸化p−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化炭酸ジイソプロピル、過酸化ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシル、過酸化アセチルシクロヘキシルスルフォニル、過イソ酪酸t−ブチル、過ビバリン酸t−ブチル、過2−エチルヘキサン酸t−ブチル、過酸化t−ブチル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化ジクミル、過酸化メチルエチルケトン、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0098】
上記重合開始剤の添加量は特に制限されないが、全単量体成分100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲であることが望ましく、0.1〜5質量部であることがより好適である。
【0099】
−その他の添加剤−
本実施形態における単量体等の混合液には、必要に応じて有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、水に比較的溶解しにくく、沸点が後述の懸濁重合の重合温度よりも高く、重合を阻害しない有機溶媒であれば原理的には使用可能であり、上記単量体と相溶することが望ましい。例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類などが挙げられるがこれらに制限されない。
炭化水素類としては、脂肪族炭化水素類や芳香族炭化水素類が挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、石油系炭化水素、ナフテン系炭化水素などが挙げられ、芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、ドデシルベンゼンなどが挙げられる。
【0100】
前記アルコール類としては、炭素数8〜24(好適には12〜22)の脂肪族アルコール等が使用でき、非環式脂肪族アルコール及び脂環式アルコールの何れでもよい。また、天然アルコール及び合成アルコール(チーグラーアルコール及びオキソアルコール等)の何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0101】
非環式脂肪族アルコールとしては、飽和脂肪族アルコール及び不飽和脂肪族アルコール等が用いられる。非環式の飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、イソアミルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール及びテトラコセニルアルコール等が挙げられる。また、非環式の不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、テトラコセニルアルコール、ガドレイルアルコール及びリノレイルアルコール等が挙げられる。
【0102】
脂環式アルコールとしては、単環式脂肪族アルコール及び複環式脂肪族アルコール等が用いられる。単環式脂肪族アルコールとしては、例えば、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール及びステアリルシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。また、複環式脂肪族アルコールとしては、例えば、アダマンチルアルコール及びジシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
【0103】
前記ケトン類としては、炭素数4〜22(好適には6〜12)の脂肪族ケトン、芳香族ケトン等が使用でき、脂肪族ケトンでは非環式脂肪族ケトン及び脂環式ケトンの何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
前記エーテル類としては、炭素数6〜22(好適には7〜12)の脂肪族エーテル、芳香族エーテル等が使用でき、脂肪族エーテルでは非環式脂肪族エーテル及び脂環式エーテルの何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、メチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは数種類を混合して使用することができる。
【0104】
本実施形態の磁性重合体粒子には、更にポリマーの着色を目的とした染料、有機顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどを含有させることができる。その場合には磁性粉が分散された前記単量体等の混合物に前記各添加剤を直接混合することもできるが、特に有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を混合する場合は、前記磁性粉の場合に準じて、非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。この場合、非架橋樹脂の全量を上記分散に使用しても良いし、一部を顔料の混合分散に使用して残りを重合性単量体等の混合物に後添加しても良い。さらに、顔料の混合分散に使用する非架橋樹脂と、後添加する非架橋樹脂とは、同種のものであっても異なったものであっても良い。
【0105】
以上の各単量体等を含む混合物の作製方法としては、例えば、まず前記エチレン性不飽和単量体、非架橋樹脂、重合開始剤及びその他の必要な成分とを混合して単量体等の混合液を作製する。混合の方法は特に制限されない。
また、上記混合液への磁性粉の分散には公知の方法が適用できる。すなわち、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用できる。なお、あらかじめ単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性粉を分散させる場合には、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用できる。
【0106】
なお、混合物の作製方法としては、上記に限られず、例えば前記混合液作製の際に非架橋樹脂として磁性粉を混合したものを用いて、この段階で磁性粉を含有させてもよいし、前記単量体、非架橋樹脂、磁性粉等を一度に混合して混合物としてもよい。
【0107】
(懸濁重合工程)
−水性媒体−
本実施形態における水性媒体としては、水、若しくは水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を加えたものが好適に用いられ、この中でも水単独が特に望ましい。水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、懸濁させる単量体の性状にもよるが、全溶媒に対し30質量%以下であることが望ましく、10質量%以下が特に好適である。添加量を30質量%以下とすることにより、分散安定性を良好に保つことができる。
【0108】
−塩−
本発明においては、上記水性媒体に塩を溶解することを必須の要件とする。塩析効果によって乳化重合の反応が抑制され、懸濁粒子の分散安定性が得られ、良好な収率を実現することができる。
【0109】
溶解させる塩としては、水溶性の無機或いは有機塩類とも用いることができるが、特に無機塩類が前記塩析効果を有効に発揮できるため好適である。該無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられ、これらの中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウムがより望ましく、更には塩化ナトリウムが特に好適である。
【0110】
塩の添加量としては、分散安定性の観点から、分散媒体全体に対し5質量%以上溶解させることが望ましく、10質量%以上であることがより望ましく、15質量%以上であることが特に望ましい。
溶解量を5質量%以上とすることにより、前記塩析効果が過不足なく発揮され、乳化重合の発生を抑えることができる。
【0111】
−分散安定剤−
本実施形態においては、さらに前記水性媒体中に分散安定剤を存在させることを必須の要件とする。上記分散安定剤としては、公知の分散安定剤が使用できるが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の無機粉体を用いることが、懸濁粒子の分散性を高める上で有効であり、粒子同士の凝集を抑えることができるため好適である。また、上記無機粉体表面に表面改質剤がコーティングされていることが分散粒子の安定性を高める点で望ましい。さらに、前記無機紛体に加え、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等の界面活性剤を併用することもできるが、界面活性剤を併用する場合は、臨界ミセル濃度未満の添加が望ましい。
【0112】
上記分散安定剤の添加量は特に制限されないが、前記単量体及び磁性粉等を含む混合物100質量部に対して1〜100質量部の範囲であることが望ましく、2〜90質量部の範囲であることがより好適である。1質量部以上であることにより、良好な分散状態とすることができ、一方、100質量部以下であることにより微細粒子の派生を抑制し、懸濁粒子の粒度分布をシャープにすることができるという利点がある。
【0113】
また、前記水性媒体には、懸濁粒子の粒度調節の目的で増粘剤を加えることもできる。該増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリカルボン酸塩を添加することができる。
これらの増粘剤を用いた場合、水性媒体の粘度は100〜10000mPa・sの範囲とすることが望ましい。
【0114】
前記単量体等を含む混合物の前記塩等を含む水性媒体(以下、「分散媒体」という場合がある)への懸濁は、以下のようにして行うことができる。
すなわち、前記塩を溶解し且つ分散安定剤を存在させた水性媒体中に、親水性単量体、疎水性単量体、非架橋樹脂、磁性粉、重合開始剤、架橋剤等を加えた混合物を投入し、懸濁させる。懸濁の方法としては、公知の懸濁方法が利用できる。例えば、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ水性媒体中に単量体等を懸濁させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で懸濁する方法、超音波によって懸濁する方法等の機械的な懸濁方法が挙げられる。
【0115】
その他、上記の単量体等を添加した液体を準備し、それを多孔質膜から水性媒体中に押し出す、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁することもできる。
なお、懸濁される混合物と分散媒体との混合質量比(混合物/分散媒体)は10/100〜100/100の範囲とすることが望ましく、また、懸濁された粒子の個数平均粒径は0.5〜5.0μmの範囲とすることが望ましい。
【0116】
本実施形態においては、前記懸濁させた単量体及び磁性粉等を含む粒子を懸濁重合させることにより磁性重合体粒子を得る。重合反応は、大気下だけでなく、加圧下においても行うことができるが、これらその他の反応条件は、必要に応じて適用されるもので、特に限定されるものではない。
【0117】
反応条件としては、例えば、大気圧下で、前記懸濁粒子が分散した懸濁液を攪拌しながら、40〜100℃の反応温度で1〜24時間反応させることが、80%程度以上の高い収率で重合体粒子を得る等の観点から好適である。
【0118】
以上述べた方法により磁性粉を含む磁性重合体粒子が得られるが、上記例示した本発明の製造方法においては、塩が溶解され且つ無機粉体を主成分とする分散安定剤が加えられた水性媒体中に、単量体等の混合物を分散することにより、0.5μmに満たない分散液滴の生成が抑制されるため、粒径が0.5μmに満たない小粒径の粒子はほとんど形成されない。このため、本発明の磁性重合体粒子の製造方法は、水酸基量やカルボキシル基量の制御のしやすさの点だけでなく、前記本発明の磁性重合体粒子として好適な個数平均粒径が0.5μm以上のものを容易に得ることができる点でも優れている。
【0119】
こうして得られた重合体粒子は、分散安定剤を除去した後、そのまま洗浄、乾燥してもよいが、前記エチレン性不飽和単量体がカルボキシル基を有する単量体を含む場合、すなわち、重合体粒子中に水酸基に加えてカルボキシル基を有している場合には、さらに塩基性化合物で処理することが望ましい。これにより、重合体粒子中のカルボキシル基が塩構造に変化する。
【0120】
塩構造を形成する方法は、例えば磁性重合体粒子を、水もしくは水と水溶性有機溶剤との混合液、もしくは有機溶剤の存在下、塩基性化合物で処理すればよい。本実施形態においては、磁性重合体粒子の水系分散液に塩基性化合物を添加して処理を行ってもよいし、塩基性化合物が溶解した水系溶液に磁性重合体粒子を混合して処理してもよい。
【0121】
前記塩基性化合物としては、無機塩基性化合物、有機塩基性化合物のいずれをも使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基性化合物;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;その他、塩基性のトリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、モルホリン等のアルカノールアミン類;等が挙げられる。
これらの塩基性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、処理後の塩基性化合物の除去のしやすさから、無機塩基性化合物を用いることが望ましい。
【0122】
本実施形態において、上記塩基性化合物の使用量は、磁性重合体粒子の水系分散液の0.1〜20質量%の範囲とすることが望ましい。また、前記塩基性化合物による処理で得られる磁性重合体粒子においては、カルボキシル基が全て塩構造を形成していることが望ましいが、通常は前記使用量の範囲において、塩基性化合物は重合体粒子のカルボキシル基量に対して過剰となるように設定される。
【0123】
この際、磁性重合体粒子の水系分散液のpHは9以上であることが好適であり、より好適には11以上である。処理温度には特に制限はないが、50℃〜80℃程度に加温しても良い。処理時間には制限はないが、通常0.5〜5時間である。さらに、処理時の磁性重合体粒子の濃度は特に制限はないが、通常、1〜50質量%の範囲である。処理時間中に磁性重合体粒子が沈降する場合は、適度の撹拌を行うことが好ましい。そして、処理後は水洗により前記塩基性化合物が除去される。
【0124】
以上のようにして得られた磁性重合体粒子は、重合後あるいは処理後、場合によってはメタノール等の溶媒に希釈分散させ、濾別し、更に水洗や溶剤洗浄の後、噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によって粉体として単離することができる。
【0125】
本実施形態により得られた磁性重合体粒子における水酸基量、個数平均粒径は、前記に準じた方法により求めることができる。また、前記磁性重合体粒子の製造方法により得られる重合体粒子の好適な水酸基量、個数平均粒径は、前記本発明の磁性重合体粒子において説明した内容に準ずる。
なお、個数平均粒径の測定において、凝集粒子(複数の粒子が凝集したもの、あるいは1つの粒子に粒子が付着して変形した状態となったもの)がまったく見られないことが望ましい。
【0126】
また、本実施形態における磁性重合体粒子の分子量(重量平均分子量)は、その用途によって異なるものの、非架橋重合体については、5000〜1000000の範囲が望ましく、10000〜500000の範囲がより好適である。
【0127】
なお、上記数平均分子量は、前記THFを用いて溶解分として分離した成分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。GPCは、HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)を用い、カラムは、TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定した。
【0128】
<水分散体>
本実施形態における水分散体は、前記本発明の磁性重合体粒子を水などの水性媒体中に分散させた粒子分散体である。本発明の磁性重合体粒子においては、前述のように粒子中に磁性粉がばらつきが抑制されて(均一に)分散しているため、粒子表面にほとんど磁性粉が存在しない。また、表面に水酸基を有するため、良好な水分散性を示す。このため、本発明の水分散体は、後述する分散された粒子特性がばらつきなくあるいは効率よく反映される各種の用途に用いられる。
以下、実施形態により説明する。
【0129】
水性媒体としては、前記懸濁重合工程で説明したものに準じたものを用いることができる。
水分散体の製造に当たっては、通常の水分散体に使用することのできる各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を併用してもよい。
磁性重合体粒子の水分散性は、前記に準じた方法で評価することができ、本発明により得られた磁性重合体粒子の良好な水分散性は、前記本発明の磁性重合体粒子で述べた通りである。
【0130】
本実施形態において、水分散体における分散粒子径は、平均粒子径で0.5〜5μm程度の範囲とすることが可能であるが、1〜4μmの範囲とすることが望ましい。
また、水分散体の固形分濃度は特にこれを限定するものではないが、1〜50質量%の範囲が望ましく、5〜30質量%の範囲がより好適である。
【0131】
以上、本発明の磁性重合体粒子及びその製造方法、並びに水分散体の実施形態について詳細に説明したが、本発明により得られた磁性重合体粒子及びその水分散体は、画像形成材料、磁性流体、診断薬及び医薬品担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤及び化粧品添加剤等の用途に好適に使用可能である。特に前記磁性重合体粒子では、一定量以上の磁性粉がばらつきを抑制して(均一に)分散されており、また表面の水酸基による水性媒体での分散性に優れることから、磁性インクや湿式の画像形成法に用いる画像形成材料として好適に用いることができる。さらには粒子中および粒子表面の水酸基を利用して、所望の官能基に変換するための中間体として利用することもできる。
【0132】
<カートリッジ、画像形成装置>
前記本発明の水分散体は、画像形成材料の1つである画像形成用記録液として好適に用いることができる。
上記画像形成用記録液は、記録システムにより記録媒体上に画像を表示するものとして使用される。記録システムとしては、ヘッドからインク液滴を吐出させ、機械的に記録紙上に移動させて画像を表示させるインクジェットシステム、具体的には、サーマルインクジェット、バブルインクジェット、ピエゾインクジェット、マイクロドット型インクジェット、IRIS型インクジェット、マルチノズル型インクジェット等や、磁気潜像に画像記録用粒子を現像させて被転写媒体に転写し、定着して記録上に画像を表示させるマグネトグラフィー等のいずれの方式にも使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
これらの中でも、画像形成用記録液として好適に用いられるマグネトグラフィー方式を採用した画像形成装置及びそれに用いるカートリッジの一実施形態を、図面を用いてその概略を説明する。
マグネトグラフィーは、文字や画像などのパターン状の磁気潜像を形成し、それを磁性トナーによって可視化しハードコピーを得る方式である。図1は、マグネトグラフィー方式により画像形成を行う画像形成装置の主要部の一例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、図に示すように画像形成用記録液を保持した現像ロール(液体保持手段)10を磁気記録ドラム20に接触させて画像を形成するものである。
【0134】
まず、Co−Ni系の磁性メッキを主体として作られた磁気記録ドラム20に、画像信号に応じてラインスキャン方式により磁気記録ヘッド22で磁気記録ドラム上に磁気潜像を記録する。
次に、磁気記録ドラム20に記録液を保持した現像ロール10を接触させて、前記磁気潜像を磁性重合体粒子により可視像とする。この記録液として本発明の水分散体が用いられるが、現像ロール10への記録液の供給は、貯留槽(液体収容手段)12に貯留された記録液14に一部が接触し記録液14を保持した状態で他の部分が現像ロール10に接触して記録液14を塗布する記録液塗布ロール(液体供給手段)16によって行われる。また、記録液塗布ロール16への液保持量の調整は、メータリングブレード17により行われる。
なお、図に示すように、現像ロール10、貯留槽12、記録液塗布ロール16、メータリングブレード17等は、一体となってカートリッジ40を構成している。
【0135】
次いで、磁気記録ドラム20上の可視像を転写ロール24との接触部に移動させ、同時に電圧を印加した転写ロール24と磁気記録ドラム20との圧接部に記録媒体30を挿通することにより、記録媒体上に磁性重合体粒子の可視像を転写する。転写された磁性重合体粒子の可視像は、そのまま搬送され、図示しない定着器により圧力、熱を加えられて記録媒体30に定着される。
【0136】
一方、転写後の磁気記録ドラム20上の残留トナーはブレード26により除去され、磁気記録ドラム20表面の磁気潜像は消磁ヘッド28により消去される。なお、現像後に現像ロール10表面に残った記録液は、現像ロール10表面に圧接されるクリーニングブレード18により掻き取られ、貯留槽12に回収される。
【0137】
以上に例示したマグネトグラフィー方式を採用した画像形成装置に、水を含む分散媒に小粒径の磁性重合体粒子が均一に分散した本発明の水分散体を画像形成用記録液として用いることにより、定着性に優れた高画質の画像が得られるだけでなく、非水溶媒による作業環境の汚染も発生することがない。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中に示した「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0139】
<表面処理磁性粉の作製>
(磁性粉1)
乾燥したエタノール150部に磁性粉(戸田工業社製、商品名:MTS−010、平均粒径:0.13μm)150部を加え、ここに、2.5部のシランカップリング剤(チッソ社製、商品名:フェネチルトリメトキシシラン)を加え、超音波で磁性粉を分散した。この分散液をロータリーエバポレータでエタノールを蒸留し、磁性粉を乾固させた後、150℃で5時間熱処理した。このように処理した磁性粉は水になじまず(少量を水に混合して攪拌しても水面に浮いて沈降しない、以下もこれに準ずる)、表面が疎水化されていた。これを磁性粉1とした。
【0140】
(磁性粉2)
上記疎水化処理した磁性粉600部にスチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)400部を加え、加圧ニーダーで混練して、表面が樹脂被覆処理された磁性粉2を得た。
【0141】
<実施例1>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)7部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)12部、n−ブチルメタクリレート16部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)40部、シクロヘキサノン34部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉1:33部を加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤として2,2’−アゾビス{2,4―ジメチルバレロニトリル}(和光純薬(株)製、V−65)1.0部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0142】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで5分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0143】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、目開き100μmの篩を通した。篩い通過後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Aを得た。
この磁性重合体粒子Aを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ57部で、収率は83%であった。
【0144】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
この磁性重合体粒子Aを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群A1と平均粒径3μmの粒子群A2とに分画した。
これらについて、各々熱重量分析(TGA)による加熱による重量減少量から粒子中の磁性粉含有量を算出したところ、A1では30%、A2で32%であり、概ね一致していた。なお、TGAの測定は、昇温速度10℃/分として600℃まで昇温し、600℃で10分間保持する条件として行った。
【0145】
−水酸基量−
磁性重合体粒子Aを秤量してキャップ付き試験管に入れ、あらかじめ調製した無水酢酸(和光純薬(株)製)のピリジン(和光純薬(株)製)溶液を一定量加え、95℃の温度条件で24時間加熱した。
更に、蒸留水を加えて試験管中の無水酢酸を加水分解させた後、3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みとに分けた。粒子を更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にフェノールフタレイン(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0146】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(3)に従って水酸基量(mmol/g)を算出した。
水酸基量=((B−C)×0.1×f)/(w−(w×D/100)) ・・・ 式(3)
上記式(3)中、Bはブランク実験での滴下量(ml)、Cはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、wは粒子の重量(g)、Dは粒子中の磁性粉含有率(%)である。
その結果、磁性重合体粒子Aの水酸基量は0.68mmol/gであった。
【0147】
−架橋重合体の含有率−
架橋重合体の含有率は、前述のように、THF溶解分及びTHF不溶分中の成分量を各々測定することにより求めることができる。前記磁性粉含有率が32%である磁性重合体粒子A2について、上記の方法に従って、架橋重合体の含有率を求めたところ、47%であった。
【0148】
−個数平均粒径及び粒子形状−
前述のように、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から磁性重合体粒子Aの個数平均粒径を求めたところ、2.0μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0149】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
磁性重合体粒子Aの表面の磁性粉の存在状態を、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。具体的には、倍率を10000倍として100個の粒子について表面状態を確認したところ、すべての粒子において表面に磁性粉が飛び出している状態は観察されなかった。
さらに、磁性粉の粒子内部の存在状態について透過型電子顕微鏡(TEM)を使って断面観察したところ、図2の写真に示すように、磁性粉は良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0150】
(水分散体の作製、特性)
乾燥させた磁性重合体粒子Aを1部とり、開口面積が4cm2のガラス容器に収容した20部の純水に入れ攪拌し水分散体とした。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.2μmであった。
【0151】
(定着特性)
磁性重合体粒子Aをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスとが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Aは熱に対する定着性を有することがわかった。
【0152】
<実施例2>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)55部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉2:33部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0153】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0154】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換と洗浄とを繰り返し行い、磁性重合体粒子Bを得た。
この磁性重合体粒子Bを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ60部で、収率は82%であった。
【0155】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Bを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群B1と平均粒径3μmの粒子群B2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、B1では15%、B2では16%で、概ね一致していた。
【0156】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Bの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.41mmol/g、前記磁性粉含有率が16%である磁性重合体粒子B2の架橋重合体の含有率は38%であった。
【0157】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.5μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0158】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図2に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0159】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Bを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.8μmであった。
【0160】
(定着特性)
磁性重合体粒子Bをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに1分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Bは定着性を有することがわかった。
【0161】
<実施例3>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)1部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)12部、n−ブチルメタクリレート16部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、前記磁性粉1:33部を加え、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)40部、シクロヘキサノン34部をボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤として2,2’−アゾビス{2,4―ジメチルバレロニトリル}(和光純薬(株)製V−65)1.0部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0162】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)30部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0163】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、目開き100μmの篩を通した。通過した分散液を0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、20℃(室温)で1時間攪拌した。処理後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Cを得た。
この磁性重合体粒子Cを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ53部で、収率は80%であった。
【0164】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Cを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群C1と平均粒径3μmの粒子群C2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、C1では30%、C2では32%で、概ね一致していた。
【0165】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Bの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.4mmol/g、前記磁性粉含有率が32%である磁性重合体粒子C2の架橋重合体の含有率は47%であった。
【0166】
−カルボキシル基量−
磁性重合体粒子Cを10倍量のイオン交換水に再分散し、1N塩酸を加えてpHを3にした。このまま1時間20℃(室温)で攪拌を続け、濾過後、10倍量のイオン交換水で繰り返し洗浄した。遠心分離後、60℃で凍結乾燥した。得られた重合体粒子を秤量してキャップ付き試験管に入れ、0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)を一定量加え、20〜25℃(常温)で3時間反応させた。
これを3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みとに分けた後、粒子を更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にメチルオレンジ(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mの2−プロパノール性塩酸溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0167】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(4)に従ってカルボキシル基量(mmol/g)を算出した。
カルボキシル基量=((E−F)×0.1×f)/(x−(x×G/100)) ・・・ 式(4)
上記式(4)中、Eはブランク実験での滴下量(ml)、Fはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、xは粒子の重量(g)、Gは粒子中の磁性粉含有率(%)である。
その結果、磁性重合体粒子Cのカルボキシル基量は0.05mmol/gであった。
【0168】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.0μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0169】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図3に示すように、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0170】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Cを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。これを1週間静置させ、沈降堆積した粒子を再度攪拌したところ、粒子全体が良好に水中に再分散した。再分散性に優れたものであった。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は3.2μmであった。
【0171】
(定着特性)
磁性重合体粒子Cをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Cは定着性を有することがわかった。
【0172】
<実施例4>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)0.5部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)55部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉2:33部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0173】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
【0174】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換した。0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、20℃(室温)で1時間攪拌した。処理後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Dを得た。
この磁性重合体粒子Dを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ59部で、収率は80%であった。
【0175】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Dを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群D1と平均粒径3μmの粒子群D2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、D1では15%、D2では16%で、概ね一致していた。
【0176】
−水酸基量、カルボキシル基量、架橋重合体の含有率−
実施例1及び実施例3に準じて、磁性重合体粒子Dの水酸基量、カルボキシル基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.42mmol/g、カルボキシル基量は0.01mmol/g、前記磁性粉含有率が16%である磁性重合体粒子D2の架橋重合体の含有率は39%であった。
【0177】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.1μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0178】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図3に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0179】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Dを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。これを1週間静置させ、沈降堆積した粒子を再度攪拌したところ、粒子全体が良好に水中に再分散した。再分散性に優れたものであった。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は3.2μmであった。
【0180】
(定着特性)
磁性重合体粒子Dをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Dは定着性を有することがわかった。
【0181】
<実施例5>
(磁性重合体粒子の製造)
磁性粉1を200部に非架橋のスチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)400部を加え、バンバリーミキサーで混練して、磁性粉が分散された樹脂を得た。この樹脂73部と、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)7部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0182】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤としてリン酸カルシウム(和光純薬社製)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えてリン酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換と洗浄を繰り返し行い、磁性重合体粒子Eを得た。
この磁性重合体粒子Eを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ66部で、収率は80%であった。
【0183】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Eを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群E1と平均粒径3μmの粒子群E2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、E1では15%、E2では16%で、概ね一致していた。
【0184】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Eの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.43mmol/g、前記磁性粉含有率が16%である磁性重合体粒子E2の架橋重合体の含有率は38%であった。
【0185】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.3μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0186】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図2に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0187】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Eを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.8μmであった。
【0188】
(定着特性)
磁性重合体粒子Eをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が融合し、界面が消失するとともに、スライドガラスとカバーガラスが強固に接着していた。この結果から、磁性重合体粒子Eは定着性を有することがわかった。
【0189】
<実施例6>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)26部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、この混合液に前記磁性粉2:33部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0190】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は2.0μmであった。
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換と洗浄を繰り返し、磁性重合体粒子Fを得た。
この磁性重合体粒子Bを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ56部で、収率は81%であった。
【0191】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Fを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群F1と平均粒径3μmの粒子群F2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、F1では18%、F2では20%で、概ね一致していた。
【0192】
−水酸基量、架橋重合体の含有率−
実施例1に準じて、磁性重合体粒子Fの水酸基量及び架橋重合体の含有率を測定した。その結果、水酸基量は0.6mmol/g、前記磁性粉含有率が20%である磁性重合体粒子F2の架橋重合体の含有率は52%であった。
【0193】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.5μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0194】
−粒子表面、粒子内部の磁性粉の存在状態−
実施例1に準じて、粒子表面の磁性粉の存在状態についても確認を行ったが、粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。さらに、TEMを使った断面観察においても、図2に準じた写真が得られ、磁性粉は粒子内部で良好な分散を保ったまま、中心部に局在化していた。
【0195】
(水分散体の作製、特性)
実施例1に準じて、乾燥させた磁性重合体粒子Fを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、個数平均粒径は2.8μmであった。
【0196】
(定着特性)
磁性重合体粒子Fをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士の融合が不完全で、粒子界面が残っており、スライドガラスとカバーガラスの接着力は弱く、すぐに剥がれてしまった。この結果から、磁性重合体粒子Fは定着性が不十分であることがわかった。
【0197】
<比較例1>
実施例2の磁性重合体粒子の製造において、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)55部のうちの28部をスチレン単量体(和光純薬(株)製)8部、n−ブチルメタクリレート20部に置き換えた以外は、実施例2に準じて懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Gを得た。
磁性重合体粒子Gを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ61部で、収率は83%と良好であった。また、実施例1に準じて乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.2μmであり、凝集粒子は全く見られなかった。
【0198】
しかし、実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Gをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が全く融合しておらず粒子界面に変化はなく、スライドガラスとカバーガラスとは全く接着していなかった。この結果から、この磁性重合体粒子は前記加熱条件で定着性を有しないことがわかった。
なお、磁性重合体粒子Gの水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.45mmol/gであった。このとき、架橋重合体の含有率は64%であった。
【0199】
<比較例2>
実施例2の磁性重合体粒子の製造において、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部を、スチレン単量体(和光純薬(株)製)3部、n−ブチルメタクリレート4部に変更した以外は、実施例2に準じて懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Hを得た。
磁性重合体粒子Hを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ、66部で、収率は80%であった。
【0200】
しかし、実施例1に準じて、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.5μmであり、凝集粒子が散在していた。また、実施例1に準じてこの磁性重合体粒子Iを平均粒径1μmの粒子群H1と、平均粒径3μmの粒子群H2とに分画し、粒子中の磁性粉含有率を算出したところ、H1では15%、H2では16%であり、磁性粉含有量は概ね一致していた。
なお、磁性重合体粒子Hの水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.01mmol/gであった。
【0201】
次に、粒子表面の磁性粉の存在状態について実施例1に準じてSEMで観察したところ、粒子表面に磁性粉が飛び出している部分が見られた。また、実施例1に準じて水分散体を作製しようとしたが、水面でダマ(粒子同士が固まったもの)になってしまい水中に良好に再分散せず、得られた磁性重合体粒子Hは水になじみにくいものであった。
【0202】
<比較例3>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)40部を30部とし、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)7部およびスチレン単量体(和光純薬(株)製)12部をスチレン単量体(和光純薬(株)製)22部、n−ブチルメタクリレート16部を20部、ジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を4部とした以外は、実施例1に準じて懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Iを得た。
磁性重合体粒子Iを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ55部で、収率は80%であった。
【0203】
しかし、実施例1に準じて、この磁性重合体粒子Iをスライドガラスに塗布し、その上からカバーガラスをかぶせて、130℃のオーブンに3分間入れた後の状態を光学顕微鏡で観察したところ、粒子同士が全く融合しておらず粒子界面に変化はなく、スライドガラスとカバーガラスとは全く接着していなかった。この結果から、この磁性重合体粒子は前記加熱条件で定着性を有しないことがわかった。
なお、磁性重合体粒子Iの水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.01mmol/gであった。このとき、架橋重合体の含有率は60%であった。
【0204】
<比較例4>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、分散媒体調製の際に塩化ナトリウムを加えない以外は、実施例1に準じて単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を懸濁させ、重合を行ったところ、イオン交換水による洗浄工程で、濾紙(ADVANTEC社製、No.5C、保留粒子径:1μm)を通過する白色の微小粒子が認められた。これにより、分散媒体中で乳化重合が派生していることが確認された。得られた磁性重合体粒子Jの収量を測定したところ38部で、収率は54%に低下した。
【0205】
磁性重合体粒子Jについて水酸基量を実施例1に準じて測定したところ、この粒子の水酸基量は0.03mmol/gと低かった。また、これらの重合体粒子を電子顕微鏡観察したところ、粒径のばらつきが大きかったが個数平均粒径は2.0μmであった。なお、凝集粒子が相当数観察された。
また、実施例1に準じて水分散体を作製しようとしたが、水面でダマ(粒子同士が固まったもの)になってしまい水中に良好に再分散せず、得られた磁性重合体粒子Jは水になじみにくいものであった。
【0206】
<比較例5>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、分散媒体調製の際に炭酸カルシウムを加えない以外は、実施例1に準じて単量体、非架橋樹脂及び磁性粉を含む混合物を懸濁させ、重合を行おうとしたが、混合物は分散媒体中に良好に懸濁することができず、重合すると団子状の塊になってしまい、所望の重合体粒子を得ることができなかった。
【0207】
<比較例6>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、混合物作製の際にジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)を加えなかった以外は、実施例1に準じて懸濁重合を開始したところ、途中で粒子同士が凝集してしまい、所望の重合体粒子を得ることができなかった。
【0208】
以上のように、前記実施例では、重合時の懸濁粒子が安定しているため凝集を生じることがなく、水への分散性に優れ、加熱により良好な定着性を示す磁性重合体粒子を得ることができる。これに対し、必要な製造条件が不足している比較例では、収率、粒子状態、粒子特性等に何らかの問題が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施例1における磁性重合体粒子の断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3における磁性重合体粒子の断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0210】
10 現像ロール
12 貯留槽
14 記録液(画像形成用記録液)
16 記録液塗布ロール
17 メータリングブレード
18 クリーニングブレード
20 磁気記録ドラム
22 磁気記録ヘッド
24 転写ロール
26 ブレード
28 消磁ヘッド
30 記録媒体
40 カートリッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と、非架橋重合体とを含んで構成され、
前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体全体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲であることを特徴とする磁性重合体粒子。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和単量体が、さらにカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、且つ、前記磁性粉を含まない前記重合体全体のカルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の磁性重合体粒子。
【請求項3】
前記カルボキシル基の一部または全部が塩構造を形成していることを特徴とする請求項2に記載の磁性重合体粒子。
【請求項4】
前記架橋重合体の含有率が、磁性粉を含まない前記重合体全体の0.5〜49.5質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の磁性重合体粒子。
【請求項5】
粒子内部に前記磁性粉が局在していることを特徴とする請求項1に記載の磁性重合体粒子。
【請求項6】
請求項1に記載の磁性重合体粒子を含むことを特徴とする水分散体。
【請求項7】
液体を収容する液体収容手段と、前記液体を保持する液体保持手段と、該液体保持手段に前記液体を供給する液体供給手段と、を有し、
前記液体収容手段に請求項6に記載の水分散体を収容することを特徴とするカートリッジ。
【請求項8】
請求項6に記載の水分散体を画像形成用記録液として用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体を含むエチレン性不飽和単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋樹脂とを、(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液に、重合開始剤及び表面が疎水化処理された磁性粉を含有させ混合物を作製する混合物作製工程と、
前記混合物を塩が溶解され且つ分散安定剤を加えた水性媒体中に分散して懸濁重合する懸濁重合工程と、
を有することを特徴とする磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項10】
前記エチレン性不飽和単量体が、さらにC質量部のカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、
前記混合液が、(A+B+C+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項11】
前記エチレン性不飽和単量体と非架橋樹脂との混合液に、前記懸濁重合の重合温度以上の沸点を有する有機溶剤を含有させることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項12】
前記非架橋樹脂の一部または全部に、前記磁性粉をあらかじめ分散させて前記混合液に磁性粉を含有させることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項13】
前記疎水化処理が、カップリング剤による表面被覆処理であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項14】
前記塩が、無機塩であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項15】
前記分散安定剤が、無機粉体であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項1】
磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の架橋重合体と、非架橋重合体とを含んで構成され、
前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、水酸基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体全体の水酸基量が0.1〜5.0mmol/gの範囲であることを特徴とする磁性重合体粒子。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和単量体が、さらにカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、且つ、前記磁性粉を含まない前記重合体全体のカルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の磁性重合体粒子。
【請求項3】
前記カルボキシル基の一部または全部が塩構造を形成していることを特徴とする請求項2に記載の磁性重合体粒子。
【請求項4】
前記架橋重合体の含有率が、磁性粉を含まない前記重合体全体の0.5〜49.5質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の磁性重合体粒子。
【請求項5】
粒子内部に前記磁性粉が局在していることを特徴とする請求項1に記載の磁性重合体粒子。
【請求項6】
請求項1に記載の磁性重合体粒子を含むことを特徴とする水分散体。
【請求項7】
液体を収容する液体収容手段と、前記液体を保持する液体保持手段と、該液体保持手段に前記液体を供給する液体供給手段と、を有し、
前記液体収容手段に請求項6に記載の水分散体を収容することを特徴とするカートリッジ。
【請求項8】
請求項6に記載の水分散体を画像形成用記録液として用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
A質量部の水酸基を有する単量体及びB質量部の水酸基を有しない疎水性単量体を含むエチレン性不飽和単量体と、D質量部の架橋剤と、E質量部の非架橋樹脂とを、(A+B+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液に、重合開始剤及び表面が疎水化処理された磁性粉を含有させ混合物を作製する混合物作製工程と、
前記混合物を塩が溶解され且つ分散安定剤を加えた水性媒体中に分散して懸濁重合する懸濁重合工程と、
を有することを特徴とする磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項10】
前記エチレン性不飽和単量体が、さらにC質量部のカルボキシル基を有する単量体を含み、前記水酸基を有しない疎水性単量体がさらにカルボキシル基をも有しない疎水性単量体であり、
前記混合液が、(A+B+C+D)<Eなる関係を満たすように混合した混合液であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項11】
前記エチレン性不飽和単量体と非架橋樹脂との混合液に、前記懸濁重合の重合温度以上の沸点を有する有機溶剤を含有させることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項12】
前記非架橋樹脂の一部または全部に、前記磁性粉をあらかじめ分散させて前記混合液に磁性粉を含有させることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項13】
前記疎水化処理が、カップリング剤による表面被覆処理であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項14】
前記塩が、無機塩であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項15】
前記分散安定剤が、無機粉体であることを特徴とする請求項9に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−169247(P2008−169247A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1616(P2007−1616)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]