磁気インク文字読取装置及びその制御方法
【課題】文字認識処理が無駄に実行されないように図ることが可能になる磁気インク文字読取装置を提供すること。
【解決手段】第1判定部30は、磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する。第2判定部31は、第1判定部30によって、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する。判定回数計数部32は、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと第2判定部31によって判定された回数を計数する。文字認識処理実行制限部40は、判定回数計数部32による計数結果に基づいて、文字認識処理の実行を制限する。
【解決手段】第1判定部30は、磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する。第2判定部31は、第1判定部30によって、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する。判定回数計数部32は、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと第2判定部31によって判定された回数を計数する。文字認識処理実行制限部40は、判定回数計数部32による計数結果に基づいて、文字認識処理の実行を制限する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気インク文字読取装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気インク文字(MICR文字:Magnetic Ink Character Recognition文字)による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、該磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置が知られている。
【0003】
このような磁気インク文字読取装置は、紙媒体に磁気インク文字で印刷された所定フォーマット(文字数等)の文字列を読み取るために用いられる。例えば、小売店等での小切手による精算の場面では、用紙に印刷された磁気インク文字列を読み取る機能と、用紙に画像を印刷するための機能と、を備えた磁気インク文字読取装置が用いられている。すなわち、小売店等の担当者は商品購入者から小切手を受け取り、その小切手に店識別情報や購入金額等を印刷する。次に、商品購入者は、小切手に印刷された店識別情報や購入金額等を確認し、小切手にサインする。そして、店側担当者は、サインされた小切手を受け取り、小切手の表面に磁気インク文字で印刷された口座番号等を磁気インク文字読取装置に読み取らせる。読み取られた口座番号等はホストコンピュータに送信され、その正当性が確認される。口座番号等の正当性が確認されると、その旨が小切手に印刷され、小切手による精算が完了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本来は所定フォーマットの文字列が印刷されているべきであるにも関わらず、印刷時のミス等によりその文字列の一部が印刷されていない場合がある。例えば、図20に示すような12文字の文字列が本来は印刷されているべきであるにも関わらず、実際には、例えば図21に示すように1文字欠けてしまっている場合がある。また、文字列の全部が一応印刷されている場合であっても、その文字列の一部が非常に薄く印刷されてしまっている場合がある。このような場合、磁気インク文字読取装置による認識結果の文字列は所定フォーマットに従ったものにはならず、その一部が欠落したものになってしまう。磁気インク文字読取装置では、記録媒体に記録されている磁気インク文字が1文字ずつ認識されていくため、上記のような場合、認識結果の文字列が所定フォーマットに従ったものにはならず、その一部が欠落したものになることは、文字認識処理がすべて完了してから判明することになる。このため、上記のような場合、磁気インク文字読取装置では文字認識処理が無駄に実行されることになってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、文字認識処理が無駄に実行されないように図ることが可能になる磁気インク文字読取装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る磁気インク文字読取装置は、磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置において、前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段によって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定手段と、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された回数を計数する判定回数計数手段と、前記判定回数計数手段による計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る磁気インク文字読取装置の制御方法は、磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置の制御方法において、前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定ステップと、前記第1判定ステップによって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定ステップと、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定ステップによって判定された回数を計数する判定回数計数ステップと、前記判定回数計数ステップによる計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明は、磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、該磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置に関するものである。本発明では、信号データ列から信号データが順次読み出され、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かが判定される。また、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かが判定される。さらに、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と判定された回数が計数される。そして、その計数結果に基づいて、文字認識処理の実行が制限される。本発明によれば、文字認識処理が無駄に実行されないように図ることが可能になる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記第1判定手段による判定結果に基づいて、前記信号データ列の一部を1文字相当分信号データ列として取得する1文字相当分信号データ列取得手段と、前記1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する文字認識手段と、を含み、前記文字認識処理実行制限手段は、回数と基準文字数とを対応づけて記憶する基準文字数記憶手段と、前記文字認識手段によって認識された文字数を取得する文字数取得手段と、前記文字数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準文字数記憶手段に記憶される基準文字数と、を比較する文字数比較手段と、を含み、前記文字数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記文字認識処理実行制限手段は、回数と基準信号データ数とを対応づけて記憶する基準信号データ数記憶手段と、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された場合、前記信号データ列の先頭又は所与の信号データから、該所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データまでの信号データ数を取得する信号データ数取得手段と、前記信号データ数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準信号データ数記憶手段に記憶される基準信号データ数と、を比較する信号データ数比較手段と、を含み、前記信号データ数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記第1判定手段及び前記第2判定手段による判定と、前記判定回数計数手段による計数と、は前記文字認識処理の実行が開始される前に実行され、
前記文字認識処理実行制限手段は、前記判定回数計数手段による計数結果と、所定の基準回数と、を比較する判定回数比較手段と、を含み、前記判定回数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行の開始を制限するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の全体構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態に係る磁気インク文字読取装置10は、制御部11と、記憶部12と、インタフェース(I/F)13と、磁気インク文字読取部14と、印刷部15と、を含んで構成される。
【0014】
制御部11は、記憶部12に記憶されるプログラムに従って動作し、磁気インク文字読取装置10全体の制御を行う。記憶部12は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を含んで構成される。記憶部12は、各種処理を実行するための各種データを記憶するワークメモリとしても動作する。
【0015】
インタフェース13は、ホストコンピュータ(図示せず)とデータ授受可能に通信接続するためのものである。インタフェース13は、制御部11からの指示に従って各種データをホストコンピュータに送信する。例えば、磁気インク文字読取装置10の各種ステータス情報や、用紙(記録媒体)に印刷(記録)された磁気インク文字の読み取り結果が、インタフェース13を介してホストコンピュータに供給される。また、インタフェース13はホストコンピュータから各種データを受信し、制御部11に供給する。例えば、ホストコンピュータで各種アプリケーションプログラムによって生成された画像の印刷データが、インタフェース13を介して制御部11に供給される。
【0016】
磁気インク文字読取部14は、用紙に印刷された磁気インク文字を読み取るためのものである。磁気インク文字読取部14の動作の詳細については後述する。制御部11は、磁気インク文字読取部14から供給されるデータに基づいて、用紙に磁気インク文字を用いて印刷された文字列を認識する。制御部11によって認識された文字列はインタフェース13を介してホストコンピュータに供給され、各種処理に供される。
【0017】
印刷部15は、用紙に画像を印刷するためのものである。制御部11は、ホストコンピュータからインタフェース13を介して供給される印刷データを解釈し、ラスタ画像データに変換する。制御部11はこのラスタ画像データを印刷部15に供給し、印刷させる。
【0018】
以上のように、磁気インク文字読取装置10は、用紙に磁気インク文字を用いて記録された文字列を読み取る機能と、用紙に画像を印刷するための機能と、を備えており、例えば小売店等での小切手による精算の場で用いられる。
【0019】
ここで、磁気インク文字読取部14についてさらに詳しく説明する。図2は磁気インク文字読取部14の機構を示す模式図である。図1及び図2に示すように、磁気インク文字読取部14は、用紙センサ16(用紙センサ16a及び16b)と、搬送ローラ17と、搬送モータ18と、搬送モータ駆動制御部19と、磁石20と、磁気ヘッド21と、磁気検出信号処理回路部22と、A/Dコンバータ23と、を含んで構成される。
【0020】
用紙センサ16aは磁気インク文字読取装置10の所定の挿入口に用紙24が挿入されたか否かを検出する。搬送ローラ17は挿入口に挿入された用紙24を一定速度で搬送する。搬送ローラ17によって用紙24が搬送されることによって、磁気ヘッド21と用紙24との相対移動が実現される。搬送モータ18は搬送ローラ17を一定速度で回転させるためのステップモータを含んで構成される。搬送モータ駆動制御部19は搬送モータ18の駆動を制御する。制御部11は、用紙センサ16aによって挿入口に用紙24が挿入されたことが検出されたら、搬送モータ駆動制御部19に搬送モータ18を駆動させる。搬送モータ18が駆動されると、搬送ローラ17が図2に示すA方向(時計回り方向)に回転され、用紙24が図2に示すB方向に搬送される。このとき、用紙24は磁気ヘッド21と搬送ローラ17とに挟持される。
【0021】
用紙24の表面24aの磁気インク文字が印刷された領域は磁石20によって磁化される。磁気ヘッド21は磁束の変化を検出する素子である。磁気ヘッド21は、用紙24の表面24aに印刷された磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号(磁気検出信号)を出力する。磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号は磁気検出信号処理回路部22に入力される。
【0022】
ここで、磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号と、磁気検出信号処理回路部22の動作と、について説明する。図3は、磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号と、磁気検出信号処理回路部22の動作と、について説明するための図である。
【0023】
本実施の形態では、JIS X9002で規定される磁気インク文字を読み取り対象とする。JIS X9002では14種類の磁気インク文字(ストローク0〜13)が規定されている。ストローク0〜9はそれぞれ0〜9の数字に対応している。ストローク10〜13はそれぞれ所定の記号に対応している。図3(a)は、JIS X9002で規定される磁気インク文字の一例を示している。ここでは、ストローク0とストローク8とが表されている。図3(a)に示すように、各磁気インク文字は、1辺の長さが0.33mmの正方形が縦に9個、横に7個配列されてなる矩形内に収まるように規定されている。また、JIS X9002では、磁気インク文字の1文字分のピッチが3.175mmと規定されている。
【0024】
図3(b)は、図3(a)に示す磁気インク文字が読み取られる場合に、磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号を示している。図3(b)に示すように、磁気ヘッド21の検出対象領域の少なくとも一部が、用紙24の磁気インク文字が印刷されていない領域から磁気インク文字が印刷された領域へと変わるタイミング(A,C,E,F,H)、すなわち、磁束が増加するタイミングでは、正極性のパルスが磁気ヘッド21から出力される。また、磁気ヘッド21の検出対象領域の少なくとも一部が、用紙24の磁気インク文字が印刷されている領域から磁気インク文字が印刷されていない領域に変わるタイミング(B,D,G,I,J)、すなわち、磁束が減少するタイミングでは、負極性のパルスが磁気ヘッド21から出力される。
【0025】
磁気検出信号処理回路部22は、磁気ヘッド21から入力される磁気検出信号の増幅及びフィルタリングを行う。図4は磁気検出信号処理回路部22の機能ブロック図である。図4に示すように、磁気検出信号処理回路部22は、差動増幅器22aと、微分回路22bと、ローパスフィルタ22cと、微分回路22dと、反転回路22eと、を含んで構成される。
【0026】
磁気ヘッド21から入力された磁気検出信号は、差動増幅器22aによって直流バイアス(直流レベルシフト)されることによって増幅される。本実施の形態では、磁気ヘッド21から入力される磁気検出信号が差動増幅器22aによって2.5V分だけ直流バイアスされる。差動増幅器22aによって増幅された磁気検出信号は、微分回路22bによってピーク部分が強調され、ローパスフィルタ22cによってノイズ成分が除去される。ローパスフィルタ22cによってノイズ成分が除去された磁気検出信号は、微分回路22d及び反転回路22eを介してA/Dコンバータ23に入力される。
【0027】
図3(c)は、図3(b)に示す磁気検出信号が磁気ヘッド21から入力される場合に、磁気検出信号処理回路部22から出力される信号を示している。図3(c)に示すように、磁気ヘッド21から入力される磁気検出信号が直流バイアスされてなる信号が、磁気検出信号処理回路部22から出力される。
【0028】
A/Dコンバータ23は、磁気検出信号処理回路部22から入力される信号を、タイマ回路(図示せず)によって発生される割り込み信号に従ってA/D変換する。磁気インク文字を認識する場合には磁気検出信号のピーク位置を正確に特定することが重要になる。このため、磁気インク文字の認識処理において磁気検出信号のピーク位置が正確に特定できるよう、ここでは、磁気検出信号の最小ピーク間隔の10倍程度のサンプリング周波数でサンプリングされる。また、磁気検出信号は、例えば量子化ビット数10ビットで量子化される。より具体的には、0〜5Vの電圧が1024段階の数値で表されるように量子化される。A/D変換された信号(以下、磁気検出信号データと記載する。)は制御部11に順次供給され、記憶部12に順次記憶される。図5は、記憶部12に記憶される磁気検出信号データの一例を示している。
【0029】
以上に説明した磁気インク文字読取部14の動作は、磁気ヘッド21の下流側に設けられた用紙センサ16bによって用紙24が検出されなくなるまで、又は、搬送ローラ17によって用紙24が所定量搬送されるまで繰り返される。
【0030】
次に、用紙24に印刷された磁気インク文字を、記憶部12に記憶される磁気検出信号データに基づいて認識するための処理について説明する。図6乃至図9はこの処理を示すフロー図である。図10はこの処理を説明するための図である。この処理は、記憶部12に記憶されるプログラムが制御部11によって実行されることによって実現される。
【0031】
図6に示すように、まず、磁気インク文字読取装置10は磁気検出信号データの全サンプル値の平均値aを算出する(S101)。そして、磁気インク文字読取装置10は、磁気検出信号データの各サンプル値と、平均値aと、の差分値の配列である差分値列Xを生成する(S102:図10の(1)参照)。
【0032】
また、磁気インク文字読取装置10は各種変数を初期化する(S103)。例えば、磁気インク文字読取装置10は文字列型変数sを空文字列(長さ0の文字列)に初期化する。この文字列型変数sは、用紙24に印刷された磁気インク文字列の認識結果を保持するために用いられる。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数bを0に初期化する。変数bは、差分値列Xにおいて正極性のピーク点(図3(b)に示すタイミングA,C,E,F,H等)に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された場合に1ずつ加算される変数である。すなわち、変数bは、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された回数をカウントするために用いられる。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数cを0に初期化する。変数cは、認識された磁気インク文字の数をカウントするために用いられる。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数iを1に初期化する。
【0033】
その後、磁気インク文字読取装置10は、差分値列のi番目の要素である要素Xiが正極性のピーク点に対応するものであるか否かを判定する(S104)。例えば、磁気インク文字読取装置10は、要素Xiの値が、差分値列Xの(i−1)番目の要素Xi−1の値以上であり、かつ、差分値列Xの(i+1)番目の要素Xi+1の値以下であるか否かを判定する。そして、磁気インク文字読取装置10は、要素Xiの値が、要素Xi−1の値以上であり、かつ、要素Xi+1の値以下である場合、要素Xiが正極性のピーク点に対応するものであると判定する。
【0034】
要素Xiが正極性のピーク点に対応するものである場合、磁気インク文字読取装置10は変数tの値を0に初期化する(S105)。変数tは、正極性のピーク点に対応しない要素がどれだけ連続しているかをカウントするために用いられる。
【0035】
その後、磁気インク文字読取装置10は、用紙24に印刷された磁気インク文字列を認識するための処理を実行する。
【0036】
まず、磁気インク文字読取装置10は、差分値列Xの要素Xi,Xi+1,Xi+2,・・・,Xi+Nを、注目差分値列Yとして取得する(S106:図10の(2)参照)。この注目差分値列Yは1文字相当分の差分値列である。定数Nの値は、1文字分の要素数(サンプル数)に設定される。すなわち、定数Nは、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間に対応する要素数に設定される。なお、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間は、磁気インク文字のピッチと用紙24の搬送速度とに基づいて算出される。また、該時間に対応する要素数は、該時間とサンプリング周波数とに基づいて算出される。
【0037】
その後、磁気インク文字読取装置10は、注目差分値列Yに関して、連続する4つの要素ごとに平均値を算出し、平均値列Zを生成する(S107:図10の(3)参照)。
【0038】
そして、磁気インク文字読取装置10は、この平均値列Zに基づいて、注目差分値列Yに対応する磁気インク文字を特定する。
【0039】
まず、磁気インク文字読取装置10は変数jを0に初期化する(S108)。そして、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjとの類似度を算出する(S109)。
【0040】
記憶部12には、例えば図11に示すような基準値列テーブルがあらかじめ記憶されている。図11に示すように、基準値列テーブルは各磁気インク文字ごとの基準値列Pを示すテーブルである。ここで、「基準値列」は、各磁気インク文字の原磁気検出信号(各磁気インク文字が読み取られる際に磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号)に対して、磁気検出信号処理回路部22における処理と同様の処理(直流バイアス等)を施した後、A/Dコンバータ23における処理と同様のA/D変換処理を行うことによって得られる基準磁気検出信号データである。
【0041】
S109では、磁気インク文字読取装置10は、まずストロークjの基準値列Pを読み出す。次に、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjの基準値列Pに対してS101及びS102と同様の処理を実行することによって、ストロークjの基準差分値列Qを生成する(図10の(4)参照)。そして次に、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjの基準差分値列Qに対してS107と同様の処理を実行することによって、基準平均値列Rを生成する(図10の(5)参照)。そして、磁気インク文字読取装置10は、平均値列Zと基準平均値列Rとの類似度を算出する(図10の(6)参照)。この類似度は下記の式(1)によって算出される。類似度は−1以上1以下の値となり、その値が大きいほど平均値列Zと基準平均値列Rとが類似していることを示す。
【0042】
【数1】
【0043】
S109で算出された類似度は、ストロークjとの類似度として記憶部12に記憶される。
【0044】
次に、磁気インク文字読取装置10は、S109で算出した類似度が0.85以上であるか否かを判定する(S110)。類似度が0.85以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、注目差分値列Yがストロークjの磁気検出結果を示すものであると判断する。この場合、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjに対応する文字を、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加する(S111)。例えば、変数jの値が0である場合には、ストローク0に対応する文字、すなわち「0」が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加される。また例えば、変数jの値が10である場合には、ストローク10に対応する文字、例えば「A」が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加される。
【0045】
このように、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度を順に算出して行く過程で、ある磁気インク文字の類似度が非常に高い場合には、注目差分値列Yがその磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断し、残りの磁気インク文字(その時点で類似度を未算出の磁気インク文字)については類似度を算出しないようになっている。このようにして、磁気インク文字読取装置10では処理負荷の軽減が図られている。
【0046】
一方、類似度が0.85未満である場合、磁気インク文字読取装置10は変数jの値に1を加算し(S112)、変数jの値が13以下であるか否かを判定する(S113)。変数jの値が13以下である場合、磁気インク文字読取装置10はS109から再実行する。このようにして、各ストローク0〜13の類似度が算出され、記憶部12に記憶される。
【0047】
S113において変数jの値が13より大きいと判定された場合、すなわち、各ストローク0〜13の類似度がすべて算出された場合、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.5以上であるか否かを判定する(S114)。
【0048】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.5未満である場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行し(S115)、本処理を中止する。この場合、例えば、磁気インク文字読取装置の液晶表示部に読み取りエラーが発生した旨のメッセージを出力させるための処理や、ホストコンピュータに所定データを送信し、読み取りエラーが発生した旨のメッセージをホストコンピュータの表示部に出力させるための処理が実行される。
【0049】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が低い値である場合には、注目差分値列Yが最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものではない可能性も十分に考えられる。このような場合にも、注目差分値列Yが最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断してしまうと、誤認識になってしまう可能性がある。この点、磁気インク文字読取装置10ではS114及びS115が実行されることによって、そのような誤認識が発生しないように図られている。
【0050】
一方、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.5以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.6以上であるか否かを判定する(S116)。そして、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.6未満である場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行する(S117)。この場合、磁気インク文字の読み取りを再実行するための処理(リトライ処理)が実行される。例えば、磁気インク文字読取装置10は搬送ローラ17を逆回転させ、用紙24を最初の位置(挿入口)に戻す。その後、磁気インク文字読取装置10は搬送ローラ17を正回転させ、磁気検出信号データ(図5参照)を再取得する。磁気インク文字読取装置10は磁気検出信号データを再取得したら、その再取得された磁気検出信号データに基づいて本処理を最初から実行する。
【0051】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が低い値ではないものの、高い値であるともいえないような場合には、一時的な要因によって、用紙24に印刷された磁気インク文字による磁束の変化がうまく検出されなかった可能性が考えられる。この点、磁気インク文字読取装置10は、そのような場合に磁気検出信号データを自動的に再取得し、その後、その再取得した磁気検出信号データに基づいて本処理を最初から再実行する。このように、磁気インク文字読取装置10ではS116及びS117が実行されることによって、認識精度の向上が図られている。また、磁気インク文字読取装置10では、磁気インク文字の読み取りを再実行するにあたって、ユーザの手間が増大しないように図られている。
【0052】
一方、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.6以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が0.3以上であるか否かを判定する(S118)。そして、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が0.3未満である場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行する(S117)。すなわち、この場合にも、磁気検出信号データの再取得が自動的に実行された後、その再取得された磁気検出信号データに基づいて本処理が最初から再実行される。
【0053】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が小さい場合には、注目差分値列Yが、最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものではなく、2番目に類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものである可能性も十分に考えられる。このような場合にも、注目差分値列Yが最も類似度の高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断してしまうと、誤認識になってしまう可能性がある。この点、磁気インク文字読取装置10ではS118及びS117が実行されることによって、そのような誤認識が発生しないように図られている。
【0054】
一方、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が0.3以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、注目差分値列Yが、ストローク0〜13のうちの最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断し、その磁気インク文字に対応する文字を、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加する(S119)。例えば、ストローク0の類似度が最も高い場合には、ストローク0に対応する文字、すなわち「0」が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加される。
【0055】
S111又はS119において、注目差分値列Yに対応する磁気インク文字が特定され、その磁気インク文字に対応する文字が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加された場合、磁気インク文字読取装置10は変数cの値に1を加算する(S120)。その後、磁気インク文字読取装置10は、要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S121)。要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は本処理を終了する。一方、要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数iの値にN+1を加算し(S122)、S104から再実行する。
【0056】
次に、S104において、要素Xiが正極性のピーク点に対応するものでないと判定された場合に実行される処理について説明する。
【0057】
要素Xiが正極性のピーク点に対応するものでないと判定された場合、磁気インク文字読取装置10は変数tの値に1を加算する(S123)。そして、磁気インク文字読取装置10は、変数cの値が0より大きく、かつ、変数tの値がTになったか否かを判定する(S124)。定数Tは、例えば1文字分の要素数(サンプル数)に設定される。すなわち、定数Tは、例えば、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間に対応する要素数に設定される。この場合、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間は、磁気インク文字のピッチと用紙24の搬送速度とに基づいて算出される。また、該時間に対応する要素数は、該時間とサンプリング周波数とに基づいて算出される。定数Tがこのように設定される場合には、S124において、磁束の増加が検出されない状態が、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24が搬送される間以上の期間にわたって継続したか否かが判定されることになる。さらに言い換えれば、1文字以上の磁気インク文字に相当するスペースの存在が検出されることになる。なお、ここでは、用紙24の端から1文字目の磁気インク文字までのスペースについては無視する趣旨で、S124において変数cの値が0より大きいか否かの判定が行われている。
【0058】
変数cの値が0より大きく、かつ、変数tの値がTである場合、磁気インク文字読取装置10は変数bの値に1を加算する(S125)。その後、磁気インク文字読取装置10は、変数bの値に対応する基準文字数Cを基準文字数テーブルから読み出す(S126)。
【0059】
ここで、基準文字数テーブルについて説明する。図12は基準文字数テーブルの一例を示している。図12に示すように、基準文字数テーブルは「回数」フィールドと「基準文字数」フィールドとを含み、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された回数と、その時点で認識されているべき文字数(基準文字数)と、を対応づけてなるテーブルである。この基準文字数テーブルは、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに合わせて設定される。図12は、図20に示すフォーマットの磁気インク文字列を読み取る場合の基準文字数テーブルを示している。すなわち、図12は、12文字の磁気インク文字からなり、かつ、1文字以上の磁気インク文字に相当するスペースが5文字目と6文字目との間及び8文字目と9文字目との間にそれぞれ挿入されてなる磁気インク文字列を読み取る場合の基準文字数テーブルを示している。すなわち、図12に示す基準文字数テーブルは、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することの1回目の検出時には、5文字(図20に示す例では5,4,3,2,1の5文字)が認識済みでなければならないことを示している。また、図12に示す基準文字数テーブルは、2回目の検出時には8文字(図20に示す例では5,4,3,2,1,6,7,8の8文字)が認識済みでなければならないことを示している。さらに、図12に示す基準文字数テーブルは、3回目の検出時には12文字(図20に示す例では5,4,3,2,1,6,7,8,9,9,9,9の12文字)が認識済みでなければならないことを示している。なお上述したように、ここでは、用紙24の端から最初の磁気インク文字までのスペースについては無視するようになっている。
【0060】
S126では、磁気インク文字読取装置10は、「回数」フィールドの値が変数bの値に等しいレコードの「基準文字数」フィールドの値を基準文字数Cとして読み出す。
【0061】
その後、磁気インク文字読取装置10は変数cの値が基準文字数Cに等しいか否かを判定する(S127)。変数cの値が基準文字数Cに等しくない場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行し(S128)、本処理を中止する。この場合の読み取りエラー処理はS115における読み取りエラー処理と同様の処理である。
【0062】
以上のように、磁気インク文字読取装置10では、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数連続することが検出されるごとに、その時点の認識済みの文字数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、認識済みの文字数が正当である場合には文字認識処理が続行され、認識済みの文字数が正当でない場合には文字認識処理が中止される。このため、磁気インク文字読取装置10では、例えば図21に示すように磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等には、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになっている。
【0063】
なお、基準文字数テーブルに代えて、例えば図13に示すような基準要素数テーブルが記憶されるようにしてもよい。図13に示すように、基準要素数テーブルは「回数」フィールドと「基準要素数」フィールドとを含み、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された回数と、その時点で処理されているべき要素数(基準要素数)と、を対応づけてなるテーブルである。この基準要素数テーブルも、基準文字数テーブルと同様に、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに合わせて設定される。この場合、磁気インク文字読取装置10は、図9のS126において、変数bの値に対応する基準要素数Dを基準要素数テーブルから読み出すようにすればよい。また、変数iの値は処理済みの要素数を示しているため、磁気インク文字読取装置10は、図9のS127において、変数iの値が基準要素数Dに等しいか否かを判定するようにすればよい。このようにして、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことを比較的早期に察知し、無駄に文字認識処理が実行されないようにしてもよい。
【0064】
変数cの値が0である場合(S124のN)、変数tの値がTでない場合(S124のN)や変数cの値が基準文字数Cに等しい場合(S127のY)には、磁気インク文字読取装置10は要素Xiが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S129)。要素Xiが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は本処理を終了する。一方、要素Xiが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数iの値に1を加算し(S130)、S104から再実行する。
【0065】
なお、磁気インク文字読取装置10は、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等によって、認識結果の磁気インク文字列が所定のフォーマットに合致しないものになってしまわないか否かを確認した後に、文字認識処理の実行を開始するようにしてもよい。図14はこの場合の処理を示すフロー図である。
【0066】
この場合、図14に示すように、磁気インク文字読取装置10は磁気検出信号データ(図5参照)の全サンプル値の平均値aを算出する(S201)。そして、磁気インク文字読取装置10は、磁気検出信号データの各サンプル値と、平均値aと、の差分値の配列である差分値列Xを生成する(S202)。これらの処理は、図6のS101及びS102と同様に実行される。
【0067】
また、磁気インク文字読取装置10は各種変数を初期化する(S203)。例えば、磁気インク文字読取装置10は変数b’や変数t’を0に初期化する。変数b’は図6乃至図9における変数bと同様である。変数t’は図6乃至図9における変数tと同様である。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数kを1に初期化する。
【0068】
その後、磁気インク文字読取装置10は、差分値列Xのk番目の要素Xkが正極性のピーク点に対応するものであるか否かを判定する(S204)。この判定は図6のS104と同様に実行される。
【0069】
要素Xkが正極性のピーク点に対応するものでない場合、磁気インク文字読取装置10は変数t’の値に1を加算する(S205)。そして、磁気インク文字読取装置10は変数t’の値がTになったか否かを判定する(S206)。定数Tは図9のS124と同様である。変数t’の値がTになった場合、磁気インク文字読取装置10は変数b’の値に1を加算する(S207)。
【0070】
一方、要素Xkが正極性のピーク点に対応するものである場合、磁気インク文字読取装置10は変数t’の値を0に初期化する(S208)。また、磁気インク文字読取装置10は変数kの値にNを加算する(S209)。ここで、定数Nは図6のS106と同様である。この場合、差分値列Xの要素Xkから要素Xk+Nまでが読み捨てられることになる。
【0071】
S204乃至S209の処理が完了すると、磁気インク文字読取装置10は要素Xkが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S210)。要素Xkが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数kの値に1を加算し(S211)、S204から再実行する。
【0072】
一方、要素Xkが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は変数b’の値がBであるか否かを判定する(S212)。定数Bは、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに合わせて設定され、記憶部12に記憶される。例えば図20に示すフォーマットの磁気インク文字列を読み取る場合であれば定数Bは4に設定される。図20に示すフォーマットの文字列を読み取る場合には、a)用紙24の左端から1文字目の磁気インク文字「5」までのスペースと、b)5文字目の磁気インク文字「1」と6文字目の磁気インク文字「6」との間のスペースと、c)8文字目の磁気インク文字「8」と9文字目の磁気インク文字「9」との間のスペースと、d)12文字目の磁気インク文字「9」から用紙24の左端までのスペースと、が存在するため、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが4回検出されるはずであるからである。なお、ここでは、用紙24の左端から1文字目の磁気インク文字までのスペースを考慮に入れることにしている。
【0073】
変数b’の値がBである場合、磁気インク文字読取装置10は磁気インク文字の認識処理を実行する(S213)。ここで、磁気インク文字の認識処理は、図6乃至図9に示す処理と同様の処理である。ただし、図6のS101及びS102や図9のS123乃至S128は省略するようにしてもよい。
【0074】
一方、変数b’の値がBでない場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行し(S214)、本処理を中止する。この場合の読み取りエラー処理は、図8のS115における読み取りエラー処理と同様の処理である。
【0075】
このようにしても、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等には、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0076】
また、図8のS117が実行され、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識が実行される場合には、次のようにして処理負荷の軽減を図るようにしてもよい。すなわち、図8のS117の読み取りエラー処理では、その時点における変数cの値を認識済み文字数C0として記憶部12に記憶させるとともに、その時点における文字列型変数sに保持される文字列を認識済み文字列S0として記憶部12に記憶させるようにしてもよい。そして、磁気インク文字読取装置10は、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識を再実行する場合には、図6に示す処理に代えて、図15に示す処理を実行するようにしてもよい。なお、図15では図6と同様の処理については同じ符号を付している。
【0077】
図15に示す処理は、S103に代えてS301が実行される点で、図6に示す処理とは異なっている。S301は、文字列型変数sが、記憶部12に記憶される認識済み文字列S0に初期化される点でS103とは異なっている。
【0078】
また図15に示す処理は、S105とS106の間にS302が追加されるとともに、さらにS303乃至S305が追加されている点でも、図6に示す処理とは異なっている。すなわち、図15に示す処理では、要素Xiが正極性のピーク点に対応するものである場合、磁気インク文字読取装置10は記憶部12に記憶される認識済み文字数C0を読み出し、変数cの値が認識済み文字数C0以上であるか否かを判定する(S302)。変数cの値が認識済み文字数C0未満である場合、磁気インク文字読取装置10は変数cの値に1を加算する(S303)。そして、磁気インク文字読取装置10は要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S304)。要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は本処理を終了する。一方、要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数iの値にN+1を加算し(S305)、その後、S104から再実行する。すなわち、この場合、差分値列Xの要素Xiから要素Xi+Nまでが読み捨てられ、要素Xiから要素Xi+Nまでに対応する磁気インク文字の認識が省略される。
【0079】
このようにして、磁気インク文字読取装置10は、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識処理を再実行する場合には、すでに認識済みの部分については認識処理を省略するようにしてもよい。こうすれば、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識を再実行する場合の処理負荷を軽減することが可能になる。
【0080】
次に、磁気インク文字読取装置10で実現される機能について説明する。図16は磁気インク文字読取装置10で実現される機能のうち、本発明に関連するものを主として示す図である。図16に示すように、磁気インク文字読取装置10には、第1判定部30と、第2判定部31と、判定回数計数部32と、文字認識処理実行制限部40と、文字認識処理実行部50と、が機能的に含まれる。これらの機能ブロックは、例えば図6乃至図9、図14及び図15に示す処理を磁気インク文字読取装置10に実行させるためのプログラムが記憶部12から読み出され、制御部11によって実行されることによって実現される。
【0081】
第1判定部30は制御部11を主として実現される。第1判定部30は、磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する。「磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列」は、磁気ヘッド21の出力信号をサンプリングすることによって得られる信号データ列である。例えば、「磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列」は、磁気検出信号データ(図5参照)や差分値列X(図10参照)である。「所定信号」は、例えば磁気インク文字による磁束の増加に応じた信号(正極性のピーク信号)である。
【0082】
第2判定部31は制御部11及び記憶部12を主として実現される。第2判定部31は、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が、第1判定部30によって、所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する。「所定数」は、例えば、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送するのに要する時間に対応する信号データ数である。
【0083】
判定回数計数部32は制御部11及び記憶部12を主として実現される。判定回数計数部32は、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定された回数を計数し、その計数結果を記憶する。
【0084】
文字認識処理実行部50は制御部11及び記憶部12を主として実現される。文字認識処理実行部50は、磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列に基づいて、用紙24に印刷された磁気インク文字を認識するための文字認識処理を実行する。
【0085】
文字認識処理実行制限部40は制御部11及び記憶部12を主として実現される。文字認識処理実行制限部40は、判定回数計数部32による計数結果に基づいて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行を制限する。
【0086】
以下、文字認識処理実行制限部40及び文字認識処理実行部50の機能についてさらに詳しく説明する。文字認識処理実行制限部40及び文字認識処理実行部50は例えば図17に示すような機能を備える。
【0087】
図17に示すように、文字認識処理実行部50は1文字相当分信号データ列取得部51と、文字認識部52と、を含んでいる。
【0088】
1文字相当分信号データ列取得部51は制御部11を主として実現される。1文字相当分信号データ列取得部51は、第1判定部30による判定結果に基づいて、信号データ列の一部を1文字相当分信号データ列として取得する。例えば、1文字相当分信号データ列取得部51は、第1判定部30によっていずれかの信号データが所定信号に対応するものであると判定された場合、該信号データ以降の所定数の信号データを1文字相当分信号データ列として取得する。ここで、「所定数」は、例えば、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送するのに要する時間に対応する信号データ数である。「1文字相当分信号データ列」は、例えば、磁気検出信号データから切り出される1文字相当分データや、注目差分値列Y(図10参照)である。
【0089】
文字認識部52は制御部11を主として実現される。文字認識部52は1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する。文字認識部52は、1文字相当分信号データ列と、各磁気インク文字の基準データ列と、を比較することによって、1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する。例えば、文字認識部52は、1文字相当分信号データ列と、各磁気インク文字の基準データ列と、の類似度を算出し、最も類似度の高い磁気インク文字を、1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字として認識する。なお、「磁気インク文字の基準データ列」は、例えば基準値列P(図10参照)や基準差分値列Q(図10参照)である。
【0090】
また図17に示すように、文字認識処理実行制限部40は基準文字数記憶部41と、文字数取得部42と、文字数比較部43と、を含んでいる。
【0091】
基準文字数記憶部41は記憶部12によって実現される。基準文字数記憶部41は回数と基準文字数とを対応づけて記憶する。基準文字数記憶部41は、例えば図12に示すような基準文字数テーブルを記憶する。
【0092】
文字数取得部42は制御部11を主として実現される。文字数取得部42は文字認識部52によって認識された文字数を取得する。例えば、文字数取得部42は、文字認識部52によって1文字認識されるごとに、記憶部12に記憶される数値(例えば図6又は図15,図7乃至図9に示す処理における変数c)を増加することによって、文字認識部52によって認識された文字数を計数する。また例えば、文字数取得部42は、記憶部12に記憶された文字認識部52の認識結果(例えば図6又は図15,図7乃至図9に示す処理における変数s)から、文字認識部52によって認識された文字数を取得する。
【0093】
文字数比較部43は制御部11を主として実現される。文字数比較部43は、文字数取得部42による取得結果と、判定回数計数部32によって計数された回数に対応づけて基準文字数記憶部41に記憶される基準文字数と、を比較する。
【0094】
この場合、文字認識処理実行制限部40は、文字数比較部43による比較結果に応じて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行を制限(例えば抑止)する。
【0095】
図17に示す構成では、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定されるごとに、その時点で認識済みの文字数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、認識済みの文字数が正当である場合には文字認識処理が続行され、認識済みの文字数が正当でない場合には文字認識処理の実行が制限される。その結果、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されているような場合において、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0096】
なお、文字認識処理実行制限部40は例えば図18に示すような機能を備えるようにしてもよい。図18に示すように、この場合の文字認識処理実行制限部40は基準信号データ数記憶部44と、信号データ数取得部45と、信号データ数比較部46と、を含んでいる。
【0097】
基準信号データ数記憶部44は記憶部12によって実現される。基準信号データ数記憶部44は回数と基準信号データ数とを対応づけて記憶する。基準信号データ数記憶部44は、例えば図13に示すような基準要素数テーブルを記憶する。
【0098】
信号データ数取得部45は制御部11を主として実現される。信号データ数取得部45は、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定された場合、信号データ列の先頭又は所与の信号データから、該所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データまでの信号データ数を取得する。「所与の信号データ」は、例えば、所定信号に対応するものであると第1判定部30によって判定された最初の信号データである。「所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データ」は、該所定数以上の信号データのうちのいずれかであり、より具体的には、該所定数以上の信号データのうちの先頭の信号データである。
【0099】
信号データ数比較部46は制御部11を主として実現される。信号データ数比較部46は、信号データ数取得部45による取得結果と、判定回数計数部32によって計数された回数に対応づけて基準信号データ数記憶部44に記憶される基準信号データ数と、を比較する。
【0100】
この場合、文字認識処理実行制限部40は、信号データ数比較部46による比較結果に応じて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行を制限(例えば抑止)する。
【0101】
図18に示す構成では、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定されるごとに、例えば信号データ列の先頭から、該所定数以上の信号データのうちの先頭の信号データまでの信号データ数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、該信号データ数が正当である場合には文字認識処理が続行され、該信号データ数が正当でない場合には文字認識処理の実行が制限される。その結果、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されているような場合において、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0102】
また、文字認識処理実行制限部40は例えば図19に示すような機能を備えるようにしてもよい。
【0103】
この場合、第1判定部30及び第2判定部31による判定や判定回数計数部32による計数は、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行が開始される前に実行される。
【0104】
図19に示すように、この場合の文字認識処理実行制限部40は判定回数比較部47を含んでいる。判定回数比較部47は、判定回数計数部32による計数結果と、所定の基準回数と、を比較する。判定回数計数部32による計数結果は、例えば図14に示す処理における変数b’であり、「所定の基準回数」は、例えば図14に示す処理における定数Bである。
【0105】
この場合の文字認識処理実行制限部40は、判定回数比較部47による比較結果に応じて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行の開始を制限(例えば抑止)する。
【0106】
図19に示す構成では、磁気ヘッド21から所定の信号が出力されない状態が所定期間以上継続する回数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、上記回数が正当である場合には文字認識処理が開始され、上記回数が正当でない場合には文字認識処理の開始が制限される。その結果、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されているような場合において、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが文字認識処理の実行前に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0107】
以上説明したように、磁気インク文字読取装置10によれば、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等には、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになり、磁気インク文字読取装置10の処理負荷が軽減される。
【0108】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではない。
【0109】
例えば、印刷部15は必須の構成ではない。
【0110】
また例えば、用紙24に印刷される磁気インク文字は、JIS X9002以外のフォーマットの磁気インク文字であってもよい。
【0111】
また例えば、図8のS115、図9のS128や図14のS214では、図8のS117と同様の読み取りエラー処理(リトライ処理)が実行されるようにしてもよい。
【0112】
また例えば、図8のS117では、図8のS115と同様の読み取りエラー処理(中止処理)を実行されるようにしてもよい。
【0113】
また例えば、図6や図15のS104において要素Xiが正極性のピーク点に対応するものであると1度も判定されなかった場合、すなわち、正極性のピーク点が検出されなかった場合にも、図8のS115と同様の読み取りエラー処理(中止処理)を実行するようにしてもよい。この場合、図8のS117と同様の読み取りエラー処理(リトライ処理)は実行しないようにするとよい。正極性のピーク点が検出されなかった場合には、用紙24が表裏反対に挿入されている可能性が高いため、リトライ処理が無駄になる可能性が高い。この点、以上のようにすれば、無駄なリトライ処理の実行を抑止することができ、磁気インク文字読取装置10の処理負荷の軽減を図ることが可能になる。
【0114】
また例えば、文字列の所定位置に所定シンボル(例えばストローク10〜13)があるか否かを判定し、その判定結果に応じて、図8のS115又はS117と同様の読み取りエラー処理を実行するようにしてもよい。
【0115】
また例えば、磁気インク文字読取装置10は、リトライ処理を複数回繰り返すようにしてもよい。この場合、磁気インク文字読取装置10は、リトライ処理の回数が所定回数繰り返された場合にはリトライ処理の実行を抑止し、磁気インク文字の読み取りを中止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の全体構成を示す図である。
【図2】磁気インク文字読取部の機構を示す模式図である。
【図3】磁気インク文字の一例と、磁気インク文字が読み取られる場合に出力される信号と、について示す図である。
【図4】磁気検出信号処理回路部の機能ブロック図である。
【図5】磁気検出信号データの一例を示す図である。
【図6】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図7】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図8】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図9】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図10】磁気インク文字読取装置で実行される処理について説明するための図である。
【図11】基準値列テーブルの一例を示す図である。
【図12】基準文字数テーブルの一例を示す図である。
【図13】基準要素数テーブルの一例を示す図である。
【図14】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図15】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図16】本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の機能ブロック図である。
【図17】判定部、文字認識処理実行制限部及び文字認識処理実行部の機能ブロック図である。
【図18】判定部、文字認識処理実行制限部及び文字認識処理実行部の機能ブロック図である。
【図19】判定部、文字認識処理実行制限部及び文字認識処理実行部の機能ブロック図である。
【図20】磁気インク文字を用いて文字列が印刷された用紙の一例を示す図である。
【図21】磁気インク文字を用いて文字列が印刷された用紙の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10 磁気インク文字読取装置、11 制御部、12 記憶部、13 インタフェース、14 磁気インク文字読取部、15 印刷部、16,16a,16b 用紙センサ、17 搬送ローラ、18 搬送モータ、19 搬送モータ駆動制御部、20 磁石、21 磁気ヘッド、22 磁気検出信号処理回路部、22a 差動増幅器、22b,22d 微分回路、22c ローパスフィルタ、22e 反転回路、23 A/Dコンバータ、24 用紙、24a 表面、30 第1判定部、31 第2判定部、32 判定回数計数部、40 文字認識処理実行制限部、41 基準文字数記憶部、42 文字数取得部、43 文字数比較部、44 基準信号データ数記憶部、45 信号データ数取得部、46 信号データ数比較部、47 判定回数比較部、50 文字認識処理実行部、51 1文字相当分信号データ列取得部、52 文字認識部。
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気インク文字読取装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気インク文字(MICR文字:Magnetic Ink Character Recognition文字)による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、該磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置が知られている。
【0003】
このような磁気インク文字読取装置は、紙媒体に磁気インク文字で印刷された所定フォーマット(文字数等)の文字列を読み取るために用いられる。例えば、小売店等での小切手による精算の場面では、用紙に印刷された磁気インク文字列を読み取る機能と、用紙に画像を印刷するための機能と、を備えた磁気インク文字読取装置が用いられている。すなわち、小売店等の担当者は商品購入者から小切手を受け取り、その小切手に店識別情報や購入金額等を印刷する。次に、商品購入者は、小切手に印刷された店識別情報や購入金額等を確認し、小切手にサインする。そして、店側担当者は、サインされた小切手を受け取り、小切手の表面に磁気インク文字で印刷された口座番号等を磁気インク文字読取装置に読み取らせる。読み取られた口座番号等はホストコンピュータに送信され、その正当性が確認される。口座番号等の正当性が確認されると、その旨が小切手に印刷され、小切手による精算が完了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本来は所定フォーマットの文字列が印刷されているべきであるにも関わらず、印刷時のミス等によりその文字列の一部が印刷されていない場合がある。例えば、図20に示すような12文字の文字列が本来は印刷されているべきであるにも関わらず、実際には、例えば図21に示すように1文字欠けてしまっている場合がある。また、文字列の全部が一応印刷されている場合であっても、その文字列の一部が非常に薄く印刷されてしまっている場合がある。このような場合、磁気インク文字読取装置による認識結果の文字列は所定フォーマットに従ったものにはならず、その一部が欠落したものになってしまう。磁気インク文字読取装置では、記録媒体に記録されている磁気インク文字が1文字ずつ認識されていくため、上記のような場合、認識結果の文字列が所定フォーマットに従ったものにはならず、その一部が欠落したものになることは、文字認識処理がすべて完了してから判明することになる。このため、上記のような場合、磁気インク文字読取装置では文字認識処理が無駄に実行されることになってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、文字認識処理が無駄に実行されないように図ることが可能になる磁気インク文字読取装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る磁気インク文字読取装置は、磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置において、前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段によって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定手段と、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された回数を計数する判定回数計数手段と、前記判定回数計数手段による計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る磁気インク文字読取装置の制御方法は、磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置の制御方法において、前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定ステップと、前記第1判定ステップによって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定ステップと、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定ステップによって判定された回数を計数する判定回数計数ステップと、前記判定回数計数ステップによる計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明は、磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、該磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置に関するものである。本発明では、信号データ列から信号データが順次読み出され、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かが判定される。また、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かが判定される。さらに、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と判定された回数が計数される。そして、その計数結果に基づいて、文字認識処理の実行が制限される。本発明によれば、文字認識処理が無駄に実行されないように図ることが可能になる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記第1判定手段による判定結果に基づいて、前記信号データ列の一部を1文字相当分信号データ列として取得する1文字相当分信号データ列取得手段と、前記1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する文字認識手段と、を含み、前記文字認識処理実行制限手段は、回数と基準文字数とを対応づけて記憶する基準文字数記憶手段と、前記文字認識手段によって認識された文字数を取得する文字数取得手段と、前記文字数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準文字数記憶手段に記憶される基準文字数と、を比較する文字数比較手段と、を含み、前記文字数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記文字認識処理実行制限手段は、回数と基準信号データ数とを対応づけて記憶する基準信号データ数記憶手段と、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された場合、前記信号データ列の先頭又は所与の信号データから、該所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データまでの信号データ数を取得する信号データ数取得手段と、前記信号データ数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準信号データ数記憶手段に記憶される基準信号データ数と、を比較する信号データ数比較手段と、を含み、前記信号データ数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記第1判定手段及び前記第2判定手段による判定と、前記判定回数計数手段による計数と、は前記文字認識処理の実行が開始される前に実行され、
前記文字認識処理実行制限手段は、前記判定回数計数手段による計数結果と、所定の基準回数と、を比較する判定回数比較手段と、を含み、前記判定回数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行の開始を制限するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の全体構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態に係る磁気インク文字読取装置10は、制御部11と、記憶部12と、インタフェース(I/F)13と、磁気インク文字読取部14と、印刷部15と、を含んで構成される。
【0014】
制御部11は、記憶部12に記憶されるプログラムに従って動作し、磁気インク文字読取装置10全体の制御を行う。記憶部12は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を含んで構成される。記憶部12は、各種処理を実行するための各種データを記憶するワークメモリとしても動作する。
【0015】
インタフェース13は、ホストコンピュータ(図示せず)とデータ授受可能に通信接続するためのものである。インタフェース13は、制御部11からの指示に従って各種データをホストコンピュータに送信する。例えば、磁気インク文字読取装置10の各種ステータス情報や、用紙(記録媒体)に印刷(記録)された磁気インク文字の読み取り結果が、インタフェース13を介してホストコンピュータに供給される。また、インタフェース13はホストコンピュータから各種データを受信し、制御部11に供給する。例えば、ホストコンピュータで各種アプリケーションプログラムによって生成された画像の印刷データが、インタフェース13を介して制御部11に供給される。
【0016】
磁気インク文字読取部14は、用紙に印刷された磁気インク文字を読み取るためのものである。磁気インク文字読取部14の動作の詳細については後述する。制御部11は、磁気インク文字読取部14から供給されるデータに基づいて、用紙に磁気インク文字を用いて印刷された文字列を認識する。制御部11によって認識された文字列はインタフェース13を介してホストコンピュータに供給され、各種処理に供される。
【0017】
印刷部15は、用紙に画像を印刷するためのものである。制御部11は、ホストコンピュータからインタフェース13を介して供給される印刷データを解釈し、ラスタ画像データに変換する。制御部11はこのラスタ画像データを印刷部15に供給し、印刷させる。
【0018】
以上のように、磁気インク文字読取装置10は、用紙に磁気インク文字を用いて記録された文字列を読み取る機能と、用紙に画像を印刷するための機能と、を備えており、例えば小売店等での小切手による精算の場で用いられる。
【0019】
ここで、磁気インク文字読取部14についてさらに詳しく説明する。図2は磁気インク文字読取部14の機構を示す模式図である。図1及び図2に示すように、磁気インク文字読取部14は、用紙センサ16(用紙センサ16a及び16b)と、搬送ローラ17と、搬送モータ18と、搬送モータ駆動制御部19と、磁石20と、磁気ヘッド21と、磁気検出信号処理回路部22と、A/Dコンバータ23と、を含んで構成される。
【0020】
用紙センサ16aは磁気インク文字読取装置10の所定の挿入口に用紙24が挿入されたか否かを検出する。搬送ローラ17は挿入口に挿入された用紙24を一定速度で搬送する。搬送ローラ17によって用紙24が搬送されることによって、磁気ヘッド21と用紙24との相対移動が実現される。搬送モータ18は搬送ローラ17を一定速度で回転させるためのステップモータを含んで構成される。搬送モータ駆動制御部19は搬送モータ18の駆動を制御する。制御部11は、用紙センサ16aによって挿入口に用紙24が挿入されたことが検出されたら、搬送モータ駆動制御部19に搬送モータ18を駆動させる。搬送モータ18が駆動されると、搬送ローラ17が図2に示すA方向(時計回り方向)に回転され、用紙24が図2に示すB方向に搬送される。このとき、用紙24は磁気ヘッド21と搬送ローラ17とに挟持される。
【0021】
用紙24の表面24aの磁気インク文字が印刷された領域は磁石20によって磁化される。磁気ヘッド21は磁束の変化を検出する素子である。磁気ヘッド21は、用紙24の表面24aに印刷された磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号(磁気検出信号)を出力する。磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号は磁気検出信号処理回路部22に入力される。
【0022】
ここで、磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号と、磁気検出信号処理回路部22の動作と、について説明する。図3は、磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号と、磁気検出信号処理回路部22の動作と、について説明するための図である。
【0023】
本実施の形態では、JIS X9002で規定される磁気インク文字を読み取り対象とする。JIS X9002では14種類の磁気インク文字(ストローク0〜13)が規定されている。ストローク0〜9はそれぞれ0〜9の数字に対応している。ストローク10〜13はそれぞれ所定の記号に対応している。図3(a)は、JIS X9002で規定される磁気インク文字の一例を示している。ここでは、ストローク0とストローク8とが表されている。図3(a)に示すように、各磁気インク文字は、1辺の長さが0.33mmの正方形が縦に9個、横に7個配列されてなる矩形内に収まるように規定されている。また、JIS X9002では、磁気インク文字の1文字分のピッチが3.175mmと規定されている。
【0024】
図3(b)は、図3(a)に示す磁気インク文字が読み取られる場合に、磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号を示している。図3(b)に示すように、磁気ヘッド21の検出対象領域の少なくとも一部が、用紙24の磁気インク文字が印刷されていない領域から磁気インク文字が印刷された領域へと変わるタイミング(A,C,E,F,H)、すなわち、磁束が増加するタイミングでは、正極性のパルスが磁気ヘッド21から出力される。また、磁気ヘッド21の検出対象領域の少なくとも一部が、用紙24の磁気インク文字が印刷されている領域から磁気インク文字が印刷されていない領域に変わるタイミング(B,D,G,I,J)、すなわち、磁束が減少するタイミングでは、負極性のパルスが磁気ヘッド21から出力される。
【0025】
磁気検出信号処理回路部22は、磁気ヘッド21から入力される磁気検出信号の増幅及びフィルタリングを行う。図4は磁気検出信号処理回路部22の機能ブロック図である。図4に示すように、磁気検出信号処理回路部22は、差動増幅器22aと、微分回路22bと、ローパスフィルタ22cと、微分回路22dと、反転回路22eと、を含んで構成される。
【0026】
磁気ヘッド21から入力された磁気検出信号は、差動増幅器22aによって直流バイアス(直流レベルシフト)されることによって増幅される。本実施の形態では、磁気ヘッド21から入力される磁気検出信号が差動増幅器22aによって2.5V分だけ直流バイアスされる。差動増幅器22aによって増幅された磁気検出信号は、微分回路22bによってピーク部分が強調され、ローパスフィルタ22cによってノイズ成分が除去される。ローパスフィルタ22cによってノイズ成分が除去された磁気検出信号は、微分回路22d及び反転回路22eを介してA/Dコンバータ23に入力される。
【0027】
図3(c)は、図3(b)に示す磁気検出信号が磁気ヘッド21から入力される場合に、磁気検出信号処理回路部22から出力される信号を示している。図3(c)に示すように、磁気ヘッド21から入力される磁気検出信号が直流バイアスされてなる信号が、磁気検出信号処理回路部22から出力される。
【0028】
A/Dコンバータ23は、磁気検出信号処理回路部22から入力される信号を、タイマ回路(図示せず)によって発生される割り込み信号に従ってA/D変換する。磁気インク文字を認識する場合には磁気検出信号のピーク位置を正確に特定することが重要になる。このため、磁気インク文字の認識処理において磁気検出信号のピーク位置が正確に特定できるよう、ここでは、磁気検出信号の最小ピーク間隔の10倍程度のサンプリング周波数でサンプリングされる。また、磁気検出信号は、例えば量子化ビット数10ビットで量子化される。より具体的には、0〜5Vの電圧が1024段階の数値で表されるように量子化される。A/D変換された信号(以下、磁気検出信号データと記載する。)は制御部11に順次供給され、記憶部12に順次記憶される。図5は、記憶部12に記憶される磁気検出信号データの一例を示している。
【0029】
以上に説明した磁気インク文字読取部14の動作は、磁気ヘッド21の下流側に設けられた用紙センサ16bによって用紙24が検出されなくなるまで、又は、搬送ローラ17によって用紙24が所定量搬送されるまで繰り返される。
【0030】
次に、用紙24に印刷された磁気インク文字を、記憶部12に記憶される磁気検出信号データに基づいて認識するための処理について説明する。図6乃至図9はこの処理を示すフロー図である。図10はこの処理を説明するための図である。この処理は、記憶部12に記憶されるプログラムが制御部11によって実行されることによって実現される。
【0031】
図6に示すように、まず、磁気インク文字読取装置10は磁気検出信号データの全サンプル値の平均値aを算出する(S101)。そして、磁気インク文字読取装置10は、磁気検出信号データの各サンプル値と、平均値aと、の差分値の配列である差分値列Xを生成する(S102:図10の(1)参照)。
【0032】
また、磁気インク文字読取装置10は各種変数を初期化する(S103)。例えば、磁気インク文字読取装置10は文字列型変数sを空文字列(長さ0の文字列)に初期化する。この文字列型変数sは、用紙24に印刷された磁気インク文字列の認識結果を保持するために用いられる。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数bを0に初期化する。変数bは、差分値列Xにおいて正極性のピーク点(図3(b)に示すタイミングA,C,E,F,H等)に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された場合に1ずつ加算される変数である。すなわち、変数bは、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された回数をカウントするために用いられる。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数cを0に初期化する。変数cは、認識された磁気インク文字の数をカウントするために用いられる。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数iを1に初期化する。
【0033】
その後、磁気インク文字読取装置10は、差分値列のi番目の要素である要素Xiが正極性のピーク点に対応するものであるか否かを判定する(S104)。例えば、磁気インク文字読取装置10は、要素Xiの値が、差分値列Xの(i−1)番目の要素Xi−1の値以上であり、かつ、差分値列Xの(i+1)番目の要素Xi+1の値以下であるか否かを判定する。そして、磁気インク文字読取装置10は、要素Xiの値が、要素Xi−1の値以上であり、かつ、要素Xi+1の値以下である場合、要素Xiが正極性のピーク点に対応するものであると判定する。
【0034】
要素Xiが正極性のピーク点に対応するものである場合、磁気インク文字読取装置10は変数tの値を0に初期化する(S105)。変数tは、正極性のピーク点に対応しない要素がどれだけ連続しているかをカウントするために用いられる。
【0035】
その後、磁気インク文字読取装置10は、用紙24に印刷された磁気インク文字列を認識するための処理を実行する。
【0036】
まず、磁気インク文字読取装置10は、差分値列Xの要素Xi,Xi+1,Xi+2,・・・,Xi+Nを、注目差分値列Yとして取得する(S106:図10の(2)参照)。この注目差分値列Yは1文字相当分の差分値列である。定数Nの値は、1文字分の要素数(サンプル数)に設定される。すなわち、定数Nは、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間に対応する要素数に設定される。なお、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間は、磁気インク文字のピッチと用紙24の搬送速度とに基づいて算出される。また、該時間に対応する要素数は、該時間とサンプリング周波数とに基づいて算出される。
【0037】
その後、磁気インク文字読取装置10は、注目差分値列Yに関して、連続する4つの要素ごとに平均値を算出し、平均値列Zを生成する(S107:図10の(3)参照)。
【0038】
そして、磁気インク文字読取装置10は、この平均値列Zに基づいて、注目差分値列Yに対応する磁気インク文字を特定する。
【0039】
まず、磁気インク文字読取装置10は変数jを0に初期化する(S108)。そして、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjとの類似度を算出する(S109)。
【0040】
記憶部12には、例えば図11に示すような基準値列テーブルがあらかじめ記憶されている。図11に示すように、基準値列テーブルは各磁気インク文字ごとの基準値列Pを示すテーブルである。ここで、「基準値列」は、各磁気インク文字の原磁気検出信号(各磁気インク文字が読み取られる際に磁気ヘッド21から出力される磁気検出信号)に対して、磁気検出信号処理回路部22における処理と同様の処理(直流バイアス等)を施した後、A/Dコンバータ23における処理と同様のA/D変換処理を行うことによって得られる基準磁気検出信号データである。
【0041】
S109では、磁気インク文字読取装置10は、まずストロークjの基準値列Pを読み出す。次に、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjの基準値列Pに対してS101及びS102と同様の処理を実行することによって、ストロークjの基準差分値列Qを生成する(図10の(4)参照)。そして次に、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjの基準差分値列Qに対してS107と同様の処理を実行することによって、基準平均値列Rを生成する(図10の(5)参照)。そして、磁気インク文字読取装置10は、平均値列Zと基準平均値列Rとの類似度を算出する(図10の(6)参照)。この類似度は下記の式(1)によって算出される。類似度は−1以上1以下の値となり、その値が大きいほど平均値列Zと基準平均値列Rとが類似していることを示す。
【0042】
【数1】
【0043】
S109で算出された類似度は、ストロークjとの類似度として記憶部12に記憶される。
【0044】
次に、磁気インク文字読取装置10は、S109で算出した類似度が0.85以上であるか否かを判定する(S110)。類似度が0.85以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、注目差分値列Yがストロークjの磁気検出結果を示すものであると判断する。この場合、磁気インク文字読取装置10は、ストロークjに対応する文字を、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加する(S111)。例えば、変数jの値が0である場合には、ストローク0に対応する文字、すなわち「0」が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加される。また例えば、変数jの値が10である場合には、ストローク10に対応する文字、例えば「A」が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加される。
【0045】
このように、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度を順に算出して行く過程で、ある磁気インク文字の類似度が非常に高い場合には、注目差分値列Yがその磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断し、残りの磁気インク文字(その時点で類似度を未算出の磁気インク文字)については類似度を算出しないようになっている。このようにして、磁気インク文字読取装置10では処理負荷の軽減が図られている。
【0046】
一方、類似度が0.85未満である場合、磁気インク文字読取装置10は変数jの値に1を加算し(S112)、変数jの値が13以下であるか否かを判定する(S113)。変数jの値が13以下である場合、磁気インク文字読取装置10はS109から再実行する。このようにして、各ストローク0〜13の類似度が算出され、記憶部12に記憶される。
【0047】
S113において変数jの値が13より大きいと判定された場合、すなわち、各ストローク0〜13の類似度がすべて算出された場合、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.5以上であるか否かを判定する(S114)。
【0048】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.5未満である場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行し(S115)、本処理を中止する。この場合、例えば、磁気インク文字読取装置の液晶表示部に読み取りエラーが発生した旨のメッセージを出力させるための処理や、ホストコンピュータに所定データを送信し、読み取りエラーが発生した旨のメッセージをホストコンピュータの表示部に出力させるための処理が実行される。
【0049】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が低い値である場合には、注目差分値列Yが最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものではない可能性も十分に考えられる。このような場合にも、注目差分値列Yが最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断してしまうと、誤認識になってしまう可能性がある。この点、磁気インク文字読取装置10ではS114及びS115が実行されることによって、そのような誤認識が発生しないように図られている。
【0050】
一方、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.5以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.6以上であるか否かを判定する(S116)。そして、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.6未満である場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行する(S117)。この場合、磁気インク文字の読み取りを再実行するための処理(リトライ処理)が実行される。例えば、磁気インク文字読取装置10は搬送ローラ17を逆回転させ、用紙24を最初の位置(挿入口)に戻す。その後、磁気インク文字読取装置10は搬送ローラ17を正回転させ、磁気検出信号データ(図5参照)を再取得する。磁気インク文字読取装置10は磁気検出信号データを再取得したら、その再取得された磁気検出信号データに基づいて本処理を最初から実行する。
【0051】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が低い値ではないものの、高い値であるともいえないような場合には、一時的な要因によって、用紙24に印刷された磁気インク文字による磁束の変化がうまく検出されなかった可能性が考えられる。この点、磁気インク文字読取装置10は、そのような場合に磁気検出信号データを自動的に再取得し、その後、その再取得した磁気検出信号データに基づいて本処理を最初から再実行する。このように、磁気インク文字読取装置10ではS116及びS117が実行されることによって、認識精度の向上が図られている。また、磁気インク文字読取装置10では、磁気インク文字の読み取りを再実行するにあたって、ユーザの手間が増大しないように図られている。
【0052】
一方、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値が0.6以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が0.3以上であるか否かを判定する(S118)。そして、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が0.3未満である場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行する(S117)。すなわち、この場合にも、磁気検出信号データの再取得が自動的に実行された後、その再取得された磁気検出信号データに基づいて本処理が最初から再実行される。
【0053】
各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が小さい場合には、注目差分値列Yが、最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものではなく、2番目に類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものである可能性も十分に考えられる。このような場合にも、注目差分値列Yが最も類似度の高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断してしまうと、誤認識になってしまう可能性がある。この点、磁気インク文字読取装置10ではS118及びS117が実行されることによって、そのような誤認識が発生しないように図られている。
【0054】
一方、各ストローク0〜13の類似度のうちの最大値と2番目に高い値との差が0.3以上である場合、磁気インク文字読取装置10は、注目差分値列Yが、ストローク0〜13のうちの最も類似度が高い磁気インク文字の磁気検出結果を示すものであると判断し、その磁気インク文字に対応する文字を、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加する(S119)。例えば、ストローク0の類似度が最も高い場合には、ストローク0に対応する文字、すなわち「0」が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加される。
【0055】
S111又はS119において、注目差分値列Yに対応する磁気インク文字が特定され、その磁気インク文字に対応する文字が、文字列型変数sに保持される文字列の末尾に追加された場合、磁気インク文字読取装置10は変数cの値に1を加算する(S120)。その後、磁気インク文字読取装置10は、要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S121)。要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は本処理を終了する。一方、要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数iの値にN+1を加算し(S122)、S104から再実行する。
【0056】
次に、S104において、要素Xiが正極性のピーク点に対応するものでないと判定された場合に実行される処理について説明する。
【0057】
要素Xiが正極性のピーク点に対応するものでないと判定された場合、磁気インク文字読取装置10は変数tの値に1を加算する(S123)。そして、磁気インク文字読取装置10は、変数cの値が0より大きく、かつ、変数tの値がTになったか否かを判定する(S124)。定数Tは、例えば1文字分の要素数(サンプル数)に設定される。すなわち、定数Tは、例えば、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間に対応する要素数に設定される。この場合、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送させるのに要する時間は、磁気インク文字のピッチと用紙24の搬送速度とに基づいて算出される。また、該時間に対応する要素数は、該時間とサンプリング周波数とに基づいて算出される。定数Tがこのように設定される場合には、S124において、磁束の増加が検出されない状態が、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24が搬送される間以上の期間にわたって継続したか否かが判定されることになる。さらに言い換えれば、1文字以上の磁気インク文字に相当するスペースの存在が検出されることになる。なお、ここでは、用紙24の端から1文字目の磁気インク文字までのスペースについては無視する趣旨で、S124において変数cの値が0より大きいか否かの判定が行われている。
【0058】
変数cの値が0より大きく、かつ、変数tの値がTである場合、磁気インク文字読取装置10は変数bの値に1を加算する(S125)。その後、磁気インク文字読取装置10は、変数bの値に対応する基準文字数Cを基準文字数テーブルから読み出す(S126)。
【0059】
ここで、基準文字数テーブルについて説明する。図12は基準文字数テーブルの一例を示している。図12に示すように、基準文字数テーブルは「回数」フィールドと「基準文字数」フィールドとを含み、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された回数と、その時点で認識されているべき文字数(基準文字数)と、を対応づけてなるテーブルである。この基準文字数テーブルは、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに合わせて設定される。図12は、図20に示すフォーマットの磁気インク文字列を読み取る場合の基準文字数テーブルを示している。すなわち、図12は、12文字の磁気インク文字からなり、かつ、1文字以上の磁気インク文字に相当するスペースが5文字目と6文字目との間及び8文字目と9文字目との間にそれぞれ挿入されてなる磁気インク文字列を読み取る場合の基準文字数テーブルを示している。すなわち、図12に示す基準文字数テーブルは、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することの1回目の検出時には、5文字(図20に示す例では5,4,3,2,1の5文字)が認識済みでなければならないことを示している。また、図12に示す基準文字数テーブルは、2回目の検出時には8文字(図20に示す例では5,4,3,2,1,6,7,8の8文字)が認識済みでなければならないことを示している。さらに、図12に示す基準文字数テーブルは、3回目の検出時には12文字(図20に示す例では5,4,3,2,1,6,7,8,9,9,9,9の12文字)が認識済みでなければならないことを示している。なお上述したように、ここでは、用紙24の端から最初の磁気インク文字までのスペースについては無視するようになっている。
【0060】
S126では、磁気インク文字読取装置10は、「回数」フィールドの値が変数bの値に等しいレコードの「基準文字数」フィールドの値を基準文字数Cとして読み出す。
【0061】
その後、磁気インク文字読取装置10は変数cの値が基準文字数Cに等しいか否かを判定する(S127)。変数cの値が基準文字数Cに等しくない場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行し(S128)、本処理を中止する。この場合の読み取りエラー処理はS115における読み取りエラー処理と同様の処理である。
【0062】
以上のように、磁気インク文字読取装置10では、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数連続することが検出されるごとに、その時点の認識済みの文字数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、認識済みの文字数が正当である場合には文字認識処理が続行され、認識済みの文字数が正当でない場合には文字認識処理が中止される。このため、磁気インク文字読取装置10では、例えば図21に示すように磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等には、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになっている。
【0063】
なお、基準文字数テーブルに代えて、例えば図13に示すような基準要素数テーブルが記憶されるようにしてもよい。図13に示すように、基準要素数テーブルは「回数」フィールドと「基準要素数」フィールドとを含み、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが検出された回数と、その時点で処理されているべき要素数(基準要素数)と、を対応づけてなるテーブルである。この基準要素数テーブルも、基準文字数テーブルと同様に、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに合わせて設定される。この場合、磁気インク文字読取装置10は、図9のS126において、変数bの値に対応する基準要素数Dを基準要素数テーブルから読み出すようにすればよい。また、変数iの値は処理済みの要素数を示しているため、磁気インク文字読取装置10は、図9のS127において、変数iの値が基準要素数Dに等しいか否かを判定するようにすればよい。このようにして、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことを比較的早期に察知し、無駄に文字認識処理が実行されないようにしてもよい。
【0064】
変数cの値が0である場合(S124のN)、変数tの値がTでない場合(S124のN)や変数cの値が基準文字数Cに等しい場合(S127のY)には、磁気インク文字読取装置10は要素Xiが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S129)。要素Xiが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は本処理を終了する。一方、要素Xiが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数iの値に1を加算し(S130)、S104から再実行する。
【0065】
なお、磁気インク文字読取装置10は、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等によって、認識結果の磁気インク文字列が所定のフォーマットに合致しないものになってしまわないか否かを確認した後に、文字認識処理の実行を開始するようにしてもよい。図14はこの場合の処理を示すフロー図である。
【0066】
この場合、図14に示すように、磁気インク文字読取装置10は磁気検出信号データ(図5参照)の全サンプル値の平均値aを算出する(S201)。そして、磁気インク文字読取装置10は、磁気検出信号データの各サンプル値と、平均値aと、の差分値の配列である差分値列Xを生成する(S202)。これらの処理は、図6のS101及びS102と同様に実行される。
【0067】
また、磁気インク文字読取装置10は各種変数を初期化する(S203)。例えば、磁気インク文字読取装置10は変数b’や変数t’を0に初期化する。変数b’は図6乃至図9における変数bと同様である。変数t’は図6乃至図9における変数tと同様である。また例えば、磁気インク文字読取装置10は変数kを1に初期化する。
【0068】
その後、磁気インク文字読取装置10は、差分値列Xのk番目の要素Xkが正極性のピーク点に対応するものであるか否かを判定する(S204)。この判定は図6のS104と同様に実行される。
【0069】
要素Xkが正極性のピーク点に対応するものでない場合、磁気インク文字読取装置10は変数t’の値に1を加算する(S205)。そして、磁気インク文字読取装置10は変数t’の値がTになったか否かを判定する(S206)。定数Tは図9のS124と同様である。変数t’の値がTになった場合、磁気インク文字読取装置10は変数b’の値に1を加算する(S207)。
【0070】
一方、要素Xkが正極性のピーク点に対応するものである場合、磁気インク文字読取装置10は変数t’の値を0に初期化する(S208)。また、磁気インク文字読取装置10は変数kの値にNを加算する(S209)。ここで、定数Nは図6のS106と同様である。この場合、差分値列Xの要素Xkから要素Xk+Nまでが読み捨てられることになる。
【0071】
S204乃至S209の処理が完了すると、磁気インク文字読取装置10は要素Xkが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S210)。要素Xkが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数kの値に1を加算し(S211)、S204から再実行する。
【0072】
一方、要素Xkが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は変数b’の値がBであるか否かを判定する(S212)。定数Bは、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに合わせて設定され、記憶部12に記憶される。例えば図20に示すフォーマットの磁気インク文字列を読み取る場合であれば定数Bは4に設定される。図20に示すフォーマットの文字列を読み取る場合には、a)用紙24の左端から1文字目の磁気インク文字「5」までのスペースと、b)5文字目の磁気インク文字「1」と6文字目の磁気インク文字「6」との間のスペースと、c)8文字目の磁気インク文字「8」と9文字目の磁気インク文字「9」との間のスペースと、d)12文字目の磁気インク文字「9」から用紙24の左端までのスペースと、が存在するため、差分値列Xにおいて正極性のピーク点に対応しない要素が所定個数以上連続することが4回検出されるはずであるからである。なお、ここでは、用紙24の左端から1文字目の磁気インク文字までのスペースを考慮に入れることにしている。
【0073】
変数b’の値がBである場合、磁気インク文字読取装置10は磁気インク文字の認識処理を実行する(S213)。ここで、磁気インク文字の認識処理は、図6乃至図9に示す処理と同様の処理である。ただし、図6のS101及びS102や図9のS123乃至S128は省略するようにしてもよい。
【0074】
一方、変数b’の値がBでない場合、磁気インク文字読取装置10は読み取りエラー処理を実行し(S214)、本処理を中止する。この場合の読み取りエラー処理は、図8のS115における読み取りエラー処理と同様の処理である。
【0075】
このようにしても、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等には、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0076】
また、図8のS117が実行され、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識が実行される場合には、次のようにして処理負荷の軽減を図るようにしてもよい。すなわち、図8のS117の読み取りエラー処理では、その時点における変数cの値を認識済み文字数C0として記憶部12に記憶させるとともに、その時点における文字列型変数sに保持される文字列を認識済み文字列S0として記憶部12に記憶させるようにしてもよい。そして、磁気インク文字読取装置10は、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識を再実行する場合には、図6に示す処理に代えて、図15に示す処理を実行するようにしてもよい。なお、図15では図6と同様の処理については同じ符号を付している。
【0077】
図15に示す処理は、S103に代えてS301が実行される点で、図6に示す処理とは異なっている。S301は、文字列型変数sが、記憶部12に記憶される認識済み文字列S0に初期化される点でS103とは異なっている。
【0078】
また図15に示す処理は、S105とS106の間にS302が追加されるとともに、さらにS303乃至S305が追加されている点でも、図6に示す処理とは異なっている。すなわち、図15に示す処理では、要素Xiが正極性のピーク点に対応するものである場合、磁気インク文字読取装置10は記憶部12に記憶される認識済み文字数C0を読み出し、変数cの値が認識済み文字数C0以上であるか否かを判定する(S302)。変数cの値が認識済み文字数C0未満である場合、磁気インク文字読取装置10は変数cの値に1を加算する(S303)。そして、磁気インク文字読取装置10は要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素であるか否かを判定する(S304)。要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素である場合、磁気インク文字読取装置10は本処理を終了する。一方、要素Xi+Nが差分値列Xの最後の要素でない場合、磁気インク文字読取装置10は変数iの値にN+1を加算し(S305)、その後、S104から再実行する。すなわち、この場合、差分値列Xの要素Xiから要素Xi+Nまでが読み捨てられ、要素Xiから要素Xi+Nまでに対応する磁気インク文字の認識が省略される。
【0079】
このようにして、磁気インク文字読取装置10は、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識処理を再実行する場合には、すでに認識済みの部分については認識処理を省略するようにしてもよい。こうすれば、再取得された磁気検出信号データに基づいて磁気インク文字の認識を再実行する場合の処理負荷を軽減することが可能になる。
【0080】
次に、磁気インク文字読取装置10で実現される機能について説明する。図16は磁気インク文字読取装置10で実現される機能のうち、本発明に関連するものを主として示す図である。図16に示すように、磁気インク文字読取装置10には、第1判定部30と、第2判定部31と、判定回数計数部32と、文字認識処理実行制限部40と、文字認識処理実行部50と、が機能的に含まれる。これらの機能ブロックは、例えば図6乃至図9、図14及び図15に示す処理を磁気インク文字読取装置10に実行させるためのプログラムが記憶部12から読み出され、制御部11によって実行されることによって実現される。
【0081】
第1判定部30は制御部11を主として実現される。第1判定部30は、磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する。「磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列」は、磁気ヘッド21の出力信号をサンプリングすることによって得られる信号データ列である。例えば、「磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列」は、磁気検出信号データ(図5参照)や差分値列X(図10参照)である。「所定信号」は、例えば磁気インク文字による磁束の増加に応じた信号(正極性のピーク信号)である。
【0082】
第2判定部31は制御部11及び記憶部12を主として実現される。第2判定部31は、信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が、第1判定部30によって、所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する。「所定数」は、例えば、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送するのに要する時間に対応する信号データ数である。
【0083】
判定回数計数部32は制御部11及び記憶部12を主として実現される。判定回数計数部32は、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定された回数を計数し、その計数結果を記憶する。
【0084】
文字認識処理実行部50は制御部11及び記憶部12を主として実現される。文字認識処理実行部50は、磁気ヘッド21の出力信号に対応する信号データ列に基づいて、用紙24に印刷された磁気インク文字を認識するための文字認識処理を実行する。
【0085】
文字認識処理実行制限部40は制御部11及び記憶部12を主として実現される。文字認識処理実行制限部40は、判定回数計数部32による計数結果に基づいて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行を制限する。
【0086】
以下、文字認識処理実行制限部40及び文字認識処理実行部50の機能についてさらに詳しく説明する。文字認識処理実行制限部40及び文字認識処理実行部50は例えば図17に示すような機能を備える。
【0087】
図17に示すように、文字認識処理実行部50は1文字相当分信号データ列取得部51と、文字認識部52と、を含んでいる。
【0088】
1文字相当分信号データ列取得部51は制御部11を主として実現される。1文字相当分信号データ列取得部51は、第1判定部30による判定結果に基づいて、信号データ列の一部を1文字相当分信号データ列として取得する。例えば、1文字相当分信号データ列取得部51は、第1判定部30によっていずれかの信号データが所定信号に対応するものであると判定された場合、該信号データ以降の所定数の信号データを1文字相当分信号データ列として取得する。ここで、「所定数」は、例えば、磁気インク文字のピッチに相当する距離だけ用紙24を搬送するのに要する時間に対応する信号データ数である。「1文字相当分信号データ列」は、例えば、磁気検出信号データから切り出される1文字相当分データや、注目差分値列Y(図10参照)である。
【0089】
文字認識部52は制御部11を主として実現される。文字認識部52は1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する。文字認識部52は、1文字相当分信号データ列と、各磁気インク文字の基準データ列と、を比較することによって、1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する。例えば、文字認識部52は、1文字相当分信号データ列と、各磁気インク文字の基準データ列と、の類似度を算出し、最も類似度の高い磁気インク文字を、1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字として認識する。なお、「磁気インク文字の基準データ列」は、例えば基準値列P(図10参照)や基準差分値列Q(図10参照)である。
【0090】
また図17に示すように、文字認識処理実行制限部40は基準文字数記憶部41と、文字数取得部42と、文字数比較部43と、を含んでいる。
【0091】
基準文字数記憶部41は記憶部12によって実現される。基準文字数記憶部41は回数と基準文字数とを対応づけて記憶する。基準文字数記憶部41は、例えば図12に示すような基準文字数テーブルを記憶する。
【0092】
文字数取得部42は制御部11を主として実現される。文字数取得部42は文字認識部52によって認識された文字数を取得する。例えば、文字数取得部42は、文字認識部52によって1文字認識されるごとに、記憶部12に記憶される数値(例えば図6又は図15,図7乃至図9に示す処理における変数c)を増加することによって、文字認識部52によって認識された文字数を計数する。また例えば、文字数取得部42は、記憶部12に記憶された文字認識部52の認識結果(例えば図6又は図15,図7乃至図9に示す処理における変数s)から、文字認識部52によって認識された文字数を取得する。
【0093】
文字数比較部43は制御部11を主として実現される。文字数比較部43は、文字数取得部42による取得結果と、判定回数計数部32によって計数された回数に対応づけて基準文字数記憶部41に記憶される基準文字数と、を比較する。
【0094】
この場合、文字認識処理実行制限部40は、文字数比較部43による比較結果に応じて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行を制限(例えば抑止)する。
【0095】
図17に示す構成では、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定されるごとに、その時点で認識済みの文字数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、認識済みの文字数が正当である場合には文字認識処理が続行され、認識済みの文字数が正当でない場合には文字認識処理の実行が制限される。その結果、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されているような場合において、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0096】
なお、文字認識処理実行制限部40は例えば図18に示すような機能を備えるようにしてもよい。図18に示すように、この場合の文字認識処理実行制限部40は基準信号データ数記憶部44と、信号データ数取得部45と、信号データ数比較部46と、を含んでいる。
【0097】
基準信号データ数記憶部44は記憶部12によって実現される。基準信号データ数記憶部44は回数と基準信号データ数とを対応づけて記憶する。基準信号データ数記憶部44は、例えば図13に示すような基準要素数テーブルを記憶する。
【0098】
信号データ数取得部45は制御部11を主として実現される。信号データ数取得部45は、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定された場合、信号データ列の先頭又は所与の信号データから、該所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データまでの信号データ数を取得する。「所与の信号データ」は、例えば、所定信号に対応するものであると第1判定部30によって判定された最初の信号データである。「所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データ」は、該所定数以上の信号データのうちのいずれかであり、より具体的には、該所定数以上の信号データのうちの先頭の信号データである。
【0099】
信号データ数比較部46は制御部11を主として実現される。信号データ数比較部46は、信号データ数取得部45による取得結果と、判定回数計数部32によって計数された回数に対応づけて基準信号データ数記憶部44に記憶される基準信号データ数と、を比較する。
【0100】
この場合、文字認識処理実行制限部40は、信号データ数比較部46による比較結果に応じて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行を制限(例えば抑止)する。
【0101】
図18に示す構成では、「信号データが所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られた」と第2判定部31によって判定されるごとに、例えば信号データ列の先頭から、該所定数以上の信号データのうちの先頭の信号データまでの信号データ数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、該信号データ数が正当である場合には文字認識処理が続行され、該信号データ数が正当でない場合には文字認識処理の実行が制限される。その結果、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されているような場合において、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0102】
また、文字認識処理実行制限部40は例えば図19に示すような機能を備えるようにしてもよい。
【0103】
この場合、第1判定部30及び第2判定部31による判定や判定回数計数部32による計数は、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行が開始される前に実行される。
【0104】
図19に示すように、この場合の文字認識処理実行制限部40は判定回数比較部47を含んでいる。判定回数比較部47は、判定回数計数部32による計数結果と、所定の基準回数と、を比較する。判定回数計数部32による計数結果は、例えば図14に示す処理における変数b’であり、「所定の基準回数」は、例えば図14に示す処理における定数Bである。
【0105】
この場合の文字認識処理実行制限部40は、判定回数比較部47による比較結果に応じて、文字認識処理実行部50による文字認識処理の実行の開始を制限(例えば抑止)する。
【0106】
図19に示す構成では、磁気ヘッド21から所定の信号が出力されない状態が所定期間以上継続する回数が、用紙24に印刷された磁気インク文字列のフォーマットに照らして正当であるか否かが判定される。そして、上記回数が正当である場合には文字認識処理が開始され、上記回数が正当でない場合には文字認識処理の開始が制限される。その結果、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されているような場合において、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが文字認識処理の実行前に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになる。
【0107】
以上説明したように、磁気インク文字読取装置10によれば、磁気インク文字列の一部が印刷されていなかったり、又は非常に薄く印刷されている場合等には、認識結果が所定のフォーマットに従ったものにならないことが比較的早期に察知され、無駄に文字認識処理が実行されないようになり、磁気インク文字読取装置10の処理負荷が軽減される。
【0108】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではない。
【0109】
例えば、印刷部15は必須の構成ではない。
【0110】
また例えば、用紙24に印刷される磁気インク文字は、JIS X9002以外のフォーマットの磁気インク文字であってもよい。
【0111】
また例えば、図8のS115、図9のS128や図14のS214では、図8のS117と同様の読み取りエラー処理(リトライ処理)が実行されるようにしてもよい。
【0112】
また例えば、図8のS117では、図8のS115と同様の読み取りエラー処理(中止処理)を実行されるようにしてもよい。
【0113】
また例えば、図6や図15のS104において要素Xiが正極性のピーク点に対応するものであると1度も判定されなかった場合、すなわち、正極性のピーク点が検出されなかった場合にも、図8のS115と同様の読み取りエラー処理(中止処理)を実行するようにしてもよい。この場合、図8のS117と同様の読み取りエラー処理(リトライ処理)は実行しないようにするとよい。正極性のピーク点が検出されなかった場合には、用紙24が表裏反対に挿入されている可能性が高いため、リトライ処理が無駄になる可能性が高い。この点、以上のようにすれば、無駄なリトライ処理の実行を抑止することができ、磁気インク文字読取装置10の処理負荷の軽減を図ることが可能になる。
【0114】
また例えば、文字列の所定位置に所定シンボル(例えばストローク10〜13)があるか否かを判定し、その判定結果に応じて、図8のS115又はS117と同様の読み取りエラー処理を実行するようにしてもよい。
【0115】
また例えば、磁気インク文字読取装置10は、リトライ処理を複数回繰り返すようにしてもよい。この場合、磁気インク文字読取装置10は、リトライ処理の回数が所定回数繰り返された場合にはリトライ処理の実行を抑止し、磁気インク文字の読み取りを中止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の全体構成を示す図である。
【図2】磁気インク文字読取部の機構を示す模式図である。
【図3】磁気インク文字の一例と、磁気インク文字が読み取られる場合に出力される信号と、について示す図である。
【図4】磁気検出信号処理回路部の機能ブロック図である。
【図5】磁気検出信号データの一例を示す図である。
【図6】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図7】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図8】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図9】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図10】磁気インク文字読取装置で実行される処理について説明するための図である。
【図11】基準値列テーブルの一例を示す図である。
【図12】基準文字数テーブルの一例を示す図である。
【図13】基準要素数テーブルの一例を示す図である。
【図14】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図15】磁気インク文字読取装置で実行される処理を示すフロー図である。
【図16】本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の機能ブロック図である。
【図17】判定部、文字認識処理実行制限部及び文字認識処理実行部の機能ブロック図である。
【図18】判定部、文字認識処理実行制限部及び文字認識処理実行部の機能ブロック図である。
【図19】判定部、文字認識処理実行制限部及び文字認識処理実行部の機能ブロック図である。
【図20】磁気インク文字を用いて文字列が印刷された用紙の一例を示す図である。
【図21】磁気インク文字を用いて文字列が印刷された用紙の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10 磁気インク文字読取装置、11 制御部、12 記憶部、13 インタフェース、14 磁気インク文字読取部、15 印刷部、16,16a,16b 用紙センサ、17 搬送ローラ、18 搬送モータ、19 搬送モータ駆動制御部、20 磁石、21 磁気ヘッド、22 磁気検出信号処理回路部、22a 差動増幅器、22b,22d 微分回路、22c ローパスフィルタ、22e 反転回路、23 A/Dコンバータ、24 用紙、24a 表面、30 第1判定部、31 第2判定部、32 判定回数計数部、40 文字認識処理実行制限部、41 基準文字数記憶部、42 文字数取得部、43 文字数比較部、44 基準信号データ数記憶部、45 信号データ数取得部、46 信号データ数比較部、47 判定回数比較部、50 文字認識処理実行部、51 1文字相当分信号データ列取得部、52 文字認識部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置において、
前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段によって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定手段と、
前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された回数を計数する判定回数計数手段と、
前記判定回数計数手段による計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限手段と、
を含むことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気インク文字読取装置において、
前記第1判定手段による判定結果に基づいて、前記信号データ列の一部を1文字相当分信号データ列として取得する1文字相当分信号データ列取得手段と、
前記1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する文字認識手段と、を含み、
前記文字認識処理実行制限手段は、
回数と基準文字数とを対応づけて記憶する基準文字数記憶手段と、
前記文字認識手段によって認識された文字数を取得する文字数取得手段と、
前記文字数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準文字数記憶手段に記憶される基準文字数と、を比較する文字数比較手段と、を含み、
前記文字数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限する、
ことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気インク文字読取装置において、
前記文字認識処理実行制限手段は、
回数と基準信号データ数とを対応づけて記憶する基準信号データ数記憶手段と、
前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された場合、前記信号データ列の先頭又は所与の信号データから、該所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データまでの信号データ数を取得する信号データ数取得手段と、
前記信号データ数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準信号データ数記憶手段に記憶される基準信号データ数と、を比較する信号データ数比較手段と、を含み、
前記信号データ数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限する、
ことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気インク文字読取装置において、
前記第1判定手段及び前記第2判定手段による判定と、前記判定回数計数手段による計数と、は前記文字認識処理の実行が開始される前に実行され、
前記文字認識処理実行制限手段は、前記判定回数計数手段による計数結果と、所定の基準回数と、を比較する判定回数比較手段と、を含み、前記判定回数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行の開始を制限する、
ことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項5】
磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置の制御方法において、
前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記第1判定ステップによって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定ステップと、
前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定ステップによって判定された回数を計数する判定回数計数ステップと、
前記判定回数計数ステップによる計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限ステップと、
を含むことを特徴とする磁気インク文字読取装置の制御方法。
【請求項1】
磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置において、
前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段によって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定手段と、
前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された回数を計数する判定回数計数手段と、
前記判定回数計数手段による計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限手段と、
を含むことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気インク文字読取装置において、
前記第1判定手段による判定結果に基づいて、前記信号データ列の一部を1文字相当分信号データ列として取得する1文字相当分信号データ列取得手段と、
前記1文字相当分信号データ列に対応する磁気インク文字を認識する文字認識手段と、を含み、
前記文字認識処理実行制限手段は、
回数と基準文字数とを対応づけて記憶する基準文字数記憶手段と、
前記文字認識手段によって認識された文字数を取得する文字数取得手段と、
前記文字数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準文字数記憶手段に記憶される基準文字数と、を比較する文字数比較手段と、を含み、
前記文字数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限する、
ことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気インク文字読取装置において、
前記文字認識処理実行制限手段は、
回数と基準信号データ数とを対応づけて記憶する基準信号データ数記憶手段と、
前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定手段によって判定された場合、前記信号データ列の先頭又は所与の信号データから、該所定数以上の信号データと所与の関係にある信号データまでの信号データ数を取得する信号データ数取得手段と、
前記信号データ数取得手段による取得結果と、前記判定回数計数手段によって計数された回数に対応づけて前記基準信号データ数記憶手段に記憶される基準信号データ数と、を比較する信号データ数比較手段と、を含み、
前記信号データ数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行を制限する、
ことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気インク文字読取装置において、
前記第1判定手段及び前記第2判定手段による判定と、前記判定回数計数手段による計数と、は前記文字認識処理の実行が開始される前に実行され、
前記文字認識処理実行制限手段は、前記判定回数計数手段による計数結果と、所定の基準回数と、を比較する判定回数比較手段と、を含み、前記判定回数比較手段による比較結果に応じて、前記文字認識処理の実行の開始を制限する、
ことを特徴とする磁気インク文字読取装置。
【請求項5】
磁気インク文字による磁束の変化に応じた信号を出力する磁気ヘッドを備え、前記磁気ヘッドの出力信号に対応する信号データ列に基づいて文字認識処理を実行し、記録媒体に記録された磁気インク文字列を認識する磁気インク文字読取装置の制御方法において、
前記信号データ列から信号データを順次読み出し、該信号データが所定信号に対応するものであるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記第1判定ステップによって、前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が所定数以上の信号データにわたって連続して得られたか否かを判定する第2判定ステップと、
前記信号データが前記所定信号に対応するものでないとの判定結果が前記所定数以上の信号データにわたって連続して得られたと前記第2判定ステップによって判定された回数を計数する判定回数計数ステップと、
前記判定回数計数ステップによる計数結果に基づいて、前記文字認識処理の実行を制限する文字認識処理実行制限ステップと、
を含むことを特徴とする磁気インク文字読取装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−59249(P2008−59249A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234990(P2006−234990)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
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