説明

磁気スイッチ

【課題】少ない部品点数で感度の高い磁気スイッチを提供する。
【解決手段】ヨークを伴う可飽和コイルL104と参照用コイルL105を直列接続した回路に対し、矩形波を供給する。矩形波の周期内でヨークに飽和現象を発生させ、その際に発生する参照用コイルL105の電圧変化を検出する。従来技術とは異なり、飽和現象を引き起こすために必要な外部磁界は、従来技術より弱くても良いので、感度の高い磁気スイッチ201を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気スイッチに関する。
より詳細には、従来技術より磁気検出性能等を改善した、磁石を近接することでオン或はオフ動作する、機械接点を有しない磁気スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、可飽和コイルを用いるアクティブ型磁気スイッチを製造販売している。以下、このアクティブ型磁気スイッチの動作原理について説明する。
【0003】
図7(a)、(b)及び(c)は、特許文献1に開示される磁気スイッチの回路図と、回路の諸特性を説明するグラフである。
図7(a)は磁気スイッチの原理を説明する回路図であり、図7(b)は図7(a)の回路のトランジスタ706のベースの電圧を示すグラフであり、図7(c)は図7(a)の回路のトランジスタ711のコレクタの電圧を示すグラフである。
【0004】
図7(a)を参照して、磁気スイッチ回路701の構成を説明する。
交流電圧源702には抵抗R703とヨークを有する可飽和コイルL704が直列接続されており、可飽和コイルL704と交流電圧源702との接続点は接地されている。
抵抗R703と可飽和コイルL704との接続点には、抵抗R705を介してNPNトランジスタであるトランジスタ706のベースが接続されている。トランジスタ706のコレクタは抵抗R707を通じて電源電圧+Vccにてプルアップされている。一方、トランジスタ706のエミッタは接地されている。したがって、トランジスタ706がオン動作すると、コレクタの電圧はゼロになる。
【0005】
トランジスタ706のコレクタには、コンデンサC708が接続されている。このコンデンサC708のもう一方の端子は接地されている。
トランジスタ706のコレクタとコンデンサC708との接続点には、抵抗R709を介してNPNトランジスタであるトランジスタ711のベースが接続されている。トランジスタ711のベースには抵抗R710が接続され、抵抗R710のもう一方の端子は接地されている。抵抗R710はコンデンサC708の放電の役割を果たす。トランジスタ711のエミッタは接地されている。
トランジスタ711のコレクタは磁気スイッチの出力端子となる。つまり、トランジスタ711はオープンコレクタ出力を構成する。
【0006】
図7(b)及び(c)を参照して、図7(a)の磁気スイッチ回路701の動作を説明する。
図7(b)の時刻t713より以前は、可飽和コイルL704に磁石712が近接していない状態の、トランジスタ706のベースの電圧波形であり、時刻t713以降は、可飽和コイルL704に磁石712が近接している状態の、トランジスタ706のベースの電圧波形である。
図7(c)の時刻t713より以前は、可飽和コイルL704に磁石712が近接していない状態の、トランジスタ711のコレクタの電圧波形であり、時刻t713以降は、可飽和コイルL704に磁石712が近接している状態の、トランジスタ711のコレクタの電圧波形である。なお、図7(a)ではトランジスタ711はオープンコレクタとなっているので、図7(c)はトランジスタ711のコレクタに所定の電圧が印加された状態における電圧波形である。
【0007】
可飽和コイルL704に磁石712が近接していない状態では、可飽和コイルL704はヨークが飽和していないので、高いインダクタンスを示す。このため、トランジスタ706のベースには、抵抗R705を通じて交流電圧源702の電圧が抵抗R703と可飽和コイルL704によって分圧された交流電圧が印加される。トランジスタのベース−エミッタ間は片方向にのみ電流を流すので、トランジスタ706のコレクタには図7(b)の波形の半波整流された電圧が出力される。
半波整流された電圧は、コンデンサC708及び抵抗R709で構成される積分回路によって積分される。その結果、抵抗R709から出力される電位は低くなる。そして、この電圧はトランジスタ711のベースに入力される。
【0008】
一方、可飽和コイルL704に磁石712が近接している状態では、可飽和コイルL704はヨークが飽和しているので、低いインダクタンスを示す。このため、トランジスタ706のベースには、抵抗R705を通じて接地に近い電圧が印加される。このため、トランジスタ706のベース電流は殆ど流れず、結果としてトランジスタ706のコレクタには電源電圧+Vccと略同じ電圧が出力される。このため、トランジスタ711のベースには、抵抗R707、R709及びR710の直列合成抵抗によって分圧された電圧が印加されることとなる。
【0009】
抵抗R707、R709及びR710の値を適切に設定することで、磁石712が可飽和コイルL704に近接していないときにはトランジスタ711はオフとなり、磁石712が可飽和コイルL704に近接しているときにはトランジスタ711はオンとなるように、磁気スイッチ回路701を構成することができる。これが図7(c)の波形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−172077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の図7にて説明した磁気スイッチ回路701は、磁石が発する外部磁界だけで可飽和コイルL704を飽和させなければならないので、比較的強い磁界を可飽和コイルに与えなければならない。つまり、強い磁石を可飽和コイルL704に極力近接させなければならず、したがって感度の点で劣る。
【0012】
本発明はかかる課題を解決し、少ない部品点数で感度の高い磁気スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の磁気スイッチは、矩形波を出力する矩形波電圧源と、矩形波電圧源に接続される、ヨークを伴う可飽和コイルと、可飽和コイルに直列接続される参照用コイルと、参照用コイルの端子間電圧の変化を検出する電圧検出部とを具備する。
【0014】
ヨークを伴う可飽和コイルと参照用コイルを直列接続した回路に対し、矩形波を供給する。矩形波の周期内でヨークに飽和現象を発生させ、その際に発生する参照用コイルの電圧変化を検出する。
従来技術とは異なり、飽和現象を引き起こすために必要な外部磁界は、従来技術より弱くても良いので、感度の高い磁気スイッチを実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、少ない部品点数で感度の高い磁気スイッチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の動作原理を説明するための、磁気検出回路の回路図と波形図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る磁気スイッチの外観斜視図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る磁気スイッチのブロック図である。
【図4】磁気検出回路の回路図と、回路の各部の波形図である。
【図5】磁気スイッチの概略図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る磁気スイッチの回路図と波形図である。
【図7】従来技術の磁気スイッチの回路図と波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[動作原理]
本発明の実施形態を説明する前に、磁気スイッチの動作原理を説明する。
図1(a)、(b)、(c)及び(d)本発明の動作原理を説明するための、磁気検出回路の回路図と波形図である。
図1(a)は、磁気検出回路101の回路図である。
磁気検出回路101は、直流電源102に、スイッチ103と、ヨークを有する可飽和コイルL104と参照用コイルL105が直列接続されており、可飽和コイルL104と参照用コイルL105にはフリーホイールダイオードD106が並列接続されている。ヨークの材質は例えばパーマロイやフェライト等、透磁率の高い材料が適している。スイッチ103は図示しない制御回路によって、オン時間が制御される。
【0018】
図1(b)は、磁気検出回路101のスイッチ103の論理状態を示す波形図である。
図1(c)は、磁気検出回路101の可飽和コイルL104及び参照用コイルL105に流れる電流の波形図である。
図1(d)は、磁気検出回路101の可飽和コイルL104及び参照用コイルL105の接続中点に現れる電圧の波形図である。
【0019】
周知のように、コイルに直流電源102を接続すると(図1(b)のt111〜t112)、その瞬間には電流が流れず、電流は徐々に増加していく(図1(c)のt111〜t112)。このことは、直流の観点で考えると、直流抵抗が徐々に低下していく、と考えることができる。
今、仮に磁界を与えない状態の可飽和コイルL104と参照用コイルL105が同じインダクタンスであるとする。すると、可飽和コイルL104と参照用コイルL105との接続中点には、電源電圧の1/2の電圧が現れる(図1(d)のt111〜t112)。同じインダクタンスであるから、可飽和コイルL104と参照用コイルL105の両方共、時間の経過に連れて直流抵抗が減少すると考えることができる。
【0020】
直流電源102を繋げたままにすると、電流が増大して、コイルを焼き切ってしまう虞があるので、ある程度電流が増加したらスイッチ103をオフ操作する(図1(b)のt112〜t114)。すると、コイルから逆起電力が発生する(図1(d)のt112〜t113)ので、電流を流して回路素子等の破壊を防ぐために、フリーホイールダイオードD106が設けられている。このフリーホイールダイオードD106を通じて、電流は時間の経過に連れて減少する(図1(c)のt112〜t113)。
【0021】
次に、可飽和コイルL104に磁界を与えて、同じようにスイッチ103をオン操作する(図1(b)のt114〜t116)。なお、この時、可飽和コイルL104に与える磁界は、可飽和コイルL104から発生する磁界と同じ方向の磁界を与える。
可飽和コイルL104には電流の増加と共に磁界が強くなる(図1(c)のt114〜t115)。この、可飽和コイル自体が発生する磁界と磁石が与える磁界が可飽和コイルL104のヨークを飽和させると、可飽和コイルL104のインダクタンスはその時点で低下する。すると、この時点で可飽和コイルL104の直流抵抗は低下したと同じこととなる。このため可飽和コイルL104と参照コイルに流れる電流は急激に上昇し(図1(c)のt115〜t116)、可飽和コイルL104と参照コイルの接続中点の電位は上昇する(図1(d)のt115〜t116)。
【0022】
従来技術である図7の回路と比較すると、本発明の原理は、磁石107が発生する外部磁界だけでなく、直流電源102によって可飽和コイルL104に発生する磁界をヨークの飽和に供しているので、弱い外部磁界でも可飽和コイルL104に飽和現象を生じさせることができることが判る。更に、スイッチ103のオン時間を長めに取ることで、僅かな磁界を与えるだけでも飽和現象を生じさせることも可能になる。つまり、スイッチ103のオン時間で感度の調節が可能になる。
【0023】
スイッチ103のオン時間とは、パルス電源の周期、つまり周波数である。
更に、可飽和コイルL104が生じる磁界に対して磁石が与える磁界の向きが逆である場合は、飽和現象が起きないか、起き難くなる。つまり、本発明の磁気検出回路101は極性を有し、磁界の向きに対応する。
【0024】
[第一の実施形態・外観と内部構成]
図2は、本発明の第一の実施形態に係る磁気スイッチの外観斜視図である。
磁気スイッチ201は樹脂モールドされており、検出突起201aには可飽和コイルL104が埋め込まれている。検出突起201aに磁石107を近接させると、ケーブル202を通じてオン出力が得られる。
【0025】
図3は、磁気スイッチ201のブロック図である。
ヨーク301を有する可飽和コイルL104は磁気検出回路302に接続されている。この可飽和コイルL104と磁気検出回路302は共に樹脂モールドされる。ヨーク301の端面が、検出突起201aに嵌る。
なお、図2の形状はあくまで一例であり、後述する回路の構成を見て判るように、回路構成上、磁気スイッチ201の実装形態を妨げる要因は見当たらないので、磁気スイッチ201の実装形態は極めて自由である。
図3では可飽和コイルL104を磁気検出回路302とは別に記載しているが、可飽和コイルL104も磁気検出回路302の構成要素である。
【0026】
[回路と動作]
図4(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、磁気検出回路302の回路図と、回路の各部の波形図である。
図4(a)は磁気検出回路302の回路図である。
パルス信号源401はPチャネル型のMOS−FETであるFET402のゲートに入力される。FET402のソースは電源電圧+Vccに接続されている。FET402のドレインには、可飽和コイルL104と参照用コイルL105が直列接続され、参照用コイルL105のもう一方の端子は接地されている。また、FET402のドレインにはフリーホイールダイオードD106も接続されている。
【0027】
可飽和コイルL104と参照用コイルL105の接続中点には、コンパレータ403の正極端子が接続されている。コンパレータ403の負極端子には抵抗R404とR405で電源電圧+Vccを分圧した参照電圧Vrefが印加される。
パルス信号源401の出力信号はDフリップフロップ(以下「D−FF」)406のCp端子にも供給される。D−FF406のD端子にはコンパレータ403の出力端子が接続される。
D−FF406のQ端子には、抵抗R407を介してオープンコレクタのトランジスタ408のベースが接続される。
【0028】
図4(b)はパルス信号源401の出力信号の波形図である。
図4(c)は可飽和コイルL104と参照用コイルL105との中点の電位の波形図である。
図4(d)はコンパレータ403の出力電圧の波形図である。
図4(e)はD−FF406のQ端子の波形図である。
【0029】
FET402は、パルス信号源401の電位が低電位の時にオン動作し、パルス信号源401の電位が高電位の時にオフ動作する。
可飽和コイルL104に正方向の磁界が印加されていない状態(時点t413以前)では、可飽和コイルL104には飽和現象が起きないので、可飽和コイルL104と参照用コイルL105との中点の電位は参照電圧Vrefを超えない(図4(c)の時点t411〜t412)。
【0030】
これに対し、可飽和コイルL104に所定の強さの正方向の磁界が印加されている状態(時点t413以降)では、可飽和コイルL104に飽和現象が起きるように、パルス信号源401の周期が決定されているので、可飽和コイルL104と参照用コイルL105との中点の電位は参照電圧Vrefを超える(図4(c)の時点t415〜t416)。
【0031】
コンパレータ403は、この可飽和コイルL104と参照用コイルL105との中点の電位を参照電圧Vrefと比較し、飽和現象が起きたときの電位を捉えて出力する(図4(d)の時点t415〜t416)。
D−FF406はCp端子のアップエッジ(図4(b)のP421及びP422)のD端子の論理(図4(d)のP423及びP424)をホールドするので、可飽和コイルL104に正方向の外部磁界が印加されていないときには論理の「偽」となる低電位を出力し(図4(e)のP425)、可飽和コイルL104に正方向の外部磁界が印加されているときには論理の「真」となる高電位を出力する(図4(e)のP426)。
【0032】
図4(a)の磁気検出回路302の構成要素のうち、コンパレータ403と参照用電圧源(抵抗R404及びR405)は、参照用コイルL105の端子間電圧の変化を検出するための電圧検出部を構成する。
【0033】
図4(a)の磁気検出回路302のうち、パルス信号源401、コンパレータ403、参照用電圧源(抵抗R404及びR405)及びD−FF406は、マイコンによる置換が可能である。可飽和コイルL104と参照用コイルL105との中点の電位を計測し、可飽和コイルL104が飽和した際の電位の変化を捉えることが出来ればよいので、必ずしもコンパレータ403を用いなくても良い。一例として、可飽和コイルL104と参照用コイルL105との中点をA/D変換器にてデジタル値に変換した後、数値比較をする、という手法が考えられる。この場合、A/D変換器が電圧検出部を構成するといえる。
【0034】
また、パルス信号源401及びD−FF406もマイコンのプログラムで実現可能である。
パルス信号源401はマイコンの動作クロックを計数して出力することで実現できるので、前述の通り、所望の感度を実現するためにパルスの幅を調整することも容易に実現できる。
【0035】
本実施形態の磁気スイッチ201を構成する要素の条件について説明する。
本実施形態の磁気スイッチ201を構成する要素は、矩形波電圧源(FET402及び直流電圧+Vcc)と、ヨークを有する可飽和コイルL104と、参照用コイルL105と、フリーホイールダイオードD106と、電圧検出部(コンパレータ403と参照用電圧源)である。
【0036】
矩形波電圧源は、可飽和コイルL104と参照用コイルL105に一定の直流電圧を所定時間だけ与えなければならないので、矩形波電圧源でなければならない。正弦波や鋸歯状波等の、時間の経過と共に電圧が連続的に変化するような電圧源は利用できない。
可飽和コイルL104は、飽和現象を引き起こす必要があるので、ヨークが必須である。
参照用コイルL105は、可飽和コイルL104と同様に、電流の増加と共に直流抵抗が減少する現象を生じなければならないので、必ずコイルでなければならない。但し、そのインダクタンスは可飽和コイルL104と同じでなくても良い。また、ヨークはあってもなくても良いが、飽和現象が生じないためにもヨークはない方が望ましい。仮にヨークを用いる場合は、可飽和コイルL104に及ぶ外部磁界の影響が及ばないように、参照用コイルL105を磁気シールドさせるか、可飽和コイルL104から十分離間させる必要が生じる。
電圧検出部は、可飽和コイルL104が飽和していない状態と、飽和している状態の、参照用コイルL105の端子間電圧の変化を捉えることが出来れば良い。
【0037】
[極性について]
図7に示した従来技術の可飽和コイルL704は、外部磁界のみで飽和現象を引き起こしていた。これに対し、本実施形態の磁気スイッチ201は、矩形波の電圧を可飽和コイルL104に印加することによって可飽和コイルL104に発生する磁界に加えて、外部磁界が影響することで、可飽和コイルL104の飽和現象が生じる。つまり、飽和現象を引き起こすために必要な外部磁界は、従来技術より弱くても良い。その代わり、可飽和コイルL104に流れる電流によって生じる磁界と同じ方向の磁界を与えないと、飽和現象が現れない。このため、本実施形態の磁気スイッチ201は、外部磁界の極性が感度に影響する。
【0038】
図5(a)及び(b)は、磁気スイッチ201の概略図である。
図5(a)の磁気スイッチ501aは、可飽和コイルL104aが磁気検出回路302に接続されている。
図5(b)の磁気スイッチ501bは、可飽和コイルL104aの巻線方向とは逆巻きの可飽和コイルL104bが磁気検出回路302に接続されている。
全く同じ磁気検出回路302に巻線方向が逆の可飽和コイルを接続すると、逆極性の磁界に反応する磁気スイッチを構成することができる。このように、磁気スイッチに対して容易に極性を持たせることができるので、例えばN極及びS極を備える磁石を所定の移動方向にて走査して、磁石の移動方向を検出する等の応用が考えられる。
【0039】
[第二の実施形態・回路構成と動作]
図2乃至図4に示した、第一の実施形態に係る磁気スイッチ201は、複数並列に接続して走査することもできる。
図6(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、第二の実施形態に係る磁気スイッチの回路図と、波形図である。
図6(a)は、磁気スイッチ601の回路図である。一見して判るように、磁気スイッチ601は第一の実施形態の磁気スイッチ201の、FET402と可飽和コイルL104とフリーホイールダイオードD106が複数並べられている。そして、複数の可飽和コイルL104は一つの参照用コイルL105に接続されている。
【0040】
図6(b)は第一FET402aのゲートの電圧波形である。
図6(c)は第二FET402bのゲートの電圧波形である。
図6(d)は第nFET402nのゲートの電圧波形である。
図6(e)は参照用コイルL105の電圧波形である。
マイコン602は第一FET402a、第二FET402b…第nFET402nに対し、順番にパルス状の信号を印加する(図6(b)、(c)及び(d))。そして、参照用コイルL105の電圧を計測する(図6(e))ことで、可飽和コイルL604a、L604b…L604nの、どの可飽和コイルが飽和したかが判る。
磁気スイッチ601を構成する回路要素のうち、第一FET402aは第一の矩形波電圧源ともいえる。同様に、第二FET402bは第二の矩形波電圧源、第nFET402nは第nの矩形波電圧源ともいえる。
【0041】
第二の実施形態に係る磁気スイッチ601は、例えば、特許文献1に記される、移動体の位置を検出するための非接触スイッチとしての利用の他、メンブレンスイッチやメカニカルスイッチが使用できない、水中等の特殊な環境下に用いるキーボード用のスイッチとしての利用が考えられる。
【0042】
上述の実施形態の他、以下のような応用例が考えられる。
(1)スイッチに印加される電圧は電源電圧であったが、これは必ずしも電源電圧である必要はない。これら素子に印加する電圧をどのように決定するかは設計的事項である。
【0043】
(2)ヨーク301はパーマロイであったが、透磁率が高く、且つ飽和磁束密度の小さい材料であればこれに限られない。例えば、アモルファス合金等が挙げられる。また、前述のように本実施形態の磁気スイッチ201は感度が高いので、フェライトのように飽和磁束密度が多少高くても実用に耐え得る。
【0044】
本実施形態では、磁気スイッチを開示した。
ヨークを伴う可飽和コイルL104と参照用コイルL105を直列接続した回路に対し、矩形波を供給する。矩形波の周期内でヨークに飽和現象を発生させ、その際に発生する参照用コイルL105の電圧変化を検出する。
従来技術とは異なり、飽和現象を引き起こすために必要な外部磁界は、従来技術より弱くても良いので、感度の高い磁気スイッチを実現できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0046】
101…磁気検出回路、102…直流電源、103…スイッチ、L104…可飽和コイル、L104a…可飽和コイル、L104b…可飽和コイル、L105…参照用コイル、D106…フリーホイールダイオード、107…磁石、201…磁気スイッチ、201a…検出突起、202…ケーブル、301…ヨーク、302…磁気検出回路、401…パルス信号源、402…FET、402a…第一FET、402b…第二FET、402n…第nFET、403…コンパレータ、R404…抵抗、406…Dフリップフロップ、R407…抵抗、408…トランジスタ、501a…磁気スイッチ、501b…磁気スイッチ、601…磁気スイッチ、602…マイコン、L604a…可飽和コイル、701…磁気スイッチ回路、702…交流電圧源、R703…抵抗、L704…可飽和コイル、R705…抵抗、706…トランジスタ、R707…抵抗、C708…コンデンサ、R709…抵抗、R710…抵抗、711…トランジスタ、712…磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形波を出力する矩形波電圧源と、
前記矩形波電圧源に接続される、ヨークを伴う可飽和コイルと、
前記可飽和コイルに直列接続される参照用コイルと、
前記参照用コイルの端子間電圧の変化を検出する電圧検出部と
を具備する磁気スイッチ。
【請求項2】
更に、
前記矩形波電圧源に、前記可飽和コイル及び前記参照用コイルの直列接続と共に並列接続されるフリーホイールダイオードを備え、
前記矩形波電圧源が出力する前記矩形波の周期及び電圧は、前記矩形波によって前記可飽和コイルに流れる電流が、所定の外部磁界を前記ヨークに与えた状態で前記矩形波が所定の電圧を維持している期間中に前記ヨークが磁気飽和を起こすことで、電流の増加が磁気飽和を起こす前より急峻になるように定められている、請求項1記載の磁気スイッチ。
【請求項3】
矩形波を出力する第一の矩形波電圧源と、
前記第一の矩形波電圧源に接続される、ヨークを伴う第一の可飽和コイルと、
前記第一の矩形波電圧源に接続される第一のフリーホイールダイオードと、
前記第一の矩形波電圧源とは排他的な周期の矩形波を出力する第二の矩形波電圧源と、
前記第二の矩形波電圧源に接続される、ヨークを伴う第二の可飽和コイルと、
前記第二の矩形波電圧源に接続される第二のフリーホイールダイオードと、
前記第一の可飽和コイル及び前記第二の可飽和コイルに接続される参照用コイルと、
前記参照用コイルの端子間電圧の変化を検出する電圧検出部と
を具備する磁気スイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−112905(P2012−112905A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264319(P2010−264319)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【特許番号】特許第4731636号(P4731636)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000137340)株式会社マコメ研究所 (20)
【Fターム(参考)】