説明

磁気センサおよび電流測定装置

【課題】検出感度の低下を抑制する。
【解決手段】噛合部(61a,61b,62a,62b)が設けられた複数の磁性板60を積層して形成された磁性コア31a,31bの各噛合部同士を噛合させた状態において構成される環状体で取り囲んだ検出対象体の磁気を検出可能に構成され、各噛合部は、完全噛合状態において噛合領域の全領域が互いに重なり合う主噛合部(51a,51b,52a,52b)を備えて構成され、主噛合部には、環状体の内側および外側の少なくとも一方に突出する補助噛合部(53a,53b,54a,54b)が設けられ、各補助噛合部は、完全噛合状態において、噛合領域の全領域が他の磁性板60における主噛合部および補助噛合部の噛合領域と重なり合わず、かつ不完全噛合状態において、噛合領域の一部または全部が他の磁性板における噛合部および補助噛合部のいずれかの噛合領域と重なり合うように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を検出する磁気センサ、およびその磁気センサを備えた電流測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の磁気センサとして、特開平11−295346号公報において出願人が開示したコアセンサが知られている。このコアセンサは、磁性鋼板を積層して略円弧状に形成された磁気コアにボビンを介して巻回(捲着)された巻線の巻回部位を絶縁材で覆った一対のコアセンサ部を備えて構成されている。また、各コアセンサ部の各磁気コアは、基端噛合部および先端噛合部をそれぞれ備えており、使用時において、各磁気コアの基端噛合部同士が噛合すると共に各磁気コアの先端噛合部同士が噛合するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−295346号公報(第2−3頁、第1−5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のコアセンサには、改善すべき以下の課題がある。すなわち、このコアセンサは、使用時において、各磁気コアの各噛合部(基端噛合部および先端噛合部)同士を噛合させる。また、この種のコアセンサは、基端部側の支点を中心として回動するように構成され、各噛合部同士が噛合する向きにバネによって付勢されている。このような構成では、例えば、経年劣化によるバネの付勢力の低下などに起因して各噛合部同士が完全には噛合しないことがある。この場合、各噛合部同士が完全には噛合しない不完全噛合状態では、各噛合部同士が完全に噛合している完全噛合状態と比較して、各噛合部同士が噛合する面積が少なくなるため、これに起因してコアセンサの検出感度が低下して、測定精度が低下するおそれがあるという課題が存在する。この場合、このような課題を改善する手段として、付勢力の大きなバネを用いる構成が考えられる。しかしながら、この構成では2つの磁気コアの各噛合部同士を離反させる(2つの磁気コアを開く)際に大きな力が必要となって操作性が低下する。このため、このような手段を用いることなく上記の課題の改善が可能な構成の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、検出感度の低下を抑制し得る磁気センサおよび電流測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の磁気センサは、先端部および基端部に噛合部が設けられた複数の磁性板を積層して形成された略弧状の磁性コアを有すると共に当該基端部側の支点を中心として回動可能に構成された一対のセンサ部を備え、前記一対のセンサ部における前記磁性板の前記各噛合部同士を噛合させた状態において環状体が構成されて当該環状体で取り囲んだ検出対象体の磁気を検出する磁気センサであって、前記各噛合部は、当該各噛合部同士が最も重なり合う完全噛合状態において、噛合領域の全領域が互いに重なり合う主噛合部を備えて構成され、前記先端部に設けられた噛合部および前記基端部に設けられた噛合部の少なくとも一方の前記主噛合部には、前記環状体の内側および外側の少なくとも一方に突出する補助噛合部が設けられ、前記各補助噛合部は、前記完全噛合状態において、当該各補助噛合部の噛合領域の全領域が、噛合し合う他の前記磁性板における前記主噛合部および当該他の磁性板における前記補助噛合部の前記噛合領域と重なり合わず、かつ前記主噛合部の前記噛合領域の一部が重なり合わない状態で噛合する不完全噛合状態において、当該各補助噛合部の噛合領域の一部または全部が前記他の磁性板における前記噛合部および当該他の磁性板における前記補助噛合部のいずれかの前記噛合領域と重なり合うように形成されている。
【0007】
また、請求項2記載の磁気センサは、請求項1記載の磁気センサにおいて、前記一対のセンサ部は、前記磁性コアの周囲に導線を巻回して形成されたコイル部をそれぞれ備えて構成されている。
【0008】
また、請求項3記載の磁気センサは、請求項1記載の磁気センサにおいて、前記一対のセンサ部の少なくとも一方は、前記環状体に誘起された磁束を検出する磁気検出素子を備えて構成されている。
【0009】
また、請求項4記載の磁気センサは、請求項1から3のいずれかに記載の磁気センサにおいて、前記補助噛合部は、前記先端部に設けられた噛合部および前記基端部に設けられた噛合部の双方における前記主噛合部に設けられている。
【0010】
また、請求項5記載の磁気センサは、請求項1から4のいずれかに記載の磁気センサにおいて、前記補助噛合部は、前記環状体の内側および外側の双方に突出するように形成されている。
【0011】
また、請求項6記載の電流測定装置は、請求項1から5のいずれかに記載の磁気センサと、当該磁気センサによって検出された前記磁気の強度に基づいて前記検出対象体に流れる電流を測定する測定部とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の磁気センサおよび請求項6記載の電流測定装置によれば、磁性板の先端部に設けられた噛合部および基端部に設けられた噛合部の少なくとも一方の主噛合部に環状体の内側および外側の少なくとも一方に突出する補助噛合部を設けたことにより、バネの付勢力の低下などに起因して各主噛合部における噛合領域の一部が重なり合わない状態で噛合している不完全噛合状態において主噛合部同士の噛合面積(重なり合う面積)が減少したとしても、補助噛合部における噛合領域の一部または全部が噛合し合う他の磁性板における主噛合部および補助噛合部のいずれかの噛合領域と重なり合うことによって主噛合部の噛合面積の減少分を確実に補完することができる。このため、この磁気センサおよび電流測定装置によれば、不完全噛合状態においても、磁気センサによる磁気の検出感度の低下を十分少なく抑えることができる結果、測定精度を十分に向上させることができる。
【0013】
また、請求項2記載の磁気センサおよび請求項6記載の電流測定装置によれば、磁性コアの周囲に導線を巻回して形成されたコイル部をそれぞれ備えて一対のセンサ部を構成したことにより、検出対象体に流れる微弱な交流電流をこの磁気センサによって非接触で測定することができ、その微弱な交流電流を測定する際の測定精度を十分に向上させることができる。
【0014】
また、請求項3記載の磁気センサおよび請求項6記載の電流測定装置によれば、環状体に誘起された磁束を検出する磁気検出素子を一対のセンサ部の少なくとも一方に備えたことにより、検出対象体に流れる直流電流および交流電流の双方をこの磁気センサによって非接触で測定することができ、各電流を測定する際の測定精度を十分に向上させることができる。
【0015】
また、請求項4記載の磁気センサおよび請求項6記載の電流測定装置によれば、磁性板の先端部に設けられた噛合部および基端部に設けられた噛合部の双方における主噛合部に補助噛合部を設けたことにより、不完全噛合状態において先端部の主噛合部同士および基端部の主噛合部同士の双方の噛合面積が減少したとしても、その双方の減少分を補完することができる。このため、この磁気センサおよび電流測定装置によれば、磁気センサによる磁気の検出感度の低下をさらに少なく抑えることができる結果、測定精度をさらに向上させることができる。
【0016】
また、請求項5記載の磁気センサおよび請求項6記載の電流測定装置によれば、環状体の内側および外側の双方に突出するように補助噛合部を形成したことにより、不完全噛合状態において他の磁性板における主噛合部および補助噛合部のいずれかの噛合領域と重なり合う面積(噛合面積)を大きくすることができる。このため、この磁気センサおよび電流測定装置によれば、主噛合部の噛合面積の減少分をより確実に補完することができるため、磁気センサによる磁気の検出感度の低下を一層少なく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電流測定装置1の正面図である。
【図2】電流測定装置1の構成を示す構成図である。
【図3】ケース12a,12bを回動させた状態の電流測定装置1の正面図である。
【図4】センサ11a(11b)の斜視図である。
【図5】コイル部21をコイルカバー22で覆った状態の斜視図である。
【図6】コイル部21の斜視図である。
【図7】磁性コア31の構成を示す平面図である。
【図8】主噛合部51a,51b,52a,52bおよび補助噛合部53a,53b,54a,54bの噛合状態を説明する第1の説明図である。
【図9】主噛合部51a,51b,52a,52bおよび補助噛合部53a,53b,54a,54bの噛合状態を説明する第2の説明図である。
【図10】主噛合部51a,51b,52a,52bおよび補助噛合部53a,53b,54a,54bの噛合状態を説明する第3の説明図である。
【図11】比較例としての磁性コア131の平面図である。
【図12】噛合面積の測定結果を示す測定結果図である。
【図13】他の実施例としての磁性コア231の構成を示す平面図である。
【図14】他の実施例としての電流測定装置301の正面図である。
【図15】他の実施例としてのセンサ311a(311b)の斜視図である。
【図16】他の実施例としてのセンサ311a(311b)における磁性コア331およびカバー322の構成を示す斜視図である。
【図17】磁性コア331の構成を示す平面図である。
【図18】主噛合部351a,351b,352a,352bおよび補助噛合部353a,353b,354a,354bの噛合状態を説明する説明図である。
【図19】他の実施例としての磁性コア431の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る磁気センサおよび電流測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、電流測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。図1に示す電流測定装置1は、例えば、検出対象体としての電線200に流れる電流I(交流電流:図2参照)を非接触で測定可能なクランプ式の電流測定装置であって、磁気センサ2および本体部3を備えて構成されている。
【0020】
磁気センサ2は、磁気センサの一例であって、図1に示すように、センサ(センサ部)11a,11b(以下、区別しないときには「センサ11」ともいう)およびケース12a,12b(以下、区別しないときには「ケース12」ともいう)を備えて、検出対象体としての電線200に電流I(交流電流)が流れたときに生じる磁気を検出可能に構成されている。
【0021】
センサ11a,11bは、図4,5に示すように、コイル部21、コイルカバー22およびシールド部23をそれぞれ備えて構成されている。この場合、センサ11aのコイル部21を、以下、コイル部21aともいい、センサ11bのコイル部21を、以下、コイル部21bともいう。また、センサ11a,11bは同様に構成されているため、以下、共通する部分についてはセンサ11aについてのみ説明し、センサ11bについての説明を省略する。
【0022】
コイル部21は、図6に示すように、磁性コア31と、磁性コア31における先端部および基端部を除く部分を被覆するボビン32と、ボビン32の周囲に巻回された導線33とを備えて、平面視が略弧状(略円弧状)に構成されている。なお、センサ11aの磁性コア31を、以下、磁性コア31aともいい、センサ11bの磁性コア31を、以下、磁性コア31bともいう。
【0023】
磁性コア31は、図6に示すように、磁性板(一例として、金属板)60を複数積層して形成されている。この場合、磁性板60は、図7に示すように、先端部71に噛合部61が設けられると共に基端部72に噛合部62が設けられて平面視が略弧状(略円弧状)に形成されている。また、各磁性コア31は、磁性板60から噛合部61,62を除いた部分と同じ形状の磁性板で形成されたスペーサが各磁性板60の間に挟み込まれることにより、図6に示すように、各噛合部61同士の間、および各噛合部62の間に隙間が生じるように形成されている。なお、磁性コア31aの噛合部61,62を、以下、噛合部61a,62aともいい、磁性コア31bの噛合部61,62を、以下、噛合部61b,62bともいう。
【0024】
この電流測定装置1では、使用時において、図8に示すように、磁性コア31aの噛合部61aと磁性コア31bの噛合部61bとが噛合すると共に、磁性コア31aの噛合部62bと磁性コア31bの噛合部62bとが噛合し、これによって環状体が構成される。また、この環状体で取り囲んだ検出対象体の磁気をセンサ11a,11b(磁気センサ2)が検出して検出信号Sdを出力する。
【0025】
また、噛合部61は、図7に示すように、主噛合部51を備えて構成され、噛合部62は主噛合部52を備えて構成されている。なお、磁性コア31aの主噛合部51,52を、以下、主噛合部51a,52aともいい、磁性コア31bの主噛合部51,52を、以下、主噛合部51b,52bともいう。
【0026】
この場合、図8に示すように、主噛合部51aの先端部が主噛合部51bの基端部側に位置すると共に主噛合部51bの先端部が主噛合部51aの基端部側に位置し、主噛合部52aの先端部が主噛合部52bの基端部側に位置すると共に主噛合部52bの先端部が主噛合部52aの基端部側に位置する状態において、主噛合部51a,51bにおける噛合領域(同図において斜線を付した領域)の全領域が噛合して、主噛合部52a,52bにおける噛合領域(同図において斜線を付した領域)の全領域が噛合する。言い換えると、この状態では、主噛合部51a,51bにおける噛合領域の全領域が平面視した状態で重なり合い、主噛合部52a,52bにおける噛合領域の全領域が平面視で重なり合う(以下、単に「重なり合う」ともいう)。つまり、この状態では、各主噛合部51a,51b同士および各主噛合部52a,52b同士が最も重なり合う(以下、この状態を「完全噛合状態」ともいう)。
【0027】
また、主噛合部51には、図7,8に示すように、上記した環状体の内側に突出する補助噛合部53が設けられ、主噛合部52には、この環状体の外側に突出する補助噛合部54が設けられている。なお、磁性コア31aに設けられている補助噛合部53,54を、以下、補助噛合部53a,54aともいい、磁性コア31bに設けられている補助噛合部53,54を、以下、補助噛合部53b,54bともいう。
【0028】
この場合、補助噛合部53aは、図8に示すように、上記した完全噛合状態において、噛合領域の全領域が、主噛合部51b(他の磁性板60における主噛合部51)および補助噛合部53b(他の磁性板60における補助噛合部53)のいずれの噛合領域とも重なり合わない。一方、補助噛合部53aは、図9,10に示すように、各主噛合部51a,51bにおける噛合領域の一部、および各主噛合部52a,52bにおける噛合領域の一部が重なり合わない状態で噛合している不完全噛合状態においては、噛合領域の一部または全部(図9では一部の例を示し、図10では全部の例を示す)が、主噛合部51bおよび補助噛合部53bのいずれかの噛合領域と重なり合う。
【0029】
また、補助噛合部54aは、図8に示すように、完全噛合状態において、主噛合部52b(他の磁性板60における主噛合部52)および補助噛合部54b(他の磁性板60における補助噛合部54)のいずれの噛合領域とも重なり合わず、図9,10に示すように、不完全噛合状態において、噛合領域の一部(一部または全部の一例)が、主噛合部52bおよび補助噛合部54bのいずれかの噛合領域と重なり合う。
【0030】
同様にして、補助噛合部53bは、図8に示すように、完全噛合状態において、主噛合部51a(他の磁性板60における主噛合部51)および補助噛合部53a(他の磁性板60における補助噛合部53)のいずれの噛合領域とも重なり合わず、図9,10に示すように、不完全噛合状態においては、噛合領域の一部または全部(図9では一部の例を示し、図10では全部の例を示す)が、主噛合部51aおよび補助噛合部53aのいずれかの噛合領域と重なり合う。また、補助噛合部54bは、図8に示すように、完全噛合状態において、主噛合部52a(他の磁性板60における主噛合部52)および補助噛合部54a(他の磁性板60における補助噛合部54)のいずれの噛合領域とも重なり合わず、図9,10に示すように、不完全噛合状態において、噛合領域の一部(一部または全部の一例)が、主噛合部52aおよび補助噛合部54aのいずれかの噛合領域と重なり合う。
【0031】
コイルカバー22は、図5に示すように、コイル部21における導線33の巻回部分(図6参照)を被覆するようにして配設される。シールド部23は、磁気センサ2を備えた電流測定装置1を用いて電流を測定する際の外乱の影響を防止する機能を有しており、図4に示すように、コイル部21に配設されたコイルカバー22を取り囲むようにして配設されている。
【0032】
ケース12a,12bは、センサ11a,11bをそれぞれ収容可能に構成されている。この場合、センサ11a,11bは、センサ11a,11bのいずれか一方が、厚み方向(図1における紙面手前側と紙面奥側とを結ぶ方向)に沿って磁性板60の厚みに相当する長さだけセンサ11a,11bの他方に対して手前側または奥側に位置するようにケース12a,12bにそれぞれ収容されており、このように構成することで、噛合部61同士および噛合部62同士の噛合(重なり合い)が可能となっている。
【0033】
また、ケース12a,12bは、図1に示すように、基端部側(同図における下側)が本体部3におけるケース45の支点Pf(図8参照)に固定される図外の支持軸を回動中心として回動可能にケース45に取り付けられる。また、ケース12a,12bは、図外のバネの付勢力によってセンサ11a,11bの各先端部同士が近接する向き(図1に示す矢印A,Bの向き)に付勢されている。
【0034】
本体部3は、図2に示すように、A/D変換部41、表示部42、操作部43、制御部44、およびこれらの各構成要素が収容または配設されるケース45(図1参照)を備えて構成されている。A/D変換部41は、制御部44と共に測定部を構成し、磁気センサ2から出力される検出信号Sdをアナログ/デジタル変換して電流データDiを出力する。表示部42は、例えば液晶パネルで構成されて、図1に示すように、ケース45の正面パネルに配設されている。また、表示部42は、制御部44の制御に従って各種の測定値等を表示する。
【0035】
操作部43は、電源スイッチやレンジ切替えスイッチ等の各種のスイッチを備えて構成されて、図1に示すように、ケース45の正面パネルに配設されている。また、操作部43は、スイッチ操作に応じた操作信号を出力する。制御部44は、操作部43から出力される操作信号に従って本体部3を構成する各部を制御する。また、制御部44は、A/D変換部41から出力される電流データDiに基づいて(つまり磁気センサ2から出力される検出信号Sdに基づいて)電流値Imを算出すると共に、算出した電流値Imを表示部42に表示させる。また、同図に示すように、ケース45には、ケース12a,12bを回動させるためのレバー45a,45aが配設されている。
【0036】
次に、電流測定装置1を用いて電流Iを測定する方法について、図面を参照して説明する。
【0037】
例えば、図2に示す電線200に流れている電流Iの電流値Imを測定する際には、操作部43を操作して測定レンジ等を設定する。次いで、レバー45a,45aを図3に示す矢印C,Dの向きに押し込むことにより、センサ11a,11bが収容されたケース12a,12bを同図に示す矢印E,Fの向きに回動させる。この際に、センサ11a,11bの各先端部(コイル部21a,21bにおける磁性コア31a,31bの噛合部61a,61b)が離間する。
【0038】
続いて、図1に示すように、電線200をセンサ11a,11bによって取り囲んだ状態でレバー45a,45aの押し込みを解除する。この際に、センサ11a,11b(ケース12a,12b)が図外のバネの付勢力によって同図に示す矢印A,Bの向きに回動する。また、センサ11a,11bの各コイル部21a,21bにおける各磁性コア31a,31bの各噛合部61a,61b同士が噛合する。また、各磁性コア31a,31bの各噛合部62a,62b同士が噛合する。これにより、電線200が磁気センサ2によって取り囲まれる。
【0039】
この場合、各噛合部61a,61bの各主噛合部51a,51b同士および各噛合部62a,62bの各主噛合部52a,52b同士が最も重なり合う完全噛合状態では、図8に示すように、主噛合部51a,51bにおける噛合領域の全領域が噛合し、主噛合部52a,52bにおける噛合領域の全領域が噛合する。一方、この完全噛合状態では、同図に示すように、補助噛合部53a,53bの噛合領域は、他の磁性板60における主噛合部51および補助噛合部53のいずれの噛合領域とも噛合せず、補助噛合部54a,54bの噛合領域は、他の磁性板60における主噛合部52および補助噛合部54のいずれの噛合領域とも噛合していない。
【0040】
次いで、各センサ11a,11bが、電線200に流れている電流Iによって電線200から発生している磁気を検出して、検出信号Sdを出力する。続いて、制御部44が、A/D変換部41を制御して、検出信号Sdをアナログ/デジタル変換させて電流データDiを出力させる。次いで、制御部44は、電流データDiに基づいて電流値Imを算出する。続いて、制御部44は、表示部42を制御して、算出した算出した電流値Imを表示させる。
【0041】
ここで、例えば、ケース12a,12bを付勢するバネが劣化して、付勢力が低下しているときには、噛合部61a,61b同士および噛合部62a,62b同士が完全には噛合しない不完全噛合状態となることがある。この不完全噛合状態では、図9に示すように、各主噛合部51a,51bにおける噛合領域の一部が重なり合わず、各主噛合部52a,52bにおける噛合領域の一部が重なり合わない状態となる。一方、この不完全噛合状態では、同図に示すように、各補助噛合部53a,53bにおける噛合領域の一部が、他の磁性板60における主噛合部51および補助噛合部53のいずれかの噛合領域と重なり合い、各補助噛合部54a,54bにおける噛合領域の一部が、他の磁性板60における主噛合部52および補助噛合部54のいずれかの噛合領域と重なり合う。
【0042】
この場合、各主噛合部51同士および各主噛合部52同士が重なり合う噛合面積が減少したときには、センサ11a,11bによる磁気の検出感度が低下して、これに起因して測定精度が低下するおそれがある。しかしながら、この電流測定装置1では、補助噛合部53,54を備えたことで、各主噛合部51同士および各主噛合部52同士の噛合面積が減少したとしても、補助噛合部53,54における噛合領域の一部(または全部)が他の磁性板60における主噛合部51,52および補助噛合部53,54のいずれかの噛合領域と重なり合い、各主噛合部51同士および各主噛合部52同士の噛合面積の減少分がある程度補完される。このため、この電流測定装置1では、バネの付勢力の低下などに起因して各磁性コア31の各主噛合部51における噛合領域および各主噛合部52における噛合領域が完全には重なり合わない不完全噛合状態においても、センサ11a,11bによる磁気の検出感度の低下が少なく抑えられる。したがって、この電流測定装置1では、測定精度が十分に向上されている。
【0043】
なお、発明者らは、補助噛合部53,54を備えた磁性コア31を用いた磁気センサ2の効果を検証するため、主噛合部51,52および補助噛合部53,54の噛合面積が噛合状態の違いによってどのように変化するかを測定した。この測定では、主噛合部51,52および補助噛合部53,54を図7の示す形状に形成した磁性コア31a,31bを作製した。次いで、図8に示すように、各磁性コア31a,31bの各主噛合部51同士および各主噛合部52同士が最も重なり合う完全噛合状態で、主噛合部51,52および補助噛合部53,54の噛合面積を測定した。
【0044】
また、図9に示すように、支点Pfを回動中心として、磁性コア31aに対して磁性コア31bを0.5°回動させて不完全噛合状態とし(以下、この状態を「0.5°の状態」ともいい、上記した完全噛合状態を「0°の状態」ともいう)、主噛合部51,52および補助噛合部53,54の噛合面積を測定した。また、図10に示すように、支点Pfを回動中心として、磁性コア31aに対して磁性コア31bをさらに0.5°(つまり、完全噛合状態から1°)回動させて(以下、この状態を「1°の状態」ともいう)、主噛合部51,52および補助噛合部53,54の噛合面積を測定した。
【0045】
また比較例として、図11に示すように、先端部171に設けた噛合部161の主噛合部151、および基端部172に設けた噛合部162の主噛合部152のいずれにも補助噛合部53,54に相当する部材を設けていない磁性板160を用いて磁性コア131を一対作製し、上記と同様にして0°の状態、0.5°の状態、および1°の状態で主噛合部151,152の噛合面積を測定した。
【0046】
この結果、図12に示すように、補助噛合部53,54を設けていない磁性コア131では、0°の状態における主噛合部151の噛合面積M1を100とすると、0.5°の状態における噛合面積M1が83.6(減少率が16.4%)で、1°の状態における噛合面積M1が67.5(減少率が32.5%)であった。また、磁性コア131では、0°の状態における主噛合部152の噛合面積M2を100とすると、0.5°の状態における噛合面積M2が94.3(減少率が5.7%)で、1°の状態における噛合面積M2が88.5(減少率が11.5%)であった。
【0047】
これに対して、補助噛合部53,54を備えた磁性コア31では、0°の状態における主噛合部51および補助噛合部53の噛合面積M3を100とすると、0.5°の状態における噛合面積M3が84.5(減少率が15.5%)で、1°の状態における噛合面積M3が68.4(減少率が31.6%)であった。また、磁性コア31では、0°の状態における主噛合部52および補助噛合部54の噛合面積M4を100とすると、0.5°の状態における噛合面積M4が94.5(減少率が5.5%)で、1°の状態における噛合面積M4が88.7(減少率が11.3%)であった。
【0048】
この結果から、磁性コア31に補助噛合部53,54を配設したことで、不完全噛合状態における主噛合部51,52の噛合面積の減少分がある程度補完され、噛合面積の全体としての減少率が少なく抑えられることが明らかである。
【0049】
このように、この磁気センサ2および電流測定装置1によれば、磁性板60の先端部71に設けられた噛合部61の主噛合部51、および基端部72に設けられた噛合部62の主噛合部52の少なくとも一方に、環状体の内側および外側の少なくとも一方に突出する補助噛合部53,54を設けたことにより、バネの付勢力の低下などに起因して各主噛合部51,52における噛合領域の一部が重なり合わない状態で噛合している不完全噛合状態において主噛合部51,52同士の噛合面積(重なり合う面積)が減少したとしても、補助噛合部53,54における噛合領域の一部または全部が他の磁性板60における主噛合部51,52および補助噛合部53,54のいずれかの噛合領域と重なり合うことによって主噛合部51,52の噛合面積の減少分を確実に補完することができる。このため、この磁気センサ2および電流測定装置1によれば、不完全噛合状態においても、センサ11a,11bによる磁気の検出感度の低下を十分少なく抑えることができる結果、測定精度を十分に向上させることができる。
【0050】
また、この磁気センサ2および電流測定装置1によれば、磁性コア31の周囲に導線33を巻回して形成されたコイル部21をそれぞれ備えて一対のセンサ11を構成したことにより、検出対象体に流れる微弱な交流電流をこの磁気センサ2によって非接触で測定することができ、その微弱な交流電流を測定する際の測定精度を十分に向上させることができる。
【0051】
また、この磁気センサ2および電流測定装置1によれば、磁性板60の先端部71に設けられた噛合部61および基端部72に設けられた噛合部62の双方における主噛合部51,52に補助噛合部53,54を設けたことにより、不完全噛合状態において主噛合部51同士および主噛合部52同士の双方の噛合面積が減少したとしても、その双方の減少分を補完することができる。このため、この磁気センサ2および電流測定装置1によれば、センサ11a,11bによる磁気の検出感度の低下をさらに少なく抑えることができる結果、測定精度をさらに向上させることができる。
【0052】
なお、磁気センサおよび電流測定装置の構成は、上記した構成に限定されない。例えば、環状体の内側に突出する補助噛合部53を主噛合部51に設けた例について上記したが、この補助噛合部53に代えて、または、この補助噛合部53と共に、環状体の外側に突出する補助噛合部を主噛合部51に設ける構成を採用することもできる。また、環状体の外側に突出する補助噛合部54を主噛合部52に設けた例について上記したが、この補助噛合部54に代えて、または、この補助噛合部54と共に、環状体の内側に突出する補助噛合部を主噛合部52に設ける構成を採用することもできる。
【0053】
具体的には、図13に示す磁性コア231を採用することができる。なお、磁性コア231の説明において、上記した磁性コア31と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。同図に示すように、この磁性コア231を構成する磁性板260の先端部271における噛合部261の主噛合部251には、2つの磁性コア231によって構成される環状体の内側に突出する補助噛合部53および環状体の外側に突出する補助噛合部253の双方が設けられている。また、磁性板260の基端部272における噛合部262の主噛合部252には、環状体の外側に突出する補助噛合部54および環状体の内側に突出する補助噛合部254の双方が設けられている。この構成によれば、環状体の内側および外側の双方に突出するように補助噛合部53,253,54,254を形成したことにより、不完全噛合状態において他の磁性板260における主噛合部251,252および補助噛合部53,253,54,254のいずれかの噛合領域と重なり合う面積(噛合面積)を大きくすることができる。このため、この構成によれば、主噛合部251,252の噛合面積の減少分をより確実に補完することができるため、磁気の検出感度の低下を一層少なく抑えることができる。
【0054】
また、上記の磁性コア31,231以外の構成例として、各主噛合部に設けられている上記の各補助噛合部53,253,54,254の組み合わせが異なる次のような各磁性コアを採用することができる。具体的には、補助噛合部53,253,254が設けられている磁性コア、補助噛合部53,54,254が設けられている磁性コア、補助噛合部53,253,54が設けられている磁性コア、補助噛合部253,54,254が設けられている磁性コア、補助噛合部53,254が設けられている磁性コア、補助噛合部253,54が設けられている磁性コア、および補助噛合部253,254が設けられている磁性コアを採用することができる。
【0055】
また、磁性板60,260の先端部71,271に設けられた主噛合部51,251および基端部72,272に設けられた主噛合部52,252の双方に補助噛合部を設けた例について上記したが、主噛合部51,251および主噛合部52,252の一方にのみ補助噛合部を設ける構成を採用することもできる。この場合、この補助噛合部としては、環状体の内側および外側のいずれか一方に突出する補助噛合部でもよいし、環状体の内側および外側の双方に突出する補助噛合部でもよい。
【0056】
次に、電流測定装置の他の構成例としての電流測定装置301について、添付図面を参照して説明する。なお、電流測定装置301の説明において、上記した電流測定装置1と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。図14に示すように、この電流測定装置301は、例えば、検出対象体としての電線200に流れる電流I(直流電流および交流電流の双方)を非接触で測定可能なクランプ式の電流測定装置であって、磁気センサ302および本体部3を備えて構成されている。
【0057】
磁気センサ302は、磁気センサの他の一例であって、図14に示すように、センサ(センサ部)311a,311b(以下、区別しないときには「センサ311」ともいう)およびケース312a,312bを備えて、検出対象体としての電線200に電流I(直流電流および交流電流)が流れたときに生じる磁気を検出可能に構成されている。
【0058】
センサ311a,311bは、図15,16に示すように、磁性コア331、カバー322、シールド部323および磁気検出素子324(図17参照)をそれぞれ備えて平面視が略弧状(略円弧状)に構成されている。なお、センサ311aの磁性コア331を、以下、磁性コア331aともいい、センサ311bの磁性コア331を、以下、磁性コア331bともいう。また、センサ311a,311bは同様に構成されているため、以下、共通する部分についてはセンサ311aについてのみ説明し、センサ311bについての説明を省略する。
【0059】
磁性コア331は、図16に示すように、磁性板(一例として、金属板)360を複数積層して形成されている。磁性板360は、図17,18に示すように、平面視が略弧状(略円弧状)に形成されている。また、磁性板360は、上記した磁性コア31における磁性板60の噛合部61と同じ形状の噛合部361が先端部371に設けられると共に、磁性板60の噛合部62と同じ形状の噛合部362が基端部372に設けられている。また、磁性コア331は、磁性コア31と同様にして、スペーサが各磁性板360の間に挟み込まれることにより、図16に示すように、各噛合部361同士の間、および各噛合部362の間に隙間が生じるように形成されている。なお、磁性コア331aの噛合部361,362を、以下、噛合部361a,362aともいい、磁性コア331bの噛合部361,362を、以下、噛合部361b,362bともいう。
【0060】
また、磁性コア331は、図17に示すように、長さ方向の中間部位において、先端部371側の半体(以下「先端部側半体」ともいう)と、基端部372側の半体(以下「基端部側半体」ともいう)とに分割され、両者の間に隙間が形成されている。
【0061】
この電流測定装置301では、使用時において、図18に示すように、磁性コア331aの噛合部361aと磁性コア331bの噛合部361bとが噛合すると共に、磁性コア331aの噛合部362aと磁性コア331bの噛合部362bとが噛合し、これによって環状体が構成される。また、環状体で取り囲んだ検出対象体の磁気によってこの環状体に誘起された磁束を磁気検出素子324が検出して検出信号Sdを出力する。
【0062】
また、図17,18に示すように、噛合部361は、上記した磁性コア31における噛合部61の主噛合部51と同様の機能を有する主噛合部351を備えて構成され、噛合部362は、上記した磁性コア31における噛合部62の主噛合部52と同様の機能を有する主噛合部352を備えて構成されている。なお、磁性コア331aの主噛合部351,352を、以下、主噛合部351a,352aともいい、磁性コア331bの主噛合部351,352を、以下、主噛合部351b,352bともいう。
【0063】
また、主噛合部351には、図17に示すように、上記した磁性コア31における噛合部61の補助噛合部53と同様の機能を有する補助噛合部353が設けられ、主噛合部352には、上記した磁性コア31における噛合部61の補助噛合部53と同様の機能を有する補助噛合部354が設けられている。なお、磁性コア331aに設けられている補助噛合部353,354を、以下、補助噛合部353a,354aともいい、磁性コア331bに設けられている補助噛合部353,354を、以下、補助噛合部353b,354bともいう。
【0064】
カバー322は、図16に示すように、磁性コア331における噛合部361,362を除く部分を覆うように配設されて、2つに分割された磁性コア331の先端部側半体と磁性コア331の基端部側半体とを1つの弧状の磁性コア331をなすように連結する。シールド部323は、上記したシールド部23と同様の機能を有しており、図15に示すように、磁性コア331に配設されたカバー322を取り囲むようにして配設されている。
【0065】
磁気検出素子324は、一例として、ホール素子や、フラックスゲート型の磁気検出素子で構成され、図17に示すように、磁性コア331における先端部側半体と基端部側半体との間の隙間に配設されている。この磁気検出素子324は、2つの磁性コア331a,331bによって構成される環状体で検出対象体としての電線200を取り囲んだときに、電線200に流れる電流I(直流電流および交流電流)によって生じる磁気によってこの環状体に誘起された磁束を検出して検出信号Sdを出力する。この場合、この磁気センサ302では、一例として、磁性コア331a,331bの双方に磁気検出素子324が配設されているが、磁性コア331a,331bの一方にのみ磁気検出素子324を配設する構成を採用することもできる。また、磁性コア331a,331bの一方または双方に磁気検出素子324を複数配設する構成を採用することもできる。なお、この構成を採用するときには、磁性コア331を3つ以上に分割して磁気検出素子324の数と同数の隙間を設ける。
【0066】
ケース312a,312bは、センサ311a,311bをそれぞれ収容可能に構成されている。この場合、センサ311a,311bは、噛合部361同士および噛合部362同士の噛合(重なり合い)が可能な状態でケース312a,312bにそれぞれ収容されている。また、ケース312a,312bは、図14に示すように、基端部側(同図における下側)が本体部3におけるケース45の支点Pf(図18参照)に固定される図外の支持軸を回動中心として回動可能にケース45に取り付けられる。また、ケース312a,312bは、図外のバネの付勢力によってセンサ311a,311bの各先端部同士が近接する向き(図14に示す矢印A,Bの向き)に付勢されている。
【0067】
この磁気センサ302および電流測定装置301においても、磁性板360の先端部371に設けられた噛合部361の主噛合部351、および基端部372に設けられた噛合部362の主噛合部352の少なくとも一方に、環状体の内側および外側の少なくとも一方に突出する補助噛合部353,354を設けたことにより、上記した磁気センサ2および電流測定装置1と同様に、不完全噛合状態においても、センサ311a,311bによる磁気の検出感度の低下を十分少なく抑えることができる結果、測定精度を十分に向上させることができる。
【0068】
また、この磁気センサ302および電流測定装置301によれば、一対のセンサ311a,311bによって構成される環状体に誘起された磁束を検出する磁気検出素子324を一対のセンサ311a,311bの少なくとも一方に備えたことにより、検出対象体に流れる直流電流および交流電流の双方をこの磁気センサ302によって非接触で測定することができ、各電流を測定する際の測定精度を十分に向上させることができる。
【0069】
また、図19に示す磁性コア431を採用することもできる。なお、磁性コア331と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。同図に示すように、この磁性コア431を構成する磁性板460の先端部471における噛合部461の主噛合部451には、2つの磁性コア431によって構成される環状体の内側に突出する補助噛合部353および環状体の外側に突出する補助噛合部453の双方が設けられている。また、磁性板460の基端部472における噛合部462の主噛合部452には、環状体の外側に突出する補助噛合部354および環状体の内側に突出する補助噛合部454の双方が設けられている。この構成によれば、環状体の内側および外側の双方に突出するように補助噛合部353,453,354,454を形成したことにより、不完全噛合状態において他の磁性板460における主噛合部451,452および補助噛合部353,453,354,454のいずれかの噛合領域と重なり合う面積(噛合面積)を大きくすることができる。このため、この構成によれば、主噛合部451,452の噛合面積の減少分をより確実に補完することができるため、磁気の検出感度の低下を一層少なく抑えることができる。
【0070】
また、上記の磁性コア331,431以外の構成例として、各主噛合部に設けられている上記の各補助噛合部353,453,354,454の組み合わせが異なる次のような各磁性コアを採用することができる。具体的には、補助噛合部353,453,454が設けられている磁性コア、補助噛合部353,354,454が設けられている磁性コア、補助噛合部353,453,354が設けられている磁性コア、補助噛合部453,354,454が設けられている磁性コア、補助噛合部353,454が設けられている磁性コア、補助噛合部453,354が設けられている磁性コア、および補助噛合部453,454が設けられている磁性コアを採用することができる。
【0071】
また、磁性板360,460の先端部371,471に設けられた主噛合部351,451および基端部372,472に設けられた主噛合部352,452の双方に補助噛合部を設けた例について上記したが、主噛合部351,451および主噛合部352,452の一方にのみ補助噛合部を設ける構成を採用することもできる。この場合、この補助噛合部としては、環状体の内側および外側のいずれか一方に突出する補助噛合部でもよいし、環状体の内側および外側の双方に突出する補助噛合部でもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,301 電流測定装置
2,302 磁気センサ
21 コイル部
31,231,331,431 磁性コア
32 ボビン
33 導線
41 A/D変換部
44 制御部
61,62,261,262,361,362,461,462 噛合部
51,52,251,252,351,352,451,452 主噛合部
53,54,253,254,353,354,453,454 補助噛合部
60,260,360,460 磁性板
71,271,371,471 先端部
72,272,372,472 基端部
200 電線
324 磁気検出素子
Im 電流値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部および基端部に噛合部が設けられた複数の磁性板を積層して形成された略弧状の磁性コアを有すると共に当該基端部側の支点を中心として回動可能に構成された一対のセンサ部を備え、
前記一対のセンサ部における前記磁性板の前記各噛合部同士を噛合させた状態において環状体が構成されて当該環状体で取り囲んだ検出対象体の磁気を検出する磁気センサであって、
前記各噛合部は、当該各噛合部同士が最も重なり合う完全噛合状態において、噛合領域の全領域が互いに重なり合う主噛合部を備えて構成され、
前記先端部に設けられた噛合部および前記基端部に設けられた噛合部の少なくとも一方の前記主噛合部には、前記環状体の内側および外側の少なくとも一方に突出する補助噛合部が設けられ、
前記各補助噛合部は、前記完全噛合状態において、当該各補助噛合部の噛合領域の全領域が、噛合し合う他の前記磁性板における前記主噛合部および当該他の磁性板における前記補助噛合部の前記噛合領域と重なり合わず、かつ前記主噛合部の前記噛合領域の一部が重なり合わない状態で噛合する不完全噛合状態において、当該各補助噛合部の噛合領域の一部または全部が前記他の磁性板における前記噛合部および当該他の磁性板における前記補助噛合部のいずれかの前記噛合領域と重なり合うように形成されている磁気センサ。
【請求項2】
前記一対のセンサ部は、前記磁性コアの周囲に導線を巻回して形成されたコイル部をそれぞれ備えて構成されている請求項1記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記一対のセンサ部の少なくとも一方は、前記環状体に誘起された磁束を検出する磁気検出素子を備えて構成されている請求項1記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記補助噛合部は、前記先端部に設けられた噛合部および前記基端部に設けられた噛合部の双方における前記主噛合部に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記補助噛合部は、前記環状体の内側および外側の双方に突出するように形成されている請求項1から4のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の磁気センサと、当該磁気センサによって検出された前記磁気の強度に基づいて前記検出対象体に流れる電流を測定する測定部とを備えている電流測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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