説明

磁気センサユニット

【課題】回路規模の増加を伴うことなく中心位置の検出精度の向上を図り、結果的に位置検出精度を向上させる。
【解決手段】センサ出力Vhr、Vhlの差信号を演算する減算部16及びセンサ出力Vhr、Vhlの和信号を演算する加算部17の上流に設けた、センサ出力Vhr、VhlをV/I変換するV/I変換部13a、13bを所定周期で切り替え、結果的にセンサ出力VhrをV/I変換部13a、センサ出力VhrをV/I変換部13bで処理したときの差信号及び和信号の除算値と、センサ出力VhrをV/I変換部13b、センサ出力VhrをV/I変換部13aで処理したときの差信号及び和信号の除算値との平均値を、位置検出信号として出力する構成とする。これによりV/I変換部13a、13bでのオフセット成分を低減し位置検出信号に含まれるオフセット成分を低減して精度向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の移動による周囲の磁界変化を磁気センサで検出することにより、磁気センサに対する磁性体の相対位置や傾斜を検知するようにした磁気センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータのジョイスティックやトラックボールや携帯電話などの入力手段として使用される、座標検知を行う位置検出装置として、光学式、感圧式、可変抵抗式、磁気検出方式等、各種の方式が存在する。
各種方式のうち、小型化、低コスト、低消費電流化等の要請がある場合には、磁石と磁気センサとを用い、磁石の移動による周囲の磁界変化を磁気センサで検出することにより座標検知を行う磁気検出方式の位置検出装置を用いることが好適である。
【0003】
しかしながら、磁石及び磁気センサは、温度による特性変化が大きく、環境温度に影響を受けやすい。また、磁石及び磁気センサを用いた位置検出装置において、その位置検出精度は、磁石及び磁気センサの特性のばらつきや組立精度の影響を受けやすい。
このような磁石及び磁気センサの特性のばらつきや、組立精度の影響を緩和する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。この技術によれば、2つの磁気センサの差出力を、和出力で除算して磁石の位置検出信号とすることで、環境温度による影響を抑え、磁石及び磁気センサの特性のばらつきや組立精度による影響も抑えることが可能である。
【0004】
また、磁気センサとしてホール素子を用いた場合、ホール素子の製造ばらつきによるオフセットで位置検出精度の確保が困難となる。このような製造ばらつきをオフセットするオフセットキャンセル方法として、非特許文献1に記載されているように、磁気センサとしてのホール素子の駆動電流をホール素子内で直交する方向に切り替え、ホール素子の出力信号とオフセットとを周波数分離して検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−348173号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】1.R S Popovic著 Hall Effect Devices (ISBN-10:0750300965 Inst of Physics Pub Inc (1991/05)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1に記載の発明は、磁石が2つの磁気センサ間の中央位置にあるとき、出力電圧の基準となるコモン電圧を中心位置信号として出力する必要がある。しかしながら、磁気センサ出力は微小であるため、回路内部の素子の特性ばらつき等の影響を大きく受け、中心位置信号としての前記コモン電圧にオフセットを生じるという問題がある。
【0008】
特に、磁気センサの出力を受けて信号処理を行う前段回路部で生じる誤差は、後段回路部で増幅されるため、出力オフセットに対して大きく影響を与える。
この課題を解決する一般的な方法として、位置検出信号を生成する出力部において、コモン電圧をトリミングして調整するという方法がある。
しかしながら、この方法を用いるためには、出力部において位置検出信号としての出力信号を補正するための調整用電圧生成回路を新規に追加する必要があり、このため回路規模が大きくなるという問題がある。また、位置検出装置に個別に調整用電圧生成回路を追加してトリミングして調整する必要があるため、コスト面でのデメリットが大きくまた手間がかかる。
【0009】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、磁気センサ対の中央に磁性体が位置する場合の磁気センサ対に対する磁性体の相対位置又は傾斜を表す相対信号である中心位置信号の精度を上げながら、回路規模が小さく且つ、磁気センサユニットを個別に調整する必要のない磁気センサユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる磁気センサユニットは、任意に設定した一軸上に沿って配設される少なくとも一組の磁気センサ対と、前記磁気センサ対に対して移動自在又は傾斜自在に相対移動可能な磁性体と、を有し、前記磁性体が前記磁気センサ対に対して相対移動することにより生じる磁束の変化を前記磁気センサ対で検知し、前記磁気センサ対の差信号を、前記磁気センサ対の和信号で除算してこれを前記磁気センサ対に対する前記磁性体の相対位置又は傾斜を表す相対信号として出力する磁気センサユニットにおいて、前記磁気センサ対のセンサ出力のうち第1のセンサ出力から第2のセンサ出力を減算して前記差信号を演算する減算部と、前記第1のセンサ出力と前記第2のセンサ出力とを加算して前記和信号を演算する加算部と、前記差信号を前記和信号で除算して前記相対信号を演算する除算部と、前記減算部及び前記加算部の上流に設けられ、前記第1のセンサ出力及び第2のセンサ出力に対して所定の信号処理を行う第1の信号処理部及び第2の信号処理部と、前記第1のセンサ出力及び前記第2のセンサ出力に対して前記信号処理を行う前記第1の信号処理部及び前記第2の信号処理部を、各センサ出力に対して前記信号処理を行う時間比が同一となるように周期的に切り替える切り替え手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2にかかる磁気センサユニットは、前記切り替え手段は、前記第1及び第2の信号処理部の上流に設けられ、前記第1及び前記第2のセンサ出力の出力先を前記第1及び第2の信号処理部間で切り替える第1の切替スイッチと、前記第1及び第2の信号処理部と前記減算部との間に設けられ、前記第1の切替スイッチと同期して動作する第2の切替スイッチと、前記第1及び第2の切替スイッチを制御するスイッチ切替制御部と、を有し、前記第2の切替スイッチは、前記第1又は第2の信号処理部で前記信号処理がなされた前記第1のセンサ出力を前記減算部の正入力端子に供給し、前記第1又は第2の信号処理部で前記信号処理がなされた前記第2のセンサ出力を前記減算部の負入力端子に供給するように動作することを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項3にかかる磁気センサユニットは、前記第1の信号処理部及び前記第2の信号処理部は、電圧信号を電流信号に変換する電圧/電流変換部であって、前記センサ出力は電圧信号であり且つ前記減算部、加算部及び除算部は電流信号に対して処理を行うことを特徴としている。
さらにまた、請求項4にかかる磁気センサユニットは、前記第1の信号処理部及び前記第2の信号処理部は、電圧信号を増幅する電圧増幅部であって、前記センサ出力は電圧信号であり且つ前記減算部、加算部及び除算部は電圧信号に対して処理を行うことを特徴としている。
さらに、請求項5にかかる磁気センサユニットは、前記磁気センサはホール素子であって、前記ホール素子を駆動する電圧及び電流を、前記ホール素子内で直交する方向に切り替える切替駆動手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁気センサ対の第1のセンサ出力及び第2のセンサ出力に対して所定の信号処理を行う信号処理部を、前記第1又は第2のセンサ出力に対する処理時間が、前記第1の信号処理部と前記第2の信号処理部とで同一時間となるように周期的に切り替え、第1のセンサ出力に対して第1の信号処理部且つ第2のセンサ出力に対して第2の信号処理部で前記信号処理を行う状態と、第1のセンサ出力に対して第2の信号処理部且つ第2のセンサ出力に対して第1の信号処理部で前記信号処理を行う状態とを構成し、結果的に各状態における、磁気センサ対に対する磁性体の相対位置又は傾斜を表す相対信号の平均値が相対信号として出力されるように構成したため、相対信号に含まれる、第1及び第2の信号処理部におけるオフセット成分を低減することができる。このため、磁性体が磁気センサ間の中央位置に存在するときの相対信号である中心位置信号の検出精度を向上させることができ、結果的に相対信号の検出精度を向上させることができる。
また、このとき、切り替え手段を設けるだけで実現することができるため、磁気センサ対のセンサ出力の差信号を和信号で除算して相対信号を得るようにした従来の磁気センサユニットにおいて、大幅な変更を伴うことなく容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態における位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】センサ部の一例を示す概略構成図である。
【図3】磁石と磁気センサとの相対位置に応じた磁気センサの出力電圧の出力特性を表す特性図である。
【図4】第2の実施の形態における位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】第3の実施の形態における位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】第4の実施の形態における位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明における磁気センサユニットを適用した、磁気センサ対に対する磁性体の相対位置を検出するようにした位置検出装置の一例を示すブロック図である。
図中1はセンサ部、2はセンサ部1からのセンサ出力に対して信号処理を行い、磁気センサ対に対する磁性体の相対位置を位置検出信号として演算する信号処理装置である。
センサ部1は、磁石(より詳細には永久磁石)10と検出部11とで構成され、検出部11は2つの磁気センサ11a、11bを備える。
磁気センサ11a、11bとして、例えば、ホール素子、半導体磁気抵抗素子、感磁性耐磁気抵抗素子、GMR素子等を適用することができる。また、磁石10として、電磁石や磁気フィルム等を適用することができる。
【0016】
2つの磁気センサ11a、11bは、図2に示すように、一軸上、例えばX軸上に沿って2個対称に固定配置されている。この磁気センサ11a、11bが固定配置された図示しない固定部材に対して移動する、図示しない移動部材に磁石10が取り付けられている。そして移動部材に取り付けられた磁石10は、固定部材に取り付けられた磁気センサ11a、11bに対して図の矢印AR1方向(X軸方向)に移動可能に構成される。より詳細には、磁石10は、磁気センサ11a、11bの配置面に平行な面内において、磁気センサ11a、11bが配置された軸方向、すなわちX軸方向に移動可能に構成されている。この磁石10は、鉛直方向(Z軸方向)に上面側がS極、下面側がN極に着磁されている。そして、磁石10が磁気センサ11a及び11bの配置面に平行な面内において矢印AR1方向に移動すると磁界が変化し、磁石10の移動量に応じて磁気センサ11a、11bの出力電圧が変化するように構成されている。
【0017】
図3は、磁気センサ11aの出力電圧をVhr、磁気センサ11bの出力電圧をVhlとし、磁石10の位置と各磁気センサ11a、11bの出力電圧の大きさとの関係を表したものであって、磁石10が、磁気センサ11a、11bが配置されたX軸方向に移動した場合の各位置における、各出力電圧Vhr、Vhlの大きさを表している。
図3に示すように、磁石10が磁気センサ11a、11b間の中央に位置し、磁石10の着磁方向が鉛直方向にあるときに、磁気センサ11a、11bの出力電圧が一致するように構成されている。そして、磁石10が磁気センサ11aに近づく方向に移動すると、磁気センサ11bと磁石10との間の距離が大きくなるほど磁気センサ11bの出力電圧は減少する。一方、磁気センサ11aの出力電圧は、磁気センサ11aと磁石10との間の距離が短くなるほど増加し、その後、磁気センサ11aと磁石10との間の距離が増加するようになると増加するに応じて磁気センサ11aの出力電圧は減少する。
【0018】
このように、磁石10と磁気センサ11a、11bとの相対位置に応じて、磁気センサ11a、11bの出力電圧Vhr、Vhlが変化することから、これら磁気センサ11a、11bの出力電圧を利用して磁石10のX軸上における位置を特定できる。
図1に戻って信号処理装置2は、切替スイッチ12、変換部13、切替スイッチ14、スイッチ切替制御部15、減算部16、加算部17、電流除算部18、及び出力部19を備える。
検出部11の磁気センサ11a及び11bの出力電圧からなるセンサ出力Vhr、Vhlは、切替スイッチ12に入力される。
【0019】
切替スイッチ12はスイッチ切替制御部15からの切替信号に応じて動作し、磁気センサ11a及び磁気センサ11bのセンサ出力Vhr、Vhlの出力先を切替信号に応じて切り替えて変換部13に出力する。
変換部13は、V/I変換部13a及びV/I変換部13bを備える。これらV/I変換部13a及び13bはそれぞれ、切替スイッチ12を介して、磁気センサ11a又は11bのセンサ出力Vhr、Vhlを入力する。つまり、スイッチ切替制御部15からの切替信号に応じて切替スイッチ12が動作することにより、磁気センサ11a及び磁気センサ11bのセンサ出力Vhr、VhlがV/I変換部13a又はV/I変換部13bに供給されるようになっている。
【0020】
V/I変換部13a及びV/I変換部13bは、入力した磁気センサ11a又は11bからの電圧信号からなるセンサ出力Vhr、Vhlを電流信号Ihr、Ihlに変換し、変換した電流信号Ihr、Ihlを切替スイッチ14に出力すると共に加算部17に出力する。
切替スイッチ14は、前記切替スイッチ12と同期して前記スイッチ切替制御部15からの前記切替信号に応じて動作し、入力されるV/I変換部13a及びV/I変換部13bからの電流信号Ihr、Ihlの出力先を切り替えて減算部16に出力する。
【0021】
減算部16は、正入力端子及び負入力端子を備え、これら正入力端子及び負入力端子には、切替スイッチ14を介して電流信号Ihr又はIhlが入力される。つまり、スイッチ切替制御部15からの切替信号に応じて切替スイッチ14が動作することにより、減算部16の正入力端子及び負入力端子に電流信号Ihr又はIhlが入力される。
減算部16は、正入力端子に入力される電流信号から負入力端子に入力される電流信号を減算し、減算結果を磁気センサ11a、11bの差信号Isとしてこれを電流除算部18に出力する。
【0022】
加算部17は、V/I変換部13a及びV/I変換部13bからの電流信号を入力し、これらを加算しその加算結果を磁気センサ11a、11bの和信号Iaとしてこれを電流除算部18に出力する。
電流除算部18は、減算部16からの差信号Isを加算部17からの和信号Iaで除算し、除算結果Ioを出力部19に出力する。
出力部19は、例えばI/V変換器で構成され、電流除算部18での除算結果Ioを電圧信号に変換しこれを磁石10のX軸方向の位置を表す位置検出信号Voとして出力する。
【0023】
今、図1において、切替スイッチ12により、磁気センサ11aのセンサ出力VhrをV/I変換部13aに供給し、磁気センサ11bのセンサ出力VhlをV/I変換部13bに供給し、且つ、切替スイッチ14により、V/I変換部13aの出力電流を減算部16の正入力端子に供給し、V/I変換部13bの出力電流を減算部16の負入力端子に供給する第1の回路接続を、スイッチ切替制御部15からの切替信号により切替スイッチ12及び14に対して指示する。
【0024】
磁気センサ11a、11bのセンサ出力Vhr、Vhlは、V/I変換部13a、13bで電流信号Ihr、Ihlに変換されるが、V/I変換部13a、13bには内部素子のばらつき等によるオフセット電流が生じる。
V/I変換部13a、13bにおけるV/I変換係数を1/Rc、V/I変換部13aのオフセット電流をIro1、V/I変換部13bのオフセット電流をIlo1とし、磁気センサ11aのセンサ出力VhrをV/I変換部13aで変換したときの電流信号をIhr1、磁気センサ11bのセンサ出力VhlをV/I変換部13bで変換したときの電流信号をIhl1とすると、V/I変換部13a、13bから出力される電流信号Ihr1、Ihl1は、次式(1)で表すことができる。
【0025】
【数1】

【0026】
V/I変換部13a、13bで生成された電流信号Ihr1、Ihl1は減算部16、加算部17でそれぞれ減算、加算される。
減算部16での減算により得られる差信号をIs1、加算部17での加算により得られる和信号をIa1とすると、これら差信号Is1、和信号Ia1は、次式(2)で表すことができる。
【0027】
【数2】

【0028】
減算部16で生成された差信号Is1及び加算部17で生成された和信号Ia1は電流除算部18で除算される。電流除算部18の除算結果をIo1、参照電流をIrefとすると、除算結果Io1は、次式(3)で表すことができる。
【0029】
【数3】

【0030】
電流除算部18で生成された除算結果Io1は出力部19で電圧信号に変換される。出力部19のI/V変換係数をRo、コモン電圧をVcom、出力電圧、すなわち位置検出信号をVo1とすると、位置検出信号Vo1は次式(4)で表すことができる。
【0031】
【数4】

【0032】
次に、図1において、切替スイッチ12により、磁気センサ11aのセンサ出力VhrをV/I変換部13bに供給し、磁気センサ11bのセンサ出力VhlをV/I変換部13aに供給し、且つ、切替スイッチ14により、V/I変換部13bの出力電流を減算部16の正入力端子に供給し、V/I変換部13aの出力電流を減算部16の負入力端子に供給する第2の回路接続を、スイッチ切替制御部15からの切替信号により切替スイッチ12、14に対して指示する。
【0033】
磁気センサ11a、11bで検出されたセンサ出力Vhr、Vhlは、上記と同様に、V/I変換部13a、13bで電流信号に変換され、電流信号Ihr1′、Ihl1′として出力される。このとき、V/I変換部13aには磁気センサ11bのセンサ出力Vhlが入力され、V/I変換部13bには磁気センサ11aのセンサ出力Vhrが入力されるため、電流信号Ihr1′、Ihl1′は次式(5)で表すことができる。
【0034】
【数5】

【0035】
V/I変換部13a、13bで変換された電流信号Ihr1′、Ihl1′は減算部16で減算されると共に加算部17で加算される。このとき、減算部16の正入力端子にはV/I変換部13bで変換された電流信号Ihl1′が入力され、減算部16の負入力端子にはV/I変換部13aで変換された電流信号Ihr1′が入力されるため、減算部16から出力される差信号Is1′、加算部17から出力される和信号Ia1′は、次式(6)で表すことができる。
【0036】
【数6】

【0037】
このようにして減算部16で生成された差信号Is1′及び加算部17で生成された和信号Ia1′は電流除算部18で除算される。このときの、電流除算部18の出力電流Io1′は次式(7)で表すことができる。
【0038】
【数7】

【0039】
電流除算部18で生成された除算電流Io1′は出力部19で電圧信号に変換される。出力部19の出力電圧Vo1′は次式(8)で表すことができる。
【0040】
【数8】

【0041】
ここで、切替スイッチ12、14により第1の回路接続と第2の回路接続とを切り替えることにより、出力部19の出力電圧である位置検出信号Voは、前記(4)式で表される出力電圧Vo1と、前記(8)式で表される出力電圧Vo1′とを繰り返すことになる。したがって、切替スイッチ12、14を周期的に切り替え、且つ第1の回路接続の継続時間と第2の回路接続の継続時間とが同一となるように切り替えることで、出力部19の出力電圧は平均化されることになる。したがって、第1の回路接続と第2の回路接続とを周期的に切り替えたときの出力部19の出力電圧、すなわち位置検出信号Vo1″は、次式(9)で表すことができる。
【0042】
【数9】

【0043】
ここで中心位置信号が出力される状態、すなわち、Vhr=Vhlのときを考える。
上述のような第1の回路接続と第2の回路接続との切り替えを行わない場合、つまり切替スイッチ12、14を第1の回路接続、又は第2の回路接続の何れかの状態に固定した場合、出力部19の出力電圧は前記(4)式で表すVo1又は(8)式で表すVo1′のように、分母及び分子にオフセット電流Iro、Iloからなる項が存在し、Vo(=Vo1又はVo1′)=Vcomとはならない。
【0044】
しかしながら上記(9)式で表されるVo1″のように、切替スイッチ12、14を周期的に切り替えることにより、出力部19において出力電圧を平均化したことと同等となり、その結果、(9)式に示すように、分子のオフセット電流Iro、Iloの項が相殺されることになる。その結果、中心位置信号が出力される、Vhr=Vhlの状態においては、Vo1″=Vcomとなる。
【0045】
さらに、オフセット電流Iro、Iloが環境温度変化によって変動したとしても、(9)式に示すように、分子にオフセット電流Iro、Iloの項は現れないため、Vhr=Vhlの状態においては、Vo1″=Vcomとなる。したがって、環境温度変化によるオフセット電流Iro、Iloの変動の影響を受けないため、温度環境変化に関わらずVo1″=Vcomとすることができる。すなわち、出力電圧Voに含まれる出力オフセット電圧を低減することができる。
【0046】
ここで、センサ部1として、磁石10及び磁気センサ11a、11bを用いた位置検出装置においては、中心位置検出精度は非常に重要な性能の1つである。つまり、磁石10の中心位置が2つの磁気センサ11a、11b間の中央位置にある状態を基準状態とし、この基準状態における磁石10の位置を基準位置とし、磁石10が基準位置にあるときの出力部19の出力電圧が、位置検出信号としての基準となって、この基準となる出力電圧を、磁石10の基準位置として現在位置を得るようにしているため、磁石10の中心位置検出精度を向上させるということはすなわち位置検出装置の精度向上につながることになる。
【0047】
前記磁気センサ11a、11bのセンサ出力は微小であるため、中心位置信号は回路内部の素子の特性ばらつき等の影響を大きくうけてオフセットを生じる。特に磁気センサ11a、11bのセンサ出力を入力しこれに対して信号処理を行う前段回路部(例えば、V/I変換部13a、13b)で生じる誤差は、後段回路(例えば、電流除算部18)で増幅されるため、出力信号としての位置検出信号に含まれるオフセットに対して大きく影響を与える。
【0048】
しかしながら、上述のように、切替スイッチ12、14を周期的に切り替えることにより、出力部19の出力電圧は、第1の回路接続及び第2の回路接続の平均値と同等となり、この出力電圧にはV/I変換部13a、13bにおける電流オフセット成分を含まない。このため、Vhr=Vhlであるときの位置検出信号である中心位置信号に含まれる電流オフセット成分を除去することができ、すなわち、高精度な中心位置信号を得ることができる。したがって、この高精度な中心位置信号を基準とする位置検出信号を用いて位置検出を行うことにより高精度な位置検出を行うことができる。
【0049】
なお、前記スイッチ切替制御部15における第1の回路接続、第2の回路接続の切替周期は例えば、次の手順で決定すればよい。
すなわち、要求される位置検出装置の応答速度に依存する。
例えば、高速で動作するアプリケーションに対して、位置検出装置が高速に応答することが要求される場合には、切替周期は、要求される応答時間よりも短くする必要がある。逆に要求される応答時間が長い場合には、切替周期は長くてもよい。
【0050】
また、上述のように、切替スイッチ12、14により磁気センサ11a、11bの出力先及び減算部16の正負の入力端子に入力される電流信号Ihr、Ihlを切り替えるだけで実現することができるため、磁気センサ11a、11bのセンサ出力の差信号を和信号で除算しこれを位置検出信号として出力するようにした従来の位置検出装置において、切替スイッチ12、14及びスイッチ切替制御部15を設けるだけで、大幅な変更を伴うことなく実現することができる。
【0051】
したがって、追加する回路規模が小さくてすみ、且つ位置検出装置毎に個別にトリミング等の調整を必要とすることなく、出力オフセット電圧を低減し中心位置検出精度を容易に向上させることができる。
さらに、V/I変換部13a、13bは、環境温度変化によるオフセット変動の影響を受けないため、位置検出装置を使用する全温度範囲で出力オフセット電圧を低減して中心位置検出精度を上げることができる。その結果、中心位置検出信号を基準として検出される位置検出の検出精度を向上させることができる。
【0052】
なお、上記第1の実施の形態において、磁石10が磁性体に対応し、磁気センサ11a、11bが磁気センサ対に対応し、位置検出信号が相対信号に対応している。また、減算部16が減算部に対応し、加算部17が加算部に対応し、電流除算部18が除算部に対応し、V/I変換部13a、V/I変換部13bが第1の信号処理部及び第2の信号処理部に対応し、切替スイッチ12、14、スイッチ切替制御部15が切り替え手段に対応している。さらに、切替スイッチ12が第1の切替スイッチに対応し、切替スイッチ14が第2の切替スイッチに対応し、スイッチ切替制御部15がスイッチ切替制御部に対応している。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態における磁気センサユニットを適用した位置検出装置の一例を示す回路ブロック図である。
第2の実施の形態における位置検出装置は、上記第1の実施の形態において、信号処理装置2に替えて、信号処理装置2aを備えている。なお、上記第1の実施の形態と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0054】
第2の実施の形態における信号処理装置2aは、図4に示すように、切替スイッチ22、増幅部23、切替スイッチ24、スイッチ切替制御部25、減算部26、加算部27、及び電圧除算出力部28を備える。
なお、センサ部1は、上記第1の実施の形態におけるセンサ部1と同様であって、磁石10と、二つの磁気センサ11a、11bを備え、これら磁気センサ11a及び11bは電圧信号からなるセンサ出力Vhr、Vhlを出力する。これら磁気センサ11a、11bのセンサ出力は、切替スイッチ22に入力される。
【0055】
切替スイッチ22は、スイッチ切替制御部25からの切替信号に応じて動作し、入力される磁気センサ11a及び磁気センサ11bのセンサ出力Vhr、Vhlの出力先を、切替信号に応じて切り替えて増幅部23に出力する。
増幅部23は、電圧増幅部23a及び23bを備える。これら電圧増幅部23a及び23bはそれぞれ、切替スイッチ22を介して、磁気センサ11a又は11bの電圧信号からなるセンサ出力Vhr、Vhlを入力する。つまり、スイッチ切替制御部25からの切替信号に応じて切替スイッチ22が動作することにより、磁気センサ11a及び磁気センサ11bのセンサ出力Vhr、Vhlが電圧増幅部23a又は電圧増幅部23bに供給されるようになっている。
【0056】
電圧増幅部23a、23bは、入力されるセンサ出力Vhr、Vhlを増幅し、増幅したセンサ出力を電圧信号Vrp、Vlpとして切替スイッチ24に出力するとともに加算部27に出力する。
切替スイッチ24は、前記切替スイッチ22と同期して前記スイッチ切替制御部25からの前記切替信号に応じて動作し、電圧増幅部23a及び23bからの電圧信号Vrp、Vlpの出力先を、切替信号に応じて切り替えて減算部26に出力する。
【0057】
減算部26は、正入力端子及び負入力端子を備え、これら正入力端子及び負入力端子には、切替スイッチ24を介して電圧信号Vrp又はVlpが入力される。つまり、スイッチ切替制御部25からの切替信号に応じて切替スイッチ24が動作することにより、減算部26の正入力端子及び負入力端子に、電圧信号Vrp又はVlpが入力される。
減算部26は、正入力端子に入力される電圧信号から負入力端子に入力される電圧信号を減算し、減算結果を磁気センサ11a、11bの差信号Vsとしてこれを電圧除算出力部28に出力する。
【0058】
加算部27は、電圧増幅部23a及び23bからの電圧信号Vrp、Vlpを入力し、これらを加算しその加算結果を、磁気センサ11a、11bの和信号Vaとして電圧除算出力部28に出力する。
電圧除算出力部28は、減算部26からの差信号Vsを加算部27からの和信号Vaで除算し、これを磁石10のX軸方向の位置を表す位置検出信号Voとして出力する。
【0059】
今、図4において、切替スイッチ22により、磁気センサ11aのセンサ出力Vhrを電圧増幅部23aに供給し、磁気センサ11bのセンサ出力Vhlを電圧増幅部23bに供給し、且つ、切替スイッチ24により、電圧増幅部23aの出力電圧を減算部26の正入力端子に供給し、電圧増幅部23bの出力電圧を減算部26の負入力端子に供給する第3の回路接続を、スイッチ切替制御部25からの切替信号により、切替スイッチ22、24に対して指示する。
【0060】
磁気センサ11a、11bのセンサ出力Vhr、Vhlは、電圧増幅部23a、23bで増幅され電圧信号Vrp、Vlpとして出力されるが、電圧増幅部23a、23bには、内部素子のばらつき等によるオフセット電圧が生じる。
このため、電圧増幅部23a、23bの増幅率をGp、電圧増幅部23aのオフセット電圧をVro2、電圧増幅部23bのオフセット電圧をVlo2とすると、磁気センサ11aのセンサ出力Vhrを電圧増幅部23aで増幅した電圧信号Vrp2、磁気センサ11bのセンサ出力Vhlを電圧増幅部23bで増幅した電圧信号Vlp2は、次式(10)で表すことができる。
【0061】
【数10】

【0062】
電圧増幅部23a、23bで生成された電圧信号Vrp2、Vlp2は減算部26、加算部27でそれぞれ減算、加算される。
減算部26での減算により得られる差信号をVs2、加算部27での加算により得られる和信号をVa2とすると、これら差信号Vs2、和信号Va2は、次式(11)で表すことができる。
【0063】
【数11】

【0064】
減算部26で演算された差信号Vs2、加算部27で演算された和信号Va2は電圧除算出力部28で除算される。電圧除算出力部28の出力電圧をVo2、参照電圧をVref、コモン電圧をVcomとすると、電圧除算出力部28の出力電圧、すなわち位置検出信号Vo2は次式(12)で表すことができる。
【0065】
【数12】

【0066】
次に、図4において、切替スイッチ22により、磁気センサ11aのセンサ出力Vhrを電圧増幅部23bに供給し、磁気センサ11bのセンサ出力Vhlを電圧増幅部23aに供給し、且つ、切替スイッチ24により、電圧増幅部23bの出力電圧を減算部26の正入力端子に供給し、電圧増幅部23aの出力電圧を減算部26の負入力端子に供給する第4の回路接続を、スイッチ切替制御部25からの切替信号により切替スイッチ22、24に対して指示する。
【0067】
磁気センサ11a、11bで検出されたセンサ出力Vhr、Vhlは、上記と同様に、電圧増幅部23a、23bで増幅されて電圧信号Vrp2′、Vlp2′として出力される。このとき、電圧増幅部23aには磁気センサ11bのセンサ出力Vhlが入力され、電圧増幅部23bには磁気センサ11aのセンサ出力Vhrが入力されるため、このときの電圧信号Vrp2′、Vlp2′は次式(13)で表される。
【0068】
【数13】

【0069】
電圧増幅部23a、23bで生成された電圧信号Vrp2′、Vlp2′は減算部26、加算部27でそれぞれ減算、加算される。減算部26での減算結果である差信号Vs2′、加算部27での加算結果である和信号Va2′は、次式(14)で表すことができる。
【0070】
【数14】

【0071】
減算部26、加算部27で生成された出力電圧Vs2′(差信号)、Va2′(和信号)は電圧除算出力部28で除算される。このときの電圧除算出力部28の出力電圧、すなわち位置検出信号Vo2′は、次式(15)で表すことができる。なお、式(15)中のIrefは参照電流、Vcomはコモン電圧である。
【0072】
【数15】

【0073】
ここで、切替スイッチ22、24により第3の回路接続と第4の回路接続とを切り替えることにより、電圧除算出力部28の出力電圧Voは、前記(12)式で表される出力電圧Vo2と、前記(15)式で表される出力電圧Vo2’とを繰り返すことになる。したがって、切替スイッチ22、24を周期的に切り替え、且つ第3の回路接続と第4の回路接続の状態の継続時間が同一となるように切り替えることで、電圧除算出力部28の出力電圧は平均化されることになる。このため、第3の回路接続と第4の回路接続とを周期的に切り替えたときの電圧除算出力部28の出力電圧Vo2″は、次式(16)で表すことができる。
【0074】
【数16】

【0075】
ここで、磁石10が磁気センサ11a、11b間の中央位置にあり位置検出信号Voとして中心位置信号が出力される状態、つまりVhr=Vhlのときを考える。
上述のような第3の回路接続と第4の回路接続との切り替えを行わない場合、つまり切り替えスイッチ22、24を第3の回路接続又は第4の回路接続の何れかの状態に固定した場合、電圧除算出力部28の出力電圧Voは、前記(12)式で表すVo2又は(15)式で表すVo2′のように、分母及び分子にオフセット電圧Vro、Vloからなる項が存在し、Vo=Vcomとはならない。
【0076】
しかしながら、切替スイッチ22、24を周期的に切り替えることにより、上記(16)式で表されるVo2″のように、電圧除算出力部28において出力電圧Vo2、Vo2′を平均化したことと同等となる。その結果、(16)式に示すように、分子のオフセット電圧Vro、Vloの項が相殺されることになって、Vo2″=Vcomとなる。
つまり、電圧位置検出信号Voとして中心位置信号が出力されるVhr=Vhlの状態においてはVo(=Vo2″)=Vcomとなる。
【0077】
さらに、電圧増幅部23a、23bのオフセット電圧Vro、Vloが環境温度変化によって変動しても、(16)式に示すように、分子にオフセット電圧Vro、Vloの項は現れないため、出力電圧Voは環境温度変化によるオフセット電圧Vro、Vloの変動の影響を受けない。したがって、その分、出力電圧、すなわち中心位置信号に含まれる出力オフセット電圧を低減できることになる。
【0078】
したがって、この第2の実施の形態のように、上記第1の実施の形態におけるV/I変換部13が電圧増幅部23に置き換わった場合でも、磁気センサ11a、11bのセンサ出力Vhr、Vhlに対して増幅処理を行う電圧増幅部23a、23bにおいて、電圧増幅部23aでセンサ出力Vhr、電圧増幅部23bでセンサ出力Vhlに対して増幅処理を行う場合と、電圧増幅部23aでセンサ出力Vhl、電圧増幅部23bでセンサ出力Vhrに対して増幅処理を行う場合とで切り替えて、電圧除算出力部28で平均化を行うことによって、上記第1の実施の形態と同様に、出力オフセット電圧を低減することができる。
【0079】
ここで、例えば、磁気センサ11a、11bのセンサ出力Vhr、Vhlが、電圧増幅部23a、23bにおいて、それぞれ10〔mV〕に増幅され、その信号電圧に電圧増幅部23a、23bのオフセット電圧“1〔mV〕”、“−1〔mV〕”がそれぞれ加算されるものとする。
2つの電圧増幅回路23a、23bの出力電圧を減算部26で減算した差信号Vs2′及び加算部27で加算した和信号Va2′を、参照電圧Vrefを“1〔v〕”として電圧除算出力部28で除算すると、(11〔mV〕−9〔mV〕)÷(11〔mV〕+9〔mV〕)×1〔v〕=100〔mV〕が電圧除算出力部28からオフセット電圧として出力されることになり、すなわち、電圧増幅回路部23a、23bのオフセットが100倍に増幅されることになり、出力信号としての位置検出信号に対して大きく影響を与えることになる。
【0080】
しかしながら、上述のように、電圧除算出力部28で平均化を行うことによって、出力オフセット電圧を低減することができるため、位置検出信号に与える影響を低減することができる。
なお、この第2の実施の形態においても、切替スイッチ22及び24の切替周期は上記第1の実施の形態における切替周期と同様の手順で設定すればよい。
また、この第2の実施の形態においても、環境温度変化により電圧増幅部23におけるオフセット電圧変動の影響を受けることはない。
【0081】
また、この第2の実施の形態においても、切替スイッチ22、24により磁気センサ11a、11bの出力先及び減算部26の正負の入力端子への入力を切り替えるだけで実現することができるため、磁気センサ11a、11bのセンサ出力の差信号を和信号で除算しこれを位置検出信号として出力するようにした位置検出装置の構成において、切替スイッチ22、24及びスイッチ切替制御部25を設けるだけで、大幅な変更を伴うことなく実現することができる。
【0082】
したがって、追加する回路規模が小さくてすみ、且つ位置検出装置毎に個別にトリミング等の調整を必要とすることなく、出力オフセット電圧を低減し中心位置検出精度を容易に向上させることができる。
さらに、電圧増幅部23a、23bは、環境温度変化によるオフセット変動の影響を受けないため、位置検出装置を使用する全温度範囲で出力オフセット電圧を低減して中心位置検出精度を上げることができる。その結果、中心位置信号を基準として検出される位置検出の検出精度を向上させることができる。
【0083】
なお、上記実施の各実施の形態においては、2つの磁気センサ11a、11bを一軸(X軸)上に配置し、磁石10の一軸方向の位置を検出する場合について説明したが、これに限るものではない。
例えば、直交するX軸及びY軸の各軸上にそれぞれ対称となる位置に対をなす磁気センサを配置し、これら4つの磁気センサが配置された平面と平行な面内において磁石10を移動させることにより平面内におけるX軸方向及びY軸方向における磁石10の位置を検出するように構成する場合であっても適用することができる。
【0084】
また、平面内で磁石10を移動させる場合に限るものではなく、三次元空間内で磁石10を移動させる場合であっても適用することができ、この場合には、対をなす磁気センサを対称配置した軸に対する磁石10の位置検出を行うことができ、複数の軸上に磁気センサ対を配置することにより複数の軸に対する磁石10の位置検出を行うことができる。
また、上記各実施の形態においては、磁気センサ11a、11bに対する磁石10の相対位置を検出する場合について説明したが、これに限るものではなく、磁気センサ11a、11bに対する磁石10の傾斜角の変化に応じて、磁気センサ11a、11bのセンサ出力が変化することを利用して、磁気センサ11a、11bに対する磁石10の傾斜を検出するようにした傾斜検出装置であっても同様に適用することができる。
【0085】
また、上記実施の形態においては、センサ出力に対して、V/I変換部又は電圧増幅部において信号処理を行う場合について説明したが、これに限るものではなく、各センサ出力に対して他の信号処理を行う場合であっても適用することができる。例えば、AD変換を行う処理などであっても適用することができる。
また、例えばV/I変換処理を行うV/I変換部、又は電圧増幅を行う電圧増幅部など、センサ出力に対して一つの信号処理を行う場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、V/I変換部の後に電流増幅部を設けた場合等、一つのセンサ信号に対して信号処理を行う信号処理部が複数設けられている場合であっても適用することができる。
【0086】
この場合には、例えば一方のセンサ出力に対して処理Aを行う変換処理部A1及び処理Bを行う変換処理部B1を一つの変換処理部α、他方のセンサ出力に対して処理Aを行う変換処理部A2及び処理Bを行う変換処理部B2を一つの変換処理部βと考え、磁気センサ対のセンサ出力に対して処理を行う変換処理部として、変換処理部αと変換処理部βとで周期的に切り替えるように構成すればよい。
【0087】
なお、上記第2の実施の形態において、磁石10が磁性体に対応し、磁気センサ11a、11bが磁気センサ対に対応し、位置検出信号が相対信号に対応している。また、減算部26が減算部に対応し、加算部27が加算部に対応し、電圧除算出力部28が除算部に対応し、電圧増幅部23a、電圧増幅部23bが第1の信号処理部及び第2の信号処理部に対応し、切替スイッチ22、24、スイッチ切替制御部25が切り替え手段に対応している。さらに、切替スイッチ22が第1の切替スイッチに対応し、切替スイッチ14が第2の切替スイッチに対応し、スイッチ切替制御部25がスイッチ切替制御部に対応している。
【0088】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図5は、本発明の第3の実施の形態における磁気センサユニットを適用した位置検出装置の一例を示す回路ブロック図である。
第3の実施の形態における位置検出装置は、上記第1の実施の形態において、センサ部1に替えて、センサ部1aを備えている。なお、上記第1の実施の形態と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0089】
第3の実施の形態における位置検出装置におけるセンサ部1aは、図5に示すように、磁石10、検出部11′、磁気センサ駆動部31、チョッパスイッチ32、及びチョッパスイッチ制御部33を備える。また、検出部11′は、2つの磁気センサ11a′、11b′を備え、これら磁気センサ11a′、11b′はホール素子で構成される。
磁気センサ駆動部31は、ホール素子からなる磁気センサ11a′、11b′が磁石10の磁界に応じた出力信号を生成するために、磁気センサ11a′、11b′に対して所定の駆動電流及び駆動電圧を印加する回路である。
【0090】
チョッパスイッチ32は、ホール素子からなる磁気センサ11a′、11b′の4つある端子t1〜t4のうち、磁気センサ駆動部31の駆動電流及び駆動電圧を印加する2つの端子を選択し、この選択した端子に駆動電流及び駆動電圧を印加し、且つ、磁気センサ11a′、11b′の出力信号を取り出す2つの端子を選択し、この選択した端子からその出力信号を取り出すものである。
【0091】
このチョッパスイッチ32は、例えば、位相として「0°「と「90°」の2つの選択(切り替え)ができるように構成され、これにより磁気センサ11a′、11b′の出力に含まれるホール素子自身のオフセットを大部分キャンセルすることができる。例えば、位相として「0°」が選択されると、例えば、端子t1、t3に駆動電流及び駆動電圧が印加され、端子t2、t4から出力信号が取り出される。また、位相として「90°」が選択されると、端子t2、t4に駆動電流及び駆動電圧が印加され、端子t1、t3から出力信号が取り出される。
【0092】
チョッパスイッチ制御部33は、チョッパスイッチ32の選択(切り替え)の動作を制御するタイミング信号を生成し、生成したタイミング信号をチョッパスイッチ32に出力する。
そして、チョッパスイッチ制御部33からのタイミング信号に応じてチョッパスイッチ32が端子t1〜t4の選択(切り替え)動作を行うことにより、磁気センサ駆動部31で生成された駆動電流及び駆動電圧を磁気センサ11a′内及び磁気センサ11b′内で直交する方向に切り替える。これによって、磁気センサオフセットをキャンセルすることができる。この技術は前述の非特許文献1で紹介されている。
この機能をもつセンサ部1aを上記第1の実施の形態の位置検出装置に組み合わせることで、V/I変換部13a、13bのオフセットだけでなく、磁気センサ11a′、11b′自身のオフセットも低減することができる。
【0093】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。
図6は、第4の実施の形態における磁気センサユニットを適用した位置検出装置の一例を示す回路ブロック図である。
第4の実施の形態における位置検出装置は、上記第2の実施の形態において、センサ部1に替えて、センサ部1aを備えている。なお、上記第2の実施の形態と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
第4の実施の形態における位置検出装置は、第3の実施の形態における位置検出装置と同様に、センサ部1aを上記第2の実施の形態の位置検出装置に組み合わせる。上述のように、センサ部1aを用いることによってホール素子からなる磁気センサ11a′11bのオフセットを低減することができる。したがって、電圧増幅部23a、23bのオフセットだけでなく、ホール素子からなる磁気センサ11a′、11b′のオフセットも低減することができる。
【0094】
なお、上記第3及び第4の実施の形態において、チョッパスイッチ32の切替周期は、要求される位置検出装置の応答速度に依存する。例えば、高速で動作するアプリケーションに対して、位置検出装置が高速に応答することを要求される場合には、チョッパスイッチ32の切替周期は、要求応答時間よりも短くする必要がある。逆に要求される応答時間が長い場合には、切替周期は長くてもよい。
ここで、第3及び第4の実施の形態において、磁気センサ駆動部31、チョッパスイッチ32、及びチョッパスイッチ制御部33が切替駆動手段に対応している。
【符号の説明】
【0095】
1、1a センサ部
2、2a 信号処理装置
10 磁石
11、11′ 検出部
11a、11b 磁気センサ
12、14、22、24 切替スイッチ
13 変換部
13a、13b V/I変換部、
15、25 スイッチ切替制御部
16、26 減算部
17、27 加算部
18 電流除算部
19 出力部
23 増幅部
23a、23b 電圧増幅部
28 電圧除算出力部
31 磁気センサ駆動部
32 チョッパスイッチ
33 チョッパスイッチ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に設定した一軸上に沿って配設される少なくとも一組の磁気センサ対と、
前記磁気センサ対に対して移動自在又は傾斜自在に相対移動可能な磁性体と、を有し、
前記磁性体が前記磁気センサ対に対して相対移動することにより生じる磁束の変化を前記磁気センサ対で検知し、
前記磁気センサ対の差信号を、前記磁気センサ対の和信号で除算してこれを前記磁気センサ対に対する前記磁性体の相対位置又は傾斜を表す相対信号として出力する磁気センサユニットにおいて、
前記磁気センサ対のセンサ出力のうち第1のセンサ出力から第2のセンサ出力を減算して前記差信号を演算する減算部と、
前記第1のセンサ出力と前記第2のセンサ出力とを加算して前記和信号を演算する加算部と、
前記差信号を前記和信号で除算して前記相対信号を演算する除算部と、
前記減算部及び前記加算部の上流に設けられ、前記第1のセンサ出力及び第2のセンサ出力に対して所定の信号処理を行う第1の信号処理部及び第2の信号処理部と、
前記第1のセンサ出力及び前記第2のセンサ出力に対して前記信号処理を行う前記第1の信号処理部及び前記第2の信号処理部を、各センサ出力に対して前記信号処理を行う時間比が同一となるように周期的に切り替える切り替え手段と、
を備えることを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項2】
前記切り替え手段は、
前記第1及び第2の信号処理部の上流に設けられ、前記第1及び前記第2のセンサ出力の出力先を前記第1及び第2の信号処理部間で切り替える第1の切替スイッチと、
前記第1及び第2の信号処理部と前記減算部との間に設けられ、前記第1の切替スイッチと同期して動作する第2の切替スイッチと、
前記第1及び第2の切替スイッチを制御するスイッチ切替制御部と、を有し、
前記第2の切替スイッチは、前記第1又は第2の信号処理部で前記信号処理がなされた前記第1のセンサ出力を前記減算部の正入力端子に供給し、前記第1又は第2の信号処理部で前記信号処理がなされた前記第2のセンサ出力を前記減算部の負入力端子に供給するように動作することを特徴とする請求項1記載の磁気センサユニット。
【請求項3】
前記第1の信号処理部及び前記第2の信号処理部は、電圧信号を電流信号に変換する電圧/電流変換部であって、
前記センサ出力は電圧信号であり且つ前記減算部、加算部及び除算部は電流信号に対して処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁気センサユニット。
【請求項4】
前記第1の信号処理部及び前記第2の信号処理部は、電圧信号を増幅する電圧増幅部であって、
前記センサ出力は電圧信号であり且つ前記減算部、加算部及び除算部は電圧信号に対して処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁気センサユニット。
【請求項5】
前記磁気センサはホール素子であって、
前記ホール素子を駆動する電圧及び電流を、前記ホール素子内で直交する方向に切り替える切替駆動手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の磁気センサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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