磁気センサ装置
【課題】磁界印加用磁石に吸着された磁性粉が磁束検出部に付着することを防止することができるとともに、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を低減することのできる磁気センサ装置を提供すること。
【解決手段】磁気パターン検出装置100において、磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁界を印加した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する磁束検出部40を構成する磁気センサ素子45とを備えている。磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置され、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とは、磁気センサ素子45を挟んで異なる極が対向している。
【解決手段】磁気パターン検出装置100において、磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁界を印加した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する磁束検出部40を構成する磁気センサ素子45とを備えている。磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置され、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とは、磁気センサ素子45を挟んで異なる極が対向している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体が取り付けられた物体や磁気インクで印刷が施された紙幣等といった媒体の磁気特性等を検出するための磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性体が取り付けられた物体や、磁気インクで印刷が施された紙幣等の磁気特性を検出するにあたっては、媒体の搬送路の途中位置に設定された磁気センサ装置が設けられており、かかる磁気センサ装置は、磁束検出部を構成する磁気センサ素子と、磁界印加用磁石とを備えている(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
かかる磁気センサ装置のうち、特許文献1、2に記載の磁気センサ装置では、搬送路に直交する方向で磁界印加用磁石と磁気センサ素子とが対向するように配置されており、磁界印加用磁石が形成する磁界内を媒体が通過した際の磁気センサ素子での検出結果に基づいて、媒体の真偽等を判定する。
【0004】
また、特許文献3に記載の磁気センサ装置では、磁気センサ素子に対して媒体の移動方向でずれた位置に磁界印加用磁石が配置されており、磁界印加用磁石によって媒体を着磁した後に媒体の残留磁束密度を検出するとともに、バイアス磁界中を媒体が通過した際の磁束変化を検出して媒体の透磁率を判定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3879777号公報
【特許文献2】特開2004−317463号公報
【特許文献3】特開2009−163336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載のように、磁界印加用磁石と磁気センサ素子とを対向するように配置すると、磁界印加用磁石に磁性粉等が吸着される結果、その近傍に配置された磁気センサ素子に磁性粉が付着して感度が低下するという問題点がある。このため、磁界印加用磁石と磁気センサ素子とを対向するように配置した場合、磁気センサ素子を定期的にクリーニングする必要がある。
【0007】
一方、特許文献3のように、磁気センサ素子に対して媒体の移動方向でずれた位置に磁界印加用磁石を配置した場合、媒体の透磁率を検出する際、磁気センサ素子が磁界印加用磁石の磁界を検出してしまい。透磁率と残留磁束の切り分ける事ができない。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、媒体の移動経路に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁性粉が磁束検出部に付着することを防止することができるとともに、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を低減することのできる磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、相対移動する媒体の磁気特性を検出する磁気センサ装置であって、媒体に磁界を印加する磁界印加用磁石と、磁束を検出する磁束検出部と、を備え、前記磁界印加用磁石は、前記磁束検出部に対して前記媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、媒体の移動経路に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁界印加用磁石は、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置され、磁束検出部に重なった位置には磁界印加用磁石が配置されていない。このため、磁束検出部に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とが配置されているため、磁束検出部に対しては、媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石の磁界と磁界印加用第2磁石の磁界とが形成されるので、磁束検出部に対する磁界印加用第1磁石の影響と、磁束検出部に対する磁界印加用第2磁石の影響とを相殺することができる。このため、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を低減することができるので、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。
【0011】
本発明において、前記磁界印加用磁石は前記媒体を着磁し、前記磁束検出部は、着磁した後の前記媒体にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する構成を採用することができる。このように構成すると、磁界印加用磁石によって媒体を磁化した後の残留磁束密度を検出することができるとともに、バイアス磁界中を媒体が通過した際の磁束変化に基づいて媒体の透磁率を検出することができる。
【0012】
本発明において、前記バイアス磁界は、交番磁界であることが好ましい。このように構成すると、磁気センサ素子から出力される信号のピーク値とボトム値とを加算して媒体の残留磁束密度レベルに対応する信号を得ることができ、ピーク値とボトム値とを減算して媒体の透磁率レベルに対応する信号を得ることができる。
【0013】
本発明において、前記磁束検出部は、センサコア、該センサコアに巻回されて前記バイアス磁界を発生させるバイアス磁界発生用励磁コイル、および前記コア体に巻回された検出コイルを備えた磁気センサ素子を有していることが好ましい。このように構成すると、磁気センサ素子によって磁束の検出とバイアス磁界の発生とを行なうことができるので、磁気センサ装置の小型化を図ることができる。
【0014】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は、前記媒体を飽和着磁可能な磁束を発生させることが好ましい。このように構成すると、磁束検出部において、磁界印加用磁石によって媒体を磁化した後の残留磁束密度を精度よく検出することができる。
【0015】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は各々、前記媒体を着磁するための永久磁石を備えていることが好ましい。本発明では、磁界印加用第1磁石および磁界印加用第2磁石には電磁石および永久磁石のいずれを用いてもよいが、磁界印加用第1磁石および磁界印加用第2磁石に永久磁石を用いれば、構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで異なる極が対向している構成を採用することができる。このように構成すると、磁束検出部周辺の磁束密度を低減することができるため、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。特に、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとを検出する場合、磁気センサ素子が磁界印加用磁石の磁界の影響を受けると、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンの信号を正確に検出できなくなるが、本発明によれば、かかる問題が発生しにくい。
【0017】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで同じ極が対向している構成を採用してもよい。
【0018】
本発明において、前記磁束検出部は、前記磁界印加用第1磁石の磁界と前記磁界印加用第2磁石の磁界とが中和している位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、磁束検出部に対する磁界印加用第1磁石の影響と、磁束検出部に対する磁界印加用第2磁石の影響とを確実に相殺することができる。このため、センサ部に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を大幅に低減することができる。従って、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。特に、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとを検出する場合、磁気センサ素子が磁界印加用磁石の磁界の影響を受けると、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンの信号を正確に検出できなくなるが、本発明によれば、かかる問題が発生しにくい。
【0019】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石では、前記永久磁石に対して集磁ヨークが配置されていることが好ましい。このように構成すると、磁界印加用磁石の磁界を集磁ヨークによって制御することができるので、磁束検出部周辺の磁束密度自身を低減することができる。
【0020】
本発明において、本発明において、前記集磁ヨークは、前記永久磁石の前記媒体に対する着磁面とは異なる面側に重ねて配置されていることが好ましい。このように構成すると、磁束検出部周辺の磁束密度自身を低減しつつ、媒体を飽和着磁することができる。
【0021】
本発明において、前記集磁ヨークは、前記永久磁石と重なる位置から前記着磁面が位置する側とは反対側に延在した延在部を備えていることが好ましい。このように構成すると、集磁ヨークによって磁束検出部周辺の磁束密度をより低減するように磁界印加用磁石の磁界を制御することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、媒体の移動経路に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁界印加用磁石は、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置され、磁束検出部に対向する位置に磁界印加用磁石が配置されていない。このため、磁束検出部に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とが配置されているため、磁束検出部に対しては、媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石の磁界と磁界印加用第2磁石の磁界とが形成されるので、磁束検出部に対する磁界印加用第1磁石の影響と、磁束検出部に対する磁界印加用第2磁石の影響とを相殺することができる。このため、センサ部に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を低減することができるので、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置における媒体に対する着磁強度と磁気センサ素子からの出力との関係を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置において磁束検出部を構成する磁気センサ素子の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置において磁気が検出される媒体に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置を用いて、種類の異なる媒体から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態5に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、磁気パターン検出装置の要部構成を模式的に示す説明図、および断面構成を模式的に示す説明図である。
【0026】
図1に示す磁気パターン検出装置100は、銀行券、有価証券等の媒体1から磁気を検知して真偽判別や種類の判別を行なう装置であり、ローラやガイド(図示せず)等によってシート状の媒体1を媒体搬送路11に沿って移動させる搬送装置10と、この搬送装置10による媒体搬送路11の途中位置で媒体1から磁気を検出する磁気センサ装置20とを有している。本形態において、ローラやガイドは、アルミニウム等といった非磁性材料から構成されている。本形態において、磁気センサ装置20は、媒体搬送路11の下方に配置されているが、媒体搬送路11の上方に配置されることもある。いずれの場合も、磁気センサ装置20は、センサ面21を媒体搬送路11に向けるように配置される。
【0027】
本形態において、媒体1には、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンが形成されている。例えば、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。そこで、本形態の磁気パターン検出装置100は、媒体1における磁気パターン毎の有無を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出する。また、本形態において、かかる2種類の磁気パターンの検出を行なうための磁気センサ装置20は共通である。従って、本形態の磁気パターン検出装置100は、以下の構成を有している。なお、ハード材とは、マグネットに用いる磁性材料のように、外部より磁界を印加すると、ヒステリシスが大きくて残留磁束密度が高く、容易に磁化される磁性材料である。これに対して、ソフト材とは、モータや磁気ヘッドのコア材のように、ヒステリシスが小さくて残留磁束密度が低く、容易に磁化されない磁性材料である。
【0028】
(磁気センサ装置20の構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁界印加用磁石等のレイアウトを示す説明図、磁界印加用磁石30が形成する磁界の平面分布の説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20における媒体1に対する着磁強度と磁気センサ素子45からの出力との関係を示す説明図である。
【0029】
図1および図2(a)に示すように、本形態の磁気パターン検出装置100において、磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁界を印加した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する磁束検出部40を構成する磁気センサ素子45と、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子45を覆う非磁性のケース25とを備えている。磁気センサ装置20は、媒体搬送路11と略同一平面を構成するセンサ面21と、センサ面21に対して媒体1の移動方向の両側に連接する斜面部22、23とを備えており、かかる形状は、ケース25の形状によって規定されている。本形態では、斜面部22、23を設けてあるので、媒体1が引っ掛かりにくいという利点がある。
【0030】
磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向(矢印X1で示す方向)と交差する方向に延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子45は、媒体1の移動方向と交差する方向に複数、配列されている。
【0031】
本形態において、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向、すなわち、磁気センサ素子45の直下で重なっていない。本形態において、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との中間位置に配置されており、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子45との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子45との離間距離が等しい。ここで、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32はいずれも、磁気センサ装置20のセンサ面21に対向するように配置されている。
【0032】
本形態において、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)は、フェライトやネオジウム磁石等の永久磁石35を備えており、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、永久磁石35は、センサ面21に位置する側と、センサ面21が位置する側とは反対側とが異なる極に着磁されている。このため、永久磁石35において、センサ面21の側に位置する面が媒体1に対する着磁面350として機能する。すなわち、本形態の磁気パターン検出装置100においては、後述するように、媒体1が磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、磁界が印加された後の媒体1が磁気センサ素子45を通過する。その際、磁気センサ素子45は、媒体1の残留磁束密度を測定する。従って、媒体1の残留磁束を確実に検出するには、媒体1を飽和着磁することが好ましい。そこで、三種類の媒体1A、1B、1Cにおいて、着磁強度と磁気センサ素子45から出力強度との関係を検討し、その検討結果を図3に示す。ここで、三種類の媒体1A、1B、1Cは、角形比(最大残留磁束密度/最大磁束密度)が相違しており、媒体1A、1B、1Cの角形比は以下の関係
媒体1A>1B>1C
になっている。
【0033】
図3から分かるように、磁気センサ素子45に対する着磁強度が0.05[T]以上であれば、磁気センサ素子45からの出力が安定する。従って、図1(b)に示す着磁面350から0.5mm離間したところを媒体1が通過する場合には、磁界印加用第1磁石31の着磁面350における磁束密度は0.1[T]であることが好ましく、かかる磁束密度であれば、媒体1を飽和着磁することができる。
【0034】
再び図2(a)において、本形態の磁気センサ装置20では、磁界印加用磁石30に用いた複数の永久磁石35はいずれも、サイズや形状は同一であるが、各々は、以下の向きに配置されている。まず、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、媒体1の移動方向と交差する方向で隣り合う永久磁石35同士は、互いに反対の向きに着磁されている。すなわち、媒体1の移動方向と交差する方向に配列された複数の永久磁石35のうち、1つの永久磁石35は、媒体搬送路11側に位置する端部がN極に着磁され、媒体搬送路11側とは反対側に位置する端部はS極に着磁されているが、この永久磁石35に対して媒体1の移動方向と交差する方向で隣り合う永久磁石35は、媒体搬送路11側に位置する端部がS極に着磁され、媒体搬送路11側とは反対側に位置する端部はN極に着磁されている。
【0035】
また、本形態では、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45(磁束検出部40)を挟んで異なる極が対向している。例えば、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35のうち、一方の永久磁石35は、媒体搬送路11側に位置する端部がN極に着磁されているが、他方の永久磁石35は、媒体移動経路11側に位置する端部がS極に着磁されている。また、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、サイズや着磁強度が等しく、かつ、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子45との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子45との離間距離とが等しい。このため、図2(b)、(c)に示すように、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35の磁界、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35の磁界は各々、磁気センサ素子45の周辺まで形成されているが、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが中和している個所に配置するので、磁気センサ素子45周辺(磁気センサ素子45周辺)は、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に起因する磁束密度が低い。
【0036】
再び図1(b)において、磁気センサ素子45は薄板状であり、媒体1の移動方向に厚さ方向を向けて配置されている。磁気センサ素子45は、両面がセラミック等からなる厚さ0.3mm〜1mm程度の薄板状の非磁性部材48により覆われている。かかる磁気センサ素子45は、磁気シールドケース(図示せず)に収納されていることもある。この場合、磁気シールドケースは、媒体搬送路が位置する上方が開口しており、磁気センサ素子45は、媒体搬送路11に向けて磁気シールドケースから露出した状態にある。磁気センサ素子45は、図4を参照して後述する信号処理部60に電気的に接続されている。
【0037】
(信号処理部60の構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。本形態において、図4に示す信号処理部60は、磁気センサ装置20から出力される信号から、残留磁束密度レベルに対応する第1信号S1、および透磁率レベルに対応する第2信号S2を抽出し、かかる信号の抽出結果と、媒体1と磁気センサ装置20との相対位置情報に基づいて、媒体1における複数種類の磁気パターンの有無および形成位置を検出する。より具体的には、信号処理部60は、磁気センサ装置20から出力された信号を増幅するアンプ61と、このアンプ61から出力された信号のピーク値およびボトム値を保持するピークホールド回路62およびボトムホールド回路63と、ピーク値とボトム値とを加算して第1信号S1を抽出する加算回路64と、ピーク値とボトム値とを減算して第2信号S2を抽出する減算回路65とを備えている。さらに、信号処理部60は、加算回路64および減算回路65から出力された各信号を磁気センサ装置20と媒体1との相対位置情報に関係づけて、記録部661に予め記録されている比較パターンとの照合を行って媒体1の真偽を判定する判定部66も備えている。かかる判定部66は、マイクロコンピュータ等により構成されており、ROMあるいはRAM等といった記録部(図示せず)に予め記録されているプログラムに基づいて所定の処理を行い、媒体1の真偽を判定する。
【0038】
(磁気センサ素子の詳細構成)
図5は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20において磁束検出部40を構成する磁気センサ素子45の説明図であり、図5(a)、(b)、(c)、(d)は、磁気センサ素子45の正面図、この磁気センサ素子45に対する励磁波形の説明図、磁気センサ素子45からの出力信号の説明図、および別の磁気センサ素子45の正面図である。なお、図5(a)では、図面に対して垂直な方向で媒体1が移動する状態を示してある。
【0039】
図5(a)に示すように、磁気センサ装置20において、磁気センサ素子45は、アモルファスあるいはパーマロイからなる薄板状のセンサコア41、このセンサコア41に巻回されたバイアス磁界発生用励磁コイル43、およびコア体に巻回された検出コイル42を備えている。さらに、磁気センサ素子45は、センサコア41にバイアス磁界発生用励磁コイル43とは逆方向に巻回された差動用磁界発生用励磁コイル44を備えている。図4に示すように、バイアス磁界発生用励磁コイル43と差動用磁界発生用励磁コイル44とは直列に接続され、その中点がグランド電位に保持されている。
【0040】
バイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44は、励磁回路50から同一位相の交番電流(図5(b)参照)が定電流で印加される。このため、図5(a)に示すように、センサコア41の周りには、バイアス磁界と、このバイアス磁界に対して逆向きの差動用磁界が形成され、検出コイル42からは、図5(c)に示す検出波形の信号が出力されることになる。ここで、図5(c)に示す検出波形は、バイアス磁界および時間に対する微分的な信号であり、かつ、差動用磁界発生用励磁コイル44によって形成された差動用磁界との磁気的な差動に基づく信号である。
【0041】
図5(a)において、センサコア41は、検出コイル42が巻回された胴部410と、胴部410の下端部の中央部分から媒体1が位置する下方に突出した第1突部411と、第1突部411とは反対側で胴部410の上端部の中央部分から上方に突出した第2突部412とを備えている。検出コイル42は、センサコア41の胴部410に巻回され、バイアス磁界発生用励磁コイル43は第1突部411に巻回され、差動用磁界発生用励磁コイル44は、第2突部412に巻回されている。ここで、第1突部411および第2突部412の断面積は、胴部410の断面積に比して小さい。このため、検出コイル42は、バイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44より断面積が大きい構成になっている。
【0042】
なお、図5(a)に示す磁気センサ素子45は、胴部410の上下両端の中央部分から第1突部411および第2突部412が突出し、かかる第1突部411および第2突部412にバイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44が形成されている構成であったが、図5(d)に示すように、胴部410の上下両端の両側に、第1突部411および第2突部412を各々挟むように計4つの第3突部413が形成されている構成を採用してもよい。このように構成すると、閉磁路になる分、透磁率の低い空気中を通る磁束が減るので、感度を向上することができる。
【0043】
(検出原理)
図6は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20において磁気が検出される媒体1に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。図7は、本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置100において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体1から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【0044】
まず、図1および図2に示す矢印X1の方向に媒体1が移動する際に媒体1の真偽を判定する原理を説明する。本形態において、媒体1には、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターン(図5に示す磁性体2)が形成されている。より具体的には、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。ここで、ハード材を含む磁気インキは、図6(b1)にヒステリシスループによって、残留磁束密度Brや透磁率μ等を示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは高いが、透磁率μは低い。これに対して、ソフト材を含む磁気インキは、図6(c1)にそのヒステリシスループを示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは低いが、透磁率μは高い。
【0045】
従って、以下に説明するように、残留磁束密度Brと透磁率μとを測定すれば、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。より具体的には、透磁率μは保持力Hcと相関性を有しているので、本形態では、残留磁束密度Brと保持力Hcとを測定していることになり、かかる残留磁束密度Brと保持力Hcとの比は、磁気インキ(磁性材料)によって相違する。それ故、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。また、残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)の測定値は、インキの濃淡や、媒体1と磁気センサ装置20との距離により変動するが、本形態では、磁気センサ装置20が同一位置で残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)を測定するため、残留磁束密度Brと保持力Hcとの比によれば、磁気インキの材質を確実に判別することができる。
【0046】
本形態の磁気パターン検出装置100において、媒体1が矢印X1で示す方向に移動して磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、磁界が印加された後の媒体1が磁気センサ素子45を通過する。それまでの間、検出コイル42からは、図6(a3)に示すように、図6(a2)に示すセンサコア41のB−Hカーブに対応する信号が出力される。従って、図4に示す加算回路64および減算回路65から出力される信号は各々、図6(a4)に示す通りである。
【0047】
ここで、フェライト粉等のハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第1の磁気パターンは、図6(b1)に示すように、高レベルの残留磁束密度Brを有する。このため、図7(a1)に示すように、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した際、第1の磁気パターン(図5に示す磁性体2)は、磁界印加用磁石30からの磁界により、磁石となる。このため、検出コイル42から出力される信号は、図6(b2)に示すように、第1の磁気パターンから直流的なバイアスを受けて、図6(b3)および図7(a2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧が矢印A1、A2で示すように、同一の方向にシフトするとともに、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量が相違する。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図4に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、図6(b4)に示す通りであり、磁気センサ素子45を媒体1の第1の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ハード材を含む磁気インクにより形成された第1の磁気パターンは、透磁率μが低いため、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第1の磁気パターンの残留磁束密度Brだけと見做すことができる。それ故、図4に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、磁気センサ素子45を媒体1の第1の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(b4)に示す信号と同様である。
【0048】
これに対して、軟磁性ステンレス紛等のソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第2の磁気パターンのヒステリシスループは、図6(c1)に示すように、図6(b1)に示すハード材を含む磁気インクによる第1の磁気パターンのヒステリシスカーブの内側を通り、残留磁束密度Brのレベルが低い。このため、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した後も、第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brのレベルが低い。但し、第2の磁気パターン(図5に示す磁性体2)は透磁率μが高いため、図7(b1)に示すように、磁性体として機能する。このため、検出コイル42から出力される信号は、図6(c2)に示すように、第2の磁気パターンの存在によって透磁率μが高くなっている分、図6(c3)および図7(b2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧は矢印A3で示すように高い方にシフトする一方、ボトム電圧は、矢印A4で示すように低い方にシフトする。その際、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量は絶対値が略等しい。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図4に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、図6(c4)に示す通りであり、磁気センサ素子45を媒体1の第2の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ソフト材を含む磁気インクにより形成された第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brが低いため、信号のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第2の磁気パターンの透磁率μだけと見做すことができる。それ故、図4に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、磁気センサ素子45を媒体1の第2の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(c4)に示す信号と同様である。
【0049】
(具体的な検出結果)
図8は、本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置100を用いて、種類の異なる媒体1から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【0050】
本形態の磁気パターン検出装置100では、加算回路64において磁気センサ素子45から出力される信号のピーク値とボトム値とを加算した第1信号S1は、磁気パターンの残留磁束密度レベルに対応する信号であり、かかる第1信号S1を監視すれば、ハード材を含む磁気インキにより形成された第1の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。また、減算回路65において磁気センサ素子45から出力される信号のピーク値とボトム値とを減算した第2信号S2は、磁気パターンの透磁率μに対応する信号であり、かかる第2信号S2を監視すれば、ソフト材を含む磁気インキにより形成された第2の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。それ故、磁界を印加したときの残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンの媒体1における磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて識別することができる。
【0051】
それ故、ハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが形成されている媒体1、およびソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが形成されている媒体1を検査すると、図8(a)、(b)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、媒体1の真偽を判定することができる。また、第1の磁気パターンおよび第2の磁気パターンの双方が形成されている2つの媒体1を検査すると、図8(c)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、かかる媒体1についても真偽を判定することができる。
【0052】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気パターン検出装置100で用いた磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁束を検出する磁気センサ素子45(磁束検出部40)とを備えており、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁束検出部40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。従って、磁束検出部40に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。それ故、磁束検出部40に付着した磁性粉が媒体1と接触して移動すること等に起因する検出エラーの発生を防止することができる。また、磁束検出部40に付着した磁性粉が媒体1と接触して移動すること等に起因する磁束検出部40の磨耗を防止することができるので、磁気センサ装置2の寿命を延長することができる。
【0053】
さらに、磁性粉は、磁気を帯びているため、磁束検出部40に付着したり、あるいは付着した磁性粉が無くなったりすると、その影響がセンサの出力に現れるため正確な磁気情報を得ることができないが、本形態では上記のように磁束検出部40への付着を防止しているので、媒体1のみからの正確な磁気情報を得ることができる。
【0054】
また、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子45に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる。特に本形態のように、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとを検出する場合、磁気センサ素子45が磁界印加用磁石30の磁界の影響を受けると、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンの信号を正確に検出できなくなるが、本形態によれば、かかる問題が発生しにくい。それ故、ハード材とソフト材の両方を含んだ媒体1であっても、それぞれの磁気パターンを切り分けて各々検出することができる。
【0055】
また、本形態において、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45を挟んで異なる極が対向している。このため、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35の磁界、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35の磁界は各々、磁気センサ素子45の周辺まで形成されているが、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが中和している個所に配置するので、磁気センサ素子45周辺(磁気センサ素子45周辺)は、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に起因する磁束密度が低い。それ故、媒体1に交番磁界なるバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する際、磁束検出部40に対する磁界印加用磁石30の磁界の影響を大幅に低減することができる。
【0056】
また、本形態において、磁界印加用磁石30は媒体1を着磁し、磁気センサ素子45は、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する。このため、磁界印加用磁石30によって媒体1を磁化した後の残留磁束密度を検出することができるとともに、バイアス磁界中を媒体1が通過した際の磁束変化に基づいて媒体1の透磁率を検出することができる。
【0057】
しかも、本形態では、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と第2磁界印加用磁用32が配置されている。このため、図1に示すように、矢印X1で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第1磁石31によって着磁し、その後、磁気センサ素子45によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができるとともに、矢印X2で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第2磁石32によって着磁し、その後、磁気センサ素子45によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができる。それ故、本形態の磁気パターン検出装置100を入出金機に用いれば、入金された媒体1の真偽を判定することができるとともに、出金される媒体1の真偽を判定することもできる。
【0058】
また、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は、媒体1を飽和着磁可能な磁束を発生させる。このため、磁束検出部40において、磁界印加用磁石30によって媒体1を磁化した後の残留磁束密度を精度よく検出することができる。しかも、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32には電磁石および永久磁石のいずれを用いてもよいが、本形態では、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に永久磁石35を用いているので、構成の簡素化を図ることができる。
【0059】
また、本形態の磁気パターン検出装置100では、共通の磁気センサ装置20によって、磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出するため、2つの磁気センサ装置で残留磁束密度レベルと透磁率レベルとを測定する場合と違って、残留磁束密度レベルの測定と、透磁率レベルの測定との間に時間差が発生しない。それ故、磁気センサ装置20と媒体1とを移動させながら計測する場合でも、信号処理部60は、2つの磁気センサ装置で残留磁束密度レベルと透磁率レベルとを測定する場合に必要な補正が必要ないので、簡素な構成で高い精度の検出を行なうことができる。また、搬送装置10についても、磁気センサ装置20を通過する箇所のみに走行安定性が求められるだけなので、媒体1の傾きなどを検出する必要がないなど、構成の簡素化を図ることができる。
【0060】
さらに、本形態の磁気パターン検出装置100によれば、ハード材およびソフト材の双方を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1や、ハード材とソフト材の中間に位置する材料を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1についても、磁気パターンの検出を行なうことができる。すなわち、磁気特性が第1の磁気パターンと第2の磁気パターンの中間に位置するような磁気パターンについては、図6(d1)に示すように、ヒステリシスループが、図6(b1)に示すハード材の磁気パターンのヒステリシスループと図6(c1)に示すソフト材の磁気パターンのヒステリシスループとの中間に位置するので、図6(d4)に示す信号パターンを得ることができ、かかる磁気パターンについても、有無や形成位置を検出することができる。
【0061】
また、本形態において、磁気センサ素子45は、バイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44を備えているため、磁気的な差動におり、環境に起因する測定誤差を解消することができ、信号処理が容易である。さらに、センサコア41において、胴部410から突出する第1突部411および第2突部412にバイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44が巻回されている。このため、媒体1に向けてバイアス磁界を効率よく発生させることができるとともに、センサコア41を媒体1に接近させることができるので、感度を向上することができる。しかも、第1突部411および第2突部412の断面積は、胴部410の断面積に比して小さいため、高効率な磁気回路により感度が高い。
【0062】
さらに、センサコア41が薄板状であるため、媒体1上の狭い範囲を検出対象とすることができるので、微細な磁気パターンに十分、対応することができる。しかも、磁気センサ素子45は、その両面が薄板状の非磁性部材48により覆われているため、磁気センサ素子45を薄く構成した場合でも、媒体1との摺動による磨耗を防止することができる等、磁気センサ素子45の補強を行なうことができる。また、磁気センサ素子45を製造する際、あるいは磁気センサ素子45を磁気パターン検出装置100に搭載する際の作業性を向上することができる。
【0063】
また、磁気センサ装置20と媒体1とを相対移動させながら媒体1から磁気パターンの有無を検出するので、媒体1の移動方向の全体にわたって磁気パターンを効率よく検出できる。しかも、磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向と交差する方向に複数配置されているので、搬送される媒体1の幅方向における磁気パターンの有無および形成位置を効率よく検出することができる。なお、磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向と交差する方向に複数配置するにあたっては、磁界印加用磁石30については、磁束検出部40に1対1で対応するように幅方向で分割されている構成、および複数の磁束検出部40に対応するように幅方向に一体に延在している構成のいずれを採用してもよい。
【0064】
[実施の形態2]
図9は、本発明の実施の形態2に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図9(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁界印加用磁石等のレイアウトを示す説明図、磁界印加用磁石30が形成する磁界の平面分布の説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0065】
図9(a)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。
【0066】
かかる構成の磁気センサ装置20において、実施の形態1では、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向していたが、本形態において、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している。なお、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、媒体1の移動方向と交差する方向で隣り合う永久磁石35同士は、実施の形態1と同様、互いに反対の向きに着磁されている。また、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、サイズや着磁強度が等しく、かつ、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子45との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子45との離間距離とが等しい。
【0067】
このように構成した磁気センサ装置20では、図9(b)、(c)に示すように、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35の磁界、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35の磁界は各々、磁気センサ素子45の周辺まで形成されているが、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが中和している個所に配置するので、磁気センサ素子45周辺(磁気センサ素子45周辺)は、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に起因する磁束密度が低い。
【0068】
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁束を検出する磁気センサ素子45(磁束検出部40)とを備えており、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁束検出部40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。このため、磁束検出部40に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子45に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0069】
[実施の形態3]
図10は、本発明の実施の形態3に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図10(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁界印加用磁石等のレイアウトを示す説明図、磁気センサ装置20の断面構成を示す説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1、2と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0070】
図10(a)、(b)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1、2と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。ここで、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、実施の形態1のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向している構成、あるいは、実施の形態2のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している構成を有している。
【0071】
このように構成した磁気センサ装置20において、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は各々、永久磁石35と集磁ヨーク36とを有しており、本形態において、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは異なる面側に重なる重なり部分361と、重なり部分361から延在する延在部362とを備えている。より具体的には、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは反対側の面351側に重なる重なり部分361と、重なり部分361から着磁面350が位置する側とは反対側に延在する延在部362とを備えており、延在部362は、重なり部分361のうち、磁気センサ素子45が位置する側とは反対側の端部から延在している。このため、本形態の磁気センサ装置20では、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御することができるので、図10(c)に示すように、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。
【0072】
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁束を検出する磁気センサ素子45(磁束検出部40)とを備えており、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁束検出部40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。従って、磁束検出部40に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子45に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる。特に本形態では、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御しているので、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。それ故、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)が磁気センサ素子45の感度を低下させにくいという利点がある。
【0073】
また、集磁ヨーク36を設けたので、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との反発や吸引の影響を受けないようにすることができるとともに、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32を筐体などに搭載する際、集磁ヨーク36を磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32の固定などに利用することができる。また、外部磁界の影響の受けにくいようにシールドすることもできる。
【0074】
[実施の形態4]
図11は、本発明の実施の形態4に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図11(a)、(b)は、磁気センサ装置20の断面構成を示す説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1〜3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0075】
図11(a)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1〜3と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。ここで、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、実施の形態1のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向している構成、あるいは、実施の形態2のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している構成を有している。
【0076】
このように構成した磁気センサ装置20においても、実施の形態3と同様、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は各々、永久磁石35と集磁ヨーク36とを有している。本形態において、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは反対側の面351側に重なっており、かかる面351から磁気センサ素子45が位置する側とは反対側に向けてわずかに突出している。このように構成した場合も、図11(b)に示すように、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御することができるので、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。それ故、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)が磁気センサ素子45の感度を低下させにくいという利点がある。また、集磁ヨーク36は、突出寸法は小さいが、磁気センサ素子45が位置する側とは反対側に向けて突出しているので、集磁ヨーク36が突出している側(磁気センサ素子45が位置する側とは反対側)に集磁することができる。さらに、集磁ヨーク36を設けたので、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との反発や吸引の影響を受けないようにすることができるとともに、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32を筐体などに搭載する際、集磁ヨーク36を磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32の固定などに利用することができる。また、外部磁界の影響の受けにくいようにシールドすることもできる。
【0077】
[実施の形態5]
図12は、本発明の実施の形態5に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図12(a)、(b)は、磁気センサ装置20の断面構成を示す説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1〜3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0078】
図12(a)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1、2、3と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。ここで、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、実施の形態1のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向している構成、あるいは、実施の形態2のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している構成を有している。
【0079】
このように構成した磁気センサ装置20において、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は各々、永久磁石35と集磁ヨーク36とを有しており、本形態において、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは異なる面側に重なる重なり部分361と、重なり部分361から延在する延在部362とを備えている。より具体的には、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350に隣接する側面のうち、磁気センサ素子45が位置する側とは反対側の側面352に重なる重なり部分361と、重なり部分361から着磁面350が位置する側とは反対側に延在する延在部362とを備えている。このため、本形態の磁気センサ装置20では、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御することができるので、図12(b)に示すように、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。それ故、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)が磁気センサ素子45の感度を低下させにくいという利点がある。さらに、集磁ヨーク36を設けたので、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との反発や吸引の影響を受けないようにすることができるとともに、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32を筐体などに搭載する際、集磁ヨーク36を磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32の固定などに利用することができる。また、外部磁界の影響の受けにくいようにシールドすることもできる。
【0080】
(その他の実施の形態)
上記形態では、媒体1と磁気センサ装置20とを相対移動させるにあたって、媒体1の方を移動させたが、媒体1が固定で磁気センサ装置20が移動する構成を採用してもよい。また、上記形態では、磁界印加用磁石30に永久磁石を用いたが、電磁石を用いてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 媒体
20 磁気センサ装置
30 磁界印加用磁石
31 磁界印加用第1磁石
32 磁界印加用第2磁石
35 永久磁石
36 集磁ヨーク
41 センサコア
42 検出コイル
43 バイアス磁界発生用励磁コイル
44 差動用磁界発生用励磁コイル
45 磁気センサ素子
60 信号処理部
100 磁気パターン検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体が取り付けられた物体や磁気インクで印刷が施された紙幣等といった媒体の磁気特性等を検出するための磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性体が取り付けられた物体や、磁気インクで印刷が施された紙幣等の磁気特性を検出するにあたっては、媒体の搬送路の途中位置に設定された磁気センサ装置が設けられており、かかる磁気センサ装置は、磁束検出部を構成する磁気センサ素子と、磁界印加用磁石とを備えている(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
かかる磁気センサ装置のうち、特許文献1、2に記載の磁気センサ装置では、搬送路に直交する方向で磁界印加用磁石と磁気センサ素子とが対向するように配置されており、磁界印加用磁石が形成する磁界内を媒体が通過した際の磁気センサ素子での検出結果に基づいて、媒体の真偽等を判定する。
【0004】
また、特許文献3に記載の磁気センサ装置では、磁気センサ素子に対して媒体の移動方向でずれた位置に磁界印加用磁石が配置されており、磁界印加用磁石によって媒体を着磁した後に媒体の残留磁束密度を検出するとともに、バイアス磁界中を媒体が通過した際の磁束変化を検出して媒体の透磁率を判定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3879777号公報
【特許文献2】特開2004−317463号公報
【特許文献3】特開2009−163336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載のように、磁界印加用磁石と磁気センサ素子とを対向するように配置すると、磁界印加用磁石に磁性粉等が吸着される結果、その近傍に配置された磁気センサ素子に磁性粉が付着して感度が低下するという問題点がある。このため、磁界印加用磁石と磁気センサ素子とを対向するように配置した場合、磁気センサ素子を定期的にクリーニングする必要がある。
【0007】
一方、特許文献3のように、磁気センサ素子に対して媒体の移動方向でずれた位置に磁界印加用磁石を配置した場合、媒体の透磁率を検出する際、磁気センサ素子が磁界印加用磁石の磁界を検出してしまい。透磁率と残留磁束の切り分ける事ができない。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、媒体の移動経路に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁性粉が磁束検出部に付着することを防止することができるとともに、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を低減することのできる磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、相対移動する媒体の磁気特性を検出する磁気センサ装置であって、媒体に磁界を印加する磁界印加用磁石と、磁束を検出する磁束検出部と、を備え、前記磁界印加用磁石は、前記磁束検出部に対して前記媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、媒体の移動経路に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁界印加用磁石は、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置され、磁束検出部に重なった位置には磁界印加用磁石が配置されていない。このため、磁束検出部に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とが配置されているため、磁束検出部に対しては、媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石の磁界と磁界印加用第2磁石の磁界とが形成されるので、磁束検出部に対する磁界印加用第1磁石の影響と、磁束検出部に対する磁界印加用第2磁石の影響とを相殺することができる。このため、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を低減することができるので、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。
【0011】
本発明において、前記磁界印加用磁石は前記媒体を着磁し、前記磁束検出部は、着磁した後の前記媒体にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する構成を採用することができる。このように構成すると、磁界印加用磁石によって媒体を磁化した後の残留磁束密度を検出することができるとともに、バイアス磁界中を媒体が通過した際の磁束変化に基づいて媒体の透磁率を検出することができる。
【0012】
本発明において、前記バイアス磁界は、交番磁界であることが好ましい。このように構成すると、磁気センサ素子から出力される信号のピーク値とボトム値とを加算して媒体の残留磁束密度レベルに対応する信号を得ることができ、ピーク値とボトム値とを減算して媒体の透磁率レベルに対応する信号を得ることができる。
【0013】
本発明において、前記磁束検出部は、センサコア、該センサコアに巻回されて前記バイアス磁界を発生させるバイアス磁界発生用励磁コイル、および前記コア体に巻回された検出コイルを備えた磁気センサ素子を有していることが好ましい。このように構成すると、磁気センサ素子によって磁束の検出とバイアス磁界の発生とを行なうことができるので、磁気センサ装置の小型化を図ることができる。
【0014】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は、前記媒体を飽和着磁可能な磁束を発生させることが好ましい。このように構成すると、磁束検出部において、磁界印加用磁石によって媒体を磁化した後の残留磁束密度を精度よく検出することができる。
【0015】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は各々、前記媒体を着磁するための永久磁石を備えていることが好ましい。本発明では、磁界印加用第1磁石および磁界印加用第2磁石には電磁石および永久磁石のいずれを用いてもよいが、磁界印加用第1磁石および磁界印加用第2磁石に永久磁石を用いれば、構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで異なる極が対向している構成を採用することができる。このように構成すると、磁束検出部周辺の磁束密度を低減することができるため、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。特に、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとを検出する場合、磁気センサ素子が磁界印加用磁石の磁界の影響を受けると、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンの信号を正確に検出できなくなるが、本発明によれば、かかる問題が発生しにくい。
【0017】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで同じ極が対向している構成を採用してもよい。
【0018】
本発明において、前記磁束検出部は、前記磁界印加用第1磁石の磁界と前記磁界印加用第2磁石の磁界とが中和している位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、磁束検出部に対する磁界印加用第1磁石の影響と、磁束検出部に対する磁界印加用第2磁石の影響とを確実に相殺することができる。このため、センサ部に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を大幅に低減することができる。従って、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。特に、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとを検出する場合、磁気センサ素子が磁界印加用磁石の磁界の影響を受けると、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンの信号を正確に検出できなくなるが、本発明によれば、かかる問題が発生しにくい。
【0019】
本発明において、前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石では、前記永久磁石に対して集磁ヨークが配置されていることが好ましい。このように構成すると、磁界印加用磁石の磁界を集磁ヨークによって制御することができるので、磁束検出部周辺の磁束密度自身を低減することができる。
【0020】
本発明において、本発明において、前記集磁ヨークは、前記永久磁石の前記媒体に対する着磁面とは異なる面側に重ねて配置されていることが好ましい。このように構成すると、磁束検出部周辺の磁束密度自身を低減しつつ、媒体を飽和着磁することができる。
【0021】
本発明において、前記集磁ヨークは、前記永久磁石と重なる位置から前記着磁面が位置する側とは反対側に延在した延在部を備えていることが好ましい。このように構成すると、集磁ヨークによって磁束検出部周辺の磁束密度をより低減するように磁界印加用磁石の磁界を制御することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、媒体の移動経路に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁界印加用磁石は、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置され、磁束検出部に対向する位置に磁界印加用磁石が配置されていない。このため、磁束検出部に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁束検出部に対して媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石とが配置されているため、磁束検出部に対しては、媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石の磁界と磁界印加用第2磁石の磁界とが形成されるので、磁束検出部に対する磁界印加用第1磁石の影響と、磁束検出部に対する磁界印加用第2磁石の影響とを相殺することができる。このため、センサ部に磁界印加用磁石と磁束検出部とを配置した場合でも、磁束検出部に対する磁界印加用磁石の磁界の影響を低減することができるので、磁束検出部は、磁界印加用磁石の磁界の影響を受けずに媒体の磁気特性を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置における媒体に対する着磁強度と磁気センサ素子からの出力との関係を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置において磁束検出部を構成する磁気センサ素子の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置において磁気が検出される媒体に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置を用いて、種類の異なる媒体から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態5に係る磁気センサ装置の詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置を備えた磁気パターン検出装置の構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、磁気パターン検出装置の要部構成を模式的に示す説明図、および断面構成を模式的に示す説明図である。
【0026】
図1に示す磁気パターン検出装置100は、銀行券、有価証券等の媒体1から磁気を検知して真偽判別や種類の判別を行なう装置であり、ローラやガイド(図示せず)等によってシート状の媒体1を媒体搬送路11に沿って移動させる搬送装置10と、この搬送装置10による媒体搬送路11の途中位置で媒体1から磁気を検出する磁気センサ装置20とを有している。本形態において、ローラやガイドは、アルミニウム等といった非磁性材料から構成されている。本形態において、磁気センサ装置20は、媒体搬送路11の下方に配置されているが、媒体搬送路11の上方に配置されることもある。いずれの場合も、磁気センサ装置20は、センサ面21を媒体搬送路11に向けるように配置される。
【0027】
本形態において、媒体1には、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンが形成されている。例えば、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。そこで、本形態の磁気パターン検出装置100は、媒体1における磁気パターン毎の有無を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出する。また、本形態において、かかる2種類の磁気パターンの検出を行なうための磁気センサ装置20は共通である。従って、本形態の磁気パターン検出装置100は、以下の構成を有している。なお、ハード材とは、マグネットに用いる磁性材料のように、外部より磁界を印加すると、ヒステリシスが大きくて残留磁束密度が高く、容易に磁化される磁性材料である。これに対して、ソフト材とは、モータや磁気ヘッドのコア材のように、ヒステリシスが小さくて残留磁束密度が低く、容易に磁化されない磁性材料である。
【0028】
(磁気センサ装置20の構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁界印加用磁石等のレイアウトを示す説明図、磁界印加用磁石30が形成する磁界の平面分布の説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20における媒体1に対する着磁強度と磁気センサ素子45からの出力との関係を示す説明図である。
【0029】
図1および図2(a)に示すように、本形態の磁気パターン検出装置100において、磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁界を印加した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する磁束検出部40を構成する磁気センサ素子45と、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子45を覆う非磁性のケース25とを備えている。磁気センサ装置20は、媒体搬送路11と略同一平面を構成するセンサ面21と、センサ面21に対して媒体1の移動方向の両側に連接する斜面部22、23とを備えており、かかる形状は、ケース25の形状によって規定されている。本形態では、斜面部22、23を設けてあるので、媒体1が引っ掛かりにくいという利点がある。
【0030】
磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向(矢印X1で示す方向)と交差する方向に延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子45は、媒体1の移動方向と交差する方向に複数、配列されている。
【0031】
本形態において、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向、すなわち、磁気センサ素子45の直下で重なっていない。本形態において、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との中間位置に配置されており、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子45との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子45との離間距離が等しい。ここで、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32はいずれも、磁気センサ装置20のセンサ面21に対向するように配置されている。
【0032】
本形態において、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)は、フェライトやネオジウム磁石等の永久磁石35を備えており、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、永久磁石35は、センサ面21に位置する側と、センサ面21が位置する側とは反対側とが異なる極に着磁されている。このため、永久磁石35において、センサ面21の側に位置する面が媒体1に対する着磁面350として機能する。すなわち、本形態の磁気パターン検出装置100においては、後述するように、媒体1が磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、磁界が印加された後の媒体1が磁気センサ素子45を通過する。その際、磁気センサ素子45は、媒体1の残留磁束密度を測定する。従って、媒体1の残留磁束を確実に検出するには、媒体1を飽和着磁することが好ましい。そこで、三種類の媒体1A、1B、1Cにおいて、着磁強度と磁気センサ素子45から出力強度との関係を検討し、その検討結果を図3に示す。ここで、三種類の媒体1A、1B、1Cは、角形比(最大残留磁束密度/最大磁束密度)が相違しており、媒体1A、1B、1Cの角形比は以下の関係
媒体1A>1B>1C
になっている。
【0033】
図3から分かるように、磁気センサ素子45に対する着磁強度が0.05[T]以上であれば、磁気センサ素子45からの出力が安定する。従って、図1(b)に示す着磁面350から0.5mm離間したところを媒体1が通過する場合には、磁界印加用第1磁石31の着磁面350における磁束密度は0.1[T]であることが好ましく、かかる磁束密度であれば、媒体1を飽和着磁することができる。
【0034】
再び図2(a)において、本形態の磁気センサ装置20では、磁界印加用磁石30に用いた複数の永久磁石35はいずれも、サイズや形状は同一であるが、各々は、以下の向きに配置されている。まず、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、媒体1の移動方向と交差する方向で隣り合う永久磁石35同士は、互いに反対の向きに着磁されている。すなわち、媒体1の移動方向と交差する方向に配列された複数の永久磁石35のうち、1つの永久磁石35は、媒体搬送路11側に位置する端部がN極に着磁され、媒体搬送路11側とは反対側に位置する端部はS極に着磁されているが、この永久磁石35に対して媒体1の移動方向と交差する方向で隣り合う永久磁石35は、媒体搬送路11側に位置する端部がS極に着磁され、媒体搬送路11側とは反対側に位置する端部はN極に着磁されている。
【0035】
また、本形態では、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45(磁束検出部40)を挟んで異なる極が対向している。例えば、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35のうち、一方の永久磁石35は、媒体搬送路11側に位置する端部がN極に着磁されているが、他方の永久磁石35は、媒体移動経路11側に位置する端部がS極に着磁されている。また、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、サイズや着磁強度が等しく、かつ、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子45との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子45との離間距離とが等しい。このため、図2(b)、(c)に示すように、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35の磁界、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35の磁界は各々、磁気センサ素子45の周辺まで形成されているが、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが中和している個所に配置するので、磁気センサ素子45周辺(磁気センサ素子45周辺)は、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に起因する磁束密度が低い。
【0036】
再び図1(b)において、磁気センサ素子45は薄板状であり、媒体1の移動方向に厚さ方向を向けて配置されている。磁気センサ素子45は、両面がセラミック等からなる厚さ0.3mm〜1mm程度の薄板状の非磁性部材48により覆われている。かかる磁気センサ素子45は、磁気シールドケース(図示せず)に収納されていることもある。この場合、磁気シールドケースは、媒体搬送路が位置する上方が開口しており、磁気センサ素子45は、媒体搬送路11に向けて磁気シールドケースから露出した状態にある。磁気センサ素子45は、図4を参照して後述する信号処理部60に電気的に接続されている。
【0037】
(信号処理部60の構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。本形態において、図4に示す信号処理部60は、磁気センサ装置20から出力される信号から、残留磁束密度レベルに対応する第1信号S1、および透磁率レベルに対応する第2信号S2を抽出し、かかる信号の抽出結果と、媒体1と磁気センサ装置20との相対位置情報に基づいて、媒体1における複数種類の磁気パターンの有無および形成位置を検出する。より具体的には、信号処理部60は、磁気センサ装置20から出力された信号を増幅するアンプ61と、このアンプ61から出力された信号のピーク値およびボトム値を保持するピークホールド回路62およびボトムホールド回路63と、ピーク値とボトム値とを加算して第1信号S1を抽出する加算回路64と、ピーク値とボトム値とを減算して第2信号S2を抽出する減算回路65とを備えている。さらに、信号処理部60は、加算回路64および減算回路65から出力された各信号を磁気センサ装置20と媒体1との相対位置情報に関係づけて、記録部661に予め記録されている比較パターンとの照合を行って媒体1の真偽を判定する判定部66も備えている。かかる判定部66は、マイクロコンピュータ等により構成されており、ROMあるいはRAM等といった記録部(図示せず)に予め記録されているプログラムに基づいて所定の処理を行い、媒体1の真偽を判定する。
【0038】
(磁気センサ素子の詳細構成)
図5は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20において磁束検出部40を構成する磁気センサ素子45の説明図であり、図5(a)、(b)、(c)、(d)は、磁気センサ素子45の正面図、この磁気センサ素子45に対する励磁波形の説明図、磁気センサ素子45からの出力信号の説明図、および別の磁気センサ素子45の正面図である。なお、図5(a)では、図面に対して垂直な方向で媒体1が移動する状態を示してある。
【0039】
図5(a)に示すように、磁気センサ装置20において、磁気センサ素子45は、アモルファスあるいはパーマロイからなる薄板状のセンサコア41、このセンサコア41に巻回されたバイアス磁界発生用励磁コイル43、およびコア体に巻回された検出コイル42を備えている。さらに、磁気センサ素子45は、センサコア41にバイアス磁界発生用励磁コイル43とは逆方向に巻回された差動用磁界発生用励磁コイル44を備えている。図4に示すように、バイアス磁界発生用励磁コイル43と差動用磁界発生用励磁コイル44とは直列に接続され、その中点がグランド電位に保持されている。
【0040】
バイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44は、励磁回路50から同一位相の交番電流(図5(b)参照)が定電流で印加される。このため、図5(a)に示すように、センサコア41の周りには、バイアス磁界と、このバイアス磁界に対して逆向きの差動用磁界が形成され、検出コイル42からは、図5(c)に示す検出波形の信号が出力されることになる。ここで、図5(c)に示す検出波形は、バイアス磁界および時間に対する微分的な信号であり、かつ、差動用磁界発生用励磁コイル44によって形成された差動用磁界との磁気的な差動に基づく信号である。
【0041】
図5(a)において、センサコア41は、検出コイル42が巻回された胴部410と、胴部410の下端部の中央部分から媒体1が位置する下方に突出した第1突部411と、第1突部411とは反対側で胴部410の上端部の中央部分から上方に突出した第2突部412とを備えている。検出コイル42は、センサコア41の胴部410に巻回され、バイアス磁界発生用励磁コイル43は第1突部411に巻回され、差動用磁界発生用励磁コイル44は、第2突部412に巻回されている。ここで、第1突部411および第2突部412の断面積は、胴部410の断面積に比して小さい。このため、検出コイル42は、バイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44より断面積が大きい構成になっている。
【0042】
なお、図5(a)に示す磁気センサ素子45は、胴部410の上下両端の中央部分から第1突部411および第2突部412が突出し、かかる第1突部411および第2突部412にバイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44が形成されている構成であったが、図5(d)に示すように、胴部410の上下両端の両側に、第1突部411および第2突部412を各々挟むように計4つの第3突部413が形成されている構成を採用してもよい。このように構成すると、閉磁路になる分、透磁率の低い空気中を通る磁束が減るので、感度を向上することができる。
【0043】
(検出原理)
図6は、本発明の実施の形態1に係る磁気センサ装置20において磁気が検出される媒体1に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。図7は、本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置100において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体1から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【0044】
まず、図1および図2に示す矢印X1の方向に媒体1が移動する際に媒体1の真偽を判定する原理を説明する。本形態において、媒体1には、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターン(図5に示す磁性体2)が形成されている。より具体的には、媒体1には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。ここで、ハード材を含む磁気インキは、図6(b1)にヒステリシスループによって、残留磁束密度Brや透磁率μ等を示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは高いが、透磁率μは低い。これに対して、ソフト材を含む磁気インキは、図6(c1)にそのヒステリシスループを示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは低いが、透磁率μは高い。
【0045】
従って、以下に説明するように、残留磁束密度Brと透磁率μとを測定すれば、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。より具体的には、透磁率μは保持力Hcと相関性を有しているので、本形態では、残留磁束密度Brと保持力Hcとを測定していることになり、かかる残留磁束密度Brと保持力Hcとの比は、磁気インキ(磁性材料)によって相違する。それ故、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。また、残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)の測定値は、インキの濃淡や、媒体1と磁気センサ装置20との距離により変動するが、本形態では、磁気センサ装置20が同一位置で残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保持力Hc)を測定するため、残留磁束密度Brと保持力Hcとの比によれば、磁気インキの材質を確実に判別することができる。
【0046】
本形態の磁気パターン検出装置100において、媒体1が矢印X1で示す方向に移動して磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体1に磁界が印加され、磁界が印加された後の媒体1が磁気センサ素子45を通過する。それまでの間、検出コイル42からは、図6(a3)に示すように、図6(a2)に示すセンサコア41のB−Hカーブに対応する信号が出力される。従って、図4に示す加算回路64および減算回路65から出力される信号は各々、図6(a4)に示す通りである。
【0047】
ここで、フェライト粉等のハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第1の磁気パターンは、図6(b1)に示すように、高レベルの残留磁束密度Brを有する。このため、図7(a1)に示すように、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した際、第1の磁気パターン(図5に示す磁性体2)は、磁界印加用磁石30からの磁界により、磁石となる。このため、検出コイル42から出力される信号は、図6(b2)に示すように、第1の磁気パターンから直流的なバイアスを受けて、図6(b3)および図7(a2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧が矢印A1、A2で示すように、同一の方向にシフトするとともに、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量が相違する。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図4に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、図6(b4)に示す通りであり、磁気センサ素子45を媒体1の第1の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ハード材を含む磁気インクにより形成された第1の磁気パターンは、透磁率μが低いため、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第1の磁気パターンの残留磁束密度Brだけと見做すことができる。それ故、図4に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、磁気センサ素子45を媒体1の第1の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(b4)に示す信号と同様である。
【0048】
これに対して、軟磁性ステンレス紛等のソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが媒体1に形成されていると、かかる第2の磁気パターンのヒステリシスループは、図6(c1)に示すように、図6(b1)に示すハード材を含む磁気インクによる第1の磁気パターンのヒステリシスカーブの内側を通り、残留磁束密度Brのレベルが低い。このため、磁界印加用磁石30を媒体1が通過した後も、第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brのレベルが低い。但し、第2の磁気パターン(図5に示す磁性体2)は透磁率μが高いため、図7(b1)に示すように、磁性体として機能する。このため、検出コイル42から出力される信号は、図6(c2)に示すように、第2の磁気パターンの存在によって透磁率μが高くなっている分、図6(c3)および図7(b2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧は矢印A3で示すように高い方にシフトする一方、ボトム電圧は、矢印A4で示すように低い方にシフトする。その際、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量は絶対値が略等しい。しかも、かかる信号S0は、媒体1の移動に伴って変化する。従って、図4に示す減算回路65から出力される第2信号S2は、図6(c4)に示す通りであり、磁気センサ素子45を媒体1の第2の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ソフト材を含む磁気インクにより形成された第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brが低いため、信号のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第2の磁気パターンの透磁率μだけと見做すことができる。それ故、図4に示す加算回路64から出力される第1信号S1は、磁気センサ素子45を媒体1の第2の磁気パターンが通過しても変動せず、図6(c4)に示す信号と同様である。
【0049】
(具体的な検出結果)
図8は、本発明の実施の形態1に係る磁気パターン検出装置100を用いて、種類の異なる媒体1から磁気パターンを検出した結果を示す説明図である。
【0050】
本形態の磁気パターン検出装置100では、加算回路64において磁気センサ素子45から出力される信号のピーク値とボトム値とを加算した第1信号S1は、磁気パターンの残留磁束密度レベルに対応する信号であり、かかる第1信号S1を監視すれば、ハード材を含む磁気インキにより形成された第1の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。また、減算回路65において磁気センサ素子45から出力される信号のピーク値とボトム値とを減算した第2信号S2は、磁気パターンの透磁率μに対応する信号であり、かかる第2信号S2を監視すれば、ソフト材を含む磁気インキにより形成された第2の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。それ故、磁界を印加したときの残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンの媒体1における磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて識別することができる。
【0051】
それ故、ハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが形成されている媒体1、およびソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが形成されている媒体1を検査すると、図8(a)、(b)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、媒体1の真偽を判定することができる。また、第1の磁気パターンおよび第2の磁気パターンの双方が形成されている2つの媒体1を検査すると、図8(c)に示す結果を得ることができ、かかる信号パターンを照合すれば、磁気パターンの有無、種別、形成位置、さらには濃淡を検出することができ、かかる媒体1についても真偽を判定することができる。
【0052】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気パターン検出装置100で用いた磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁束を検出する磁気センサ素子45(磁束検出部40)とを備えており、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁束検出部40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。従って、磁束検出部40に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。それ故、磁束検出部40に付着した磁性粉が媒体1と接触して移動すること等に起因する検出エラーの発生を防止することができる。また、磁束検出部40に付着した磁性粉が媒体1と接触して移動すること等に起因する磁束検出部40の磨耗を防止することができるので、磁気センサ装置2の寿命を延長することができる。
【0053】
さらに、磁性粉は、磁気を帯びているため、磁束検出部40に付着したり、あるいは付着した磁性粉が無くなったりすると、その影響がセンサの出力に現れるため正確な磁気情報を得ることができないが、本形態では上記のように磁束検出部40への付着を防止しているので、媒体1のみからの正確な磁気情報を得ることができる。
【0054】
また、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子45に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる。特に本形態のように、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとを検出する場合、磁気センサ素子45が磁界印加用磁石30の磁界の影響を受けると、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンの信号を正確に検出できなくなるが、本形態によれば、かかる問題が発生しにくい。それ故、ハード材とソフト材の両方を含んだ媒体1であっても、それぞれの磁気パターンを切り分けて各々検出することができる。
【0055】
また、本形態において、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45を挟んで異なる極が対向している。このため、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35の磁界、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35の磁界は各々、磁気センサ素子45の周辺まで形成されているが、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが中和している個所に配置するので、磁気センサ素子45周辺(磁気センサ素子45周辺)は、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に起因する磁束密度が低い。それ故、媒体1に交番磁界なるバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する際、磁束検出部40に対する磁界印加用磁石30の磁界の影響を大幅に低減することができる。
【0056】
また、本形態において、磁界印加用磁石30は媒体1を着磁し、磁気センサ素子45は、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する。このため、磁界印加用磁石30によって媒体1を磁化した後の残留磁束密度を検出することができるとともに、バイアス磁界中を媒体1が通過した際の磁束変化に基づいて媒体1の透磁率を検出することができる。
【0057】
しかも、本形態では、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と第2磁界印加用磁用32が配置されている。このため、図1に示すように、矢印X1で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第1磁石31によって着磁し、その後、磁気センサ素子45によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができるとともに、矢印X2で示す方向に移動する媒体1を磁界印加用第2磁石32によって着磁し、その後、磁気センサ素子45によって、着磁した後の媒体1にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することができる。それ故、本形態の磁気パターン検出装置100を入出金機に用いれば、入金された媒体1の真偽を判定することができるとともに、出金される媒体1の真偽を判定することもできる。
【0058】
また、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は、媒体1を飽和着磁可能な磁束を発生させる。このため、磁束検出部40において、磁界印加用磁石30によって媒体1を磁化した後の残留磁束密度を精度よく検出することができる。しかも、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32には電磁石および永久磁石のいずれを用いてもよいが、本形態では、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に永久磁石35を用いているので、構成の簡素化を図ることができる。
【0059】
また、本形態の磁気パターン検出装置100では、共通の磁気センサ装置20によって、磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出するため、2つの磁気センサ装置で残留磁束密度レベルと透磁率レベルとを測定する場合と違って、残留磁束密度レベルの測定と、透磁率レベルの測定との間に時間差が発生しない。それ故、磁気センサ装置20と媒体1とを移動させながら計測する場合でも、信号処理部60は、2つの磁気センサ装置で残留磁束密度レベルと透磁率レベルとを測定する場合に必要な補正が必要ないので、簡素な構成で高い精度の検出を行なうことができる。また、搬送装置10についても、磁気センサ装置20を通過する箇所のみに走行安定性が求められるだけなので、媒体1の傾きなどを検出する必要がないなど、構成の簡素化を図ることができる。
【0060】
さらに、本形態の磁気パターン検出装置100によれば、ハード材およびソフト材の双方を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1や、ハード材とソフト材の中間に位置する材料を含む磁気インキにより磁気パターンが形成されている媒体1についても、磁気パターンの検出を行なうことができる。すなわち、磁気特性が第1の磁気パターンと第2の磁気パターンの中間に位置するような磁気パターンについては、図6(d1)に示すように、ヒステリシスループが、図6(b1)に示すハード材の磁気パターンのヒステリシスループと図6(c1)に示すソフト材の磁気パターンのヒステリシスループとの中間に位置するので、図6(d4)に示す信号パターンを得ることができ、かかる磁気パターンについても、有無や形成位置を検出することができる。
【0061】
また、本形態において、磁気センサ素子45は、バイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44を備えているため、磁気的な差動におり、環境に起因する測定誤差を解消することができ、信号処理が容易である。さらに、センサコア41において、胴部410から突出する第1突部411および第2突部412にバイアス磁界発生用励磁コイル43および差動用磁界発生用励磁コイル44が巻回されている。このため、媒体1に向けてバイアス磁界を効率よく発生させることができるとともに、センサコア41を媒体1に接近させることができるので、感度を向上することができる。しかも、第1突部411および第2突部412の断面積は、胴部410の断面積に比して小さいため、高効率な磁気回路により感度が高い。
【0062】
さらに、センサコア41が薄板状であるため、媒体1上の狭い範囲を検出対象とすることができるので、微細な磁気パターンに十分、対応することができる。しかも、磁気センサ素子45は、その両面が薄板状の非磁性部材48により覆われているため、磁気センサ素子45を薄く構成した場合でも、媒体1との摺動による磨耗を防止することができる等、磁気センサ素子45の補強を行なうことができる。また、磁気センサ素子45を製造する際、あるいは磁気センサ素子45を磁気パターン検出装置100に搭載する際の作業性を向上することができる。
【0063】
また、磁気センサ装置20と媒体1とを相対移動させながら媒体1から磁気パターンの有無を検出するので、媒体1の移動方向の全体にわたって磁気パターンを効率よく検出できる。しかも、磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向と交差する方向に複数配置されているので、搬送される媒体1の幅方向における磁気パターンの有無および形成位置を効率よく検出することができる。なお、磁気センサ装置20は、媒体1の移動方向と交差する方向に複数配置するにあたっては、磁界印加用磁石30については、磁束検出部40に1対1で対応するように幅方向で分割されている構成、および複数の磁束検出部40に対応するように幅方向に一体に延在している構成のいずれを採用してもよい。
【0064】
[実施の形態2]
図9は、本発明の実施の形態2に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図9(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁界印加用磁石等のレイアウトを示す説明図、磁界印加用磁石30が形成する磁界の平面分布の説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0065】
図9(a)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。
【0066】
かかる構成の磁気センサ装置20において、実施の形態1では、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向していたが、本形態において、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している。なお、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、媒体1の移動方向と交差する方向で隣り合う永久磁石35同士は、実施の形態1と同様、互いに反対の向きに着磁されている。また、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、サイズや着磁強度が等しく、かつ、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子45との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子45との離間距離とが等しい。
【0067】
このように構成した磁気センサ装置20では、図9(b)、(c)に示すように、磁界印加用第1磁石31の永久磁石35の磁界、および磁界印加用第2磁石32の永久磁石35の磁界は各々、磁気センサ素子45の周辺まで形成されているが、磁気センサ素子45は、磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが中和している個所に配置するので、磁気センサ素子45周辺(磁気センサ素子45周辺)は、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32に起因する磁束密度が低い。
【0068】
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁束を検出する磁気センサ素子45(磁束検出部40)とを備えており、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁束検出部40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。このため、磁束検出部40に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子45に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0069】
[実施の形態3]
図10は、本発明の実施の形態3に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図10(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置20における磁界印加用磁石等のレイアウトを示す説明図、磁気センサ装置20の断面構成を示す説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1、2と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0070】
図10(a)、(b)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1、2と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。ここで、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、実施の形態1のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向している構成、あるいは、実施の形態2のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している構成を有している。
【0071】
このように構成した磁気センサ装置20において、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は各々、永久磁石35と集磁ヨーク36とを有しており、本形態において、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは異なる面側に重なる重なり部分361と、重なり部分361から延在する延在部362とを備えている。より具体的には、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは反対側の面351側に重なる重なり部分361と、重なり部分361から着磁面350が位置する側とは反対側に延在する延在部362とを備えており、延在部362は、重なり部分361のうち、磁気センサ素子45が位置する側とは反対側の端部から延在している。このため、本形態の磁気センサ装置20では、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御することができるので、図10(c)に示すように、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。
【0072】
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置20は、媒体1に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁束を検出する磁気センサ素子45(磁束検出部40)とを備えており、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されている。このため、磁束検出部40に上下方向で重なった位置には磁界印加用磁石30が配置されていない。従って、磁束検出部40に付着しようとする磁性粉を磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とによって吸着することができるので、磁束検出部への磁性粉の付着を防止することができる。また、磁気センサ素子45に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32とが配置されているため、磁気センサ素子45に対しては、媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31の磁界と磁界印加用第2磁石32の磁界とが形成されるので、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第1磁石31の影響と、磁気センサ素子45に対する磁界印加用第2磁石32の影響とを相殺することができる。特に本形態では、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御しているので、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。それ故、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)が磁気センサ素子45の感度を低下させにくいという利点がある。
【0073】
また、集磁ヨーク36を設けたので、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との反発や吸引の影響を受けないようにすることができるとともに、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32を筐体などに搭載する際、集磁ヨーク36を磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32の固定などに利用することができる。また、外部磁界の影響の受けにくいようにシールドすることもできる。
【0074】
[実施の形態4]
図11は、本発明の実施の形態4に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図11(a)、(b)は、磁気センサ装置20の断面構成を示す説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1〜3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0075】
図11(a)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1〜3と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。ここで、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、実施の形態1のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向している構成、あるいは、実施の形態2のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している構成を有している。
【0076】
このように構成した磁気センサ装置20においても、実施の形態3と同様、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は各々、永久磁石35と集磁ヨーク36とを有している。本形態において、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは反対側の面351側に重なっており、かかる面351から磁気センサ素子45が位置する側とは反対側に向けてわずかに突出している。このように構成した場合も、図11(b)に示すように、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御することができるので、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。それ故、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)が磁気センサ素子45の感度を低下させにくいという利点がある。また、集磁ヨーク36は、突出寸法は小さいが、磁気センサ素子45が位置する側とは反対側に向けて突出しているので、集磁ヨーク36が突出している側(磁気センサ素子45が位置する側とは反対側)に集磁することができる。さらに、集磁ヨーク36を設けたので、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との反発や吸引の影響を受けないようにすることができるとともに、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32を筐体などに搭載する際、集磁ヨーク36を磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32の固定などに利用することができる。また、外部磁界の影響の受けにくいようにシールドすることもできる。
【0077】
[実施の形態5]
図12は、本発明の実施の形態5に係る磁気センサ装置20の詳細構成を示す説明図であり、図12(a)、(b)は、磁気センサ装置20の断面構成を示す説明図、および磁界印加用磁石30が形成する磁界の断面的分布の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1〜3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0078】
図12(a)に示すように、本形態の磁気センサ装置20でも、実施の形態1、2、3と同様、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子45(磁束検出部40)に対して媒体1の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体1の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子45および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。このため、磁界印加用磁石30と磁気センサ素子45とは上下方向で重なっていない。ここで、媒体1の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、実施の形態1のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる極が対向している構成、あるいは、実施の形態2のように、磁気センサ素子45(磁束検出部)を挟んで異なる同じ極が対向している構成を有している。
【0079】
このように構成した磁気センサ装置20において、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32は各々、永久磁石35と集磁ヨーク36とを有しており、本形態において、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350とは異なる面側に重なる重なり部分361と、重なり部分361から延在する延在部362とを備えている。より具体的には、集磁ヨーク36は、永久磁石35の着磁面350に隣接する側面のうち、磁気センサ素子45が位置する側とは反対側の側面352に重なる重なり部分361と、重なり部分361から着磁面350が位置する側とは反対側に延在する延在部362とを備えている。このため、本形態の磁気センサ装置20では、永久磁石35の磁界を集磁ヨーク36によって制御することができるので、図12(b)に示すように、磁気センサ素子45周辺の磁束密度自身を低減することができる。それ故、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)が磁気センサ素子45の感度を低下させにくいという利点がある。さらに、集磁ヨーク36を設けたので、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との反発や吸引の影響を受けないようにすることができるとともに、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32を筐体などに搭載する際、集磁ヨーク36を磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32の固定などに利用することができる。また、外部磁界の影響の受けにくいようにシールドすることもできる。
【0080】
(その他の実施の形態)
上記形態では、媒体1と磁気センサ装置20とを相対移動させるにあたって、媒体1の方を移動させたが、媒体1が固定で磁気センサ装置20が移動する構成を採用してもよい。また、上記形態では、磁界印加用磁石30に永久磁石を用いたが、電磁石を用いてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 媒体
20 磁気センサ装置
30 磁界印加用磁石
31 磁界印加用第1磁石
32 磁界印加用第2磁石
35 永久磁石
36 集磁ヨーク
41 センサコア
42 検出コイル
43 バイアス磁界発生用励磁コイル
44 差動用磁界発生用励磁コイル
45 磁気センサ素子
60 信号処理部
100 磁気パターン検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する媒体から磁気特性を検出する磁気センサ装置であって、
媒体に磁界を印加する磁界印加用磁石と、磁束を検出する磁束検出部と、を備え、
前記磁界印加用磁石は、前記磁束検出部に対して前記媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置されていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記磁界印加用磁石は前記媒体を着磁し、
前記磁束検出部は、着磁した後の前記媒体にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記バイアス磁界は、交番磁界であることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記磁束検出部は、センサコア、該センサコアに巻回されて前記バイアス磁界を発生させるバイアス磁界発生用励磁コイル、および前記コア体に巻回された検出コイルを備えた磁気センサ素子を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は、前記媒体を飽和着磁可能な磁束を発生させることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は各々、前記媒体を着磁するための永久磁石を備えていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで異なる極が対向していることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで同じ極が対向していることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記磁束検出部は、前記磁界印加用第1磁石の磁界と前記磁界印加用第2磁石の磁界とが中和している位置に配置されていることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石では、前記永久磁石に対して集磁ヨークが配置されていることを特徴とする請求項6乃至9の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項11】
前記集磁ヨークは、前記永久磁石の前記媒体に対する着磁面とは異なる面側に重ねて配置されていることを特徴とする請求項10に記載の磁気センサ装置。
【請求項12】
前記集磁ヨークは、前記永久磁石と重なる位置から前記着磁面が位置する側とは反対側に延在した延在部を備えていることを特徴とする請求項11に記載の磁気センサ装置。
【請求項1】
相対移動する媒体から磁気特性を検出する磁気センサ装置であって、
媒体に磁界を印加する磁界印加用磁石と、磁束を検出する磁束検出部と、を備え、
前記磁界印加用磁石は、前記磁束検出部に対して前記媒体の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石と磁界印加用第2磁石として配置されていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記磁界印加用磁石は前記媒体を着磁し、
前記磁束検出部は、着磁した後の前記媒体にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出することを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記バイアス磁界は、交番磁界であることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記磁束検出部は、センサコア、該センサコアに巻回されて前記バイアス磁界を発生させるバイアス磁界発生用励磁コイル、および前記コア体に巻回された検出コイルを備えた磁気センサ素子を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は、前記媒体を飽和着磁可能な磁束を発生させることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石は各々、前記媒体を着磁するための永久磁石を備えていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで異なる極が対向していることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記磁界印加用第1磁石の前記永久磁石と前記磁界印加用第2磁石の前記永久磁石とは、前記磁束検出部を挟んで同じ極が対向していることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記磁束検出部は、前記磁界印加用第1磁石の磁界と前記磁界印加用第2磁石の磁界とが中和している位置に配置されていることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
前記磁界印加用第1磁石および前記磁界印加用第2磁石では、前記永久磁石に対して集磁ヨークが配置されていることを特徴とする請求項6乃至9の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項11】
前記集磁ヨークは、前記永久磁石の前記媒体に対する着磁面とは異なる面側に重ねて配置されていることを特徴とする請求項10に記載の磁気センサ装置。
【請求項12】
前記集磁ヨークは、前記永久磁石と重なる位置から前記着磁面が位置する側とは反対側に延在した延在部を備えていることを特徴とする請求項11に記載の磁気センサ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−163831(P2011−163831A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24788(P2010−24788)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
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