説明

磁気センサ

【課題】簡単な工程で、小型の磁気センサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る磁気センサ10は、上壁と、前記上壁に対して垂直方向に延びる複数の側壁と、を有し、内側に収納部14を有する直方体状のケース11と、収納部14に設けられているマグネット31と、ケース11の上壁の外側に設けられている磁気抵抗素子33と、上壁と複数の側壁とを覆うように設けられているカバー21と、を備え、ケース21の収納部14とマグネット31の間及びケース11とカバー21の間に充填された同一の樹脂35により、ケース11とマグネット31及びケース11とカバー21が接着固定されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣等を識別する磁気センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気センサは、磁性インク等を用いて印刷された紙幣や証券等の被検出体の数字、文字、記号等の情報を読み取って識別するために使用されており、例えばATM等の紙幣識別装置等に組み込まれている。このような磁気センサとしては、例えば特許文献1に開示されているものが挙げられる。特許文献1に開示の磁気センサは、図6に示すように、ケース110と、カバー115と、磁気抵抗素子111と、マグネット114と、を備えている。そして、ケース110の側面にはカバー装着溝121が設けられている。一方、カバー115は、磁気検出面と対面する天面部分と、天面部分に対して垂直に形成されている側面部分と、を備えている。そしてカバー115の側面部分はカバー装着溝121に挿入されている。カバー装着溝121内には熱硬化性の樹脂116が充填されており、樹脂116によりケース110とカバー115が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−175490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来の磁気センサでは、ケースのカバー装着溝にカバーをはめこみ、その後、カバー装着溝に樹脂を充填して硬化させるという方法でケースとカバーを装着している。そのため、工程が複雑であるという問題があった。また、ケースの側面部分にカバー装着溝を設けているため、磁気センサの寸法が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、簡単な工程で、小型の磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気センサは、上壁と、前記上壁に対して垂直方向に延びる複数の側壁と、を有し、内側に収納部を有する直方体状のケースと、前記収納部に設けられているマグネットと、前記ケースの上壁の外側に設けられている磁電変換素子と、前記上壁と前記複数の側壁とを覆うように設けられているカバーと、を備え、前記ケースの前記収納部と前記マグネットの間及び前記ケースと前記カバーの間に充填された同一の樹脂により、前記ケースと前記マグネット及び前記ケースと前記カバーが接着固定されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記カバーが前記上壁と前記複数の側壁のうち対向する2つの側壁とを覆うように設けられていることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記カバーが前記ケースの対向する2つの側壁の全面を覆うように設けられていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記カバーに覆われる前記ケースの側壁に切り欠きが設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記カバーに覆われる前記ケースの側壁に穴が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記カバーに覆われる前記ケースの側壁に樹脂の流動をせきとめる溝が設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記溝は、前記側壁において、前記上壁に近い側に設けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記溝は、前記側壁と前記上壁とが接する線と平行に設けられていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る磁気センサでは、前記カバーの前記ケースの側壁を覆う部分に、樹脂の流動をせきとめる少なくとも1個以上の穴が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、マグネット及びカバーとケースの固定を同一の樹脂で同時に行うことにより、簡単な工程でケースの固定を行うことが可能である。また、従来の工程のようにカバー装着溝を設ける必要がないため、磁気センサを小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明に係る磁気センサを示す斜視図である。また、(B)は(A)のM−M断面図である。(第1の実施形態)
【図2】本発明に係る磁気センサに用いられるケースとカバーを示す分解斜視図である。(第1の実施形態)
【図3】本発明に係る磁気センサが紙幣識別装置に用いられる場合の断面図である。(第1の実施形態)
【図4】本発明に係る磁気センサに用いられるケースとカバーを示す分解斜視図である。(第2の実施形態)
【図5】本発明に係る磁気センサに用いられるケースとカバーを示す分解斜視図である。(第3の実施形態)
【図6】従来の磁気センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1(A)は本発明に係る磁気センサを示す斜視図である。また、図1(B)は図1(A)のM−M断面図である。また、図2は、本発明に係る磁気センサに用いられるケースとカバーを示す分解斜視図である。図1と図2を参照して説明する。
【0019】
図1(B)のように、磁気センサ10は、ケース11と、マグネット31と、磁気抵抗素子33と、カバー21と、を備えている。
【0020】
図2のように、ケース11は、下面が開放されている直方体形状の箱型ケースである。すなわち、ケース11は、長方形状の上壁12と、上壁12の各辺から上壁12の主面に対して垂直方向に延びる複数の側壁13a、13b、13c、13dと、から構成されている。そして、ケース11の収納部14は、ケース11の下側に開口しており、側壁13a、13c側に段差を有している。本実施形態において、ケース11はPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂からなる。なお、ケース11の材質としては、LCP(リキッドクリスタルポリマー;液晶ポリマー)樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂でも良い。
【0021】
収納部14の段差にはピン端子37が設けられている。ピン端子37は収納部14の段差を貫通し、一端がケース11の上壁12から露出し、他端がケース11の下側に延びている。ピン端子37は、磁気センサを外部回路に電気的に接続するために使用される。ピン端子37の材質としては、銅合金材料にSnめっきを施したものが挙げられる。
【0022】
マグネット31は直方体形状の磁性体からなる。磁気抵抗素子33は、矩形状の素子本体と、素子本体の端部から延びているリード端子(図示せず)とから構成されている。磁気抵抗素子33は、磁界の変化に応じて抵抗値が変化する素子である。磁気抵抗素子33は、例えば、シリコン基板の一面にInSb膜を形成して作製される。
【0023】
図1(B)のように、ケース11の上壁12を挟んで、マグネット31は、ケース11の内側に設けられており、磁気抵抗素子33は、ケース11の外側に設けられている。より具体的には、マグネット31は一面が上壁12の内側に接するように、収納部14に収納されている。また、磁気抵抗素子33は、上壁12の外側に設けられている凹部に収納されている。磁気抵抗素子33の素子本体は、凹部の底面に接着層39を介して接着されており、リード端子はピン端子37の一端と電気的に接続されている。ここでは、凹部の深さは、磁気抵抗素子33と接着層39とを合わせた厚みより大きくなっている。マグネット31は、磁気抵抗素子33にバイアスの磁界を印加するために設けられる。そのため、マグネット31の磁気抵抗素子33に対向する部分の面積は、磁気抵抗素子33のマグネット31に対向する部分の面積よりも大きくなるように設計されている。
【0024】
なお、磁気抵抗素子33は、ホール素子等のその他の磁電変換素子でも良い。また、接着層39の材質は、外部からの機械振動を吸収できるような弾性率の高いシリコン樹脂等が好ましい。また、ケース11の上壁12の外側に直接接着されていても良い。その場合には、例えばケース11に位置決め用部材として、磁気抵抗素子33の厚みより高く突出した凸部を設けて、その凸部により磁気抵抗素子33を固定すれば良い。
【0025】
図2のように、カバー21は、ケース11の上壁12と複数の側壁のうち対向する2つの側壁13b、13dをそれぞれ覆う3つの部材から構成されている。本実施形態では、カバー21は1枚のステンレス製板材を折り曲げ加工することにより成形されているため、加工が容易である。なお、カバー21の材質は、ステンレス以外の金属や、導電性樹脂でも良い。
【0026】
図1(B)のように、ケース11の収納部14にはマグネット31を固定するために、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる樹脂35が充填されている。また、収納部14から漏れ出した樹脂35は、互いに密接するケース11とカバー21との間を毛細管現象により濡れ広がる。そのため、樹脂35はマグネット31を固定すると同時に、カバー21をケース11に接着する。さらに、従来のケースのように、カバー装着溝を設ける必要がないため、カバー装着溝の分だけケース11を小型化することができる。そのため、磁気センサ10を小型化することが可能である。
【0027】
カバー21は、ケース11の対向する2つの側壁13b、13dの全面を覆うように形成されることが好ましい。すなわち、図2に示すように、カバー21の高さHがケース11の側壁13a、13b、13c、13dの高さhよりも高いことが好ましい。これにより、樹脂35は、より確実にケース11とカバー21との間に濡れ広がる。
【0028】
カバー21に覆われるケース11の側壁13b、13dには、切り欠き16が設けられている。この切り欠き16により、樹脂35の量が少ない場合でも、樹脂35は確実にケース11から漏れ出すことができる。
【0029】
カバー21に覆われるケース11の側壁13b、13dには、樹脂35が多い場合でも、磁気抵抗素子33まで達することを防止するために、溝15が設けられている。毛細管現象により、ケース11とカバー21の間に濡れ広がった樹脂35は溝15に流れ込み、それ以上、磁気抵抗素子33側まで流れない。また、溝15は、側壁13b、13dにおいて、上壁12に近い側に設けることが好ましい。それにより、溝15に流れ込む樹脂35の量は少なくなり、ケース11とカバー21との接着面積も広くなる。なお、溝15は複数であっても良い。また、溝15は、側壁13b、13dと上壁12とが接する線と平行に設けられていることが好ましい。この場合には、溝15の形成が容易である。
【0030】
以下に、樹脂35が磁気抵抗素子33まで達した場合の不具合について説明する。図3は、本発明に係る磁気センサが紙幣識別装置に用いられた場合の断面図である。紙幣識別装置1は、磁気センサ10と、磁気センサ10を支持するステージ55と、磁気センサ10と対向する位置に設けられるローラー51と、を備えている。ローラーの回転方向は、矢印Rの方向である。紙幣等の被検出体53は、矢印Xの方向にローラー51の円周面に沿って搬送される。
【0031】
カバー21と磁気抵抗素子33との間の空隙がない場合には、ローラー51からの圧力が磁気抵抗素子33に直接的に伝搬して、圧力に起因したノイズが発生する。そのため、樹脂35が磁気抵抗素子33まで達して、空隙を埋めることを防止する必要がある。
【0032】
本発明に係る磁気センサは、一例として、以下のように製造される。
【0033】
最初に、射出成形法で作製されたPPS樹脂製のケースを用意する。その後、ケースにピン端子を圧入加工する。ピン端子には、銅合金材料にSnめっきを施した丸棒形状のものを用いる。
【0034】
次に、ケースの上壁の外側に磁気抵抗素子を設ける。まず、あらかじめ複数の抵抗素子を有する素子本体を用意する。そして、複数のリード端子の一端が共通に連結されている、銅材料にSnめっきを施した枠状フレームを用意する。そして、素子本体の端部をリード端子の他端に接続した後、枠状フレームからリード端子を切り離す。これにより、磁気抵抗素子が形成される。そして、ケースの凹部に、磁気抵抗素子をシリコン樹脂で接着固定する。その後、リード端子とピン端子とを360℃〜400℃で熱融着して電気的に接続する。
【0035】
次に、ケースの収納部の開口部分を上にした状態で、ケースの内側の収納部にマグネットを挿入する。
【0036】
次に、カバーをケースの上壁側から嵌合する。
【0037】
その後、ケースの内側から熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を充填して、120度の温度でケースとマグネット及びケースとカバーを同時に接着固定する。 収納部から漏れ出した樹脂は、互いに密接するケースとカバーとの間を毛細管現象により濡れ広がる。そのため、樹脂はマグネットを固定すると同時に、カバーをケースに接着できる。
【0038】
以上の方法で、磁気センサを製造する。
【0039】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態に係る磁気センサに用いられるケースとカバーを示す分解斜視図である。第1の実施形態と共通する部分については、記載を省略する。
【0040】
本実施形態では、切り欠きの代わりに、カバー21に覆われるケース11の側壁13b、13dに穴17が形成されている。穴17は、切り欠きの場合と同じく、ケース11の内側の収納部14からケース11とカバー21の間への樹脂35の流動を円滑にすることが可能である。
【0041】
(第3の実施形態)
図5は、本実施形態に係る磁気センサに用いられるケースとカバーを示す分解斜視図である。
【0042】
図5のように、ケースの溝と同様の効果を得る構造として、カバー21の側壁13b、13dを覆う部分に少なくとも1個以上の穴23が設けられていても良い。穴23の形状は、丸や角等、どんな形状でも良く、穴23の縁でケース11とカバー21の間隔が広がり、表面張力により樹脂の流入が停止する。ケース11の溝とカバー21の穴23を同時に設ける場合には、樹脂の流入を効果的に制御することが可能であり、好ましい。
【0043】
また、ケースの溝と同様の効果を得る構造として、カバー21の側壁13b、13dを覆う部分に、カバー21と側壁13b、13dの間隔を広げるように溝を形成しても良い。溝のところでケース11とカバー21の間隔が広がり、表面張力により樹脂の流入が停止する。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 紙幣識別装置
10 磁気センサ
11 ケース
12 上壁
13a、13b、13c、13d 側壁
14 収納部
15 溝
16 切り欠き
17 穴
21 カバー
23 穴
31 マグネット
33 磁気抵抗素子
35 樹脂
37 ピン端子
39 接着層
51 ローラー
53 被検出体
55 ステージ
110 ケース
111 磁気抵抗素子
114 マグネット
115 カバー
116 樹脂
121 カバー装着溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁と、前記上壁に対して垂直方向に延びる複数の側壁と、を有し、内側に収納部を有する直方体状のケースと、
前記収納部に設けられているマグネットと、
前記ケースの上壁の外側に設けられている磁電変換素子と、
前記上壁と前記複数の側壁とを覆うように設けられているカバーと、
を備え、
前記ケースの前記収納部と前記マグネットの間及び前記ケースと前記カバーの間に充填された同一の樹脂により、前記ケースと前記マグネット及び前記ケースと前記カバーが接着固定されていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記カバーが前記上壁と前記複数の側壁のうち対向する2つの側壁とを覆うように設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記カバーが前記ケースの対向する2つの側壁の全面を覆うように設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記カバーに覆われる前記ケースの側壁に切り欠きが設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記カバーに覆われる前記ケースの側壁に穴が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記カバーに覆われる前記ケースの側壁に樹脂の流動をせきとめる溝が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記溝は、前記側壁において、前記上壁に近い側に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記溝は、前記側壁と前記上壁とが接する線と平行に設けられていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記カバーの前記ケースの側壁を覆う部分に、樹脂の流動をせきとめる少なくとも1個以上の穴が設けられていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−98095(P2012−98095A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244756(P2010−244756)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】