説明

磁気テープ装置およびそのサーボパターン書き戻し方法

【課題】磁気テープのサーボバンドの障害時、壊れたサーボパターンを書き戻すことによって自己修復を可能にする。
【解決手段】開示される磁気テープ装置は、第1のガイドローラと第2のガイドローラによって磁気テープを案内して両ガイドローラの中間に配置された磁気ヘッドアッセイ21の面上を走行させ、磁気ヘッドアッセイの面に配置されたサーボ用ヘッド1・41,2・42によって磁気テープ上のサーボバンドから読み出したサーボ用データに応じて磁気テープの駆動を制御して、磁気ヘッドアッセイの面に配置されたリード/ライトヘッド43によって、データバンドにおける複数のデータトラックのリード/ライトを行うとともに、磁気ヘッドアッセイ上にサーボバンドに対応してサーボ書き戻し用ヘッド1・44,2・45を備え、サーボバンドの障害時、サーボ書き戻し用ヘッドによってサーボ用データを書き戻して障害サーボバンドを復旧するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気テープのサーボ情報を利用してリード/ライト動作を行う磁気テープ装置において、サーボバンドの障害時に、自動的に障害箇所を復旧することが可能な磁気テープ装置、およびそのサーボパターン書き戻し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーペンタイン方式シングルリール磁気テープ装置においては、1個のリール(ファイルリール)のみを有するカートリッジを装填して、磁気テープ装置側に設けられた巻き取り用のマシンリールとの間で、サーボ情報に応じて磁気テープを走行させてディジタルデータの記録,再生を行う。この際、磁気テープの先頭と終端において磁気トラックを順次移動させながら、ファイルリールとマシンリールとの間で磁気テープを複数回往復させてリード/ライトを行う。磁気テープは、複数の磁気トラックに対応する複数対のリード/ライトヘッドを備えた磁気ヘッドアッセイ(磁気ヘッドアッセンブリ)に対して、磁気テープの長手方向に蛇行しながら移動するように構成されている。
【0003】
上述した従来の磁気テープ装置においては、サーボ情報を記録したサーボバンドの障害等によってサーボ信号が出力不足等の状態になった場合、磁気ヘッドアッセイ上の磁気ヘッドがデータトラックをトラッキングすることができなくなるため、磁気テープに対するデータの読み書きを正常に行うことが不可能になった。
【0004】
これに対して特許文献1においては、磁気ヘッドを備えた回転ドラムを挟んで、磁気テープ1の走行方向に対して互いに逆方向に傾いた第1ガイドローラ5,6と第2ガイドローラ7,8とを備え、第1ガイドローラ5,6の回転軸の下端を上流側に傾けることよって、その上部のフランジ9,10に磁気テープ1の上エッジを当接させ、第2ガイドローラ7,8の回転軸の下端を下流側に傾けることによって、その下部のフランジ11,12に磁気テープ1の下エッジを当接させることによって、磁気テープ1の位置を磁気ヘッドに対して規制できるようにした磁気テープ記録再生装置が開示されている。
【0005】
このように、特許文献1記載の技術においては、磁気ヘッドに対して走行する磁気テープの位置を規制することによって、磁気テープのエッジにダメージを与えることなしに、磁気テープの記録再生時の特性を向上させることは記載されているが、磁気テープの走行を制御するためのサーボバンドにおける障害の発生によって、磁気ヘッドがデータトラックをトラッキングできないために、磁気テープのデータの読み書きが不可能になった場合に、サーボデータを書き戻してサーボバンドの障害を復旧することによって、データの記録,再生を可能にする技術についてはなんら記載されていない。
【0006】
また、特許文献2においては、ヘッド変位検出手段15によって得られたヘッド変位を、位置決めコントローラ8内のメモリ18にある基準位置からの絶対位置23として記憶し、テープ上のトラック位置をこの絶対位置23に対応づけることにより、サーボヘッド12がサーボトラック11を読めない状態でも、トラック位置とヘッド位置との偏差を計算して、アクチュエータ7に対する駆動指令信号を生成する。サーボトラック11からサーボ信号を得ることができる場合には、信号切り換え部47によってサーボ信号による制御に切り換えて、高精度の位置決めを行う磁気テープ装置及び磁気テープ装置の制御方法が開示されている。
【0007】
このように、特許文献2記載の技術においては、磁気テープ装置において、テープとヘッド間の摩擦の影響を排除し、サーボトラックが読めない状態でも、高速かつ高精度でヘッド幅方向の位置決めを可能にすることが記載されているが、磁気テープの走行を制御するためのサーボバンドにおける障害の発生によって、磁気ヘッドがデータトラックをトラッキングできないために、磁気テープのデータの読み書きが不可能になった場合に、サーボデータを書き戻してサーボバンドの障害を復旧することによって、データの記録,再生を可能にする技術についてはなんら記載されていない。
【0008】
さらに、特許文献3においては、データ用記録再生素子のほかに基準トラックを書き込むための基準トラック記録素子対と、基準トラックを位置信号に変換するための基準トラック再生素子対とを磁気ヘッド上に備えている。基準トラック再生素子対は、テープ幅方向にデータトラックピッチの分だけずれて配置されており、これを用いてデータトラックピッチの2倍の幅を持つ基準トラックへ位置決めを行う。基準トラック記録素子対は、基準トラック再生素子対と連携してデータを記録しながら、基準トラックを生成できるように磁気ヘッド上に配置されており、各基準トラック記録素子の実効幅は基準トラックと同じである磁気テープ装置が開示されている。
【0009】
このように、特許文献3記載の技術においては、磁気テープ装置において、磁気ヘッド位置決め用の基準トラックを自己生成しながらデータを記録できることが記載されているが、磁気テープの走行を制御するためのサーボバンドにおける障害の発生によって、磁気ヘッドがデータトラックをトラッキングできないために、磁気テープのデータの読み書きが不可能になった場合に、サーボデータを書き戻してサーボバンドの障害を復旧することによって、データの記録,再生を可能にする技術についてはなんら記載されていない。
【特許文献1】特開2002−312995号公報(図6(a),(b) 、〔0003〕)
【特許文献2】特開平08−255326号公報(〔0096〕〜〔0098〕)
【特許文献3】特開平11−203640号公報(図2、〔0007〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の磁気テープ装置では、サーボバンドが障害となった場合、磁気ヘッドアッセイ上の磁気ヘッドがデータトラックをトラッキングできないため、データの再生が不可能であった。
この発明は上述の事情に鑑みてなされたものであって、サーボバンドの障害時、壊れたサーボパターンを書き戻すことによって、障害となったサーボバンドを修復してデータの再生を可能にする、磁気テープ装置およびそのサーボパターン書き戻し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は磁気テープ装置に係り、第1のガイドローラと第2のガイドローラによって磁気テープを案内して両ガイドローラの中間に配置された磁気ヘッドアッセイの面上を走行させ、該磁気ヘッドアッセイの面に配置されたサーボ用ヘッドによって上記磁気テープ上のサーボバンドから読み出したサーボ用データに応じて上記磁気テープの駆動を制御するとともに、上記磁気ヘッドアッセイの面に配置されたリード/ライトヘッドによって、データバンドにおける複数のデータトラックのリード/ライトを行う磁気テープ装置において、上記磁気ヘッドアッセイ上に上記サーボバンドに対応してサーボ書き戻し用ヘッドを備え、上記サーボバンドの障害時、上記サーボ書き戻し用ヘッドによってサーボ用データを書き戻して障害サーボバンドを復旧できるように構成されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の磁気テープ装置に係り、上記サーボ用データの書き戻し時、上記第1のガイドローラと第2のガイドローラの回転軸を同方向に傾けることによって、磁気テープのエッジをそれぞれのガイドローラに設けられたフランジに押し当てるようにして、上記磁気ヘッドアッセイと磁気テープとの相対位置を確定して安定走行させることができるように構成されていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の磁気テープ装置に係り、上記磁気テープのエッジを押し当てるフランジが上記各ガイドローラの下端のフランジであることを特徴としている。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一記載の磁気テープ装置に係り、上記サーボバンドが上記データバンドの上下に配置されていて、上記磁気ヘッドアッセイ上のサーボ用ヘッドが上記サーボバンドに対応して上下の2つからなるとともに、上記データバンドが上記上下のサーボバンド間に配置された複数のデータトラックからなり、上記磁気ヘッドアッセイ上のリード/ライトヘッドが上記複数のデータトラックに対応して複数対からなることを特徴としている。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の磁気テープ装置に係り、上記サーボバンドが磁気テープ上に複数配置されているとともに、それぞれの隣り合った上下の2つのサーボバンドの間にそれぞれデータバンドを有し、上記磁気ヘッドアッセイが上下方向に移動することによって、上記磁気ヘッドアッセイ上の上下のサーボ用ヘッドが、いずれかの組の上下の2つのサーボバンドに対応する位置に配置され、上記複数対のリード/ライトヘッドが、上記上下の2つのサーボバンド間に設けられたデータバンドにおける複数のデータトラックにそれぞれ対応する位置に配置されるように構成されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の磁気テープ装置に係り、上記複数対のリード/ライトヘッドが、上記磁気テープの走行方向に応じて、対をなすいずれか一方のヘッドがリード動作を行い、他方のヘッドがライト動作を行うように構成されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一記載の磁気テープ装置に係り、上記磁気テープ装置が、サーペンタイン方式シングルリール磁気テープ装置であることを特徴としている。
【0018】
また、請求項8記載の発明は磁気テープ装置のサーボパターン書き戻し方法に係り、請求項1乃至7のいずれか一記載の磁気テープ装置において、磁気テープに対するリード/ライト動作時に、磁気テープを駆動するサーボ系にエラーが発生し、リトライ処理によってサーボ系エラーを復旧できなかった場合、エラー箇所の特定とエラー種類の特定を行って、サーボ信号の出力不足によるエラーの場合は、エラー箇所のサーボパターンの書き戻し処理を行い、その他のサーボ系エラーの場合は、エラー発生に基づく異常終了を表示して上記リード/ライト動作を異常終了することを特徴としている。
【0019】
また、請求項9記載の発明は、請求項8記載の磁気テープ装置のサーボパターン書き戻し方法に係り、サーボ信号の出力不足によるサーボ系エラーの発生時、データバンドの上下のいずれかのサーボバンドが読み取れる場合は、正常に読み取れる方のサーボパターンを参考に障害となっているサーボパターンを書き戻し、データバンドの上下両方のサーボバンドが読み取れない場合は、ガイドローラを傾けて磁気テープのエッジを上下のいずれかのフランジに押し当てることによって磁気ヘッドアッセイと磁気テープとの相対位置を確定して磁気テープを安定走行させた状態で、上記データバンドの障害箇所の前後のサーボパターンを参考に障害となっているサーボパターンを書き戻すことを特徴としている。
【0020】
また、請求項10記載の発明は、請求項9記載の磁気テープ装置のサーボパターン書き戻し方法に係り、上記磁気テープのエッジを押し当てるフランジが上記各ガイドローラの下端のフランジであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の磁気テープ装置およびそのサーボパターン書き戻し方法では、サーボバンドの障害時、磁気ヘッドアッセイに設けられた上下2つのサーボ書き戻し用ヘッドによって、上下いずれかのサーボバンドが正常に読み出せる場合は、読み出し可能なサーボバンドのサーボパターンを基に、壊れたサーボパターンを書き戻すことによって、障害となったサーボバンドを復旧することができる。
また、上下両方のサーボバンドが壊れた場合は、アクチュエータでガイドローラを傾けてテープエッジをガイドローラの上または下のフランジに押し当てることによって、磁気ヘッドアッセイと磁気テープとの相対位置を確定し磁気テープを安定走行させた状態で、障害箇所の前後のサーボパターンを基に、壊れたサーボパターンを書き戻すことによって、障害となったサーボバンドを復旧することができる。
【0022】
このように、本発明の磁気テープ装置およびそのサーボパターン書き戻し方法では、障害となったサーボバンドを自己修復することができるので、データバンドのデータを失う危険を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1のガイドローラと第2のガイドローラによって磁気テープを案内して両ガイドローラの中間に配置された磁気ヘッドアッセイの面上を走行させ、磁気ヘッドアッセイの面に配置されたサーボ用ヘッドによって磁気テープ上のサーボバンドから読み出したサーボ用データに応じて磁気テープの駆動を制御するとともに、磁気ヘッドアッセイの面に配置されたリード/ライトヘッドによって、データバンドにおける複数のデータトラックのリード/ライトを行う磁気テープ装置において、磁気ヘッドアッセイ上にサーボバンドに対応してサーボ書き戻し用ヘッドを備え、サーボバンドの障害時、サーボ書き戻し用ヘッドによってサーボ用データを書き戻して障害サーボバンドを復旧できるように構成する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の一実施例であるサーペンタイン方式シングルリール磁気テープ装置の全体構成を示す斜視図、図2は、磁気テープ装置にカートリッジを投入した状態を示す上面図、図3は、ガイドローラと、磁気テープと、磁気ヘッドアッセイとの相互の位置関係を示す立面図、図4は、磁気ヘッドアッセイの磁気テープ接触面に設けられたヘッドの構成を示す図、図5は、磁気テープにおける、サーボ情報用トラックとデータ記録用トラックとの配置を示す図、図6は、サーボバンドによるデータバンドの位置決めを説明するための図、図7は、本実施例の磁気テープ装置における、リード/ライト時に発生したサーボ系エラーの処理方法を示すフローチャートである。
【0025】
図1は、この例のサーペンタイン方式シングルリール磁気テープ装置(以下、単に磁気テープ装置という)の全体構成を斜視図によって示したものである。
この例の磁気テープ装置11は、マシンリール12と、ガイドローラ13a,13bと、スレッディングアーム14とから概略構成されている。磁気テープ装置11の動作時には、ファイルリール(後述)を内蔵するカートリッジ15を、磁気テープ装置11のカートリッジ投入部16に装填するようになっている。
【0026】
マシンリール12は、ファイルリールのデータを一時的に保存するとともに、保存したデータをファイルリールに書き込むために用いられるものである。ガイドローラ13a,13bは、その間に磁気テープ(後述)を掛け渡して走行させる機能を有している。ガイドローラ13a,13bの間には、磁気ヘッドアッセイ(後述)が設けられていて、その表面に配置された複数対のリード/ライトヘッド(後述)が磁気テープに接触することによって、データの読み書きが行われる。スレッディングアーム14は、磁気テープ装置11の動作時、カートリッジ15に内蔵されたファイルリールに巻かれた磁気テープの先頭を掴んで、ガイドローラ13a,13bを経てマシンリール12に渡す作用を行う。
【0027】
図2は、磁気テープ装置にカートリッジを投入した状態を上面図によって示したものであって、マシンリール12と、ガイドローラ13a,13bと、カートリッジ15と、磁気ヘッドアッセイ21と、カートリッジ15内のファイルリール22と、磁気テープ23とが示されている。
磁気テープ23は、ファイルリール22とマシンリール12との間で、ガイドローラ13a,13bにガイドされた状態で、一方のリールから巻き戻されて他方のリールに巻き取られながら、往復して走行できるようになっている。磁気ヘッドアッセイ21は、ガイドローラ13a,13bの中間にあって、その面に配置された磁気ヘッド(後述)が、走行する磁気テープ23の面に接触するような状態に設置されている。
【0028】
図3は、ガイドローラと、磁気テープと、磁気ヘッドアッセイとの相互の位置関係を立面図によって示したものであって、ガイドローラ13a,13bと、磁気ヘッドアッセイ21と、磁気テープ23とが示されている。
ガイドローラ13a,13bは同一方向に回転して磁気テープ23を走行させるが、リード時とライト時とでは、磁気テープ23の走行方向が反対になる。磁気ヘッドアッセイ21は、矢印で示すように、上下方向に移動することによって、上部のサーボ用ヘッドと下部のサーボ用ヘッド(後述)が、磁気テープ23上のいずれかの隣り合った上下2つのサーボバンド(後述)のトラッキングを行うとともに、磁気ヘッドアッセイ21に設けられた複数のリード/ライトヘッド(後述)が、隣り合った上下2つのサーボバンド間に設けられたデータバンド(後述)を構成する複数のトラックに対するトラッキングを行って、読み書きを行うことができるようになっている。
【0029】
図4は、磁気ヘッドアッセイの磁気テープ接触面に設けられたヘッドの構成を示したものであって、(a)は磁気ヘッドアッセイ21の磁気テープ接触面を示し、(b)は(a)に示す磁気テープ接触面のA部に設けられた磁気ヘッドの配置を示している。
磁気ヘッドアッセイ21の磁気テープ接触面には、サーボ用ヘッド1・41,2・42と、複数対からなるリード/ライトヘッド43と、サーボ書き戻し用ヘッド1・44,2・45とが設けられている。
上部に設けられたサーボ用ヘッド1・41と、下部に設けられたサーボ用ヘッド2・42とは、磁気テープ23上の隣り合った上下2つのサーボバンド(後述)から、磁気テープの駆動制御のために必要なサーボ情報を読み出す。サーボ用ヘッド1・41,2・42との間に設けられた複数対のリード/ライトヘッド43は、磁気テープ上の対応する複数のデータバンド(後述)に対するデータの読み書きを行う。リード/ライトヘッド43は、左右に配置された一組のヘッドが一対となり、ライト後にベリファイリード(確認読み出し)を行うために、テープの走行方向に応じてリード動作を行うヘッドとライト動作を行うヘッドとが定まる。上部に設けられたサーボ書き戻し用ヘッド1・44と、下部に設けられたサーボ書き戻し用ヘッド1・44とは、磁気テープ23上の隣り合った上下2つのサーボバンドに対するサーボ情報の書き戻しを行う。
【0030】
図5は、磁気テープ23上におけるサーボ情報用トラックと、データ情報用トラックとの配置を示したものである。
磁気テープ上には例えば図示のように、サーボバンド0・55〜4・59と、隣り合った上下2つのサーボバンド間にそれぞれ配置されたデータバンド0・51〜3・54とが設けられている。
磁気テープ上のトラックに対する磁気ヘッドアッセイ21の追従は、上下の2つのサーボ用ヘッド1・41,2・42によって、隣り合った上下2つのサーボバンド(例えばサーボバンド0・55と1・56)のサーボ情報を利用して行われる。この際、リード/ライトされるデータバンドは、隣り合った上下2つのサーボバンドの中間の領域のデータバンドであって、上述の例の場合は、リード/ライトされるデータバンドはサーボバンド0・55,1・56によって挟まれたデータバンド0・51となる。
【0031】
図6は、サーボバンドによるデータバンドの選択(位置決め)を説明するものであって、サーボバンドは、図示のように磁化パターン61からなるサーボトラックの配列から構成されている。
サーボトラックは、対応するデータトラックにおけるリード/ライトヘッドの位置,磁気テープ23の速度,縦方向の位置を取得するための情報を提供するものであって、例えばトラック0・62〜5・63で示すデータトラックの場合、ヘッド位置は、A1,B1、A2,B2、A3,B3、A4,B4、A5,B5によって示されるパルス時間を測定することによって取得され、テープ速度は、4つのタイミング信号A1,C1、A2,C2、A3,C3、A4,C4を測定することにによって取得され、リード/ライトを行うデータトラック0・62〜5・63は、交叉するサーボトラックによって示される縦方向の位置によって定まる。
そこで、図6に示すA:B比について、目的とする値と、上述のようにして実際に得られた値とが一致するようにサーボ制御を行うことによって、常に正しくトラック追従を行わせることが可能となる。ここでAは、例えばA1,B1の値であり、Bは、A1,C1の値である。
【0032】
なお、磁気テープ装置内における、磁気テープ上の記録信号からデータを復元する信号処理部(不図示)は、磁気ヘッドアッセイ21上の、データのリード/ライト動作が行われているリード/ライトヘッドの入出力信号を、図示されない外部入出力端子を経て、磁気テープに対するデータの読み出し,書き込みを行おうとする、磁気テープ装置以外の外部装置に接続する。これによって外部装置は、磁気テープに対するデータの読み出し,書き込みを必要とする場合に、リード動作が行われているデータトラックからの読み出しデータを受信し、ライト動作が行われているデータトラックに対する書き込みデータを送信することができる。
【0033】
図7は、この例の磁気テープ装置において、リード/ライト時にサーボ系エラーが発生した場合の処理方法をフローチャートによって示したものである。
磁気テープ装置の動作スタート(81)後、リード・ライト動作(82)時に、サーボ系エラーが発生したが、通常リトライで復旧できる場合(83)は、通常のリトライ処理を行って(84)、正常にリード・ライトを完了した場合(85)は、正常終了(86)となる。正常にリード・ライトを完了しない場合(85)は、リード・ライト動作(82)に戻って再度チェックを行う。
なお、サーボ系エラーであることは、サーボ信号が正しい周期で検出できないことや、サーボ信号出力が弱いこと等、エラーの種類に応じて判断される。
【0034】
サーボ系エラーが発生したが、通常リトライで復旧できない場合(83)は、エラーが発生した周辺のサーボエリアを分析して、エラーの種類,エラー箇所を特定する(87)。サーボ信号の出力不足によるエラーである場合(88)は、サーボパターンの書き戻し(後述)を行って(89)、正常終了となり(8A)、サーボ信号の出力不足によるエラーでない場合(88)は、リード・ライトでエラーが発生し、処理が異常終了したことをユーザーに知らせて(8B)、異常終了する(8C)。
なお、エラー箇所の特定は、サーボトラックに埋め込まれている、テープ走行方向(長手方向)の位置情報によって行われる。
【0035】
以上、説明したように、この例の磁気テープ装置およびそのサーボパターン書き戻し方法によれば、サーボバンドに障害が発生した場合に、サーボパターンを書き戻すことによって自己修復することができるので、磁気テープ装置において、磁気テープのデータバンドに記録されたデータが失われる恐れを少なくすることができる。
【実施例2】
【0036】
図8は、本発明の第2実施例である磁気テープ装置において、磁気テープの位置を規制するための構成を示す図、図9は、本実施例の磁気テープ装置における、リード/ライト時に発生したサーボ系エラーの処理方法を示すフローチャートである。
【0037】
図8は、正確にデータの読み書きを行うために、磁気テープが磁気ヘッドアッセイを通過する際に、なるべく安定して走行できるようにするための構成を示したものであって、(a)は上面図、(b)は立面図、(c)は側面図をそれぞれ示している。これ以外の磁気テープ装置の構成は、第1実施例の場合と同様である。
【0038】
図示のように、磁気テープ23は、ガイドローラ13a,13bの間を通過する際に、その上下のエッジの位置を、ガイドローラ13a,13bに設けられた上側フランジ71と下側フランジ72によって制限されるように構成されている。
しかしながら、磁気テープ23が、ガイドローラ13a,13bの間を円滑に通過することができるようにするためには、上側フランジ71と下側フランジ72によって制限される幅が、磁気テープ23の幅に対してある程度の余裕を持っていることが必要である。
そのため、磁気テープ23が走行中に、上側フランジ71と下側フランジ72によって制限される範囲内で微小な上下位置の変動を生じることがあるが、これによって、磁気テープ23上のデータトラックと磁気ヘッドアッセイ21上のリード/ライトヘッドとの間で位置ずれを生じて、正しくリード/ライトを行うことができなくなることがある。
【0039】
このような位置ずれを防止するためには、ガイドローラ13a,13bに対してアクチュエータ(不図示)を備え、ガイドローラ13a,13bの回転軸を磁気テープ23の走行方向に対して同方向に多少傾けることによって、磁気テープ23のエッジがガイドローラの上下のいずれかのフランジに対して押し当てられた状態で磁気テープ23を走行させることによって磁気テープ23上のデータトラックと磁気ヘッドアッセイ21上のリード/ライトヘッドとの間の位置ずれの発生を防止することができる。
この場合、磁気テープ23のエッジを押し当てるのは、上側フランジ71と下側フランジ72のいずれでもよいが、磁気テープ23の自重を考慮した場合は、下側フランジ72側に押し当てる方が好適である。
【0040】
磁気テープ装置1はリムーバブル装置であって、同じ規格のカートリッジ15であれば、どれでもリード/ライトできなければならないが、磁気テープ装置とカートリッジとの適合性が不十分な場合は、磁気テープの走行が安定しない組み合わせも存在し得る。
しかしながら、このような場合でも、ガイドローラ13a,13bを傾けて、磁気テープ1と磁気ヘッドアッセイ21との相対位置を確定することによって、磁気テープを安定走行させることができる。
【0041】
図9は、この例の磁気テープ装置において、リード/ライト時にサーボ系エラーが発生した場合の処理方法をフローチャートによって示したものである。
磁気テープ装置の動作スタート(90)後、上下の2つのサーボバンドのいずれか一方が読める場合(91)は、正常に読める方のサーボパターンを参考に、壊れているサーボパターンを書き戻す(92)。そして、上下の2つのサーボバンドが正常に読めるようになったら(93)、正常終了し(94)、上下の二つのサーボバンドが正常に読めるようにならない(93)ときは、ステップ91に戻って、再度チェックする。
この際、正常に読める方のサーボパターンを参考にする方法としては、具体的には、上下の二つのサーボバンドのサーボパターンは同一なので、正常に読める方のサーボパターンを使用して、壊れている方のサーボバンドを修復すればよい。
【0042】
上下の2つのサーボバンドが両方とも読めない場合(91)は、ガイドローラ13a,13bの回転軸を傾けて磁気テープ23のエッジを例えば下側フランジ72に押し当てることによって、磁気ヘッドアッセイ21と磁気テープ23との相対位置を固定して(95)安定走行させた状態で、エラー発生箇所の前後のサーボパターンを参考に、壊れているサーボパターンを修復する(96)。そして、上下の2つのサーボバンドが正常に読めるようになった(93)ときは正常終了し(94)、上下の2つのサーボバンドが正常に読めない(93)ときは、サーボバンドが両方とも正常に読めない回数が規定回数以上でない(97)ときは、ステップ91に戻って再度チェックを行い、両方正常に読めない回数が規定回数以上(97)のときは異常終了する(98)。
この際、エラー発生箇所の前後のサーボパターンを参考にする方法としては、具体的には、サーボパターンは、同じパターンが繰り返し記録されているので、壊れているサーボパターンと、その前後のサーボパターンとを繰り返して読み取り、前後の正常なサーボパターンからエラー発生箇所のサーボパターンを復元して、壊れているサーボバンドを修復すればよい。なお、この場合は、長い区間のサーボパターンが連続して壊れているときは、修復が困難になることがあり得る。
【0043】
以上、説明したように、この例の磁気テープ装置およびそのサーボパターン書き戻し方法によれば、サーボバンドに障害が発生した場合に、サーボパターンを書き戻すことによって自己修復する際に、ガイドローラ13a,13bの回転軸を傾けて磁気テープ23のエッジをフランジに押し当てることによって、磁気テープ走行時における磁気ヘッドアッセイと磁気テープとの相対位置関係を安定化させるので、サーボバンドの障害修復を確実に行うことができ、従って磁気テープ装置において、磁気テープのデータバンドに記録されたデータが失われる恐れを少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、サーペンタイン方式シングルリール磁気テープ装置に適用して好適なものであるが、この場合に限らず、磁気テープをガイドする二つのガイドローラ間に、磁気ヘッドを上下に移動可能に支持した磁気テープ装置であれば、利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例であるサーペンタイン方式シングルリール磁気テープ装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】磁気テープ装置にカートリッジを投入した状態を示す上面図である。
【図3】ガイドローラと、磁気テープと、磁気ヘッドアッセイとの相互の位置関係を示す立面図である。
【図4】磁気ヘッドアッセイの磁気テープ接触面に設けられたヘッドの構成を示す図である。
【図5】磁気テープにおける、サーボ情報用トラックとデータ記録用トラックとの配置を示す図である。
【図6】サーボバンドによるデータバンドの位置決めを説明するための図である。
【図7】同実施例の磁気テープ装置における、リード/ライト時に発生したサーボ系エラーの処理方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施例である磁気テープ装置における、磁気テープの位置を規制するための構成を示す図である。
【図9】同実施例の磁気テープ装置における、リード/ライト時に発生したサーボ系エラーの処理方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
11 磁気テープ装置
12 マシンリール
13a,13b ガイドローラ
15 カートリッジ
16 カートリッジ投入部
21 磁気ヘッドアッセイ
22 ファイルリール
23 磁気テープ
41 サーボ用ヘッド1
42 サーボ用ヘッド2
43 リード/ライトヘッド
44 書き戻し用ヘッド1
45 書き戻し用ヘッド2
51 データバンド0
52 データバンド1
53 データバンド2
54 データバンド3
55 サーボバンド0
56 サーボバンド1
57 サーボバンド2
58 サーボバンド3
59 サーボバンド4
61 磁化パターン
62 データトラック0
63 データトラック5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガイドローラと第2のガイドローラによって磁気テープを案内して両ガイドローラの中間に配置された磁気ヘッドアッセイの面上を走行させ、該磁気ヘッドアッセイの面に配置されたサーボ用ヘッドによって前記磁気テープ上のサーボバンドから読み出したサーボ用データに応じて前記磁気テープの駆動を制御するとともに、前記磁気ヘッドアッセイの面に配置されたリード/ライトヘッドによって、データバンドにおける複数のデータトラックのリード/ライトを行う磁気テープ装置において、
前記磁気ヘッドアッセイ上に前記サーボバンドに対応してサーボ書き戻し用ヘッドを備え、前記サーボバンドの障害時、前記サーボ書き戻し用ヘッドによってサーボ用データを書き戻して障害サーボバンドを復旧できるように構成されていることを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項2】
前記サーボ用データの書き戻し時、前記第1のガイドローラと第2のガイドローラの回転軸を同方向に傾けることによって、磁気テープのエッジをそれぞれのガイドローラに設けられたフランジに押し当てるようにして、前記磁気ヘッドアッセイと磁気テープとの相対位置を確定して安定走行させることができるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気テープ装置。
【請求項3】
前記磁気テープのエッジを押し当てるフランジが前記各ガイドローラの下端のフランジであることを特徴とする請求項2記載の磁気テープ装置。
【請求項4】
前記サーボバンドが前記データバンドの上下に配置されていて、前記磁気ヘッドアッセイ上のサーボ用ヘッドが前記サーボバンドに対応して上下の2つからなるとともに、前記データバンドが前記上下のサーボバンド間に配置された複数のデータトラックからなり、前記磁気ヘッドアッセイ上のリード/ライトヘッドが前記複数のデータトラックに対応して複数対からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一記載の磁気テープ装置。
【請求項5】
前記サーボバンドが磁気テープ上に複数配置されているとともに、それぞれの隣り合った上下の2つのサーボバンドの間にそれぞれデータバンドを有し、前記磁気ヘッドアッセイが上下方向に移動することによって、前記磁気ヘッドアッセイ上の上下のサーボ用ヘッドが、いずれかの組の上下の2つのサーボバンドに対応する位置に配置され、前記複数対のリード/ライトヘッドが、前記上下の2つのサーボバンド間に設けられたデータバンドにおける複数のデータトラックにそれぞれ対応する位置に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の磁気テープ装置。
【請求項6】
前記複数対のリード/ライトヘッドが、前記磁気テープの走行方向に応じて、対をなすいずれか一方のヘッドがリード動作を行い、他方のヘッドがライト動作を行うように構成されていることを特徴とする請求項5記載の磁気テープ装置。
【請求項7】
前記磁気テープ装置が、サーペンタイン方式シングルリール磁気テープ装置であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一記載の磁気テープ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一記載の磁気テープ装置において、磁気テープに対するリード/ライト動作時に、磁気テープを駆動するサーボ系にエラーが発生し、リトライ処理によってサーボ系エラーを復旧できなかった場合、エラー箇所の特定とエラー種類の特定を行って、サーボ信号の出力不足によるエラーの場合は、エラー箇所のサーボパターンの書き戻し処理を行い、その他のサーボ系エラーの場合は、エラー発生に基づく異常終了を表示して前記リード/ライト動作を異常終了することを特徴とする磁気テープ装置のサーボパターン書き戻し方法。
【請求項9】
サーボ信号の出力不足によるサーボ系エラーの発生時、データバンドの上下のいずれかのサーボバンドが読み取れる場合は、正常に読み取れる方のサーボパターンを参考に障害となっているサーボパターンを書き戻し、データバンドの上下両方のサーボバンドが読み取れない場合は、ガイドローラを傾けて磁気テープのエッジを上下のいずれかのフランジに押し当てることによって磁気ヘッドアッセイと磁気テープとの相対位置を固定して磁気テープを安定走行させた状態で、前記データバンドの障害箇所の前後のサーボパターンを参考に障害となっているサーボパターンを書き戻すことを特徴とする請求項8記載の磁気テープ装置のサーボパターン書き戻し方法。
【請求項10】
前記磁気テープのエッジを押し当てるフランジが前記各ガイドローラの下端のフランジであることを特徴とする請求項9記載の磁気テープ装置のサーボパターン書き戻し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−198277(P2008−198277A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31352(P2007−31352)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】