説明

磁気ディスクの検査方法及びその装置

【課題】
サーティファイテスト時に、磁気ヘッドの浮上量が最適になるように磁気ヘッドの浮上量を制御しながら、よりSN比の高い信号を検出して高感度にサーティファイテストを行うことを可能にする。
【解決手段】
ヒータを内蔵した磁気ヘッドを用いて磁気ディスクのサーティファイテストを行う磁気ディスクの検査方法において、磁気ヘッドを用いて磁気ディスクにデータを書込む工程と、磁気ディスクに書込んだデータを磁気ヘッドで読取る工程とを含み、データを書込む工程とデータを読み込む工程とにおいて磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を切替えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクのサーティファイテストを行う磁気ディスクの検査方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの記録密度の高密度化に伴い、高速回転するディスク表面に浮上する磁気ヘッドの浮上量(浮上高さ)は1.5〜1.8nmのレベルになり、更に高密度化が進むと、1nm以下のレベルになってくる。このような極微小な浮上量が要求される磁気ディスクにおいては、表面の微細な突起について厳しく管理され、グライドハイトテストによりヘッド浮上時に衝突を起こすような突起が磁気ディスクの表面に存在しないことを確認している。
【0003】
磁気ディスクの最終的な検査工程であるサーティファイテストにおいては、グライドハイトテストで合格したディスクを対象にして、テスト用ヘッドを用いてディスクにデータを書込み、この書込んだデータを読み出すテスト(リード・ライトテスト)を行う。
【0004】
このサーティファイテストの主な項目としては、磁気ディスク上の複数の箇所において電気特性を調べるパラメトリックテストと、ディスク全面に亘って行う欠陥テストとがある。
【0005】
このようなグライドハイトテストとサーティファイテストとを1つのテストヘッドからの出力を用いて同時に実施することについて、特許文献1に記載されている。
【0006】
又、特許文献2には、グライドハイトテストの結果に応じて、微小表面欠陥の数が少ない磁気ディスクは細かいトラックピッチでサーティファイテストを行い、微小表面欠陥数が多い磁気ディスクは粗い検査トラックピッチでサーティファイテストを行うことについて記載されている。
【0007】
更に、特許文献3には、ヘッドの突き出し量を制御する発熱素子を有する磁気ヘッドを用いて設定された浮上量に制御する浮上量制御を行いながら低スペーシング浮上させて信号品質を向上させ、発熱素子を加熱して設定された浮上量と異なる浮上量になるように制御しながらヘッドで読み取った信号から欠陥を検査することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−259401号公報
【特許文献2】特開2001−143201号公報
【特許文献3】特開2009−199660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
磁気ディスクの記録密度の高密度化に伴い、サーティファイテストの高感度化のニーズが高まってきた。
【0010】
特許文献1に記載されている技術では、グライドハイトテストとサーティファイテストとを1つのテストヘッドからの出力を用いて同時に実施することにより検査のスループットを向上させることが期待できるが、複数の検査装置間のテストヘッドの特性のばらつきにより検査感度のばらつきを抑えることについては配慮されていない。
【0011】
また、特許文献2に記載されている技術では、グライドハイトテストの結果に応じてサーティファイテストを行うことにより検査の効率を上げることはできるが、サーティファイテスト時における複数の検査装置間のテストヘッドの特性のばらつきにより検査感度のばらつきを抑えることについては配慮されていない。
【0012】
更に、特許文献3には、磁気ヘッドが磁気ディスク表面の突起と衝突して発生するサーマルアスペリティ減少の発生を抑えて高いSN比で信号を検出できるような最適なヘッド浮上量に対して磁気ヘッドを過熱することにより浮上量を最適な状態からずらして検査することで運用時と同じ環境で欠陥を検出することができるが、より高感度にサーティファイテストを行うことについては記載されていない。
【0013】
本発明の目的は、サーティファイテスト時に、磁気ヘッドの浮上量が最適になるように磁気ヘッドの浮上量を制御しながら、よりSN比の高い信号を検出して高感度にサーティファイテストを行うことが可能なサーティファイテスト方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では、磁気ディスクの検査方法を、磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を制御して回転している磁気ディスク上で浮上する磁気ヘッドの浮上量を変化させながら磁気ディスクの所定の領域において磁気ヘッドを用いて磁気ディスク上にリード・ライトテストを行いヒータ印加電力とエラーカウント数の関係を求め、この求めたヒータ印加電力とエラーカウント数の関係からリード・ライトテストを行うときのヒータ印加電力を設定し、ヒータに設定したヒータ印加電力を印加し、設定したヒータ印加電力を印加した状態で磁気ヘッドを用いて磁気ディスク上の所定の領域をリード・ライトテストを行うようにした。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明では、ヒータを内蔵した磁気ヘッドを用いて磁気ディスクのサーティファイテストを行う磁気ディスクの検査方法において、磁気ヘッドを用いて磁気ディスクにデータを書込む工程と、磁気ディスクに書込んだデータを磁気ヘッドで読取る工程とを含み、データを書込む工程とデータを読み込む工程とにおいて磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を切替えるようにした。
【0016】
更に、上記目的を達成するために、本発明では、サーティファイテストを行う磁気ディスクの検査装置において、検査対象試料である磁気ディスクを載置して磁気ディスクを回転させると共に一軸方向に移動させるステージ手段と、ヒータを内蔵した磁気ヘッドと、
ヒータに印加する電力を制御するヒータ電力制御回路と、磁気ヘッドに加える電流値を制御する電流駆動回路と、この電流駆動回路により電流が流れている磁気ヘッドの電圧を検出する電圧検出回路と、磁気ディスクに磁気ヘッドを介してデータを書込み、この書込んだデータを読取るデータ読出/書込回路部と、磁気ディスクのサーティファイテストを制御する制御手段とを備えて構成し、ヒータ印加電力制御回路と、電流駆動回路と電圧検出回路とを1つのICチップ内に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サーティファイテスト時に、磁気ヘッドの浮上量が最適になるように磁気ヘッドの浮上量を制御しながら、よりSN比の高い信号を検出して高感度にサーティファイテストを行うことが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】サーティファイテストを実施する検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】基板上に浮上している状態の磁気ヘッドの断面図である。
【図3】磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力と磁気ヘッドで検出した基板上のエラーのカウント数との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1の磁気ヘッドの浮上量を制御しながらサーティファイテストを行う処理の流れを示すフロー図である。
【図5】本発明の実施例2の磁気ヘッドの浮上量を制御しながらサーティファイテストを行う処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例1における磁気ディスクのサーティファイテストを行う検査装置の構成を図1に示す。
検査装置は、機構部10、読出/書込回路部100、データ読出/書込回路部110、データ処理・記憶部120を備えて構成されている。
【0021】
機構部10は、検査対象である磁気ディスク1を載置して回転させる回転軸(スピンドル軸)11と、回転軸11を平面内で移動させる可動ステージ部12、磁気ディスク(基板)1にデータを書込み・読出しをするヘッド素子13とヘッド素子13を支持するヘッドアーム15を備えている。
【0022】
ここで、ヘッド素子13としては、読出用(リード用)のMR(磁気抵抗効果)ヘッドと、書込用(ライト用)の薄膜インダクティブヘッドとから成る複合磁気ヘッドを用いる。
【0023】
読出/書込回路部100は、読出アンプ104a,書込アンプ104b及び、ヘッド加熱制御回路部105と、電流駆動回路部106と、電圧検出回路部107と、パラレル/シリアル変換器108とを備えており、ワンチップ化されている。
【0024】
ヘッド加熱制御回路部105は、D/Aコンバータ105a,電流出力型OPアンプ105b、電流反転型OPアンプ105cで構成されている。
【0025】
電流駆動回路部106は、D/Aコンバータ106a,電流出力型OPアンプ106b、電流反転型OPアンプ106cで構成され、電圧検出回路部107は、A/Dコンバータ107aと高入力インピーダンスOPアンプ107bとで構成されている。
【0026】
データ読出/書込回路部110は、データ読出回路111と、データ書込回路112、テストデータ生成回路113で構成される。
【0027】
データ処理・記憶部120は、MPU121と、メモリ122、ディスプレイ123、インターフェース124、キーボード125、及びそれらを接続するバス126を備えている。メモリ122には、磁気ディスク検査プログラム122a,MRヘッドの抵抗値測定プログラム122b、ヘッド劣化判定プログラム122c、MRヘッドの初期抵抗値測定プログラム122d、累積検査時間算出プログラム122e,ヘッド加熱制御プログラム122f等が記憶されている。更に作業領域122g、及び測定のためのパラメータ領域123が設定されている。
【0028】
上記した構成において、ヘッド加熱制御回路部105は、データ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶されたヘッド加熱データに基づいてヘッド素子14の内部のヒータに印加する電力を制御する。
【0029】
電流駆動回路部106では、D/Aコンバータ106aがパラレル/シリアル変換器108からの指令を入力し、この入力した信号をD/A変換して電流出力型OPアンプ106bに出力する。電流出力型OPアンプ106bは、このD/Aコンバータ106aからの出力を受けてこれに対応して増幅した電流を出力する。出力された電流は、読出信号ライン16aを経由してヘッドアーム15先端のヘッド素子14に加えられ、ヘッド素子14に流れた電流は、読出信号ライン16bを経て電流駆動回路106の電流反転型OPアンプ106cにシンクされる。
【0030】
電圧検出回路部107では、A/Dコンバータ107bが読出信号ライン16aと16bとからの信号を入力し、それらのライン間の電位差(電圧)に応じた電圧信号を測定信号としてA/Dコンバータ107aに出力する。A/Dコンバータ107aは、この測定信号を受けてA/D変換してデジタル信号をパラレル/シリアル変換回路108へ出力する。
【0031】
パラレル/シリアル変換回路108は、電流駆動回路部106で設定した電流値と電圧検出回路部107で検出した電圧値によりヘッド素子14の抵抗値を算出してデータ処理・記憶部120に信号を送る。
【0032】
次に、ヘッド素子14の構成としてMRヘッドの部分断面の例を図2に示す。
【0033】
図2に示したヘッド素子14の部分断面は、ライト素子部141、リード素子部142、ヒータ143、樹脂部144を備えて構成されている。また、ライト素子部141は、上部電極1411、下部電極1412、コイル1413、絶縁材料1414を備えて構成されている。図2は、回転軸(スピンドル軸)11に載置した基板1が高速に回転して、ヘッド素子14が基板1に対して浮上している状態を示している。
この構成において、ヒータ143は図1に示したヒータ用配線17aと17bとに接続しており(図2には図示せず)、データ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶されたヘッド加熱データに基づいて印加される電力が制御される。
【0034】
図2において、ヘッド素子14の下側に点線で示した領域は、ヒータ143に印加される電力を大きくしたときにヘッド素子14が熱膨張した状態を示している。ヘッド素子14をヒータ143で加熱することによりヘッド素子14が膨張して、ヘッド素子の先端が基板の側にヘッド突き出し量Δhだけ突き出すことにより、ヘッド素子14と基板1との間隔(ヘッド浮上高さ)が小さくなる。
【0035】
一方、ヘッド素子14と基板1との間隔には、ある適正な範囲が存在する。即ち、ヘッド素子14と基板1との間隔が大きすぎるとノイズ成分が増えてS/Nが悪くなり、リード・ライトテストにおける誤検出が多くなり、エラーカウント数が多くなる。また、ヘッド素子14と基板1との間隔が小さすぎると、ヘッド素子14が基板1に近付き過ぎて基板1の表面の突起と衝突してヘッド素子14と基板1との間隔が変動しノイズ信号を発生し、この場合も誤検出の原因となる。
【0036】
前述したように、ヘッド素子14のヒータ143に電力を印加することによりヘッド素子14が膨張して、基板1とヘッド素子14との間隔が変化するが、リード・ライトテスト時に、このヒータ143に印加する電力とヘッド素子14で検出するエラーカウント数の関係を調べた結果の一例を図3に示す。図3は、ヒータ143に印加する電力を変えながら基板1上の同じ領域(所定のトラックの範囲)をヘッド素子14で検出したときに検出した欠陥の数をプロットしたものである。
【0037】
ヒータ143に印加する電力が小さい状態ではヘッド素子14と基板1との間隔が大きいためにノイズが多くヘッド素子14で誤検出する率が高いが、ヒータ143に印加する電力を徐々に上げていくとヘッド素子14で誤検出する欠陥の数が減って真の欠陥の数に近付いてゆき、印加電力がある値を過ぎると検出される欠陥の数が再び上昇する。図中の点線は、移動平均(一つ手前(左側)の値との平均)を表す。
【0038】
図3のグラフからわかるように、ヘッド素子14と基板1との間隔を適正に設定することによりヘッド素子14で誤検出する欠陥の数を減らすことができ、より正確で信頼性の高い欠陥検査を行うことができる。
【0039】
本実施例においては、サーティファイテストを実施する前に、図3に示したようなヘッド特性を求めてヒータ143に印加する電力をデータ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶させておき、サーティファイテストを実施する場合にはデータ処理・記憶部120でヘッド加熱制御回路部105を制御してヒータ143に印加する電力が作業領域122gに記憶させておいた電力となるように設定する。
【0040】
次に、予め図3に示したようなデータを取得してヒータ143に印加する電力を決定し、その値をデータ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶させた状態で基板1を順次サーティファイテストを行う処理の流れを、図4を用いて説明する。
【0041】
まず、サーティファイテストを実行するまえに、データ処理・記憶部120のメモリに記憶させた磁気ディスク検査プログラム122aをMPU121が読込む。次に、ヒータ143に印加する電力を変化させながら基板1の所定の領域(所定のトラック領域)をヘッド素子14を用いて検査して欠陥を検出し、図3のようなヒータ印加電力と検出欠陥数との関係を求め、この求めたヒータ印加電力と検出欠陥数との関係から移動平均の情報を用いて検出欠陥数が最も少なくなるときのヒータの印加電力を求め、データ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶させる(S401)。
【0042】
次に、データ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶させたヒータの印加電力の情報に基づいてMPU121はインターフェース124を介してヘッド加熱制御回路部105を制御してヒータ143に印加する電力を制御する(S402)。
【0043】
次に、データ処理・記憶部120のメモリ領域122dに格納してあるMRヘッドの初期抵抗値測定プログラムをMPU121が読込み、インターフェース124を介して電流駆動回路106及び電圧検出回路部107を制御してMRヘッドの初期抵抗値を測定し(S403)データ処理・記憶部120の作業領域122fに記憶しておく。
【0044】
MRヘッドの初期抵抗値を測定後、先に読込んでおいた磁気ディスク検査プログラム122aに基づいてMPU121からの指令により、データ読出/書込回路部110のテストデータ生成回路113とデータ書込回路112から書込アンプ104bを介してヘッド素子14に書込みデータを送ってライト素子141により基板1にデータを書込む。次に、この書込んだデータをヘッド素子14のリード素子142で読み取り、その信号を読出アンプ104aを介してデータ読出回路111に入力し、データ読出回路111から出力された信号を受けてMPU121で処理することにより基板1のサーティファイテストを実行する(S404)。
基板1についてサーティファイテストが終了すると基板1を図示していないハンドリングユニットを用いて回転軸(スピンドル軸)11から取り外し、次に検査する基板があるか判断し(S405)、次の基板が無いときには検査を終了する。一方、次に検査する基板が有るときには、次の検査基板を図示していないハンドリングユニットを用いて回転軸(スピンドル軸)11に装着し、それまでの検査時間が所定の時間に達していないかをチェックして(S406)、所定の時間に達していない場合にはS404のサーティファイテストを実行する。
【0045】
一方、所定の検査時間に達したときには、データ処理・記憶部120のメモリ領域122bに格納してあるMRヘッドの抵抗値測定プログラムをMPU121が読込み、インターフェース124を介して電流駆動回路106及び電圧検出回路部107を制御して、所定の時間検査したMRヘッドの抵抗値を測定する(S407)。次に、この測定した抵抗値をS403で測定してデータ処理・記憶部120の作業領域122fに記憶しておいた初期の抵抗値と比較し(S408)、初期抵抗値に対して今回測定した抵抗値の変動の割合が予め設定した範囲内であるか否かを判定し(S409)、予め設定した範囲内である場合にはS404のサーティファイテストを実行する。
【0046】
一方、初期抵抗値に対して今回測定した抵抗値の変動の割合が予め設定した範囲を超えた(許容範囲外)場合には、ヘッドが劣化したものと判断し、ヘッドが交換時期に達したことを知らせる警告をデータ処理・記憶部120のディスプレイ上に表示して(S410)、検査を終了する。
【0047】
以上に説明したように、検査時に高速で回転する基板上に浮上する磁気ヘッドの浮上量を、エラーカウント数が最も少なくなるような条件に設定して検査をすることができ、且つ、経時変化によりヘッドが劣化するまで磁気ヘッドの浮上量を一定に保つことができるので、より信頼性の高いサーティファイテストを行うことができる。
【実施例2】
【0048】
実施例1においては、リード・ライトテストを行う時に、ヘッド加熱ヒータ143に印加する電量は一定であった。
【0049】
しかし、リード・ライトテストにおいて、データ処理・記憶部120からの指令に基づいてデータ読出/書込回路部110のテストデータ生成回路113で生成され、データ書込回路112から書込アンプ104bを介してヘッド素子14のライト素子141で磁気ディスク1の所定のトラック領域にデータを書込むときの最適なヘッド素子14の浮上量と、磁気ディスク1に書込まれたデータをヘッド素子14のリード素子142で読取るときのヘッド素子14の最適な浮上量は異なる可能性がある。
【0050】
そこで、本実施例においては、図4に示した実施例1における処理フローのうちのS401とS402とをデータ書込時のヒータ143への印加電力とエラーカウント数の関係と、データ読取時のヒータ143への印加電力とエラーカウント数の関係とを別々に求めてデータ処理・記憶部120の作業領域122fに記憶させる。
【0051】
実施例2における検査装置の構成は、図1で説明した実施例1の場合と同様である。
【0052】
本実施例における処理のフローを図5に示す。
【0053】
まず、サーティファイテストを実行するまえに、データ処理・記憶部120のメモリに記憶させた磁気ディスク検査プログラム122aをMPU121が読込む。次に、ヒータ143に印加する電力を変化させながら、基板1の所定の領域(所定のトラック領域)にヘッド素子14のライト素子141を用いてテストデータ生成回路113で生成した検査データを書込む(S501)。次に基板1上に書込まれたデータをヒータ143に印加する電力を一定にした状態でリード素子142で読み取り(S502)、検査データ書込時の図3のようなヒータ印加電力とエラーカウント数との関係から移動平均の情報を用いてデータ書込時の検出欠陥数が最も少なくなるときのヒータの印加電力を求め、データ処理・記憶部120の作業領域122gにデータ書込み時のヒータ印加電力Pwとして記憶させる(S503)。
次に、基板1の所定の領域(所定のトラック領域)にヘッド素子14のライト素子141を用いてテストデータ生成回路113で生成した検査データを書込み(S504)、この基板1の所定の領域に書込まれたデータを、ヒータ143に印加する電力を変化させながらリード素子142で読み取り(S505)、検査データ書込時の図3のようなヒータ印加電力とエラーカウント数との関係から移動平均の情報を用いてデータ読取時のエラーカウント数が最も少なくなるときのヒータの印加電力を求め、データ処理・記憶部120の作業領域122gにデータ読取時のヒータ印加電力Prとして記憶させる(S506)。
【0054】
次に、データ処理・記憶部120のメモリ領域122dに格納してあるMRヘッドの初期抵抗値測定プログラムをMPU121が読込み、インターフェース124を介して電流駆動回路106及び電圧検出回路部107を制御してMRヘッドの初期抵抗値を測定し(S507)、データ処理・記憶部120の作業領域122fに記憶しておく。
【0055】
MRヘッドの初期抵抗値を測定後、先に読込んでおいた磁気ディスク検査プログラム122aに基づいてMPU121からの指令により、データ読出/書込回路部110のテストデータ生成回路113とデータ書込回路112から書込アンプ104bを介してヘッド素子14に書込みデータを送ってライト素子141により基板1にデータを書込む。このとき、ヒータ143には、S503で求めてデータ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶させておいたデータ書込み時のヒータ印加電力Pwが印加されている。次に、この基板1に書込んだデータをヘッド素子14のリード素子142で読取る。このとき、ヒータ143に印加する電力は切替えられて、S506で求めてデータ処理・記憶部120の作業領域122gに記憶させておいたデータ書込み時のヒータ印加電力Prが印加されている。リード素子142で読取った信号を読出アンプ104aを介してデータ読出回路111に入力し、データ読出回路111から出力された信号を受けてMPU121で処理することにより基板1のサーティファイテストを実行する(S508)。
基板1についてサーティファイテストが終了すると基板1を図示していないハンドリングユニットを用いて回転軸(スピンドル軸)11から取り外し、次に検査する基板があるか判断し(S509)、次の基板が無いときには検査を終了する。一方、次に検査する基板が有るときには、次の検査基板を図示していないハンドリングユニットを用いて回転軸(スピンドル軸)11に装着し、それまでの検査時間が所定の時間に達していないかをチェックして(S510)、所定の時間に達していない場合にはS508のサーティファイテストを実行する。
【0056】
一方、所定の検査時間に達したときには、データ処理・記憶部120のメモリ領域122bに格納してあるMRヘッドの抵抗値測定プログラムをMPU121が読込み、インターフェース124を介して電流駆動回路106及び電圧検出回路部107を制御して、所定の時間検査したMRヘッドの抵抗値を測定する(S511)。次に、この測定した抵抗値をS507で測定してデータ処理・記憶部120の作業領域122fに記憶しておいた初期の抵抗値と比較し(S512)、初期抵抗値に対して今回測定した抵抗値の変動の割合が予め設定した範囲内であるか否かを判定し(S513)、予め設定した範囲内である場合にはS508のサーティファイテストを実行する。
【0057】
一方、初期抵抗値に対して今回測定した抵抗値の変動の割合が予め設定した範囲を超えた(許容範囲外)場合には、ヘッドが劣化したものと判断し、ヘッドが交換時期に達したことを知らせる警告をデータ処理・記憶部120のディスプレイ上に表示して(S514)、検査を終了する。
【0058】
本実施例によれば、リード・ライトテスト時に高速で回転する基板上に浮上する磁気ヘッドの浮上量を、基板に検査データを書込むライト時と基板に書込まれたデータを読取るリード時とで切替えて、それぞれに適したエラーカウント数が最も少なくなるような条件に設定して検査をすることができ、且つ、経時変化によりヘッドが劣化するまで磁気ヘッドの浮上量を一定に保つことができるので、より信頼性の高いサーティファイテストを行うことができる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1・・・磁気ディスク 11・・・回転軸 12・・・可動ステージ部 13・・・ヘッド素子 100・・・読出/書込回路部 104a・・・読出アンプ 104b・・・書込アンプ 105・・・ヘッド加熱制御回路部 105a・・・D/Aコンバータ 105b・・・電流出力型OPアンプ 105c・・・電流反転型OPアンプ 106・・・電流駆動回路部 107・・・電圧検出回路部 108・・・パラレル/シリアル変換器 110・・・データ読出/書込回路部 120・・・データ処理・記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を制御して回転している磁気ディスク上で浮上する前記磁気ヘッドの前記浮上量を変化させながら前記磁気ディスクの所定の領域において前記磁気ヘッドを用いて前記磁気ディスク上にリード・ライトテストを行いヒータ印加電力とエラーカウント数の関係を求め、
該求めたヒータ印加電力とエラーカウント数の関係から前記リード・ライトテストを行うときのヒータ印加電力を設定し、
前記ヒータに前記設定したヒータ印加電力を印加し、
該設定したヒータ印加電力を印加した状態で前記磁気ヘッドを用いて磁気ディスク上の所定の領域をリード・ライトテストを行う
ことを特徴とする磁気ディスクの検査方法。
【請求項2】
前記ヒータ印加電力とエラーカウント数の関係を求めるステップにおいて、前記磁気ディスクにデータを書込むライト時と、該磁気ディスクに書込んだデータを読取るリード時とで別々にヒータ印加電力とエラーカウント数の関係を求め、前記ヒータ印加電力を設定するステップにおいて前記ライト時と前記リード時とで独立したヒータ印加電力を設定し、前記リード・ライトテスト時においてライト時とリード時とで前記設定された独立したヒータ電力を印加することを特徴とする請求項1記載の磁気ディスクの検査方法。
【請求項3】
所定の枚数の磁気ディスクに対して前記リード・ライトテストを行うごとに記磁気ヘッドに加える電流値と該電流値を加えた磁気ヘッドの電圧を測定して前記磁気ヘッドの抵抗値を求めて前記磁気ヘッドの寿命を監視することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気ディスクの検査方法。
【請求項4】
前記磁気ヘッドの寿命を監視することを、前記検査を行う前の前記磁気ヘッドの初期の抵抗値を求め、所定の枚数の磁気ディスクに対して前記リード・ライトテストを行った後に再度前記磁気ヘッドの抵抗値を求め、前記求めた初期の抵抗値に対する前記求めた所定の枚数の磁気ディスクをリード・ライトテストを行った後の抵抗値の変化の割合を求め、該求めた抵抗値の変化の割合が予め設定した割合よりも大きいときには磁気ヘッドが不良であるとの警告を発することを特徴とする請求項3記載の磁気ディスクの検査方法。
【請求項5】
ヒータを内蔵した磁気ヘッドを用いて磁気ディスクのサーティファイテストを行う磁気ディスクの検査方法であって、
磁気ディスクを回転させた状態で前記磁気ヘッドを用いて前記磁気ディスクにデータを書込む工程と、
前記磁気ディスクを回転させた状態で該磁気ディスクに書込んだデータを前記磁気ヘッドで読取る工程と
を含み、前記データを書込む工程と前記データを読み込む工程とにおいて前記磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を切替えることを特徴とする磁気ディスクの検査方法。
【請求項6】
前記磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を切替えることを、前記データを読み込む工程で読込んだデータのエラーカウント数が最も少なくなるような電力に切替えることを特徴とする請求項5記載の磁気ディスクの検査方法。
【請求項7】
前記磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を切替えることにより、前記データを書込む工程と前記データを読み込む工程とにおいて前記回転させた磁気ディスク上に浮上する前記磁気ヘッドの浮上量を変化させることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁気ディスクの検査方法。
【請求項8】
サーティファイテストを行う磁気ディスクの検査装置であって、
検査対象試料である磁気ディスクを載置して該磁気ディスクを回転させると共に一軸方向に移動させるステージ手段と、
ヒータを内蔵した磁気ヘッドと、
該ヒータに印加する電力を制御するヒータ電力制御回路と、
前記磁気ヘッドに加える電流値を制御する電流駆動回路と、
該電流駆動回路により電流が流れている前記磁気ヘッドの電圧を検出する電圧検出回路と、
前記磁気ディスクに前記磁気ヘッドを介してデータを書込み、該書込んだデータを読取るデータ読出/書込回路部と、
前記磁気ディスクのサーティファイテストを制御する制御手段と
を備え、前記ヒータ印加電力制御回路と、前記電流駆動回路と前記電圧検出回路とが1つのICチップ内に形成されていることを特徴とする磁気ディスクの検査装置。
【請求項9】
前記ヒータに印加する電力と前記データ読出/書込回路部で検出したエラーカウント数との関係から前記リード・ライトテストを行うときのヒータ印加電力を設定して記憶するヒータ電力設定手段を更に備えたことを特徴とする請求項8記載の磁気ディスクの検査装置。
【請求項10】
前記電流駆動回路から前記磁気ヘッドに加える電流値と前記電圧検出回路で検出した前記磁気ヘッドの電圧とから前記磁気ヘッドの抵抗値を求める磁気ヘッド抵抗値算出手段を更に備え、前記制御手段は、所定の時間複数の枚数に亘って磁気ディスクのサーティファイテストを制御した後に前記磁気ヘッド抵抗値算出手段で前記磁気ヘッドの抵抗値を求めて初期の抵抗値と比較し、該初期の抵抗値に対して所定異常の割合で変動している場合は警報を発することを特徴とする請求項8又は9に記載の磁気ディスクの検査装置。
【請求項11】
前記ヒータ電力制御回路は、 前記データ読出/書込回路部で前記磁気ディスクに前記磁気ヘッドを介してデータを書込む時と、該書込んだデータを前記磁気ヘッドを介して読取る時とで前記磁気ヘッドに内蔵したヒータに印加する電力を切替えることを特徴とする請求項8乃至10の何れかに記載の磁気ディスクの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33208(P2012−33208A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169317(P2010−169317)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】