説明

磁気ディスクの特性評価装置及び評価方法

【課題】不安定状態に陥ったヘッドを用いてもヘッドノイズの変動の影響を受けずにメディアノイズを測定することが可能な、測定効率が改善された磁気ディスクの特性評価装置及び評価方法を提供すること。
【解決手段】磁気ディスク2の所定のトラック300に対して記録・再生を行う評価対象の磁気ヘッド1には、所定のデータパターンを生成するデータ・ジェネレータ3が、データパターンに応じた記録電流を磁気ヘッド1へ供給するライト・アンプ4を介して接続されている。磁気ヘッド1にはまた、ヘッド再生信号301を増幅するためのリード・アンプ5が接続されおり、増幅されたヘッド再生信号301は周波数解析によりスペクトラム302を計測する周波数解析部6に入力される。周波数解析部6によって計測されたスペクトラム302が評価部7に入力されると、各種演算が行われてメディアノイズ電圧が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクの特性評価装置及び評価方法に関し、より詳細には、ハードディスク装置の記録媒体として用いられる磁気ディスクの記録再生特性を評価する磁気ディスクの特性評価装置及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の分野においては、近年急ピッチで進む高密度化の要求に答えるため、磁気ディスクや、ヘッド、回転系、及び機構系の改良が継続的に行われている。磁気ディスクに関しては、特に高密度化の障害となるメディアノイズを低減することが必須である。そのため、高記録密度媒体の開発においては、メディアノイズの評価が重要であり、これを良好な精度で、且つ、効率的に評価することが求められている。
【0003】
磁気ディスクのメディアノイズはDCイレーズノイズと遷移ノイズが支配的である。DCイレーズノイズは、メディアの直流消磁されている領域からのノイズであり、グレインサイズや磁気特性の不均一性、磁化容易軸のバラツキ等により生ずる。一方、遷移ノイズは磁化遷移に基づくノイズであり、メディアに信号が記録されている場合にのみ存在する。遷移ノイズには、磁化遷移の位置が理想的な位置からずれる遷移ジッタに起因するものと、磁化遷移の幅が変化する遷移幅変動に起因するものとがある。
【0004】
また、磁気記録システムのノイズ源には、メディアノイズ以外に、回路ノイズやヘッドノイズがある。回路ノイズは電子回路の熱雑音に起因するノイズであり、平坦なスペクトラムを有する。また、ヘッドノイズは、ヘッドのリード素子によるノイズである。一般に回路ノイズとヘッドノイズを合わせてシステムノイズと呼び、さらにメディアノイズを含めてトータルノイズと呼んでいる。
【0005】
メディアノイズの測定法としては周波数領域における方法が一般的である。これまでに、トータルノイズの周波数スペクトルの面積からシステムノイズの周波数スペクトルの面積を減算することにより、メディアノイズを測定する方法が提案されている(特許文献1参照)。本発明に係る方法も、方形波信号の記録再生波形を周波数解析して求めたトータルノイズのスペクトラムと、ヘッドをメディアからアンロードして測定したシステムノイズのスペクトラムから、メディアノイズを求めるものである。計測器としてスペアナを使用した場合、メディアノイズ電圧Nmediaは下式で算出される。
【0006】
【数1】

【0007】
ここでNtotal(k)、Nsystem(k)はそれぞれトータルノイズ及びシステムノイズのスペクトラムデータ、kは周波数番号、Δfはスペアナの周波数分解能、ENBWはスペアナの等価雑音帯域、Nはスペクトラムデータの個数である。スペアナの帯域をfmaxとした場合、Δf=fmax/(N−1)である。システムノイズNsystem(k)はヘッドを磁気ディスクからアンロードした状態で測定する。これはヘッドが磁気ディスクから記録信号を拾わないようにするためである。
【0008】
ところで、ハードディスク装置では磁気ディスクの磁化情報の読み出しヘッドとして巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magneto Resistive)ヘッドが一般に使用されている。このGMRヘッドとしては、反強磁性層とピン層、及びフリー層が積層されたスピンバルブ構造のものが主流である。
【0009】
前述したように、システムノイズには回路ノイズとヘッドノイズがある。ヘッドノイズはGMR素子のノイズであり、GMR素子自体の発熱によるノイズ(サーマルノイズ)や、フリー層の磁化のばらつきによるノイズ(磁気ノイズ)が支配的である。これらはほぼ平坦なスペクトラムを有する。ところが、不安定状態に陥ったGMR素子では、しばしば低周波ノイズが観測される。この不安定状態とは、フリー層が複数のドメインに分割され、それぞれがメタステーブルとなった状態である。一旦GMR素子が不安定状態に陥ると、様々な要因(バイアス電流や周囲温度の変動、機械的ストレス等)によってメタステーブル状態が遷移する。そしてその都度ヘッドノイズの低周波成分が変動する。図9に、不安定状態のGMR素子の典型的な低周波ノイズの変動する様子を表すシステムノイズのスペクトラム201〜203を示す。スペクトラム201〜203は50MHz以下の領域においてそれぞれ大きく異なった値をとっているが、このズレは観測時点がそれぞれ異なることによって生じたものである。
【0010】
【特許文献1】特開平2−52267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、メディアノイズの測定では、その都度システムノイズを個別に測定する必要があり、そのためにヘッドを磁気ディスクから一旦アンロードする。ところが、GMRヘッドが不安定状態の場合、アンロード時の機械的な衝撃や、タイムラグにより、図9に示したようにヘッドノイズの低周波成分が変化してしまうことがある。すると、(1)式において、トータルノイズNtotal(k)から減算するシステムノイズNsystem(k)が、トータルノイズNtotal(k)を測定した時点のものと異なったものとなり、メディアノイズが正確に求められなくなる。
【0012】
従来はこの問題を避けるために、不安定状態に陥ったGMRヘッドはメディアノイズの測定に使用せずに交換するようにしていた。しかしながら、不安定状態に陥ったヘッドをその都度交換するということになると、ヘッドを交換するための作業が無視できないほどの負担となり、測定効率を大きく低下させるという課題があった。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、不安定状態に陥ったGMRヘッドを用いてもヘッドノイズの変動の影響を受けずにメディアノイズを測定することを可能にすることにより、ヘッド交換の回数が削減され、測定効率が改善された磁気ディスクの特性評価装置及び評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、磁気ディスク上の所定のトラックに対してデータを記録再生する磁気ヘッド、当該磁気ヘッドを前記磁気ディスク上にロード・アンロードするロード・アンロード機構、当該磁気ヘッドにデータに応じた記録電流を供給するライト・アンプ、前記ライト・アンプへ方形波パターンのデータ信号を供給することが可能なデータ・ジェネレータ、前記磁気ヘッドからの信号を増幅するリード・アンプ、前記ヘッドの再生波形を周波数解析してスペクトラムを求める周波数解析手段、及び当該周波数解析手段からのスペクトラムを入力して前記磁気ディスクのメディアノイズを表すデータを算出する評価部、を備えた磁気ディスクの特性評価装置であって、前記磁気ヘッドは、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスク上にロードされた状態で、前記トラックに前記方形波パターンのデータ信号を記録し、記録された前記方形波パターンのデータ信号を再生して第1のヘッド再生信号を出力し、前記周波数解析手段は、前記リード・アンプで増幅された第1のヘッド再生信号の再生波形を周波数解析して所定のデータ点数を有する第1のスペクトラムデータを出力し、前記磁気ヘッドは、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスクからアンロードされた状態で第2のヘッド再生信号を出力し、前記周波数解析手段は、前記リード・アンプで増幅された第2のヘッド再生信号を周波数解析して所定のデータ点数を有する第2のスペクトラムデータを出力し、前記評価手段は、前記第1のスペクトラムデータから前記方形波信号の基本波と高調波のピークを除去することにより第3のスペクトラムデータを作成し、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータに対する補正処理を行い、前記補正処理された第2及び第3のスペクトラムデータに基づいて前記磁気ディスクのメディアノイズを算出することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の磁気ディスクの特性評価装置において、前記評価手段が行う補正処理は、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数範囲をカーブフィットし、前記カーブフィットの結果に基づき、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータを外挿する補正処理であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の磁気ディスクの特性評価装置において、前記第2及び第3のスペクトラムデータのデータ点数は同一であることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明であって、磁気ディスク上の所定のトラックに対してデータを記録再生する磁気ヘッド、当該磁気ヘッドを前記磁気ディスク上にロード・アンロードするロード・アンロード機構、当該磁気ヘッドにデータに応じた記録電流を供給するライト・アンプ、前記ライト・アンプへ方形波パターンのデータ信号を供給することが可能なデータ・ジェネレータ、前記磁気ヘッドからの信号を増幅するリード・アンプ、前記ヘッドの再生波形を周波数解析してスペクトラムを求める周波数解析手段、及び当該周波数解析手段からのスペクトラムを入力して前記磁気ディスクのメディアノイズを表すデータを算出する評価部、を備えた磁気ディスクの特性評価装置における特性評価方法であって、前記磁気ヘッドが、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスク上にロードされた状態で、前記トラックに前記方形波パターンのデータ信号を記録し、記録された前記方形波パターンのデータ信号を再生して第1のヘッド再生信号を出力するステップと、前記周波数解析手段が、前記リード・アンプで増幅された第1のヘッド再生信号の再生波形を周波数解析して所定のデータ点数を有する第1のスペクトラムデータを求めるステップと、前記磁気ヘッドが、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスクからアンロードされた状態で第2のヘッド再生信号を出力するステップと、前記周波数解析手段が、前記リード・アンプで増幅された第2のヘッド再生信号を周波数解析して所定のデータ点数を有する第2のスペクトラムデータを求めるステップと、前記評価手段が、前記第1のスペクトラムデータから前記方形波信号の基本波と高調波のピークを除去することにより第3のスペクトラムデータを作成するステップと、前記評価手段が、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータに対する補正処理を行うステップと、前記評価手段が、前記補正処理された第2及び第3のスペクトラムデータに基づいて前記磁気ディスクのメディアノイズを算出するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の磁気ディスクの特性評価方法において、前記評価手段の前記補正処理を行うステップが、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数範囲をカーブフィットするステップと、前記カーブフィットの結果に基づき、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータを外挿するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の磁気ディスクの特性評価方法において、前記第2及び第3のスペクトラムデータのデータ点数は同一であることを特徴とする。
【0020】
トータルノイズ及びシステムノイズのスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータが外挿により補正されるので、ヘッドノイズの帯域が所定の周波数以下であれば、トータルノイズ及びシステムノイズのスペクトラムデータはヘッドノイズの低周波成分を含まないようになる。そのため測定中にヘッドノイズが変動しても、メディアノイズの算出結果がヘッドノイズの変動の影響を受けなくなる。つまり、不安定状態に陥ったGMRヘッドを使用した場合でも、通常のヘッドと同等の精度で測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、測定中にヘッドノイズが変動しても、メディアノイズの算出結果がヘッドノイズの変動の影響を受けなくなり、不安定状態に陥ったGMRヘッドを使用した場合でも、通常のヘッドと同等の精度で測定を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1に、本発明の一実施形態に係る磁気ディスクのノイズ評価を行うための評価装置の構成を示す。磁気ディスク2の所定のトラック300に対して記録・再生を行う評価対象の磁気ヘッド1には、所定のデータパターンを生成するデータ・ジェネレータ3が、データパターンに応じた記録電流を磁気ヘッド1へ供給するライト・アンプ4を介して接続されている。磁気ヘッド1にはまた、ヘッド再生信号301を増幅するためのリード・アンプ5が接続されおり、増幅されたヘッド再生信号301は周波数解析によりスペクトラム302を計測する周波数解析部6に入力される。周波数解析部6によって計測されたスペクトラム302が評価部7に入力されると、各種演算が行われてメディアノイズ電圧が算出される。また、磁気ヘッド1は、ロード・アンロード機構9によって磁気ディスク2上にロード及びアンロードすることができるようにされている。ここで磁気ヘッド1は、再生素子としてGMRヘッド(図省略)を有しており、GMR素子が前述した不安定状態にあるものとする。また、磁気ディスク2は、磁性膜の磁気異方性が記録面の面内方向に調整された長手記録媒体、又は記録面の垂直方向に調整された垂直記録媒体である。
【0024】
図2に、本発明の一実施形態に係る磁気ディスクのノイズ評価方法の手順を示したフローチャートを示す。本実施形態では、初期状態において磁気ヘッド1が磁気ディスク2上にロードされ、トラック300上に位置しているものと仮定する。
【0025】
まず、ステップ101では、トラック300に方形波信号を記録する。ここで方形波信号の周波数として適切な値は、不安定状態のGMRヘッドが有する低周波ノイズの帯域0Hz〜50MHzに対して十分高い周波数である。本実施形態では、一例として110MHzとする。
【0026】
次にステップ102では、ヘッド再生信号を周波数解析し、第1のスペクトラムデータを求める。そのため、磁気ヘッド1によりトラック300に記録された方形波信号を再生する。そしてヘッド再生信号301を増幅したリード・アンプ5の出力信号を、周波数解析部6で周波数解析する。ここで周波数解析部6の周波数帯域は500[MHz]、周波数分解能は500[KHz]である。そのため、解析結果のスペクトラムデータのデータ点数Nは、N=1001個である。図3に、横軸に周波数をとり、縦軸に電圧をとって第1のスペクトラムデータをプロットしたものを示す。図3に示すように、第1のスペクトラムデータは方形波信号の基本波の周波数110MHzとその整数倍の周波数の位置にピークを有する。
【0027】
次にステップ103では、ロード・アンロード機構9により磁気ヘッド1を磁気ディスク2からアンロードする。すると磁気ヘッド1のヘッド再生信号301には、システムノイズのみが含まれるようになる。
【0028】
次にステップ104では、ヘッド再生信号を周波数解析し、第2のスペクトラムデータを求める。第2のスペクトラムデータのデータ点数は、第1のスペクトラムデータと同じN個となる。図4に、横軸に周波数をとり、縦軸に電圧をとって第2のスペクトラムデータをプロットしたものを示す。本スペクトラムは、回路ノイズとヘッドノイズを合わせたシステムノイズのスペクトラムに対応している。
【0029】
次にステップ105では、第1のスペクトラムデータからピークを除去した第3のスペクトラムデータを求める。ここで、ピークの除去のために公知の方法が使用される。すなわち、ピークを周囲のノイズで補間する。図5に、横軸に周波数をとり、縦軸に電圧をとって第3のスペクトラムデータをプロットしたものを示す。本スペクトラムは、メディアノイズとシステムノイズを合わせたトータルノイズのスペクトラムに対応している。
【0030】
次にステップ106では、第3のスペクトラムデータの所定の周波数範囲をカーブフィットする。ここで所定の周波数範囲は、GMRヘッドの低周波ノイズの帯域、スペクトラムの形状等を考慮して決定されるが、本実施形態の場合50MHz〜250MHzである。本実施形態では、回帰計算により第3のスペクトラムデータをカーブフィットする2次の多項式を求める。図6に、フィッティングにより求めた2次曲線を破線204として示し、第3のスペクトラムデータの一部をプロットしたものを実線205として示す。
【0031】
次にステップ107では、第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下を外挿法により補正する。ここで所定の周波数は本実施形態の場合50MHzである。そこで、まず周波数0Hz〜500MHzにおける1001個のマグニチュードの測定データからなる第3のスペクトラムデータを、0Hz〜50MHzのスペクトラムデータA(k)(k=1,2,3,...,101)と、50.5MHz〜500MHzのスペクトラムデータB(k)(k=1,2,3,...,900)とに分ける。そして、ステップ106において求めた2次の多項式により周波数0〜50MHzの101個のマグニチュードの値をそれぞれ計算し、これをA’(k)(k=1,2,3,...,101)とする。そしてA’(k)とB(k)を連結し、これを改めて第3のスペクトラムデータとする。
【0032】
次にステップ108では、第2のスペクトラムデータの所定の周波数範囲をカーブフィットする。ステップ106と同様に所定数範囲はGMRヘッドの低周波ノイズの帯域、スペクトラムの形状等を考慮して決定されるが、本実施形態の場合ステップ106と同様50MHz〜250MHzである。本実施形態では、回帰計算により第2のスペクトラムデータをカーブフィットする1次式を求める。図7に、フィッティングにより求めた1次式を破線206として示し、第2のスペクトラムデータの一部をプロットしたものを実線207として示す。
【0033】
次にステップ109では、第2のスペクトラムデータの所定の周波数以下を外挿法により補正する。ここで所定の周波数はステップ107と同様50MHzである。そこで、まず周波数0Hz〜500MHzにおける1001個のマグニチュードの測定データからなる第2のスペクトラムデータを、0Hz〜50MHzのスペクトラムデータC(k)(k=1,2,3,...,101)と、50.5MHz〜500MHzのスペクトラムデータD(k)(k=1,2,3,...,900)とに分ける。そして、ステップ108において求めた1次式により周波数0Hz〜50MHzの101個のマグニチュードの値をそれぞれ計算し、これをC’(k)(k=1,2,3,...,101)とする。そしてC’(k)とD(k)を連結し、これを改めて第2のスペクトラムデータとする。図8に、補正後の第2のスペクトラムデータをプロットしたものを破線208として示し、補正後の第3のスペクトラムデータをプロットしたもを実線209として示す。
【0034】
最後にステップ110では、評価部7により、補正した第2、第3のスペクトラムデータについて所定の演算を行い、磁気ディスクのメディアノイズNmediaを算出する。この演算は下式(2)に基づいて行われる。ここで、N2(k)、N3(k)は第2、第3のスペクトラムデータであり、それぞれシステムノイズとトータルノイズに対応する。Δfはスペアナの周波数分解能、ENBWはスペアナの等価雑音帯域幅、Nはスペクトラムデータの個数である。本実施形態では、Δf=500MHz、N=1001、ENBW=800MHzである。本演算によりメディアノイズの値が電圧値として算出される。
【0035】
【数2】

【0036】
以上が本発明の磁気ディスクのノイズ評価方法の一実施形態における手順である。尚、本実施形態では、1次式又は2次の多項式によりスペクトラムデータをカーブフィットする例を示したが、これ以外の関数式を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気ディスクのノイズ評価に使用する評価装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る磁気ディスクのノイズ評価の手順を示したフローチャートである。
【図3】第1のスペクトラムデータをプロットしたものを示す図である。
【図4】第2のスペクトラムデータをプロットしたものを示す図である。
【図5】第3のスペクトラムデータをプロットしたものを示す図である。
【図6】フィッティングにより求めた2次曲線を破線204として示し、第3のスペクトラムデータの一部をプロットしたものを実線205として示す図である。
【図7】フィッティングにより求めた1次式を破線206として示し、第2のスペクトラムデータの一部をプロットしたものを実線207として示す図である。
【図8】補正後の第2のスペクトラムデータをプロットしたものを破線208として示し、補正後の第3のスペクトラムデータをプロットしたもを実線209として示す図である。
【図9】不安定状態のGMR素子の典型的な低周波ノイズのスペクトラムを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 磁気ヘッド
2 磁気ディスク
3 データジェネレータ
4 ライト・アンプ
5 リードアンプ
6 周波数解析部
7 評価部
9 ロード・アンロード機構
300 トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク上の所定のトラックに対してデータを記録再生する磁気ヘッド、当該磁気ヘッドを前記磁気ディスク上にロード・アンロードするロード・アンロード機構、当該磁気ヘッドにデータに応じた記録電流を供給するライト・アンプ、前記ライト・アンプへ方形波パターンのデータ信号を供給することが可能なデータ・ジェネレータ、前記磁気ヘッドからの信号を増幅するリード・アンプ、前記ヘッドの再生波形を周波数解析してスペクトラムを求める周波数解析手段、及び当該周波数解析手段からのスペクトラムを入力して前記磁気ディスクのメディアノイズを表すデータを算出する評価部、を備えた磁気ディスクの特性評価装置であって、
前記磁気ヘッドは、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスク上にロードされた状態で、前記トラックに前記方形波パターンのデータ信号を記録し、記録された前記方形波パターンのデータ信号を再生して第1のヘッド再生信号を出力し、
前記周波数解析手段は、前記リード・アンプで増幅された第1のヘッド再生信号の再生波形を周波数解析して所定のデータ点数を有する第1のスペクトラムデータを出力し、
前記磁気ヘッドは、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスクからアンロードされた状態で第2のヘッド再生信号を出力し、
前記周波数解析手段は、前記リード・アンプで増幅された第2のヘッド再生信号を周波数解析して所定のデータ点数を有する第2のスペクトラムデータを出力し、
前記評価手段は、前記第1のスペクトラムデータから前記方形波信号の基本波と高調波のピークを除去することにより第3のスペクトラムデータを作成し、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータに対する補正処理を行い、前記補正処理された第2及び第3のスペクトラムデータに基づいて前記磁気ディスクのメディアノイズを算出することを特徴とする磁気ディスクの特性評価装置。
【請求項2】
前記評価手段が行う補正処理は、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数範囲をカーブフィットし、前記カーブフィットの結果に基づき、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータを外挿する補正処理であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスクの特性評価装置。
【請求項3】
前記第2及び第3のスペクトラムデータのデータ点数は同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスクの特性評価装置。
【請求項4】
磁気ディスク上の所定のトラックに対してデータを記録再生する磁気ヘッド、当該磁気ヘッドを前記磁気ディスク上にロード・アンロードするロード・アンロード機構、当該磁気ヘッドにデータに応じた記録電流を供給するライト・アンプ、前記ライト・アンプへ方形波パターンのデータ信号を供給することが可能なデータ・ジェネレータ、前記磁気ヘッドからの信号を増幅するリード・アンプ、前記ヘッドの再生波形を周波数解析してスペクトラムを求める周波数解析手段、及び当該周波数解析手段からのスペクトラムを入力して前記磁気ディスクのメディアノイズを表すデータを算出する評価部、を備えた磁気ディスクの特性評価装置における特性評価方法であって、
前記磁気ヘッドが、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスク上にロードされた状態で、前記トラックに前記方形波パターンのデータ信号を記録し、記録された前記方形波パターンのデータ信号を再生して第1のヘッド再生信号を出力するステップと、
前記周波数解析手段が、前記リード・アンプで増幅された第1のヘッド再生信号の再生波形を周波数解析して所定のデータ点数を有する第1のスペクトラムデータを求めるステップと、
前記磁気ヘッドが、前記ロード・アンロード機構によって前記磁気ディスクからアンロードされた状態で第2のヘッド再生信号を出力するステップと、
前記周波数解析手段が、前記リード・アンプで増幅された第2のヘッド再生信号を周波数解析して所定のデータ点数を有する第2のスペクトラムデータを求めるステップと、
前記評価手段が、前記第1のスペクトラムデータから前記方形波信号の基本波と高調波のピークを除去することにより第3のスペクトラムデータを作成するステップと、
前記評価手段が、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータに対する補正処理を行うステップと、
前記評価手段が、前記補正処理された第2及び第3のスペクトラムデータに基づいて前記磁気ディスクのメディアノイズを算出するステップと、
を備えたことを特徴とする磁気ディスクの特性評価方法。
【請求項5】
前記評価手段の前記補正処理を行うステップは、
前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数範囲をカーブフィットするステップと、
前記カーブフィットの結果に基づき、前記第2及び第3のスペクトラムデータの所定の周波数以下のデータを外挿するステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の磁気ディスクの特性評価方法。
【請求項6】
前記第2及び第3のスペクトラムデータのデータ点数は同一であることを特徴とする請求項4又は5に記載の磁気ディスクの特性評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−43333(P2009−43333A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207091(P2007−207091)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】