説明

磁気ディスク装置の製造方法

【課題】磁気ヘッドのライト素子のライト電流を調整し、テーブルを作成する製造方法に関し、ライト素子の熱膨張の影響を受けず、ライト電流を調整する。
【解決手段】磁気ディスクのエラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、ライト毎に、インターバル時間を入れる事で、ライト素子の冷却を行い、ライト電流による熱突き出しを抑えて、信号をライトし、エラーレート測定範囲のセクタをリードし、エラーレートを測定して、最適ライト電流に調整する。ライト電流を変える事で生じる熱突き出し量の変化も抑え、磁気スペーシングを一定に保つことができ、スペーシング変化の影響から独立して、ライト電流の最適化を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上量制御機構を設けた磁気ヘッドのライト素子のライト電流を調整し、ライト電流調整テーブルを作成するための磁気ディスク装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのライト素子に与えるライト電流を変えることで、ライト特性(エラーレート)が変化することが知られている。ライト電流で、ライト特性が変化する要因は、(1)電流そのもので発生する磁界の変化による効果と、(2)電流が変わることにより、素子の発熱量が変化し、素子と媒体間の距離(磁気スペーシング)が変化する事の効果とがある。
【0003】
磁気ヘッドには、浮上量制御機構を設けた磁気ヘッドと、浮上量制御機構を設けていない磁気ヘッドとが知られている。浮上量制御機構を設けていない磁気ヘッドでは、ライト電流を通電して、素子の発熱量で、素子とディスク媒体間の距離が変化した後の測定データを使用するため、電流そのもので発生する磁界の変化のみでライト電流の調整を行うことが出来なかった。
【0004】
図14は、浮上量制御機構として発熱素子を有する磁気ヘッドのライト開始からのオーバーライト特性を測定した説明図である。オーバーライト特性は、セクタに、低周波数の記録データをライトした後、高周波数の記録データをライトし、その後、そのセクタをリードし、リード信号の低周波数成分の比率を測定したものである。
【0005】
図14では、横軸が、セクタ番号(Sct No.)、縦軸が、測定したオーバーライト特性(dB)であり、ひし形のプロットが、発熱素子をオフし、浮上量制御を行わない場合のライト開始セクタ0からのオーバーライト特性を、正方形のプロットが、発熱素子をオンし、浮上量制御を行った場合のライト開始セクタ0からのオーバーライト特性を、示す。
【0006】
図14から明らかな如く、浮上制御を行わない場合では、ライト開始直後の磁気スペーシングと、時間が経過し、磁気ヘッド素子が充分に膨張した時の磁気スペーシングが異なる、即ち、ライト開始直後の磁気スペーシングが、定常時よりも高くなる為に、ライト開始直後のライト特性が悪くなる。
【0007】
一方、発熱素子(ヒータ素子など)を磁気ヘッドに搭載し、この素子の発熱量を制御することで磁気スペーシングを制御する場合には、ライト開始の直前に、ヒータ素子を発熱させ、磁気スペーシングをライト開始時と定常時で一定に保つことができる。これを、プリヒートという。
【0008】
このため、図14のヒータオンに示すように、ライト開始直後のライト特性の悪化を緩和できる。図15は、従来のスペーシング調整とライト電流調整の処理の説明図、図16は、そのライト電流調整の説明図である。
【0009】
図15に示すように、リード時のスペーシングを調整し、ライト時のスペーシングを大まかに調整する(S100)。例えば、磁気ヘッドの発熱素子の発熱量を調整する。この状態で、ライト電流の調整を行う(S102)。図16に示すように、エラーレート測定範囲を、1回のライトコマンドでライトする。例えば、磁気ディスクの1回転の各セクタ0〜n−1を、ライト素子に設定したライト電流を流し、データライトする。次に、エラーレート測定範囲を、1回のリードコマンドでリードする。例えば、磁気ディスクの1回転の各セクタ0〜n−1を、リード素子で、リードする。
【0010】
次に、各セクタのリードデータのエラーの有無を判定し、エラーレートを測定する。このエラーレートの測定を、ライト電流の最大値から最小値まで、変更して行い、エラーレートが最小となるライト電流を求め、それをライト電流に確定する。このライト電流の最適値は、電流によるヘッド素子の突き出し効果も含め調整される。
【0011】
そして、ライトアシスト・プリヒート調整を行う(S104)。ライト時の素子スペーシングが、リード時の素子スペーシングと同じになるように、エラーレートを元に、ライト時のヒータ発熱量を調整する。
【0012】
このようなライト電流の調整方法は、下記特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−159206号公報
【特許文献2】特開2007−317278号公報
【特許文献3】特開2008−112515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の方法では、ライト電流の最適化を実施すると、ライト時の素子スペーシングはライト電流の設定値により変化するため、ライト電流調整前後でスペーシングが変わってしまい、素子スペーシングに余裕がない設計の場合は、ヘッドとディスク媒体の衝突の危険性が生じる。
【0015】
また、従来の方法では、磁気スペーシングが電流により変化することも含んだ形で、ライト電流の最適値を決めているため、ライト電流の調整を行った後、決定したライト電流条件で、ライト時のスペーシングを再度調整すると、ライト電流調整時とスペーシングが変わってしまうため、今度は、電流調整値が最適点から外れてしまう問題がある。
【0016】
また、ライトを行っているときのライト素子部のスペーシングを測定することは、難しいため、スペーシングを一定値に制御しながら、ライト電流を変化させて、電流の調整を行うことも難しい。
【0017】
従って、本発明の目的は、ライト電流のヘッド素子の突き出しの影響を除外し、ライト電流の変更による特性変化のみで、ライト電流を調整するための磁気ディスク装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的の達成のため、磁気ディスク装置の製造方法は、磁気ディスクの回転により浮上する、少なくとも、リード素子とライト素子と、発熱素子とを有する磁気ヘッドと、前記磁気ディスクの半径方向に、前記磁気ヘッドを移動するアクチュエータと、外部からのコマンドに応じて、前記磁気ヘッドにより、前記磁気ディスクのデータのリード及びライトを実行する制御回路とを有する磁気ディスク装置の製造方法であって、前記磁気ヘッドのライト素子により、エラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトするステップと、前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトするステップと、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定するステップと、前記測定されたエラーレートが最小である前記ライト電流値を決定するステップと、前記決定したライト電流値を前記磁気ヘッドのライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップとを有する。
【発明の効果】
【0019】
エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、ライト毎に、インターバル時間を入れる事で、ライト素子の冷却を行い、ライト電流による熱突き出しを抑える。又、ライト電流を変える事で生じる熱突き出し量の変化も抑え、磁気スペーシングを一定に保つことができ、スペーシング変化の影響から独立して、ライト電流の最適化を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の磁気ディスク装置の一実施の形態の外観図である。
【図2】図1の磁気ヘッドの断面図である。
【図3】図1の磁気ディスク装置の回路ブロック図である。
【図4】図3の磁気ディスク装置のライト波形図である。
【図5】図3のライトドライバの設定値と、生成されるライト波形との関係図である。
【図6】本発明のライト電流調整の第1の実施の形態の説明図である。
【図7】図6のライト電流による熱突き出しの説明図である。
【図8】図7のライト開始時の拡大図である。
【図9】本発明のライト電流調整処理の第1の実施の形態のフロー図である。
【図10】エラーレートのライト電流パラメータの依存特性の説明図である。
【図11】図9により、作成されるライト電流テーブル38の説明図である。
【図12】本発明のライト電流調整の第2の実施の形態の説明図である。
【図13】本発明のライト電流調整の第3の実施の形態の説明図である。
【図14】従来の浮上量制御によるオーバーライト特性の説明図である。
【図15】従来のスペーシング調整とライト電流調整の処理の説明図である。
【図16】図15のライト電流調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、磁気ディスク装置、ライト電流調整の第1の実施の形態、ライト電流調整処理、ライト電流調整の第2の実施の形態、ライト電流調整の第3の実施の形態、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0022】
(磁気ディスク装置)
図1は、本発明の磁気ディスク装置の一実施の形態の外観図である。図2は、図1の磁気ヘッドの断面図である。図1に示すように、磁気ディスク装置19は、ディスクエンクロージャ1内に、磁気ディスク12と、ヘッドスライダを含む磁気ヘッド14と、磁気ヘッド14を支持するヘッドサスペンションアッセンブリ15と、ボイスコイルモータ(VCM)18と、回路基板とを備える。
【0023】
回路基板には、ヘッドICの他、温湿度センサ16が設置されている。温度センサは、熱電対やサーミスタ、IC化温度センサ、バンドギャップベース温度センサなどを使用できる。又、湿度センサは、抵抗式や静電容量式のポリマー湿度センサなどが用いられる。
【0024】
磁気ディスク12は、スピンドルモータ11に取り付けられ、回転する。ヘッドサスペンションアッセンブリ15は、ピボット17に取り付けられ、ボイスコイルモータ(VCM)18によって、磁気ヘッド14を、磁気ディスク12の任意の半径位置に位置決めする。
【0025】
ランプロード機構13は、磁気ディスク12から退避した磁気ヘッド14をパーキングするための機構である。この実施の形態の磁気ディスク装置では、ランプロード機構13を備えているが、装置停止中、磁気ヘッド14が、磁気ディスク12のある特定の領域で待機するコンタクト・スタート・ストップ方式の磁気ディスク装置でも、同様に適用できる。
【0026】
図2は、図1の磁気ヘッド14を、磁気ディスク12の周方向からみた断面図である。磁気ヘッド14内には、記録コイル23と記録コア28からなるライト素子と、再生(リード)素子21と、ヒータ(発熱素子)22とが設けられている。再生素子21は、GMR素子(Giant Magneto Resistance素子)やTMR素子(Tunneling Magneto Resistance素子)が用いられる。
【0027】
磁気ヘッド14表面には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)保護膜27が形成されている。このダイヤモンドライクカーボン(DLC)保護膜27の表面エネルギーは高いため、潤滑膜や水蒸気、その他コンタミネーションが付着しやすい。ここで、本実施の形態では、磁気ヘッド14の表面に、低表面エネルギー処理が施されている。低表面エネルギー化は、フッ素イオン注入やフッ素系樹脂の塗布により可能である。
【0028】
一方、磁気ディスク12には、基板29上に、磁性膜26(垂直記録ディスクの場合、SUL層等も含む。)、その上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)保護膜25、その上の最表面には潤滑膜24が形成されている。
【0029】
この潤滑膜24は、塗布条件や処理条件により、下地膜であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)保護膜25に吸着している成分の量が変化する。例えば、加熱処理やUV照射処理を施すことにより、吸着成分は増加する。
【0030】
図3は、本発明の磁気ディスク装置の一実施例の回路ブロック図、図4は、そのライト電流の波形図、図5は、ライト電流波形の調整パラメータの説明図である。図3において、図1、図2で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。
【0031】
図3に示すように、図1で説明したディスクエンクロージャ(DE)1のVCM18の近傍には、プリアンプ(ヘッドIC)60が設けられている。更に、DE1には、DE1内の温度、湿度を検出する温度/湿度センサ16が設けられている。
【0032】
一方、プリント回路アッセンブリ(制御回路部)30には、ハードディスクコントローラ(HDC)34、マイクロコントローラ(MCU)33、リード/ライトチャネル回路(RDC)32、サーボコントロール回路37、データバッファ(RAM)35、ROM(リードオンリーメモリ)36が設けられている。この実施の形態では、HDC34,MCU33,RDC32は、1つのLSI31内に設けられている。
【0033】
リード/ライトチャネル回路(RDC)32は、プリアンプ60に接続され、磁気ヘッド14のデータ読み取り及び書込みを制御する。即ち、信号整形、データ変調及びデータ復調を行う。サーボコントロール回路(SVC)37は、スピンドルモータ11を駆動制御し、且つVCM18を駆動制御する。
【0034】
ハードディスクコントローラ(HDC)34は、主に、インターフェイス・プロトコル制御、データバッファ制御、ディスク・フォーマット制御を行う。データバッファ(RAM)35は、リードデータやライトデータを一時格納する。
【0035】
又、データバッファ35は、後述するライト電流テーブル38を記憶する。このライト電流テーブル38は、磁気ディスク12のシステム領域に格納されており、装置の起動時に、磁気ディスク12のシステム領域から読み出され、データバッファ(RAM)35に格納される。
【0036】
マイクロコントローラ(MCU)33は、HDC34、RDC32、SVC37の制御と、RAM35、ROM36の管理を行う。ROM36は、各種のプログラムやパラメータを格納する。
【0037】
又、図3のプリアンプ60は、リード素子21(図2参照)からのリード信号を増幅して、リードチャネル回路32に出力するリードドライバ(アンプ)64と、リードチャネル回路32からの設定電力量を受け、磁気ヘッド14の発熱体22を駆動するヒータ駆動回路61と、ヒータ駆動回路61を制御するヒータ制御回路(図示せず)とを有する。
【0038】
更に、図3のプリアンプ60は、MCU33から、ライト電流パラメータが設定され、リードチャネル回路32のライト信号(2値)により、ライト電流波形(図4で後述する)を生成し、ライト電流をライトコイル23に供給するライトドライバ63を有する。
【0039】
図4及び図5により、図3のライトドライバ63のライト電流波形の生成動作を説明する。図4は、縦軸が、電流の大きさ、横軸が時間を示す。ライトドライバ63は、ライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssと、立ち上がり時間tcswとを変更できる。
【0040】
図5に示すように、ライトドライバ63の回路特性から、設定値0〜15(4ビット)に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssと、立ち上がり時間tcswとの値が、設計上決定されている。
【0041】
例えば、ライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkに対し、設定値を「1」と指定すると、ライトピーク電流値は、「16.19mA」のライト波形が、ライト駆動電流値Iwo−ssに対し、設定値「2」を指定すると、ライト駆動電流値が、「54mA」のライト波形が生成される。
【0042】
以下、このライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssと、立ち上がり時間tcswの設定値を、Iwパラメータと称す。
【0043】
(ライト電流調整の第1の実施の形態)
図6は、本発明のライト電流調整の第1の実施の形態の説明図、図7は、図6のライト電流による熱突き出しの説明図、図8は、図7のライト開始時の拡大図である。
【0044】
図6に示すように、エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、個々のライト時間を短くする。これにより、ライト素子の発熱を軽減し、さらにライト毎に、インターバル時間を入れる事で、ライト素子の冷却を行い、ライト電流による熱突き出しを抑える。
【0045】
又、ライト電流を変える事で生じる熱突き出し量の変化も抑え、磁気スペーシングを一定に保つことができ、スペーシング変化の影響から独立して、ライト電流の最適化を行うことが可能となる。
【0046】
図6のように、エラーレート測定範囲をセクタ0〜n−1とする。通常、エラーレート測定範囲は、磁気ディスク12のトラック1周であり、例えば、測定範囲は、1000セクタである。
【0047】
磁気ディスク12の第1周目には、セクタ0をライトし、セクタ1〜n−1は、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。第2周目には、セクタ1をライトし、セクタ0,2〜n−1は、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。磁気ディスク12の第3周目には、セクタ2をライトし、セクタ0、1、3〜n−1は、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。以下、同様に、磁気ディスク12の第n周目には、セクタ(n−1)をライトし、セクタ0〜n−2は、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。
【0048】
このように、エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、個々のライト時間を短くし、且つインターバル時間を挿入して、ライトして、全エラーレート測定範囲のセクタに、ライトを行う。
【0049】
次に、エラーレート測定範囲を、1回のリードコマンドでリードする。即ち、エラーレート測定範囲のセクタ0〜n−1を、磁気ディスク12の1回転の間に、リードし、リードチャネル回路32で、各セクタのエラーの有無を検出し、MCU33が、その結果を受け、測定範囲のエラーレートを計算する。
【0050】
又、測定のばらつきを軽減するため、前述のリード動作を複数回繰り返し、エラーレートを測定し、複数回の平均値を、測定エラーレートとして、決定する。尚、ライトは、繰り返す必要がない。
【0051】
このライトとリードを、Iwパラメータを変更して、Iwパラメータ毎にエラーレートを測定し、後述するように、基本的には、エラーレートが最小のIwパラメータを、ライト電流最適値に決定する。
【0052】
図7及び図8は、ライト電流による熱突き出しのシミュレーションによる特性図である。図中、d,e,fは、従来の連続セクタを連続してライトした場合のスペーシング特性であり、dは、ライト電流の設定最小値の場合、eは、ライト電流の設計値の場合、fは、ライト電流の設定最大値の場合を示す。
【0053】
又、図中、a,b,cは、本実施の形態による、連続セクタを分割してライトした場合のスペーシング特性であり、aは、ライト電流の設定最小値の場合、bは、ライト電流の設計値の場合、cは、ライト電流の設定最大値の場合を示す。
【0054】
尚、スペーシング特性は、磁気ヘッドの熱膨張率を測定しておき、シミュレーションにより、ライト素子にライト電流を印加した場合の、印加時間、電流値から算出した。
【0055】
図7及び図8のd,e,fの特性で明らかな如く、従来のライト電流調整のライト方法では、ライト電流を流しながら、連続してセクタをライトするため、ライト開始時(ここでは、セクタ0)から、次第に、スペーシングが、小さくなり、又、流すライト電流値によっても、スペーシングの変化量が相違する。
【0056】
一方、本実施の形態では、分割して、ライトし、インターバルを挿入するため、a、b、cの特性のように、スペーシングの変化は、極めて小さく(図では、0.5nm程度)、磁気スペーシングの変化を抑えて、ライト電流の調整ができる。又、流す電流値によっても、スペーシングの変化は、極めて小さく、磁気スペーシングの変化を抑えて、ライト電流の調整ができる。
【0057】
このように、設定ライト電流による、及び設定ライト電流を変える事で生じる熱突き出し量の変化を抑えることができ、磁気スペーシングを一定に保ちながら、ライト電流の調整ができる。このため、スペーシング変化の影響から独立してライト電流の調整が出来るようになり、調整精度の向上が期待できる。
【0058】
(ライト電流調整処理)
図9は、本発明のライト電流調整処理の第1の実施の形態のフロー図であり、装置の出荷前に、MCU33が、行う測定処理を示す。又、図10は、エラーレートのライト電流パラメータの依存特性の説明図、図11は、図9により、作成されるライト電流テーブル38の説明図である。
【0059】
図10、図11を参照して、図9の処理を説明する。
【0060】
(S10)MCU33には、先ず、ライト電流調整プログラムが、図示しない外部装置からインストールされる。MCU33は、リード時のスペーシングを調整する。即ち、MCU33は、発熱素子22のヒーターパワーを増加しながら、リード素子21で、磁気ディスク12のデータをリードし、リード信号から、磁気ヘッド14が、磁気ディスク12に接触したかを判定し、接触したと判定した時のヒーターパワーから、所望のスペーシング(例えば、5nm)に要するヒーターパワーを換算し、そのヒーターパワーを発熱素子22のヒータ制御回路に設定する。所謂、タッチダウン測定を行う。これにより、リード時のスペーシングが調整される。次に、MCU33は、ライト時のスペーシングを大まかに調整する。即ち、ライト時のスペーシングは、ライトによるヘッドの熱膨張を考慮し、リード時のスペーシングのヒーターパワーより小さいヒーターパワーに設定する。
【0061】
(S12)MCU33は、ライトドライバ63の電流パラメータIwを初期化する。図5で説明したように、電流パラメータIwは、設定値0〜15(4ビット)に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssと、立ち上がり時間tcswとの値が、選択できる。ここでは、設定値0〜15(4ビット)に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssとを変更する。そして、初期値は、例えば、設定値0に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssの値を選択する。尚、設定値0〜15(4ビット)に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssとは、個々に選択でき、図5の例では、16*16=256の数の選択ができる。
【0062】
(S14)MCU33は、ライトするセクタ番号mを「0」に初期化する。
【0063】
(S16)MCU33は、磁気ディスク12の回転に同期して、リードチャネル回路31を介し、測定用ライトデータを、ライトドライバ63に送り、設定した電流パラメータIwのライト波形を生成させ、磁気ディスク12のセクタ0に、磁気ヘッド14のライト素子23により、ライトする。そして、MCU33は、セクタ番号mを、「m+1」にインクリメントする。
【0064】
(S18)MCU33は、セクタ番号mが、エラーレート測定範囲の「n−1」を越えたかを判定する。MCU33は、セクタ番号mが、「n−1」を越えていないと判定すると、磁気ディスク12の回転を待ち、即ち、インターバルを挿入して、ステップS16に戻る。このようにして、図6で説明したような、エラーレート測定範囲を分割し、且つインターバルを挿入したセクタライトを実行する。
【0065】
(S20)一方、MCU33は、セクタ番号mが、エラーレート測定範囲の「n−1」を越えたと判定すると、設定した電流パラメータIwでの、エラーレート測定範囲のライトは、終了したと判定し、リードに移る。MCU33は、リードチャネル回路31に、エラーレート測定範囲の各セクタ0〜n−1のリードコマンドを指示する。磁気ヘッド14のリード素子21は、磁気ディスク12のセクタ0〜n−1をリードし、リード信号を、リードチャネル回路32に出力する。リードチャネル回路32は、セクタ毎に、リード信号を復調し、エラー訂正して、リードデータに変換する。この時、MCU33は、リードチャネル回路32の復調情報からエラーレートを計算する。例えば、リードチャネル回路32に設けられたビタビ復号器(最尤復号器)の尤度情報により、エラーレートを測定する。
【0066】
(S22)MCU33は、ライトドライバ63の電流パラメータIwを変更する。ステップS12及び図5で説明したように、設定値0〜15(4ビット)に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssとを変更する。例えば、設定値0に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、設定値1に対応するライト駆動電流値Iwo−ssの値を選択する。
【0067】
(S24)MCU33は、選択した電流パラメータIwが、最大値を越えたかを判定する。図5では、設定値15(4ビット)に対応するライトピーク(オーバーシュート)電流値Iwo−pkと、ライト駆動電流値Iwo−ssとが、最大値である。MCU33は、選択した電流パラメータIwが、最大値を越えていないと判定すると、この変更した電流パラメータIwでライトするため、ステップS14に戻る。この例では、図5の256通りの電流パラメータの変更を行う。
【0068】
(S26)MCU33は、選択した電流パラメータIwが、最大値を越えていると判定すると、図5の256通りの電流パラメータIwでライトし、エラーレートを測定し終わったと判断する。MCU33は、この結果から最適ライト電流(電流パラメータ)を決定する。基本的には、エラーレートが最小の電流パラメータを、最適ライト電流として、決定する。
【0069】
(S28)MCU33は、ライトアシスト・プリヒート調整を行う。ライト時の素子スペーシングが、リード時の素子スペーシングと同じになるように、エラーレートを元に、ライト時のヒータ発熱量を調整する。そして、ライト電流調整を終了する。
【0070】
図10は、測定結果としてのライトピーク(オーバーシュート)電流値と、測定されたエラーレートとの関係の一例の図であり、横軸は、ライト電流オーバーシュートを、mAで表示し、縦軸は、エラーレートを、ビットエラーレート(BER)で示す。例えば、BER=−5.0は、1/10の5乗のビットエラーレート(10万ビット中、1ビットがエラー)である。
【0071】
図10の例では、本実施の形態の測定結果を、ひし形のプロットで、比較のため、従来のライト電流調整による測定結果を、正方形のプロットで図示している。図10のひし形のプロットから、エラーレートが最小となる101mAのライトピーク電流値が、最適なライト電流値として、選択される。
【0072】
又、図10から理解されるように、従来の方法(正方形のプロット)では、ライト電流を増加させると、磁気スペーシングも変化する。即ち、電流を増やすと、熱膨張により、ヘッドと媒体間の距離が近くなる。このため、電流を増やすほど、エラーレートが良くなる傾向がある。
【0073】
一方、本実施の形態のライト方法では、磁気スペーシングが変化しないため、電流を上げると、単純にエラーレートが良くなる訳ではなく、悪化するケースもあり、図10は、これを示している。
【0074】
尚、測定ばらつきを除去するため、更に、測定結果に対し、移動平均を行うと良い。例えば、図10では、電流値が、76mA、85mA,95mAのエラーレートの平均値により、85mAのエラーレートを計算する。
【0075】
又、他の要因、例えば、サイドイレーズ特性や、電流値Iwの飽和特性の未飽和領域に対する余裕等を考慮して、エラーレートが最小のライト電流を決定しても良い。
【0076】
図11に示すように、ライト電流パラメータテーブル38(図3も参照)には、この決定した電流パラメータ調整値が格納される。この場合、磁気ディスク装置のヘッド毎に、電流パラメータ調整値を測定し、テーブル38に格納する。
【0077】
又、ゾーンビットレコーデイング方式(ゾーン毎に、周波数を変えて、ライトする)の場合には、ゾーン毎に、電流パラメータ調整値が異なる場合があるため、ゾーン(ゾーンの代表トラック)毎に、電流パラメータ調整値を測定し、テーブル38に格納する。例えば、磁気ディスク12の半径方向を、30ゾーンに分割し、各々のゾーンの代表トラックで、電流パラメータ調整値を測定し、そのゾーンの調整値として、テーブル38に格納する。
【0078】
更に、30ゾーンに分割した場合に、ゾーン0、9,19、29で、測定を行い、他のゾーンの調整値は、これらの補完値を使用するようにしても良い。
【0079】
MARTデータ118に格納してある初期のエラーレートと比較して、エラーレートが改善されたかを判定する。MCU33は、エラーレートが改善された場合には、DFHヒータパワー補正処理を終了する。一方、エラーレートが改善されなければ、ステップS38に戻り、ヒータパワーを増加する処理を行う。
【0080】
(ライト電流調整の第2の実施の形態)
図12は、本発明のライト電流調整の第2の実施の形態の説明図である。
【0081】
図12に示すように、図6と同様に、エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、個々のライト時間を短くする。これにより、ライト素子の発熱を軽減し、さらにライト毎に、インターバル時間を入れる事で、ライト素子の冷却を行い、ライト電流による熱突き出しを抑える。
【0082】
又、ライト電流を変える事で生じる熱突き出し量の変化も抑え、磁気スペーシングを一定に保つことができ、スペーシング変化の影響から独立して、ライト電流の最適化を行うことが可能となる。
【0083】
図12に示すように、エラーレート測定範囲をセクタ0〜n−1とすると、磁気ディスク12の第1周目には、セクタ0を、ライトし、m(=5)セクタ間隔で、スキップし、セクタm(=5)を、ライトし、更に、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ2m(=10)を、ライトする。その中間のセクタ1〜4、6〜9、11〜は、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。
【0084】
第2周目には、セクタ1を、ライトし、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ6を、ライトし、更に、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ11を、ライトする。その中間のセクタは、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。
【0085】
以下、同様に、磁気ディスク12の第m周目には、セクタ4を、ライトし、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ9を、ライトし、更に、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ14を、ライトする。その中間のセクタは、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。
【0086】
このように、エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、個々のライト時間を短くし、且つインターバル時間を挿入して、ライトして、全エラーレート測定範囲のセクタに、ライトを行う。
【0087】
次に、エラーレート測定範囲を、1回のリードコマンドでリードする。即ち、エラーレート測定範囲のセクタ0〜n−1を、磁気ディスク12の1回転の間に、リードし、リードチャネル回路32で、各セクタのエラーの有無を検出し、MCU33が、その結果を受け、測定範囲のエラーレートを計算する。
【0088】
又、測定のばらつきを軽減するため、前述のリード動作を複数回繰り返し、エラーレートを測定し、複数回の平均値を、測定エラーレートとして、決定する。尚、ライトは、繰り返す必要がない。
【0089】
このライトとリードを、Iwパラメータを変更して、Iwパラメータ毎にエラーレートを測定し、後述するように、基本的には、エラーレートが最小のIwパラメータを、ライト電流最適値に決定する。
【0090】
この実施の形態では、1回転で、mセクタ間隔で、複数のセクタをライトするため、ライト時間は、m回転でよく、測定時間の短縮を実現できる。
【0091】
(ライト電流調整の第3の実施の形態)
図13は、本発明のライト電流調整の第3の実施の形態の説明図である。
【0092】
図13に示すように、図6、図12と同様に、エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、個々のライト時間を短くする。これにより、ライト素子の発熱を軽減し、さらにライト毎に、インターバル時間を入れる事で、ライト素子の冷却を行い、ライト電流による熱突き出しを抑える。
【0093】
又、ライト電流を変える事で生じる熱突き出し量の変化も抑え、磁気スペーシングを一定に保つことができ、スペーシング変化の影響から独立して、ライト電流の最適化を行うことが可能となる。
【0094】
図13に示すように、エラーレート測定範囲をセクタ0〜n−1とすると、磁気ディスク12の第1周目には、セクタ0を、第1のライト電流パラメータで、ライトし、mセクタ間隔で、スキップし、セクタm+1を、第2のライト電流パラメータで、ライトし、更に、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ2m+1を、第3のライト電流パラメータで、ライトする。その中間のセクタ1〜m、m+2〜2m、2m+2〜は、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。
【0095】
第2周目には、セクタ1を、第4のライト電流パラメータで、ライトし、mセクタ間隔で、スキップし、セクタm+2を、第5のライト電流パラメータで、ライトし、更に、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ2m+2を、第6のライト電流パラメータで、ライトする。その中間のセクタは、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。
【0096】
以下、同様に、磁気ディスク12の第m周目には、セクタmを、第2mのライト電流パラメータで、ライトし、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ2mを、他のライト電流パラメータで、ライトし、更に、mセクタ間隔で、スキップし、セクタ3mを、更に他のライト電流パラメータで、ライトする。その中間のセクタは、ライトしない(即ち、ライト電流を流さない)。
【0097】
このように、エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、個々のライト時間を短くし、且つインターバル時間を挿入して、ライトして、全エラーレート測定範囲のセクタに、ライトを行う。
【0098】
次に、エラーレート測定範囲を、1回のリードコマンドでリードする。即ち、エラーレート測定範囲のセクタ0〜n−1を、磁気ディスク12の1回転の間に、リードし、リードチャネル回路32で、各セクタのエラーの有無を検出し、MCU33が、その結果を受け、測定範囲のエラーレートを計算する。
【0099】
又、測定のばらつきを軽減するため、前述のリード動作を複数回繰り返し、エラーレートを測定し、複数回の平均値を、測定エラーレートとして、決定する。尚、ライトは、繰り返す必要がない。
【0100】
この時、電流切り替えしているため、ライト電流、即ち、Iwパラメータ毎に、測定したエラーレートを分類し、基本的には、エラーレートが最小のIwパラメータを、ライト電流最適値に決定する。
【0101】
この実施の形態では、ライトシーケンスにおいて、1回転で、mセクタライトし、且つ電流切り替えするため、第1、第2の実施の形態のように、ライトシーケンスを調整範囲の電流パラメータ毎に行う必要がない。このため、更に、測定時間を短縮できる。
【0102】
尚、本実施の形態を要約すると、以下の通りである。
【0103】
磁気ディスクの製造方法は、磁気ディスクの回転により浮上する、少なくとも、リード素子とライト素子と、発熱素子とを有する磁気ヘッドと、前記磁気ディスクの半径方向に、前記磁気ヘッドを移動するアクチュエータと、外部からのコマンドに応じて、前記磁気ヘッドにより、前記磁気ディスクのデータのリード及びライトを実行する制御回路とを有する磁気ディスク装置の製造方法であって、前記磁気ヘッドのライト素子により、エラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトするステップと、前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトするステップと、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定するステップと、前記測定されたエラーレートが最小である前記ライト電流値を決定するステップと、前記決定したライト電流値を前記磁気ヘッドのライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップとを有する。
【0104】
又、前記磁気ディスク装置の複数の磁気ヘッドの各々に対し、前記ライトステップと、前記エラーレート測定ステップを行うステップを更に有し、前記格納ステップは、前記決定した個々の磁気ヘッドのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップからなる。
【0105】
又、前記磁気ディスクの半径方向に分割した複数のゾーンの各々で、前記ライトステップと、前記エラーレート測定ステップを行うステップを更に有し、前記格納ステップは、前記決定した個々のゾーンのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップからなる。
【0106】
又、前記両ライトステップは、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、複数のセクタに信号をライトするステップからなる。
【0107】
又、前記両ライトステップは、前記複数のセクタ間で、設定したライト電流値を変更して、信号をライトするステップからなる。
【0108】
又、前記両ライトステップは、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、1つのセクタに信号をライトするステップからなる。
【0109】
又、前記エラーレート測定ステップは、前記リード信号を復調する際の尤度情報から、前記エラーレートを測定するステップからなる。
【0110】
又、前記エラーレート測定ステップは、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタを複数回リードし、複数回のエラーレートを測定し、その平均値を計算するステップからなる。
【0111】
更に、磁気ディスク装置は、磁気ディスクの回転により浮上する、少なくとも、リード素子とライト素子と、発熱素子とを有する磁気ヘッドと、前記磁気ディスクの半径方向に、前記磁気ヘッドを移動するアクチュエータと、外部からのコマンドに応じて、前記磁気ヘッドにより、前記磁気ディスクのデータのリード及びライトを実行する制御回路とを有し、前記制御回路は、前記前記磁気ヘッドのライト素子のライト電流値を格納するテーブルを有し、前記テーブルのライト電流値は、前記磁気ディスクのエラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトし、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定し、前記測定して得たエラーレートが最小である前記ライト電流値である。
【0112】
更に、前記テーブルは、前記磁気ディスク装置の複数の磁気ヘッドの各々に対し、前記測定により、決定した個々の磁気ヘッドのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、格納する。
【0113】
更に、前記テーブルは、前記磁気ディスクの半径方向に分割した複数のゾーンの各々で、前記測定により、決定した個々のゾーンのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、格納する。
【0114】
更に、前記制御回路は、前記磁気ディスクのエラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトし、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定し、前記測定して得たエラーレートが最小である前記ライト電流値を、前記テーブルに格納する。
【0115】
更に、前記制御回路は、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、複数のセクタに信号をライトする。
【0116】
更に、前記制御回路は、前記複数のセクタ間で、設定したライト電流値を変更して、信号をライトする。
【0117】
更に、前記制御回路は、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、1つのセクタに信号をライトする。
【0118】
更に、前記制御回路は、前記リード信号を復調する際の尤度情報から、前記エラーレートを測定する。
【0119】
更に、前記制御回路は、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタを複数回リードし、複数回のエラーレートを測定し、その平均値を計算する。
【0120】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、1枚の磁気ディスクを搭載した磁気ディスク装置で説明したが、2枚以上の磁気ディスクを搭載した装置にも適用できる。同様に、磁気ヘッドの形態は、図2のものに限らず、他の分離型磁気ヘッドの形態にも適用できる。エラーレート測定範囲も、実施の形態に限らず、他の範囲を採用しうる。
【0121】
尚、本発明は、以下に付記する発明を包含する。
【0122】
(付記1)磁気ディスクの回転により浮上する、少なくとも、リード素子とライト素子と、発熱素子とを有する磁気ヘッドと、前記磁気ディスクの半径方向に、前記磁気ヘッドを移動するアクチュエータと、外部からのコマンドに応じて、前記磁気ヘッドにより、前記磁気ディスクのデータのリード及びライトを実行する制御回路とを有する磁気ディスク装置の製造方法であって、前記磁気ヘッドのライト素子により、エラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトするステップと、前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトするステップと、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定するステップと、前記測定されたエラーレートが最小である前記ライト電流値を決定するステップと、前記決定したライト電流値を前記磁気ヘッドのライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップとを有することを特徴とする磁気ディスク装置の製造方法。
【0123】
(付記2)前記磁気ディスク装置の複数の磁気ヘッドの各々に対し、前記ライトステップと、前記エラーレート測定ステップを行うステップを更に有し、前記格納ステップは、前記決定した個々の磁気ヘッドのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップからなることを特徴とする付記1の磁気ディスク装置の製造方法。
【0124】
(付記3)前記磁気ディスクの半径方向に分割した複数のゾーンの各々で、前記ライトステップと、前記エラーレート測定ステップを行うステップを更に有し、前記格納ステップは、前記決定した個々のゾーンのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップからなることを特徴とする付記1の磁気ディスク装置の製造方法。
【0125】
(付記4)前記両ライトステップは、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、複数のセクタに信号をライトするステップからなることを特徴とする付記1の磁気ディスク装置の製造方法。
【0126】
(付記5)前記両ライトステップは、前記複数のセクタ間で、設定したライト電流値を変更して、信号をライトするステップからなることを特徴とする付記4の磁気ディスク装置の製造方法。
【0127】
(付記6)前記両ライトステップは、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、1つのセクタに信号をライトするステップからなることを特徴とする付記1の磁気ディスク装置の製造方法。
【0128】
(付記7)前記エラーレート測定ステップは、前記リード信号を復調する際の尤度情報から、前記エラーレートを測定するステップからなることを特徴とする付記1の磁気ディスク装置の製造方法。
【0129】
(付記8)前記エラーレート測定ステップは、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタを複数回リードし、複数回のエラーレートを測定し、その平均値を計算するステップからなることを特徴とする付記1の磁気ディスク装置の製造方法。
【0130】
(付記9)磁気ディスクの回転により浮上する、少なくとも、リード素子とライト素子と、発熱素子とを有する磁気ヘッドと、前記磁気ディスクの半径方向に、前記磁気ヘッドを移動するアクチュエータと、外部からのコマンドに応じて、前記磁気ヘッドにより、前記磁気ディスクのデータのリード及びライトを実行する制御回路とを有し、前記制御回路は、前記前記磁気ヘッドのライト素子のライト電流値を格納するテーブルを有し、前記テーブルのライト電流値は、前記磁気ディスクのエラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトし、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定し、前記測定して得たエラーレートが最小である前記ライト電流値であることを特徴とする磁気ディスク装置。
【0131】
(付記10)前記テーブルは、前記磁気ディスク装置の複数の磁気ヘッドの各々に対し、前記測定により、決定した個々の磁気ヘッドのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、格納することを特徴とする付記9の磁気ディスク装置。
【0132】
(付記11)前記テーブルは、前記磁気ディスクの半径方向に分割した複数のゾーンの各々で、前記測定により、決定した個々のゾーンのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、格納することを特徴とする付記9の磁気ディスク装置。
【0133】
(付記12)前記制御回路は、前記磁気ディスクのエラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトし、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定し、前記測定して得たエラーレートが最小である前記ライト電流値を、前記テーブルに格納することを特徴とする付記9の磁気ディスク装置。
【0134】
(付記13)前記制御回路は、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、複数のセクタに信号をライトすることを特徴とする付記12の磁気ディスク装置。
【0135】
(付記14)前記制御回路は、前記複数のセクタ間で、設定したライト電流値を変更して、信号をライトすることを特徴とする付記13の磁気ディスク装置。
【0136】
(付記15)前記制御回路は、前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、1つのセクタに信号をライトすることを特徴とする付記9の磁気ディスク装置。
【0137】
(付記16)前記制御回路は、前記リード信号を復調する際の尤度情報から、前記エラーレートを測定することを特徴とする付記9の磁気ディスク装置。
【0138】
(付記17)前記制御回路は、前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタを複数回リードし、複数回のエラーレートを測定し、その平均値を計算することを特徴とする付記9の磁気ディスク装置。
【産業上の利用可能性】
【0139】
エラーレート測定範囲に対して行うライトを、複数回に分割し、ライト毎に、インターバル時間を入れる事で、ライト素子の冷却を行い、ライト電流による熱突き出しを抑える。又、ライト電流を変える事で生じる熱突き出し量の変化も抑え、磁気スペーシングを一定に保つことができ、スペーシング変化の影響から独立して、ライト電流の最適化を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0140】
1 磁気ディスクエンクロージャ(DE)
11 スピンドルモータ
12 磁気ディスク
14 磁気ヘッド
16 温度/湿度センサ
18 アクチュエータ(VCM)
21 リード素子
22 発熱素子
23 ライト素子
30 制御回路基板
32 リードチャネル回路(RDC)
33 マイクロコントローラ(MCU)
34 ハードディスクコントローラ(HDC)
35 データバッファ(RAM)
36 ROM
37 サーボコントローラ
38 ライト電流テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクの回転により浮上する、少なくとも、リード素子とライト素子と、発熱素子とを有する磁気ヘッドと、前記磁気ディスクの半径方向に、前記磁気ヘッドを移動するアクチュエータと、外部からのコマンドに応じて、前記磁気ヘッドにより、前記磁気ディスクのデータのリード及びライトを実行する制御回路とを有する磁気ディスク装置の製造方法であって、
前記磁気ヘッドのライト素子により、エラーレート測定範囲の複数のセクタの先頭セクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトするステップと、
前記磁気ヘッドのライト素子により、前記先頭セクタの次のセクタから、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、信号をライトし、前記エラーレート測定範囲の全セクタに信号をライトするステップと、
前記磁気ヘッドのリード素子により、前記エラーレート測定範囲の全セクタをリードし、エラーレートを測定するステップと、
前記測定されたエラーレートが最小である前記ライト電流値を決定するステップと、
前記決定したライト電流値を前記磁気ヘッドのライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップとを有する
ことを特徴とする磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項2】
前記磁気ディスク装置の複数の磁気ヘッドの各々に対し、前記ライトステップと、前記エラーレート測定ステップを行うステップを更に有し、
前記格納ステップは、前記決定した個々の磁気ヘッドのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップからなる
ことを特徴とする請求項1の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項3】
前記磁気ディスクの半径方向に分割した複数のゾーンの各々で、前記ライトステップと、前記エラーレート測定ステップを行うステップを更に有し、
前記格納ステップは、前記決定した個々のゾーンのライト電流値を、ライト電流パラメータとして、テーブルに格納するステップからなる
ことを特徴とする請求項1の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項4】
前記両ライトステップは、
前記磁気ディスクの1回転で、m(m>1、整数)セクタの間隔で、設定されたライト電流値で、複数のセクタに信号をライトするステップからなる
ことを特徴とする請求項1の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項5】
前記両ライトステップは、
前記複数のセクタ間で、設定したライト電流値を変更して、信号をライトするステップからなる
ことを特徴とする請求項4の磁気ディスク装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−176749(P2010−176749A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18309(P2009−18309)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】