説明

磁気ディスク装置

【課題】初期値の設定に関わらず、収束時間の増大を抑制し、所望の性能を発揮できる磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】磁気ヘッド5の位置を制御する回路が、誤差信号の周波数を推定する周波数推定器であって、当初、初期値を設定するとともに、当該初期値と、誤差信号に含まれる除去対象の信号の周波数との差に関わらず、当該除去対象の信号周波数に対する推定する周波数の収束率が一定となるよう、推定する周波数の更新幅を制御する周波数推定器と、誤差信号に含まれる、周波数推定器によって推定された周波数成分の信号とは逆相の信号を生成して出力する外乱除去器と、を含む磁気ディスク装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクなどの磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク等の磁気ディスク装置では、磁気記録媒体である円盤(ディスク)上に形成された円周状の軌道(トラック)に、データが記録される。そこで、このデータを書き込み、または読み出すため、磁気ヘッドをトラックの位置に移動させる、位置決め制御が必要となる。こうしたヘッドの位置決め機構においては、様々な要因によって生じる周期的な外乱への対策が種々施されている。
【0003】
ところが、これらの外乱には、例えば磁気ディスク装置が外部から受ける振動など、予めその周波数などが特定しにくいものや、周波数が時間的に変動していく外乱もある。一方で、目標となるトラックに対して磁気ヘッドの位置を維持するための追従制御は、幅広い帯域にわたる外乱抑圧を行う目的で設計されている。このため、特定の周波数成分の外乱に対し、その抑圧能力が十分でない場合がある。
【0004】
近年では、磁気ディスク装置は、携帯型のコンピュータや、携帯電話装置、カーナビゲーションシステムなど幅広い分野に利用されるようになっており、外部的な振動を十分に抑圧する技術が求められている。
【0005】
そこで、特定の周波数成分の信号を除去する共振フィルタを用い、この共振フィルタの共振周波数を反復的に更新し、外乱の周波数に漸近させ、外乱を除去する方法が、特許文献1に開示されている。また、非特許文献1には、この反復的な更新を行うときに、位置誤差の二乗を最小とするよう更新幅を変更する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−109335号公報
【非特許文献1】M.Kisaka, "FrequencyChasing Peak Filter", IEE of Japan Technical Meeting Record, No.IIC-04-70, pp.19-23 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この非特許文献1に開示の方法によれば、収束の速度を高めつつ、更新幅を一定とした場合に比し、共振フィルタの共振周波数をより目的の周波数に近接させることができ、外乱抑圧性能を向上できる。しかしながら、非特許文献1に開示の方法でも、推定周波数の初期値が目標の周波数から大きくなるほど、収束時間が大きくなるため、初期値と外乱の関係によっては、収束時間が増大し、所望の性能を発揮できない場合がある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、初期値の設定に関わらず、収束時間の増大を抑制し、所望の性能を発揮できる磁気ディスク装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、磁気ディスク装置であって、所定の軌道に沿ってデータが記録されている磁気ディスク媒体と、前記磁気ディスク媒体に対して相対移動し、前記データの書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッドと、前記所定軌道に対する前記磁気ヘッドの位置誤差を表わす誤差信号の入力を受け入れ、前記磁気ヘッドが前記所定の軌道上に位置するよう、磁気ヘッドの位置を制御する位置制御回路と、を備え、前記位置制御回路が、前記誤差信号の周波数を推定する周波数推定器であって、当初、初期値を設定するとともに、当該初期値と、前記誤差信号に含まれる除去対象の信号の周波数との差に関わらず、当該除去対象の信号周波数に対する前記推定する周波数の収束率が一定となるよう、前記推定する周波数の更新幅を制御する周波数推定器と、前記誤差信号に含まれる、前記周波数推定器によって推定された周波数成分の信号とは逆相の信号を生成して出力する外乱除去器と、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る磁気ディスク装置は、例えば図1に示すようなハードディスク装置であり、磁気ディスク媒体1と、スピンドルモータ(SPM)2と、磁気ヘッド5と、キャリッジ6と、サスペンション7と、フレキシブルサーキット8と、ヘッド信号増幅器9と、変復調器10と、ボイスコイルモータ(VCM)11と、マイクロプロセッサ(MPU)14と、記憶部16と、ディジタル・アナログ変換回路(D/A変換回路)18と、駆動用アンプ19と、インタフェースコントローラ20と、ホスト側コントローラ21とを含んで構成される。なお、D/A変換回路18、変復調器10、MPU14、記憶部16、インタフェースコントローラ20は、相互にバスライン15を介して接続されている。
【0010】
磁気ディスク媒体1はSPM2によって回転駆動される。この磁気ディスク媒体1上には、回転中心を中心とした同心円状のトラック3が複数形成されている。本実施の形態では、この同心円状のトラック3によって規定される軌道上にユーザデータが記録される。また、各トラック3上には、磁気ヘッド5の位置を検出するためのサーボセクタ4が記録されている。
【0011】
サーボセクタ4は、図2に示すように、セクタ先頭を示すマーカ部M、AGC(Automatic Gain Control)部G、トラック番号T、トラック間の位置を検出するためのバースト信号AからDを含んで構成される。磁気ヘッド5が読み取るこのサーボセクタ4の情報に基づいて、SPM2の回転数と1トラックあたりのセクタ数とで定められるサンプリング周期Tsごとに、磁気ディスク媒体1上での磁気ヘッド5の位置が検出できる。
【0012】
磁気ヘッド5は、キャリッジ6の先端部に配されたサスペンション7により支持される。磁気ヘッド5が磁気ディスク装置1から読み出した信号は、フレキシブルサーキット8を介してヘッド信号増幅器9に出力される。また、この磁気ヘッド5は、ヘッド信号増幅器9からフレキシブルサーキット8を介して入力される信号に基づき、磁気ディスク媒体に情報を記録する。
【0013】
またキャリッジ6は、VCM11により、ピボットを軸として回転駆動される。これにより、キャリッジ6の先端部に設けられた磁気ヘッド5が、磁気ディスク媒体1に対して相対移動し、前記データの書き込み及び読み出しを行うこととなる。
【0014】
ヘッド信号増幅器9は、磁気ヘッド5が読み出した信号を増幅して、変復調器10に出力する。またこのヘッド信号増幅器9は、変復調器10が出力する信号を増幅して、磁気ヘッド5に出力する。
【0015】
変復調器10は、アナログ・ディジタル変換回路(A/D変換回路)を備えており、ヘッド信号増幅器9が出力する信号をディジタル信号に変換して復調し、復調の結果をMPU14に出力する。また、この変復調器10は、ディジタル・アナログ変換回路(D/A変換回路)を備えており、MPU14が出力する、記録の対象となるデータを変調し、さらにアナログ信号に変換して、ヘッド信号増幅器9に出力する。
【0016】
VCM11は、MPU14から入力されるVCM駆動信号により制御される。MPU14は、このVCM11の制御により、磁気ヘッド5を、読み出しや記録の対象となるトラックの位置に移動し、また、当該トラックに磁気ヘッド5を追従させる制御を行う。このMPU14が出力するVCM駆動信号は、D/A変換回路18でアナログ信号に変換され、駆動用アンプ19によって増幅されてVCM11に出力されることとなる。
【0017】
MPU14は、記憶部16に格納されたプログラムに従って動作する。記憶部16は、RAM(Random Access Memory)16aと、ROM(Read Only Memory)16bとを含んで構成される。ここでRAM16aは、MPU14のワークメモリとしても動作する。また、ROM16bは、MPU14が実行するプログラムなどを格納する。具体的な例として、このMPU14は、ホスト側から入力される読み出しや書き込みの指示に従って、VCM11を制御し、磁気ヘッド5を所望のトラックへ移動させた上で、データの読み出しや書き込みの制御を行う。このVCM11の制御の処理については、後に詳しく述べる。
【0018】
インタフェースコントローラ20は、磁気ディスク媒体1から読み出されたデータの入力を、MPU14から受けて、ホスト側コントローラ21に出力する。また、このインタフェースコントローラ20は、ホスト側コントローラ21が出力するデータや、読み出しや書き込みの指示などを、MPU14へ出力する。
【0019】
ホスト側コントローラ21は、パーソナルコンピュータ等のホスト側装置に接続される。このホスト側コントローラ21は、インタフェースコントローラ20が出力するデータを、ホスト側装置へ出力する。また、ホスト側装置から入力されるデータや、指示をインタフェースコントローラ20へ出力する。
【0020】
ここでMPU14によるVCM11の制御の処理について述べる。本実施の形態のMPU14が実行するVCM11の制御の処理は、機能的には図3に示すように、追従制御補償器22と、周期的外乱除去器23と、第1加算器24と、第2加算器25とを含んで構成される。また周期的外乱除去器23は、周波数発生器31と、周波数更新器32と、フィルタ33とを含んで構成される。
【0021】
追従制御補償器22は、磁気ヘッド5の所望の位置と実際の位置との差である位置誤差信号PESの入力を受けて、比較的広い帯域に亘る位置誤差成分を抑制し、制御系全体を安定化する制御信号を生成する。この追従制御補償器22は、位置誤差の非周期的成分を抑制する回路として広く知られている回路を用いることができるので、その詳しい説明を省略する。
【0022】
周期的外乱除去器23は、追従制御補償器22と同様に、所望の位置と実際の位置との差である位置誤差信号PESの入力を受けて、そのフィルタ33と周波数発生器31とに出力する。ここで周波数発生器31は、予め定められた内部モデル(インターナルモデル)の状態変数を、位置誤差信号PESに基づいて更新し、出力する。
【0023】
周波数更新器32は、周波数発生器31が出力する状態変数と、位置誤差信号PESとに基づいて周波数の更新信号ω(k)を出力する。フィルタ33は、指定された周波数の成分の信号を生成する共振フィルタ(ピークフィルタ)であり、ここでは周波数更新器32が出力する更新信号ω(k)に基づき、位置誤差信号PESのうち、ω(k)の周波数成分を増幅した信号を出力する。このフィルタ33では、位置誤差信号PESのうち、ω(k)の周波数成分とは逆相の信号を生成して出力する。この信号は磁気ヘッド5の先端部にて外乱(磁気ヘッド5の先端の位置に影響を与える物理的外力)とキャンセルしあう力を生じさせる信号となる。
【0024】
ここで周波数発生器31が用いるインターナルモデルの状態変数を外乱除去信号として用いることも可能である。しかし本実施の形態では、これとは異なる回路として、外乱除去信号を生成する回路(フィルタ33)を設けている。これにより、推定周波数の収束速度を低下させることなく、制御系の安定を図ることができる。
【0025】
第1加算器24は、指定された位置を表わす参照位置信号Rから、磁気ヘッド5が検出した実際のヘッド位置の信号を差し引いて、位置誤差信号PESを出力する。
【0026】
第2加算器25は、追従制御補償器22の出力信号と、周期的外乱除去器23のフィルタ33が出力した信号とを加算し、さらに磁気ヘッド5を所望の位置へ移動させるための信号を加算して、磁気ヘッド5の位置を制御するためのVCM駆動信号として出力する。ここで追従制御補償器22の出力信号が、磁気ヘッド5を所望の位置へ移動させるための信号であり、フィルタ33が出力する信号が、磁気ヘッド5の先端位置に対する外乱の影響をキャンセルするための信号となる。
【0027】
次に、周期的外乱除去器23のより詳しい動作を述べる。ここでは連続系(観測により得られる値が、時間的に連続的に観測された値である系)における動作を仮定してまず説明する。
【0028】
すなわち、周波数発生器31におけるインターナルモデルの演算式は、任意のゲインKf、インターナルモデルの周波数ωを用いて、時間について一階の微分方程式として、
【数1】

と表すことができる。
【0029】
いま、未知の外乱が単一正弦波であり、他の外乱とノイズとを無視できると仮定して、外乱の角速度をωc として、入力信号を
e(t) = A sin(ωc t)
と表すとすると、状態変数x1(t)、x2(t)は、周波数ωにおけるこのシステムの振幅と位相とをそれぞれB、θとして、
【数2】

と選択できる。つまり、これらの状態変数は推定された外乱の成分と、その時間微分となる。このインターナルモデルは、L.J.Brown, Q.Zhang, "Periodic disturbance cancellation with uncertain frequency," Automatica, Vol.40, No.4, pp. 631-637, 2004 などで提案されているものである。
【0030】
ここから、状態変数x1(t)、x2(t)と周波数ωとの関係を、
【数3】

すなわち、
【数4】

と表すことができる。このようにして外乱と、その周波数との関係が得られる。
【0031】
ここでωcが未知であるので、このωcが、現在の周波数ωに十分近接していると仮定して近似値
【数5】


【数6】

として求める。この(5)式は、アークタンジェントの微分
【数7】

から求められる。ここで、
【数5】

とωとの差をεとすると、このεは(1)式を用いて、
【数8】

と表すことができる。すなわち、本実施の形態では推定誤差が、外乱周波数の推定値とインターナルモデルの状態変数及び位置誤差信号によって表される。
【0032】
理想的な条件の下であれば、この誤差εと現在の周波数ωとから直ちに
【数5】

を求めることが可能であるが、現実には、系には様々なノイズがあって、
【数5】

を求めるだけでは意味がない。また、
【数5】

は、ωcの近似値であるので、真の周波数ωcを求めるためには、
【数9】

を時間積分して求めることとする。ここでKeは、収束の速度を定める任意の係数である。この時間積分により、ω=ωcの平衡点が求められる。
【0033】
安定な閉ループ系において、(7)式で表される周波数の変化が、制御の対象の動的な挙動に対して十分遅い場合、つまりKeが十分に小さく、またωの初期値がωcに十分近い(局所的)である場合、平衡点においてωが安定なことと指数関数的に収束することとが証明されている。
【0034】
このように本実施の形態では、外乱周波数そのものを、状態空間において近似的に求めて、この近似による誤差とその他の誤差とを上記時間積分を行う積分器によってゼロに収束させるものであり、従来のように位置決め誤差を最小とすることで間接的に、外乱の周波数を推定するものとは異なる。
【0035】
なお、(7)式はω=ωcだけでなく、ω=−ωcと、ω=0とにおいて平衡点を持つが、
cos(−ωt)=cos(ωt)
であるから、ω=−ωcの平衡点は、ω=ωcの平衡点と等価である。また、ωが、ω=0の平衡点に収束したときには、ωをゼロ以外の値に初期化することとすればよい。
【0036】
次に、以上の演算を離散系であるディジタルコントローラによって処理するために、一定のサンプル周期Tで離散化した演算を示す。この場合、(1)式に対応する差分方程式が、
【数10】

であり、その係数は
【数11】

と求めることができる。
【0037】
また、(7)式の周波数更新の微分方程式は、オイラーの式を用いて、
【数12】

と、近似できる。
【0038】
なお、MPU14では、有限語長にて演算を行うので、各変数の桁落ちを可能な限り低減するようにしてもよい。つまり演算の回数を低減するため、ω(k)x1(k)を、新たにx1(k)と再定義し、KeとKfの積の値をKeと再定義して、KeをKfから独立させると、インターナルモデルの状態方程式と周波数更新の微分方程式とは、それぞれ、
【数13】

となる。
【0039】
また、(8)式の伝達関数を求めると、
【数14】

となり、これにより、
【数15】

として、x1(k)と、x2(k)とに関する独立した差分式を得ることができる。
【0040】
フィルタ33の伝達関数は、
【数16】

と表わすことができる。ここでは、インターナルモデルの出力x2(k)をそのまま外乱除去信号として用いるのではなく、フィルタ33を介して外乱除去を行わせている。このことで、(14)式の分子(安定性に寄与する因子)を、好適な状態に定めることができる。すなわち周波数更新のためのゲインKeと、系の安定性のための係数b1,b2,b0をそれぞれ独立に設計できる。このように調整パラメータを増加させることで、系全体の安定性を確保しつつ周波数更新の効率化を図ることが可能となる。
【0041】
本実施の形態によると、磁気ヘッド5が磁気ディスク媒体1から読み取ったサーボ信号を用い、磁気ヘッド5の位置決めに作用する外乱を、周波数発生器31と周波数更新器32とにより推定する。この推定はインターナルモデルにより行われ、周波数発生器31は、前回推定した外乱と、その時間差分を表す差分方程式により推定値の更新を行う。なお、周波数更新器32には当初、外乱周波数の推定値の初期値を設定しておく。
【0042】
そして、周波数更新器32が、当該推定された外乱及びその周波数に基づいて、推定値と本来除去するべき周波数との誤差(近似誤差)を算出し、その算出した近似誤差に比例した量だけ周波数値を更新する。なお、更新後の周波数が「0」となってしまったときには、周波数更新器32は、出力する周波数の値をゼロ以外の所定の値にセットし直す。
【0043】
フィルタ33は、周波数更新器32が出力する周波数の信号を中心周波数として、当該中心周波数成分の信号を位置誤差信号PESから抽出し、増幅した信号を生成する。この信号は、第2加算器25にて、追従制御補償器22の出力信号と加算され、磁気ヘッド5の位置を制御するためのVCM駆動信号として出力されることとなる。
【0044】
このような更新方法では、また、周波数推定器32に対して当初設定された初期値と、誤差信号に含まれる除去対象の信号の周波数との差に関わらず、当該除去対象の信号周波数に対する前記推定する周波数の収束率が一定となるよう、推定する周波数の更新幅が制御される。
【0045】
このように本実施の形態によると、初期値の設定に関わらず、一定の収束率を保証でき、収束時間の増大を抑制し、所望の性能を発揮できる。
【実施例】
【0046】
以上のように構成した本実施の形態の磁気ディスク装置において、300Hzと、400Hzの周波数の外乱を加えた場合の実験例について述べる。なお、推定周波数の初期値として、推定周波数ωは、150Hzであるとする。比較のため、本実施の形態の構成を用いずに、位置決め誤差を最小とすることで間接的に、外乱の周波数を推定する方式を採用した例を併せて示す。まず、本実施の形態の構成を用いない場合の周波数の更新の状況と、位置誤差信号の収束の状況とを図4に示す。
【0047】
図4には、本実施の形態の構成を用いない場合は、初期値と、除去するべき信号の周波数との差が大きいほど、収束時間が大きくなり、また、収束率が減少していることが示されている。
【0048】
また、本実施の形態の構成を用いた場合の、周波数の更新状況と、位置誤差信号の収束率とを図5に示す。図5から明らかなように本実施の形態の構成では、外乱周波数と初期値との差にかかわらず、推定周波数の収束率(収束時間)と、位置誤差信号の収束率がいずれも一定となっている。
【0049】
また、図6には、図4,5に示した推定周波数を、外乱周波数と推定周波数の初期値との差で規格化したグラフを示す。この図6からも明らかなように、本実施の形態の手法を用いない場合は、外乱周波数と初期値として設定した周波数との差が大きくなるにつれて収束が緩慢となるが、本実施の形態の手法を用いると、外乱周波数と初期値との差にかかわらず、略同じ軌道で収束している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係るディスク装置の構成例を表す概要図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るディスク装置に記録されたサーボ信号の例を表す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るディスク装置の磁気ヘッドの位置決めを行う構成例を表す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係るディスク装置との比較に係る、本実施の形態の構成を有しない磁気ディスクの動作例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施例に係るディスク装置の動作例を表す説明図である。
【図6】本発明の実施例に係るディスク装置の別の動作例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 磁気ディスク媒体、2 スピンドルモータ、5 磁気ヘッド、6 キャリッジ、7 サスペンション、8 フレキシブルサーキット、9 ヘッド信号増幅器、10 変復調器、11 ボイスコイルモータ、14 マイクロプロセッサ、15 バスライン、16 記憶部、18 ディジタル・アナログ変換回路、19 駆動用アンプ、20 インタフェースコントローラ、21 ホスト側コントローラ、22 追従制御補償器、23 周期的外乱除去器、24,25 加算器、31 周波数発生器、32 周波数更新器、33 フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌道に沿ってデータが記録されている磁気ディスク媒体と、
前記磁気ディスク媒体に対して相対移動し、前記データの書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッドと、
前記所定軌道に対する前記磁気ヘッドの位置誤差を表わす誤差信号の入力を受け入れ、前記磁気ヘッドが前記所定の軌道上に位置するよう、磁気ヘッドの位置を制御する位置制御回路と、を備え、
前記位置制御回路が、
前記誤差信号に含まれる外乱の周波数の推定値を生成する周波数推定器であって、外乱の周波数に対する前記推定値と、当該推定値の時間変化量とを用い、前記推定値を更新しつつ出力する周波数推定器と、
前記誤差信号に含まれる、前記周波数推定器によって推定された周波数成分の信号とは逆相の信号を生成して出力する外乱除去器と、
を含むことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気ディスク装置において、
前記外乱除去器は、前記周波数推定器における演算とは異なる回路により、外乱除去信号を生成し、当該生成された外乱除去信号に基づいて、前記誤差信号に含まれる、前記周波数推定器によって推定された周波数成分の信号とは逆相の信号を生成して出力することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項3】
所定の軌道に沿ってデータが記録されている磁気ディスク媒体と、
前記磁気ディスク媒体に対して相対移動し、前記データの書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッドと、
前記所定軌道に対する前記磁気ヘッドの位置誤差を表わす誤差信号の入力を受け入れ、前記磁気ヘッドが前記所定の軌道上に位置するよう、磁気ヘッドの位置を制御する位置制御回路と、を備え、
前記位置制御回路が、
前記誤差信号の周波数を推定する周波数推定器であって、当初、初期値を設定するとともに、当該初期値と、前記誤差信号に含まれる除去対象の信号の周波数との差に関わらず、当該除去対象の信号周波数に対する前記推定する周波数の収束率が一定となるよう、前記推定する周波数の更新幅を制御する周波数推定器と、
前記誤差信号に含まれる、前記周波数推定器によって推定された周波数成分の信号とは逆相の信号を生成して出力する外乱除去器と、
を含むことを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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