説明

磁気ディスク装置

【課題】 消費電流を削減することができる磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】 入力電圧をスイッチングして電圧変換を行う電圧変換部110と、電圧変換部110が行う電圧変換によって得られた電圧に平滑処理を施して、負荷に供給する出力電圧を生成する平滑部120と、参照電圧と出力電圧との差分に応じて電圧変換部110を駆動し、出力電圧を安定化する制御部130と、データが磁気的に記憶される磁気ディスク10への書き込み動作と、読み取り動作とを制御するSoC20の動作モードに応じて参照電圧を変更する参照電圧変更部140とを有するスイッチングレギュレータ100と、スイッチングレギュレータ100からの電源供給を受けて動作する負荷としてのSoC20とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置は、記録密度や転送速度の向上が著しい。また、符号化やエラー訂正等の機能をハードウェアで備えたものも提案され、機能面での充実も著しい。しかしながら、これらの磁気ディスク装置の性能の向上に伴い装置の消費電流は増加傾向にある。このため、LSI(Large Scale Integration)のシュリンク(チップサイズの縮小)やプロセスの改善が進められている。また、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置においては、動作クロックの周波数や動作電圧を装置の動作モードに応じて切り替える技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−11897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LSIのシュリンクやプロセスの改善によって磁気ディスク装置の動作時の消費電流の削減には効果が現れてきているものの、スタンバイやスリープなどの非動作時にはリーク電流の増加という弊害が顕著になってきている。図1に、従来プロセスと、改善された新プロセスでのリーク電流量を示す。
リーク電流は、例えば、図2に示すSoC(System on a Chip)20上に形成された制御装置を構成するMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のソース・ドレイン間電流として流れる。このリーク電流は、図1に示すように電圧依存が大きい。また、磁気ディスク装置への書き込み、読み出しのときのデータ転送速度は、制御装置に供給する電圧に比例する。このため、データ転送速度が上昇すればするほど、リーク電流が大きくなるという欠点を抱えている。特にノートPC等に使用される磁気ディスク装置は、スタンバイ、スリープ時間が大部分を占めることにより、ノートPCにおけるバッテリ寿命に与える影響が無視できない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、消費電流を削減することができる磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本明細書に開示の磁気ディスク装置は、入力電圧をスイッチングして電圧変換を行う電圧変換部と、前記電圧変換部が行う電圧変換によって得られた電圧に平滑処理を施して、負荷に供給する出力電圧を生成する平滑部と、参照電圧と前記出力電圧との差分に応じて前記電圧変換部を駆動し、前記出力電圧を安定化する制御部と、データが磁気的に記憶される記録媒体への書き込み動作と、読み取り動作とを制御する磁気ディスク制御装置の動作モードに応じて前記参照電圧を変更する参照電圧変更部とを有するスイッチングレギュレータと、前記スイッチングレギュレータからの電源供給を受けて動作する前記負荷としての前記磁気ディスク制御装置とを有する構成としている。
従って、本明細書に開示の構成を有していない場合と比較して、消費電流を削減することができる。
【発明の効果】
【0007】
本明細書の開示によれば、本明細書に開示の構成を有していない場合と比較して、消費電流を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例】
【0009】
まず、図2を参照しながら実施例の構成を説明する。図2に示すように本実施例の磁気ディスク制御1は、複数枚のディスク媒体としての磁気ディスク10と、磁気ディスク10を回転駆動するスピンドルモータ(Spindle Motor(SPM))11と、磁気ディスク10に対するデータの書き込みや磁気ディスク10からのデータの読み出しを実行する磁気ヘッド(HEAD)12と、磁気ヘッド12の動作を制御するヘッドIC(Head Integrated Circuit(HDIC))13と、磁気ヘッド12を磁気ディスク10上でシーク(移動)するボイスコイルモータ(Voice Coil Motor(VCM))14と、ボイスコイルモータ14及びスピンドルモータ11を制御するサーボコントロール回路(SVC)15と、スピンドルモータ11やボイルコイルモータ14などの駆動制御を実行するSoC(磁気ディスク制御装置に該当する)20と、駆動電圧供給手段としてのスイッチングレギュレータ100とを備えている。
【0010】
SoC20は、ハードディスクコントローラ(Hard Disk Controller(HDC))21と、リード・ライト・チャネル(RDC)22と、マイクロプロセッシングユニット(Micro Processing Unit(MPU))23とを備えている。
【0011】
ハードディスクコントローラ21は、エラー訂正回路、バッファ・コントロール回路、キャッシュ・コントロール回路及びインタフェース制御回路等を含んでおり、リード/ライト制御等を実行する。
【0012】
リード・ライト・チャネル22は、ライトデータを磁気ディスク10に書き込むための変調回路や、ライトデータをシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換回路や、磁気ディスク10からデータを読み出すための復調回路等を備えている。リード・ライト・チャネル22は、ヘッドIC13との間でデータ(信号)をやりとりする。ヘッドIC13は、ライトデータに従って磁気ヘッド12に供給すべき電流の極性を切り替えることにより磁気ディスク10にデータを記録し、また磁気ヘッド12により再生されたリードデータをリード・ライト・チャネル22へ出力する。
【0013】
MPU23は、磁気ディスク装置1の全体の制御を司り、主にヘッドのポジショニング制御、インタフェース制御、各周辺LSIの初期化や設定、ディフェクト管理などを行う。
【0014】
スイッチングレギュレータ100は、外部電源から供給される電源電圧を降圧変換して、SoC20内の各部に供給する。特に本実施例のスイッチングレギュレータ30は、SoC20の動作モードに応じてSoC20に供給する電圧を変更する。
【0015】
図3に、スイッチングレギュレータ100の詳細な構成を示す。
スイッチングレギュレータ100は、電圧変換部110、平滑部120、制御部130、分圧抵抗R1,R2、参照電圧変更部140を有している。
【0016】
電圧変換部110は、MOSトランジスタ111、112と、インバータ113とを有している。MOSトランジスタ111とMOSトランジスタ112とは直列に接続され、入力電源Vccとアースとの間に接続されている。MOSトランジスタ111のゲート端子には、制御部130から出力されるPWM((pulse width modulation)信号が入力される。また、MOSトランジスタ112のゲート端子には、前述PWM信号の出力をインバータ113で反転させた信号が入力される。従って、MOSトランジスタ111とMOSトランジスタ112とは交互にオンオフする。
【0017】
平滑部120は、インダクタLと平滑コンデンサCとを有している。平滑部120は、MOSトランジスタ111とMOSトランジスタ112の交点Sの電圧をインダクタLと平滑コンデンサCとで平滑し、平滑した電圧を出力電圧VoutとしてSoC20に出力する。スイッチングレギュレータ100は、インダクタLと平滑コンデンサCに入力電源Vccがかかる時間とかからない時間との比、換言すれば、MOSトランジスタ111、MOSトランジスタ112のオンオフのデューティ比によって、出力電圧Voutを制御することができるようになされている。
【0018】
制御部130は、コンパレータ131と、PWMデューティコントローラ132とを有している。コンパレータ131は、出力電圧Voutを抵抗R1と抵抗R2とで分圧した電圧(以下、比例電圧と呼ぶ)を反転入力端子に入力する。また、参照電圧変更部140で生成される参照電圧を入力端子に入力する。そしてコンパレータ131は、参照電圧と比例電圧との差分を検出して増幅する。コンパレータ131の出力は、PWMデューティコントローラ132に出力される。
PWMデューティコントローラ132は、コンパレータ131の出力電圧に応じたデューティ比のPWM信号を生成する。すなわち、PWMデューティコントローラ132は、MOSトランジスタ111、112を駆動するPWM信号のデューティ比が参照電圧と比例電圧との差分に応じたものなるとように制御する。
【0019】
参照電圧変更部140は、抵抗部141とスイッチ部142とを有している。抵抗部141は、直列接続した複数の抵抗(141−1,141−2,・・・,141−n(nは任意の自然数))を基準電圧Vrefとアースとの間に接続している。また、スイッチ部142は、複数のスイッチ142−0,142−1,・・・,142−n(nは任意の自然数))を有している。
参照電圧変更部140には、基準電圧Vrefが入力されている。参照電圧変更部140は、スイッチ部142のオン、オフを切り替えることで、基準電圧Vrefを分圧する抵抗を選択する。例えば、図3に示すスイッチ142−1をオンすることで、分圧抵抗として抵抗141−1が選択される。同様に、スイッチ142−2をオンすることで、分圧抵抗として抵抗141−1と、抵抗141−2とが選択される。基準電圧Vrefを抵抗部141の抵抗で分圧して生成された参照電圧は、コンパレータ131の入力端子に出力される。
【0020】
また、スイッチ142−0,142−1,・・・,142−nのオン、オフ切り替えは、MPU23によって行われる。MPU23は、出力電圧Voutを分圧抵抗R1とR2で分圧した比例電圧をA/D変換器101でデジタル値に変換して入力する。また、MPU23には、図2に示すHDC21を介して上位装置から磁気ディスク装置1の動作モードの指示が入力される。MPU23は、上位装置から動作モードの指示を入力すると、指示された動作モードに応じた出力電圧となるようにスイッチ部142のオン、オフを切り替える。
図4に磁気ディスク装置1の動作モードを示す。磁気ディスク装置1は、アクティブ、アイドル、スタンバイ、スリープの4つの動作モードを有している。MPU23は、磁気ディスク装置1が非動作時のモードであるスタンバイモードとスリープモードとに設定されると、出力電圧Voutが図1に示す仕様電圧範囲内の最小電圧に近づくようにスイッチ部142のオン、オフを切り替える。
【0021】
MPU23によるスイッチ部142の切り替えは、段階的に行われる。例えば、磁気ディスク装置1の動作モードがアクティブモードからスタンバイモード又はスリープモードに切り替わったとする。MPU23は、A/D変換器101から入力した比例電圧を参照して出力電圧Voutを安定化させながら、基準電圧Vrefを分圧する抵抗部141の抵抗の数を徐々に増やし、参照電圧の値を徐々に低下させる。制御部130は、参照電圧変換部140から出力される参照電圧を参照して、比例電圧が参照電圧に一致するようにPWM信号のデューティを変更する。従って、MPU23により参照電圧の値を徐々に低下させることで出力電圧Voutが徐々に低下する。
例えばMPU23は、0.95V,1.0V,1.05V,・・・と50mV間隔で出力電圧Voutを制御する。
【0022】
このように本実施例は、SoC20に供給される駆動電圧の値をスタンバイモード又はスリープモードの非動作時には仕様電圧範囲内の最小電圧に近い電圧とすることができる。従って、磁気ディスク装置1の非動作時には発生するリーク電流を低く抑えることができる。
また、本実施例は、スイッチングレギュレータ100の出力電圧Voutの値をMPU23でモニタしながら分圧に使用する抵抗をスイッチで切り替えている。このため、スイッチングレギュレータ100の出力電圧Voutを目標電圧に近づけるための参照電圧を精度よく生成することができる。従って、スイッチングレギュレータ100の外部で磁気ディスク装置1の動作モードに応じた基準電圧Vrefを高精度に生成する必要がない。このため、装置のコストを削減し、歩留りの向上にも貢献することができる。
【0023】
例えば、150nmプロセスにおいては、磁気ディスク装置1の動作モードがアクティブのときには、駆動電圧1.25Vで、リーク電流80mAとなる。従って、消費電力は0.1Wとなる。また、本実施例の制御によってスタンバイモード又はスリープモード時には、駆動電圧を1.0Vとし、リーク電流20mAとすることができる。従って、消費電力は0.02Wとなる。よってスタンバイ又はスリープモード時の消費電力は、アクティブモード時の1/5とすることができる。
【0024】
なお、図3では、スイッチングレギュレータ100の出力電圧Voutを分圧抵抗R1とR2とで分圧してMPU23に入力しているが、図5に示すように分圧抵抗はR1だけであってもよい。
【0025】
上述した実施例は本発明の好適な実施例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来プロセスで製造された磁気ディスク装置での駆動電圧とリーク電流の関係と、新プロセスで製造された磁気ディスク装置での駆動電圧とリーク電流の関係を示す図である。
【図2】磁気ディスク装置の構成を示す図である。
【図3】スイッチングレギュレータの構成を示す図である。
【図4】磁気ディスク装置の動作モードを示す図である。
【図5】スイッチングレギュレータの他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 磁気ディスク装置
23 MPU(制御手段)
100 スイッチングレギュレータ
110 電圧変換部
120 平滑部
130 制御部
140 参照電圧変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧をスイッチングして電圧変換を行う電圧変換部と、
前記電圧変換部が行う電圧変換によって得られた電圧に平滑処理を施して、負荷に供給する出力電圧を生成する平滑部と、
参照電圧と前記出力電圧との差分に応じて前記電圧変換部を駆動し、前記出力電圧を安定化する制御部と、
データが磁気的に記憶される記録媒体への書き込み動作と、読み取り動作とを制御する磁気ディスク制御装置の動作モードに応じて前記参照電圧を変更する参照電圧変更部とを有するスイッチングレギュレータと、
前記スイッチングレギュレータからの電源供給を受けて動作する前記負荷としての前記磁気ディスク制御装置と、
を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記参照電圧変更部は、前記磁気ディスク制御装置の非動作時には、前記磁気ディスク制御装置に供給される電圧が前記磁気ディスク制御装置の動作可能電圧範囲内の最低電圧に近づくように前記参照電圧を変更することを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記参照電圧変更部は、複数の抵抗を直列に接続した抵抗部と、前記抵抗部の抵抗のうち、前記参照電圧の分圧に使用する抵抗を選択するスイッチ部と、前記出力電圧を検出し、該出力電圧に応じて前記スイッチ部を切り替える制御手段と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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