説明

磁気ビーズ及び微生物検出方法

【課題】 より簡易かつ高感度に微生物の検出を行うための磁気ビーズ及び微生物検出方法を提供する。
【解決手段】 サルモネラ21の細胞表層の構成成分であるリポポリサッカライドと特異的に反応するポリミキシンBを固定化した磁気ビーズ(ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31)を用いて、サルモネラ21を捕捉する。そして、そのポリミキシンB固定化磁気ビーズ31を磁気ビーズ分離用磁石25により分離し、分離されたポリミキシンB固定化磁気ビーズ31により捕捉されているサルモネラ21に、ビオチン標識抗体32を結合させ、さらに、アビジン・ルシフェラーゼ複合体33を結合させる。そして、ルシフェリンを基質とする発光反応により、サルモネラ21を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素免疫測定法により微生物を検出するための磁気ビーズ及び微生物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食物がサルモネラ等に汚染されている場合には食中毒等の危険があるため、従来から、サルモネラの検出方法や、検出キットが多数開発されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
サルモネラの検出には、酵素免疫測定法等を用いることができる。この酵素免疫測定法は、例えば、ウェルに固定化した抗体とサルモネラの抗原(鞭毛等の抗原)とを反応させ、さらに、酵素で標識された抗体をサルモネラに反応させ、その酵素に対する基質を添加し発色させる。
【0004】
また、免疫磁気分離法によりサルモネラを検出するためのキットが開発されている。この方法では、鉄粒子を含むポリスチレンビーズにサルモネラの特異抗体を結合させたものを用いて、液体培養したサルモネラを分離することができる。そして、分離したサルモネラを培養する。また、免疫磁気分離法と酵素免疫測定法とを併用して、免疫磁気分離法によりサルモネラを濃縮し、次いで、酵素免疫測定法によりサルモネラを検出する方法も開発されている。
【非特許文献1】伊藤 武、「食品からのサルモネラ簡易検査法の進展」、食品工業、株式会社光琳、1995年12月30日、38巻、24号、p.38−44
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の酵素免疫測定法では、菌捕捉用固相としてプラスチック製ウェルを採用しているため、固定化できる捕捉用抗体量が制限され、検出感度や検出範囲が不十分である。また、検出系に発色法を採用しているため、検出感度が発光法に比べて劣っている。さらに、免疫測定用の抗原を増殖させるために、菌増殖用の培養工程の他に、免疫測定用の培養行程が必要である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より簡易かつ高感度に微生物の検出を行うための磁気ビーズ及び微生物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の磁気ビーズは、微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応するリガンドを固定化し、前記リガンドと前記レセプタとの特異的な反応により前記微生物を捕捉可能である。これによれば、磁気ビーズに固定化されたリガンドと特異的に反応するレセプタを細胞表層に有する微生物を捕捉できる。
【0008】
この磁気ビーズにおいて、前記リガンドをポリミキシンBとすることができる。これによれば、ポリミキシンBと特異的に反応するレセプタを細胞表層に有する微生物を、磁気ビーズにより捕捉できる。
【0009】
本発明の微生物検出方法は、微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応をするリガンドを固定化した磁気ビーズを用いて、前記リガンドと前記レセプタとの特
異的な反応により前記磁気ビーズにより微生物を捕捉し、前記磁気ビーズを磁気ビーズ分離用磁石により分離し、分離された磁気ビーズに固定化されたリガンドにより捕捉されている微生物を発光法により検出する。これによれば、磁気ビーズに固定化されたリガンドと特異的に反応するレセプタを細胞表層に有する微生物を捕捉し、その微生物を分離できる。そして、その微生物を発光法により検出できる。従って、磁気ビーズと磁気ビーズ分離磁石とを用いることで、より簡単に微生物の捕捉や、未反応物質の除去や洗浄を行うことができるとともに、磁気ビーズを増やすことにより、多量の捕捉体で微生物の捕捉を行うことができる。また、捕捉された微生物の検出を発光法により行うため、発色法等と比べて、より高感度に検出を行うことができる。従って、微生物の検出を、より簡易かつ高感度に行うことができる。
【0010】
この微生物検出方法において、前記発光法は、前記微生物が有する抗原に特異的に反応するビオチン標識抗体を導入し、さらに、アビジン又はストレプトアビジンとルシフェラーゼの複合体を導入することにより、ルシフェリンを基質とする発光反応により検出を行うことによるものとすることができる。これによれば、より高感度に微生物を検出できる。
【0011】
この微生物検出方法において、前記リガンドをポリミキシンBとし、前記リガンドにより捕捉される微生物を、リポポリサッカライドを細胞表層の構成成分とする微生物とすることができる。これによれば、ポリミキシンBが固定化された磁気ビーズを用いて、より簡易かつ高感度に、リポポリサッカライドを細胞表層の構成成分とする微生物を検出できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より簡易かつ高感度に微生物の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について説明する。
本発明における微生物検出方法では、酵素反応と免疫反応(抗原抗体反応)を利用する酵素免疫測定法により、微生物の検出を行う。本発明における微生物検出方法では、微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応するリガンドを固定化した磁気ビーズを用いて微生物を捕捉し、発光法により捕捉された微生物の検出を行う。この微生物検出方法では、(a)リガンドを固定化した磁気ビーズにより微生物を捕捉する工程、(b)捕捉された微生物を分離する工程、(c)捕捉された微生物を発光法により検出する工程を含む。
【0014】
まず、リガンドを固定化した磁気ビーズについて説明する。
<リガンドを固定化した磁気ビーズ>
本発明では、微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応するリガンドを固定化した磁気ビーズを用いて微生物を捕捉する。従って、磁気ビーズに固定化するリガンドとしては、微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に結合するものを用いる。なお、微生物の細胞膜と外膜又は細胞壁とをまとめて細胞表層と総称する。
【0015】
本実施形態では、磁気ビーズに固定化するリガンドとして、ポリミキシンBを用いる。このポリミキシンBは、グラム陰性菌の外膜の構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)と特異的に結合することが知られている。従って、ポリミキシンBを固定化した磁気ビーズを用いれば、ポリミキシンBとリポポリサッカライドとの特異的な結合により、細胞表層の構成成分にリポポリサッカライドを含む微生物を捕捉することができる。細胞表層の構成成分にリポポリサッカライドを含む微生物として、グラム陰性菌であるサルモネラ(Salmonella)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)や大腸菌(Escherichia coli)
等がある。
【0016】
また、黄色ぶどう球菌 (Staphylococcus aureus)の細胞壁の構成成分であるプロテインA(protein A) と特異的に結合する特定の免疫グロブリン分子を固定化した磁気ビー
ズを用いれば、黄色ぶどう球菌の捕捉が可能となる。なお、プロテインAは、ヒト、マウス、ウサギ等の免疫グロブリンG(IgG)のFcフラグメントと特異的に結合することが知られている(ただし、ヒトIgG3とは結合しない)。
【0017】
磁気ビーズは、微生物を捕捉し分離するのに適した大きさであることが好ましい。例えば、サルモネラを捕捉し分離する場合、直径4.5μmの磁気ビーズの方が、直径2.8μmの磁気ビーズよりも適しているという実験結果が得られている。
【0018】
<微生物検出方法>
次に、本発明の微生物検出方法を、図1を用いて説明する。なお、ここでは、ポリミキシンBを固定化した磁気ビーズを用いてサルモネラを捕捉し、サルモネラの検出を行う場合について説明するが、本発明における磁気ビーズに固定化するリガンド及び検出対象の微生物は、これに限定されるものではない。
【0019】
まず、サルモネラの検出を行うための培養液を用意し、自動分注装置を用いて、以下の(a),(b),(c−1),(c−2)の工程を実行する。
(a)リガンドを固定化した磁気ビーズにより微生物を捕捉する工程
まず、自動分注装置を用いて、サルモネラの検出を行う培養液に、ポリミキシンB22を固定化した磁気ビーズ23(ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31)を添加して、例えば「37℃で15分間」の条件下でインキュベートする。ここで、サルモネラが含まれる培養液(サルモネラ培養液)にポリミキシンB固定化磁気ビーズを添加した状態を図1の(1)に示す。このように、自動分注装置の容器内のサルモネラ培養液中にサルモネラ21と、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31が浮遊している状態となる。そして、例えば「37℃で15分間」という条件下でインキュベートすると、(2)に示すように、サルモネラ21の細胞表層の構成成分であるリポポリサッカライドとポリミキシンB22とが特異的に結合する。この結果、サルモネラ21がポリミキシンB固定化磁気ビーズ31に捕捉される。
【0020】
(b)捕捉された微生物を分離する工程
次に、(3)に示すように、自動分注装置の磁気ビーズ分離用磁石25により、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31を集める。具体的には、磁気ビーズ分離用磁石25を、サルモネラ培養液が入れられた容器の壁側に近づける。これにより、磁気ビーズ分離用磁石25にポリミキシンB固定化磁気ビーズ31が引き寄せられ、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31を容器の壁面に集めることができる。
【0021】
そして、反応液を廃棄することによりポリミキシンB固定化磁気ビーズ31を回収できる。これにより、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31により捕捉されたサルモネラ21が分離される。
【0022】
そして、洗浄液を注入して、サルモネラ21が捕捉されたポリミキシンB固定化磁気ビーズ31を洗浄する。これにより、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31に捕捉されていないサルモネラ21等を含むサルモネラ培養液が除去される。
【0023】
(c)捕捉された微生物を発光法により検出する工程
(c−1)ビオチン修飾抗体を反応させる工程
次に、洗浄後の、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31に捕捉されたサルモネラ21に
、(4)に示すビオチン標識抗体32を加える。このビオチン標識抗体32は、抗体26にビオチン27が標識されている。このビオチン標識抗体32は、サルモネラの表面に存在する抗原(例えば、細胞表層の構成成分)と特異的に結合する抗体である。なお、この反応液中では、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31に捕捉されたサルモネラ21は、磁気ビーズ分離用磁石25に引き寄せられて、容器の壁側に集められている。
【0024】
この反応液を、例えば「37℃で15分間」という条件下でインキュベートする。これにより、ビオチン標識抗体32と、サルモネラ21の表面の抗原とが特異的に結合する。この抗原とビオチン標識抗体32との結合により、(4)に示すように、サルモネラ21の表面にビオチン標識抗体32が結合される。
【0025】
そして、上記のようにインキュベートを行った後、反応液を廃棄し、洗浄液を注入して、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31に捕捉されたサルモネラ21を洗浄する。これにより、未反応のビオチン標識抗体32等が除去される。
【0026】
(c−2)アビジン・ルシフェラーゼ複合体を反応させる工程
次に、洗浄後の、ビオチン標識抗体32が結合したサルモネラ21に、図1の(5)に示すアビジン・ルシフェラーゼ複合体33を含む検出試薬を添加する。なお、この反応液中では、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31に捕捉された、ビオチン標識抗体32が結合したサルモネラ21は、磁気ビーズ分離用磁石25に引き寄せられ、容器の壁面に集められている。図1の(5)に示すように、アビジン・ルシフェラーゼ複合体33は、アビジン28とルシフェラーゼ29とを含む複合体である。
【0027】
なお、アビジンとルシフェラーゼとを含む複合体におけるアビジンとルシフェラーゼとの結合については特に限定されるものではない。例えば、アビジンにビオチンを介してルシフェラーゼを結合させたアビジン・ビオチン結合ルシフェラーゼを用いる。また、アビジンに代えてストレプトアビジンを用いた、ストレプトアビジンとルシフェラーゼとの複合体を用いてもよい。
【0028】
そして、このアビジン・ルシフェラーゼ複合体33を含む検出試薬を添加した反応液を、例えば「37℃で15分間」という条件下でインキュベートする。これにより、図1の(5)に示すように、アビジン・ルシフェラーゼ複合体33のアビジン28と、ビオチン標識抗体32のビオチン27とが結合する。
【0029】
そして、上記のようにインキュベートを行った後、反応液を廃棄し、洗浄液を注入して、ポリミキシンB固定化磁気ビーズ31に捕捉されたサルモネラ21を洗浄する。ここで、未反応のアビジン・ルシフェラーゼ複合体33等が除去される。
【0030】
(c−3)酵素基質を含む発光試薬を反応させる工程
次に、酵素基質を含む発光試薬を添加する。この発光試薬は、ルシフェリン(基質)、ATP、Mg2+を含む。これにより、公知の反応機構(生化学辞典 第2版,東京化学同人,1440ページ(1990))により生物発光が生じる。
【0031】
(c−4)測光工程
この生物発光の発光量を公知の手段を用いて測定する。例えば、発光量の測定によりATPの測定を行う機能を有するATPアナライザを用いる。本実施形態では測定時間として15秒を用いる。培養液中にサルモネラが存在する場合、この測光工程において発光が測定されることでサルモネラが検出される。
【0032】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
・ 上記実施形態では、微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応するリガンドを固定化した磁気ビーズを用いる。このため、磁気ビーズに固定化されたリガンドと反応するレセプタを細胞表層に有する微生物を、磁気ビーズにより捕捉できる。
【0033】
・ 上記実施形態では、サルモネラ等のグラム陰性菌の細胞表層の構成成分であるリポポリサッカライドと特異的に反応するポリミキシンBを固定化した磁気ビーズを用いる。このため、サルモネラ等のグラム陰性菌を磁気ビーズにより捕捉できる。
【0034】
・ 上記実施形態では、微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応するリガンドを固定化した磁気ビーズを用いて、その磁気ビーズにより微生物を捕捉する。そして、その磁気ビーズを磁気ビーズ分離用磁石により分離し、分離された磁気ビーズにより捕捉されている微生物を発光法により検出する。このため、磁気ビーズと磁気ビーズ分離磁石とを用いることで、より簡単に微生物の分離や、未反応物質の除去や洗浄を行うことができるとともに、磁気ビーズを増やすことにより、多量の捕捉体で微生物の捕捉を行うことができる。また、捕捉された微生物の検出を発光法により行うため、発色法等と比べて、より高感度に検出を行うことができる。従って、微生物の検出を、より簡易かつ高感度に行うことができる。
【0035】
・ 上記実施形態では、前記微生物が有する抗原に特異的に反応するビオチン標識抗体を導入し、さらに、アビジン・ルシフェラーゼ複合体を導入することにより、ルシフェリンを基質とする発光反応により検出を行う。このため、捕捉された微生物を、この微生物とビオチン標識抗体を介して結合したアビジン・ルシフェラーゼ複合体のルシフェラーゼにより触媒されるルシフェリンを基質とする発光反応により検出できる。従って、より高感度に微生物を検出できる。
【0036】
・ 上記実施形態では、サルモネラ等のグラム陰性菌の細胞表層の構成成分であるリポポリサッカライドと特異的に反応するポリミキシンBを固定化した磁気ビーズ(ポリミキシンB固定化磁気ビーズ)を用いて、サルモネラ等のグラム陰性菌を捕捉する。そして、そのポリミキシンB固定化磁気ビーズを磁気ビーズ分離用磁石により分離し、分離されたポリミキシンB固定化磁気ビーズに捕捉されているサルモネラ等のグラム陰性菌を発光法により検出する。このため、磁気ビーズと磁気ビーズ分離磁石とを用いることで、より簡単にサルモネラの分離や、未反応物質の除去や洗浄を行うことができるとともに、磁気ビーズを増やすことにより、多量の捕捉体でサルモネラの捕捉を行うことができる。また、捕捉されたサルモネラの検出を発光法により行うため、発色法等と比べて、より高感度に検出を行うことができる。従って、サルモネラの検出を、より簡易かつ高感度に行うことができる。
【0037】
・ 上記実施形態では、ビオチン標識抗体と結合する抗原として、ビオチン標識抗体が微生物の表面に結合可能な状態の抗原、例えば、細胞表層の構成成分である抗原を用いる。これにより、免疫測定用の培養工程が不要となり、より簡易に微生物の検出を行うことができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により、本発明の酵素免疫測定法による微生物検出方法について、具体的に説明する。なお、本発明は、これによって限定されるものではない。ここでは、鶏肉及び液卵由来の培養液を用いて、食品衛生検査指針に基づくいわゆる公定法と、本発明の微生物検出方法とにより、それぞれ微生物の検出を行い、本発明の酵素免疫測定法による微生物検出方法の評価を行った。
【0039】
(培養液の調整)
まず、測定に用いる鶏肉及び卵液を用意した。具体的には、表1に示すように、鶏肉については10種類の製品をサンプルとした。また、卵液については、5種類の異なる殺菌条件でそれぞれ殺菌した検体をサンプルとし、さらに、3種類の異なる殺菌条件でそれぞれ殺菌しサルモネラを接種した検体をサンプルとした。そして、これらの鶏肉及び液卵について、BPW(緩衝化されたペプトン水(Buffered Peptone Water))と、RV(ラパポルト−バシリアディス(Rappaport- Vassiliadis))とを用いて2段階培養を行った。
【0040】
(本発明の微生物検出方法の各工程の実施)
次に、自動分注装置を用いて、以下の作業を行った。
各培養液について1.0mlずつ採取して容器に注入し、それぞれポリミキシンB固定化
磁気ビーズ20μlを加えた。そして、各培養液を37℃で15分間インキュベートした。そして、自動分注装置に備えられた磁気ビーズ分離用磁石により、ポリミキシンB固定化磁気ビーズを分離し、培養液を廃棄して、洗浄液1.0mlを注入して洗浄した。なお、こ
こでは、1回のみ洗浄を行った。
【0041】
次に、ポリミキシンB固定化磁気ビーズが磁気ビーズ分離用磁石により分離されている各容器から、洗浄液を廃棄し、この容器に、ビオチン修飾抗体0.5mlを注入した。そし
て、各容器の溶液を、37℃で15分間インキュベートした。そして、各容器中の溶液を廃棄し、洗浄液1.0mlを注入して、合計2回、洗浄を繰り返した。
【0042】
次に、各容器の洗浄液を廃棄し、アビジン・ビオチン結合ルシフェラーゼを含む検出試薬0.2mlをそれぞれ注入した。そして、そして、各容器の溶液を、37℃で15分間イ
ンキュベートした。そして、各容器中の溶液を廃棄し、洗浄液1.0mlを注入して、合計
2回、洗浄を繰り返した。
【0043】
上記の作業を行った後、手動で、酵素基質を含む発光試薬0.1mlを各容器の溶液に注
入した。そして、ATPアナライザを用いて、発光量の測定を行った。
(実験結果)
実験結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

本発明の微生物検出方法による発光量の測定結果(Immuno Assay(信号値))は、鶏肉に関しては、5つのサンプル(1,2,3,8,10)で高い数値となっており、残りの5つのサンプルは低い数値となった。つまり、検出結果は、5つのサンプルが陽性(ポジティブ)で、残りの5つのサンプルが陰性(ネガティブ)となった。この検出結果と、公定法による検出結果との一致率は100%となった。
【0045】
卵液に関しては、殺菌を行った5つのサンプル(1,2,3,4,5)は、いずれの殺菌条件とも、本発明の微生物検出方法による発光量の測定結果(Immuno Assay(信号値)
)は、低い数値を示した。つまり、異なる殺菌条件により殺菌を行った5つのサンプルについては、検出結果は、いずれも陰性となった。また、サルモネラを接種した3つのサンプル(6,7,8)は、発光量の測定結果は、いずれも高い数値を示した。つまり、この3つのサンプルについては、検出結果は、いずれも陽性となった。
【0046】
公定法による検出結果も、異なる殺菌条件により殺菌を行った5つのサンプル(1,2,3,4,5)は、いずれの殺菌条件とも、陰性となり、サルモネラを接種した3つのサンプル(6,7,8)は、いずれも陽性となった。つまり、卵液を用いた測定においても、本発明の微生物検出方法による発光量の測定結果に基づく検出結果と、公定法による検出結果との一致率は100%となった。なお、ネガティブコントロールとして、RVを用いて6回発光量の測定を行ったが、信号値は、いずれも低い数値を示した。
【0047】
以上の実験結果により、本発明の微生物検出方法により、従来の公定法の場合と同様に、サルモネラを検出可能であることが示された。
次に、上記実施形態から把握できる請求項に記載した発明以外の技術的思想について、効果とともに以下に記載する。
【0048】
(1) 前記磁気ビーズに固定化されたリガンドはプロテインAと特異的に反応する特定の免疫グロブリン分子であり、前記レセプタはプロテインAであり、前記リガンドにより捕捉される微生物は黄色ぶどう球菌であることを特徴とする請求項3又は4に記載の微生物検出方法。
【0049】
これによれば、プロテインAと特異的に反応する特定の免疫グロブリン分子が固定化された磁気ビーズを用いて、より簡易かつ高感度に黄色ぶどう球菌を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の微生物検出方法を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0051】
21…サルモネラ、25…磁気ビーズ分離用磁石、31…ポリミキシンBを固定化した磁気ビーズとしてのポリミキシンB固定化磁気ビーズ、32…ビオチン標識抗体、33…アビジン又はストレプトアビジンとルシフェラーゼの複合体としてのアビジン・ルシフェラーゼ複合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応するリガンドを固定化し、前記リガンドと前記レセプタとの特異的な反応により前記微生物を捕捉可能な磁気ビーズ。
【請求項2】
前記リガンドはポリミキシンBであることを特徴とする請求項1に記載の磁気ビーズ。
【請求項3】
微生物の細胞表層の構成成分であるレセプタと特異的に反応をするリガンドを固定化した磁気ビーズを用いて、前記リガンドと前記レセプタとの特異的な反応により前記磁気ビーズにより微生物を捕捉し、前記磁気ビーズを磁気ビーズ分離用磁石により分離し、分離された磁気ビーズに固定化されたリガンドにより捕捉されている微生物を発光法により検出することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項4】
前記発光法は、
前記微生物が有する抗原に特異的に反応するビオチン標識抗体を導入し、さらに、アビジン又はストレプトアビジンとルシフェラーゼの複合体を導入することにより、ルシフェリンを基質とする発光反応により検出を行うことを特徴とする請求項3に記載の微生物検出方法。
【請求項5】
前記リガンドはポリミキシンBであり、前記リガンドにより捕捉される微生物はリポポリサッカライドを細胞表層の構成成分とする微生物であるであることを特徴とする請求項3又は4に記載の微生物検出方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−17554(P2006−17554A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194809(P2004−194809)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】