磁気ヘッド、データ記録再生装置および磁気ヘッドの磁性膜形成方法
【課題】磁気ヘッドの磁性膜のヒステリシス損失を低減し、磁界発生用のコイルやその周辺部の温度上昇を抑制することが可能な磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】記録媒体Dに磁界を印加させるためのコイル3と、このコイル3とは電気的に絶縁されるようにしてコイル3の軸長方向においてコイル3に重なって設けられている磁性膜5と、を具備している磁気ヘッドHであって、磁性膜5は、コイル3の周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域50A,50Bを有しており、これら複数の領域50A,50Bのそれぞれの磁化困難軸方向Da,Dbは、各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされている。好ましくは、磁性膜5の磁化困難軸は、コイル3の中心軸Cを中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされている。
【解決手段】記録媒体Dに磁界を印加させるためのコイル3と、このコイル3とは電気的に絶縁されるようにしてコイル3の軸長方向においてコイル3に重なって設けられている磁性膜5と、を具備している磁気ヘッドHであって、磁性膜5は、コイル3の周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域50A,50Bを有しており、これら複数の領域50A,50Bのそれぞれの磁化困難軸方向Da,Dbは、各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされている。好ましくは、磁性膜5の磁化困難軸は、コイル3の中心軸Cを中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、光磁気ディスク装置や磁気ディスク装置などのデータ記録再生装置、データ記録再生装置の構成部品としての磁気ヘッド、および磁気ヘッドに具備された磁性膜の形成方法に関する。
【0002】本明細書でいう「磁気ヘッド」とは、磁界発生用のコイルを備えたヘッドを意味しており、光学レンズを備えた光磁気ヘッドも含む概念である。
【0003】
【従来の技術】従来の光磁気ヘッドの一例を図10に示す。この光磁気ヘッドは、レンズホルダ90に、対物レンズ91a,91bと磁界発生用のコイル92とが搭載された構成を有している。対物レンズ91a,91bは、レーザ光源から進行してきたレーザ光を集束させることにより、光磁気ディスクD上にビームスポットBsを形成する。コイル92は、ビームスポットBsが形成された箇所に磁界を印加するものであり、たとえば対物レンズ91bの光磁気ディスクDに対向する面上に設けられている。このような構成によれば、コイル92を光磁気ディスクDに接近させることができるために、対物レンズを備えた光学ヘッドとコイルを備えた磁気ヘッドとを別々に設けていた従来の伝統的なものと比べると、コイルとしては、低消費電力であって、低インダクタンスのものを用いることが可能となり、磁界変調方式を採用して転送速度を速めるのに有利となる。
【0004】上記のような構造を有する光磁気ヘッドにおいては、ビームスポットBsの形成箇所に垂直磁界をできる限り効率良く作用させることが望まれる。そこで、従来においては、たとえば図11に示すように、軟磁性体からなる磁性膜93をコイル92に接近させて設ける手段が提案されている。このような手段によれば、コイル92によって発生される磁界の磁力線は、たとえば図12に示すようになり(同図では、コイル92などを模式的に示している)、磁性膜93を設けない場合よりも、ビームスポット形成箇所への垂直磁界の印加効率を高めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の手段においては、次のような不具合があった。
【0006】すなわち、コイル92を交流で駆動するときには、コイル92自体が発熱するのに加え、磁性膜93のヒステリシス損失に起因して、磁性膜93自体も発熱する現象がみられる。このヒステリシス損失に起因する磁性膜93の発熱量は、コイル92の駆動周波数に略比例して増加する。一方、磁性膜93は、この磁性膜93に流れる渦電流(誘導電流)にも起因して発熱する。このような磁性膜93の発熱は、コイル92やその周辺部の温度を上昇させる。ところが、このような温度上昇は、コイル92に断線を生じさせる要因となる他、コイル92の電気抵抗の増大をもたらし、コイル92の発熱が促進されるという悪循環を招く。また、対物レンズ91a,91bによって集束されるレーザ光がコイル92の中心部分を通過する場合、上記したようなコイル92の温度上昇は、光磁気ヘッドの光学的な特性を劣化させる要因にもなる。このように、従来においては、コイル92を高い周波数で駆動しようとすると発熱の問題が生じており、この点において改善の余地があった。
【0007】本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、磁気ヘッドの磁性膜のヒステリシス損失を低減し、磁界発生用のコイルやその周辺部の温度上昇を抑制することが可能な磁気ヘッド、およびこのような磁気ヘッドを備えたデータ記録再生装置を提供することをその課題としている。また、本願発明は、そのような磁気ヘッドの磁性膜を適切に形成することができる磁性膜形成方法を提供することを他の目的としている。
【0008】
【発明の開示】上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】本願発明の第1の側面によって提供される磁気ヘッドは、記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜の磁化困難軸は、上記コイルの中心軸を中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされていることを特徴としている。
【0010】このような構成によれば、上記コイルの発生磁界によって上記磁性膜が磁化される方向(磁化方向)は上記コイルの半径方向であることから、上記磁性膜の磁化方向と磁化困難軸が延びる方向(磁化困難軸方向)とは、一致または略一致することとなる。詳細な原理については後述するが、このように磁性膜の磁化方向と磁化困難軸方向とが一致または略一致すると、上記磁性膜のヒステリシス損失を少なくし、上記磁性膜の発熱量も少なくすることができる。したがって、コイルを高い周波数で駆動する場合であっても、その温度上昇を抑制し、温度上昇に起因するコイルの断線や電気抵抗の増大を抑制することが可能となる。
【0011】本願発明の第2の側面によって提供される磁気ヘッドは、記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜は、上記コイルの周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域を有しており、これら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向は、上記各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされていることを特徴としている。
【0012】このような構成によれば、上記複数の領域の幅を小さくし、上記複数の領域の総数を多くすると、それら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向が上記コイルの半径方向またはそれに近い方向となる。また、上記複数の領域の総数を比較的少なくした場合であっても、たとえば上記磁性膜の磁化困難軸が一方向のみである場合や、磁化困難軸方向がアトランダムである場合と比較すると、上記磁性膜の磁化方向と磁化困難軸方向とが一致または略一致する割合を多くすることができる。したがって、上記構成によっても、本願発明の第1の側面によって提供される磁気ヘッドと同様に、上記磁性膜のヒステリシス損失を少なくしてその発熱を抑えることができ、コイルの温度上昇を抑制する効果が得られる。
【0013】本願発明の好ましい実施の形態においては、上記磁性膜の複数の領域のうち、上記コイルの中心軸を挟んで対をなす領域は、磁化困難軸方向が同一とされている。このような構成によれば、上記磁性膜を形成する場合に、互いに対をなす領域については、同一の作業工程で形成することが可能となり、製造の容易化を図ることができる。
【0014】本願発明の他の好ましい実施の形態においては、光源から進行してきた光ビームを集光させるための対物レンズを備えているとともに、上記磁性膜には、上記対物レンズを通過してきた光ビームを通過させるための第1の光透過部が形成されており、かつ上記コイルの中心部には、上記第1の光透過部を透過してきた光を上記対物レンズに向けてさらに透過させるための第2の光透過部が形成されている。このような構成によれば、光磁気記録媒体用の光磁気ヘッドとして好適となる。
【0015】本願発明の第3の側面によって提供されるデータ記録再生装置は、本願発明の第1の側面または第2の側面によって提供される磁気ヘッドを備えていることを特徴としている。
【0016】このような構成によれば、本願発明の第1の側面および第2の側面によって提供される磁気ヘッドについて述べたのと同様な効果が得られる。
【0017】本願発明の第4の側面によって提供される磁気ヘッドの磁性膜形成方法は、本願発明の第1の側面または第2の側面によって提供される磁気ヘッドの磁性膜を形成するための方法であって、上記磁性膜の形成は、上記磁性膜を上記コイルの周方向に並ぶとともにその方向に幅を有する複数の領域に区分けして複数回の工程により行い、かつそれらの各工程においては、形成される領域の磁化困難軸方向を、その領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向に規定することを特徴としている。
【0018】このような構成によれば、本願発明が意図する磁気ヘッドの磁性膜を適切に、かつ簡単に形成することができる。
【0019】本願発明の好ましい実施の形態においては、上記コイルの中心軸を挟んで対をなす2つの領域については、同一工程によって形成する。このような構成によれば、上記磁性膜の複数の領域を形成する工程数を、上記領域の総数の半分に減らすことができ、磁気ヘッドの生産性を良くするのに好適となる。
【0020】本願発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0022】図1〜図3は、本願発明の一実施形態を示している。図1に示す光磁気ディスク装置Aは、光磁気ヘッドHを有している。この光磁気ヘッドHは、スライダ1と、対物レンズとしての一対のレンズ2a,2bと、磁界発生用のコイル3と、誘電体膜4と、磁性膜5とを具備している。
【0023】スライダ1は、たとえばセラミック製の板状またはブロック状である。このスライダ1は、アーム60に対してサスペンション61を介して支持されており、光磁気ディスクDの上方に配されている。光磁気ディスクDは、基板98の上面に記録層99が形成されたものであり、本実施形態においては、光磁気ヘッドHと記録層99とが基板98を介することなく直接的に対面する表面記録方式が採用されている。アーム60は、スライダ1を光磁気ディスクDの半径方向(トラッキング方向Tg)に移動させることができるように、同方向に往復動自在な直動型のアーム、あるいは所定部分を中心として揺動自在な揺動アームとして構成されている。サスペンション61は、フォーカス方向Fsに弾性変形可能であり、光磁気ディスクDがスピンドルモータMによって高速回転されることにより、この光磁気ディスクDの表面と誘電体膜4との間に高速空気流が流れ込むと、このスライダ1は光磁気ディスクDから微小間隔を隔てて浮上するようになっている。
【0024】アーム60の先端部には、レーザダイオード80やコリメータレンズ81を備えた固定光学部8から進行してくるレーザ光を、レンズ2a,2bのそれぞれに順次入射させるように反射するミラー62が搭載されている。固定光学部8には、ビームスプリッタ82や光検出器83も設けられており、光磁気ディスクDに照射されてからこの光磁気ディスクDによって反射された光は、光検出器83で検出され、この検出により光磁気ディスクDに記録されているデータの読み取り処理がなされ、またトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号などの各種のエラー信号の作成処理もなされるようになっている。
【0025】レンズ2a,2bは、受けたレーザ光を順次集束させることによって、光磁気ディスクDの記録層99上にビームスポットを形成するためのものである。レンズ2aは、たとえばスライダ1の上面部に搭載されている。レンズ2bは、スライダ1の貫通穴10内に収容されていることによりレンズ2aの直下に配されている。対物レンズとして、複数枚のレンズを用いれば、対物レンズの開口数を高めることが容易化される。レンズ2bは、下向きのレンズ面20が平面状に形成されたものであり、このレンズ面20には、透明基板21が接着されている。透明基板21は、たとえばガラス製であり、スライダ1の下向き面の全面またはその一部分に重ね合わされて接着されている。この透明基板21の表面上に磁性膜5,コイル3、および誘電体膜4が形成されている。
【0026】コイル3は、導体薄膜により形成されたものであり、図3の仮想線に示すように、渦巻型のものである。このコイル3は、たとえば銅膜の形成後にこの銅膜にエッチング処理を施して渦巻き状にパターニングする手法、渦巻き状にパターニングされたレジストを形成した後にこのレジストによって規定されている空間領域に銅膜をメッキ処理によって形成する手法、あるいはその他の手法により形成可能である。このコイル3には、一対のリード部31a,31bが繋がって形成されている。図面には示されていないが、このコイル3は、このコイル3とリード部31aとの導通を回避するためのスルーホールを備えた構造とされている。むろん、本願発明においては、コイルの具体的な構成はこれに限定されるものではない。たとえば、2層以上の導体薄膜から構成された複数層構造のコイルとして構成することもできる。リード部31a,31bは、図1および図2には表わされていないが、誘電体膜4の側面まで延びており、この部分からコイル3への電力供給が可能となっている。コイル3の中心軸Cは、レンズ2a,2bの中心軸と一致している。
【0027】誘電体膜4は、たとえばアルミナや酸化珪素からなり、透明である。この誘電体膜4は、コイル3や磁性膜5を覆っており、光磁気ディスクDに対向する面40は平面状である。コイル3の中心部にもこの誘電体膜4の一部が進入しており、コイル3の中心部分は、レーザ光を透過させることが可能な光透過部32として構成されている。コイル3は、そのインダクタンスを低くすることができるように、レーザ光の光路を遮らない範囲において光透過部32の直径(コイル3の内径)ができる限り小さいものとされている。この誘電体膜4は、たとえば蒸着やスパッタリングにより形成することができる。
【0028】磁性膜5は、Ni−Fe合金などの軟磁性体からなる。この磁性膜5は、透明基板21とコイル3との間に形成されており、その中心がコイル3の中心軸Cと一致する略中空円状である。ただし、図3に示されているように、この磁性膜5は、この磁性膜5の半径方向に延びる計4つのスリット51を介して中心軸C周り(コイル3の周方向)において4等分されており、一対ずつの第1および第2の領域50A,50Bに区分されている。
【0029】一対の第1の領域50Aどうしは、同図のx方向において中心軸Cを挟む配置となっている。一対の第2の領域50Bどうしは、x方向に直交するy方向において中心軸Cを挟む配置となっている。磁性膜5は、磁気異方性を有しており、一対の第1の領域50Aのそれぞれの磁化困難軸方向Daは、いずれもx方向である。これに対し、一対の第2の領域50Bのそれぞれの磁化困難軸方向Dbは、いずれもy方向である。
【0030】磁性膜5の中心の穴部52には、誘電体膜4の一部が進入している。この穴部52は、コイル3の光透過部32と同様に、レーザ光を通過させる光透過部としての役割を果たす。この磁性膜5の外径は、コイル3の外径よりも大きくされている。このように、磁性膜5を大径にすれば、磁性膜5のボリュームおよび表面積が大きくなるため、コイル3から発せられた熱を逃がすための放熱作用を高めるのに有利となる。
【0031】磁性膜5は、たとえばメッキ処理によって透明基板21上に形成することが可能であり、その形成工程の一例を図4(a),(b)に示す。
【0032】磁性膜5を形成するには、まず同図(a)に示すように、一対の第1の領域50Aのみを形成する。ただし、メッキ処理によって各第1の領域50Aの膜を成長させている際には、この膜の形成箇所にバイアス磁界を印可する。このバイアス磁界の向きNaはy方向とする。すると、各第1の領域50Aは磁気異方性をもった膜として仕上げられ、その磁化困難軸方向Daは、バイアス磁界の向きNaに直交したx方向となる。
【0033】次いで、同図(b)に示すように、一対の第2の領域50Bの膜をメッキ処理によって形成する。その際には、第1の領域50Aの形成工程とは異なり、バイアス磁界の向きNbはx方向とする。このことにより、各第2の領域50Bの磁化困難軸方向Dbは、y方向となる。
【0034】上記した形成工程によれば、磁性膜5を適切に形成することができることは勿論のこと、磁性膜5が4分割されているのに対して、メッキ処理回数は2回で済み、その工程数を少なくすることができる。なお、磁性膜5は、メッキ処理に代えて、たとえば蒸着により形成することも可能であり、蒸着膜の成長過程において上記と同様な手法でバイアス磁界を印可すれば、やはり本実施形態の磁性膜5と同様な構成をもつ磁性膜を作製することが可能である。また、メッキや蒸着のいずれの成膜方法の場合であっても、各第2の領域50Bを各第1の領域50Aに接触させるように形成することが可能である。したがって、本願発明の磁性膜としては、たとえば図3に示した複数のスリット51を有しない形態のものとして形成することも可能である。
【0035】次に、上記した光磁気ヘッドHの作用について説明する。
【0036】光磁気ディスクDへのデータ書き込みを磁界変調方式で行なう場合、光磁気ディスクDを回転させながら、記録層99の目的のトラック上にレーザ光のビームスポットを形成し続ける。このビームスポットの形成により、記録層99の磁性層をキュリー温度まで上昇させる。一方、コイル3には高周波電流を流して磁界の向きを切り替える。このような制御により、記録層99の磁性膜の磁化の向きを制御し、データの書き込みを行なうことができる。
【0037】このようなデータ書き込み処理時においては、磁性膜5がコイル3により発生される磁界により磁化される。その際の磁性膜5の磁化方向は、図5の矢印に示すように、磁性膜5の半径方向となる(なお、同図においては磁性膜5のスリット51を省略している)。
【0038】一方、Ni−Fe合金製の磁性膜5の磁化困難軸方向および磁化容易軸方向におけるヒステリシス曲線は、たとえば図6に示すようになっている。このこのヒステリシス曲線から理解されるように、磁界が磁化困難軸方向と磁化容易軸方向とのそれぞれにおいて変化する場合、磁化困難軸方向の方が、磁化容易軸方向よりもヒステリシス差が小さく、かつヒステリシス損失が少ない。なお、このような特徴は、Ni−Fe合金に限らず、それ以外の材質の磁性体についても同様にみられる。
【0039】ここで、本実施形態の磁性膜5を考察すると、図3に示すように、この磁性膜5の各第1の領域50Aの幅方向(コイル3の周方向)の中央部およびその周辺部については、それらの部分の磁化困難軸方向Daが磁性膜5の半径方向または略半径方向となっており、磁性膜5の磁化方向と一致または略一致している。同様に、各第2の領域50Bの幅方向中央部およびその周辺部についても、それらの部分の磁化困難軸方向Dbは、磁性膜5の磁化方向と一致または略一致している。このため、磁性膜5のヒステリシス損失を少なくすることができることとなる。
【0040】図7は、本願発明との対比例を示している。この対比例の磁性膜5Eは、いずれの部分においても磁化困難軸方向Deがx方向とされている。この対比例においては、同図の網点模様が付された2箇所の領域Zaの磁化困難軸方向Deが半径方向または略半径方向となっている。ところが、磁性膜5Eのそれ以外の部分においては、そのようにはなっておらず、とくに同図のクロスハッチングが入れられた2箇所の領域Zbにおいては、磁化困難軸方向Deが半径方向とは直交した方向になっており、磁化方向と磁化容易軸の方向とが一致している。このため、上記の領域Zbにおけるヒステリシス損失は一層多くなる。この対比例と本実施形態とを比較すると、本実施形態の方が対比例よりもヒステリシス損失を少なくし、磁性膜5の発熱を抑制する効果が得られることが理解できるであろう。
【0041】また、上記対比例とは異なり、磁性膜に磁気異方性をもたせない場合には、磁化困難軸方向がアトランダムであるため、磁性膜の磁化方向と磁化困難軸方向とが一致する割合はやはり少なくなる。したがって、このような場合と比較しても、本実施形態の方が、ヒステリシス損失が少なく、磁性膜の発熱量を少なくすることができる。
【0042】このように、本実施形態においては、磁性膜5のヒステリシス損失に起因する発熱を抑制することができる。このため、磁性膜5には、コイル3から発せられた熱を外部に逃がす放熱板としての役割をもたせることも可能となり、コイル3を高い周波数で駆動する場合であっても、コイル3の温度があまり高温にならないようにすることができる。また、コイル3の温度上昇を抑制すれば、温度上昇に伴ってコイル3の電気抵抗が増大していくことが防止され、電気抵抗の増大による消費電力の増加、および消費電力の増加に起因するコイル3の発熱温度のさらなる上昇といった連鎖的な現象も好適に防止される。さらには、光透過部32,52の温度もあまり高くならないようにすることができるため、これら光透過部32,52をレーザ光が透過するときに不具合を生じないようにすることもできる。
【0043】本実施形態の光磁気ヘッドHは、いわゆる浮上スライダ方式のものとして構成されており、光磁気ディスクDの記録層99とコイル3との間隔を非常に小さくできるため、コイル3の中央部の光透過部32において、この部分を透過するレーザ光を微小径に絞ることができる。したがって、コイル3の内径を小さくして、コイル3の低インダクタンス化の促進を図るのに好適である。また、浮上スライダ方式においては、光磁気ヘッドHと光磁気ディスクDとの間に流れる高速空気流による誘電体膜4の表面に対する冷却効率がよいため、コイル3の温度上昇がより抑制される。
【0044】図8および図9は、本願発明の他の実施形態を示している。これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0045】図8に示す構成は、本願発明において理想的な構成であり、磁性膜5の磁化困難軸が中心軸Cを中心とする放射状に延びた分布となっており、磁化困難軸方向D1は、磁性膜5の全域において磁性膜5や図示されていないコイルの半径方向となっている。このような構成によれば、磁性膜5の磁化困難軸方向D1と磁化方向とを正確に一致させて、磁性膜5のヒステリシス損失を最小にすることが可能である。ただし、磁化困難軸が本実施形態のような分布とされた磁性膜を実際に作製するには困難な点が多い。そこで、本実施形態の構成に近い磁性膜を比較的簡易に作製するための手段として、たとえば図9に示すような手段を採用することが好ましい。
【0046】図9に示す構成においては、磁性膜5がコイルの中心軸C周りに並ぶ計12の領域50a〜50f,50a'〜50f'に区分されている。これらのうち、中心軸Cを挟む一対の領域50a,50a'を代表的に説明すると、これら一対の領域50a,50a'は、同一方向のバイアス磁界を印可させながらたとえばメッキ処理によって同時に形成された領域であり、それらの磁化困難軸方向D2は同一である。磁化困難軸方向D2は、領域50a,50a'のそれぞれの幅方向(コイルの周方向に相当する)の中心線Laが延びる方向またはこれと略平行な方向とされている。他の計10箇所の領域50b〜50f,50b'〜50f'も、上記した一対の領域50a,50a'と同様な構成となっている。なお、図3には示さなかったが、図3の磁性膜5においても、第1および第2の領域50A,50Bのそれぞれの磁化困難軸方向は、それらの領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向である。
【0047】図9に示した構成によれば、磁性膜5の広い面積部分において、その磁化困難軸方向D2がコイルの半径方向となっており、磁性膜5を図8に示した構成に近いものとすることができる。図9に示した磁性膜5を、たとえば図3に示したものと比較すると、そのヒステリシス損失を少なくするのにより好ましいものとなる。
【0048】本願発明においては、磁性膜5を複数の領域に区分する場合、その領域の具体的な数は限定されない。各領域の幅を小さくして領域の総数を多くするほど、磁化困難軸方向がコイルの半径方向となる部分の割合を大きくし、図8に示した構成に近づけることができ、理論的には、磁性膜5の全域の磁化困難軸方向を略完全にコイルの半径方向とすることが可能である。ただし、それに伴って膜形成の工程数が多くなるため、実際には、磁気ヘッドの生産性や磁性膜の発熱の程度などを考慮して磁性膜をどの程度に細分化するのかを決定すればよい。
【0049】本願発明の内容は、上述の実施形態に限定されない。本願発明に係る磁気ヘッドやデータ記録再生装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。同様に、磁気ヘッドの磁性膜形成方法の各作業工程の具体的な構成も、種々に変更自在である。
【0050】たとえば、コイル、磁性膜、およびこれらを覆う誘電体膜については、対物レンズのレンズ面上に直接形成した構成とすることもできる。本願発明に係る磁気ヘッドは、必ずしも浮上スライダタイプのものとして構成されている必要もなく、たとえばアクチュエータの駆動によってフォーカス方向やトラッキング方向に移動自在な磁気ヘッドとして構成することもできる。本願発明に係る磁気ヘッドは、対物レンズを有しない磁気ヘッドとして構成することもできる。記録媒体の具体的な種類もとくに限定されるものではない。
【0051】本願発明は、次の付記として記載した構成を備えたものとすることができる。
【0052】〔付記1〕 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜の磁化困難軸は、上記コイルの中心軸を中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
〔付記2〕 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜は、上記コイルの周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域を有しており、これら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向は、上記各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
〔付記3〕 上記磁性膜の複数の領域のうち、上記コイルの中心軸を挟んで対をなす領域は、磁化困難軸方向が同一とされている、付記2に記載の磁気ヘッド。
〔付記4〕 光源から進行してきた光ビームを集光させるための対物レンズを備えているとともに、上記磁性膜には、上記対物レンズを通過してきた光ビームを通過させるための第1の光透過部が形成されており、かつ上記コイルの中心部には、上記第1の光透過部を透過してきた光を上記対物レンズに向けてさらに透過させるための第2の光透過部が形成されている、付記1ないし3のいずれかに記載の磁気ヘッド。
〔付記5〕 付記1ないし4のいずれかに記載の磁気ヘッドを備えていることを特徴とする、データ記録再生装置。
〔付記6〕 付記1ないし4のいずれかに記載の磁気ヘッドの磁性膜を形成するための方法であって、上記磁性膜の形成は、上記磁性膜を上記コイルの周方向に並ぶとともにその方向に幅を有する複数の領域に区分けして複数回の工程により行い、かつ、それらの各工程においては、形成される領域の磁化困難軸方向を、その領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向に規定することを特徴とする、磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
〔付記7〕 上記コイルの中心軸を挟んで対をなす2つの領域については、同一工程によって形成する、付記6に記載の磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
【0053】
【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本願発明によれば、磁気ヘッドの磁性膜のヒステリシス損失を少なくしてその発熱量を減少させることができ、コイルの温度上昇を抑制することができる。したがって、コイルの熱損傷やその他の不具合を防止することができ、またコイルを高い周波数で駆動するのにも好適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2のIII −III 矢視説明図である。
【図4】(a),(b)は、磁性膜の形成工程の一例を示す説明図である。
【図5】磁性膜の磁化方向を示す説明図である。
【図6】磁性膜のヒステリシス曲線の一例を示す図である。
【図7】本願発明との対比例を示す説明図である。
【図8】本願発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図9】本願発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図10】従来技術の一例を示す要部断面図である。
【図11】従来技術の他の例を示す要部断面図である。
【図12】磁界の説明図である。
【符号の説明】
A 光磁気ディスク装置
D 光磁気ディスク(記録媒体)
H 光磁気ヘッド
1 スライダ
2a,2b レンズ(対物レンズ)
3 コイル
4 誘電体膜
5 磁性膜
32 光透過部
50A 第1の領域(磁性膜の)
50B 第2の領域(磁性膜の)
50a〜50f 領域(磁性膜の)
50a'〜50f' 領域(磁性膜の)
52 穴部(磁性膜の)
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、光磁気ディスク装置や磁気ディスク装置などのデータ記録再生装置、データ記録再生装置の構成部品としての磁気ヘッド、および磁気ヘッドに具備された磁性膜の形成方法に関する。
【0002】本明細書でいう「磁気ヘッド」とは、磁界発生用のコイルを備えたヘッドを意味しており、光学レンズを備えた光磁気ヘッドも含む概念である。
【0003】
【従来の技術】従来の光磁気ヘッドの一例を図10に示す。この光磁気ヘッドは、レンズホルダ90に、対物レンズ91a,91bと磁界発生用のコイル92とが搭載された構成を有している。対物レンズ91a,91bは、レーザ光源から進行してきたレーザ光を集束させることにより、光磁気ディスクD上にビームスポットBsを形成する。コイル92は、ビームスポットBsが形成された箇所に磁界を印加するものであり、たとえば対物レンズ91bの光磁気ディスクDに対向する面上に設けられている。このような構成によれば、コイル92を光磁気ディスクDに接近させることができるために、対物レンズを備えた光学ヘッドとコイルを備えた磁気ヘッドとを別々に設けていた従来の伝統的なものと比べると、コイルとしては、低消費電力であって、低インダクタンスのものを用いることが可能となり、磁界変調方式を採用して転送速度を速めるのに有利となる。
【0004】上記のような構造を有する光磁気ヘッドにおいては、ビームスポットBsの形成箇所に垂直磁界をできる限り効率良く作用させることが望まれる。そこで、従来においては、たとえば図11に示すように、軟磁性体からなる磁性膜93をコイル92に接近させて設ける手段が提案されている。このような手段によれば、コイル92によって発生される磁界の磁力線は、たとえば図12に示すようになり(同図では、コイル92などを模式的に示している)、磁性膜93を設けない場合よりも、ビームスポット形成箇所への垂直磁界の印加効率を高めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の手段においては、次のような不具合があった。
【0006】すなわち、コイル92を交流で駆動するときには、コイル92自体が発熱するのに加え、磁性膜93のヒステリシス損失に起因して、磁性膜93自体も発熱する現象がみられる。このヒステリシス損失に起因する磁性膜93の発熱量は、コイル92の駆動周波数に略比例して増加する。一方、磁性膜93は、この磁性膜93に流れる渦電流(誘導電流)にも起因して発熱する。このような磁性膜93の発熱は、コイル92やその周辺部の温度を上昇させる。ところが、このような温度上昇は、コイル92に断線を生じさせる要因となる他、コイル92の電気抵抗の増大をもたらし、コイル92の発熱が促進されるという悪循環を招く。また、対物レンズ91a,91bによって集束されるレーザ光がコイル92の中心部分を通過する場合、上記したようなコイル92の温度上昇は、光磁気ヘッドの光学的な特性を劣化させる要因にもなる。このように、従来においては、コイル92を高い周波数で駆動しようとすると発熱の問題が生じており、この点において改善の余地があった。
【0007】本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、磁気ヘッドの磁性膜のヒステリシス損失を低減し、磁界発生用のコイルやその周辺部の温度上昇を抑制することが可能な磁気ヘッド、およびこのような磁気ヘッドを備えたデータ記録再生装置を提供することをその課題としている。また、本願発明は、そのような磁気ヘッドの磁性膜を適切に形成することができる磁性膜形成方法を提供することを他の目的としている。
【0008】
【発明の開示】上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】本願発明の第1の側面によって提供される磁気ヘッドは、記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜の磁化困難軸は、上記コイルの中心軸を中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされていることを特徴としている。
【0010】このような構成によれば、上記コイルの発生磁界によって上記磁性膜が磁化される方向(磁化方向)は上記コイルの半径方向であることから、上記磁性膜の磁化方向と磁化困難軸が延びる方向(磁化困難軸方向)とは、一致または略一致することとなる。詳細な原理については後述するが、このように磁性膜の磁化方向と磁化困難軸方向とが一致または略一致すると、上記磁性膜のヒステリシス損失を少なくし、上記磁性膜の発熱量も少なくすることができる。したがって、コイルを高い周波数で駆動する場合であっても、その温度上昇を抑制し、温度上昇に起因するコイルの断線や電気抵抗の増大を抑制することが可能となる。
【0011】本願発明の第2の側面によって提供される磁気ヘッドは、記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜は、上記コイルの周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域を有しており、これら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向は、上記各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされていることを特徴としている。
【0012】このような構成によれば、上記複数の領域の幅を小さくし、上記複数の領域の総数を多くすると、それら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向が上記コイルの半径方向またはそれに近い方向となる。また、上記複数の領域の総数を比較的少なくした場合であっても、たとえば上記磁性膜の磁化困難軸が一方向のみである場合や、磁化困難軸方向がアトランダムである場合と比較すると、上記磁性膜の磁化方向と磁化困難軸方向とが一致または略一致する割合を多くすることができる。したがって、上記構成によっても、本願発明の第1の側面によって提供される磁気ヘッドと同様に、上記磁性膜のヒステリシス損失を少なくしてその発熱を抑えることができ、コイルの温度上昇を抑制する効果が得られる。
【0013】本願発明の好ましい実施の形態においては、上記磁性膜の複数の領域のうち、上記コイルの中心軸を挟んで対をなす領域は、磁化困難軸方向が同一とされている。このような構成によれば、上記磁性膜を形成する場合に、互いに対をなす領域については、同一の作業工程で形成することが可能となり、製造の容易化を図ることができる。
【0014】本願発明の他の好ましい実施の形態においては、光源から進行してきた光ビームを集光させるための対物レンズを備えているとともに、上記磁性膜には、上記対物レンズを通過してきた光ビームを通過させるための第1の光透過部が形成されており、かつ上記コイルの中心部には、上記第1の光透過部を透過してきた光を上記対物レンズに向けてさらに透過させるための第2の光透過部が形成されている。このような構成によれば、光磁気記録媒体用の光磁気ヘッドとして好適となる。
【0015】本願発明の第3の側面によって提供されるデータ記録再生装置は、本願発明の第1の側面または第2の側面によって提供される磁気ヘッドを備えていることを特徴としている。
【0016】このような構成によれば、本願発明の第1の側面および第2の側面によって提供される磁気ヘッドについて述べたのと同様な効果が得られる。
【0017】本願発明の第4の側面によって提供される磁気ヘッドの磁性膜形成方法は、本願発明の第1の側面または第2の側面によって提供される磁気ヘッドの磁性膜を形成するための方法であって、上記磁性膜の形成は、上記磁性膜を上記コイルの周方向に並ぶとともにその方向に幅を有する複数の領域に区分けして複数回の工程により行い、かつそれらの各工程においては、形成される領域の磁化困難軸方向を、その領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向に規定することを特徴としている。
【0018】このような構成によれば、本願発明が意図する磁気ヘッドの磁性膜を適切に、かつ簡単に形成することができる。
【0019】本願発明の好ましい実施の形態においては、上記コイルの中心軸を挟んで対をなす2つの領域については、同一工程によって形成する。このような構成によれば、上記磁性膜の複数の領域を形成する工程数を、上記領域の総数の半分に減らすことができ、磁気ヘッドの生産性を良くするのに好適となる。
【0020】本願発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0022】図1〜図3は、本願発明の一実施形態を示している。図1に示す光磁気ディスク装置Aは、光磁気ヘッドHを有している。この光磁気ヘッドHは、スライダ1と、対物レンズとしての一対のレンズ2a,2bと、磁界発生用のコイル3と、誘電体膜4と、磁性膜5とを具備している。
【0023】スライダ1は、たとえばセラミック製の板状またはブロック状である。このスライダ1は、アーム60に対してサスペンション61を介して支持されており、光磁気ディスクDの上方に配されている。光磁気ディスクDは、基板98の上面に記録層99が形成されたものであり、本実施形態においては、光磁気ヘッドHと記録層99とが基板98を介することなく直接的に対面する表面記録方式が採用されている。アーム60は、スライダ1を光磁気ディスクDの半径方向(トラッキング方向Tg)に移動させることができるように、同方向に往復動自在な直動型のアーム、あるいは所定部分を中心として揺動自在な揺動アームとして構成されている。サスペンション61は、フォーカス方向Fsに弾性変形可能であり、光磁気ディスクDがスピンドルモータMによって高速回転されることにより、この光磁気ディスクDの表面と誘電体膜4との間に高速空気流が流れ込むと、このスライダ1は光磁気ディスクDから微小間隔を隔てて浮上するようになっている。
【0024】アーム60の先端部には、レーザダイオード80やコリメータレンズ81を備えた固定光学部8から進行してくるレーザ光を、レンズ2a,2bのそれぞれに順次入射させるように反射するミラー62が搭載されている。固定光学部8には、ビームスプリッタ82や光検出器83も設けられており、光磁気ディスクDに照射されてからこの光磁気ディスクDによって反射された光は、光検出器83で検出され、この検出により光磁気ディスクDに記録されているデータの読み取り処理がなされ、またトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号などの各種のエラー信号の作成処理もなされるようになっている。
【0025】レンズ2a,2bは、受けたレーザ光を順次集束させることによって、光磁気ディスクDの記録層99上にビームスポットを形成するためのものである。レンズ2aは、たとえばスライダ1の上面部に搭載されている。レンズ2bは、スライダ1の貫通穴10内に収容されていることによりレンズ2aの直下に配されている。対物レンズとして、複数枚のレンズを用いれば、対物レンズの開口数を高めることが容易化される。レンズ2bは、下向きのレンズ面20が平面状に形成されたものであり、このレンズ面20には、透明基板21が接着されている。透明基板21は、たとえばガラス製であり、スライダ1の下向き面の全面またはその一部分に重ね合わされて接着されている。この透明基板21の表面上に磁性膜5,コイル3、および誘電体膜4が形成されている。
【0026】コイル3は、導体薄膜により形成されたものであり、図3の仮想線に示すように、渦巻型のものである。このコイル3は、たとえば銅膜の形成後にこの銅膜にエッチング処理を施して渦巻き状にパターニングする手法、渦巻き状にパターニングされたレジストを形成した後にこのレジストによって規定されている空間領域に銅膜をメッキ処理によって形成する手法、あるいはその他の手法により形成可能である。このコイル3には、一対のリード部31a,31bが繋がって形成されている。図面には示されていないが、このコイル3は、このコイル3とリード部31aとの導通を回避するためのスルーホールを備えた構造とされている。むろん、本願発明においては、コイルの具体的な構成はこれに限定されるものではない。たとえば、2層以上の導体薄膜から構成された複数層構造のコイルとして構成することもできる。リード部31a,31bは、図1および図2には表わされていないが、誘電体膜4の側面まで延びており、この部分からコイル3への電力供給が可能となっている。コイル3の中心軸Cは、レンズ2a,2bの中心軸と一致している。
【0027】誘電体膜4は、たとえばアルミナや酸化珪素からなり、透明である。この誘電体膜4は、コイル3や磁性膜5を覆っており、光磁気ディスクDに対向する面40は平面状である。コイル3の中心部にもこの誘電体膜4の一部が進入しており、コイル3の中心部分は、レーザ光を透過させることが可能な光透過部32として構成されている。コイル3は、そのインダクタンスを低くすることができるように、レーザ光の光路を遮らない範囲において光透過部32の直径(コイル3の内径)ができる限り小さいものとされている。この誘電体膜4は、たとえば蒸着やスパッタリングにより形成することができる。
【0028】磁性膜5は、Ni−Fe合金などの軟磁性体からなる。この磁性膜5は、透明基板21とコイル3との間に形成されており、その中心がコイル3の中心軸Cと一致する略中空円状である。ただし、図3に示されているように、この磁性膜5は、この磁性膜5の半径方向に延びる計4つのスリット51を介して中心軸C周り(コイル3の周方向)において4等分されており、一対ずつの第1および第2の領域50A,50Bに区分されている。
【0029】一対の第1の領域50Aどうしは、同図のx方向において中心軸Cを挟む配置となっている。一対の第2の領域50Bどうしは、x方向に直交するy方向において中心軸Cを挟む配置となっている。磁性膜5は、磁気異方性を有しており、一対の第1の領域50Aのそれぞれの磁化困難軸方向Daは、いずれもx方向である。これに対し、一対の第2の領域50Bのそれぞれの磁化困難軸方向Dbは、いずれもy方向である。
【0030】磁性膜5の中心の穴部52には、誘電体膜4の一部が進入している。この穴部52は、コイル3の光透過部32と同様に、レーザ光を通過させる光透過部としての役割を果たす。この磁性膜5の外径は、コイル3の外径よりも大きくされている。このように、磁性膜5を大径にすれば、磁性膜5のボリュームおよび表面積が大きくなるため、コイル3から発せられた熱を逃がすための放熱作用を高めるのに有利となる。
【0031】磁性膜5は、たとえばメッキ処理によって透明基板21上に形成することが可能であり、その形成工程の一例を図4(a),(b)に示す。
【0032】磁性膜5を形成するには、まず同図(a)に示すように、一対の第1の領域50Aのみを形成する。ただし、メッキ処理によって各第1の領域50Aの膜を成長させている際には、この膜の形成箇所にバイアス磁界を印可する。このバイアス磁界の向きNaはy方向とする。すると、各第1の領域50Aは磁気異方性をもった膜として仕上げられ、その磁化困難軸方向Daは、バイアス磁界の向きNaに直交したx方向となる。
【0033】次いで、同図(b)に示すように、一対の第2の領域50Bの膜をメッキ処理によって形成する。その際には、第1の領域50Aの形成工程とは異なり、バイアス磁界の向きNbはx方向とする。このことにより、各第2の領域50Bの磁化困難軸方向Dbは、y方向となる。
【0034】上記した形成工程によれば、磁性膜5を適切に形成することができることは勿論のこと、磁性膜5が4分割されているのに対して、メッキ処理回数は2回で済み、その工程数を少なくすることができる。なお、磁性膜5は、メッキ処理に代えて、たとえば蒸着により形成することも可能であり、蒸着膜の成長過程において上記と同様な手法でバイアス磁界を印可すれば、やはり本実施形態の磁性膜5と同様な構成をもつ磁性膜を作製することが可能である。また、メッキや蒸着のいずれの成膜方法の場合であっても、各第2の領域50Bを各第1の領域50Aに接触させるように形成することが可能である。したがって、本願発明の磁性膜としては、たとえば図3に示した複数のスリット51を有しない形態のものとして形成することも可能である。
【0035】次に、上記した光磁気ヘッドHの作用について説明する。
【0036】光磁気ディスクDへのデータ書き込みを磁界変調方式で行なう場合、光磁気ディスクDを回転させながら、記録層99の目的のトラック上にレーザ光のビームスポットを形成し続ける。このビームスポットの形成により、記録層99の磁性層をキュリー温度まで上昇させる。一方、コイル3には高周波電流を流して磁界の向きを切り替える。このような制御により、記録層99の磁性膜の磁化の向きを制御し、データの書き込みを行なうことができる。
【0037】このようなデータ書き込み処理時においては、磁性膜5がコイル3により発生される磁界により磁化される。その際の磁性膜5の磁化方向は、図5の矢印に示すように、磁性膜5の半径方向となる(なお、同図においては磁性膜5のスリット51を省略している)。
【0038】一方、Ni−Fe合金製の磁性膜5の磁化困難軸方向および磁化容易軸方向におけるヒステリシス曲線は、たとえば図6に示すようになっている。このこのヒステリシス曲線から理解されるように、磁界が磁化困難軸方向と磁化容易軸方向とのそれぞれにおいて変化する場合、磁化困難軸方向の方が、磁化容易軸方向よりもヒステリシス差が小さく、かつヒステリシス損失が少ない。なお、このような特徴は、Ni−Fe合金に限らず、それ以外の材質の磁性体についても同様にみられる。
【0039】ここで、本実施形態の磁性膜5を考察すると、図3に示すように、この磁性膜5の各第1の領域50Aの幅方向(コイル3の周方向)の中央部およびその周辺部については、それらの部分の磁化困難軸方向Daが磁性膜5の半径方向または略半径方向となっており、磁性膜5の磁化方向と一致または略一致している。同様に、各第2の領域50Bの幅方向中央部およびその周辺部についても、それらの部分の磁化困難軸方向Dbは、磁性膜5の磁化方向と一致または略一致している。このため、磁性膜5のヒステリシス損失を少なくすることができることとなる。
【0040】図7は、本願発明との対比例を示している。この対比例の磁性膜5Eは、いずれの部分においても磁化困難軸方向Deがx方向とされている。この対比例においては、同図の網点模様が付された2箇所の領域Zaの磁化困難軸方向Deが半径方向または略半径方向となっている。ところが、磁性膜5Eのそれ以外の部分においては、そのようにはなっておらず、とくに同図のクロスハッチングが入れられた2箇所の領域Zbにおいては、磁化困難軸方向Deが半径方向とは直交した方向になっており、磁化方向と磁化容易軸の方向とが一致している。このため、上記の領域Zbにおけるヒステリシス損失は一層多くなる。この対比例と本実施形態とを比較すると、本実施形態の方が対比例よりもヒステリシス損失を少なくし、磁性膜5の発熱を抑制する効果が得られることが理解できるであろう。
【0041】また、上記対比例とは異なり、磁性膜に磁気異方性をもたせない場合には、磁化困難軸方向がアトランダムであるため、磁性膜の磁化方向と磁化困難軸方向とが一致する割合はやはり少なくなる。したがって、このような場合と比較しても、本実施形態の方が、ヒステリシス損失が少なく、磁性膜の発熱量を少なくすることができる。
【0042】このように、本実施形態においては、磁性膜5のヒステリシス損失に起因する発熱を抑制することができる。このため、磁性膜5には、コイル3から発せられた熱を外部に逃がす放熱板としての役割をもたせることも可能となり、コイル3を高い周波数で駆動する場合であっても、コイル3の温度があまり高温にならないようにすることができる。また、コイル3の温度上昇を抑制すれば、温度上昇に伴ってコイル3の電気抵抗が増大していくことが防止され、電気抵抗の増大による消費電力の増加、および消費電力の増加に起因するコイル3の発熱温度のさらなる上昇といった連鎖的な現象も好適に防止される。さらには、光透過部32,52の温度もあまり高くならないようにすることができるため、これら光透過部32,52をレーザ光が透過するときに不具合を生じないようにすることもできる。
【0043】本実施形態の光磁気ヘッドHは、いわゆる浮上スライダ方式のものとして構成されており、光磁気ディスクDの記録層99とコイル3との間隔を非常に小さくできるため、コイル3の中央部の光透過部32において、この部分を透過するレーザ光を微小径に絞ることができる。したがって、コイル3の内径を小さくして、コイル3の低インダクタンス化の促進を図るのに好適である。また、浮上スライダ方式においては、光磁気ヘッドHと光磁気ディスクDとの間に流れる高速空気流による誘電体膜4の表面に対する冷却効率がよいため、コイル3の温度上昇がより抑制される。
【0044】図8および図9は、本願発明の他の実施形態を示している。これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0045】図8に示す構成は、本願発明において理想的な構成であり、磁性膜5の磁化困難軸が中心軸Cを中心とする放射状に延びた分布となっており、磁化困難軸方向D1は、磁性膜5の全域において磁性膜5や図示されていないコイルの半径方向となっている。このような構成によれば、磁性膜5の磁化困難軸方向D1と磁化方向とを正確に一致させて、磁性膜5のヒステリシス損失を最小にすることが可能である。ただし、磁化困難軸が本実施形態のような分布とされた磁性膜を実際に作製するには困難な点が多い。そこで、本実施形態の構成に近い磁性膜を比較的簡易に作製するための手段として、たとえば図9に示すような手段を採用することが好ましい。
【0046】図9に示す構成においては、磁性膜5がコイルの中心軸C周りに並ぶ計12の領域50a〜50f,50a'〜50f'に区分されている。これらのうち、中心軸Cを挟む一対の領域50a,50a'を代表的に説明すると、これら一対の領域50a,50a'は、同一方向のバイアス磁界を印可させながらたとえばメッキ処理によって同時に形成された領域であり、それらの磁化困難軸方向D2は同一である。磁化困難軸方向D2は、領域50a,50a'のそれぞれの幅方向(コイルの周方向に相当する)の中心線Laが延びる方向またはこれと略平行な方向とされている。他の計10箇所の領域50b〜50f,50b'〜50f'も、上記した一対の領域50a,50a'と同様な構成となっている。なお、図3には示さなかったが、図3の磁性膜5においても、第1および第2の領域50A,50Bのそれぞれの磁化困難軸方向は、それらの領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向である。
【0047】図9に示した構成によれば、磁性膜5の広い面積部分において、その磁化困難軸方向D2がコイルの半径方向となっており、磁性膜5を図8に示した構成に近いものとすることができる。図9に示した磁性膜5を、たとえば図3に示したものと比較すると、そのヒステリシス損失を少なくするのにより好ましいものとなる。
【0048】本願発明においては、磁性膜5を複数の領域に区分する場合、その領域の具体的な数は限定されない。各領域の幅を小さくして領域の総数を多くするほど、磁化困難軸方向がコイルの半径方向となる部分の割合を大きくし、図8に示した構成に近づけることができ、理論的には、磁性膜5の全域の磁化困難軸方向を略完全にコイルの半径方向とすることが可能である。ただし、それに伴って膜形成の工程数が多くなるため、実際には、磁気ヘッドの生産性や磁性膜の発熱の程度などを考慮して磁性膜をどの程度に細分化するのかを決定すればよい。
【0049】本願発明の内容は、上述の実施形態に限定されない。本願発明に係る磁気ヘッドやデータ記録再生装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。同様に、磁気ヘッドの磁性膜形成方法の各作業工程の具体的な構成も、種々に変更自在である。
【0050】たとえば、コイル、磁性膜、およびこれらを覆う誘電体膜については、対物レンズのレンズ面上に直接形成した構成とすることもできる。本願発明に係る磁気ヘッドは、必ずしも浮上スライダタイプのものとして構成されている必要もなく、たとえばアクチュエータの駆動によってフォーカス方向やトラッキング方向に移動自在な磁気ヘッドとして構成することもできる。本願発明に係る磁気ヘッドは、対物レンズを有しない磁気ヘッドとして構成することもできる。記録媒体の具体的な種類もとくに限定されるものではない。
【0051】本願発明は、次の付記として記載した構成を備えたものとすることができる。
【0052】〔付記1〕 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜の磁化困難軸は、上記コイルの中心軸を中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
〔付記2〕 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜は、上記コイルの周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域を有しており、これら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向は、上記各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
〔付記3〕 上記磁性膜の複数の領域のうち、上記コイルの中心軸を挟んで対をなす領域は、磁化困難軸方向が同一とされている、付記2に記載の磁気ヘッド。
〔付記4〕 光源から進行してきた光ビームを集光させるための対物レンズを備えているとともに、上記磁性膜には、上記対物レンズを通過してきた光ビームを通過させるための第1の光透過部が形成されており、かつ上記コイルの中心部には、上記第1の光透過部を透過してきた光を上記対物レンズに向けてさらに透過させるための第2の光透過部が形成されている、付記1ないし3のいずれかに記載の磁気ヘッド。
〔付記5〕 付記1ないし4のいずれかに記載の磁気ヘッドを備えていることを特徴とする、データ記録再生装置。
〔付記6〕 付記1ないし4のいずれかに記載の磁気ヘッドの磁性膜を形成するための方法であって、上記磁性膜の形成は、上記磁性膜を上記コイルの周方向に並ぶとともにその方向に幅を有する複数の領域に区分けして複数回の工程により行い、かつ、それらの各工程においては、形成される領域の磁化困難軸方向を、その領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向に規定することを特徴とする、磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
〔付記7〕 上記コイルの中心軸を挟んで対をなす2つの領域については、同一工程によって形成する、付記6に記載の磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
【0053】
【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本願発明によれば、磁気ヘッドの磁性膜のヒステリシス損失を少なくしてその発熱量を減少させることができ、コイルの温度上昇を抑制することができる。したがって、コイルの熱損傷やその他の不具合を防止することができ、またコイルを高い周波数で駆動するのにも好適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2のIII −III 矢視説明図である。
【図4】(a),(b)は、磁性膜の形成工程の一例を示す説明図である。
【図5】磁性膜の磁化方向を示す説明図である。
【図6】磁性膜のヒステリシス曲線の一例を示す図である。
【図7】本願発明との対比例を示す説明図である。
【図8】本願発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図9】本願発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図10】従来技術の一例を示す要部断面図である。
【図11】従来技術の他の例を示す要部断面図である。
【図12】磁界の説明図である。
【符号の説明】
A 光磁気ディスク装置
D 光磁気ディスク(記録媒体)
H 光磁気ヘッド
1 スライダ
2a,2b レンズ(対物レンズ)
3 コイル
4 誘電体膜
5 磁性膜
32 光透過部
50A 第1の領域(磁性膜の)
50B 第2の領域(磁性膜の)
50a〜50f 領域(磁性膜の)
50a'〜50f' 領域(磁性膜の)
52 穴部(磁性膜の)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜の磁化困難軸は、上記コイルの中心軸を中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
【請求項2】 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜は、上記コイルの周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域を有しており、これら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向は、上記各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
【請求項3】 請求項1または2に記載の磁気ヘッドを備えていることを特徴とする、データ記録再生装置。
【請求項4】 請求項1または2に記載の磁気ヘッドの磁性膜を形成するための方法であって、上記磁性膜の形成は、上記磁性膜を上記コイルの周方向に並ぶとともにその方向に幅を有する複数の領域に区分けして複数回の工程により行い、かつ、それらの各工程においては、形成される領域の磁化困難軸方向を、その領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向に規定することを特徴とする、磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
【請求項5】 上記コイルの中心軸を挟んで対をなす2つの領域については、同一工程によって形成する、請求項4に記載の磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
【請求項1】 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜の磁化困難軸は、上記コイルの中心軸を中心とする放射状または略放射状に延びる分布とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
【請求項2】 記録媒体に磁界を印加させるためのコイルと、このコイルとは電気的に絶縁されるようにして上記コイルの軸長方向において上記コイルに重なって設けられている磁性膜と、を具備している、磁気ヘッドであって、上記磁性膜は、上記コイルの周方向に並び、かつその方向に幅を有する複数の領域を有しており、これら複数の領域のそれぞれの磁化困難軸方向は、上記各領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向とされていることを特徴とする、磁気ヘッド。
【請求項3】 請求項1または2に記載の磁気ヘッドを備えていることを特徴とする、データ記録再生装置。
【請求項4】 請求項1または2に記載の磁気ヘッドの磁性膜を形成するための方法であって、上記磁性膜の形成は、上記磁性膜を上記コイルの周方向に並ぶとともにその方向に幅を有する複数の領域に区分けして複数回の工程により行い、かつ、それらの各工程においては、形成される領域の磁化困難軸方向を、その領域の幅方向の中心線に平行または略平行な方向に規定することを特徴とする、磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
【請求項5】 上記コイルの中心軸を挟んで対をなす2つの領域については、同一工程によって形成する、請求項4に記載の磁気ヘッドの磁性膜形成方法。
【図2】
【図4】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2003−257099(P2003−257099A)
【公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−53691(P2002−53691)
【出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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